酸化剤に対して改良された抵抗性を有するポリビニルアルコールフィルム
官能コモノマー単位、例えばスルホン酸官能基またはその塩を含むことができるビニルアルコール樹脂成分と、糖類成分とを含む水溶性フィルム。本発明のフィルムは、攻撃的な酸化性化学薬品に対して優れた抵抗性を示し、且つ、前記化学薬品に対して長期に暴露された後でも水溶性を維持する。本発明のフィルムは、トリクロロイソシアヌル酸のような塩素含有プール用薬品の単位用量パッケージのために特に有用である。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、攻撃性酸化性化学薬品に対して改良された抵抗性を示す可溶性ポリビニルアルコール(PVOH)系フィルムと、新規用途のための、例えばプール用薬品のための単位用量パッケージ(unit dose packaging)のための前記フィルムの使用とに関する。
【0002】
背景
水溶性単位用量パッケージ中に化学薬剤をパッケージすることは当業において公知であり、それにより、パッケージ用フィルムが溶解するときに水中に内容物が分散するように、パッケージが水中に投入される。水溶性単位用量パッケージは、例えば、農薬、漂白剤、洗濯用洗剤、工業薬品、プール用薬品などにおいて見出されるような危険薬品を使用する用途で有利である。水溶性パッケージにより、ユーザーは、危険な薬品に直接接触せずに、危険物質を使用することができる。更に、単位用量パッケージにより、各用量が予めパッケージされているので、ユーザーが化学薬品を計量する必要がない。
【0003】
ポリビニルアルコール(PVOH)フィルムは、良好な強度、耐衝撃性示し、且つ水に可溶性であるので、単位用量パッケージを作製するために当業において使用されてきた。
しかしながら、残念なことに、特定の化学薬品、例えば、特に酸化性化学薬品、酸性化学薬品、アルカリ性化学薬品、塩素含有物質、多価金属を有する塩、硼酸、ポリアミン、殺虫剤、除草剤に暴露されると、PVOHフィルムの安定性が急速に低下する。而して、この種の化学薬品を使用する用途では、単位用量製品の有効貯蔵寿命は、水中でのそれらの溶解性によって制限を受けるので、PVOHパッケージの使用は実用的ではない。
【0004】
PVOHフィルムの耐薬品性を改良する様々な方法は、従来技術に記載されている。
Fujiwaraらに与えられた”Water−Soluble Film and Package Using the Same”という名称の米国特許第6,956,070号には、単位用量パッケージとして使用するための水溶性ポリマーフィルムが記載されており、そしてそのポリマーフィルムは、1〜10モル%の量でN−ビニルアミドモノマー単位を含むポリビニルアルコールコポリマーを含む。更に、PVOHコポリマーは、カルボキシル官能基またはそのアルカリ金属塩も含むことができる。
【0005】
Isozakiらに与えられた”Water−Soluble Resin Composition and Water−Soluble Film”という名称の米国特許第6,608,121号には、単位用量パッケージのためのPVOH系フィルムが記載されており、そしてそのPVOH樹脂には、可塑剤および澱粉成分が配合されている。Isozakiらのフィルムは、良好な物理的特性を示し、且つ、アルカリ物質に長期に暴露された後でも許容可能な水溶性を有することが報告されている。
【0006】
Miyazakiに与えられた”Water−Soluble Film”という名称の米国特許第6,166,117号は、化学物質をパッケージするためのフィルムに関するものであり、そしてそのフィルムは、典型的にはアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート(AMPS)単位であるスルホン酸官能モノマー単位を含むポリビニルアルコールコポリマーを含む。更に、そのフィルムは、没食子酸または没食子酸の塩も含む。
Miyazakiによると、フィルムの水溶性は、酸性化学薬品、塩素含有化学薬品または農薬に長期に暴露されても低下しない。
【0007】
同様のアプローチは、Miyazkiによる”Agricultural Packaging Film”という名称のJapanese Abstract 7−118407に記載されており、そしてそこでは、スルホン酸含有モノマーで変性されているポリビニルアルコール樹脂を含む水溶性単位用量パッケージが開示されている。スルホン酸単位は、好ましくはAMPSモノマーまたはその塩であり、0.1〜20モル%の量でコポリマー中に含有させることができる。
【0008】
Verrallらに与えられた”Water−Soluble Copolymer Film Packet" という名称の米国特許第6,787,512号は、ビニルアルコールコポリマーを含む水溶性フィルムに関する。Verrallらのコポリマーは、カルボキシレート官能単位またはスルホネート官能単位を含むことができ、また、フィルムは、液体洗濯用洗剤のための単位用量パッケージとして有用であると記載されている。
【0009】
次亜塩素酸塩および強酸(harsh acid)をパッケージするためのスルホン酸変性PVOHフィルムの使用は、Vicariに与えられた”Vinyl Alcohol Copolymers for Use in Aqueous Dispersions and Melt Extruded Articles”という名称の同時係属中の米国特許出願第11/147,910号(米国特許出願公開第2005/0222355号)に記載されている。その出願によると、変性PVOHコポリマーは、ポリマー主鎖中に重合AMPSを高含量で含有させるユニークな方法にしたがって一般的に製造される。
【0010】
関連の他の参照文献としては、両方共にVerrallらに与えられた米国特許第6,821,590号および第7,005,168号が挙げられる。
上記の方法によって特定の化学薬品と一緒に使用するための改良フィルムが提供されるが、本出願人は、その変性フィルムの多くは、攻撃性酸化剤に暴露されたときに、特に塩素化イソシアヌル酸のような水を塩素化するのに有用な化学薬品に暴露されたときに溶解性が急激に低下することを発見した。これらのタイプの化合物に暴露されるとき、大部分のPVOHフィルム配合物(PVOHコポリマーを有する前記フィルムを含む)は、水溶性が有意に低下し、場合によっては、1週間以内に実質的に不溶性となる。このことは、2ヵ月以上の貯蔵寿命が望ましいかもしれない殆どの単位用量用途にとっては不適格である。而して、攻撃性酸化剤に長期に暴露された後でも、優れた水溶性を有するポリマーフィルムに関するニーズが存在する。更に、そのフィルムは、良好な強度特性を示さなければならず、また、時間の経過による変色に抵抗性であるべきである。
【0011】
発明の概要
而して、本発明は、酸化性化学薬品のための単位用量パッケージへと形成できるポリマーフィルム配合物を提供する。本発明のフィルムパッケージは、高度に酸化性の化学薬剤、例えば塩素含有プール用薬品との長期の接触後でも、優れた水溶性を保持する。本出願の図1に図示してあるように、本発明によって製造されたフィルムは、トリクロロイソシアヌル酸殺菌剤に対して驚くほど抵抗性であり、溶解性を2ヶ月以上の間示したのに対して、従来のフィルムは、1または2週間暴露されただけで不溶性になる。
【0012】
本発明の一つの面によって、酸化性化学薬品に対して抵抗性であるポリビニルアルコールフィルムが提供される。前記フィルムは、酸化性化学薬品に対する長期暴露(6日以上)後でもフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、そして更に、少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む。前記フィルム中のコモノマー単位は、官能コモノマー単位のいずれをも有しない同様なビニルアルコール樹脂(すなわち、同様な重合度および加水分解度)を使用して作られた同様な樹脂と比較して、酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に、前記フィルムが増大した水溶性を有するように選択することができ且つ増大した水溶性を有するような量で含有することができる。同様な暴露とは、実質的に同じ温度で、実質的に同じ酸化剤の実質的に同じ時間(濃度を含む)暴露することを意味している。官能モノマー単位および/または糖類を有していない同様なフィルムは、他の全ての点(厚さなど)で実質的に同じであって、官能コモノマーまたは糖類はポリビニルアルコールで置換される。
【0013】
好ましくは、糖類成分は、糖類成分を含まない同様なフィルムと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後にフィルムの水溶性が増大するように選択され且つフィルムの水溶性が増大するような量で含有される。更に好ましくは、官能コモノマー単位および糖類成分の両方は、(1)コモノマー単位を有していない同様なビニルアルコール樹脂で作られた同様なフィルムまたは(2)糖類成分を使用せずに作られた同様なフィルムのいずれかと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後に、フィルムの水溶性が増大するように選択され且つフィルムの水溶性が増大するような量で含有される。
【0014】
酸化性化学薬品は、次亜塩素酸塩、塩素化および/または臭素化イソシアヌル酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硼酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、過酸化物、過酸化ケトン、ペルオキシ酸、無機酸およびそれらの組み合わせから成る群より選択することができる。
【0015】
糖類成分としては、好ましくはオリゴ糖、二糖類、単糖類およびそれらの組み合わせが挙げられ、特に好ましくは単糖類および二糖類である。
官能コモノマーは、適当なモノマー、例えばスルホン酸単位、カルボン酸単位、ビニルアミン単位、アクリルアミド単位、ジメチルアクリルアミド単位、それらの塩、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
ポリビニルアルコールフィルムは、好ましくは、75〜98重量%のビニルアルコールコポリマーおよび2〜25重量%の糖類成分を含む。
上記したように、本発明のフィルムは、強い酸化剤に暴露した後でも溶解性を保持する。好ましくは、少なくとも20日間、トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に暴露された後に、溶解性試験で試験したとき、フィルムは、100秒未満の正規化溶解時間(normalized dissolution time)を示す。
【0017】
本発明の別の実施態様では、酸化性化学薬品に抵抗性であるポリビニルアルコールフィルムが提供され、そのフィルムは、0.5〜20モル%のスルホン酸官能単位および/またはその塩を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、単糖類、二糖類およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の水溶性糖類成分を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む。スルホン酸官能化単位としては、好ましくは2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)モノマーおよび/またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマーが挙げられる。
【0018】
また、酸化性化学薬品に対して長期に暴露したときに配合ポリマー組成物の水溶性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む配合ポリマー組成物も、本発明によって提供される。同様に、ビニルアルコールコポリマーの水溶液を提供し、そしてその水溶液に糖類成分を溶解させることによって、配合ポリマー組成物を作ることも提供される。
【0019】
本発明の別の面では、ポリマー溶解パケットと、その中に封入されている酸化性化学物質とを含む単位用量パッケージが含まれる。溶解パケットは、0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を有する75〜98重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類を有する2〜25重量%の糖類成分とを含むフィルムを有する。官能コモノマー単位および糖類成分は、(1)コモノマー単位を有していない同様なビニルアルコール樹脂で作られた同様なフィルムまたは(2)糖類成分を使用せずに作られた同様なフィルムのいずれかと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後に、フィルムの水溶性が増大するように選択され且つ含有される。
【0020】
本発明のもう一つ別の実施態様では、ポリマー溶解パケットと、その中に封入された塩素含有衛生剤とを含む水に塩素を提供するための単位用量パッケージが提供される。溶解パケットは、塩素含有酸化性化学薬品への暴露時にフィルムの溶解性を維持するのに有効である官能コモノマー単位を有するビニルアルコールコポリマーと、糖類成分とを有するフィルムを含む。好ましくは、単位用量パッケージにおける衛生剤は、トリクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、またはそれらの組み合わせである。
【0021】
本発明の更にもう一つ別の実施態様では、少なくとも75重量%のビニルアルコールコポリマーと、(1)水溶性糖類を有する糖類成分および(2)塩素捕捉剤から選択される1種以上の成分とを含むポリマー溶解パケットを含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージが提供される。単位用量パッケージは、ポリマー溶解パケット中に含まれる塩素化イソシアヌル酸化合物を含む。含有される場合、塩素捕捉剤はチオ硫酸塩であってもよい。
【0022】
本発明の更にもう一つ別の実施態様では、75〜98重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類を含む2〜25重量%の糖類成分との配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケットを含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージが提供される。次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、またはそれらの組み合わせから成る群より選択することができる塩素含有剤は、溶解パケット中に含まれる。
【0023】
本発明の別の実施態様は以下の通りである。
本発明の別の面では、0.5〜20モル%のスルホン酸官能化単位および/またはその塩を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類成分を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む、耐塩素性ポリマーフィルムが提供される。糖類成分は、少なくとも1種の単糖類または二糖類、好ましくはブドウ糖を含む。
