説明

酸化型自己分散顔料の製造方法及びインクジェット用インクの製造方法

【課題】 酸化型自己分散顔料毎の酸化処理の程度のばらつきを低減した酸化型自己分散型顔料の製造方法の提供
【解決手段】 本発明は、水性媒体中に250nm以下の平均粒径を有する顔料を分散することにより顔料分散体を得る顔料分散工程と、オゾンガスの存在下で水に圧力を加えてオゾンを溶解することにより30ppm以上の濃度のオゾン水溶液を得るオゾン溶解工程と、前記顔料分散体と前記水溶液とを衝突させて前記顔料分散体中の顔料を酸化することにより酸化型自己分散顔料を得る顔料酸化工程とを有し、前記顔料酸化工程における前記分散体の流速及び前記水溶液の流速が、いずれも4.0mm/sec以上であることを特徴とする酸化型自己分散顔料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化型自己分散顔料の製造方法及びインクジェット用インクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録に用いられるインクの色材として、染料に比べ画像の耐光性、耐水性に優れた顔料が注目されている。しかし、顔料は水に不溶であるため水性インクの色材として用いるためには、顔料が水中で安定して存在していなければならない。最近では、顔料を水性媒体中で分散安定化させるための顔料の処理技術が活発に開発されるようになった。これら開発されている技術の中でも特に、顔料自体を処理して顔料自身の分散性を向上させて、顔料を分散剤を用いずに分散可能とする自己分散化の技術は、インクジェットヘッドへの信頼性が高いことからインクジェット用水性インクの顔料を処理する技術として好適に用いられている。中でも、オゾンを用いて顔料を酸化する技術は、材料費が安く、対環境性に優れた技術である(以下、顔料を酸化することで得られる顔料を、酸化型自己分散顔料ともいう)。
【0003】
特許文献1には、オゾンガスが気泡として吹き込まれた、即ち、バブリングされた水中に顔料を加えることで酸化型自己分散顔料を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−535949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術について本発明者等が検討したところ、得られる酸化型自己分散顔料毎の酸化処理の程度のばらつきが大きく、酸化型自己分散顔料の保存安定性が十分に得られなかった。また、係る酸化型自己分散顔料を用いてインクジェット用インクを調製し、画像形成を行ったところ、吐出安定性が十分に得られなかった。また、上記酸化型自己分散顔料とは異なる色調を有するカラーインクと共に画像形成を行ったところ、酸化型自己分散顔料によって形成した領域と、係る酸化型自己分散顔料とは異なる色調を有するインクによって形成した領域との記録媒体上の境界部分で色の滲み(以下、ブリーディングともいう)が生じる場合があった。
【0006】
上述した従来技術の課題を鑑み、本発明は、酸化型自己分散顔料毎の酸化処理の程度ばらつきを低減した酸化型自己分散型顔料の製造方法及びインクジェット用インクの製造方法を提供することを目的とする。また、印字物のブリーディングを低減し(ブリード低減能に優れ)、優れた吐出安定性と保存安定性とを有する酸化型自己分散顔料の製造方法及びインクジェット用インクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、以下の発明によって達成される。即ち、本発明は、水性媒体中に250nm以下の平均粒径を有する顔料を分散することにより顔料分散体を得る顔料分散工程と、オゾンガスの存在下で水に圧力を加えてオゾンを溶解することにより30ppm以上の濃度のオゾン水溶液を得るオゾン溶解工程と、前記顔料分散体と前記水溶液とを衝突させて前記顔料分散体中の顔料を酸化することにより酸化型自己分散顔料を得る顔料酸化工程とを有し、前記顔料酸化工程における前記分散体の流速及び前記水溶液の流速が、いずれも4.0mm/sec以上であることを特徴とする酸化型自己分散顔料の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸化型自己分散顔料毎の酸化処理の程度のばらつきを低減した酸化型自己分散顔料の製造方法及びインクジェット用インクの製造方法を提供することができる。また、ブリーディングを低減し、優れた吐出安定性と保存安定性とを有する酸化型自己分散顔料及びインクジェット用インクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の酸化型自己分散顔料の製造方法に好適に用いることのできる酸化型自己分散顔料の製造装置を模式的に示した図である。
【図2】衝突チャンバーの側面を模式的に示した図である。
【図3】衝突場ユニットの上面を模式的に示した図である。
【図4】衝突場ユニットの側面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明について説明する。
【0011】
<自己分散顔料の製造方法>
