酸化膜厚測定方法及び酸化膜厚測定装置
【課題】鋼鈑の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さを非接触で測定できるようにする。
【解決手段】表層からヘマタイト2b及びマグネタイト2aが形成されている2層構造のスケール2が表面に形成されている熱延鋼鈑1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ヘマタイト2bの厚さを求める。そして、熱延鋼鈑1に対してレーザ光を照射して、ヘマタイト2bを除去すると共に、マグネタイト2aを、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させる。このようにしてスケール2をウスタイト2cだけにした後、熱延鋼鈑1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ウスタイト2cの厚さを求める。そして、算出したヘマタイト2bの厚さとウスタイト2cの厚さとから、スケール2の全体の厚さを算出する。
【解決手段】表層からヘマタイト2b及びマグネタイト2aが形成されている2層構造のスケール2が表面に形成されている熱延鋼鈑1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ヘマタイト2bの厚さを求める。そして、熱延鋼鈑1に対してレーザ光を照射して、ヘマタイト2bを除去すると共に、マグネタイト2aを、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させる。このようにしてスケール2をウスタイト2cだけにした後、熱延鋼鈑1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ウスタイト2cの厚さを求める。そして、算出したヘマタイト2bの厚さとウスタイト2cの厚さとから、スケール2の全体の厚さを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜厚測定方法及び酸化膜厚測定装置に関し、特に、鋼板の表面に形成されている酸化膜の厚さを測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
薄板鋼板を製造する場合、加熱されたスラブを熱間圧延工程に送り熱間圧延する。このようにして熱間圧延された鋼板は酸洗工程へ送られる。この熱間圧延工程から酸洗工程に送れられる間の自然冷却により、鋼板の表面には酸化膜(スケール)が生成される。酸洗工程では、酸洗槽に鋼板を通して酸化膜を除去する。
【0003】
ここで、酸洗工程において酸化膜を効率よく、且つ確実に除去するために、酸洗工程の前に、鋼板の表面に形成された酸化膜の厚さを把握することが重要になる。
特許文献1には、Hg−Xeランプからの光をステンレス鋼板に照射し、その反射光を測定することにより、ステンレス鋼板の表面に形成されたスケールの厚さを測定することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、3[μm]の波長(最も短い波長)と16[μm](最も長い波長)との2波長で、ステンレス鋼板の表面からの放射輝度を測定し、測定した放射輝度と、予め定めた各波長におけるステンレス鋼板の表面の酸化膜厚と放射率との関係とに基づいて、ステンレス鋼板の表面の酸化膜厚を求めることが記載されている。
更に、特許文献3には、金属材料の表面に付着した酸化膜中の音速が超音波の周波数によって変化することを利用して、共鳴次数の異なる2以上の超音波共鳴周波数から酸化膜の厚さを求めることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−33517号公報
【特許文献2】特開平11−325839号公報
【特許文献3】特開2002−372412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した酸洗工程前の鋼板の表面に形成される酸化膜は、光学的に黒色に近いマグネタイト(Fe3O4)を主成分とする。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術で対象としているステンレス鋼板の表面には、Cr、Ni、Muの酸化物を主成分とする酸化膜が形成される。この酸化膜は光学的に透明に近い。このため、可視光の反射測定(Hg−Xeランプからの光の反射光の測定)や赤外放射による測定(3[μm]、16[μm]の波長の光による放射輝度の測定)で酸化膜を測定することができる。ところが、可視光や赤外光は、マグネタイトを透過しないため、特許文献1及び2に記載の技術では、マグネタイトを主成分とする酸化膜の厚さを測定することができないという問題点があった。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術では、超音波を用いた測定を行っているため、金属材料にプローブ(探触子)を接触させなければならないという問題点があった。更に、特許文献3に記載の技術は、全体の厚さの変化量を測定するので、金属材料の厚さに比べて酸化膜の厚さが薄い場合には、酸化膜の厚さを正確に測定することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さを非接触で測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の酸化膜厚測定方法は、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定方法であって、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射ステップと、前記レーザ光照射ステップによりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射ステップと、前記テラヘルツ波照射ステップにより照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の酸化膜厚測定装置は、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定装置であって、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射手段と、前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射手段と、前記テラヘルツ波照射手段により照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜にレーザ光を照射して、マグネタイトを、そのマグネタイトと略同じ厚さのウスタイトに変態させる。このようにマグネタイトをウスタイトに変態させてから、酸化膜にテラヘルツ波を照射し、照射したテラヘルツ波の反射波の信号を用いて、酸化膜の厚さを求める。したがって、電気伝導率と透磁率とが高いために従来の方法では非接触で測定することが困難であったマグネタイトの厚さを非接触で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、熱間圧延された鋼板の表面に形成されている酸化膜の厚さを、酸洗設備(酸洗槽)に送られる前に測定する場合を例に挙げて説明する。
【0013】
熱間圧延された直後の鋼板の表面の酸化膜は、表層よりFe2O3(ヘマタイト)、Fe3O4(マグネタイト)、FeO(ウスタイト)の3層構造になっているが、熱延後の鋼板温度が570[℃]以下になるとウスタイトは不安定となり、4FeO→Fe3O4+Feの共析変態が進み、マグネタイト中に鉄粒子が析出した構造となる。本実施形態では、このような共析変態により、鉄粒子を含むマグネタイトと、ヘマタイトとの2層構造となった酸化膜の厚さを測定するようにする。尚、以下の説明では、熱間圧延された鋼板を、必要に応じて熱延鋼板と称し、酸化膜を、必要に応じてスケールと称する。
【0014】
図1は、酸化膜厚測定システムの構成の一例を示す図である。また、図2は、熱延鋼板1の表面に形成されているスケールの様子の一例を示す図である。
図1において、熱延鋼板1は、矢印の方向に搬送され、矢印の先には、図示しない酸洗槽が設けられている。
酸化膜厚測定システムは、パルスTHz波発生システム100、200と、レーザ光発生システム300と、酸化膜厚測定装置400とを有している。
【0015】
パルスTHz波発生システム100は、図2に示すように、鉄粒子を含むマグネタイト2aと、ヘマタイト2bとの2層構造となったスケール2に対して、テラヘルツ波(電磁波)を照射する。本実施形態では、例えば、0[Hz]から3[THz]の周波数成分を含む、パルス幅が0.5[psec]のパルス波をテラヘルツ波として照射するようにしている。マグネタイト2aは、このようなテラヘルツ波の大部分を反射する。また、一部が内部に侵入したとしても、吸収されるため、マグネタイト2aと熱延鋼板1との界面からの反射波は検知可能なオーダーでは発生しない。したがって、図2に示すように、パルスTHz波発生システム100から照射されるテラヘルツ波3aは、ヘマタイト2bの表面と、ヘマタイト2b及びマグネタイト2aの界面で反射する。尚、測定対象の厚みによって、測定に適した帯域(パルス幅)を選定することは容易である。例えば、ヘマタイト厚が10μm以下と薄い場合は、10[THz]以上まで帯域を広げた短パルスを用いた測定を行う。
そして、パルスTHz波発生システム100は、以上のようにして反射されたテラヘルツ波を検出して酸化膜厚測定装置40に出力する。
【0016】
レーザ光発生装置300は、パルスTHz波発生システム100により、テラヘルツ波3aが照射され、そのテラヘルツ波3aの反射波が検出された後に、マグネタイト2aと、ヘマタイト2bとの2層構造となったスケール2に対して、レーザ光を照射する。
本実施形態では、レーザ光の照射によって、スケール2の表面の最高到達温度が1000[℃]以上になるようにする。これは、ヘマタイト2bを除去すると共に、Fe3O4+Fe→4FeOで示される逆変態を起こし、マグネタイト2aを、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cにするためである(図2を参照)。従来からこの逆変態反応は、580[℃]以上で起こることが知られているが、レーザ照射時のように加熱時間が短い場合にはこの温度よりも高い温度が必要となる。本願発明者らは、スケール2の表面の温度を瞬間的に1000[℃]以上に加熱すれば、1[sec]未満という非常に短い加熱時間でもウスタイト2cへの逆変態が生じることを見出した。
【0017】
このようなウスタイト2cの生成は、加熱量を大きくし、スケール2の表面温度を上げるほど有利である。ここでスケール2を溶融させると更に効果的である。これは、溶融によって、マグネタイト2a(Fe3O4)と、マグネタイト2a中に析出された鉄粒子(Fe)とが完全に混じりあるため、逆変態によるウスタイト2c(FeO)の生成速度が増加するためである。溶融温度はスケール2の組成にも依存するが、1500[℃]程度である。
【0018】
しかしながら、加熱量を大きくしすぎると、母材の表層が溶融・再凝固により変形してしまい、酸洗後の外観不良や、後工程において表面疵が発生する原因となる。したがって母材の表層が溶融・再凝固されてしまうことが回避されるように、レーザ光を照射する。母材である熱延鋼板1の融点は1500[℃]程度であるから、熱延鋼板1とスケール2との界面の温度が1500[℃]以下となるようにレーザ光の照射条件を定める。
【0019】
以上の温度条件が満たされる限り、レーザ光発生装置300から照射されるレーザ光は、パルス波であっても、連続波であってもよい。また、波長、パワー、ビーム形状、ビームの走査速度、ビームの本数等のレーザ照射パラメータの条件も特に限定されるものではない。尚、母材(熱延鋼板1)の表面温度は、スケール2の表面におけるレーザ波長に依存するレーザ光の吸収率、スケール2の組成、及びスケール2の厚さによって異なる。スケール2の凡その厚さと吸収率が判れば、簡単な熱伝導計算プログラムを実行することによって、与えられたレーザ照射パラメータの条件下でのスケール2の表面と、母材(熱延鋼板1)の表面との温度の概算が可能である。
【0020】
パルスTHz波発生システム200は、レーザ光発生装置300から照射されるレーザ光によって、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cのみになったスケール2に対して、テラヘルツ波(電磁波)を照射する。パルスTHz波発生システム200は、例えば、前述したパルスTHz波発生システム100で発生させるテラヘルツ波と同じテラヘルツ波を発生させる。図2に示すように、パルスTHz波発生システム200から照射されるテラヘルツ波3bは、ウスタイト2cの表面と、ウスタイト2c及び熱延鋼板1の界面で反射する。
パルスTHz波発生システム200は、以上のようにして反射されたテラヘルツ波を検出して酸化膜厚測定装置400に出力する。
