説明

酸素バリア性を有する被覆ポリマーフィルム

基材に酸素バリア性を付与する塗布組成物が、開示される。基材は、例えば、ポリエステルフィルムのようなフィルムであってもよい。塗布組成物は、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体と、ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体を含有する。塗布組成物から形成されたバリア塗膜は、代表的には、約(1)ミクロン未満の膜厚を有し、比較的高湿度においても、低い酸素透過性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素バリアフィルムに関し、詳しくは、フィルムの酸素バリア性を改良する塗膜の形成に好適な塗布組成物に関する。本発明は、2005年6月22日出願の米国仮特許出願60/692,883号に基づく優先権を主張した出願である。
【背景技術】
【0002】
バリア塗膜は、食品包装およびその他の製品の包装等の多くの用途に好適である。これらバリア塗膜は、その被覆基材を通じた酸素および水蒸気の透過を、それぞれ異なる度合で、最小限に抑制する。最終使用のためには、塗膜は透明であることが好適である。基材も、透明ポリマーフィルムの様に透明であれば、基材を通じた視界は妨げられない。しかしながら、公知のバリア塗膜には、高コスト、透明性不良および限られたバリア性等の多くの問題が有る。また、過去に使用された多くのバリア塗膜は、ある種のポリ塩化ビニル塗膜のようにリサイクルが可能でない。これら問題点の1つ以上を克服解消したバリア塗膜が要望されている。また、ポリマーフィルム基材に適用可能なバリア塗膜が、要望されている。更に、フィルム製造中にインライン法により形成可能な塗膜が要望されている。
【0003】
例えば、ポリエステルフィルム等のフィルム用バリア塗膜が、特許文献1:米国特許6709735号(発明の名称:酸素バリア塗膜および被覆フィルム:2004年3月23日登録:本願に参照により包含される)に開示される。より具体的には、上記米国特許6709735号には、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体の水溶液と、ポリビニルアルコールとを併用して成るフィルム用バリア塗膜が、開示されている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第6709735号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許6709735号の発明は、従来技術において多大な進展を与えるものであるが、本発明は、フィルム用バリア塗膜の更なる改良を目的としたものである。本発明は、酸素バリアフィルムに関し、より詳しくは、フィルムの酸素バリア性を改良する塗膜の形成に好適な塗布組成物に関する。特に、本発明のバリア塗膜は、非常に小さな膜厚において高い酸素バリア性を示し、また、約30%より高い相対湿度、更には約50%より高い相対湿度においても、優れた酸素バリア性を示すことが見出された。上記バリア塗膜が、より高い相対湿度においても酸素透過を防止するので、当該バリア塗膜を含むポリマーフィルムは、特に、チーズ及び食肉包装用途等の食品包装用途に好適に使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例によれば、例えば、本発明は、ポリマーフィルムと当該フィルムの少なくとも1つの側に形成された塗膜とから成る被覆ポリマーフィルムに関する。上記塗膜は、必要に応じて架橋剤を使用して第2のポリマーと反応させた第1のポリマーから成る。第1のポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が挙げられる。他方、第2のポリマーとしては、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体が挙げられる。塗膜は、フィルムの酸素バリア性を向上されるのに充分な量でポリマーフィルム上に存在させる。
【0007】
例えば、上記バリア塗膜を含むポリエステルフィルムは、温度23℃及び0%相対湿度下で、約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過性を有する。50%相対湿度および温度23℃下では、当該被覆ポリエステルフィルムは、約6cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過性を有する。また、60%相対湿度および温度23℃下では、当該被覆ポリエステルフィルムは、約8cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは約6cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過性を有する。実際には、更に、70%相対湿度および温度23℃下においても、当該被覆ポリエステルフィルムは、約20cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは約18cc.mil/m/day/atm未満、より好ましくは約15cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過性を有する。
【0008】
しかしながら、ポリエステルフィルム以外にいかなる好適なポリマーフィルムも本発明により被覆可能である。被覆可能な他のフィルムとしては、例えば、ポリアミドフィルム及びポリオレフィンフィルムが挙げられる。
【0009】
上記したように、バリア塗膜は、ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体と、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体を併用して成る。ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体は、約35%〜約65%、好ましくは約45%〜約55%の量で含有される。塗膜の残部は、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体のみ又は当該共重合体と他の微量成分の組み合わせから成る。
