説明

酸性エンドセルラーゼ産生微生物及びその利用方法

【課題】強酸性条件下でセルロース分解活性を示す微生物を提供する。
【解決手段】pH2以下の条件下でセルロース分解活性を示すフォミトプシス(Fomitopsis)属微生物を単離した。当該微生物としては、受託番号NITE P-559で特定される微生物が挙げられ、また、セルロース分解活性としては、エンドセルラーゼ活性及びβグルコシダーゼ活性が挙げられる。さらに、pH2以下の条件下でセルロース分解活性を示す微生物由来の培養上清に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば強酸性条件下でセルロース分解活性を示す微生物及びその利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源の枯渇、地球レベルの炭酸ガス発生量の削減が叫ばれており、今後、石油価格の高騰が予想される。自然界に大量に存在しているセルロース系バイオマスをポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の石油代替樹脂原料へと直接発酵することができれば、炭酸ガス発生量を増やすことなく安価に石油代替資源を入手できる。一方、セルロース系バイオマスを化成品原料となる酢酸、プロピオン酸等の有機酸へと直接発酵する技術が求められている。
【0003】
しかしながら、例えばポリ乳酸原料である乳酸やポリブチレンサクシネート原料であるコハク酸は有機酸であるため、セルロース系バイオマスを用いた直接発酵による有機酸の産生には、強酸性条件下で機能するセルラーゼが必要となる。
【0004】
通常、セルラーゼは弱酸性〜中性領域下で機能する。近年、アルカリ性で機能するものが数多く報告されており、数々の改良が加えられ、洗剤用酵素として実用化された。また、ごく少数例であるものの、酸性セルラーゼを生産する微生物として、始源菌スルフォロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)菌株(非特許文献1)、パルプ製造工程用に開発されたトリコデルマ・エスピー(Trichoderma sp.)SK-1919株(特許文献1)、木材腐朽試験に用いられるフォミトプシス・パルストリス(Fomitopsis palustris)(非特許文献2)及びトリコデルマ・エスピーAH5株(特許文献2)が挙げられる。
【0005】
非特許文献1に記載のスルフォロバス・ソルファタリカス菌株は至適温度が80℃、至適pH1.8のセルラーゼを菌体外に分泌生産する。しかしながら、当該菌株は始原菌であり生育が悪い上、生産されるセルラーゼも至適温度が80℃と高く常温ではごく弱い活性しか示さない。従って当該酸性セルラーゼは、常温でセルロースを加水分解する目的には有用でない。
【0006】
特許文献1に記載のトリコデルマ・エスピーSK-1919株は、酸性条件下で高い活性を有するエンドセルラーゼを有する。しかしながら、当該菌株の生育pHは5.0であり、より強酸性条件下で培養することは困難である。
【0007】
非特許文献2に記載のフォミトプシス・パルストリスは酸性条件下で活性を有するエンドセルラーゼを有し、且つpH2下で生育する。しかしながら、当該菌は生育が極めて悪い上、産生されるセルラーゼの活性が低い。
【0008】
特許文献2に記載のトリコデルマ・エスピーAH5株は、酸性条件下で活性を有するエンドセルラーゼ及びβグルコシダーゼを有し、且つ酸性条件下で生育できる。この点、セルロース系バイオマスを用いた直接発酵による有機酸の産生において、当該菌株は有用である。しかしながら、発酵による有機酸の産生においては、産生される有機酸によって培地のpHが強酸性(例えば、pH2以下)へと移行する。従って、強酸性条件下でセルラーゼ活性を有し、且つ生育できる微生物が更に望まれる。
【0009】
一方、乳酸やコハク酸をグルコースから発酵する微生物は数多く報告されている。しかしながら、微生物を用いてセルロースからこれら有機酸を直接発酵させることができる微生物の報告例はない。そこで、酸性条件下でセルロースを逐次分解しグルコースを提供する微生物とそのグルコースを有機酸に変換する微生物との共発酵システムが考えられる。従来において、共発酵システムは日本酒の生産において実施されている。即ち、デンプンからグルコースを提供する麹菌とそのグルコースをアルコールに変換する酵母との共発酵により高いエタノール生産濃度が得られる。
【0010】
乳酸やコハク酸産生における共発酵システムにおいては、当該有機酸によってpH2以下に酸性化した培地中で、セルロースを栄養源として十分に生育し、且つ酸性セルラーゼ活性を有する微生物が必要となる。この点、上述の従来の酸性セルラーゼを生産する微生物は該当しない。このように、pH2以下に酸性化した培地でセルロースを栄養源として十分に生育し、且つ酸性セルラーゼ活性を有する微生物は今まで存在しなかった。
【0011】
【特許文献1】特開平6-38747号公報
【特許文献2】特開2007-319040号公報
【非特許文献1】Huang Y.ら, Biochem J., 2005年, Vol.385, p.581-588
【非特許文献2】Ishihara M.ら, Mokuzai kagakushi, 1984年, Vol.30, No.1, p.79-87
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述した実情に鑑み、強酸性条件下でセルロース分解活性を示す微生物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、pH2以下のような強酸性域でも常温で活性を有するセルラーゼを培養上清に分泌するフォミトプシス(Fomitopsis)属微生物の単離に成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、pH2以下の条件下でセルロース分解活性を示すフォミトプシス属微生物である。当該微生物としては、受託番号NITE P-559で特定される微生物が挙げられる。また、セルロース分解活性としては、エンドセルラーゼ活性及びβグルコシダーゼ活性が挙げられる。さらに、本発明は、pH2以下の条件下でセルロース分解活性を示す当該微生物由来の培養上清である。
【0015】
また、本発明は、上述の微生物又は培養上清を用いてセルロースを分解することを含む糖類の製造方法である。糖類としては、セロオリゴ糖、セロビオース及びグルコースが挙げられる。当該糖類の製造方法の具体的な態様としては、上述の微生物又は培養上清を用いてセロオリゴ糖を分解することを含むセロオリゴ糖からセロビオース又はグルコースを製造する方法が挙げられる。
【0016】
さらに、本発明は、上述の微生物又は培養上清を用いてβグルコシドを分解することを含むβグルコシドからアグリコン及びグルコースを製造する方法である。
【0017】
また、本発明は、上述の微生物と有機酸生産生物とをセルロース存在下で共存培養することを含む有機酸の製造方法、及び上述の培養上清とセルロースとを含む培地で有機酸生産生物を培養することを含む有機酸の製造方法である。当該有機酸生産生物としては、乳酸菌が挙げられる。
【0018】
さらに、本発明は、上述の微生物とアルコール生産生物とをセルロース存在下で共存培養することを含むアルコールの製造方法、及び上述の培養上清とセルロースとを含む培地でアルコール生産生物を培養することを含むアルコールの製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るフォミトプシス属微生物を用いた糖類、有機酸、アルコール等の製造方法によれば、優れた生産性でこれら工業的に利用される物質を製造できる。また、本発明によれば、糖類、有機酸、アルコール等の生産性が向上するので、これら工業的に利用される物質生産の低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