【0021】
前述したように、マグネタイト2aはテラヘルツ波3を殆ど反射するため、マグネタイト2aの内部にテラヘルツ波3が進入しない。これに対し、ウスタイト2cの内部にはテラヘルツ波3が進入する。そこで本実施形態では、マグネタイト2aを、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させてからテラヘルツ波3bをウスタイト2cに照射し、照射したテラヘルツ波3bの反射波を用いて後述するようにしてウスタイト2cの厚さを求めることにより、マグネタイト2aの厚さを求めるようにする。
【0022】
ここで、パルスTHz波発生システム100、200の構成の一例について説明する。尚、パルスTHz波発生システム100、200の構成は同じであるので、ここでは、パルスTHz波発生システム10の構成について説明し、パルスTHz波発生システム200の構成については詳細な説明を省略する。
図3は、パルスTHz波発生システム100の構成の一例を示す図である。
図3において、チタンサファイアレーザ101は、短パルスの赤外レーザ光を発生する。この赤外レーザ光は、ビームスプリッタ102a〜102dを介してテレスコープ103に到達する。また、テレスコープ103に到達する過程で、赤外レーザ光は、チョッパ110で光学的な変調が行われた後、ロックインアンプ104に到達する。
【0023】
テレスコープ103に到達した赤外レーザ光は平行光になり、エミッタ105に到達する。エミッタ105は、非線形光学効果又は双極子放射を利用してテラヘルツ波を発生させる。エミッタ105は、双極子放射の場合、例えばガリウム砒素(GaAs)の半導体基板と、半導体基板に設けられた電極に直流電圧を印加する直流電圧源とを備える。この直流電圧源により、赤外レーザ光の入光方向に対して垂直方向の電界が半導体基板に発生する。
エミッタ105で発生したテラヘルツ波は、ビームスプリッタ102eを透過した後、放物面鏡106aで反射して、スケール2に向けて照射される。
スケール2に照射されたテラヘルツ波は、スケール2で反射し、放物面鏡106a、ビームスプリッタ102f、放物面鏡106bを介して、非線形光学素子107に到達する。
【0024】
また、チタンサファイアレーザ101から発生した赤外レーザ光は、ビームスプリッタ102a、102gを介して、ビームスプリッタ102h〜102kを備える遅延部(Delay)108を伝搬する。遅延部108は、前述したようにして非線形光学素子107に到達するテラヘルツ波に対し、ビームスプリッタ102a、102gを介して伝搬する赤外レーザ光を時間遅延させるためのものである。このような時間遅延の度合いを変えることにより、テラヘルツ波の包絡形状を非線形光学素子107で検出することができる。
【0025】
遅延部108を伝搬した赤外レーザ光は、ビームスプリッタ102l、102f、放物面鏡106bを介して非線形光学素子107に到達する。
非線形光学素子107は、例えばテルル化亜鉛(ZnTe)のような半導体基板であり、特定の方向に電界が印加されると屈折率変化を生じる、いわゆる電気光学効果を有する物質である。この半導体基板にテラヘルツ波が入光すると、直線偏光であった赤外レーザ光が僅かに楕円偏光に変わる。この偏光変化をλ/4プレート108で、円偏光に変換し、さらにディテクタ109を構成する偏光ビームスプリッタでs偏光成分とp偏光成分とに分配し、フォトディテクタによって電気信号として検出する。予め、テラヘルツ波がないときの信号をゼロになるように、非線形光学素子107とλ/4プレート108を調整しておけば、テラヘルツ波の強度に応じた信号変化が得られる。尚、この信号は微小であるため、ロックインアンプ104を用いる。
ロックインアンプ104は、チョッパ110で変調された赤外レーザ光に同期して発生したテラヘルツ波と、ディテクタ109で検出された"テラヘルツ波の電界強度に応じた、赤外レーザ光のs偏光成分及びp偏光成分の比率の変化"とに基づいて、テラヘルツ波の信号を背景ノイズから抽出することにより、テラヘルツ波を検出し、酸化膜厚測定装置40(PC)に出力する。
【0026】
次に、酸化膜厚測定装置400について説明する。まず、スケール2の厚さを測定する際の酸化膜厚測定装置400における動作の概要の一例を説明する。
図4は、酸化膜厚測定装置400における動作の概要の一例を説明する図である。
前述したように、パルスTHz波発生システム100、200から発生したテラヘルツ波3は、スケール2の表面や、熱延鋼板1とスケール2との界面等で反射してパルスTHz波発生システム100、200で検出される。
【0027】
酸化膜厚測定装置400は、パルスTHz波発生システム100、200で検出されたテラヘルツ波3の反射波の信号から、信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成し、この時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、酸化膜厚測定装置400は、FFTを実行した結果を用いて、反射率と周波数との関係を示すスペクトル5を生成し、このスペクトル5の周期を用いて測定対象のスケール2の厚さを算出する。
【0028】
図5は、酸化膜厚測定装置400の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、酸化膜厚測定装置400は、CPU、ROM、RAM、及びHDD等を備えるコンピュータを用いることにより実現できる。
制御部401は、パルスTHz波発生システム100、200及びレーザ光発生システム300の動作を制御するためのものである。
制御部401は、例えば、酸化膜厚測定装置400に接続されたUI(ユーザインタフェース)の操作に基づいて、パルスTHz波発生指示部402に対してパルスTHz波発生システム100の動作の開始を指示する。パルスTHz波発生指示部402は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム100に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100からテラヘルツ波3が発生し、そのテラヘルツ波3の反射波の信号が、パルスTHz波取得部403で取得される。
【0029】
テラヘルツ波3の反射波の信号が、パルスTHz波取得部403で取得されると、制御部401は、レーザ光発生指示部404に対して、レーザ光発生システム300の動作開始を指示する。レーザ光発生指示部404は、この制御部401からの指示に基づいて、レーザ光発生システム300に対して、前述した照射条件のレーザ光を一定時間発生させることを指示する。これにより、レーザ光発生システム300からレーザ光が発生する。図2に示したように、このレーザ光により、ヘマタイト2bは除去され、且つ、マグネタイト2aは、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態する。
【0030】
レーザ光発光指示部404に対してレーザ光発生システム300の動作開始を指示してから一定時間が経過すると、制御部401は、パルスTHz波発生指示部405に対してパルスTHz波発生システム200の動作開始を指示する。パルスTHz波発生指示部405は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム200に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム200からテラヘルツ波3が発生し、そのテラヘルツ波3の反射波の信号が、パルスTHz波取得部406で取得される。
【0031】
以上のようにしてテラヘルツ波3の反射波の信号がパルスTHz波取得部406で取得されると、制御部401は、熱延鋼板1上の他の位置で測定を行うように、パルスTHz波発生指示部402、405、レーザ光発生指示部404に対して動作の指示を行う。そして、パルスTHz波発生指示部402、405、レーザ光発生指示部404は、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300に対して、次の測定位置までの移動を指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300は、次の測定位置まで移動する。
制御部401、パルスTHz波発生指示部402、405、及びレーザ光発生指示部404は、予め定められた全ての測定位置での測定が行われるまで、以上のような動作を繰り返し行う。
【0032】
パルスTHz波取得部403は、テラヘルツ波3の反射波の信号を取得すると、そのテラヘルツ波3の反射波の信号から、信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成する。
FFT部407は、パルスTHz波取得部403で生成された時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部407は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、規格化された反射率の周波数スペクトル(反射率と周波数との関係を示すスペクトル5)を生成する。ここで、基準スペクトルは、表面にスケール2がない熱延鋼板1にテラヘルツ波3を照射することにより得られた"反射波の信号強度と時間との関係を示す時間波形"に対してFFTを行うことにより得られる。この基準スペクトルは、データ記憶部408に予め記憶されている。
【0033】
厚さ導出部409は、FFT407で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数f[Hz]と、光速c[m/s]と、測定対象であるヘマタイト2bの屈折率n[−]とを、以下の(1)式に代入して、ヘマタイト2bの厚さd[μm]を算出する。
d=c/(2πnf) ・・・(1)
(1)式において、光速cと、ヘマタイト2bの屈折率nは、データ記憶部408に予め記憶されている。
【0034】
ここで、ヘマタイト2bの屈折率nは、例えば次のようにして得られる。
まず、厚さが既知であるヘマタイト2bに対してテラヘルツ波3を照射し、そのテラヘルツ波3のヘマタイト2bからの透過波を検出する。次に、検出した透過波から透過強度T(ω)と位相の遅れφ(ω)とを求め、求めた透過強度T(ω)と位相の遅れφ(ω)とを用いて、逐次計算法により、ヘマタイト2bの複素屈折率を算出する。そして、この複素屈折率の実効値をヘマタイト2bの屈折率nとして、データ記憶部408に記憶させる。
尚、データ記憶部408に記憶する屈折率nを得る方法は、このようなものに限定されない。例えば、前述したようにして算出した複素屈折率のデータに対して、ドルーデモデル等を使ってフィッティングを行い、フィッティングを行った結果から、屈折率nを得るようにしてもよい。尚、ドルーデモデルを使ってフィッティングを行う場合には、キャリア密度と緩和時間とをフィッティングパラメータとして用いてフィッティングを行うことができる。
【0035】
図6は、FFT407で生成される"反射率と周波数との関係を示すスペクトル5"の一例を示す図である。また、図7は、図6に示したスペクトル5から算出したヘマタイト2b(各サンプル1〜4)の厚さ(測定結果)と、断面検鏡で観測したヘマタイト2b(各サンプル1〜4)の厚さの実測値(断面検鏡)とを表形式で示す図である。
図7から、本実施形態の酸化膜厚測定装置400で前述したようにして算出した"ヘマタイト2bの厚さd"は、実測値に近い値を示すことが分かる。
【0036】
図8は、テラヘルツ波を熱延鋼板1に照射した場合の反射波と、可視光・近赤外光を熱延鋼板1に照射した場合の反射波とを概念的に示す図である。
熱延鋼板1の表面は、1[μm]〜10[μm]程度の粗度を有している。このような粗度を有している熱延鋼板1の表面に可視光・近赤外光6を照射すると、図8(b)に示すように、その反射波は大きく散乱する。一方、このような粗度を有している熱延鋼板1は、テラヘルツ波には鏡面として作用するため、熱延鋼板1の表面にテラヘルツ波を照射すると、図8(a)に示すように、その反射波は殆ど散乱しない。したがって、本実施形態のようにテラヘルツ波3を用いてスケール2の厚さを測定することにより、スケール2の厚さを精度よく測定することができる。
【0037】
図5の説明に戻り、FFT部410は、パルスTHz波取得部406で生成された時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部410は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、規格化された反射率の周波数スペクトル(反射率と周波数との関係を示すスペクトル5)を生成する。基準スペクトルは、例えば、FFT407で使用されるものと同じものであり、データ記憶部411に予め記憶されている。