【0024】
本発明のポリマーフィルムは、典型的には75〜98重量%、好ましくは85〜95重量%のビニルアルコールコポリマーと、2〜25重量%、好ましくは5〜15重量%の糖類成分を含む。いくつかの実施態様では、フィルムは、合わせて98重量%のビニルアルコールコポリマーと糖類成分とを含む。
【0025】
ビニルアルコールコポリマーは、典型的には、1〜8モル%の重合スルホン酸官能化モノマー単位および/またはその塩と、1〜20モル%の重合酢酸ビニル単位と、そして78〜98モル%の重合ビニルアルコール単位とを含む。他の適当な範囲としては、重合スルホン酸単位および/またはその塩が2〜5モル%、重合酢酸ビニル単位が1〜10モル%、そして重合ビニルアルコール単位が85〜95モル%であることが挙げられる。いくつかの実施態様では、スルホン酸官能化単位としては、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマーが挙げられる。
【0026】
本発明のフィルムは、追加の成分、例えば0.25〜5重量%の塩素捕捉剤を含むことができる。しかしながら、好ましくは、本発明のフィルムは、酸化性化学薬品に長期に暴露した後に、その溶解性を維持するフィルムの能力に悪影響を及ぼす可塑剤を実質的に含まない。
【0027】
本発明のフィルムは、塩素含有化学薬品に対して大幅に改善された抵抗性を示し、その結果として、本発明のフィルムは、トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対して少なくとも20日間暴露された後のスライドフレーム溶解性試験(slide frame solubility test)に従って測定されたときに約100秒未満の正規化溶解時間を有し、そして好ましくは、少なくとも30日間、少なくとも60日間のトリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対する暴露後に、また、少なくとも90日間のトリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対する暴露後でも、正規化溶解時間を有する。
【0028】
本発明のフィルムは、任意の適当な手段によって製造することができるが、特に、溶液キャスティング法、溶融押出法またはインフレートフィルム法によって製造することができる。
【0029】
本発明の別の実施態様では、塩素を水に与えるための単位用量パッケージが提供され、前記パッケージは、(1)スルホン酸モノマーおよび/またはスルホン酸モノマーの塩を有するビニルアルコールコポリマーと、(2)少なくとも1種の水溶性糖類を含む糖類成分との配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケットを含む。単位用量パッケージは、ポリマー溶解パケット中に封入される塩素含有衛生剤を含む。
【0030】
塩素含有衛生剤は、少なくとも約30%の有効塩素含量を有することができ、そして、約85〜95%の範囲で活性塩素含量を有する塩素化に特に適する。塩素含有衛生剤は、以下の成分:すなわち、次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸、その塩およびその水和物のうちの1種以上から選択できる。好ましくは、トリクロロイソシアヌル酸またはその塩またはその水和物が、単位用量パッケージに含まれる。塩素化剤は、任意の適当な形態、例えば顆粒剤、粉末、液体、ゲルまたは錠剤であってもよい。
【0031】
望ましい特徴の中で、本発明の耐塩素性フィルムは、(1)高度の水溶性;(2)長い貯蔵寿命を示し;そして、(3)変色が殆ど無い塩素パケットを提供する。
更になる他の特徴および利点は、以下の考察から明らかになる。
【0032】
図面の簡単な説明
以下、本発明を図面に則し詳細に説明する。
図1は比較フィルムおよび本発明フィルムに関するトリクロル溶解性試験の結果を示しているグラフであり;
図2はフィルム試料の水溶性を評価するために使用されたスライドフレーム試験装置の透視図であり;
図3は、次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの崩壊結果を示しているグラフであり、PVOH/AMPSフィルムが次亜塩素酸カルシウムに関して許容可能な崩壊時間を示していることが分かり;
図4は、PVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの溶解結果を示しており、PVOH/AMPSフィルムが次亜塩素酸カルシウムに関して許容可能な溶解時間を示していることが分かり;
図5は、両方のコポリマーグレードに関する許容可能な溶解性結果を示している、2つのPVOH/AMPSフィルムに関する崩壊および溶解の結果を示しているグラフであり;
図6は、化学薬剤に暴露される前のPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルであり;
図7は、顆粒状トリクロルイソシアヌル酸に対する3週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルであり、有意な酸化は明らかであり;
図8は、トリクロルイソシアヌル酸錠剤に対する7週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの内側および外側に関する赤外線スペクトルであり、フィルムの内側は酸化の兆候を示しており;
図9は、次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後における可塑剤を含む比較フィルムの溶解性結果を示しているグラフであり;そして
図10は、塩素除去剤を含む本発明フィルムの溶解性結果を示しているグラフである。
【0033】
発明の詳細な説明
以下、例示目的のみのための多くの実施態様と関連させて本発明を詳細に説明する。添付の請求の範囲に記載されている本発明の趣旨および範囲内における特定の実施態様に対する改良は、当業者には容易に了解される。
【0034】
本明細書で使用する用語は、定義によって修正または補足されない限り、その通常の意味を有する。「%」などは、モル%または体積%と規定されていなければ、重量%を意味している。化学用語に関して、本明細書とクレームの全体にわたって使用される特定の定義は以下の通りである。
【0035】
樹脂の「特性粘度(characteristic viscosity)」は、200℃で4%水溶液(w/w)で測定される。
「PVOH/AMPSコポリマー」、「PVOH−コ−AMPS」などの用語は、本明細書で説明してあるようにVAMおよびAMPSの加水分解コポリマーを意味している。
【0036】
「正規化崩壊時間」とは、以下に詳細に説明してあるスライドフレーム試験によって試験した場合に、フィルムのサンプルが崩壊するのに掛かる正規化時間を意味している。
正規化値は、2つのサンプルの平均であり、また、下式:
正規化崩壊時間=(平均崩壊時間)x(76μm/実際のフィルム厚μm)
によって、(フィルム厚が76μmではないとき)76μmのフィルム厚へと標準化される。
【0037】
「正規化溶解時間」は、下記のスライドフレーム試験において、フィルムサンプルが、完全に、すなわちフレーム上にフィルムの残留ストランドまたは粒子が全く残らずに溶解するのに掛かる正規化時間として定義される。正規化値は、2つのサンプルの平均であり、また、下式: 正規化溶解時間=(平均溶解時間)x(76μm/実際のフィルム厚μm)
によって、(フィルム厚が76μmではないとき)76μmのフィルム厚へと標準化される。
【0038】
本発明で有用な水溶性フィルム配合物は、ポリビニルアルコール樹脂成分および糖類成分および/または塩素除去成分を含む。フィルムで使用されるポリマー組成物は、主として、一般的にビニルアルコールと官能コモノマー単位とのコポリマーであるPVOH樹脂成分を含む。前記官能コモノマー単位は、酸化性化学薬品に暴露されたときに、フィルムの溶解性を安定化させるのに有効である。
【0039】
ビニルアルコール樹脂中の官能コモノマー単位は、酸化性化学薬品に暴露された後にフィルムの溶解性を保つ任意のモノマーを含むことができる。すなわち、官能コモノマー単位を有していない同様なビニルアルコール樹脂(重合度、加水分解度などが同様)から作られる同様なフィルムと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露後にフィルムに対して増大した溶解性を与えるように、前記官能コモノマー単位が選択される。官能コモノマー単位としては、親水性モノマー、例えばスルホン酸単位、カルボン酸単位、ビニルアミン単位、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、それらの塩、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。官能モノマーは、0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%または2〜6モル%の量でコポリマー中に存在することができる。
【0040】
スルホン酸官能化PVOH樹脂が最も好ましい。スルホン酸モノマー単位および/またはその塩としては、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルアクリレート、それらの塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。最も好ましくは、本明細書で「AMPS」と呼んでいる2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。遊離酸の塩を使用する場合、それは、特にナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩を含むことができる。AMPSのナトリウム塩は本明細書では「NaAMPS」と呼ぶ。
【0041】
いくつかの実施態様では、追加のコモノマー(すなわち、酢酸ビニルおよび官能コモノマー単位以外の他のコモノマー)は、最大約10モル%まで含むことができる。適当なコモノマーとしては、例えば(メタ)アクリレート;オレフィン、例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン;VeoVaタイプのモノマー(例えばVeoVa 10);およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、好ましくは、ビニルアルコールコポリマーは、VAMおよび官能コモノマー酸単位から98+%誘導される。
【0042】
当業において公知のように、酢酸ビニルコポリマーを重合させる様々な方法を使用することができる。官能モノマーがスルホン酸タイプの単位である場合、樹脂は、参照によりその内容を完全に本明細書に引用したものとする、Vicariに与えられた同時係属中の米国特許出願公開第2005/0222355号および第2005/0065272号、ならびに米国特許第6,818,709号に記載されているユニークな方法によって製造することができる。
【0043】
スルホン酸コモノマー単位を使用する場合、ビニルアルコールとスルホン酸成分とのけん化コポリマーは、例えば、約1〜約8モル%の重合スルホン酸成分またはその塩、約1〜約20モル%の重合VAM(PVAc)、および約75〜約98モル%の重合ビニルアルコール(PVOH)、好ましくは約2〜約4モル%の重合スルホン酸成分、約5〜約10モル%のPVAc、および約85〜約95モル%のPVOHを有することができる。
重合繰り返し単位の量は、C13NMR分析で一般的に定量される。コポリマーは、C13NMRによって示される例えば約70〜約99+%、好ましくは約80〜約95%の加水分解度を有することができ、また、例えば約2〜50cps、約3〜約30cps、好ましくは約7〜約10cpsの特性粘度によって示される相対分子量を有することができる。
【0044】
本発明における使用に適する市販のビニルアルコール/スルホン酸コポリマーとしては、Celanese Chemicals(テキサス州ダラス)VYTEK(商標)2012およびVYTEK(商標)2025が挙げられる。VYTEK(商標)2012およびVYTEK(商標)2025は、約3.5〜4モル%のAMPSモノマーを含むPVOH/AMPSコポリマーである。両方のグレードは、加水分解酢酸単位のモル%を基準とすると約98〜99%の加水分解度を有する。VYTEK(商標)2005、VYTEK(商標)2035またはVYTEK(商標)2045のような他のVYTEK(商標)樹脂も適し得る。
【0045】
水溶性フィルム配合物
本発明で使用される水溶性フィルム配合物は、一般的に、ビニルアルコールコポリマーと糖類成分を含む。糖類成分は、少なくとも1種の水溶性糖類を含む、すなわち、25℃において1リットルあたり少なくとも0.1モルの水溶性を有する。糖類成分としては、多糖、オリゴ糖、二糖類、単糖類、またはそれらの組み合わせが挙げられる。非限定的な例としては、グルコース(デキストロース)、ガラクトース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、マンノース、トレハロース、およびそれらの組み合わせが挙げられる。糖類成分は、好ましくは単糖類または二糖類であり、好ましくは結晶性であり;最も好ましくは糖類成分としてはブドウ糖が挙げられる。
【0046】
一般的に、本発明のフィルム配合物は、主としてビニルアルコール成分を含む。糖類成分は、1〜40重量%の量で存在できる。より典型的には、フィルム配合物は、約2〜25または5〜15重量%含む。
【0047】
更に、フィルムは、塩素除去剤を0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜2.5重量%の量で含むことができる。適当な塩素捕捉剤としては、チオ硫酸塩、例えばチオ硫酸ナトリウムが挙げられる。追加の塩素捕捉剤としては、それらの構造構築(structural construction)にしたがって4つの群に分けることができる次のポリマー:すなわち、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリアミンアミドおよびポリアクリルアミドが挙げられ、その中でも、特に好ましくはポリエチレンイミン、ポリアミンおよびポリアミンアミドである。他の塩素捕捉剤は、本明細書で亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヨウ化物、亜硝酸塩などのような還元材料、およびカルバミド酸塩、アスコルビン酸塩などのような酸化防止剤、そしてそれらの混合物から成る群より選択されるアニオンである。硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、塩化物、硼酸塩、燐酸塩、縮合燐酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、蟻酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩など、およびそれらの混合物のような従来の非塩素捕捉剤アニオンを、アンモニウムカチオンと一緒に使用できる。更なる例示的な塩素捕捉剤としては、硫酸アンモニウム(好ましい)、そして低揮発性の第一および第二アミン、例えばエタノールアミン、アミノ酸およびそれらの塩、ポリアミノ酸およびそれらの塩、脂肪アミン、グルコースアミンおよび他のアミノ化糖が挙げられる。具体例としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、サルコシン、グリシン、イミノ二酢酸、リジン、エチレンジアミン二酢酸、2,2,6,6−テトラメチルピペリノールおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリノンが挙げられる。本発明のいくつかの実施態様では、塩素捕捉剤は、糖類成分を有していないビニルアルコールコポリマーと一緒に含有させることができる。