本発明の酸化型自己分散顔料の製造方法を、図1を参酌して詳細に説明する。図1は、本発明の酸化型自己分散型顔料の製造方法に好適に用いることのできる、酸化型自己分散顔料の製造装置を模式的に示した図である。
【0012】
図1に、本発明の酸化型自己分散顔料の製造方法に好適に用いることのできる酸化型自己分散型顔料の製造装置の模式図を示す。本発明においては、不図示の分散手段によって顔料が水性媒体中に分散される、即ち、顔料分散体が得られる。本発明においては、水性媒体中に顔料を分散することで、250nm以下の平均粒径を有する顔料が分散された顔料分散体を得る工程が顔料分散工程に相当する。分散手段としては、顔料を水性媒体に分散させることのできる装置であれば特に限定されないが、例えば、高圧ホモジナイザー等を好適に用いることができる。
【0013】
上述した分散手段によって得られる顔料分散体は、図1中の容器2に加えられ、流路を通り衝突チャンバー1に導入される。このとき、流量計3を見ながらバルブ4を調節することで、顔料分散体の供給速度、即ち、流速を適宜調節することができる。
【0014】
一方、原料ガス供給口5から、酸素ガスや酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス等の原料ガスが、オゾン発生器8に導入される。このとき、流量計6を見ながらバルブ7を調節することで、原料ガスの供給量を適宜調節することができる。具体的には、例えば、0.1L/min以上1.0L/min以下の酸素ガス及び2mL/min以上200mL/min以下の窒素ガスをオゾン発生器に導入することで、オゾンの濃度が10g/m以上400g/m以下のオゾンガスを発生させるための原料ガスを供給することができる。オゾン発生器8では、導入された原料ガスにプラズマ処理を施すことで、オゾンが発生する。オゾン発生機としては、例えば、GRP−RC25(住友精密化学社製)等を好適に用いることができる。発生したオゾンガスの濃度は、オゾンガス濃度計9でモニタリングする。また、バルブ7を調節することで、オゾンガスの供給速度を調整することができる。
【0015】
発生したオゾンガスは、ガス溶解膜を有するモジュール10内に導入され、ガス溶解膜を有するモジュール10内にて水供給口13から供給された水と混合され、オゾンが溶解したオゾン水溶液(以下、オゾン水ともいう)が得られる。ガス溶解膜を有するモジュールとしては、例えば、オゾネーションモジュール(ジャパンゴアテックス社製)を好適に用いることができる。本発明においては、オゾンガスを水に溶解させる際に水に圧力を加える。特に、1MPa以上の圧力を加えた水にオゾンガスを接触させることで、オゾン濃度が40ppm以上の、極めて高い濃度のオゾン水が得られるため好ましい。水に加える圧力は、1MPa以上、5MPa以下であることがより好ましい。バルブ15や、モジュール10とオゾンキラー11との間に設けることのできる不図示のバルブで圧力を調整することで、水に加える圧力を調整することができる。尚、本発明の酸化型自己分散顔料の製造方法においては、オゾンガスの存在下で水に圧力を加えてオゾンを溶解することにより30ppm以上の濃度のオゾン水を得る工程がオゾン溶解工程に相当する。ガス溶解膜を有するモジュール10内で水に溶解できなかったオゾンガスは、オゾンキラー11に導入され、オゾンキラー11内で二酸化マンガン、二酸化チタン、活性炭等の触媒によって分解される。
【0016】
ガス溶解膜を有するモジュール10において生成したオゾン水は、流路を通り衝突チャンバー1に導入される。このとき、流量計14を見ながらバルブ15を調節することで、オゾン水の供給速度、即ち、流速を適宜調節することができる。また、オゾン水濃度計16においてオゾン水中のオゾン濃度を測定することができる。
【0017】
衝突チャンバー1に顔料分散体及びオゾン水が導入されることで、顔料分散体中の顔料とオゾン水とが衝突し、顔料が酸化され、酸化型自己分散顔料が得られる、即ち、顔料表面に−COOH等のイオン性基が修飾された顔料が得られる。本発明においては、顔料分散体とオゾン水とを衝突させて顔料分散体中の顔料を酸化することにより酸化型自己分散顔料を得る工程が、顔料酸化工程に相当する。
【0018】
また、本発明の顔料酸化工程においては、衝突する際の顔料分散体の流速とオゾン水の流速は、いずれも4.0mm/sec以上である。顔料分散体、オゾン水の一方ないし両方の流速が4.0mm/sec未満である場合、顔料が十分に酸化されず、得られる酸化型自己分散顔料の保存安定性が低下する。顔料酸化工程における顔料分散体、オゾン水の流速はいずれも15.0mm/sec以上であることが好ましい。顔料分散体、オゾン水の流速の上限は特に限定されないが、流路の耐久性等の観点からは10000mm/sec以下であることが好ましい。得られた酸化型自己分散顔料は、排出口19より排出される。排出される自己分散顔料の量は、流量計17を見ながらバルブ18を調節することで適宜調節することができる。
【0019】
次に、上記した製造装置に好適に用いることのできる衝突チャンバー1の構成について、図2〜図4を用いてより詳細に説明する。図2(a)は衝突チャンバー1中の導入ユニット22、衝突場ユニット21及び導出ユニット20の位置関係を模式的に示した側面図であり、(b)は衝突チャンバー1中の導入ユニット22、衝突場ユニット21及び導出ユニット20の各装置構成を模式的に示した側面図である。また、図3は衝突場ユニット21の上面模式図であり、図4は衝突場ユニット22の側面模式図である。