1. セルロース及びその加水分解酵素であるセルラーゼ
セルロースは、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合(β-1,4結合)により高度に重合した高分子から構成される物質である。セルロースは、天然では植物細胞壁の主たる構成成分として存在し、多糖としては地球上で最も多く生産されている。セルロース分子におけるグルコースの重合度は、その起源によって異なるが、木材では6,000〜10,000、綿では8,000〜10,000程度であり、藻類由来のものでは44,000というものもある。セルロース分子の隣接するグルコース残基間においては分子内水素結合が形成されるが、さらに、隣接するセルロース分子鎖同士も分子間水素結合を形成し、強固なセルロース繊維を形成する。セルロース繊維は強固な結晶構造をとる領域を高割合で含むため、セルロースをグルコース等の単糖又は少糖まで加水分解(糖化)するのは容易ではない。自然界ではセルロースは主として微生物によって分解されており、細菌や糸状菌等の様々な微生物がセルロース分解酵素を生産することが知られている。これらの微生物は菌体外に複数のセルロース分解酵素を分泌し、セルロースはそれらの作用機構の異なる各種セルロース分解酵素の協同作用により、主に、セロオリゴ糖、セロビオースを経てグルコースへと分解される。セルロース分解酵素は、一般に、セルロースを加水分解する酵素の総称としてセルラーゼと呼ばれる。
【0021】
セルラーゼの種類としては、現在、狭義のセルラーゼ(EC 3.2.1.4)、グルカン1,4-βグルコシダーゼ(EC 3.2.1.74)、セルロース1,4-βセロビオシダーゼ(EC 3.2.1.91)、βグルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)の4つが主に認められている。
【0022】
狭義のセルラーゼ(EC 3.2.1.4)は、エンド型の作用様式で(すなわち、分子鎖内部で)セルロースを加水分解し、セロオリゴ糖、セロビオース及びグルコースを生産する酵素である。狭義のセルラーゼ(EC 3.2.1.4)はカルボキシメチルセルロース(以下、「CMC」という)等の非結晶性セルロースをよく加水分解することが知られている。また、狭義のセルラーゼ(EC 3.2.1.4)は、カルボキシメチルセルラーゼ、エンド1,4-βグルカナーゼ、エンドセルラーゼ等とも呼ばれている。一方、グルカン1,4-βグルコシダーゼ(EC 3.2.1.74)及びセルロース1,4-βセロビオシダーゼ(EC 3.2.1.91)は、セルロース鎖をエキソ型の作用様式で加水分解し、末端からグルコース又はセロビオースを遊離する酵素である。これらの酵素は綿繊維やアビセル等の結晶性セルロースをよく加水分解し、アビセラーゼ又はエキソセルラーゼとも呼ばれている。さらにβグルコシダーゼ(EC 3.2.1.21)は、グルカン1,4-βグルコシダーゼ及びセルロース1,4-βセロビオシダーゼの作用によってセルロースから生成されるような、セロオリゴ糖、セロビオース及びβグルコシド(グルコースの配糖体)に作用し、非還元末端からグルコースを遊離する酵素である。セロビオースを特によく加水分解するβグルコシダーゼは、セロビアーゼと呼ばれる。
【0023】
既存のセルラーゼは、弱酸性からアルカリ性にかけて安定なpH反応性を有するものがほとんどである。ここでは、セルロース分解酵素の総称として用語「セルラーゼ」を使用し、それと区別するため、狭義のセルラーゼ(EC 3.2.1.4)を「エンドセルラーゼ」と呼ぶこととする。
【0024】
2.本発明に係るフォミトプシス属微生物の新菌種
本発明者らは、強酸性のpH範囲(強酸性条件下)でも生育しセルロース分解活性を示すフォミトプシス属に属する菌を分離することに成功した。この菌は、既存のセルラーゼとは違って広範な酸性条件下で強力な活性を示し、且つ常温の強酸性条件下でも十分な活性を示す各種セルラーゼを、菌体外に産生する。この菌は、その菌学的性質に基づき、フォミトプシス属微生物の新菌種として同定された。本発明は、こうして同定されたフォミトプシス属微生物の新菌種に属する菌及びその利用に関する。なお本発明において「酸性条件」とは、pH0以上pH7.0未満の範囲内のpHを意味する。さらに本発明において「強酸性」とは、pH3.0以下、特に微生物の生育に関してはpH2.0以上pH3.0以下のpH範囲を意味する。さらに本発明において「常温」とは、20℃以上30℃以下の温度範囲を意味する。
【0025】
本発明者等が分離した菌株は、「フォミトプシス・エスピー(Fomitopsis sp.)I53株」と命名され、2008年4月11日付で、独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、受託番号NITE P-559として寄託された。以下、フォミトプシス・エスピーI53株を「I53株」と略記することがある。
【0026】
I53株の菌学的性質は、以下の通りである。
(a)培養的性質及び形態的性質
1) 培養条件
(1)培地:
ポテトデキストロース寒天培地「ダイゴ」(日本製薬, 東京)(以下、「PDA」という)
2%Malt Agar(以下、「2%MA」という)
Bacto Oatmeal Agar(Becton Dickinson, MD, USA)(以下、「OA」という)
三浦培地(以下、「LcA」という)
(2)培養温度:25℃
(3)培養期間:1週間〜8週間
(4)培養条件:好気培養
【0027】
2) 生育温度試験
(1)培地:PDA
(2)培養温度:15℃、20℃、25℃、30℃、37℃、40℃
(3)培養期間:1週間
【0028】
3) 形態観察試験
コロニー色調は、Kornerup, A. and Wanscher, J.H., 1978. 「Methuen handbook of colour」, 3rd ed., Eyre Methuen, London, UKに従う。顕微鏡は光学顕微鏡BX51(オリンパス, 東京)(微分干渉観察)を用いる。また、マウント液としてラクトフェノールコットンブルーを使用する。
【0029】
4) 培養的性質
4-1) 巨視的観察
各培地を含む平板において、1週間培養後から定期的に巨視的観察を行う。25℃で10日間培養後のコロニーの直径、色調(コロニー表面及び裏面)、表面性状及び可溶性色素産生の有無を下記の表1に示す。また、25℃で10日間培養後の巨視的観察像を図1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1及び図1に示すように、I53株のコロニーは、直径が57〜70mmであり、色調がWhite(1A-1)であり、表面性状が羊毛状であり、可溶性色素が観察されない。
【0032】
4-2) 生育温度
I53株をPDA平板培地に接種し、15℃、20℃、25℃、30℃、37℃及び40℃の各温度条件下で1週間培養した際のコロニー直径を表2に示す。また、各温度下のコロニー観察像を図2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2及び図2に示すように、I53株は20℃〜40℃の範囲内で良好な生育が認められる。
【0035】
5) 形態的性質
5-1) 栄養菌糸
菌糸は寒天表面上又は寒天内に形成され、菌糸幅:1〜5μm、無色、及び障壁有りという特徴を有する(図3及び4)。また、わずかながらかすがい連結の形成が認められる(図4及び5)。
【0036】
また、栄養菌糸の菌糸壁の一部が膨らみ紡錐形〜棍棒形の厚壁胞子の形成が認められる(図6)。
【0037】