【0048】
また他の成分も、本発明のフィルムに加えることができる。例えば、半量未満の可塑剤を含有させてもよい。本明細書において、「可塑剤」とは、本発明の糖類成分を含んでいない(糖類成分の含有はフィルムに関していくらかの可塑化効果を有することができる)PVOH樹脂用の可塑剤として一般的に使用される可塑剤のうちのいずれかを意味している。可塑剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペンタエリスリトール、またはグリセリンが挙げられる。しかしながら、ある種の可塑剤は、フィルムが塩素化イソシアヌル酸のような攻撃性酸化剤に暴露されると、フィルムの溶解性に関して実質的な負の効果を有する場合があることを本発明に関連して発見した;これらのタイプの可塑剤の例としてはグリセロールが挙げられる。而して、高度に酸化性の物質をパッケージするときには、本発明のフィルムは、好ましくは、酸化剤への暴露後にフィルムの溶解性に悪影響を及ぼす可塑剤を2重量%未満含み、そして、いくつかの実施態様では、フィルムは、これらのタイプの可塑剤を実質的に含有していない、すなわち前記可塑剤の含量は約0.5重量%未満である。この点に関して、本発明のフィルムは、塩素化衛生用化学薬品(chlorinated sanitizing chemicals)に暴露されたときにフィルムの溶解性を劣化させずに、可塑化されたPVOHフィルムの特性のうちの多くを示す、例えば低湿度環境における柔軟性および高いフィルム完全性を示すという点においても驚くべきものである。
【0049】
フィルム配合物は、半量未満で他の添加剤、例えば殺生物剤、充填剤、エキステンダー、ブロッキング防止剤、増摩剤、粘着防止剤、消泡剤、紫外線安定剤、滑剤、剥離剤、顔料、染料、ならびに当業において公知の任意の他の添加剤を含むこともできる。
【0050】
水溶性フィルムは、一般的に、少なくとも95重量%のビニルアルコールコポリマー/糖類の組み合わせを含み、そして好ましくは、少なくとも98重量%のコポリマー/糖類の組み合わせを含む。
【0051】
フィルムの製造
フィルム配合物の成分は、任意の適当な手段によって、フィルム作製前に、一緒にブレンドすることができる。好ましくは、糖類成分および/または塩素捕捉剤は、ビニルアルコールポリマーの水溶液中で溶解させ、そして一緒にブレンドする。
【0052】
本発明の水溶性フィルムを製造する方法は、特に限定されない。適当なフィルム形成法としては、フィルムキャスティング、湿式成膜、乾式成膜、フィルム押出、溶融フィルム形成、コーティングプロセスおよびインフレートフィルム法が挙げられる。
【0053】
本発明のフィルム配合物は、溶液キャスティング法に適する。フィルムの水溶液は、固形分約10〜30重量%で調製される。次いで、その溶液を、金属成形ベルト上の谷部に加え、そして、ドクターブレードによって、その溶液をベルト上で予め定められた厚さまで広げる。次いで、ベルトをオーブンに通して水を蒸発させ約6〜15%の含水率までフィルムを乾燥させる。望ましくは、ポリマーフィルムを、約10〜200μm、20〜150μm、または50〜100μmの厚さに二次加工する。
【0054】
フィルム用途
本発明のコポリマーによって製造された水溶性フィルムは、水溶性が利点となる任意の目的にとって有用である。先に説明したように、本発明のフィルムは、農薬、殺菌剤などで見出すことができる酸化性化学薬品の単位用量パッケージに特に適しており、そのパッケージ化された形態の化学薬品は、その内容物が水中に溶解または分散されるように水中に置かれる。それは、単位用量がすでにパッケージされているので、ユーザーが有害な化学薬品に直接触れる必要もなく、また、化学薬品を計量する必要もなく達成される。適当な酸化性化学薬品の非限定的な例としては、過酸化物、例えば過酸化バリウム、炭酸ナトリウム過酸化水素化物、過酸化カルシウム、過酸化水素、過酸化リチウム、過酸化マグネシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化亜鉛、および過酸化ナトリウム;過酸化ケトン、例えば過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、およびベンゾイルペルオキシド;硝酸塩、例えば硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸銀、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸第二銅、硝酸鉛、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ニッケルおよび硝酸グアニジン;亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム;クロム酸塩および二クロム酸塩、例えばニクロム酸カリウム、二クロム酸ナトリウム、および二クロム酸アンモニウム;過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウム;過硼酸塩、例えば過硼酸ナトリウム;過臭素酸塩および臭素酸塩、例えば臭素酸カリウムおよび臭素酸ナトリウム;過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、および過マンガン酸アンモニウム;塩素酸塩および過塩素酸塩、例えば塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸ナトリウム(一水和物)、塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、塩素酸亜鉛、塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムおよび塩素酸カリウム;過ヨウ素酸塩、例えば過ヨウ素酸ナトリウムおよび過ヨウ素酸カリウム;亜塩素酸塩および次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、および亜塩素酸ナトリウム;塩素化および/または臭素化されたイソシアヌル酸塩、例えばジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、およびトリクロロイソシアヌル酸;無機酸、例えば硝酸、クロム酸、および過塩素酸;過酸、例えばメタクロロペルオキシ安息香酸酸;臭素、塩素、ヨウ素およびフッ素;超酸化カリウム;前記酸化性化学薬品のいずれかの水和物;そして前記酸化性化学薬品のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0055】
本発明のフィルムは、プール、温泉および飲用水を消毒するために使用されるような衛生用化学薬品のための単位用量パッケージを製造するのに特に適している。衛生用化学薬品としては、水と接触すると次亜塩素酸を生成する塩素含有化合物が挙げられる。次亜塩素酸は有効な衛生剤であり、そして、塩素ガス(Cl2)に関連のある衛生用化学薬品によって生成され得る次亜塩素酸の量は「有効塩素分」と称する。衛生剤は、粉末、顆粒剤、錠剤、液体、ゲル、または任意の他の適当な形態として提供することができる。
衛生剤としては、次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、および次亜塩素酸リチウム;塩素化イソシアヌル酸、例えばジクロロイソシアヌル酸(「ジクロル」とも称する)およびトリクロロイソシアヌル酸(「トリクロル」とも称する)が挙げられる。衛生用化合物の塩および水和物も企図される。例えば、ジクロロイソシアヌル酸は、特にジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物として提供することができる。トリクロロイソシアヌル酸およびジクロロイソシアヌル酸の構造は以下の通りである。
【0056】
【化1】
【0057】
上記したように、従来の水溶性PVOHフィルムは、塩素化衛生剤と他の酸化的化学薬品の存在下では劣化する傾向がある。過剰な酸化によって、フィルムは、水不溶性になるので、単位用量パッケージ剤用には無効である。理論に束縛されたくないが、衛生剤によって生成される次亜塩素酸塩イオンは、PVOHコポリマーフィルム中のペンダント−OH部分を酸化してポリマー主鎖上でカルボニル基を生成すると考えられる。更に、衛生剤によって生成される塩酸は、ヒドロキシル基と反応してポリマー主鎖中に不飽和結合を生成させる場合があり、それによりフィルムが変色する。いずれにしても、ペンダント−OH基を除去すると、フィルムの水不溶性が増大する。これらの反応の概略図を、説明のために以下に示す:
【0058】
【化2】
【0059】
フィルムの溶解性は、次のスライドフレーム試験によって測定する。ガラスプレートへ7%水溶液をキャストし、重力によって平らにし、そして2〜7日かけて約6〜15%の含水率まで乾燥させることによってフィルムを調製する。ある量の溶液を前記プレートに加えて、約76μmの目標の厚さを有するフィルムを準備する。溶液中の水を蒸発させ、得られたフィルムを約2インチx4インチの矩形に切断する。次いで、その矩形を、半分に折り、そのフィルムの3つの端を、携帯ヒートシールガンを使用してヒートシールする。次いで、その得られたパウチを、15〜20gの粒状形態の化学薬品で満たし、そしてパウチの4つ目の端をヒートシールする。低密度ポリエチレンバッグ中に、その充填されたパウチを、青色のペーパータオル(脱色について調べるため)の間に並べて貯蔵する。1つのパウチを、t=0データ点のために、スライドフレーム溶解性試験(下記)で試験する。温度が約20〜250℃で変化するかもしれない、そして、相対湿度が約40%〜約70%で変化するかもしれない屋内周囲条件で貯蔵する。それらのパッケージを予め定めた時間貯蔵し、次いで、パッケージを開け、化学薬品を取り出す。フィルム厚を測定し、そして以下のスライドフレーム試験で溶解性について試験する。
【0060】
図2参照。フィルム10の2.3×3.4cmのサンプルをスライドフレーム20に取り付け、400mlの水で満たされた500mlビーカー30の中に配置する。そのビーカーを、電磁撹拌機40上に配置し、渦巻58が発生するように操作ノブ55によって設定された400回転/分の磁気撹拌棒50で水を撹拌する。水温は21℃+/−1℃に維持する。フレームは、撹拌水がフィルムを押すように、プラットホーム70によって支持されるクランプ60でビーカー中に固定する。フィルムは、膨らむかまたは波打ち始める。フィルムの膨らみが破裂したら、崩壊時間を記録する。崩壊後、フレームを水中にそのままにし、フィルムの残留している糸状のもの(string)が無くなり、且つフレーム上に残留しているフィルム粒子が無くなったら、総時間(崩壊時間を含む)として溶解時間を記録する。各測定に関して2つのサンプルの平均を求め、その値を、76μmと異なる場合は、76μmのフィルム厚へと正規化する。本明細書において、「溶解性試験」という用語は、上記アッセイを意味しており、パケットサンプルを、15〜20gの指示衛生剤によって調製し、指示時間量の間暴露する。一般的に、試験は、約90%の有効塩素を有するトリクロロイソシアヌル酸顆粒剤または3インチ錠剤を使用して行う。
【0061】
フィルム配合物における技術革新により、低レベルの有効塩素含量を有する衛生剤に関する上記の問題点は幾分改善された。例えば、図3(崩壊データ)および図4(溶解データ)は、約53%の有効塩素含量を有する次亜塩素酸カルシウムを使用する上記手順に従って試験したときの比較PVOHフィルムの溶解性結果を図示している。図から分かるように、PVOH/AMPSコポリマーから成るフィルムは、標準的なPVOHフィルム(スルホン単位無し)に比べて、次亜塩素酸カルシウムに対して、特に溶解時間に関して実質的により良好な抵抗性を有する。図5は、異なる特性粘度のコポリマーを使用している2種のPVOH/AMPSフィルムに関する溶解/崩壊データを示している。図5から分かるように、樹脂の両方のグレードは、次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後に、許容可能な溶解性を示し、特性粘度がより低いグレード((VYTEK(商標)2012))は、ほんのわずかに良好な結果を示した。
【0062】
これらの改良にも関わらず、高レベルの有効塩素含量を有する衛生剤によって、大部分のフィルムは、ほんの短い暴露時間後に不溶性となる。高いレベルの有効塩素含量を有する衛生剤を使用することは望ましいと考えられる。なぜならば、前記衛生剤は、より効果的な衛生剤であり、水に添加される化学薬品はより少ない量で済み、それだけ水のpHは影響を受けないかもしれないからである。いくつかの一般的な衛生剤に関する有効塩素含量を以下の表1に示す:
【0063】
【表1】
【0064】
本発明のフィルムはあらゆる衛生剤と一緒に使用できるが、驚くべきことに、本発明のフィルムは、塩素化イソシアヌル酸のような強酸化剤用の単位用量パッケージとして使用するのに特に適していることを見出した。高レベルの有効塩素を有することを除いて、残留イソシアヌル酸は、次亜塩素酸カルシウムと同じように、非常に水溶性であり、水の曇りまたはスケールを生じさせない。塩素化イソシアヌル酸は中毒性であるので、水溶性単位用量タイプのパッケージ中に包装することが実質的に必要であり、そしてそうすることにより、パッケージ全体が水中に配置され、そして溶解させるために放置される;それにより、ユーザーは、毒性化学薬品に直接触れなくても済み、また、廃棄されるパッケージ上に残っているかもしれない残留化学薬品と関連のある危険性と化学的塵に暴露されずに済む。
【0065】
トリクロロシアヌル酸は、極めて高い有効塩素含量を有し、且つ、次亜塩素酸塩化合物とは違って、紫外線によって分解しないので、衛生剤として使用するのに特に好ましい化合物である。更に、トリクロルは、比較的一定の速度で水中で崩壊し、プールのpHを極端に変えない。しかしながら、トリクロルは、従来のPVOH系フィルムに対して特に腐食性である。従来のPVOHフィルムに関するトリクロルの崩壊効果は、様々な比較フィルムのIRスペクトルを示している図6〜8に更に図示してある。図6は、トリクロルに対する暴露前のVYTEK(商標)2012のフィルムに関するIRスペクトルを示しており;様々な部分の吸収パターンが示されている。図7は、顆粒状トリクロルに3週間暴露された後のVYTEK(商標)2012のフィルムに関するIRスペクトルである。図7から分かるように、ポリマー中のヒドロキシル基に対応している3337cm−1の幅広いピークは、有意に減少している。3232cm−1および3469cm−1の2つの小さなピークは、ポリマー主鎖における二重結合の形成を示唆している。更に、1733cm−1の鋭いピークは、カルボニルの形成を示唆している。図8は、トリクロル錠剤に対して7週間暴露された後のVYTEK(商標)2012フィルムの内側および外側に関するIRが示してある。示されているように、フィルムの外側と比較して、パウチの内側には酸化の有意な証拠がある。更に、フィルムの外側が幾分か無傷のように見えたとしても、この場合、フィルムの内側における酸化は、実質的に充分であり、フィルムは許容可能な溶解性特性を示さなかった。