【0020】
衝突チャンバー1は導入ユニット22、衝突場ユニット21、導出ユニット20を有する。導入ユニット22は、顔料分散体を衝突場ユニット21に供給するための流入口24及び流出口26、オゾン水を衝突場ユニット21に供給するための流入口25及び流出口27を有する。また、流入口24と流出口26、流入口25と流出口27とを結ぶ流路を有する。
【0021】
衝突場ユニット21は、流出口26と連結する流入口28及び流出口27と連結する流入口29を有する。また、流入口28及び29はそれぞれ流路33及び34と接続されており、流路33及び34は、衝突場30によって接続されている。流路33に導入された顔料分散体と、流路34に導入されたオゾン水とは、衝突場30で衝突する。本発明において、衝突場30は、顔料分散体とオゾン水とが衝突することができる領域であれば特に限定されない。尚、流路33と流路34とが直接接続されている場合、これらの流路の接続部及びその近傍を衝突場と呼ぶことができる。
【0022】
図2において、流路33及び34は、衝突場30に繋がる前にそれぞれ流入口28及び29が設けられた面に対して平行になるように屈曲している、即ち、流路33の中心線と、流路34の中心線とが、後述する導出ユニット20の流入口21と平行になる場合を0度としたときに、それぞれ90度の角度をなすように衝突場30に接続されている。言い換えると、流路33の中心線と流路34の中心線とが成す角度が180度である。そのため、顔料分散体とオゾン水とが、180度の衝突角度で衝突する。
【0023】
尚、流路33の中心線及び流路34の中心線が図4に示すような関係にある場合、流路33の中心線と流路34の中心線とが成す角度は120度である。本発明において、流路33の中心線と流路34の中心線とが成す角度は90度以上180度以下であることが好ましく、150度以上180度以下であることがより好ましい。流路33の中心線と流路34の中心線とが成す角度が上記好ましい範囲である場合、顔料とオゾン水とをより均一に混合することができる。
【0024】
本発明において、流路33の断面積は流路34の断面積に対して1倍以上1.5倍以下であることが好ましく、1倍であることがより好ましい。衝突場30にて顔料とオゾン水とが衝突することで、顔料の酸化が行われ、酸化型自己分散顔料を含む分散液(以下、酸化型自己分散顔料分散液ともいう)が得られる。得られた酸化型自己分散顔料分散液は、導出ユニット20の流入口31を通り、流出口32から衝突チャンバー1外へ排出される。
【0025】
本発明においては、流路33に導入する顔料分散体の流速や、流路34に導入するオゾン水の流速は一定速度を維持することが好ましい。即ち、衝突場30において衝突する際の顔料分散体及びオゾン水の流速を一定とすることが好ましい。流速を一定とすることで、衝突場30に供給される顔料の量及びオゾン水の量を一定に保つことができるため、顔料毎の酸化処理の程度のばらつきを効果的に低減することができる。また、衝突場30で衝突する際の顔料分散体の流速は、オゾン水の流速に対し1倍以上1.5倍以下の流速であることが好ましい。
【0026】
上記した酸化型自己分散顔料の製造装置を用いる場合、顔料分散体中に含まれる顔料の濃度や、オゾン水中に含まれるオゾンの濃度を適宜調整することで、顔料の酸化処理の程度を適宜調整することができる。また、上記した装置は、顔料分散体やオゾン水の流路の本数を増したり、流路の断面積を大きくしたりすることで、スケールアップを簡単に行うことができるため、生産性に優れる。
【0027】
また、上記した製造装置においては、顔料分散体の流路とオゾン水の流路とを衝突場30によって接続しているため、例えば、オゾンガス等の顔料を酸化することのできるオゾン水以外の他の成分と顔料との接触を低減することができる。オゾンガスとオゾン水とは、顔料を酸化する活性が大きく異なる。そのため、オゾンガスをバブリングしている水中に顔料を加えて顔料を酸化するような方法では、オゾンガスとオゾン水という2種類の酸化剤によって顔料が酸化されるため、顔料毎に酸化処理の程度が大きく異なる。上記した装置を用いることで、オゾン水以外の顔料の酸化剤と顔料とが接触することを効果的に低減することができる。
【0028】
得られた酸化型自己分散顔料の、顔料毎の酸化処理の程度のばらつきは、酸化型自己分散顔料が有するイオン性基の量の、酸化型自己分散顔料間でのばらつきを測定することで評価することができる。また、イオン性基の量は、加熱減少量を測定することで算出することができる。具体的には、同一の製造方法によって得られた酸化型自己分散顔料を1gずつ、ランダムに10回抜き取り、得られた10個のサンプルに含まれる酸化型自己分散顔料ついて加熱減少量の測定を行い、得られた加熱減少量を平均することで、加熱減少量の平均値を得る。本発明においては、10個のサンプル中、10個のサンプルの加熱減少量の平均値から最も離れたサンプルの加熱減少量が、平均値の10%以内に含まれていれば、ばらつきが抑制されていると評価することができ、2%以内であれば、ばらつきが極めて好適に抑制されていると評価することができる。尚、酸化型自己分散顔料の加熱減少量は、以下のようにして求めることができる。具体的には、酸化型自己分散顔料に過剰量の塩酸水溶液を加え、5000rpmで30分間遠心分離する。遠心分離後、沈殿物を回収、脱水乾燥して得られる乾固物を熱重量分析(Thermogravimetric Analysis)し、酸化型自己分散顔料の有するイオン性基が分解する温度前後の重量変化、即ち、加熱減少量を測定する。熱重量分析装置としてはMETTLER TOLEDO社製のTGA851e/SDTA等の市販の分析装置を好適に用いることができる。