なお、図3は、I53株の微視的観察像(300倍:全体像)である。図4は、I53株の微視的観察像(600倍)である。図5及び6は、I53株の微視的観察像(1500倍)である。図4及び5から、かすがい連結が認められる。また、図6から、厚壁胞子が認められる。
【0038】
5-2) 生殖器官
約2ヶ月間培養した平板において、キノコ子実体及び分生子等の生殖器官構造の形成は認められない。
(b)化学分類学的性質
28S rDNA(28SリボソームRNAコード配列)におけるDNA配列同一性
I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・パルストリスCBS283.65株の28S rDNAの塩基配列(配列番号2:GenBank Accession No. AY515333)とは、99%の同一性を示す(図7)。また、I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・フィーイ(Fomitopsis feei)CBS546.50株の塩基配列(配列番号3:GenBank Accession No. AY515327)とは、98%の同一性を示す(図8)。
【0039】
なお、図7は、I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・パルストリスCBS283.65株の28S rDNAの塩基配列(配列番号2)とのアライメントを示す。図8は、I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・フィーイCBS546.50株の塩基配列(配列番号3)とのアライメントを示す。
【0040】
以上の培養的性質及び形態的性質に基づき、Arx, J. A. von. 1981. The genera of fungi sporulating in pure culture 3 rd edition, A.R. Gantner Verlag KG., Vaduz, Germanyに記載の菌類の検索表によるI53株の帰属分類群推定によれば、I53株は栄養菌糸にかすがい連結が認められたことにより、担子菌門に属する菌種であると推定される。さらに、28S rDNAにおけるDNA配列同一性によれば、I53株はフォミトプシス属に属する微生物であると推定される。
【0041】
本発明に係るフォミトプシス属微生物は、I53株の上記のような菌学的性質を本質的に共有する。このような本発明に係るフォミトプシス属微生物の典型例はI53株であるが、I53株の分離源である石垣市川平湾沖で採取したヒトデを磨り潰した破砕液中から、上記のような菌学的性質を有する菌を後述の実施例の記載に従ってさらに分離することにより、上記フォミトプシス属微生物の菌株をさらに得ることもできる。また、本発明に係るフォミトプシス属微生物には、例えばI53株の変異体(自然突然変異体、遺伝子組換え体、突然変異誘発処理体、プラスミド導入等による形質転換体、倍数化体等)、I53株を親株の1つに用いて作製した細胞融合株、I53株を親株の1つとして交配により作製した菌等も含まれる。
【0042】
本発明に係るフォミトプシス属微生物を培養するのに適した培地としては、限定するものではないが、例えば、PDAが挙げられる。PDAは、ポテト抽出物200g、デキストロース20g、アガー15gを水1Lに溶解し(滅菌前のpH値:5.6)、それを121℃で15分オートクレーブ滅菌することにより、調製することができる。本発明に係るフォミトプシス属微生物は、このような培地において25℃にて好気的に培養することができる。
【0043】
本発明に係るフォミトプシス属微生物がセルロース分解活性を示すか否かは、具体的には、例えばフォミトプシス属微生物を、セルロース以外の炭素源を含まない培地で培養し、当該微生物が生育するか否かを調べることによって判定することができる。当該微生物の生育が認められた場合、その微生物はセルロースを分解することにより糖類を得たと考えられ、すなわちセルロース分解活性(セルロース分解能)を有すると判定できる。この試験は、例えば、炭素源を含まない液体培地を染み込ませた濾紙上で本発明に係るフォミトプシス属微生物を培養することによって行うこともできる。この試験において、フォミトプシス属微生物が特定のpH条件下でセルロース分解活性を示すか否かを調べるためには、その特定のpH値に調整した培地を使用し、培養温度や湿度等の他の条件についてはフォミトプシス属微生物における通常の生育条件(例えば、25℃)を用いることが好ましい。
【0044】
あるいは、本発明に係るフォミトプシス属微生物が、セルロース分解活性を示すか否かは、そのフォミトプシス属微生物由来の培養上清について各種セルラーゼの活性を検出することによって判定することもできる。これは、本発明に係るフォミトプシス属微生物のセルロース分解活性が、その微生物が生産し菌体外に分泌した各種セルラーゼの作用によって得られることに基づく。この方法では、例えば、本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清をエンドセルラーゼの基質となるCMCと反応させ、CMCの分解によって生じる還元糖の量を測定することにより、本発明に係るフォミトプシス属微生物がエンドセルラーゼ活性を示すか否かを判定することができる。還元糖量の定量法としては、Somogyi法、Tauber-Kleiner法、Hanes法(滴定法)、Park-Johnson法、3,5-ジニトロサリチル酸(DNS)法等の多数の定量法が知られているが、好適な1つの方法として、糖による銅イオンの還元を利用するSomogyi-Nelson法を用いることができる(福井作蔵 著「生物化学実験法1 還元糖の定量法 第2版」学会出版センター 1990年)。Somogyi-Nelson法のプロトコールの一例では、まず酵素反応液を100℃で10分加熱処理して反応を停止させ、その反応液と等量のSomogyi銅液(和光純薬社製等)を加えて混合し、100℃で10分加熱処理してから急速に冷却し、冷却後、等量のNelson試薬(和光純薬社製等)を加えて還元銅沈殿を溶解して発色させ、30分静置し、660nmでの吸光度を測定し、その測定値から、グルコースを標準糖として還元糖量を算出する。さらに上記方法では、本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清をβグルコシダーゼの基質となるパラニトロフェニルβグルコシドと反応させ、パラニトロフェニルβグルコシドの分解によって生じるパラニトロフェノールを、400nmでの吸光度測定により定量することにより、本発明に係るフォミトプシス属微生物がβグルコシダーゼ活性を示すか否かを判定してもよい。さらには、本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清をセロヘキサオース(六糖のセロオリゴ糖)と反応させ、セロヘキサオースの分解によって生じる糖類の量を測定することにより、本発明に係るフォミトプシス属微生物がセルラーゼ活性を示すか否かを判定してもよい。
【0045】
本発明に係るフォミトプシス属微生物は、後述の実施例に記載の通り、pH2以下の酸性条件下の培地でセルロースを分解することができ、且つその培養上清においてpH2以下の酸性pH範囲でエンドセルラーゼ活性を、pH6.0以下の酸性pH範囲でβグルコシダーゼ活性を示す。本発明に係るフォミトプシス属微生物は、広範な酸性pH範囲で高いセルロース分解活性を示すだけでなく、既知セルラーゼでは十分な活性が認められない強酸性条件下、特にpH1.5〜2.5のpH条件下でも、エンドセルラーゼ活性及びβグルコシダーゼ活性等のセルロース分解活性を示すことができる。
【0046】
3.本発明に係るフォミトプシス属微生物を用いたセルロース系物質の分解
