説明

酸化炉

本発明は、繊維20の酸化処理のための、特に、カーボンファイバーの製造のための酸化炉1であって、公知な方法において、ハウジング2内部に配置されたプロセスチャンバー6と、プロセスチャンバー6の中央に配置された吹出装置13と、プロセスチャンバー6の2つの対向する端部領域にそれぞれ配置された吸込装置14、15と、吹出装置13、プロセスチャンバー6、及び吸込装置14、15を通して熱風を循環させる少なくとも1つの通風機21と、循環熱風の流体経路に配置された少なくとも1つの加熱装置18と、を具備する酸化炉1に関する。吹出装置13は、熱風のための入口と、それぞれ反対側部の出口と、を有する複数の鉛直に離間された吹出ボックス18;118を具備する。選択として、鉛直に離間された吹出ボックス18の2つの積層体が提供されており、繊維20の移動方向において一方の後方に他方が離間された吹出ボックス、及び/又は、熱風のため、上面及び底面において少なくとも1つの付加的出口130を具備する積層状の内蔵ボックス118である。この構造において、従来構造と比較し、繊維が酸化工程を実施される区分の有効長さが拡張され、それによって、特に炉の高さを低く構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維の酸化処理のため、特にカーボンファイバーの製造のための酸化炉であって、a)繊維の入口領域及び出口領域を除いて気密なハウジングと、b)ハウジングの内部に配置されたプロセスチャンバーと、c)プロセスチャンバーの中央領域に配置されることによって、反対方向にプロセスチャンバーへと熱風が吹き出されることができ、互いに他方の上方で鉛直方向に離間して配置され、且つ、熱風の入口孔及び反対側部に熱風のための出口孔をそれぞれ有する複数の吹出ボックスを具備する吹出装置と、d)プロセスチャンバーの両方の対向する端部領域にあって、プロセスチャンバーから熱風を引き込むためのそれぞれの吸込装置と、e)吹出装置、プロセスチャンバー及び2つの吸込装置を通して熱風を循環させる少なくとも1つの通風機と、f)循環熱風の流体経路に配置された少なくとも1つの加熱装置と、g)互いに他方の上方に配置された吹出ボックス間の間隙を通って蛇行式で繊維を案内するガイドローラーと、を有する酸化炉に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化炉を通る繊維を処理するための熱風を誘導するために、様々な方法がある。「中心から端部へ」流れる原理によって空気を誘導する酸化炉が支持を得てきている。この酸化炉においては、プロセスチャンバーの中央領域で、両方向、すなわち熱風がプロセスチャンバーの対向する端部の方向へと吹出し、プロセスチャンバーのこれらの2つの端部で吸込装置によって再度引き込まれる。プロセスチャンバーは、炉の長手方向で繰り返され得る様々な温度及び空気の流れのための領域としてもみなすことができる。
【0003】
冒頭に記載したタイプの公知の酸化炉において、吹出装置を形成する吹出ボックスは、連続した上面及び底面を有し、対向する狭い端面にのみ熱風のための出口孔を有する。これは特定の方法ではない、いかなる場合も、互いに他方の上方に配置された吹出ボックス間の間隙を通って熱風が流れず、これらの間隙を通過するとき、繊維は酸化処理が実施されないことを意味する。吹出ボックスは、空気の分配のために大きな寸法を有する必要が有るため、空気が流れないことによって繊維が酸化処理されない距離は、決して無視できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冒頭で説明したタイプの酸化炉を実現し、それによって、繊維の酸化処理の規定寸法が、炉の比較的小さな体積に、特に炉が低い構造となり得るように構成されることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、h)互いに他方の上方の空間に配置された吹出ボックスの2つの積層体が設けられ、繊維の移動方向から見て他方の後方の空間に配置されており、且つ/又は、i)互いに他方の上方に配置された積層状の吹出ボックスが、上面及び底面において熱風のための少なくとも1つの付加的出口孔を有する本発明によって実現される。
【0006】
両方の構造的選択肢のための本発明に係る基本的な考えは同じであり、それぞれが、同じ炉においても本質的に実現され得る。
【0007】