【0029】
次に、本発明の酸化型自己分散顔料の製造方法に好適に用いることのできる材料について、詳細に説明する。
【0030】
[顔料分散体]
(顔料)
本発明の自己分散顔料の製造方法に用いることのできる顔料としては、特に限定されず、公知の黒色顔料及びカラー顔料を好適に用いることができる。具体的には、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで表される黒色顔料やカラー顔料を用いることができる。また、黒色顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックといったカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0031】
本発明において、顔料分散体中の顔料の平均粒径は250nm以下である。顔料の平均粒径とは、キュムラント法により算出された平均粒径を指す。具体的には、酸化型自己分散顔料の粒子径を、動的光散乱法を用いた粒径測定装置で測定し、キュムラント法で解析することで得られる平均粒径を指す。動的光散乱法を用いた粒径測定装置としては、例えば、ELS−8000(大塚電子社製)等が挙げられる。顔料の平均粒径は90nm以上200nm以下であることが好ましく、110nm以上180nm以下であることがより好ましい。
【0032】
(水性媒体)
本発明においては、水性媒体として水を単独で用いてもよいが、水と有機溶剤との混合溶媒を用いることが好ましい。また、有機溶剤としては、オゾンよって分解しにくい有機溶剤であることが好ましい。オゾンによって分解しにくい有機溶剤としては、具体的には、γ−ブチロラクトン、アセトン、t−ブチルアルコール、エチレングリコールジアセタール等が挙げられる。また、本発明の水性媒体はpHを調整するためのpH調整剤を含んでもよい。
【0033】
(分散剤)
本発明においては、分散剤を用いて顔料を水性媒体中に分散してもよい、即ち、顔料分散体が分散剤を含んでもよい。分散剤としては、水溶性の界面活性剤、水溶性の高分子分散剤を好適に用いることができる。水溶性の高分子分散剤としては、具体的には、下記に挙げる親水性モノマー、疎水性モノマー、ノニオン性モノマーから選択される少なくとも2つの単量体からなる共重合体が挙げられる。共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0034】
[オゾン水溶液]
本発明のオゾン水溶液、即ち、オゾン水には30ppm以上の濃度のオゾンが溶解している。オゾン水溶液中のオゾンの濃度は40ppm以上200ppm以下であることが好ましい。オゾンを溶解する水、即ち、ガス溶解膜を有するモジュール内に導入する水には、オゾンの活性や溶解度を上げるために、酢酸、過酸化水素水に代表される添加剤を加えても良い。しかし、水がこれら添加剤を含むことで、得られる酸化型自己分散顔料を含むインクジェット用インクの諸特性が低下する場合がある。そのため、本発明においては、水としてイオン交換水を用い、イオン交換水に1MP以上の圧力をかけることで、オゾンの溶解度を高めることが好ましい。圧力は、1MPa以上5MPa以下であることが好ましい。圧力を1MPa以上とすることで、オゾン水中に溶解するオゾンの濃度を30ppm以上とすることができる。
【0035】
<インクジェット用インクの製造方法>
本発明においては、上記した酸化型自己分散顔料の製造方法によって得られる自己分散顔料分散体をそのまま用いてもよいが、係る自己分散顔料分散体に水性媒体等の種々の材料を加えてインクジェット用インクを製造してもよい。即ち、本発明のインクジェット用インクの製造方法は、上記した酸化型自己分散顔料の製造方法を含む。以下、インクジェット用インクに好適に用いることのできる材料について、詳細に説明する。
【0036】
(水性媒体)
本発明のインクジェット用インクには、水性媒体として水を用いることができるが、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒を用いることが好ましい。また、水としては脱イオン水を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記した水溶性有機溶剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。インクジェット用インク中の水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して3%以上50%以下であることが好ましい。また、水の含有量はインク全質量に対して50%以上95%以下であることが好ましい。