【0066】
トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対する長期の暴露後に、8つのフィルムを、上記したスライドフレーム溶解性試験で試験した。フィルムサンプルとしては、(1)未変性ポリビニルアルコール樹脂(Celvol 205;87〜90%加水分解;特性粘度5.2〜6.2)から成るフィルム;(2)Celvol 205と、100部のCelvolあたり10部の可塑剤とから成るフィルム;(3)Celvol 205と、100部のCelvolあたり10部のデキストロースとから成るフィルム;(4)PVOH/AMPSコポリマー(VYTEK(商標)2012)から成るフィルム;(5)VYTEK(商標)2012と、100部のVYTEKあたり10部の可塑剤とから成るフィルム;(6)米国特許第6,166,117号の実施例2に従って配合されたVYTEK(商標)2012を含むフィルム;(7)市販のスルホン酸変性PVOHフィルム(Kuraray HS−40);および(8)VYTEK(商標)2012と、100部のVYTEKあたり10部のデキストロースとから成るフィルムが挙げられる。以下の表2には、フィルム1〜8に関する崩壊時間および溶解時間が記録してある。
【0067】
【表2】
【0068】
上記の結果から得られた溶解データは図1にプロットしてある。図1から分かるように、100部のVYTEK(商標)2012と10部のデキストロースを含むフィルム(実施例8)は、トリクロルに対する長期暴露後に著しく改良された溶解性特性を示し、一般的に、20日後、30日後、そして60日後の暴露でも、100秒未満の崩壊時間および溶解時間を維持している。対照的に、PVOHフィルム単独、および10部の可塑剤を有する100部のPVOH樹脂は、トリクロルに対して1週間未満の暴露で劣化したことが分かる。PVOH/AMPSから成るフィルムは、13日という早い時期に不溶性になった。10部の可塑剤を有するPVOH/AMPSフィルムは、更に悪く、6日間で駄目になった。米国特許第6,166,117号の実施例2に従って配合された市販のスルホン酸変性PVOHフィルムであるKuraray HS−40も、充分に機能せず、このフィルムも6日で不溶性になった。
【0069】
糖類含有PVOH/AMPSフィルムの耐塩素性は、PVOH/AMPSポリマーから成るフィルムのトリクロルに対する抵抗性が不良であることを特に考慮すると、全く驚くべきことであり、また、次亜塩素酸カルシウムのような衛生剤に暴露されたときに許容可能な溶解性も維持する。また、トリクロルに暴露されるときに、PVOH可塑剤が、フィルム溶解性に関して重大な悪影響を及ぼすことも予期外である。なぜならば、図9(比較フィルム)に示してあるように、次亜塩素酸塩にPVOH/AMPSフィルムが暴露されるとき、PVOH可塑剤が、特に問題を引き起こすとは考えられないからである。
【0070】
面白いことに、10部のデキストロースを有する100部の標準PVOH樹脂(Celvol 205)を含むフィルムは、二番目に良い結果を示し、完全な不溶性を26日までは示さなかった。この種の配合物は、次亜塩素酸塩またはジクロロイソシアヌル酸化合物(トリクロルほど酸化性ではない)をパッケージするのに有用であり得ると考えられる。
【0071】
本発明のフィルムにおける塩素捕捉剤の効果を、図10に示した溶解性アッセイで評価した。100部のPVOH/AMPSコポリマー、1部のチオ硫酸ナトリウム、および10部のデキストロースを有するフィルムは、トリクロルに対する暴露後少なくとも27日間、良好な溶解性を示した。チオ硫酸ナトリウム化合物のみを有するPVOH/AMPSフィルムも、約4週間の暴露後に、許容可能な溶解性を与えるように見える。
【0072】
本発明のフィルムは、顆粒、粉末、液体または錠剤の形態の酸化性化学薬品の所定量をフィルムに加え、そして、酸化性化学薬品の周囲にフィルムを密封封止して、活性な化学薬剤を含む溶解パケットを製造することによって、単位用量パッキングにすることができる。
【0073】
スイミングプール用には、単位用量パッケージ中に含まれる塩素含有衛生剤は、1〜5ppmの遊離有効塩素(これは典型的には約5g〜400gの衛生剤に等しい)がプールに投入されるように計算することができる。塩素化化学薬品のガス抜きのために、溶解パケットに複数の小開口を具備させてパッケージ中における塩素ガスの蓄積を防止することができる。
【0074】
本発明の単位用量パックは、少なくとも約30%、好ましくは80〜95%の有効塩素含量を有する塩素含有衛生剤をパッケージするのに一般的に適している。トリクロロイソシアヌル酸をパッケージするために使用するとき、本発明のフィルムは、少なくとも2週間および好ましくは2ヶ月以上の間トリクロルと接触した後、驚くべき安定性を示し且つ一般的に水溶性を維持している。
【0075】
いくつかの実施例と関連させて本発明を説明してきたが、本発明の趣旨および範囲の内にあるそれらの実施例に関する改良は、当業者には容易に了解される。上記の検討、当業における関連知識、および発明の背景と詳細な説明に関連して上で検討した引例を考慮すれば、それらの開示の内容は、参照によって本明細書にすべて引用したものとされ、更なる説明は不要と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】比較フィルムおよび本発明フィルムに関するトリクロル溶解性試験の結果を示しているグラフである。
【図2】フィルム試料の水溶性を評価するために使用されたスライドフレーム試験装置の透視図である。
【図3】次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの崩壊結果を示しているグラフである。
【図4】PVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの溶解結果を示しているグラフである。
【図5】両方のコポリマーグレードに関する許容可能な溶解性結果を示している、2つのPVOH/AMPSフィルムに関する崩壊および溶解の結果を示しているグラフである。
【図6】化学薬剤に暴露される前のPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルである。
【図7】顆粒状トリクロルイソシアヌル酸に対する3週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルである。
【図8】トリクロルイソシアヌル酸錠剤に対する7週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの内側および外側に関する赤外線スペクトルである。
【図9】次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後における可塑剤を含む比較フィルムの溶解性結果を示しているグラフである。
【図10】塩素除去剤を含む本発明フィルムの溶解性結果を示しているグラフである。
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、攻撃性酸化性化学薬品に対して改良された抵抗性を示す可溶性ポリビニルアルコール(PVOH)系フィルムと、新規用途のための、例えばプール用薬品のための単位用量パッケージ(unit dose packaging)のための前記フィルムの使用とに関する。
【0002】
背景
水溶性単位用量パッケージ中に化学薬剤をパッケージすることは当業において公知であり、それにより、パッケージ用フィルムが溶解するときに水中に内容物が分散するように、パッケージが水中に投入される。水溶性単位用量パッケージは、例えば、農薬、漂白剤、洗濯用洗剤、工業薬品、プール用薬品などにおいて見出されるような危険薬品を使用する用途で有利である。水溶性パッケージにより、ユーザーは、危険な薬品に直接接触せずに、危険物質を使用することができる。更に、単位用量パッケージにより、各用量が予めパッケージされているので、ユーザーが化学薬品を計量する必要がない。
【0003】
ポリビニルアルコール(PVOH)フィルムは、良好な強度、耐衝撃性示し、且つ水に可溶性であるので、単位用量パッケージを作製するために当業において使用されてきた。
しかしながら、残念なことに、特定の化学薬品、例えば、特に酸化性化学薬品、酸性化学薬品、アルカリ性化学薬品、塩素含有物質、多価金属を有する塩、硼酸、ポリアミン、殺虫剤、除草剤に暴露されると、PVOHフィルムの安定性が急速に低下する。而して、この種の化学薬品を使用する用途では、単位用量製品の有効貯蔵寿命は、水中でのそれらの溶解性によって制限を受けるので、PVOHパッケージの使用は実用的ではない。
【0004】
PVOHフィルムの耐薬品性を改良する様々な方法は、従来技術に記載されている。
Fujiwaraらに与えられた”Water−Soluble Film and Package Using the Same”という名称の米国特許第6,956,070号には、単位用量パッケージとして使用するための水溶性ポリマーフィルムが記載されており、そしてそのポリマーフィルムは、1〜10モル%の量でN−ビニルアミドモノマー単位を含むポリビニルアルコールコポリマーを含む。更に、PVOHコポリマーは、カルボキシル官能基またはそのアルカリ金属塩も含むことができる。
【0005】
Isozakiらに与えられた”Water−Soluble Resin Composition and Water−Soluble Film”という名称の米国特許第6,608,121号には、単位用量パッケージのためのPVOH系フィルムが記載されており、そしてそのPVOH樹脂には、可塑剤および澱粉成分が配合されている。Isozakiらのフィルムは、良好な物理的特性を示し、且つ、アルカリ物質に長期に暴露された後でも許容可能な水溶性を有することが報告されている。
【0006】
Miyazakiに与えられた”Water−Soluble Film”という名称の米国特許第6,166,117号は、化学物質をパッケージするためのフィルムに関するものであり、そしてそのフィルムは、典型的にはアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホネート(AMPS)単位であるスルホン酸官能モノマー単位を含むポリビニルアルコールコポリマーを含む。更に、そのフィルムは、没食子酸または没食子酸の塩も含む。
Miyazakiによると、フィルムの水溶性は、酸性化学薬品、塩素含有化学薬品または農薬に長期に暴露されても低下しない。
【0007】
同様のアプローチは、Miyazkiによる”Agricultural Packaging Film”という名称のJapanese Abstract 7−118407に記載されており、そしてそこでは、スルホン酸含有モノマーで変性されているポリビニルアルコール樹脂を含む水溶性単位用量パッケージが開示されている。スルホン酸単位は、好ましくはAMPSモノマーまたはその塩であり、0.1〜20モル%の量でコポリマー中に含有させることができる。
【0008】
Verrallらに与えられた”Water−Soluble Copolymer Film Packet" という名称の米国特許第6,787,512号は、ビニルアルコールコポリマーを含む水溶性フィルムに関する。Verrallらのコポリマーは、カルボキシレート官能単位またはスルホネート官能単位を含むことができ、また、フィルムは、液体洗濯用洗剤のための単位用量パッケージとして有用であると記載されている。
【0009】
次亜塩素酸塩および強酸(harsh acid)をパッケージするためのスルホン酸変性PVOHフィルムの使用は、Vicariに与えられた”Vinyl Alcohol Copolymers for Use in Aqueous Dispersions and Melt Extruded Articles”という名称の同時係属中の米国特許出願第11/147,910号(米国特許出願公開第2005/0222355号)に記載されている。その出願によると、変性PVOHコポリマーは、ポリマー主鎖中に重合AMPSを高含量で含有させるユニークな方法にしたがって一般的に製造される。
【0010】
関連の他の参照文献としては、両方共にVerrallらに与えられた米国特許第6,821,590号および第7,005,168号が挙げられる。
上記の方法によって特定の化学薬品と一緒に使用するための改良フィルムが提供されるが、本出願人は、その変性フィルムの多くは、攻撃性酸化剤に暴露されたときに、特に塩素化イソシアヌル酸のような水を塩素化するのに有用な化学薬品に暴露されたときに溶解性が急激に低下することを発見した。これらのタイプの化合物に暴露されるとき、大部分のPVOHフィルム配合物(PVOHコポリマーを有する前記フィルムを含む)は、水溶性が有意に低下し、場合によっては、1週間以内に実質的に不溶性となる。このことは、2ヵ月以上の貯蔵寿命が望ましいかもしれない殆どの単位用量用途にとっては不適格である。而して、攻撃性酸化剤に長期に暴露された後でも、優れた水溶性を有するポリマーフィルムに関するニーズが存在する。更に、そのフィルムは、良好な強度特性を示さなければならず、また、時間の経過による変色に抵抗性であるべきである。
【0011】
発明の概要
而して、本発明は、酸化性化学薬品のための単位用量パッケージへと形成できるポリマーフィルム配合物を提供する。本発明のフィルムパッケージは、高度に酸化性の化学薬剤、例えば塩素含有プール用薬品との長期の接触後でも、優れた水溶性を保持する。本出願の図1に図示してあるように、本発明によって製造されたフィルムは、トリクロロイソシアヌル酸殺菌剤に対して驚くほど抵抗性であり、溶解性を2ヶ月以上の間示したのに対して、従来のフィルムは、1または2週間暴露されただけで不溶性になる。
【0012】
本発明の一つの面によって、酸化性化学薬品に対して抵抗性であるポリビニルアルコールフィルムが提供される。前記フィルムは、酸化性化学薬品に対する長期暴露(6日以上)後でもフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、そして更に、少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む。前記フィルム中のコモノマー単位は、官能コモノマー単位のいずれをも有しない同様なビニルアルコール樹脂(すなわち、同様な重合度および加水分解度)を使用して作られた同様な樹脂と比較して、酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に、前記フィルムが増大した水溶性を有するように選択することができ且つ増大した水溶性を有するような量で含有することができる。同様な暴露とは、実質的に同じ温度で、実質的に同じ酸化剤の実質的に同じ時間(濃度を含む)暴露することを意味している。官能モノマー単位および/または糖類を有していない同様なフィルムは、他の全ての点(厚さなど)で実質的に同じであって、官能コモノマーまたは糖類はポリビニルアルコールで置換される。
【0013】