上記のような本発明に係るフォミトプシス属微生物を用いれば、セルロース系物質を酸性条件下で効率よく分解することができる。ここで、セルロース系物質としては、セルロースそれ自体以外に、例えばセルロース部分分解物(セロオリゴ糖、セロビオース、βグルコシド等)、植物細胞壁(ヘミセルロース、ペクチン質、リグニン等に結合したセルロースによって構成される)、綿や麻等の天然繊維品、レーヨン、キュプラ、アセテート、リヨセル等の再生繊維品、セルロース系バイオマスやセルロース系廃棄物(稲わら、籾殻、木材チップ等の農産廃棄物、バクテリアセルロースのナタデココ等の食品廃棄物等)が含まれる。
【0047】
また、本発明は、本発明に係るフォミトプシス属微生物又はその培養上清を用いて、セルロース系物質から糖類を製造する方法に関する。
【0048】
本発明において「セルロース」とは、グルコースがβ-1,4-グルコシド結合により質量平均重合度51以上(限定するものではないが、好ましくは質量平均重合度100以上、より好ましくは質量平均重合度400〜50,000)で重合した分子鎖若しくはその誘導体(例えばCMC等の、カルボキシメチル化、アルデヒド化若しくはエステル化等の誘導体化が為されたもの)、又はそれらが複数結合したもの(セルロース繊維等)を意味する。セルロースは、アビセルや綿繊維等の結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよい。セルロースはまた、天然由来のものでも、人為的に合成したものでもよい。さらにセルロースは、植物由来のものでも、真菌由来のものでも、細菌由来のものでもよい。
【0049】
本発明において「セロオリゴ糖」とは、グルコースがβ-1,4結合により重合した少糖類(重合度3〜50)又はその誘導体を意味する。セロオリゴ糖の具体例として、セロペンタオース、セロトリオース、セロヘキサオース、セロテトラオース等が挙げられる。
【0050】
本発明において「βグルコシド」とは、グルコースが非糖化合物(アグリコン)と結合した配糖体を意味する。βグルコシドの具体例としては、パラニトロフェニルβグルコシド、グリチルリチン酸、ステビオシド、フラボノイド配糖体、アルブチン、サポニン等が挙げられる。なお、パラニトロフェニルβグルコシドは、βグルコシダーゼの作用により、アグリコンに相当するパラニトロフェノールとグルコースとに分解される。
【0051】
上述のような本発明に係る糖類製造方法の1つの態様として、本発明に係るフォミトプシス属微生物をセルロース存在下で培養してセルロースを加水分解することにより、セロオリゴ糖、セロビオース又はグルコース等の糖類をセルロースから遊離させることを含む、セルロースから糖類を製造する方法がある。ここで「セルロース存在下」とは、本発明に係るフォミトプシス属微生物を培養する培地中に、セルロース系物質が添加されていることを意味する。
【0052】
本発明に係る糖類製造方法の別の態様としては、本発明に係るフォミトプシス属微生物をセロオリゴ糖存在下で培養してセロオリゴ糖を加水分解することにより、セロオリゴ糖からセロビオース又はグルコース等の糖類を遊離させることを含む、セロオリゴ糖からセロビオース又はグルコースを製造する方法が挙げられる。ここで「セロオリゴ糖存在下」とは、本発明に係るフォミトプシス属微生物を培養する培地中にセロオリゴ糖が添加されていることを意味する。
【0053】
さらに、本発明は、本発明に係るフォミトプシス属微生物を用いて、βグルコシドからアグリコン及びグルコースを製造する方法に関する。当該方法には、本発明に係るフォミトプシス属微生物をβグルコシド存在下で培養することにより、βグルコシドをアグリコンとグルコースとに加水分解することを含む。ここで「βグルコシド存在下」とは、本発明に係るフォミトプシス属微生物を培養する培地中にβグルコシドが添加されていることを意味する。
【0054】
本発明に係る糖類製造方法並びに本発明に係るアグリコン及びグルコース製造方法において用いる培養培地としては、上記のようなセルラーゼの基質(セルロース系物質)を加える限り、フォミトプシス属に属する微生物の培養に使用可能な任意の培地を用いることができる。培地の組成は、例えば、「微生物の分離法」(山里一英ら編、株式会社R&Dプランニング発行、2001年7月6日(1986年初版発行))の記載を参考として決定することができる。培地に含める炭素源としては、上記のセルロース系物質に加えて、スクロース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、ガラクトース、マルトース、エリスリット、グリセリン、エチレングリコール、エタノール、澱粉、ビート搾汁、サトウキビ搾汁、ビートモラセス等を用いてもよい。培地に含める窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩、硝酸カルシウム等の硝酸塩、又はその他の有機若しくは無機窒素源を用いることができる。さらに培地には、ペプトン、酵母エキス、大豆加水分解物等の天然栄養源を含めることも好ましい。培地には、抗生物質、pH緩衝剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸アンモニウム、水酸化ナトリウム等)、マーカー物質等を含めてもよい。培地は液体培地であってもよいし、固体培地であってもよい。上記のようなセルラーゼの基質を培地に加える量は、特に限定されないが、液体培地で培養する場合には1L当たり1g〜100g程度用いればよい。好適な培地の例としては、0.2%硫安、0.01%塩化カリウム、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.03%塩化カルシウム及び0.001%酵母エキスを含む溶液に、上記のようなセルラーゼの基質を加えたものが挙げられる。セルラーゼの基質は、培養中、適宜補充することがより好ましい。
【0055】
用いる培地のpH値は、培養開始前に、本発明に係るフォミトプシス属微生物の生育可能範囲内にあればよい。本発明に係る製造方法では、好ましくはpH1.5〜pH7.0、より好ましくはpH3.0〜pH6.0の酸性pH値を示す培地を用いることが望ましい。本発明に係る製造方法では、とりわけpH2.5〜pH4.0の範囲内のpH値を示す培地の使用が、糖類を効率よく生産する上でより好ましい。またpH4.0以下、特にpH1.5〜pH3.5の範囲内のpH値を示す培地は、他の雑菌の混入を抑制する上でより好適に使用される。なお本発明に係る製造方法において、この培地のpH値が、本発明に係るフォミトプシス属微生物の培養を利用してセルロース、セロオリゴ糖、βグルコシド等の分解反応を実施する際のpH条件に相当する。
【0056】
培養温度は、本発明に係るフォミトプシス属微生物の生育可能範囲内の温度であればよい。特に好ましい培養温度は、20℃〜35℃、より好ましくは25℃〜30℃、最も典型的な培養温度は25℃である。培養は、好気的条件下で行うことが好ましい。
【0057】
培養時間は、当業者であれば任意に設定することができるが、少なくとも24時間培養を継続することが好ましい。
【0058】
以上のようにして本発明に係るフォミトプシス属微生物を上記のようなセルラーゼの基質の存在下で培養すると、その基質が加水分解されて生じた糖類等(低分子化セルロース、セロオリゴ糖、セロビオース、グルコース、βグルコシド、アグリコン等)が培養物中に生産される。本発明においては、そのようにして生産された糖類等を、培養物(特に培養液)から、HPLC法、アルコール沈殿法、結晶化法等の当業者に公知の方法により精製することができる。あるいは、その培養液から菌体を除去して培養上清を調製し、それを糖類等を豊富に含む溶液として利用することもできる。
【0059】