図9は、FFT410で生成される"反射率と周波数との関係を示すスペクトル5"の一例を示す図である。本実施形態では、0.2[THz]から2.0[THz](好ましくは0.2[THz]から1.5[THz]、より好ましくは0.5[THz]から1.5[THz])の低周波数領域で、ウスタイト2cの厚みを求めるための測定を行うようにしている。高次の干渉パターンがスペクトル5に含まれているため、2[THz]よりも高周波数の領域を使用すると、得られるスペクトル5に様々な周期のパターンが重畳される虞があり、ウスタイト2cの厚さを正確に求めることが困難になるからである。但し、測定対象のウスタイト厚によって、異なる周波数領域で測定することもある。
【0038】
厚さ導出部412は、FFT410で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数f[Hz]と、光速c[m/s]と、測定対象であるウスタイト2cの屈折率n[−]とを、前記(1)式に代入して、ウスタイト2cの厚さd[μm]を算出する。ただし、ここでは、nは、ウスタイト2cの屈折率nとなる。尚、光速cと、ウスタイト2cの屈折率nは、データ記憶部408に予め記憶されている。また、ウスタイト2cの屈折率nは、ヘマタイト2bの屈折率nと同様にして得ることができるので、その詳細な説明を省略する。
【0039】
厚さ表示部413は、厚さ導出部409で算出されたヘマタイト2bの厚さと、厚さ導出部412で算出されたウスタイト2cの厚さとを加算して、スケール2の全体の厚さを算出する。そして、厚さ表示部413は、熱延鋼板1上の所定の領域についてスケール2の全体の厚さを算出すると、算出したスケール2の全体の厚さを、液晶ディスプレイ等を備えた表示装置500に表示するための画像データを生成し、生成した画像データを表示装置500に出力する。これにより、スケール2の全体の厚さに関する情報が表示装置500に表示される。オペレータは、表示装置500に表示された情報に基づいて、後工程である酸洗設備における酸洗速度を決定する。
【0040】
尚、ここでは、スケール2の全体の厚さに関する情報を表示する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、スケール2の全体の厚さに関する情報を、酸洗設備の制御装置に送信するようにしてもよい。このようにした場合、酸洗設備の制御装置は、スケール2の全体の厚さに関する情報に基づいて、酸洗速度を決定し、決定した酸洗速度となるように酸洗設備を自動的に制御することができる。
【0041】
次に、図10のフローチャートを参照しながら、酸化膜厚測定装置400における処理の流れの一例を説明する。
まず、ステップS1において、パルスTHz波発生指示部402は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム100に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100から熱延鋼板1の表面のスケール2に向けてテラヘルツ波3が照射される。このように本実施形態では、ステップS1の処理を行うことにより、第2のテラヘルツ波照射手段が実現される。
【0042】
次に、ステップS2において、パルスTHz波取得部403は、ステップS1で発生したテラヘルツ波3の反射波の信号を受信するまで待機する。テラヘルツ波3の反射波の信号を受信すると、その反射波の信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成して、ステップS3に進む。このように本実施形態では、ステップS2の処理を行うことにより、第2の検出手段が実現される。
ステップS3に進むと、FFT部407は、信号強度と時間との関係を示す時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部407は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、反射率と周波数との関係を示すスペクトル5を生成する。
【0043】
次に、ステップS4において、厚さ導出部409は、ステップS3で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数fと、光速cと、測定対象であるヘマタイト2bの屈折率nとを、前記(1)式に代入して、ヘマタイト2bの厚さdを算出して記憶媒体に記憶する。
以上のように本実施形態では、ステップS3、S4の処理を行うことにより、酸化膜厚導出手段が実現される。
次に、ステップS5において、レーザ光発生指示部404は、制御部401からの指示に基づいて、レーザ光発生システム300に対して、レーザ光を一定時間発生させることを指示する。これにより、レーザ光発生システム300から前述した照射条件のレーザ光が発生する。このレーザ光によって、ヘマタイト2bは除去され、且つ、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cが生成される。このように本実施形態では、ステップS5の処理を行うことにより、レーザ光照射手段が実現される。
【0044】
次に、ステップS6において、制御部401は、レーザ光発光指示部404に対してレーザ光発生システムの動作開始を指示してから一定時間が経過するまで待機する。一定時間が経過すると、ステップS7に進む。
ステップS7に進むと、パルスTHz波発生指示部405は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム200に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム200から熱延鋼板1の表面のスケール2(ウスタイト2c)に向けてテラヘルツ波3が発生する。このように本実施形態では、ステップS7の処理を行うことにより、テラヘルツ波照射手段が実現される。
【0045】
次に、ステップS8において、パルスTHz波取得部406は、ステップS7で発生したテラヘルツ波3の反射波の信号を受信するまで待機する。テラヘルツ波3の反射波の信号を受信すると、その反射波の信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成して、ステップS9に進む。このように本実施形態では、ステップS8の処理を行うことにより、検出手段が実現される。
ステップS9に進むと、FFT部410は、信号強度と時間との関係を示す時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部410は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、反射率と周波数との関係を示すスペクトル5を生成する。
【0046】
次に、ステップS10において、厚さ導出部409は、ステップS9で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数fと、光速cと、測定対象であるウスタイト2cの屈折率nとを、前記(1)式に代入して、ウスタイト2cの厚さdを算出して記憶媒体に記憶する。
次に、ステップS11において、厚さ表示部413は、ステップS4で算出されたヘマタイト2bの厚さと、ステップS10で算出されたウスタイト2cの厚さとを加算して、スケール2の全体の厚さを算出して記憶媒体に記憶する。
以上のように本実施形態では、ステップS9〜S11の処理を行うことにより、酸化膜導出手段が実現される。
【0047】
次に、ステップS12において、制御部10は、熱延鋼板1上の"予め定められた全ての測定位置"での測定が行われたか否かを判定する。この判定の結果、予め定められた全ての測定位置での測定が行われていない場合には、ステップS13に進む。ステップS13に進むと、パルスTHz波発生指示部402、405、レーザ光発生指示部404は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300に対して、次の測定位置までの移動を指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300は、次の測定位置まで移動する。そして、次の測定位置でステップS1〜S12の処理を行う。
【0048】
一方、予め定められた全ての測定位置での測定が行われた場合には、測定が終了したと判定し、ステップS14に進む。ステップS14に進むと、厚さ表示部413は、ステップS11で算出したスケール2の全体の厚さを、液晶ディスプレイ等を備えた表示装置500に表示するための画像データを生成し、生成した画像データを表示装置500に出力する。これにより、スケール2の全体の厚さに関する情報が表示装置500に表示される。
【0049】
以上のように本実施形態では、表層からヘマタイト2b及びマグネタイト2aが形成されている2層構造のスケール2が表面に形成されている熱延鋼板1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ヘマタイト2bの厚さを求める。そして、熱延鋼板1に対してレーザ光を照射して、ヘマタイト2bを除去すると共に、マグネタイト2aを、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させる。このようにしてスケール2をウスタイト2cだけにした後、熱延鋼板1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ウスタイト2cの厚さを求める。そして、求めたヘマタイト2bの厚さとウスタイト2cの厚さとから、スケール2の全体の厚さを算出する。
【0050】
したがって、本実施形態では、以下のような効果を奏する。
まず、1[μm]〜10[μm]程度の粗度を有している熱延鋼板1は、テラヘルツ波3には鏡面として作用するため、熱延鋼板1の表面にテラヘルツ波3を照射するとその反射波は殆ど散乱しない。したがって、テラヘルツ波3を用いてスケール2の厚さを測定することにより、スケール2の厚さを精度よく測定することができる。
また、マグネタイト2aは、テラヘルツ波3を殆ど反射し、マグネタイト2aの内部にテラヘルツ波3は進入しないが、ウスタイト2cの内部にはテラヘルツ波3が進入する。よって、マグネタイト2aを、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させてからテラヘルツ波3をウスタイト2cに照射し、照射したテラヘルツ波3の反射波を用いてウスタイト2cの厚さを求め、求めたウスタイト2cの厚さをマグネタイト2aの厚さとすることにより、非接触での厚さの測定が困難であったマグネタイト2aの厚さを精度よく非接触で測定することができる。また、ウスタイト2cは、マグネタイト2aよりも速く酸洗を行うことができるので、マグネタイト2aがスケール2に含まれているレーザを照射しない部位と比べて、後工程である酸洗設備における酸洗残りなどを誘発するものではない。
以上のように、本実施形態では、熱延鋼板1の表面に形成されている、マグネタイト2aを主成分とするスケール2の厚さを、オンライン且つ非接触で正確に測定することができるようになる。
【0051】
また、本実施形態では、例えば、ウスタイト2cの厚さが2〜10μmであることから、0.2[THz]から2.0[THz]の低周波数領域で厚さ測定を行うようにした。したがって、得られるスペクトル5に様々な周期のパターンが重畳されることを防止することができ、ウスタイト2cの厚さをより正確に求めることができるようになる。
【0052】
尚、本実施形態では、熱間圧延された鋼板の表面に形成されている酸化膜(スケール2)の厚さを、酸洗設備(酸洗槽)に送られる前に測定する場合を例に挙げて説明したが、スケールをオンライン且つ非接触で測定していれば、酸化膜厚測定装置400の測定対象となるスケールは、このようなものに限定されるものではない。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、テラヘルツ波3としてパルス波を照射する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、パルスTHz波発生システム200の代わりに、単一周波数の連続波をテラヘルツ波として照射する連続THz波発生システムを用いる場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態と前述した第1の実施形態とは、パルス波の代わりに連続波を用いる点と、それに付随する処理の方法が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図10に付した符号と同一の符号を付すこと等により、詳細な説明を省略する。
【0054】
図11は、連続THz波発生システム600の構成の一例を示す図である。
図11において、分布帰還型レーザ1101、1102は、夫々、中心波長が異なるレーザ光を発生させる。例えば、分布帰還型レーザ1101は、パワーが150[mW]、中心波長が853[nm]のレーザ光を発生し、分布帰還型レーザ1102は、パワーが150[mW]、中心波長が855[nm]のレーザ光を発生する。これら分布帰還型レーザ1101、1102によって、0〜2.2[THz]の範囲で、分布帰還型レーザ1101、1102から発生するレーザ光の差周波を調整することができる。