第1の選択肢において、吹出ボックスの寸法は、例えば、他方の後方に配置された2つの吹出ボックスの体積が、従来の設計における1つの吹出ボックスの全体の体積に相当するように、繊維の移動方向から見て、より小さくされている。2つの吹出ボックス間の寸法は、互いに他方の上方に配置された吹出ボックス間の間隙において、熱風の風量を増すことができ、先行技術においてこのようなことは実現されていない。従って、互いに他方の上方に配置された吹出ボックス間の間隙は、繊維の酸化処理を活発に実施し得る。
【0008】
個々の吹出ボックスの体積が実施的に従来の構造の体積と等しくなり得る別の第2の構造的選択肢も、同様な方法で機能する。上面及び底面に設けられた付加的空気出口孔によって、熱風を同様に、互いに他方の上方に配置された吹出ボックス間の間隙を通して流すことが可能となるが、それによって、間隙に配置された繊維の部分に、酸化工程を実施することができる。こうして先行技術より良い、繊維が通る経路が使用されることによって、全体としてより小さな酸化炉の構造を実現できる。
【0009】
特に有用なことに、同じ炉の長さで炉をより低くすることができる。これは、全範囲に関連する利点であるが、プロセスチャンバーを通る、より短い繊維の蛇行経路のみが必要となるため、繊維のための偏向ローラーと、繊維がプロセスチャンバーに入る領域及びプロセスチャンバーから出る領域において空気が漏れるのを防ぐロック装置と、を節約することが可能となる。更に、炉全体は軽量であり、炉が構成される鋼鉄構造においてコスト面で好適である。更に、プロセスチャンバーの繊維周りの増加された空気の流れは、製造される製品の品質を向上させる。
【0010】
吹出ボックスの隣接して配置された積層体間の水平距離が、積層体の吹出ボックス間の鉛直距離の2倍に等しく、且つ、最大で、炉の長手方向において吹出ボックスの寸法と等しいならば好適である。この製品は、積層体間の領域内及び互いに他方の上方に配置された吹出ボックス間の領域内の流れの状態を決定する。
【0011】
別の第2の構造において、吹出ボックスが、上面及び底面において中心線に沿って、熱風のための複数の付加的出口孔を有するならば好適である。この手段は、制御された方法で熱風を案内するためにも機能する。
【0012】
本発明に係る例示的実施形態は、以下で示された図面を参照しつつ、更に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図2の線I−Iによるカーボンファイバーの製造のための酸化炉の縦断面図を示す。
【図2】図1の酸化炉の横断面図を示す。
【図3】吹出装置の領域内の図1の拡大された詳細図を示す。
【図4】図5の線IV−IVによる、酸化炉の別の例示的実施形態において使用される吹出ボックスの平面図の断面図を示す。
【図5】図4の吹出ボックスの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図3についてまず最初に説明すると、これらの図は、参照番号1によって全体として示された酸化炉の第1実施形態を示し、カーボンファイバーを製造するために使用される。酸化炉1は、2つの鉛直な側壁2a、2bと、2つの鉛直な端壁2c、2dと、上壁2eと、底壁2fと、で構成されるハウジング2を具備する。ハウジング2は、処理される繊維20が入出誘導され、且つ、特別なロック装置を有する端壁2c及び端壁2dの2つの領域3、4を除いて気密である。
【0015】
特に図2に示すように、ハウジング2の内部は、鉛直な隔壁5によって実際のプロセスチャンバー6と、このプロセスチャンバーの側部に配置された空気誘導チャンバー7、8、9、10、11、12と、に分けられる。全体において、酸化炉1の内部は、図2に示された鉛直な中心面S−Sに対し、実質的に鏡映対称に構成される。
【0016】
参照番号13によって全体として示され、以下に詳細に説明された吹出装置は、プロセスチャンバー6の中央領域に配置されている。吸込装置14及び吸込装置15は、それぞれ入口領域3及び出口領域4に隣接したプロセスチャンバー6の、2つの外端領域に配置されている。
【0017】
2つの方向的に反対の空気循環路が、ハウジング2の内部で維持されており、例えば空気は、吸込装置14、15から開始し、空気誘導チャンバー7及び空気誘導チャンバー12を通ってフィルター16及びフィルター17へ、次いで、加熱ユニット18a及び加熱ユニット18bを通して空気誘導チャンバー8及び空気誘導チャンバー11へと、図2に示される矢印の方向に誘導される。加熱された空気は、通風機21a及び通風機21bによって空気誘導チャンバー8及び空気誘導チャンバー11から引きこまれ、空気誘導チャンバー9及び空気誘導チャンバー10へと吹き出される。そこから空気が、それぞれの場合において、以下で更に詳細に説明した吹出装置13の半分の一方に到達し、そこからプロセスチャンバー6へと、次いでそこから吸込装置14及び吸込装置15へと反対方向に流れ、それによって2つの空気循環路が一巡する。