本発明に係る製造方法のまた別の態様として、本発明に係るフォミトプシス属微生物を好ましくは液体培地で培養しその菌体を除去して得られる培養上清を、セルラーゼの基質となるセルロースと反応させ、セルロースを加水分解することにより、セロオリゴ糖、セロビオース又はグルコース等の糖類をセルロースから遊離させることを含む、セルロースから糖類を製造する方法が挙げられる。
【0060】
本発明に係る製造方法のさらなる態様として、本発明に係るフォミトプシス属微生物を好ましくは液体培地で培養しその菌体を除去して得られる培養上清を、セルラーゼの基質となるセロオリゴ糖と反応させ、セロオリゴ糖を加水分解することにより、セロビオース又はグルコース等の糖類をセロオリゴ糖から遊離させることを含む、セロオリゴ糖からセロビオース又はグルコースを製造する方法が挙げられる。
【0061】
本発明に係る製造方法のさらに別の態様として、本発明に係るフォミトプシス属微生物を好ましくは液体培地で培養しその菌体を除去して得られる培養上清を、セルラーゼの基質となるβグルコシドと反応させて、βグルコシドをアグリコンとグルコースとに加水分解することを含む、βグルコシドからアグリコン及びグルコースを製造する方法が挙げられる。
【0062】
ここで培養上清を調製するには、まず、本発明に係るフォミトプシス属微生物を、上述のフォミトプシス属に属する微生物の培養に使用可能な任意の培地で培養すればよい。次いで、得られた本発明に係るフォミトプシス属微生物の培養液から、遠心分離等の分離手法を用いて菌体を除去することにより、培養上清を得ることができる。このような本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清は、各種セルラーゼを含み、広範な酸性条件下で強いセルラーゼ活性を示し、特に、pH1.5〜pH2.5のpH範囲を含む強酸性条件下でエンドセルラーゼ活性及びβグルコシダーゼ活性を示す。本発明は、このような本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清にも関する。
【0063】
以上のようにして調製した培養上清とセルラーゼの基質とを反応させるには、培養上清にセルラーゼの基質を添加するか、又はセルラーゼの基質を含む溶液と培養上清とを混合して、反応系を調製してもよい。この反応系には、pH緩衝剤等を含めても含めなくてもよい。
【0064】
培養上清中のセルラーゼとセルラーゼの基質との反応を促進するため、反応系のpH値は、原則として、本発明に係るフォミトプシス属微生物が生育可能なpH範囲又はその付近とすることが好ましい。反応系のpH値としては、糖類を効率よく生産する上ではpH3.0〜pH6.0の範囲がより好ましい。またpH4.0以下、例えばpH1.5〜pH4.0の範囲、特にpH1.5〜pH3.5の範囲は、他の雑菌の混入を抑制しながら糖類を生産する上でより好ましい。なお本発明において培養上清を用いてセルロース、セロオリゴ糖、βグルコシド等の分解反応を実施する際のpHの「条件」とは、このような反応系のpH値を言う。
【0065】
反応系の温度は、本発明に係るフォミトプシス属微生物の生育可能範囲内であればよい。特に好ましい培養温度は、20℃〜40℃、より好ましくは25℃〜30℃である。この態様では、より反応を促進するため、反応系の温度を20℃とすることも好ましい。
【0066】
反応時間は、当業者であれば任意に設定することができるが、少なくとも10分間、好ましくは1時間以上にわたり反応させることが好ましい。
以上のようにして生産された糖類等は、上記と同様にして常法により精製してもよい。
【0067】
4.本発明に係るフォミトプシス属微生物と有機酸生産生物を用いた有機酸製造方法
本発明に係るフォミトプシス属微生物は、公知技術であるセルラーゼ生産菌と有機酸生産生物の共存培養に基づく有機酸製造方法において、強酸性条件下でも糖類を生産できるという利点を生かし、セルラーゼ生産菌として非常に有利に利用することができる。
【0068】
セルラーゼ生産菌と有機酸生産生物の共存培養に基づく有機酸製造方法は、特開2005-13131号並びにIyer P.V. and Lee Y.Y., Biotechnology Letters (1999) 21: p.371-373、Xu D.B. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. (1989) 30, p.553-558、Kim D.M. et al., Biotechnol. Bioeng. (1992) 39 p.336-342及びMoresi. M. et al., Appl. Microbiol. Biotechnol. (1991) 36, p.35-39等の文献に詳細に記載されている。例えば特開2005-13131号には、セルラーゼ生産菌(セルロース分解菌)の存在下でセルロース又はセルロースと澱粉の混合物を同時に加水分解して糖化した後、乳酸菌を加えて乳酸発酵を行うことによる、乳酸の製造方法が開示されている。特開2005-13131号には、さらに、セルロース又はセルロースと澱粉の混合物を含む培地において、セルラーゼ生産菌と乳酸菌の共生系による混合培養を行うことによる乳酸の製造方法が開示されている。従って本発明では、これらの文献に記載されたような公知の有機酸製造方法において、既存のセルラーゼ生産菌に代えて本発明に係るフォミトプシス属微生物を用いればよい。
【0069】
具体的には本発明は、本発明に係るフォミトプシス属微生物と有機酸生産生物とをセルロース存在下で共存培養することにより、有機酸を製造する方法に関する。本発明はさらに、本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清とセルロースとを含む培地で有機酸生産生物を培養することにより、有機酸を製造する方法に関する。
【0070】
本発明に係る有機酸製造方法において使用する有機酸生産生物[及びその有機酸生産]としては、ストレプトコッカス属菌(例えばストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis))やラクトバチルス属菌(例えばラクトバチルス・デルブルエキイ(Lactobacillus delbrueckii))等の乳酸菌[乳酸生産]、リューコノストック属菌[乳酸生産]、ペニシリウム属菌[クエン酸生産]、グルコノバクター属菌[グルコン酸生産]、アセトバクター属菌[酢酸生産]等が挙げられるが、特に乳酸菌が好適である。
【0071】
ここで、「共存培養」とは、培養期間の少なくとも一部において、本発明に係るフォミトプシス属微生物と有機酸生産生物とが、同じ培地中で互いを排除することなく生育(増殖)していることを意味する。
【0072】
本発明に係る有機酸製造方法において培養に使用する培地、培養温度、培養時間等は、使用する有機酸生産生物に適した培養条件に、本発明に係るフォミトプシス属微生物の上記生育可能範囲等を考慮して必要に応じて多少の変更を加えることにより、当業者が適宜設定することができる。
【0073】
セルラーゼ生産菌と有機酸生産生物を用いた従来の有機酸製造方法では、生産された有機酸により培地のpHが徐々に低下し、その結果、セルロース分解活性の低下をもたらすため、培養中の培地におけるpH低下を防ぐ必要があったが、本発明では、強酸性条件下でも十分なセルロース分解活性を示す本発明に係るフォミトプシス属微生物を利用するため、培地のpH調整がほとんど不要になり、非常に有利である。
【0074】
5.本発明に係るフォミトプシス属微生物とアルコール生産生物を用いたアルコール製造方法