【0055】
分布帰還型レーザ1101から発生したレーザ光は、ビームスプリッタ1103aで反射する。ビームスプリッタ1103aで反射したレーザ光と、分布帰還型レーザ1101から発生したレーザ光は、ビームコンバイナ(Beam Combiner)1104で合成され、合成されたレーザ光の半分がエミッタ1105へ、もう半分がビームスプリッタ1103bへ伝搬する。
エミッタ1105は、非線形光学効果又は双極子放射を利用してテラヘルツ波を発生させる。例えばガリウム砒素(GaAs)の半導体基板と、半導体基板に設けられた電極に直流電圧を印加する直流電圧源とを備える。この直流電圧源により、赤外レーザ光の入光方向に対して垂直方向の電界が半導体基板に発生する。赤外レーザ光が半導体基板に照射されると、半導体基板中のキャリアが励起され、分布帰還型レーザ1101、1102から発生するレーザ光の差周波に応じて電流が生じる。その結果、電流変化に比例したテラヘルツ波が発生する。
【0056】
発生したテラヘルツ波は、レンズ1106a、放物面鏡1107a、ビームスプリッタ1103c、及び放物面鏡1107bを介してスケール2に向けて照射される。
スケール2に照射されたテラヘルツ波は、放物面鏡1107b、ビームスプリッタ1103c、放物面鏡1107c、及びレンズ1106bを介して、非線形光学素子1108に到達する。
また、ビームコンバイナ1104からビームスプリッタ1103bに伝搬したレーザ光も、ビームスプリッタ1103bで反射し、エミッタ1105と同様の電極を設けた半導体基板1108に到達する。
半導体基板1108は、例えばガリウム砒素(GaAs)の半導体基板と、その半導体基板に設けられた電極からの電流を増幅する電流増幅器とを備えて構成される。半導体基板にテラヘルツ波が入光すると、電極間に電界が印加され、半導体基板に設けられた電極からテラヘルツ波に応じた電流が出力される。この電流が電流増幅器で増幅されて電流検出器1109に出力される。そして、電流検出器1109は、入力された電流に基づいて、テラヘルツ波の反射波の信号を生成して、酸化膜厚測定装置700(PC)に出力する。
【0057】
図12は、酸化膜厚測定装置700の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、酸化膜厚測定装置700は、CPU、ROM、RAM、及びHDD等を備えるコンピュータを用いることにより実現できる。
第1の実施形態で説明したように、制御部401、パルスTHz波発生指示部402、パルスTHz波取得部403、FFT部407、データ記憶部408、及び厚さ導出部409を用いることにより、予め定められた全ての測定位置におけるヘマタイト2bの厚さを求める。また、レーザ発生指示部404を用いることによりヘマタイト2bを除去すると共に、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cを形成する。
【0058】
制御部401は、レーザ光発光指示部404に対してレーザ光発生システムの動作開始を指示してから一定時間が経過すると、連続THz波発生指示部701に対して連続THz波発生システム600の動作開始を指示する。連続THz波発生指示部701は、制御部401からの指示に基づいて、連続THz波発生システム600に対して、テラヘルツ波(連続波)を一定時間発生させることを指示する。これにより、連続THz波発生システム600からテラヘルツ波が照射され、そのテラヘルツ波の反射波の信号が、連続THz波取得部702で取得される。
【0059】
連続THz波取得部702は、テラヘルツ波の反射波の信号を取得すると、そのテラヘルツ波の反射波の信号から、ウスタイト2cの反射率を求める。
厚さ導出部703は、連続THz波取得部702で求められたウスタイト2cの反射率r[−]と、連続THz波発生システム600から発生するテラヘルツ波の周波数f[Hz]とに対応付けられて記憶されている厚さdを、データ記憶部704に記憶されているテーブルから抽出し、抽出した厚さdをウスタイト2cの厚さdとする。
【0060】
以上のようにデータ記憶部704に記憶されているテーブルには、反射率rと周波数fと厚さdとが相互に対応付けられて記憶されている。ここで、テーブルに記憶されるデータを作成するために、まず、厚さdが既知であるウスタイト2cに対して、周波数fの連続波であるテラヘルツ波を照射し、そのテラヘルツ波の反射率rを測定する。そして、これら反射率rと周波数fと厚さdとを対応付けてテーブルに記憶する。
以上のようなウスタイト2cの厚さdの導出を、予め定められた全ての測定位置において行う。
【0061】
尚、連続THz波取得部702で求められたウスタイト2cの反射率r[−]と、連続THz波発生システム600から発生するテラヘルツ波の周波数f[Hz]とに対応付けられて記憶されている厚さdがデータ記憶部704に記憶されているテーブルにない場合、厚さ導出部703は、補間処理を行って厚さdを求めるようにすることができる。
また、ここでは、テーブルを用いるようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、反射率rと周波数fと厚さdとの関係を示す式をデータ記憶部704に記憶しておき、この式を用いて、ウスタイト2cの厚さdを求めるようにしてもよい。
【0062】
厚さ表示部413は、厚さ導出部409で算出されたヘマタイト2bの厚さと、厚さ導出部703で算出されたウスタイト2cの厚さとを加算して、スケール2の全体の厚さを算出する。そして、厚さ表示部413は、熱延鋼板1上の所定の領域についてスケール2の全体の厚さを算出すると、算出したスケール2の全体の厚さを表示装置500に表示させる。
【0063】
以上のように本実施形態では、パルスTHz波発生システム200に代えて、単一周波数の連続波をテラヘルツ波として照射する連続THz波発生システム600を用いるようにした。したがって、第1の実施形態で説明した効果に加えて、スケール2の厚さを求める際の処理の負担を軽くすることができるので、スケール2の厚さの導出時間を短くすることができるという効果を奏する。
【0064】
尚、本実施形態では、パルスTHz波発生システム200に代えて連続THz波発生システム600を用いる場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、パルスTHz波発生システム200ではなく、パルスTHz波発生システム100に代えて連続THz波発生システム600を用いてもよい。また、パルスTHz波発生システム100、200の双方に代えて連続THz波発生システム600を用いてもよい。
また、本実施形態では、単一周波数の連続波をテラヘルツ波として照射する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、周波数を掃引し、各周波数の連続波をテラヘルツ波として照射し、照射したテラヘルツ波の反射波を用いてスケール2の厚さを求めるようにしてもよい。
【0065】
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。上記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、熱延鋼板1の表面に形成されているスケールの様子の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、パルスTHz波発生システムの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置における動作の概要の一例を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、反射率と周波数との関係を示すスペクトルの一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示し、図6に示したスペクトルから算出したヘマタイト(各サンプル1〜4)の厚さ(測定結果)と、断面検鏡で観測したヘマタイト(各サンプル1〜4)の厚さの実測値(断面検鏡)とを表形式で示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、テラヘルツ波を熱延鋼板に照射した場合の反射波と、可視光・近赤外光を熱延鋼板に照射した場合の反射波とを概念的に示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態を示し、反射率と周波数との関係を示すスペクトルの一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置における処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態を示し、連続THz波発生システムの構成の一例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 熱延鋼板
2 スケール
2a マグネタイト
2b ヘマタイト
2c ウスタイト
3 テラヘルツ波
100、200 パルスTHz波発生システム
300 レーザ光発生システム
400、700 酸化膜厚測定装置
401 制御部
402、405 パルスTHz波発生指示部
403、406 パルスTHz波取得部
404 レーザ光発生指示部
407、410 FFT部
408、411、704 データ記憶部
409、412、703 厚さ導出部
701 連続THz波発生指示部
702 連続THz波取得部
600 連続THz波発生システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜厚測定方法及び酸化膜厚測定装置に関し、特に、鋼板の表面に形成されている酸化膜の厚さを測定するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
薄板鋼板を製造する場合、加熱されたスラブを熱間圧延工程に送り熱間圧延する。このようにして熱間圧延された鋼板は酸洗工程へ送られる。この熱間圧延工程から酸洗工程に送れられる間の自然冷却により、鋼板の表面には酸化膜(スケール)が生成される。酸洗工程では、酸洗槽に鋼板を通して酸化膜を除去する。
【0003】
ここで、酸洗工程において酸化膜を効率よく、且つ確実に除去するために、酸洗工程の前に、鋼板の表面に形成された酸化膜の厚さを把握することが重要になる。
特許文献1には、Hg−Xeランプからの光をステンレス鋼板に照射し、その反射光を測定することにより、ステンレス鋼板の表面に形成されたスケールの厚さを測定することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、3[μm]の波長(最も短い波長)と16[μm](最も長い波長)との2波長で、ステンレス鋼板の表面からの放射輝度を測定し、測定した放射輝度と、予め定めた各波長におけるステンレス鋼板の表面の酸化膜厚と放射率との関係とに基づいて、ステンレス鋼板の表面の酸化膜厚を求めることが記載されている。
更に、特許文献3には、金属材料の表面に付着した酸化膜中の音速が超音波の周波数によって変化することを利用して、共鳴次数の異なる2以上の超音波共鳴周波数から酸化膜の厚さを求めることが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−33517号公報
【特許文献2】特開平11−325839号公報
【特許文献3】特開2002−372412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した酸洗工程前の鋼板の表面に形成される酸化膜は、光学的に黒色に近いマグネタイト(Fe3O4)を主成分とする。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術で対象としているステンレス鋼板の表面には、Cr、Ni、Muの酸化物を主成分とする酸化膜が形成される。この酸化膜は光学的に透明に近い。このため、可視光の反射測定(Hg−Xeランプからの光の反射光の測定)や赤外放射による測定(3[μm]、16[μm]の波長の光による放射輝度の測定)で酸化膜を測定することができる。ところが、可視光や赤外光は、マグネタイトを透過しないため、特許文献1及び2に記載の技術では、マグネタイトを主成分とする酸化膜の厚さを測定することができないという問題点があった。
【0007】