【0037】
(添加剤)
インクジェット用インクには、所望の物性値を有するインクジェット用インクを調製するために、上記した成分の他に必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防腐剤、水溶性樹脂等の添加剤を加えてもよい。添加剤の含有量は、インクジェット用インク全質量を基準として0.005%以上0.4%以下であることが好ましく、0.02%以上0.2%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0038】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0039】
<酸化型自己分散顔料の製造>
[実施例1]
図1及び図2に示すカーボンブラックの製造装置を用いて、酸化型自己分散顔料を得た。具体的には、500gのイオン交換水が入った容器にカーボンブラック(Printex80)を15g加え、15000rpmで30分間撹拌することで、カーボンブラックを予備湿潤した。予備湿潤後のカーボンブラックにイオン交換水を4485g加え、高圧ホモジナイザーで予備湿潤したカーボンブラックを分散し、カーボンブラック分散体1を得た。カーボンブラック分散体1中のカーボンブラックの平均粒径を、動的光散乱式粒径分布測定装置(ELS−8000、大塚電子社製)及びキュムラント法を用いて算出したところ、110nmであった。得られたカーボンブラック分散体1を、図2の容器2に移した。その後、容器2を3.0MPaの圧力で加圧することで、容器2、流量計3、バルブ4、衝突チャンバー1と接続されている、断面が長方形の幅6mm深さ15mmの流路に、4.2mm/secの流速でカーボンブラック分散体1を導入した。尚、カーボンブラック分散体1を導入する流路は、後述する衝突場30に接続するまで同一の形状である。
【0040】
一方、酸素と窒素の混合ガスを原料ガス供給口5より導入し、オゾン発生器8(GRP−RC25、住友精密化学社製)で混合ガスをプラズマ処理することで、300ppmのオゾンガスを生成した。得られたオゾンガスをガス溶解膜を有するモジュール10(オゾネーションモジュール、ジャパンゴアテックス社製)に導入すると共に、水供給口13より、脱イオン水を1.9mL/secの流速でガス溶解膜を有するモジュール10に導入した。ガス溶解膜を有するモジュール10内で脱イオン水に3.0MPaの圧力を加えて、脱イオン水に溶解することのできるオゾン濃度を高めることで、オゾンの濃度が100ppmのオゾン水1を作製した。得られたオゾン水1を流量計14、バルブ15、オゾン水濃度計16及び衝突チャンバー1と接続されている、断面が長方形の、幅30mm、深さ15mmの流路に、4.2mm/secの流速で導入した。尚、オゾン水を導入する流路は、後述する衝突場30に接続するまで、同一の形状である。
【0041】
カーボンブラック分散体1の流路33の中心線とオゾン水の流路34の中心線とが180度の角度を成すように衝突場30に接続された衝突チャンバー1を用い、カーボンブラック分散体1とオゾン水とを衝突させて、顔料を酸化し、酸化型自己分散顔料1を含む分散液1を得た。尚、衝突チャンバー1は脱イオン水の流路及びカーボンブラック分散体1の流路と接続しているため、3.0MPaの圧力が加えられていた。得られた分散液1を排出口19から装置外部に排出し、分散液1をKOHでpH8に調整し、限外濾過膜で濃縮し、6%の酸化型自己分散顔料1を含む酸化型自己分散顔料分散液1を得た。
【0042】
得られた酸化型自己分散顔料分散液1中の酸化型自己分散顔料1の平均粒径を動的光散乱式粒径分布測定装置(ELS−8000、大塚電子社製)及びキュムラント法を用いて算出したところ、105nmであった。また、酸化型自己分散顔料1をランダムに10回抜き取り、抜き取った10個のサンプルに含まれる酸化型自己分散顔料1の加熱減少量を測定した。その結果、酸化型自己分散顔料1の加熱減少量の平均値は82mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.7%離れていた。即ち、酸化型自己分散顔料1における加熱減少量のばらつきは1.7%であった。尚、各サンプルの加熱減量は以下のようにして測定した。酸化型自己分散顔料の乾固物1gに過剰量の塩酸水溶液を加え、5000rpmで30分間遠心分離した。遠心分離後、沈殿物を回収、脱水乾燥して乾固物を得る。得られた乾固物をTGA熱重量測定装置(TGATGA851e/SDTA、METTLER TOLEDO社製)を用いて100〜900度まで昇温し、100度における重量から900度における重量を引いて重量変化を算出することで、各サンプルの加熱減少量を得た。
【0043】
[実施例2]
カーボンブラック分散体1の流速を16.0mm/secとし、水供給口より供給する脱イオン水の流速を7.2mL/secとし、得られたオゾンの濃度が100ppmのオゾン水の流速を16.0mm/secとした以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料2を含む酸化型自己分散型顔料分散液2を得た。得られた酸化型自己分散顔料2の平均粒径は107nmであった。また、酸化型自己分散顔料2の加熱減少量の平均値は85mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.6%離れていた。