セルラーゼはセルロースより精製したグルコースにより酵素反応が低下するため、生成したグルコースを速やかにエタノールに変換する技術が開発されている。例えば、エタノール発酵酵母の細胞表層にセルラーゼを固定する方法(国際公開第01/079483号パンフレット)、セロオリゴ糖資化能をエタノール発酵酵母に持たせる方法(特表2004-501636号公報、特開平6-277077号公報)、糸状菌由来のセルラーゼを添加した培地でエタノール発酵酵母を培養する方法(特開2005-58055号公報)等がある。
【0075】
従来のセルラーゼ生産菌とアルコール生産生物の共存培養に基づくアルコール製造方法に準じて、本発明は、本発明に係るフォミトプシス属微生物とアルコール生産生物とをセルロース存在下で共存培養することにより、アルコールを製造する方法に関する。本発明はさらに、本発明に係るフォミトプシス属微生物由来の培養上清とセルロースとを含む培地でアルコール生産生物を培養することにより、アルコールを製造する方法に関する。
【0076】
炭化水素分解菌とアルコール生産生物の共存培養に基づくアルコール製造方法は、特開平6-197772号公報等の文献に詳細に記載されている。従って、本発明では、当該文献に記載されたような公知のアルコール製造方法において、既存の炭化水素分解菌に代えて本発明に係るフォミトプシス属微生物を用いればよい。
【0077】
本発明に係るアルコール製造方法において使用するアルコール生産生物[及びその生産されるアルコール類]としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)[エタノール]、ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)[エタノール]、クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)[ブタノール]、クロストリジウム・バイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)[プロパノール]、バチルス・ポリミクサ(Bacillus polymyxa)[ブタンジオール]等が挙げられる。
【0078】
ここで、「共存培養」とは、培養期間の少なくとも一部において、本発明に係るフォミトプシス属微生物とアルコール生産生物とが、同じ培地中で互いを排除することなく生育(増殖)していることを意味する。
【0079】
本発明に係るアルコール製造方法において培養に使用する培地、培養温度、培養時間等は、使用するアルコール生産生物に適した培養条件に、本発明に係るフォミトプシス属微生物の上記生育可能範囲等を考慮して必要に応じて多少の変更を加えることにより、当業者が適宜設定することができる。
【0080】
また、本発明に係るフォミトプシス属微生物の生産するセルラーゼは菌体外に分泌され、遠心分離等により容易に分離、精製することが可能なことから、同様の手法を用い、菌の代わりに酵素液を用いることも可能である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
本実施例における材料及び方法は以下の通りであった。
〔材料及び方法〕
1. 分離培地
1%セルロース、0.2%硫安、0.01%塩化カリウム、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.03%塩化カルシウム、0.001%酵母エキスを含む培地を、硫酸でpH2に調製し、オートクレーブに供した。以下、調製した培地を「酸性培地」という。
【0083】
一方、予めエチレンオキサイドガス滅菌に供した濾紙(アドバンテック東洋ろ紙社製:PD-47B)をプレートに無菌的に重層した。
【0084】
2. エンドセルラーゼ活性測定方法
基質として0.6%CMC(シグマ社製)を含む種々のpH値の緩衝液に粗酵素液を添加し、反応液(全量50μl)を調製した。使用した緩衝液は、0.2Mグリシン−塩酸緩衝液(pH2.0〜2.5)、0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.0〜5.5)及び0.1M PIPES緩衝液(pH6.4〜7.5)であった。なお、pH2.0以下については、0.2M塩酸を用いて適宜pH調製を行った。
【0085】
30℃で適当な時間、反応を行った後、反応液に50μlのSomogyi銅液を添加し、反応を停止させた。さらにサーマルサイクラーで100℃で10分加熱した。10分間の加熱後、急冷し、反応液に50μlのNelson試薬(和光純薬工業製)を加えることで、生じた一価の銅を溶解し、発色させた。
【0086】
発色30分後に、反応液を660nmでの吸光度測定に供した。得られた測定値を標品のグルコースと比較することにより、反応液中に含まれる還元糖量を測定した。なお、1分間に1μmolの還元糖を生成する酵素量をエンドセルラーゼ活性の1単位とした。
【0087】
3. βグルコシダーゼ活性測定方法
基質として0.1Mのパラニトロフェニルβグルコシド(和光純薬工業製)を含む種々のpH値の緩衝液に粗酵素液を添加し、反応液(全量50μl)を調製した。使用した緩衝液は、0.2Mグリシン−塩酸緩衝液(pH2.0〜2.5)、0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH3.0〜5.5)及び0.1M PIPES緩衝液(pH6.4〜7.5)であった。なお、pH2.0以下については、0.2M塩酸を用いて適宜pH調製を行った。
【0088】
30℃で適当な時間、反応を行った後、反応液に450μlの50mM炭酸ナトリウム溶液を添加し反応を停止させた。
【0089】
パラニトロフェニルβグルコシドの分解によって生じたパラニトロフェノールを測定するために、反応液を400nmでの吸光度測定に供した。モル吸光係数を55.1μM/cmとして、パラニトロフェノール量を算出した。なお、1分間に1μmolのパラニトロフェノールを生成する酵素量をβグルコシダーゼ活性の1単位とした。
【0090】
〔実施例1〕I53株の単離
1. I53株のスクリーニング
全国の酸性温泉(pH2.5以下)、酸性湖沼(pH2.0以下)、高知県沖の海洋、沖縄沖の海洋等の試料50μlを酸性培地プレートに塗布し、25℃で2週間培養した。
【0091】
2週間の培養により得られた菌糸をさらに新しい培地に植菌し、菌を純化した。このようにして、pH2.0において濾紙を分解して生育する糸状菌28株を得た。
【0092】
次に、得られた菌株の各培養上清を「ウルトラフリー0.5」(日本ミリポア株式会社製)で濃縮し、エンドセルラーゼ活性測定に供した。
【0093】
エンドセルラーゼ活性測定の結果、pH2における培養液の活性がpH4における活性の50%以上である菌株を2つ分離した。分離した2株の活性を比較し、特に酸性域で活性が高かった菌株を酸性エンドセルラーゼ生産菌とした。
【0094】
得られた酸性エンドセルラーゼ生産菌は、石垣市川平湾沖で採取したヒトデを磨り潰した破砕液より分離された菌株であった。当該菌株を「I53株」と称した。
【0095】
2. I53株の系統解析
2-1. 28S rDNA D1/D2領域の単離及び配列決定分析
I53株の検体を、PDAで25℃で7日間培養した。次いで、集菌した菌体からのDNAの抽出から配列決定分析までを、以下の試薬、装置等を用いて付属のプロトコール等に従い行った。
(1)DNA抽出:DNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN, Hilden, Germany)
(2)PCR:puReTaq Ready-To-Go PCR beads(Amersham Biosciences, NJ, USA)