また、特許文献3に記載の技術では、超音波を用いた測定を行っているため、金属材料にプローブ(探触子)を接触させなければならないという問題点があった。更に、特許文献3に記載の技術は、全体の厚さの変化量を測定するので、金属材料の厚さに比べて酸化膜の厚さが薄い場合には、酸化膜の厚さを正確に測定することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さを非接触で測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の酸化膜厚測定方法は、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定方法であって、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射ステップと、前記レーザ光照射ステップによりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射ステップと、前記テラヘルツ波照射ステップにより照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出ステップと、前記検出ステップにより検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の酸化膜厚測定装置は、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定装置であって、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射手段と、前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射手段と、前記テラヘルツ波照射手段により照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出手段と、前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜にレーザ光を照射して、マグネタイトを、そのマグネタイトと略同じ厚さのウスタイトに変態させる。このようにマグネタイトをウスタイトに変態させてから、酸化膜にテラヘルツ波を照射し、照射したテラヘルツ波の反射波の信号を用いて、酸化膜の厚さを求める。したがって、電気伝導率と透磁率とが高いために従来の方法では非接触で測定することが困難であったマグネタイトの厚さを非接触で測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、熱間圧延された鋼板の表面に形成されている酸化膜の厚さを、酸洗設備(酸洗槽)に送られる前に測定する場合を例に挙げて説明する。
【0013】
熱間圧延された直後の鋼板の表面の酸化膜は、表層よりFe2O3(ヘマタイト)、Fe3O4(マグネタイト)、FeO(ウスタイト)の3層構造になっているが、熱延後の鋼板温度が570[℃]以下になるとウスタイトは不安定となり、4FeO→Fe3O4+Feの共析変態が進み、マグネタイト中に鉄粒子が析出した構造となる。本実施形態では、このような共析変態により、鉄粒子を含むマグネタイトと、ヘマタイトとの2層構造となった酸化膜の厚さを測定するようにする。尚、以下の説明では、熱間圧延された鋼板を、必要に応じて熱延鋼板と称し、酸化膜を、必要に応じてスケールと称する。
【0014】
図1は、酸化膜厚測定システムの構成の一例を示す図である。また、図2は、熱延鋼板1の表面に形成されているスケールの様子の一例を示す図である。
図1において、熱延鋼板1は、矢印の方向に搬送され、矢印の先には、図示しない酸洗槽が設けられている。
酸化膜厚測定システムは、パルスTHz波発生システム100、200と、レーザ光発生システム300と、酸化膜厚測定装置400とを有している。
【0015】
パルスTHz波発生システム100は、図2に示すように、鉄粒子を含むマグネタイト2aと、ヘマタイト2bとの2層構造となったスケール2に対して、テラヘルツ波(電磁波)を照射する。本実施形態では、例えば、0[Hz]から3[THz]の周波数成分を含む、パルス幅が0.5[psec]のパルス波をテラヘルツ波として照射するようにしている。マグネタイト2aは、このようなテラヘルツ波の大部分を反射する。また、一部が内部に侵入したとしても、吸収されるため、マグネタイト2aと熱延鋼板1との界面からの反射波は検知可能なオーダーでは発生しない。したがって、図2に示すように、パルスTHz波発生システム100から照射されるテラヘルツ波3aは、ヘマタイト2bの表面と、ヘマタイト2b及びマグネタイト2aの界面で反射する。尚、測定対象の厚みによって、測定に適した帯域(パルス幅)を選定することは容易である。例えば、ヘマタイト厚が10μm以下と薄い場合は、10[THz]以上まで帯域を広げた短パルスを用いた測定を行う。
そして、パルスTHz波発生システム100は、以上のようにして反射されたテラヘルツ波を検出して酸化膜厚測定装置40に出力する。
【0016】
レーザ光発生装置300は、パルスTHz波発生システム100により、テラヘルツ波3aが照射され、そのテラヘルツ波3aの反射波が検出された後に、マグネタイト2aと、ヘマタイト2bとの2層構造となったスケール2に対して、レーザ光を照射する。
本実施形態では、レーザ光の照射によって、スケール2の表面の最高到達温度が1000[℃]以上になるようにする。これは、ヘマタイト2bを除去すると共に、Fe3O4+Fe→4FeOで示される逆変態を起こし、マグネタイト2aを、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cにするためである(図2を参照)。従来からこの逆変態反応は、580[℃]以上で起こることが知られているが、レーザ照射時のように加熱時間が短い場合にはこの温度よりも高い温度が必要となる。本願発明者らは、スケール2の表面の温度を瞬間的に1000[℃]以上に加熱すれば、1[sec]未満という非常に短い加熱時間でもウスタイト2cへの逆変態が生じることを見出した。
【0017】
このようなウスタイト2cの生成は、加熱量を大きくし、スケール2の表面温度を上げるほど有利である。ここでスケール2を溶融させると更に効果的である。これは、溶融によって、マグネタイト2a(Fe3O4)と、マグネタイト2a中に析出された鉄粒子(Fe)とが完全に混じりあるため、逆変態によるウスタイト2c(FeO)の生成速度が増加するためである。溶融温度はスケール2の組成にも依存するが、1500[℃]程度である。
【0018】
しかしながら、加熱量を大きくしすぎると、母材の表層が溶融・再凝固により変形してしまい、酸洗後の外観不良や、後工程において表面疵が発生する原因となる。したがって母材の表層が溶融・再凝固されてしまうことが回避されるように、レーザ光を照射する。母材である熱延鋼板1の融点は1500[℃]程度であるから、熱延鋼板1とスケール2との界面の温度が1500[℃]以下となるようにレーザ光の照射条件を定める。
【0019】
以上の温度条件が満たされる限り、レーザ光発生装置300から照射されるレーザ光は、パルス波であっても、連続波であってもよい。また、波長、パワー、ビーム形状、ビームの走査速度、ビームの本数等のレーザ照射パラメータの条件も特に限定されるものではない。尚、母材(熱延鋼板1)の表面温度は、スケール2の表面におけるレーザ波長に依存するレーザ光の吸収率、スケール2の組成、及びスケール2の厚さによって異なる。スケール2の凡その厚さと吸収率が判れば、簡単な熱伝導計算プログラムを実行することによって、与えられたレーザ照射パラメータの条件下でのスケール2の表面と、母材(熱延鋼板1)の表面との温度の概算が可能である。
【0020】
パルスTHz波発生システム200は、レーザ光発生装置300から照射されるレーザ光によって、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cのみになったスケール2に対して、テラヘルツ波(電磁波)を照射する。パルスTHz波発生システム200は、例えば、前述したパルスTHz波発生システム100で発生させるテラヘルツ波と同じテラヘルツ波を発生させる。図2に示すように、パルスTHz波発生システム200から照射されるテラヘルツ波3bは、ウスタイト2cの表面と、ウスタイト2c及び熱延鋼板1の界面で反射する。
パルスTHz波発生システム200は、以上のようにして反射されたテラヘルツ波を検出して酸化膜厚測定装置400に出力する。
【0021】
前述したように、マグネタイト2aはテラヘルツ波3を殆ど反射するため、マグネタイト2aの内部にテラヘルツ波3が進入しない。これに対し、ウスタイト2cの内部にはテラヘルツ波3が進入する。そこで本実施形態では、マグネタイト2aを、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させてからテラヘルツ波3bをウスタイト2cに照射し、照射したテラヘルツ波3bの反射波を用いて後述するようにしてウスタイト2cの厚さを求めることにより、マグネタイト2aの厚さを求めるようにする。
【0022】
ここで、パルスTHz波発生システム100、200の構成の一例について説明する。尚、パルスTHz波発生システム100、200の構成は同じであるので、ここでは、パルスTHz波発生システム10の構成について説明し、パルスTHz波発生システム200の構成については詳細な説明を省略する。
図3は、パルスTHz波発生システム100の構成の一例を示す図である。
図3において、チタンサファイアレーザ101は、短パルスの赤外レーザ光を発生する。この赤外レーザ光は、ビームスプリッタ102a〜102dを介してテレスコープ103に到達する。また、テレスコープ103に到達する過程で、赤外レーザ光は、チョッパ110で光学的な変調が行われた後、ロックインアンプ104に到達する。
【0023】
テレスコープ103に到達した赤外レーザ光は平行光になり、エミッタ105に到達する。エミッタ105は、非線形光学効果又は双極子放射を利用してテラヘルツ波を発生させる。エミッタ105は、双極子放射の場合、例えばガリウム砒素(GaAs)の半導体基板と、半導体基板に設けられた電極に直流電圧を印加する直流電圧源とを備える。この直流電圧源により、赤外レーザ光の入光方向に対して垂直方向の電界が半導体基板に発生する。
エミッタ105で発生したテラヘルツ波は、ビームスプリッタ102eを透過した後、放物面鏡106aで反射して、スケール2に向けて照射される。
スケール2に照射されたテラヘルツ波は、スケール2で反射し、放物面鏡106a、ビームスプリッタ102f、放物面鏡106bを介して、非線形光学素子107に到達する。
【0024】
また、チタンサファイアレーザ101から発生した赤外レーザ光は、ビームスプリッタ102a、102gを介して、ビームスプリッタ102h〜102kを備える遅延部(Delay)108を伝搬する。遅延部108は、前述したようにして非線形光学素子107に到達するテラヘルツ波に対し、ビームスプリッタ102a、102gを介して伝搬する赤外レーザ光を時間遅延させるためのものである。このような時間遅延の度合いを変えることにより、テラヘルツ波の包絡形状を非線形光学素子107で検出することができる。
【0025】
遅延部108を伝搬した赤外レーザ光は、ビームスプリッタ102l、102f、放物面鏡106bを介して非線形光学素子107に到達する。
非線形光学素子107は、例えばテルル化亜鉛(ZnTe)のような半導体基板であり、特定の方向に電界が印加されると屈折率変化を生じる、いわゆる電気光学効果を有する物質である。この半導体基板にテラヘルツ波が入光すると、直線偏光であった赤外レーザ光が僅かに楕円偏光に変わる。この偏光変化をλ/4プレート108で、円偏光に変換し、さらにディテクタ109を構成する偏光ビームスプリッタでs偏光成分とp偏光成分とに分配し、フォトディテクタによって電気信号として検出する。予め、テラヘルツ波がないときの信号をゼロになるように、非線形光学素子107とλ/4プレート108を調整しておけば、テラヘルツ波の強度に応じた信号変化が得られる。尚、この信号は微小であるため、ロックインアンプ104を用いる。
ロックインアンプ104は、チョッパ110で変調された赤外レーザ光に同期して発生したテラヘルツ波と、ディテクタ109で検出された"テラヘルツ波の電界強度に応じた、赤外レーザ光のs偏光成分及びp偏光成分の比率の変化"とに基づいて、テラヘルツ波の信号を背景ノイズから抽出することにより、テラヘルツ波を検出し、酸化膜厚測定装置40(PC)に出力する。
【0026】
次に、酸化膜厚測定装置400について説明する。まず、スケール2の厚さを測定する際の酸化膜厚測定装置400における動作の概要の一例を説明する。
図4は、酸化膜厚測定装置400における動作の概要の一例を説明する図である。
前述したように、パルスTHz波発生システム100、200から発生したテラヘルツ波3は、スケール2の表面や、熱延鋼板1とスケール2との界面等で反射してパルスTHz波発生システム100、200で検出される。
【0027】
酸化膜厚測定装置400は、パルスTHz波発生システム100、200で検出されたテラヘルツ波3の反射波の信号から、信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成し、この時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、酸化膜厚測定装置400は、FFTを実行した結果を用いて、反射率と周波数との関係を示すスペクトル5を生成し、このスペクトル5の周期を用いて測定対象のスケール2の厚さを算出する。
【0028】