【0044】
[実施例3]
予備湿潤後の高圧ホモジナイザーによるカーボンブラックの分散条件を変更することで、平均粒径が179nmであるカーボンブラック分散体2を得た。カーボンブラック分散体2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料3を含む酸化型自己分散型顔料分散液3を得た。得られた酸化型自己分散顔料3の平均粒径は101nmであった。また、酸化型自己分散顔料3の加熱減少量の平均値は81mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.6%離れていた。
【0045】
[実施例4]
予備湿潤後の高圧ホモジナイザーによるカーボンブラックの分散条件を変更することで、平均粒径が214nmであるカーボンブラック分散体3を得た。カーボンブラック分散体3を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料4を含む酸化型自己分散型顔料分散液4を得た。得られた酸化型自己分散顔料4の平均粒径は158nmであった。また、酸化型自己分散顔料4の加熱減少量の平均値は87mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.9%離れていた。
【0046】
[実施例5]
70gのイオン交換水が入った容器に7gのカーボンブラック(Printex80)、2gのアセチレノールE100(川研ファインケミカル社製)、200gのφ0.3mmのジルコニアビーズを加え、ペイントシェイカーで4時間事前分散し、カーボンブラック分散体4を得た。得られたカーボンブラック分散体4中のカーボンブラックの平均粒径は101nmであった。カーボンブラック分散体50gに対し117gの脱イオン水を加えた分散体を、カーボンブラック分散体1の代わりに用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料5を含む酸化型自己分散型顔料分散液5を得た。得られた酸化型自己分散顔料5の平均粒径は96nmであった。また、酸化型自己分散顔料5の加熱減少量の平均値は79mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.7%離れていた。
【0047】
[実施例6]
100ppmのオゾンガスを用い、水供給口13から供給する脱イオン水の流速を1.875mL/secとし、脱イオン水に1.0MPaの圧力を加えてオゾンの濃度が30ppmのオゾン水2を得た。オゾン水2を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料6を含む酸化型自己分散型顔料分散液6を得た。得られた酸化型自己分散顔料6の平均粒径は142nmであった。また、酸化型自己分散顔料6の加熱減少量の平均値は81mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から2.0%離れていた。
【0048】
[実施例7]
カーボンブラック分散体1の流速を7.0mm/secとし、カーボンブラック分散体1の流路を、断面が長方形の幅5mm深さ18mm流路とした以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料7を含む酸化型自己分散型顔料分散液7を得た。得られた酸化型自己分散顔料7の平均粒径は111nmであった。また、酸化型自己分散顔料7の加熱減少量の平均値は85mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.9%離れていた。
【0049】
[実施例8]
カーボンブラック分散体の流速を4400mm/secとし、カーボンブラック分散体1の流路を、断面が長方形の幅5mm深さ18mmの流路とした。また、水供給口13から供給する脱イオン水の流速を1980mL/secとし、脱イオン水に3.0MPaの圧力を加えてオゾンの濃度が100ppmのオゾン水3を得た。また、オゾン水3の流速を4400mm/secとし、オゾン水3の流路を断面が長方形の幅25mm、深さ18mmの流路とした。上記以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料8を含む酸化型自己分散型顔料分散液8を得た。得られた酸化型自己分散顔料8の平均粒径は102nmであった。また、酸化型自己分散顔料8の加熱減少量の平均値は84mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.9%離れていた。
【0050】
[実施例9]