【0018】
2つの出口30a、30bが、ハウジング2の壁に設けられている。これらは、酸化炉1の空気のバランスを維持するように、酸化工程中生成され、又は、入口領域3及び出口領域4によって新鮮な空気としてプロセスチャンバー6に到達した、それらの大量のガス又は空気を吐出するために使用され得る。毒性成分も含み得る吐出されたガスは、燃焼後の熱のために供給される。それによって生成された熱は、少なくとも酸化炉1に供給された新鮮な空気を予熱するのに使用され得る。
【0019】
吹出装置13の詳細構造を、以下に説明する。
【0020】
それは、吹出ボックス18の2つの「積層体」を具備する。これらの各吹出ボックス18は、長手寸法が、プロセスチャンバー6の長手方向にその全幅に亘り横に延在した中空直方体の形状である。それぞれプロセスチャンバー6に面する吹出ボックス18の狭い側部は、孔あき板18aとして構成される。各吹出ボックス18のそれぞれの端面は、空気誘導チャンバー9及び空気誘導チャンバー10と連絡され、それによって、通風機20及び通風機21によって輸送された空気がそれぞれ吹出ボックス18の内部に流れ、孔あき板18aによってそこから吹き出し得る。
【0021】
2つの積層体のそれぞれにおいて、様々な吹出ボックス18は、互いに他方の上方において小さな距離で配置されており、吹出ボックス18の2つの積層体は、炉の長手方向又は繊維20の移動方向から見ると、同様に他方から離間されている。好適には(図1に示した関係とは異なり)、積層状の2つの吹出ボックス18間の鉛直距離は、プロセスチャンバー6の長手方向における積層体18間の距離と等しい。
【0022】
2つの吸込装置14、15は、プロセスチャンバー6全体を通して横断する方向において、吹出ボックス18と類似した方法で延在する吸込ボックス19の、それぞれの積層体によって実質的に形成され、プロセスチャンバー6の長手領域に横断して延在するそれらの狭い側部で、孔あき板19aとして構成される。ここで孔あき板19aの孔は、いかなる幾何学的形状でも可能である。吸込装置14、15内の吸込ボックス19は、吹出装置13内の吹出ボックス18のように他方から等しい鉛直距離にある。
【0023】
処理される繊維20は、偏向ローラー21によって酸化炉1に供給され、ロック装置22を通過し、本発明との関係において着目すべきことではないが、ロック装置22は、ガスが、プロセスチャンバー6から外へ漏れるのを防ぐために機能する。それから繊維20は、互いに他方の上方に配置された吸込ボックス19間の間隙を通り、プロセスチャンバー6を通り、吹出装置13において互いに他方の上方に配置された吹出ボックス18間の間隙を通り、プロセスチャンバー6の対向する端部で互いに他方の上方に配置された吸込ボックス19間の間隙を通り、更に、ロック装置23を通って案内される。
【0024】
概説したプロセスチャンバー6を通る繊維20の経路が蛇行式で複数回繰り返されるようにするため、軸線が並行に配置された互いに他方の上方にある複数の偏向ローラー24及び偏向ローラー25が、酸化炉1の両方の端部領域に設けられている。プロセスチャンバー6を通る最上部の経路の後、繊維20は、酸化炉1を出て、更なる偏向ローラー26によって案内される。
【0025】
プロセスチャンバーを通る繊維20の蛇行経路の間、これらは、高温の酸素含有空気によって覆われ、それによって酸化される。酸化炉1からの出口は、実質的に少なくとも1つの酸化工程を完了させる。更なる酸化ステップを以下に示す。
【0026】
図3は、吹出装置13の領域における空気の流れの移動を示す。対応する通風機20及び通風機21によって各吹出ボックス18の内部に流れ入る空気は、入口ボックス18の両方の狭い長手側部に設けられた孔あき板18aによって、吹出ボックス18の両方の反対側部に吹き出され得る。それによって、吹出ボックス18の2つの積層体間の空隙の領域において、空気の流れは、図3に示す対向する方向において衝突する。この衝突によって空気をそこで旋回させ、プロセスチャンバー6の対向する端部領域の方向における各2つの積層体内の互いに他方の上方に配置された吹出ボックス18間の間隙を通り、それによって対応する吸込装置14、15を通る流れを生じさせる。吹出ボックス18によって運ばれる空気のこの部分は、吹出ボックス18間に配置された経路において繊維20周りにも流れる。従ってこれらの経路は、酸化工程において有効である。従って、等しい炉の長さで、冒頭で概説した先行技術による酸化炉と比較して、炉の高さを低くすることが可能となる。これに関連する利点は既に上述した通りである。