好ましくは、糖類成分は、糖類成分を含まない同様なフィルムと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後にフィルムの水溶性が増大するように選択され且つフィルムの水溶性が増大するような量で含有される。更に好ましくは、官能コモノマー単位および糖類成分の両方は、(1)コモノマー単位を有していない同様なビニルアルコール樹脂で作られた同様なフィルムまたは(2)糖類成分を使用せずに作られた同様なフィルムのいずれかと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後に、フィルムの水溶性が増大するように選択され且つフィルムの水溶性が増大するような量で含有される。
【0014】
酸化性化学薬品は、次亜塩素酸塩、塩素化および/または臭素化イソシアヌル酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硼酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、過酸化物、過酸化ケトン、ペルオキシ酸、無機酸およびそれらの組み合わせから成る群より選択することができる。
【0015】
糖類成分としては、好ましくはオリゴ糖、二糖類、単糖類およびそれらの組み合わせが挙げられ、特に好ましくは単糖類および二糖類である。
官能コモノマーは、適当なモノマー、例えばスルホン酸単位、カルボン酸単位、ビニルアミン単位、アクリルアミド単位、ジメチルアクリルアミド単位、それらの塩、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0016】
ポリビニルアルコールフィルムは、好ましくは、75〜98重量%のビニルアルコールコポリマーおよび2〜25重量%の糖類成分を含む。
上記したように、本発明のフィルムは、強い酸化剤に暴露した後でも溶解性を保持する。好ましくは、少なくとも20日間、トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に暴露された後に、溶解性試験で試験したとき、フィルムは、100秒未満の正規化溶解時間(normalized dissolution time)を示す。
【0017】
本発明の別の実施態様では、酸化性化学薬品に抵抗性であるポリビニルアルコールフィルムが提供され、そのフィルムは、0.5〜20モル%のスルホン酸官能単位および/またはその塩を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、単糖類、二糖類およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の水溶性糖類成分を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む。スルホン酸官能化単位としては、好ましくは2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)モノマーおよび/またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマーが挙げられる。
【0018】
また、酸化性化学薬品に対して長期に暴露したときに配合ポリマー組成物の水溶性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む配合ポリマー組成物も、本発明によって提供される。同様に、ビニルアルコールコポリマーの水溶液を提供し、そしてその水溶液に糖類成分を溶解させることによって、配合ポリマー組成物を作ることも提供される。
【0019】
本発明の別の面では、ポリマー溶解パケットと、その中に封入されている酸化性化学物質とを含む単位用量パッケージが含まれる。溶解パケットは、0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を有する75〜98重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類を有する2〜25重量%の糖類成分とを含むフィルムを有する。官能コモノマー単位および糖類成分は、(1)コモノマー単位を有していない同様なビニルアルコール樹脂で作られた同様なフィルムまたは(2)糖類成分を使用せずに作られた同様なフィルムのいずれかと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後に、フィルムの水溶性が増大するように選択され且つ含有される。
【0020】
本発明のもう一つ別の実施態様では、ポリマー溶解パケットと、その中に封入された塩素含有衛生剤とを含む水に塩素を提供するための単位用量パッケージが提供される。溶解パケットは、塩素含有酸化性化学薬品への暴露時にフィルムの溶解性を維持するのに有効である官能コモノマー単位を有するビニルアルコールコポリマーと、糖類成分とを有するフィルムを含む。好ましくは、単位用量パッケージにおける衛生剤は、トリクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、またはそれらの組み合わせである。
【0021】
本発明の更にもう一つ別の実施態様では、少なくとも75重量%のビニルアルコールコポリマーと、(1)水溶性糖類を有する糖類成分および(2)塩素捕捉剤から選択される1種以上の成分とを含むポリマー溶解パケットを含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージが提供される。単位用量パッケージは、ポリマー溶解パケット中に含まれる塩素化イソシアヌル酸化合物を含む。含有される場合、塩素捕捉剤はチオ硫酸塩であってもよい。
【0022】
本発明の更にもう一つ別の実施態様では、75〜98重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類を含む2〜25重量%の糖類成分との配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケットを含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージが提供される。次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、またはそれらの組み合わせから成る群より選択することができる塩素含有剤は、溶解パケット中に含まれる。
【0023】
本発明の別の実施態様は以下の通りである。
本発明の別の面では、0.5〜20モル%のスルホン酸官能化単位および/またはその塩を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマーと、少なくとも1種の水溶性糖類成分を含む1〜40重量%の糖類成分とを含む、耐塩素性ポリマーフィルムが提供される。糖類成分は、少なくとも1種の単糖類または二糖類、好ましくはブドウ糖を含む。
【0024】
本発明のポリマーフィルムは、典型的には75〜98重量%、好ましくは85〜95重量%のビニルアルコールコポリマーと、2〜25重量%、好ましくは5〜15重量%の糖類成分を含む。いくつかの実施態様では、フィルムは、合わせて98重量%のビニルアルコールコポリマーと糖類成分とを含む。
【0025】
ビニルアルコールコポリマーは、典型的には、1〜8モル%の重合スルホン酸官能化モノマー単位および/またはその塩と、1〜20モル%の重合酢酸ビニル単位と、そして78〜98モル%の重合ビニルアルコール単位とを含む。他の適当な範囲としては、重合スルホン酸単位および/またはその塩が2〜5モル%、重合酢酸ビニル単位が1〜10モル%、そして重合ビニルアルコール単位が85〜95モル%であることが挙げられる。いくつかの実施態様では、スルホン酸官能化単位としては、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマーが挙げられる。
【0026】
本発明のフィルムは、追加の成分、例えば0.25〜5重量%の塩素捕捉剤を含むことができる。しかしながら、好ましくは、本発明のフィルムは、酸化性化学薬品に長期に暴露した後に、その溶解性を維持するフィルムの能力に悪影響を及ぼす可塑剤を実質的に含まない。
【0027】
本発明のフィルムは、塩素含有化学薬品に対して大幅に改善された抵抗性を示し、その結果として、本発明のフィルムは、トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対して少なくとも20日間暴露された後のスライドフレーム溶解性試験(slide frame solubility test)に従って測定されたときに約100秒未満の正規化溶解時間を有し、そして好ましくは、少なくとも30日間、少なくとも60日間のトリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対する暴露後に、また、少なくとも90日間のトリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対する暴露後でも、正規化溶解時間を有する。
【0028】
本発明のフィルムは、任意の適当な手段によって製造することができるが、特に、溶液キャスティング法、溶融押出法またはインフレートフィルム法によって製造することができる。
【0029】
本発明の別の実施態様では、塩素を水に与えるための単位用量パッケージが提供され、前記パッケージは、(1)スルホン酸モノマーおよび/またはスルホン酸モノマーの塩を有するビニルアルコールコポリマーと、(2)少なくとも1種の水溶性糖類を含む糖類成分との配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケットを含む。単位用量パッケージは、ポリマー溶解パケット中に封入される塩素含有衛生剤を含む。
【0030】
塩素含有衛生剤は、少なくとも約30%の有効塩素含量を有することができ、そして、約85〜95%の範囲で活性塩素含量を有する塩素化に特に適する。塩素含有衛生剤は、以下の成分:すなわち、次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸、その塩およびその水和物のうちの1種以上から選択できる。好ましくは、トリクロロイソシアヌル酸またはその塩またはその水和物が、単位用量パッケージに含まれる。塩素化剤は、任意の適当な形態、例えば顆粒剤、粉末、液体、ゲルまたは錠剤であってもよい。
【0031】
望ましい特徴の中で、本発明の耐塩素性フィルムは、(1)高度の水溶性;(2)長い貯蔵寿命を示し;そして、(3)変色が殆ど無い塩素パケットを提供する。
更になる他の特徴および利点は、以下の考察から明らかになる。
【0032】
図面の簡単な説明
以下、本発明を図面に則し詳細に説明する。
図1は比較フィルムおよび本発明フィルムに関するトリクロル溶解性試験の結果を示しているグラフであり;
図2はフィルム試料の水溶性を評価するために使用されたスライドフレーム試験装置の透視図であり;
図3は、次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの崩壊結果を示しているグラフであり、PVOH/AMPSフィルムが次亜塩素酸カルシウムに関して許容可能な崩壊時間を示していることが分かり;
図4は、PVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの溶解結果を示しており、PVOH/AMPSフィルムが次亜塩素酸カルシウムに関して許容可能な溶解時間を示していることが分かり;
図5は、両方のコポリマーグレードに関する許容可能な溶解性結果を示している、2つのPVOH/AMPSフィルムに関する崩壊および溶解の結果を示しているグラフであり;
図6は、化学薬剤に暴露される前のPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルであり;
図7は、顆粒状トリクロルイソシアヌル酸に対する3週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルであり、有意な酸化は明らかであり;
図8は、トリクロルイソシアヌル酸錠剤に対する7週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの内側および外側に関する赤外線スペクトルであり、フィルムの内側は酸化の兆候を示しており;
図9は、次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後における可塑剤を含む比較フィルムの溶解性結果を示しているグラフであり;そして
図10は、塩素除去剤を含む本発明フィルムの溶解性結果を示しているグラフである。
【0033】
発明の詳細な説明
以下、例示目的のみのための多くの実施態様と関連させて本発明を詳細に説明する。添付の請求の範囲に記載されている本発明の趣旨および範囲内における特定の実施態様に対する改良は、当業者には容易に了解される。
【0034】
本明細書で使用する用語は、定義によって修正または補足されない限り、その通常の意味を有する。「%」などは、モル%または体積%と規定されていなければ、重量%を意味している。化学用語に関して、本明細書とクレームの全体にわたって使用される特定の定義は以下の通りである。
【0035】
樹脂の「特性粘度(characteristic viscosity)」は、200℃で4%水溶液(w/w)で測定される。
「PVOH/AMPSコポリマー」、「PVOH−コ−AMPS」などの用語は、本明細書で説明してあるようにVAMおよびAMPSの加水分解コポリマーを意味している。
【0036】
「正規化崩壊時間」とは、以下に詳細に説明してあるスライドフレーム試験によって試験した場合に、フィルムのサンプルが崩壊するのに掛かる正規化時間を意味している。
正規化値は、2つのサンプルの平均であり、また、下式:
正規化崩壊時間=(平均崩壊時間)x(76μm/実際のフィルム厚μm)
によって、(フィルム厚が76μmではないとき)76μmのフィルム厚へと標準化される。
【0037】
「正規化溶解時間」は、下記のスライドフレーム試験において、フィルムサンプルが、完全に、すなわちフレーム上にフィルムの残留ストランドまたは粒子が全く残らずに溶解するのに掛かる正規化時間として定義される。正規化値は、2つのサンプルの平均であり、また、下式: 正規化溶解時間=(平均溶解時間)x(76μm/実際のフィルム厚μm)
によって、(フィルム厚が76μmではないとき)76μmのフィルム厚へと標準化される。
【0038】
本発明で有用な水溶性フィルム配合物は、ポリビニルアルコール樹脂成分および糖類成分および/または塩素除去成分を含む。フィルムで使用されるポリマー組成物は、主として、一般的にビニルアルコールと官能コモノマー単位とのコポリマーであるPVOH樹脂成分を含む。前記官能コモノマー単位は、酸化性化学薬品に暴露されたときに、フィルムの溶解性を安定化させるのに有効である。
【0039】
ビニルアルコール樹脂中の官能コモノマー単位は、酸化性化学薬品に暴露された後にフィルムの溶解性を保つ任意のモノマーを含むことができる。すなわち、官能コモノマー単位を有していない同様なビニルアルコール樹脂(重合度、加水分解度などが同様)から作られる同様なフィルムと比較して、酸化性化学薬品に対する同様な暴露後にフィルムに対して増大した溶解性を与えるように、前記官能コモノマー単位が選択される。官能コモノマー単位としては、親水性モノマー、例えばスルホン酸単位、カルボン酸単位、ビニルアミン単位、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、それらの塩、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。官能モノマーは、0.5〜20モル%、好ましくは1〜10モル%または2〜6モル%の量でコポリマー中に存在することができる。