図5は、酸化膜厚測定装置400の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、酸化膜厚測定装置400は、CPU、ROM、RAM、及びHDD等を備えるコンピュータを用いることにより実現できる。
制御部401は、パルスTHz波発生システム100、200及びレーザ光発生システム300の動作を制御するためのものである。
制御部401は、例えば、酸化膜厚測定装置400に接続されたUI(ユーザインタフェース)の操作に基づいて、パルスTHz波発生指示部402に対してパルスTHz波発生システム100の動作の開始を指示する。パルスTHz波発生指示部402は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム100に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100からテラヘルツ波3が発生し、そのテラヘルツ波3の反射波の信号が、パルスTHz波取得部403で取得される。
【0029】
テラヘルツ波3の反射波の信号が、パルスTHz波取得部403で取得されると、制御部401は、レーザ光発生指示部404に対して、レーザ光発生システム300の動作開始を指示する。レーザ光発生指示部404は、この制御部401からの指示に基づいて、レーザ光発生システム300に対して、前述した照射条件のレーザ光を一定時間発生させることを指示する。これにより、レーザ光発生システム300からレーザ光が発生する。図2に示したように、このレーザ光により、ヘマタイト2bは除去され、且つ、マグネタイト2aは、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態する。
【0030】
レーザ光発光指示部404に対してレーザ光発生システム300の動作開始を指示してから一定時間が経過すると、制御部401は、パルスTHz波発生指示部405に対してパルスTHz波発生システム200の動作開始を指示する。パルスTHz波発生指示部405は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム200に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム200からテラヘルツ波3が発生し、そのテラヘルツ波3の反射波の信号が、パルスTHz波取得部406で取得される。
【0031】
以上のようにしてテラヘルツ波3の反射波の信号がパルスTHz波取得部406で取得されると、制御部401は、熱延鋼板1上の他の位置で測定を行うように、パルスTHz波発生指示部402、405、レーザ光発生指示部404に対して動作の指示を行う。そして、パルスTHz波発生指示部402、405、レーザ光発生指示部404は、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300に対して、次の測定位置までの移動を指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300は、次の測定位置まで移動する。
制御部401、パルスTHz波発生指示部402、405、及びレーザ光発生指示部404は、予め定められた全ての測定位置での測定が行われるまで、以上のような動作を繰り返し行う。
【0032】
パルスTHz波取得部403は、テラヘルツ波3の反射波の信号を取得すると、そのテラヘルツ波3の反射波の信号から、信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成する。
FFT部407は、パルスTHz波取得部403で生成された時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部407は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、規格化された反射率の周波数スペクトル(反射率と周波数との関係を示すスペクトル5)を生成する。ここで、基準スペクトルは、表面にスケール2がない熱延鋼板1にテラヘルツ波3を照射することにより得られた"反射波の信号強度と時間との関係を示す時間波形"に対してFFTを行うことにより得られる。この基準スペクトルは、データ記憶部408に予め記憶されている。
【0033】
厚さ導出部409は、FFT407で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数f[Hz]と、光速c[m/s]と、測定対象であるヘマタイト2bの屈折率n[−]とを、以下の(1)式に代入して、ヘマタイト2bの厚さd[μm]を算出する。
d=c/(2πnf) ・・・(1)
(1)式において、光速cと、ヘマタイト2bの屈折率nは、データ記憶部408に予め記憶されている。
【0034】
ここで、ヘマタイト2bの屈折率nは、例えば次のようにして得られる。
まず、厚さが既知であるヘマタイト2bに対してテラヘルツ波3を照射し、そのテラヘルツ波3のヘマタイト2bからの透過波を検出する。次に、検出した透過波から透過強度T(ω)と位相の遅れφ(ω)とを求め、求めた透過強度T(ω)と位相の遅れφ(ω)とを用いて、逐次計算法により、ヘマタイト2bの複素屈折率を算出する。そして、この複素屈折率の実効値をヘマタイト2bの屈折率nとして、データ記憶部408に記憶させる。
尚、データ記憶部408に記憶する屈折率nを得る方法は、このようなものに限定されない。例えば、前述したようにして算出した複素屈折率のデータに対して、ドルーデモデル等を使ってフィッティングを行い、フィッティングを行った結果から、屈折率nを得るようにしてもよい。尚、ドルーデモデルを使ってフィッティングを行う場合には、キャリア密度と緩和時間とをフィッティングパラメータとして用いてフィッティングを行うことができる。
【0035】
図6は、FFT407で生成される"反射率と周波数との関係を示すスペクトル5"の一例を示す図である。また、図7は、図6に示したスペクトル5から算出したヘマタイト2b(各サンプル1〜4)の厚さ(測定結果)と、断面検鏡で観測したヘマタイト2b(各サンプル1〜4)の厚さの実測値(断面検鏡)とを表形式で示す図である。
図7から、本実施形態の酸化膜厚測定装置400で前述したようにして算出した"ヘマタイト2bの厚さd"は、実測値に近い値を示すことが分かる。
【0036】
図8は、テラヘルツ波を熱延鋼板1に照射した場合の反射波と、可視光・近赤外光を熱延鋼板1に照射した場合の反射波とを概念的に示す図である。
熱延鋼板1の表面は、1[μm]〜10[μm]程度の粗度を有している。このような粗度を有している熱延鋼板1の表面に可視光・近赤外光6を照射すると、図8(b)に示すように、その反射波は大きく散乱する。一方、このような粗度を有している熱延鋼板1は、テラヘルツ波には鏡面として作用するため、熱延鋼板1の表面にテラヘルツ波を照射すると、図8(a)に示すように、その反射波は殆ど散乱しない。したがって、本実施形態のようにテラヘルツ波3を用いてスケール2の厚さを測定することにより、スケール2の厚さを精度よく測定することができる。
【0037】
図5の説明に戻り、FFT部410は、パルスTHz波取得部406で生成された時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部410は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、規格化された反射率の周波数スペクトル(反射率と周波数との関係を示すスペクトル5)を生成する。基準スペクトルは、例えば、FFT407で使用されるものと同じものであり、データ記憶部411に予め記憶されている。
図9は、FFT410で生成される"反射率と周波数との関係を示すスペクトル5"の一例を示す図である。本実施形態では、0.2[THz]から2.0[THz](好ましくは0.2[THz]から1.5[THz]、より好ましくは0.5[THz]から1.5[THz])の低周波数領域で、ウスタイト2cの厚みを求めるための測定を行うようにしている。高次の干渉パターンがスペクトル5に含まれているため、2[THz]よりも高周波数の領域を使用すると、得られるスペクトル5に様々な周期のパターンが重畳される虞があり、ウスタイト2cの厚さを正確に求めることが困難になるからである。但し、測定対象のウスタイト厚によって、異なる周波数領域で測定することもある。
【0038】
厚さ導出部412は、FFT410で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数f[Hz]と、光速c[m/s]と、測定対象であるウスタイト2cの屈折率n[−]とを、前記(1)式に代入して、ウスタイト2cの厚さd[μm]を算出する。ただし、ここでは、nは、ウスタイト2cの屈折率nとなる。尚、光速cと、ウスタイト2cの屈折率nは、データ記憶部408に予め記憶されている。また、ウスタイト2cの屈折率nは、ヘマタイト2bの屈折率nと同様にして得ることができるので、その詳細な説明を省略する。
【0039】
厚さ表示部413は、厚さ導出部409で算出されたヘマタイト2bの厚さと、厚さ導出部412で算出されたウスタイト2cの厚さとを加算して、スケール2の全体の厚さを算出する。そして、厚さ表示部413は、熱延鋼板1上の所定の領域についてスケール2の全体の厚さを算出すると、算出したスケール2の全体の厚さを、液晶ディスプレイ等を備えた表示装置500に表示するための画像データを生成し、生成した画像データを表示装置500に出力する。これにより、スケール2の全体の厚さに関する情報が表示装置500に表示される。オペレータは、表示装置500に表示された情報に基づいて、後工程である酸洗設備における酸洗速度を決定する。
【0040】
尚、ここでは、スケール2の全体の厚さに関する情報を表示する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、スケール2の全体の厚さに関する情報を、酸洗設備の制御装置に送信するようにしてもよい。このようにした場合、酸洗設備の制御装置は、スケール2の全体の厚さに関する情報に基づいて、酸洗速度を決定し、決定した酸洗速度となるように酸洗設備を自動的に制御することができる。
【0041】
次に、図10のフローチャートを参照しながら、酸化膜厚測定装置400における処理の流れの一例を説明する。
まず、ステップS1において、パルスTHz波発生指示部402は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム100に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100から熱延鋼板1の表面のスケール2に向けてテラヘルツ波3が照射される。このように本実施形態では、ステップS1の処理を行うことにより、第2のテラヘルツ波照射手段が実現される。
【0042】
次に、ステップS2において、パルスTHz波取得部403は、ステップS1で発生したテラヘルツ波3の反射波の信号を受信するまで待機する。テラヘルツ波3の反射波の信号を受信すると、その反射波の信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成して、ステップS3に進む。このように本実施形態では、ステップS2の処理を行うことにより、第2の検出手段が実現される。
ステップS3に進むと、FFT部407は、信号強度と時間との関係を示す時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部407は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、反射率と周波数との関係を示すスペクトル5を生成する。
【0043】
次に、ステップS4において、厚さ導出部409は、ステップS3で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数fと、光速cと、測定対象であるヘマタイト2bの屈折率nとを、前記(1)式に代入して、ヘマタイト2bの厚さdを算出して記憶媒体に記憶する。
以上のように本実施形態では、ステップS3、S4の処理を行うことにより、酸化膜厚導出手段が実現される。
次に、ステップS5において、レーザ光発生指示部404は、制御部401からの指示に基づいて、レーザ光発生システム300に対して、レーザ光を一定時間発生させることを指示する。これにより、レーザ光発生システム300から前述した照射条件のレーザ光が発生する。このレーザ光によって、ヘマタイト2bは除去され、且つ、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cが生成される。このように本実施形態では、ステップS5の処理を行うことにより、レーザ光照射手段が実現される。
【0044】
次に、ステップS6において、制御部401は、レーザ光発光指示部404に対してレーザ光発生システムの動作開始を指示してから一定時間が経過するまで待機する。一定時間が経過すると、ステップS7に進む。