図4に示す衝突ユニットを用いた。具体的には、カーボンブラック分散体1の流路と、オゾン水1の流路とが120度の角度を成すように設けられた衝突ユニットを用いた。上記以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料9を含む酸化型自己分散型顔料分散液9を得た。得られた酸化型自己分散顔料9の平均粒径は122nmであった。また、酸化型自己分散顔料9の加熱減少量の平均値は82mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から1.9%離れていた。
【0051】
[実施例10]
70gのイオン交換水が入った容器に7gのマゼンタ顔料(C.I.PigmentRed122)、2gのアセチレノールE100(川研ファインケミカル社製)、200gのφ0.3mmのジルコニアビーズを加え、ペイントシェイカーで4時間分散処理を行い、マゼンタ顔料分散体1を得た。得られたマゼンタ顔料分散体1中のマゼンタ顔料の平均粒径は91nmであった。マゼンタ顔料分散体50gに対し117gの脱イオン水を加えた分散体を、カーボンブラック分散体1の代わりに用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料10を含む酸化型自己分散型顔料分散液10を得た。得られた酸化型自己分散顔料10の平均粒径は91nmであった。また、酸化型自己分散顔料10の加熱減少量の平均値は26mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から±1.8%離れていた。
【0052】
[比較例1]
200gのイオン交換水入った容器に6gのカーボンブラック(Printex80)を加え、15000rpmで30分間撹拌し、カーボンブラックを予備湿潤した。予備湿潤した後、イオン交換水を1794gを加え、高圧ホモジナイザーで分散し、カーボンブラック分散体5を得た。カーボンブラック分散体5中のカーボンブラック7の平均粒径は110nmであった。
【0053】
次に、カーボンブラック分散体5を攪拌機の付いた3リットルのガラス容器に移した。ガラス容器の底部から300ppmのオゾンガスをバブリングしつつ、撹拌子を500rpmで回転させることでガラス容器内のカーボンブラック分散体5を4時間撹拌した。オゾンガスをバブリングしたイオン交換水中のオゾンの濃度は16ppmであった。4時間後、ガラス容器にKOHを滴下してpH8に調整した後、限外濾過膜で濃縮し、6%の酸化型自己分散顔料11を含む酸化型自己分散顔料分散液11を得た。得られた酸化型自己分散顔料11の平均粒径は109nmであった。また、酸化型自己分散顔料11の加熱減少量の平均値90mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から13.3%離れていた。
【0054】
[比較例2]
予備湿潤後の高圧ホモジナイザーによるカーボンブラックの分散条件を変更することで、平均粒径が290nmであるカーボンブラック分散体6を得た。
カーボンブラック分散体6を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料12を含む酸化型自己分散型顔料分散液12を得た。得られた酸化型自己分散顔料12の平均粒径は129nmであった。また、酸化型自己分散顔料12の加熱減少量の平均値は88mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から10.3%離れていた。
【0055】
[比較例3]
カーボンブラック分散体1の流速を3.0mm/secとし、オゾン水1の流速を3.0mm/secとした以外は実施例1と同様の操作を行い、酸化型自己分散顔料13を含む酸化型自己分散型顔料分散液13を得た。得られた酸化型自己分散顔料13の平均粒径は115nmであった。また、酸化型自己分散顔料13の加熱減少量の平均値は83mg/gであり、平均値から最も離れた測定値は平均値から9.8%離れていた。
【0056】
酸化型自己分散顔料1〜13の物性を、酸化型自己分散顔料1〜13を製造した際の製造条件と共に表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1の結果から、比較例の製造方法では加熱減少量のばらつきが約10%以上と大きいのに対し、実施例の製造方法では約2%と、加熱減少量のばらつきを明らかに低減していることがわかる。即ち、本発明の酸化型自己分散顔料の製造方法を用いることで、得られる酸化型自己分散顔料毎の酸化処理の程度のばらつきを抑制することができる。
【0059】
<酸化型自己分散顔料の評価>
(保存安定性)
酸化型自己分散顔料1〜13の保存安定性を評価した。具体的には、酸化型自己分散顔料分散液1〜13をそれぞれ密閉容器に入れ、60℃の恒温槽に24時間放置した。放置前後の平均粒径を、酸化型自己分散顔料1の平均粒径の測定方法と同様の方法を用いて算出した。放置前の酸化型自己分散顔料の平均粒径をPD1、放置前の酸化型自己分散顔料の平均粒径をPD2とし、PD2/PD1の値を算出することで、平均粒径の変化率(RPD)を算出した。得られたRPDを用いて、下記評価基準によって、保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
AAA:RPD<1.2
AA:1.2≦RPD<1.5
A:1.5≦RPD<2