【0040】
スルホン酸官能化PVOH樹脂が最も好ましい。スルホン酸モノマー単位および/またはその塩としては、例えばビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルアクリレート、それらの塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。最も好ましくは、本明細書で「AMPS」と呼んでいる2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸である。遊離酸の塩を使用する場合、それは、特にナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩を含むことができる。AMPSのナトリウム塩は本明細書では「NaAMPS」と呼ぶ。
【0041】
いくつかの実施態様では、追加のコモノマー(すなわち、酢酸ビニルおよび官能コモノマー単位以外の他のコモノマー)は、最大約10モル%まで含むことができる。適当なコモノマーとしては、例えば(メタ)アクリレート;オレフィン、例えばエチレン、プロピレンまたはブチレン;VeoVaタイプのモノマー(例えばVeoVa 10);およびそれらの組み合わせが挙げられる。しかしながら、好ましくは、ビニルアルコールコポリマーは、VAMおよび官能コモノマー酸単位から98+%誘導される。
【0042】
当業において公知のように、酢酸ビニルコポリマーを重合させる様々な方法を使用することができる。官能モノマーがスルホン酸タイプの単位である場合、樹脂は、参照によりその内容を完全に本明細書に引用したものとする、Vicariに与えられた同時係属中の米国特許出願公開第2005/0222355号および第2005/0065272号、ならびに米国特許第6,818,709号に記載されているユニークな方法によって製造することができる。
【0043】
スルホン酸コモノマー単位を使用する場合、ビニルアルコールとスルホン酸成分とのけん化コポリマーは、例えば、約1〜約8モル%の重合スルホン酸成分またはその塩、約1〜約20モル%の重合VAM(PVAc)、および約75〜約98モル%の重合ビニルアルコール(PVOH)、好ましくは約2〜約4モル%の重合スルホン酸成分、約5〜約10モル%のPVAc、および約85〜約95モル%のPVOHを有することができる。
重合繰り返し単位の量は、C13NMR分析で一般的に定量される。コポリマーは、C13NMRによって示される例えば約70〜約99+%、好ましくは約80〜約95%の加水分解度を有することができ、また、例えば約2〜50cps、約3〜約30cps、好ましくは約7〜約10cpsの特性粘度によって示される相対分子量を有することができる。
【0044】
本発明における使用に適する市販のビニルアルコール/スルホン酸コポリマーとしては、Celanese Chemicals(テキサス州ダラス)VYTEK(商標)2012およびVYTEK(商標)2025が挙げられる。VYTEK(商標)2012およびVYTEK(商標)2025は、約3.5〜4モル%のAMPSモノマーを含むPVOH/AMPSコポリマーである。両方のグレードは、加水分解酢酸単位のモル%を基準とすると約98〜99%の加水分解度を有する。VYTEK(商標)2005、VYTEK(商標)2035またはVYTEK(商標)2045のような他のVYTEK(商標)樹脂も適し得る。
【0045】
水溶性フィルム配合物
本発明で使用される水溶性フィルム配合物は、一般的に、ビニルアルコールコポリマーと糖類成分を含む。糖類成分は、少なくとも1種の水溶性糖類を含む、すなわち、25℃において1リットルあたり少なくとも0.1モルの水溶性を有する。糖類成分としては、多糖、オリゴ糖、二糖類、単糖類、またはそれらの組み合わせが挙げられる。非限定的な例としては、グルコース(デキストロース)、ガラクトース、スクロース、フルクトース、ラクトース、マルトース、マンノース、トレハロース、およびそれらの組み合わせが挙げられる。糖類成分は、好ましくは単糖類または二糖類であり、好ましくは結晶性であり;最も好ましくは糖類成分としてはブドウ糖が挙げられる。
【0046】
一般的に、本発明のフィルム配合物は、主としてビニルアルコール成分を含む。糖類成分は、1〜40重量%の量で存在できる。より典型的には、フィルム配合物は、約2〜25または5〜15重量%含む。
【0047】
更に、フィルムは、塩素除去剤を0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜2.5重量%の量で含むことができる。適当な塩素捕捉剤としては、チオ硫酸塩、例えばチオ硫酸ナトリウムが挙げられる。追加の塩素捕捉剤としては、それらの構造構築(structural construction)にしたがって4つの群に分けることができる次のポリマー:すなわち、ポリエチレンイミン、ポリアミン、ポリアミンアミドおよびポリアクリルアミドが挙げられ、その中でも、特に好ましくはポリエチレンイミン、ポリアミンおよびポリアミンアミドである。他の塩素捕捉剤は、本明細書で亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヨウ化物、亜硝酸塩などのような還元材料、およびカルバミド酸塩、アスコルビン酸塩などのような酸化防止剤、そしてそれらの混合物から成る群より選択されるアニオンである。硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、硝酸塩、塩化物、硼酸塩、燐酸塩、縮合燐酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、蟻酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩など、およびそれらの混合物のような従来の非塩素捕捉剤アニオンを、アンモニウムカチオンと一緒に使用できる。更なる例示的な塩素捕捉剤としては、硫酸アンモニウム(好ましい)、そして低揮発性の第一および第二アミン、例えばエタノールアミン、アミノ酸およびそれらの塩、ポリアミノ酸およびそれらの塩、脂肪アミン、グルコースアミンおよび他のアミノ化糖が挙げられる。具体例としては、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、サルコシン、グリシン、イミノ二酢酸、リジン、エチレンジアミン二酢酸、2,2,6,6−テトラメチルピペリノールおよび2,2,6,6−テトラメチルピペリノンが挙げられる。本発明のいくつかの実施態様では、塩素捕捉剤は、糖類成分を有していないビニルアルコールコポリマーと一緒に含有させることができる。
【0048】
また他の成分も、本発明のフィルムに加えることができる。例えば、半量未満の可塑剤を含有させてもよい。本明細書において、「可塑剤」とは、本発明の糖類成分を含んでいない(糖類成分の含有はフィルムに関していくらかの可塑化効果を有することができる)PVOH樹脂用の可塑剤として一般的に使用される可塑剤のうちのいずれかを意味している。可塑剤の具体的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペンタエリスリトール、またはグリセリンが挙げられる。しかしながら、ある種の可塑剤は、フィルムが塩素化イソシアヌル酸のような攻撃性酸化剤に暴露されると、フィルムの溶解性に関して実質的な負の効果を有する場合があることを本発明に関連して発見した;これらのタイプの可塑剤の例としてはグリセロールが挙げられる。而して、高度に酸化性の物質をパッケージするときには、本発明のフィルムは、好ましくは、酸化剤への暴露後にフィルムの溶解性に悪影響を及ぼす可塑剤を2重量%未満含み、そして、いくつかの実施態様では、フィルムは、これらのタイプの可塑剤を実質的に含有していない、すなわち前記可塑剤の含量は約0.5重量%未満である。この点に関して、本発明のフィルムは、塩素化衛生用化学薬品(chlorinated sanitizing chemicals)に暴露されたときにフィルムの溶解性を劣化させずに、可塑化されたPVOHフィルムの特性のうちの多くを示す、例えば低湿度環境における柔軟性および高いフィルム完全性を示すという点においても驚くべきものである。
【0049】
フィルム配合物は、半量未満で他の添加剤、例えば殺生物剤、充填剤、エキステンダー、ブロッキング防止剤、増摩剤、粘着防止剤、消泡剤、紫外線安定剤、滑剤、剥離剤、顔料、染料、ならびに当業において公知の任意の他の添加剤を含むこともできる。
【0050】
水溶性フィルムは、一般的に、少なくとも95重量%のビニルアルコールコポリマー/糖類の組み合わせを含み、そして好ましくは、少なくとも98重量%のコポリマー/糖類の組み合わせを含む。
【0051】
フィルムの製造
フィルム配合物の成分は、任意の適当な手段によって、フィルム作製前に、一緒にブレンドすることができる。好ましくは、糖類成分および/または塩素捕捉剤は、ビニルアルコールポリマーの水溶液中で溶解させ、そして一緒にブレンドする。
【0052】
本発明の水溶性フィルムを製造する方法は、特に限定されない。適当なフィルム形成法としては、フィルムキャスティング、湿式成膜、乾式成膜、フィルム押出、溶融フィルム形成、コーティングプロセスおよびインフレートフィルム法が挙げられる。
【0053】
本発明のフィルム配合物は、溶液キャスティング法に適する。フィルムの水溶液は、固形分約10〜30重量%で調製される。次いで、その溶液を、金属成形ベルト上の谷部に加え、そして、ドクターブレードによって、その溶液をベルト上で予め定められた厚さまで広げる。次いで、ベルトをオーブンに通して水を蒸発させ約6〜15%の含水率までフィルムを乾燥させる。望ましくは、ポリマーフィルムを、約10〜200μm、20〜150μm、または50〜100μmの厚さに二次加工する。
【0054】
フィルム用途
本発明のコポリマーによって製造された水溶性フィルムは、水溶性が利点となる任意の目的にとって有用である。先に説明したように、本発明のフィルムは、農薬、殺菌剤などで見出すことができる酸化性化学薬品の単位用量パッケージに特に適しており、そのパッケージ化された形態の化学薬品は、その内容物が水中に溶解または分散されるように水中に置かれる。それは、単位用量がすでにパッケージされているので、ユーザーが有害な化学薬品に直接触れる必要もなく、また、化学薬品を計量する必要もなく達成される。適当な酸化性化学薬品の非限定的な例としては、過酸化物、例えば過酸化バリウム、炭酸ナトリウム過酸化水素化物、過酸化カルシウム、過酸化水素、過酸化リチウム、過酸化マグネシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化亜鉛、および過酸化ナトリウム;過酸化ケトン、例えば過酸化アセトン、メチルエチルケトンペルオキシド、およびベンゾイルペルオキシド;硝酸塩、例えば硝酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸銀、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸第二銅、硝酸鉛、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸ニッケルおよび硝酸グアニジン;亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウム;クロム酸塩および二クロム酸塩、例えばニクロム酸カリウム、二クロム酸ナトリウム、および二クロム酸アンモニウム;過硫酸塩、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸ナトリウム;過硼酸塩、例えば過硼酸ナトリウム;過臭素酸塩および臭素酸塩、例えば臭素酸カリウムおよび臭素酸ナトリウム;過マンガン酸塩、例えば過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、および過マンガン酸アンモニウム;塩素酸塩および過塩素酸塩、例えば塩素酸バリウム、塩素酸カルシウム、過塩素酸ナトリウム(一水和物)、塩素酸ストロンチウム、過塩素酸マグネシウム、塩素酸亜鉛、塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウムおよび塩素酸カリウム;過ヨウ素酸塩、例えば過ヨウ素酸ナトリウムおよび過ヨウ素酸カリウム;亜塩素酸塩および次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸リチウム、次亜塩素酸カルシウム、および亜塩素酸ナトリウム;塩素化および/または臭素化されたイソシアヌル酸塩、例えばジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、およびトリクロロイソシアヌル酸;無機酸、例えば硝酸、クロム酸、および過塩素酸;過酸、例えばメタクロロペルオキシ安息香酸酸;臭素、塩素、ヨウ素およびフッ素;超酸化カリウム;前記酸化性化学薬品のいずれかの水和物;そして前記酸化性化学薬品のいずれかの組み合わせが挙げられる。
【0055】
本発明のフィルムは、プール、温泉および飲用水を消毒するために使用されるような衛生用化学薬品のための単位用量パッケージを製造するのに特に適している。衛生用化学薬品としては、水と接触すると次亜塩素酸を生成する塩素含有化合物が挙げられる。次亜塩素酸は有効な衛生剤であり、そして、塩素ガス(Cl2)に関連のある衛生用化学薬品によって生成され得る次亜塩素酸の量は「有効塩素分」と称する。衛生剤は、粉末、顆粒剤、錠剤、液体、ゲル、または任意の他の適当な形態として提供することができる。
衛生剤としては、次亜塩素酸塩、例えば次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、および次亜塩素酸リチウム;塩素化イソシアヌル酸、例えばジクロロイソシアヌル酸(「ジクロル」とも称する)およびトリクロロイソシアヌル酸(「トリクロル」とも称する)が挙げられる。衛生用化合物の塩および水和物も企図される。例えば、ジクロロイソシアヌル酸は、特にジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム二水和物として提供することができる。トリクロロイソシアヌル酸およびジクロロイソシアヌル酸の構造は以下の通りである。
【0056】
【化1】
【0057】
上記したように、従来の水溶性PVOHフィルムは、塩素化衛生剤と他の酸化的化学薬品の存在下では劣化する傾向がある。過剰な酸化によって、フィルムは、水不溶性になるので、単位用量パッケージ剤用には無効である。理論に束縛されたくないが、衛生剤によって生成される次亜塩素酸塩イオンは、PVOHコポリマーフィルム中のペンダント−OH部分を酸化してポリマー主鎖上でカルボニル基を生成すると考えられる。更に、衛生剤によって生成される塩酸は、ヒドロキシル基と反応してポリマー主鎖中に不飽和結合を生成させる場合があり、それによりフィルムが変色する。いずれにしても、ペンダント−OH基を除去すると、フィルムの水不溶性が増大する。これらの反応の概略図を、説明のために以下に示す:
【0058】
【化2】
【0059】