ステップS7に進むと、パルスTHz波発生指示部405は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム200に対して、テラヘルツ波3を一定時間発生させることを指示する。これにより、パルスTHz波発生システム200から熱延鋼板1の表面のスケール2(ウスタイト2c)に向けてテラヘルツ波3が発生する。このように本実施形態では、ステップS7の処理を行うことにより、テラヘルツ波照射手段が実現される。
【0045】
次に、ステップS8において、パルスTHz波取得部406は、ステップS7で発生したテラヘルツ波3の反射波の信号を受信するまで待機する。テラヘルツ波3の反射波の信号を受信すると、その反射波の信号強度と時間との関係を示す時間波形4を生成して、ステップS9に進む。このように本実施形態では、ステップS8の処理を行うことにより、検出手段が実現される。
ステップS9に進むと、FFT部410は、信号強度と時間との関係を示す時間波形4に対してFFT(高速フーリエ変換)を実行する。そして、FFT部410は、FFTを実行することにより得られたスペクトルを、予め求められている基準スペクトルで割って、反射率と周波数との関係を示すスペクトル5を生成する。
【0046】
次に、ステップS10において、厚さ導出部409は、ステップS9で生成されたスペクトル5の1周期に対応する周波数fと、光速cと、測定対象であるウスタイト2cの屈折率nとを、前記(1)式に代入して、ウスタイト2cの厚さdを算出して記憶媒体に記憶する。
次に、ステップS11において、厚さ表示部413は、ステップS4で算出されたヘマタイト2bの厚さと、ステップS10で算出されたウスタイト2cの厚さとを加算して、スケール2の全体の厚さを算出して記憶媒体に記憶する。
以上のように本実施形態では、ステップS9〜S11の処理を行うことにより、酸化膜導出手段が実現される。
【0047】
次に、ステップS12において、制御部10は、熱延鋼板1上の"予め定められた全ての測定位置"での測定が行われたか否かを判定する。この判定の結果、予め定められた全ての測定位置での測定が行われていない場合には、ステップS13に進む。ステップS13に進むと、パルスTHz波発生指示部402、405、レーザ光発生指示部404は、制御部401からの指示に基づいて、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300に対して、次の測定位置までの移動を指示する。これにより、パルスTHz波発生システム100、200、レーザ光発生システム300は、次の測定位置まで移動する。そして、次の測定位置でステップS1〜S12の処理を行う。
【0048】
一方、予め定められた全ての測定位置での測定が行われた場合には、測定が終了したと判定し、ステップS14に進む。ステップS14に進むと、厚さ表示部413は、ステップS11で算出したスケール2の全体の厚さを、液晶ディスプレイ等を備えた表示装置500に表示するための画像データを生成し、生成した画像データを表示装置500に出力する。これにより、スケール2の全体の厚さに関する情報が表示装置500に表示される。
【0049】
以上のように本実施形態では、表層からヘマタイト2b及びマグネタイト2aが形成されている2層構造のスケール2が表面に形成されている熱延鋼板1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ヘマタイト2bの厚さを求める。そして、熱延鋼板1に対してレーザ光を照射して、ヘマタイト2bを除去すると共に、マグネタイト2aを、そのマグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させる。このようにしてスケール2をウスタイト2cだけにした後、熱延鋼板1に対してテラヘルツ波3を照射することにより、ウスタイト2cの厚さを求める。そして、求めたヘマタイト2bの厚さとウスタイト2cの厚さとから、スケール2の全体の厚さを算出する。
【0050】
したがって、本実施形態では、以下のような効果を奏する。
まず、1[μm]〜10[μm]程度の粗度を有している熱延鋼板1は、テラヘルツ波3には鏡面として作用するため、熱延鋼板1の表面にテラヘルツ波3を照射するとその反射波は殆ど散乱しない。したがって、テラヘルツ波3を用いてスケール2の厚さを測定することにより、スケール2の厚さを精度よく測定することができる。
また、マグネタイト2aは、テラヘルツ波3を殆ど反射し、マグネタイト2aの内部にテラヘルツ波3は進入しないが、ウスタイト2cの内部にはテラヘルツ波3が進入する。よって、マグネタイト2aを、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cに変態させてからテラヘルツ波3をウスタイト2cに照射し、照射したテラヘルツ波3の反射波を用いてウスタイト2cの厚さを求め、求めたウスタイト2cの厚さをマグネタイト2aの厚さとすることにより、非接触での厚さの測定が困難であったマグネタイト2aの厚さを精度よく非接触で測定することができる。また、ウスタイト2cは、マグネタイト2aよりも速く酸洗を行うことができるので、マグネタイト2aがスケール2に含まれているレーザを照射しない部位と比べて、後工程である酸洗設備における酸洗残りなどを誘発するものではない。
以上のように、本実施形態では、熱延鋼板1の表面に形成されている、マグネタイト2aを主成分とするスケール2の厚さを、オンライン且つ非接触で正確に測定することができるようになる。
【0051】
また、本実施形態では、例えば、ウスタイト2cの厚さが2〜10μmであることから、0.2[THz]から2.0[THz]の低周波数領域で厚さ測定を行うようにした。したがって、得られるスペクトル5に様々な周期のパターンが重畳されることを防止することができ、ウスタイト2cの厚さをより正確に求めることができるようになる。
【0052】
尚、本実施形態では、熱間圧延された鋼板の表面に形成されている酸化膜(スケール2)の厚さを、酸洗設備(酸洗槽)に送られる前に測定する場合を例に挙げて説明したが、スケールをオンライン且つ非接触で測定していれば、酸化膜厚測定装置400の測定対象となるスケールは、このようなものに限定されるものではない。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態では、テラヘルツ波3としてパルス波を照射する場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、パルスTHz波発生システム200の代わりに、単一周波数の連続波をテラヘルツ波として照射する連続THz波発生システムを用いる場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態と前述した第1の実施形態とは、パルス波の代わりに連続波を用いる点と、それに付随する処理の方法が主として異なる。したがって、本実施形態の説明において前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図10に付した符号と同一の符号を付すこと等により、詳細な説明を省略する。
【0054】
図11は、連続THz波発生システム600の構成の一例を示す図である。
図11において、分布帰還型レーザ1101、1102は、夫々、中心波長が異なるレーザ光を発生させる。例えば、分布帰還型レーザ1101は、パワーが150[mW]、中心波長が853[nm]のレーザ光を発生し、分布帰還型レーザ1102は、パワーが150[mW]、中心波長が855[nm]のレーザ光を発生する。これら分布帰還型レーザ1101、1102によって、0〜2.2[THz]の範囲で、分布帰還型レーザ1101、1102から発生するレーザ光の差周波を調整することができる。
【0055】
分布帰還型レーザ1101から発生したレーザ光は、ビームスプリッタ1103aで反射する。ビームスプリッタ1103aで反射したレーザ光と、分布帰還型レーザ1101から発生したレーザ光は、ビームコンバイナ(Beam Combiner)1104で合成され、合成されたレーザ光の半分がエミッタ1105へ、もう半分がビームスプリッタ1103bへ伝搬する。
エミッタ1105は、非線形光学効果又は双極子放射を利用してテラヘルツ波を発生させる。例えばガリウム砒素(GaAs)の半導体基板と、半導体基板に設けられた電極に直流電圧を印加する直流電圧源とを備える。この直流電圧源により、赤外レーザ光の入光方向に対して垂直方向の電界が半導体基板に発生する。赤外レーザ光が半導体基板に照射されると、半導体基板中のキャリアが励起され、分布帰還型レーザ1101、1102から発生するレーザ光の差周波に応じて電流が生じる。その結果、電流変化に比例したテラヘルツ波が発生する。
【0056】
発生したテラヘルツ波は、レンズ1106a、放物面鏡1107a、ビームスプリッタ1103c、及び放物面鏡1107bを介してスケール2に向けて照射される。
スケール2に照射されたテラヘルツ波は、放物面鏡1107b、ビームスプリッタ1103c、放物面鏡1107c、及びレンズ1106bを介して、非線形光学素子1108に到達する。
また、ビームコンバイナ1104からビームスプリッタ1103bに伝搬したレーザ光も、ビームスプリッタ1103bで反射し、エミッタ1105と同様の電極を設けた半導体基板1108に到達する。
半導体基板1108は、例えばガリウム砒素(GaAs)の半導体基板と、その半導体基板に設けられた電極からの電流を増幅する電流増幅器とを備えて構成される。半導体基板にテラヘルツ波が入光すると、電極間に電界が印加され、半導体基板に設けられた電極からテラヘルツ波に応じた電流が出力される。この電流が電流増幅器で増幅されて電流検出器1109に出力される。そして、電流検出器1109は、入力された電流に基づいて、テラヘルツ波の反射波の信号を生成して、酸化膜厚測定装置700(PC)に出力する。
【0057】
図12は、酸化膜厚測定装置700の機能構成の一例を示すブロック図である。尚、酸化膜厚測定装置700は、CPU、ROM、RAM、及びHDD等を備えるコンピュータを用いることにより実現できる。
第1の実施形態で説明したように、制御部401、パルスTHz波発生指示部402、パルスTHz波取得部403、FFT部407、データ記憶部408、及び厚さ導出部409を用いることにより、予め定められた全ての測定位置におけるヘマタイト2bの厚さを求める。また、レーザ発生指示部404を用いることによりヘマタイト2bを除去すると共に、マグネタイト2aと略同じ厚さのウスタイト2cを形成する。
【0058】
制御部401は、レーザ光発光指示部404に対してレーザ光発生システムの動作開始を指示してから一定時間が経過すると、連続THz波発生指示部701に対して連続THz波発生システム600の動作開始を指示する。連続THz波発生指示部701は、制御部401からの指示に基づいて、連続THz波発生システム600に対して、テラヘルツ波(連続波)を一定時間発生させることを指示する。これにより、連続THz波発生システム600からテラヘルツ波が照射され、そのテラヘルツ波の反射波の信号が、連続THz波取得部702で取得される。
【0059】
連続THz波取得部702は、テラヘルツ波の反射波の信号を取得すると、そのテラヘルツ波の反射波の信号から、ウスタイト2cの反射率を求める。
厚さ導出部703は、連続THz波取得部702で求められたウスタイト2cの反射率r[−]と、連続THz波発生システム600から発生するテラヘルツ波の周波数f[Hz]とに対応付けられて記憶されている厚さdを、データ記憶部704に記憶されているテーブルから抽出し、抽出した厚さdをウスタイト2cの厚さdとする。
【0060】
以上のようにデータ記憶部704に記憶されているテーブルには、反射率rと周波数fと厚さdとが相互に対応付けられて記憶されている。ここで、テーブルに記憶されるデータを作成するために、まず、厚さdが既知であるウスタイト2cに対して、周波数fの連続波であるテラヘルツ波を照射し、そのテラヘルツ波の反射率rを測定する。そして、これら反射率rと周波数fと厚さdとを対応付けてテーブルに記憶する。
以上のようなウスタイト2cの厚さdの導出を、予め定められた全ての測定位置において行う。
【0061】
尚、連続THz波取得部702で求められたウスタイト2cの反射率r[−]と、連続THz波発生システム600から発生するテラヘルツ波の周波数f[Hz]とに対応付けられて記憶されている厚さdがデータ記憶部704に記憶されているテーブルにない場合、厚さ導出部703は、補間処理を行って厚さdを求めるようにすることができる。
また、ここでは、テーブルを用いるようにしたが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、反射率rと周波数fと厚さdとの関係を示す式をデータ記憶部704に記憶しておき、この式を用いて、ウスタイト2cの厚さdを求めるようにしてもよい。
【0062】