B:2≦RPD
C:測定が不可能なほど操作後の平均粒径が増大した
【0060】
【表2】

【0061】
<インクジェット用インクの調製>
実施例1〜10及び比較例1〜3の自己分散型顔料分散液1〜13を用い、下記に示す組成でインクジェット用インクをそれぞれ調製した。尚、自己分散顔料分散液1を用いたインクジェット用インクはインクジェット用インク1というように、各付番を対応させている。
自己分散顔料分散液 67部
グリセリン 5部
ポリエチレングリコール 5部
アセチレノールE100(川研ファインケミカル社製) 1部
イオン交換水 残部(22部)
【0062】
<インクジェット用インクの評価>
(吐出安定性)
インクジェット記録装置PIXUS850i(キヤノン製)にインクジェット用インク1〜13をそれぞれ搭載し、A4サイズの記録媒体(Office Planner;キヤノン製)に、文字を連続で1,000枚記録した。得られた記録物を目視にて観察し、下記の評価基準を用いて吐出安定性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
AAA:1,000枚の記録が可能であり、且つ、1枚目及び1,000枚目の記録物を比較した場合に、スジ、ムラ、ヨレの状態に違いが見られない
AA:1,000枚の記録が可能であり、且つ、1枚目及び500枚目の記録物を比較すると、スジ、ムラ、ヨレの状態に違いがないが、1,000枚目の記録物には僅かなスジ、ムラ、ヨレがある
A:1,000枚の記録が可能であり、且つ、500枚目の記録物には僅かなスジ、ムラ、ヨレがあるが、500枚目及び1,000枚目の記録物を比較すると、スジ、ムラ、ヨレの状態に違いがない
B:1,000枚の記録が可能であり、且つ、500枚目の記録物にはかなりスジ、ムラ、ヨレがあり、500枚目から1,000枚目の記録物にかけて、スジ、ムラ、ヨレの状態が徐々に悪くなる
C:1枚の記録が可能であるが、スジ、ムラ、ヨレの状態が悪く、且つ、500枚の記録ができない
【0063】
(ブリーディング低減能)
インクジェット記録装置PIXUS850i(キヤノン製)にブラックインクを含むインクタンクとカラーインクを含むインクタンクとを搭載し、A4サイズの記録媒体(Office Planner;キヤノン製)に印字した。具体的には、10cm四方の正方形内を5×5のマス目(1マスのサイズ:2cm×2cm)で仕切り、ブラックインクと各カラーインクで交互にベタ印字するパターンを印字した。尚、インクジェット用インク1〜9、11〜13を用いる際には、ブラックインクとしてこれらのインクジェット用インクを用い、カラーインクとしてBCI−3Y(キヤノン製)を用いた。また、インクジェット用インク10を用いる際には、カラーインクとしてこのインクジェット用インクを用い、ブラックインクとしてBCI−3Bk(キヤノン製)を用いた。得られた印字物のブラックインク印字部とカラーインク印字部との境界領域を目視にて観察し、下記の評価基準を用いてブリーディング低減能の評価を行った。結果を表3に示す。
A:2色の境界領域のいずれにおいても2色間の境界線が鮮明で、境界領域に滲みや混色が見られない
B:2色の境界領域の一部の箇所で2色間の鮮明な境界線を確認することができるが、境界領域の他の箇所では、境界領域に多少の滲みや混色が見られる(境界線が不鮮明である)
C:全体的に2色間の境界線が不鮮明で、境界領域に滲みや混色が見られる
【0064】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中に顔料を分散することにより250nm以下の平均粒径を有する顔料が分散された顔料分散体を得る顔料分散工程と、
オゾンガスの存在下で水に圧力を加えてオゾンを溶解することにより30ppm以上の濃度のオゾン水溶液を得るオゾン溶解工程と、
前記顔料分散体と前記水溶液とを衝突させて前記顔料分散体中の顔料を酸化することにより酸化型自己分散顔料を得る顔料酸化工程とを有し、
前記顔料酸化工程における前記分散体の流速及び前記水溶液の流速が、いずれも4.0mm/sec以上であることを特徴とする酸化型自己分散顔料の製造方法。
【請求項2】
前記オゾン水溶液中のオゾンの濃度が40ppm以上である請求項1に記載の酸化型自己分散顔料の製造方法。
【請求項3】
前記圧力が1MPa以上である請求項1または2に記載の酸化型自己分散顔料の製造方法。
【請求項4】
顔料酸化工程における前記顔料分散体と前記オゾン水溶液との衝突角度が150度以上180度以下である請求項1〜3のいずれかに記載の酸化型自己分散顔料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の酸化型自己分散顔料の製造方法を含むことを特徴とするインクジェット用インクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−117020(P2012−117020A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270774(P2010−270774)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】