フィルムの溶解性は、次のスライドフレーム試験によって測定する。ガラスプレートへ7%水溶液をキャストし、重力によって平らにし、そして2〜7日かけて約6〜15%の含水率まで乾燥させることによってフィルムを調製する。ある量の溶液を前記プレートに加えて、約76μmの目標の厚さを有するフィルムを準備する。溶液中の水を蒸発させ、得られたフィルムを約2インチx4インチの矩形に切断する。次いで、その矩形を、半分に折り、そのフィルムの3つの端を、携帯ヒートシールガンを使用してヒートシールする。次いで、その得られたパウチを、15〜20gの粒状形態の化学薬品で満たし、そしてパウチの4つ目の端をヒートシールする。低密度ポリエチレンバッグ中に、その充填されたパウチを、青色のペーパータオル(脱色について調べるため)の間に並べて貯蔵する。1つのパウチを、t=0データ点のために、スライドフレーム溶解性試験(下記)で試験する。温度が約20〜250℃で変化するかもしれない、そして、相対湿度が約40%〜約70%で変化するかもしれない屋内周囲条件で貯蔵する。それらのパッケージを予め定めた時間貯蔵し、次いで、パッケージを開け、化学薬品を取り出す。フィルム厚を測定し、そして以下のスライドフレーム試験で溶解性について試験する。
【0060】
図2参照。フィルム10の2.3×3.4cmのサンプルをスライドフレーム20に取り付け、400mlの水で満たされた500mlビーカー30の中に配置する。そのビーカーを、電磁撹拌機40上に配置し、渦巻58が発生するように操作ノブ55によって設定された400回転/分の磁気撹拌棒50で水を撹拌する。水温は21℃+/−1℃に維持する。フレームは、撹拌水がフィルムを押すように、プラットホーム70によって支持されるクランプ60でビーカー中に固定する。フィルムは、膨らむかまたは波打ち始める。フィルムの膨らみが破裂したら、崩壊時間を記録する。崩壊後、フレームを水中にそのままにし、フィルムの残留している糸状のもの(string)が無くなり、且つフレーム上に残留しているフィルム粒子が無くなったら、総時間(崩壊時間を含む)として溶解時間を記録する。各測定に関して2つのサンプルの平均を求め、その値を、76μmと異なる場合は、76μmのフィルム厚へと正規化する。本明細書において、「溶解性試験」という用語は、上記アッセイを意味しており、パケットサンプルを、15〜20gの指示衛生剤によって調製し、指示時間量の間暴露する。一般的に、試験は、約90%の有効塩素を有するトリクロロイソシアヌル酸顆粒剤または3インチ錠剤を使用して行う。
【0061】
フィルム配合物における技術革新により、低レベルの有効塩素含量を有する衛生剤に関する上記の問題点は幾分改善された。例えば、図3(崩壊データ)および図4(溶解データ)は、約53%の有効塩素含量を有する次亜塩素酸カルシウムを使用する上記手順に従って試験したときの比較PVOHフィルムの溶解性結果を図示している。図から分かるように、PVOH/AMPSコポリマーから成るフィルムは、標準的なPVOHフィルム(スルホン単位無し)に比べて、次亜塩素酸カルシウムに対して、特に溶解時間に関して実質的により良好な抵抗性を有する。図5は、異なる特性粘度のコポリマーを使用している2種のPVOH/AMPSフィルムに関する溶解/崩壊データを示している。図5から分かるように、樹脂の両方のグレードは、次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後に、許容可能な溶解性を示し、特性粘度がより低いグレード((VYTEK(商標)2012))は、ほんのわずかに良好な結果を示した。
【0062】
これらの改良にも関わらず、高レベルの有効塩素含量を有する衛生剤によって、大部分のフィルムは、ほんの短い暴露時間後に不溶性となる。高いレベルの有効塩素含量を有する衛生剤を使用することは望ましいと考えられる。なぜならば、前記衛生剤は、より効果的な衛生剤であり、水に添加される化学薬品はより少ない量で済み、それだけ水のpHは影響を受けないかもしれないからである。いくつかの一般的な衛生剤に関する有効塩素含量を以下の表1に示す:
【0063】
【表1】
【0064】
本発明のフィルムはあらゆる衛生剤と一緒に使用できるが、驚くべきことに、本発明のフィルムは、塩素化イソシアヌル酸のような強酸化剤用の単位用量パッケージとして使用するのに特に適していることを見出した。高レベルの有効塩素を有することを除いて、残留イソシアヌル酸は、次亜塩素酸カルシウムと同じように、非常に水溶性であり、水の曇りまたはスケールを生じさせない。塩素化イソシアヌル酸は中毒性であるので、水溶性単位用量タイプのパッケージ中に包装することが実質的に必要であり、そしてそうすることにより、パッケージ全体が水中に配置され、そして溶解させるために放置される;それにより、ユーザーは、毒性化学薬品に直接触れなくても済み、また、廃棄されるパッケージ上に残っているかもしれない残留化学薬品と関連のある危険性と化学的塵に暴露されずに済む。
【0065】
トリクロロシアヌル酸は、極めて高い有効塩素含量を有し、且つ、次亜塩素酸塩化合物とは違って、紫外線によって分解しないので、衛生剤として使用するのに特に好ましい化合物である。更に、トリクロルは、比較的一定の速度で水中で崩壊し、プールのpHを極端に変えない。しかしながら、トリクロルは、従来のPVOH系フィルムに対して特に腐食性である。従来のPVOHフィルムに関するトリクロルの崩壊効果は、様々な比較フィルムのIRスペクトルを示している図6〜8に更に図示してある。図6は、トリクロルに対する暴露前のVYTEK(商標)2012のフィルムに関するIRスペクトルを示しており;様々な部分の吸収パターンが示されている。図7は、顆粒状トリクロルに3週間暴露された後のVYTEK(商標)2012のフィルムに関するIRスペクトルである。図7から分かるように、ポリマー中のヒドロキシル基に対応している3337cm−1の幅広いピークは、有意に減少している。3232cm−1および3469cm−1の2つの小さなピークは、ポリマー主鎖における二重結合の形成を示唆している。更に、1733cm−1の鋭いピークは、カルボニルの形成を示唆している。図8は、トリクロル錠剤に対して7週間暴露された後のVYTEK(商標)2012フィルムの内側および外側に関するIRが示してある。示されているように、フィルムの外側と比較して、パウチの内側には酸化の有意な証拠がある。更に、フィルムの外側が幾分か無傷のように見えたとしても、この場合、フィルムの内側における酸化は、実質的に充分であり、フィルムは許容可能な溶解性特性を示さなかった。
【0066】
トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に対する長期の暴露後に、8つのフィルムを、上記したスライドフレーム溶解性試験で試験した。フィルムサンプルとしては、(1)未変性ポリビニルアルコール樹脂(Celvol 205;87〜90%加水分解;特性粘度5.2〜6.2)から成るフィルム;(2)Celvol 205と、100部のCelvolあたり10部の可塑剤とから成るフィルム;(3)Celvol 205と、100部のCelvolあたり10部のデキストロースとから成るフィルム;(4)PVOH/AMPSコポリマー(VYTEK(商標)2012)から成るフィルム;(5)VYTEK(商標)2012と、100部のVYTEKあたり10部の可塑剤とから成るフィルム;(6)米国特許第6,166,117号の実施例2に従って配合されたVYTEK(商標)2012を含むフィルム;(7)市販のスルホン酸変性PVOHフィルム(Kuraray HS−40);および(8)VYTEK(商標)2012と、100部のVYTEKあたり10部のデキストロースとから成るフィルムが挙げられる。以下の表2には、フィルム1〜8に関する崩壊時間および溶解時間が記録してある。
【0067】
【表2】
【0068】
上記の結果から得られた溶解データは図1にプロットしてある。図1から分かるように、100部のVYTEK(商標)2012と10部のデキストロースを含むフィルム(実施例8)は、トリクロルに対する長期暴露後に著しく改良された溶解性特性を示し、一般的に、20日後、30日後、そして60日後の暴露でも、100秒未満の崩壊時間および溶解時間を維持している。対照的に、PVOHフィルム単独、および10部の可塑剤を有する100部のPVOH樹脂は、トリクロルに対して1週間未満の暴露で劣化したことが分かる。PVOH/AMPSから成るフィルムは、13日という早い時期に不溶性になった。10部の可塑剤を有するPVOH/AMPSフィルムは、更に悪く、6日間で駄目になった。米国特許第6,166,117号の実施例2に従って配合された市販のスルホン酸変性PVOHフィルムであるKuraray HS−40も、充分に機能せず、このフィルムも6日で不溶性になった。
【0069】
糖類含有PVOH/AMPSフィルムの耐塩素性は、PVOH/AMPSポリマーから成るフィルムのトリクロルに対する抵抗性が不良であることを特に考慮すると、全く驚くべきことであり、また、次亜塩素酸カルシウムのような衛生剤に暴露されたときに許容可能な溶解性も維持する。また、トリクロルに暴露されるときに、PVOH可塑剤が、フィルム溶解性に関して重大な悪影響を及ぼすことも予期外である。なぜならば、図9(比較フィルム)に示してあるように、次亜塩素酸塩にPVOH/AMPSフィルムが暴露されるとき、PVOH可塑剤が、特に問題を引き起こすとは考えられないからである。
【0070】
面白いことに、10部のデキストロースを有する100部の標準PVOH樹脂(Celvol 205)を含むフィルムは、二番目に良い結果を示し、完全な不溶性を26日までは示さなかった。この種の配合物は、次亜塩素酸塩またはジクロロイソシアヌル酸化合物(トリクロルほど酸化性ではない)をパッケージするのに有用であり得ると考えられる。
【0071】
本発明のフィルムにおける塩素捕捉剤の効果を、図10に示した溶解性アッセイで評価した。100部のPVOH/AMPSコポリマー、1部のチオ硫酸ナトリウム、および10部のデキストロースを有するフィルムは、トリクロルに対する暴露後少なくとも27日間、良好な溶解性を示した。チオ硫酸ナトリウム化合物のみを有するPVOH/AMPSフィルムも、約4週間の暴露後に、許容可能な溶解性を与えるように見える。
【0072】
本発明のフィルムは、顆粒、粉末、液体または錠剤の形態の酸化性化学薬品の所定量をフィルムに加え、そして、酸化性化学薬品の周囲にフィルムを密封封止して、活性な化学薬剤を含む溶解パケットを製造することによって、単位用量パッキングにすることができる。
【0073】
スイミングプール用には、単位用量パッケージ中に含まれる塩素含有衛生剤は、1〜5ppmの遊離有効塩素(これは典型的には約5g〜400gの衛生剤に等しい)がプールに投入されるように計算することができる。塩素化化学薬品のガス抜きのために、溶解パケットに複数の小開口を具備させてパッケージ中における塩素ガスの蓄積を防止することができる。
【0074】
本発明の単位用量パックは、少なくとも約30%、好ましくは80〜95%の有効塩素含量を有する塩素含有衛生剤をパッケージするのに一般的に適している。トリクロロイソシアヌル酸をパッケージするために使用するとき、本発明のフィルムは、少なくとも2週間および好ましくは2ヶ月以上の間トリクロルと接触した後、驚くべき安定性を示し且つ一般的に水溶性を維持している。
【0075】
いくつかの実施例と関連させて本発明を説明してきたが、本発明の趣旨および範囲の内にあるそれらの実施例に関する改良は、当業者には容易に了解される。上記の検討、当業における関連知識、および発明の背景と詳細な説明に関連して上で検討した引例を考慮すれば、それらの開示の内容は、参照によって本明細書にすべて引用したものとされ、更なる説明は不要と考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】比較フィルムおよび本発明フィルムに関するトリクロル溶解性試験の結果を示しているグラフである。
【図2】フィルム試料の水溶性を評価するために使用されたスライドフレーム試験装置の透視図である。
【図3】次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの崩壊結果を示しているグラフである。
【図4】PVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの溶解結果を示しているグラフである。
【図5】両方のコポリマーグレードに関する許容可能な溶解性結果を示している、2つのPVOH/AMPSフィルムに関する崩壊および溶解の結果を示しているグラフである。
【図6】化学薬剤に暴露される前のPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルである。
【図7】顆粒状トリクロルイソシアヌル酸に対する3週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの赤外線スペクトルである。
【図8】トリクロルイソシアヌル酸錠剤に対する7週間の暴露後におけるPVOH/AMPSコポリマーから成る比較フィルムの内側および外側に関する赤外線スペクトルである。
【図9】次亜塩素酸カルシウムに対する暴露後における可塑剤を含む比較フィルムの溶解性結果を示しているグラフである。
【図10】塩素除去剤を含む本発明フィルムの溶解性結果を示しているグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.酸化性化学薬品に対して長期に暴露されたときにフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマー;
b.少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分
を含む、酸化性化学薬品に対して抵抗性であるポリビニルアルコールフィルム。
【請求項2】
該官能コモノマー単位が、同様な糖類成分と官能コモノマー単位を全く有していない同様なビニルアルコール樹脂とを使用して作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に増大した水溶性を該フィルムが示すように選択され且つ増大した水溶性を示すような量で含有される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項3】
該糖類成分が、該糖類成分を使用せずに作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後に該フィルムの水溶性が増すように選択され且つ該フィルムの水溶性が増すような量で含有される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項4】
該官能コモノマー単位および該糖類成分が、官能コモノマー単位を全く有していない同様なビニルアルコールポリマーを使用して作られた同様なフィルムと比較して、または、同様な該糖類成分を使用しないで作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に、増大した水溶性を該フィルムが示すように選択され且つ増大した水溶性を該フィルムが示すような量で含有される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項5】