厚さ表示部413は、厚さ導出部409で算出されたヘマタイト2bの厚さと、厚さ導出部703で算出されたウスタイト2cの厚さとを加算して、スケール2の全体の厚さを算出する。そして、厚さ表示部413は、熱延鋼板1上の所定の領域についてスケール2の全体の厚さを算出すると、算出したスケール2の全体の厚さを表示装置500に表示させる。
【0063】
以上のように本実施形態では、パルスTHz波発生システム200に代えて、単一周波数の連続波をテラヘルツ波として照射する連続THz波発生システム600を用いるようにした。したがって、第1の実施形態で説明した効果に加えて、スケール2の厚さを求める際の処理の負担を軽くすることができるので、スケール2の厚さの導出時間を短くすることができるという効果を奏する。
【0064】
尚、本実施形態では、パルスTHz波発生システム200に代えて連続THz波発生システム600を用いる場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、パルスTHz波発生システム200ではなく、パルスTHz波発生システム100に代えて連続THz波発生システム600を用いてもよい。また、パルスTHz波発生システム100、200の双方に代えて連続THz波発生システム600を用いてもよい。
また、本実施形態では、単一周波数の連続波をテラヘルツ波として照射する場合を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、周波数を掃引し、各周波数の連続波をテラヘルツ波として照射し、照射したテラヘルツ波の反射波を用いてスケール2の厚さを求めるようにしてもよい。
【0065】
以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体等のプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。上記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示し、熱延鋼板1の表面に形成されているスケールの様子の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示し、パルスTHz波発生システムの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置における動作の概要の一例を説明する図である。
【図5】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施形態を示し、反射率と周波数との関係を示すスペクトルの一例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態を示し、図6に示したスペクトルから算出したヘマタイト(各サンプル1〜4)の厚さ(測定結果)と、断面検鏡で観測したヘマタイト(各サンプル1〜4)の厚さの実測値(断面検鏡)とを表形式で示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態を示し、テラヘルツ波を熱延鋼板に照射した場合の反射波と、可視光・近赤外光を熱延鋼板に照射した場合の反射波とを概念的に示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態を示し、反射率と周波数との関係を示すスペクトルの一例を示す図である。
【図10】本発明の第1の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置における処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の第2の実施形態を示し、連続THz波発生システムの構成の一例を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施形態を示し、酸化膜厚測定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0067】
1 熱延鋼板
2 スケール
2a マグネタイト
2b ヘマタイト
2c ウスタイト
3 テラヘルツ波
100、200 パルスTHz波発生システム
300 レーザ光発生システム
400、700 酸化膜厚測定装置
401 制御部
402、405 パルスTHz波発生指示部
403、406 パルスTHz波取得部
404 レーザ光発生指示部
407、410 FFT部
408、411、704 データ記憶部
409、412、703 厚さ導出部
701 連続THz波発生指示部
702 連続THz波取得部
600 連続THz波発生システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射ステップと、
前記レーザ光照射ステップによりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射ステップと、
前記テラヘルツ波照射ステップにより照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出ステップとを有することを特徴とする鋼板の酸化膜厚測定方法。
【請求項2】
前記レーザ光照射ステップによりレーザ光が照射される前に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射する第2のテラヘルツ波照射ステップと、
前記第2のテラヘルツ波照射ステップにより照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する第2の検出ステップとを有し、
前記レーザ光照射ステップは、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記酸化膜の表面に形成されたヘマタイトを除去すると共に前記マグネタイトをウスタイトに変態させ、
前記酸化膜厚導出ステップは、前記第2の検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ヘマタイトの厚さを求め、前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ウスタイトの厚さを求めることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の酸化膜厚測定方法。
【請求項3】
前記テラヘルツ波は、パルス波、又は連続波であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の酸化膜厚測定方法。
【請求項4】
鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定装置であって、
前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射手段と、
前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射手段と、
前記テラヘルツ波照射手段により照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出手段とを有することを特徴とする鋼板の酸化膜厚測定装置。
【請求項5】
前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射される前に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射する第2のテラヘルツ波照射手段と、
前記第2のテラヘルツ波照射手段により照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する第2の検出手段とを有し、
前記レーザ光照射手段は、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記酸化膜の表面に形成されたヘマタイトを除去すると共に前記マグネタイトをウスタイトに変態させ、
前記酸化膜厚導出手段は、前記第2の検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ヘマタイトの厚さを求め、前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ウスタイトの厚さを求めることを特徴とする請求項4に記載の鋼板の酸化膜厚測定装置。
【請求項6】
前記テラヘルツ波は、パルス波、又は連続波であることを特徴とする請求項4又は5に記載の鋼板の酸化膜厚測定装置。
【請求項1】
鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定方法であって、
前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射ステップと、
前記レーザ光照射ステップによりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射ステップと、
前記テラヘルツ波照射ステップにより照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出ステップとを有することを特徴とする鋼板の酸化膜厚測定方法。
【請求項2】
前記レーザ光照射ステップによりレーザ光が照射される前に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射する第2のテラヘルツ波照射ステップと、
前記第2のテラヘルツ波照射ステップにより照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する第2の検出ステップとを有し、
前記レーザ光照射ステップは、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記酸化膜の表面に形成されたヘマタイトを除去すると共に前記マグネタイトをウスタイトに変態させ、
前記酸化膜厚導出ステップは、前記第2の検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ヘマタイトの厚さを求め、前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ウスタイトの厚さを求めることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の酸化膜厚測定方法。
【請求項3】
前記テラヘルツ波は、パルス波、又は連続波であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼板の酸化膜厚測定方法。
【請求項4】
鋼板の表面に形成されている、マグネタイトを含む酸化膜の厚さをオンライン且つ非接触で測定する鋼板の酸化膜厚測定装置であって、
前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記マグネタイトをウスタイトに変態させるレーザ光照射手段と、
前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射された後に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射するテラヘルツ波照射手段と、
前記テラヘルツ波照射手段により照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する検出手段と、
前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記酸化膜の厚さを求める酸化膜厚導出手段とを有することを特徴とする鋼板の酸化膜厚測定装置。
【請求項5】
前記レーザ光照射手段によりレーザ光が照射される前に、前記酸化膜にテラヘルツ波を照射する第2のテラヘルツ波照射手段と、
前記第2のテラヘルツ波照射手段により照射されたテラヘルツ波の、前記酸化膜からの反射波を検出する第2の検出手段とを有し、
前記レーザ光照射手段は、前記酸化膜にレーザ光を照射して、前記酸化膜の表面に形成されたヘマタイトを除去すると共に前記マグネタイトをウスタイトに変態させ、
前記酸化膜厚導出手段は、前記第2の検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ヘマタイトの厚さを求め、前記検出手段により検出された反射波の信号を用いて、前記ウスタイトの厚さを求めることを特徴とする請求項4に記載の鋼板の酸化膜厚測定装置。
【請求項6】
前記テラヘルツ波は、パルス波、又は連続波であることを特徴とする請求項4又は5に記載の鋼板の酸化膜厚測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−186333(P2009−186333A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26854(P2008−26854)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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