【0027】
図4及び図5は、酸化炉の別の例示的実施形態において使用されることができ、且つ、各場合において、一対の吹出ボックス18と取り換え可能な図1から図3の吹出ボックス118を示し、この例示的実施形態において、2つの様々な積層体の他方に隣接して同じ高さで配置される。プロセスチャンバー6の長手方向に見て離間して配置された2つの個々の吹出ボックス18の代わりに、プロセスチャンバー6の長手方向に対し並行に見た寸法が図1の2つの吹出ボックス18の対応する寸法の和に相当する、共通の吹出ボックス118が使用され得る。
【0028】
図4及び5による吹出ボックス118は、2つの相互に隣接した吹出ボックス18間の空隙の代わりに、各場合において複数の空気出口孔130を上面及び底面に有することによって、空気を、図4及び5の矢印で示すように上面及び底面の(共通の)吹出ボックス118から吹き出すことができる。これは、図3に示されたものと類似したフローパターンが実現されることを可能とし、空気の流れを、繊維の移動方向に並行な吹出ボックス118の上面及び底面に沿って増加させ、その空気の流れが、吹出ボックス間で繊維を覆い、そこで酸化工程を開始することをも可能とする。
【0029】
図4及び図5の場合において、図2の空気誘導チャンバー9及び空気誘導チャンバー10は、一体化され、共に吹出ボックス118に空気を供給する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の酸化処理のため、特にカーボンファイバーの製造のための酸化炉であって、
a)繊維の入口領域及び出口領域を除いて気密なハウジングと、
b)該ハウジングの内部に配置されたプロセスチャンバーと、
c)該プロセスチャンバーの中央領域に配置されることによって、反対方向に前記プロセスチャンバーへと熱風が吹き出されることができ、互いに他方の上方で鉛直方向に離間して配置され、且つ、熱風の入口孔及び反対側部に熱風のための出口孔をそれぞれ有する複数の吹出ボックスを具備する吹出装置と、
d)前記プロセスチャンバーの両方の対向する端部領域にあって、前記プロセスチャンバーから熱風を引き込むためのそれぞれの吸込装置と、
e)前記吹出装置、前記プロセスチャンバー及び2つの前記吸込装置を通して熱風を循環させる少なくとも1つの通風機と、
f)循環熱風の流体経路に配置された少なくとも1つの加熱装置と、
g)互いに他方の上方に配置された前記吹出ボックス間の間隙を通って蛇行式で繊維を案内するガイドローラーと、を有する酸化炉において、
h)互いに他方の上方の空間に配置された前記吹出ボックス(18)の2つの積層体が設けられ、繊維(20)の移動方向から見て他方の後方の空間に配置されており、且つ/又は、
i)積層状の前記吹出ボックス(118)が、上面及び底面において熱風のための少なくとも1つの付加的出口孔(130)を有することを特徴とする酸化炉。
【請求項2】
前記吹出ボックス(18)の隣接して配置された積層体間の水平距離が、積層体の前記吹出ボックス(18)間の鉛直距離の2倍に等しく、且つ、最大で、酸化炉(1)の長手方向において、前記吹出ボックス(18)の寸法と等しいことを特徴とする請求項1に記載の酸化炉。
【請求項3】
前記吹出ボックス(18)が、上面及び底面において中心線に沿って、熱風のための複数の付加的出口孔(130)を有することを特徴とする請求項1に記載の酸化炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−519005(P2013−519005A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552293(P2012−552293)
【出願日】平成23年1月29日(2011.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000415
【国際公開番号】WO2011/098223
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(511056714)アイゼンマン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】