該酸化性化学薬品が、次亜塩素酸塩、塩素化および/または臭素化イソシアヌル酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硼酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、硝酸塩、亜硝酸エステル、過酸化物、過酸化ケトン、ペルオキシ酸、無機酸およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項6】
該糖類成分が、オリゴ糖、二糖類、単糖類、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項7】
該糖類成分が、二糖類、単糖類、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項8】
該官能コモノマー単位が、スルホン酸単位、カルボン酸単位、ビニルアミン単位、アクリルアミド単位、ジメチルアクリルアミド単位、それらの塩、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項9】
該フィルムが、75〜98重量%の該ビニルアルコールコポリマーおよび2〜25重量%の該糖類成分を含む請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項10】
該フィルムが、少なくとも20日間、トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に暴露された後に、溶解性試験によって試験したときに、約100秒未満の正規化溶解時間を示す請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項11】
a.0.5〜20モル%のスルホン酸官能単位および/またはそれらの塩を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマー;
b.単糖類、二糖類、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分
を含む、酸化性化学薬品に対して抵抗性であるポリビニルアルコールフィルム。
【請求項12】
該スルホン酸官能化単位またはそれらの塩として、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)モノマーおよび/またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマーが挙げられる請求項14記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項13】
a.酸化性化学薬品に対して長期に暴露されたときに配合ポリマー組成物の溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマー;および
b.少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分
を含む配合ポリマー組成物。
【請求項14】
a.酸化性化学薬品に対する長期の暴露時に該組成物の溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含むビニルアルコールコポリマー樹脂を含む水溶液を提供する工程;および
b. 該水溶液中で、少なくとも1種の水溶性糖類を含む糖類成分を溶解する工程
を含む配合ポリマー組成物を作る方法。
【請求項15】
a. i.酸化性化学薬品に対して長期に暴露されたときにフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む75〜98重量%のビニルアルコールコポリマー;および
ii.少なくとも1種の水溶性糖類を含む2〜25重量%の糖類成分
を含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.該官能コモノマー単位および該糖類成分が、該官能コモノマー単位を全く有していない同様なビニルアルコールポリマーを使用して作られた同様なフィルムと比較して、または、同様な該糖類成分を使用しないで作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に、増大した水溶性を該フィルムが示すように選択され且つ増大した水溶性を該フィルムが示すような量で含有される該ポリマー溶解パケット中に封入される酸化性化学物質
を含む単位用量パッケージ。
【請求項16】
a. i.塩素含有酸化性化学薬品に対する長期の暴露時にフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である官能コモノマー単位を有するビニルアルコールコポリマーと;
ii.少なくとも1種の水溶性糖類を含む糖類成分
との配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.該ポリマー溶解パケット内に封入される塩素含有衛生剤を含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージ。
【請求項17】
該塩素含有衛生剤が、トリクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項20記載の単位用量パッケージ。
【請求項18】
a.少なくとも75重量%のビニルアルコールコポリマーと:
i.水溶性である少なくとも1種の糖類を含む糖類成分;または
ii.塩素捕捉剤
から選択される成分とを含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.該ポリマー溶解パケット内に封入される塩素含有衛生剤を含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージ。
【請求項19】
該塩素捕捉剤がチオ硫酸塩である請求項23記載の単位用量パッケージ。
【請求項20】
a. i.75〜98重量%のポリビニルアルコールポリマーと;
ii.水溶性である少なくとも1種の糖類を含む2〜25重量%の糖類成分と
を含む配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、そしてその組み合わせから成る群より選択され、且つ該ポリマー溶解パケット内に配置される塩素含有剤
を含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージ。
【請求項1】
a.酸化性化学薬品に対して長期に暴露されたときにフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマー;
b.少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分
を含む、酸化性化学薬品に対して抵抗性であるポリビニルアルコールフィルム。
【請求項2】
該官能コモノマー単位が、同様な糖類成分と官能コモノマー単位を全く有していない同様なビニルアルコール樹脂とを使用して作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に増大した水溶性を該フィルムが示すように選択され且つ増大した水溶性を示すような量で含有される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項3】
該糖類成分が、該糖類成分を使用せずに作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対する同様な暴露の後に該フィルムの水溶性が増すように選択され且つ該フィルムの水溶性が増すような量で含有される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項4】
該官能コモノマー単位および該糖類成分が、官能コモノマー単位を全く有していない同様なビニルアルコールポリマーを使用して作られた同様なフィルムと比較して、または、同様な該糖類成分を使用しないで作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に、増大した水溶性を該フィルムが示すように選択され且つ増大した水溶性を該フィルムが示すような量で含有される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項5】
該酸化性化学薬品が、次亜塩素酸塩、塩素化および/または臭素化イソシアヌル酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硼酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、クロム酸塩、二クロム酸塩、硝酸塩、亜硝酸エステル、過酸化物、過酸化ケトン、ペルオキシ酸、無機酸およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項6】
該糖類成分が、オリゴ糖、二糖類、単糖類、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項7】
該糖類成分が、二糖類、単糖類、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項8】
該官能コモノマー単位が、スルホン酸単位、カルボン酸単位、ビニルアミン単位、アクリルアミド単位、ジメチルアクリルアミド単位、それらの塩、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項9】
該フィルムが、75〜98重量%の該ビニルアルコールコポリマーおよび2〜25重量%の該糖類成分を含む請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項10】
該フィルムが、少なくとも20日間、トリクロロイソシアヌル酸顆粒剤に暴露された後に、溶解性試験によって試験したときに、約100秒未満の正規化溶解時間を示す請求項1記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項11】
a.0.5〜20モル%のスルホン酸官能単位および/またはそれらの塩を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマー;
b.単糖類、二糖類、およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分
を含む、酸化性化学薬品に対して抵抗性であるポリビニルアルコールフィルム。
【請求項12】
該スルホン酸官能化単位またはそれらの塩として、2−メチルアクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)モノマーおよび/またはそのナトリウム塩(NaAMPS)モノマーが挙げられる請求項14記載のポリビニルアルコールフィルム。
【請求項13】
a.酸化性化学薬品に対して長期に暴露されたときに配合ポリマー組成物の溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む60〜99重量%のビニルアルコールコポリマー;および
b.少なくとも1種の水溶性糖類を含む1〜40重量%の糖類成分
を含む配合ポリマー組成物。
【請求項14】
a.酸化性化学薬品に対する長期の暴露時に該組成物の溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含むビニルアルコールコポリマー樹脂を含む水溶液を提供する工程;および
b. 該水溶液中で、少なくとも1種の水溶性糖類を含む糖類成分を溶解する工程
を含む配合ポリマー組成物を作る方法。
【請求項15】
a. i.酸化性化学薬品に対して長期に暴露されたときにフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である0.5〜20モル%の官能コモノマー単位を含む75〜98重量%のビニルアルコールコポリマー;および
ii.少なくとも1種の水溶性糖類を含む2〜25重量%の糖類成分
を含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.該官能コモノマー単位および該糖類成分が、該官能コモノマー単位を全く有していない同様なビニルアルコールポリマーを使用して作られた同様なフィルムと比較して、または、同様な該糖類成分を使用しないで作られた同様なフィルムと比較して、該酸化性化学薬品に対して同様に暴露された後に、増大した水溶性を該フィルムが示すように選択され且つ増大した水溶性を該フィルムが示すような量で含有される該ポリマー溶解パケット中に封入される酸化性化学物質
を含む単位用量パッケージ。
【請求項16】
a. i.塩素含有酸化性化学薬品に対する長期の暴露時にフィルムの溶解性を安定化させるのに有効である官能コモノマー単位を有するビニルアルコールコポリマーと;
ii.少なくとも1種の水溶性糖類を含む糖類成分
との配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.該ポリマー溶解パケット内に封入される塩素含有衛生剤を含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージ。
【請求項17】
該塩素含有衛生剤が、トリクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される請求項20記載の単位用量パッケージ。
【請求項18】
a.少なくとも75重量%のビニルアルコールコポリマーと:
i.水溶性である少なくとも1種の糖類を含む糖類成分;または
ii.塩素捕捉剤
から選択される成分とを含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.該ポリマー溶解パケット内に封入される塩素含有衛生剤を含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージ。
【請求項19】
該塩素捕捉剤がチオ硫酸塩である請求項23記載の単位用量パッケージ。
【請求項20】
a. i.75〜98重量%のポリビニルアルコールポリマーと;
ii.水溶性である少なくとも1種の糖類を含む2〜25重量%の糖類成分と
を含む配合物を含むフィルムを有するポリマー溶解パケット;そして
b.次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸、その塩、その水和物、そしてその組み合わせから成る群より選択され、且つ該ポリマー溶解パケット内に配置される塩素含有剤
を含む、水に塩素を提供するための単位用量パッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−535484(P2009−535484A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509616(P2009−509616)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/010134
【国際公開番号】WO2007/133415
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/010134
【国際公開番号】WO2007/133415
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】
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