(3)PCRに使用したプライマー(O' Donnell, K., Fusarium and its near relatives. In Reynolds, D.R. and Taylor, J. W. (編) The Fungal Holomorph: Mitotic, Meiotic and Pleomorphic Speciation in Fungal Systematics, CAB International, Wallingford, UK, pp.225-233, 1993):
NL1:5'-GCA TAT CAA TAA GCG GAG GAA AAG-3'(配列番号4)
NL4:5'-TGG TCC GTG TTT CAA GAC GG-3'(配列番号5)
【0096】
(4)サイクルシークエンス:BigDye Terminator v3.1 Kit(Applied Biosystems, CA, USA)
(5)サイクルシークエンスに使用したプライマー(O' Donnell, K., Fusarium and its near relatives. In Reynolds, D.R. and Taylor, J. W. (編) The Fungal Holomorph: Mitotic, Meiotic and Pleomorphic Speciation in Fungal Systematics, CAB International, Wallingford, UK, pp.225-233, 1993):上述のNL1及びNL4並びに下記のNL2及びNL3
NL2:5'-CTC TCT TTT CAA AGT TCT TTT CAT CT-3'(配列番号6)
NL3:5'-AGA TGA AAA GAA CTT TGA AAA GAG AG-3'(配列番号7)
(6)シークエンス:ABI PRISM 3730 Genetic Analyzer System(Applied Biosystems, CA, USA)
(7)配列決定:BioEdit
決定されたI53株の28S rDNA D1/D2領域の塩基配列を配列番号1に示す。
【0097】
2-2. I53株の28S rDNAの塩基配列を用いた相同性分析
I53株の28S rDNAの塩基配列に類似する塩基配列を、BLASTを用いた相同性検索を行った。
【0098】
図7は、I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・パルストリスCBS283.65株の28S rDNAの塩基配列(配列番号2:GenBank Accession No. AY515333)とのアライメントを示す。図8は、I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・フィーイCBS546.50株の塩基配列(配列番号3:GenBank Accession No. AY515327)とのアライメントを示す。図7において、「I53」がI53株の28S rDNAの塩基配列であり、「Fomitopsis_palustris」がフォミトプシス・パルストリスCBS283.65株の28S rDNAの塩基配列である。図8において、Query配列がI53株の28S rDNAの塩基配列であり、Sbjct配列がフォミトプシス・フィーイCBS546.50株の塩基配列である。
【0099】
I53株の28S rDNAについて相同性分析を行った結果、フォミトプシス・パルストリスCBS283.65株及びフォミトプシス・フィーイCBS546.50株が相同性がI53株と高い菌株として同定された。図7及び8に示すように、I53株の28S rDNAの塩基配列はフォミトプシス・パルストリスCBS283.65株の28S rDNAの塩基配列と99%の同一性、フォミトプシス・フィーイCBS546.50株と98%の同一性を示した。
【0100】
より詳細な分類学的情報を得るために形態学的観察を行ったところ、栄養菌糸にかすがい連結が認められたことからI53株は、担子菌門に属することが明らかになった。しかしながら、それ以上の情報が得られなかったことから、I53株をフォミトプシス・エスピーI53株と命名した。
【0101】
〔実施例2〕I53株が生産するエンドセルラーゼの活性
I53株を酸性培地で25℃、14日間培養した。得られた培養上清を「ウルトラフリー0.5」(日本ミリポア株式会社製)で濃縮し、濃縮液を調製した。
【0102】
濃縮液を10%アクリルアミドゲル電気泳動に供した。泳動後、1時間かけて、当該ゲルを0.1%のCMCを含む緩衝液(pH2.0又は4.0)に浸漬した。次いで、ゲルを0.2%コンゴレッドで染色した後、1M塩化ナトリウム溶液で脱色した。ここで、ゲル中にエンドセルラーゼ活性を有するタンパク質が存在する場合には、赤色に染まったゲルに白いスポットが検出される。図9は、コンゴレッドで染色し、脱色した後のゲルの写真である。
【0103】
図9に示すように、pH4.0の緩衝液に浸漬した場合には、3本の活性のあるスポットが検出された(矢印で示すスポット)。一方、pH2.0の緩衝液に浸漬した場合には、1本の強いスポットのみが検出された(矢印で示すスポット)。
【0104】
次に、上記I53株培養上清の濃縮液について、種々のpHでエンドセルラーゼ活性を測定した。図10は、当該濃縮液について種々のpHでエンドセルラーゼ活性を測定することで得られたpHプロフィールである。
【0105】
図10に示すように、pH3.5付近にエンドセルラーゼ活性が最大であった。また、至適pHにおけるエンドセルラーゼ活性の約80%の活性がpH2においても見られた。さらに、pH1.5においても、至適pHにおけるエンドセルラーゼ活性の14%の活性が認められた。
【0106】
一方、同様の条件で、セルラーゼオノズカ(ヤクルト薬品工業株式会社製)のエンドセルラーゼ活性を測定すると、至適pHは5付近であり、pH2では全く活性が認められなかった(図10)。
【0107】
血清アルブミン(シグマ社製)を標準タンパク質としてBradford らの方法(Bradford MM., Anal. Biochem., (1976) 72, 248-254)に従い、上記I53株培養上清の濃縮液のタンパク質を測定し、タンパク質1mg当たりの比活性を算出した。
【0108】
エンドセルラーゼ活性は、以下の式で表した。
エンドセルラーゼ活性(nmol/min/mg)=反応溶液中の還元糖量(nmol)/反応時間(分)/用いた濃縮液中のタンパク質量(mg)
【0109】
その結果、至適pHにおけるエンドセルラーゼ活性を比較しても、I53株が15023 nmol/min/mg(pH3.6)であるのに対し、セルラーゼオノズカ(ヤクルト薬品工業株式会社製)は346 nmol/min/mg(pH4.65)であった。このように、I53株から非常に活性の高いエンドセルラーゼが得られた。
【0110】
〔実施例3〕I53株と従来の酸性エンドセルラーゼ生産菌とのエンドセルラーゼ活性及びβグルコシダーゼ活性の比較
独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部生物遺伝資源部門(NBRC)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)からNBRC 30339株(カタログ番号NBRC 30339:学名フォミトプシス・パルストリス(Berkeley & Curtis)Teixeira)を入手した。NBRC 30339株は、酸性エンドセルラーゼ生産が報告されている菌株である(非特許文献2)。
【0111】
NBRC 30339株を、培地(0.2%硫安、0.01%塩化カリウム、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.03%塩化カルシウム、0.1%酵母エキス、1%ペプトン、0.5%グルコースを含む:pH調製なし)で3日間25℃で培養した。また、I53株を同様の培地で3日間25℃で培養した。培養後、I53株とNBRC 30339株との生育を比較した。図11は、3日間の培養後のI53株及びNBRC 30339株の生育結果を示す写真である。図11から判るように、目視判断で10倍近い生育の差でI53株の生育の早さが認められた。
【0112】
有機酸生産菌と共発酵させる際に、種菌として大量のセルロース分解菌が必要になる。予め、上述のような培地で菌糸を増やした後、セルロースが含まれた培地に菌体添加することで効率的にセルロースを分解することができる。従って、生育が早い点でI53株は従来に存在しない有用な菌である。
【0113】
一方、I53株の培養で用いた酸性培地(pH2)を用いて、NBRC 30339株を培養した。しかしながら、全く生育は見られなかった。さらに、硫酸で酸性培地のpHを3.5に変更したが、同様に全く生育しなかった。
【0114】
そこで、NBRC 30339株を上記培地(0.2%硫安、0.01%塩化カリウム、0.05%リン酸二水素カリウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.03%塩化カルシウム、0.1%酵母エキス、1%ペプトン、0.5%グルコースを含む:pH調製なし)(50mL)で30℃、9日間培養した。9日間の培養後、無菌的に菌体を採取し、0.5%(w/v)濾紙を含む50mLの酸性培地(pH3.5)に移して、さらに25℃で24日間培養した。
【0115】
24日間の培養後の培養上清の濃縮液について、実施例2に記載の方法に準じて当該濃縮液1mL当たりのエンドセルラーゼの比活性を算出した。
【0116】
エンドセルラーゼ活性は、以下の式で表した。
エンドセルラーゼ活性(nmol/min/mL)=反応溶液中の還元糖量(nmol)/反応時間(分)/用いた濃縮液量(mL)
【0117】
その結果、NBRC 30339株のpH3.7におけるエンドセルラーゼ活性が197nmol/min/mLであった。
【0118】
一方、0.5%(w/v)濾紙を含む50mlの酸性培地(pH2)で、同様にI53株を25℃で24日間培養した。24日間の培養後の培養上清の濃縮液について、I53株のpH3.6におけるエンドセルラーゼ活性は、2952nmol/min/mLであった。このように、I53株のエンドセルラーゼ活性は、NBRC 30339株と比較して圧倒的に高い値を示した。また、これらの測定の際に、pH2におけるエンドセルラーゼ活性を調べると、I53株が2228nmol/min/mLであったのに対し、NBRC30339株は検出限界以下だった。
【0119】
以上の結果より、I53株は非常に高い酸性条件下でエンドセルラーゼ活性を有する菌であることが明らかになった。
【0120】
また、上述の培養上清の濃縮液を使用して、NBRC 30339株とI53株との間のβグルコシダーゼ活性を比較した。
【0121】
βグルコシダーゼ活性は、以下の式で表した。
βグルコシダーゼ活性(nmol/min/mL)=反応溶液中のパラニトロフェノール量(nmol)/反応時間(分)/用いた濃縮液量(mL)
【0122】
その結果、I53株はpH2.6で42nmol/min/mL、pH4.0で30nmol/min/mLであった。一方、NBRC30339株はpH2.6で1.8nmol/min/mL、pH4.0で2.2nmol/min/mLであった。
【0123】
以上の結果より、I53株はβグルコシダーゼ活性についても高い活性を有していることが明らかにあった。従って、I53株によれば、エンドセルラーゼによってセルロースから生成したセロオリゴ糖を効率的にグルコースに分解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】各培地における25℃で10日間培養後のI53株の巨視的観察像である。
【図2】各温度下のI53株のコロニー観察像である。
【図3】I53株の微視的観察像(300倍:全体像)である。
【図4】I53株の微視的観察像(600倍:かすがい連結)である。
【図5】I53株の微視的観察像(1500倍:かすがい連結)である。
【図6】I53株の微視的観察像(1500倍:厚壁胞子)である。
【図7】I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・パルストリスCBS283.65株の28S rDNAの塩基配列(配列番号2:GenBank Accession No. AY515333)とのアライメントである。
【図8】I53株の28S rDNAの塩基配列(配列番号1)とフォミトプシス・フィーイCBS546.50株の塩基配列(配列番号3:GenBank Accession No. AY515327)とのアライメントである。
【図9】I53株培養上清のエンドセルラーゼ活性を示す、コンゴレッドで染色し脱色した後のゲルの写真である。
【図10】I53株培養上清の濃縮液について、種々のpHでエンドセルラーゼ活性を測定することで得られたpHプロフィールである。
【図11】3日間の培養後のI53株及びNBRC 30339株の生育結果を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH2以下の条件下でセルロース分解活性を示すフォミトプシス(Fomitopsis)属微生物。
【請求項2】
上記セルロース分解活性がエンドセルラーゼ活性及びβグルコシダーゼ活性である、請求項1記載の微生物。
【請求項3】
受託番号NITE P-559で特定される微生物である、請求項1又は2記載の微生物。
【請求項4】
pH2以下の条件下でセルロース分解活性を示す、請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物由来の培養上清。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物又は請求項4記載の培養上清を用いてセルロースを分解することを含む、糖類の製造方法。
【請求項6】
糖類がセロオリゴ糖、セロビオース及びグルコースから成る群より選択される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物又は請求項4記載の培養上清を用いてセロオリゴ糖を分解することを含む、セロオリゴ糖からセロビオース又はグルコースを製造する方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物又は請求項4記載の培養上清を用いてβグルコシドを分解することを含む、βグルコシドからアグリコン及びグルコースを製造する方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物と有機酸生産生物とをセルロース存在下で共存培養することを含む、有機酸の製造方法。
【請求項10】
請求項4記載の培養上清とセルロースとを含む培地で有機酸生産生物を培養することを含む、有機酸の製造方法。
【請求項11】
有機酸生産生物が乳酸菌である、請求項9又は10記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項記載の微生物とアルコール生産生物とをセルロース存在下で共存培養することを含む、アルコールの製造方法。
【請求項13】
請求項4記載の培養上清とセルロースとを含む培地でアルコール生産生物を培養することを含む、アルコールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−45998(P2010−45998A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212078(P2008−212078)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】