【0010】
上記ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体は、ビニルアミン成分を約8モル%〜約15モル%の量で含有する。例えば、一実施態様では、ビニルアミンは上記共重合体中に、約9モル%〜約11モル%、好ましくは約10モル%の量で含有される。他方、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体は約3500〜約5000の重量平均分子量を有し、かつ交互構造を有していてもよい。
【0011】
また、上記塗膜は、第1のポリマー及び第2のポリマー以外に、更に、架橋剤を含有していてもよい。例えば、架橋剤としては、ジアルデヒド及びヒドロキシ酸が挙げられる。ヒドロキシ酸を使用する場合は、ヒドロキシ酸は水酸基に加えてカルボン酸基を含んでいてもよい。一実施態様においては、架橋剤としてグリコール酸を使用することが出来る。
【0012】
使用される架橋剤および特定の用途に応じて、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体のpH値は、ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体と配合する前に、当該共重合体を塩基と配合することにより、上昇させてもよい。例えば、一実施態様においては、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体にアンモニア等の塩基を添加して、当該共重合体を含む溶液のpH値を約7より大きく、好ましくは約7.5〜約8.5に調節してもよい。マレイン酸およびアクリル酸の共重合体のpH値を上昇させることにより、上記2種の共重合体は、溶液中では反応せず、塗膜がフィルム上で乾燥した後に始めて反応する。この方法では、塗布組成物はフィルム上に塗布され、得られたフィルムを共重合体間での反応が起こる前に延伸することが出来る。しかしながら、他の実施態様では、アンモニア等の塩基を使用して塗布組成物のpH値を上昇させる必要がない。例えば、グリコール酸を架橋剤として用いる場合、塩基の添加の必要がなく、塗布組成物のpH値を7より大きくすることが出来る。
【0013】
一実施態様においては、本発明のバリア塗膜は約0.3ミクロン未満、好ましくは約0.01ミクロン〜0.15ミクロンの膜厚を有する。また、バリア塗膜は、所望によりポリマーフィルム上に塗布形成される金属化層と併用してもよい。
【0014】
本発明の他の特徴および要旨は、以下において詳述される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のバリア塗膜は非常に小さな膜厚において高い酸素バリア性を示し、また、約30%より高い相対湿度、更には約50%より高い相対湿度においても、優れた酸素バリア性を示すことが見出された。より高い相対湿度においても上記バリア塗膜が酸素透過を防止するので、当該バリア塗膜を含むポリマーフィルムは、特に、チーズ及び食肉包装用途等の食品包装用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
当業者に最良な実施形態を含む本発明の全てかつ可能な記載を以下に図面を参照して詳述する。
【0017】
当業者によって理解されるように、本記載は例示実施態様に関するものであり、本発明のより広い範囲の要旨を限定するものではない。
【0018】
本発明は酸素バリア性フィルムに関する。詳しくは、フィルム等の種々の基材に塗布して基材の酸素バリア性の改良する塗布組成物に関する。特に好適には、フィルム形成時に塗布組成物をフィルムに塗布することが出来る。本発明の塗布組成物は、フィルム上に、フィルムの他の特性に悪影響を及ぼすことない非常に薄い酸素バリア層を形成可能である。
【0019】
一実施形態において、本発明の塗布組成物は2種の共重合体等の2種のポリマーの混合物から成る。第1のポリマーはマレイン酸および酢酸の共重合体から成る。他方、第2のポリマーはビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体から成る。一実施形態において、両共重合体は水性分散液中に共に配合してもよいし、通常、フィルム製造工程のいずれかの時点でフィルム基材に塗布されてもよい。特定用途において、例えば、塗布組成物は延伸前のフィルムに塗布することが出来る。この実施形態では、例えば、塗布組成物はフィルムに塗布された後に得られたフィルムを延伸後加熱する。加熱行程中に塗布組成物中の揮発成分を蒸発させることによりバリア層を形成する。例えば、特定の一実施形態では、塗布組成物のpH値を7より大きい値に保持することにより、塗布組成物に含有される上記2種の共重合体間の反応を防止する。しかしながら、上記のように一旦加熱されると、上記2種の共重合体は互いに反応して酸素バリア塗膜を形成する。
【0020】
上記したように、塗布組成物に含有される上記2種の共重合体の一つは、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体から成る。例えば、ポリ(マレイン酸/アクリル酸)共重合体は、約1500〜約15000の平均分子量を有し、かつ交互構造を有することが出来る。従来のブロック又はランダム共重合体は、高い特性を示さないと考えられる。上記共重合体の分子量が非常に大きい場合、塗膜形成材のゲル化が起こる可能性がある。好ましい共重合体としては、シグマ・アルドリッチ社(ミルウォーキー、ウィスコン州)から市販されるポリ(マレイン酸/アクリル酸)共重合体(製品番号:41605−3)が挙げられる。上記共重合体は、組成物の固形分に対し、約35〜約65重量%、好ましくは約40〜約60重量%、より好ましくは約45〜約55重量%の量で使用される。
【0021】
本発明の塗膜で使用される上記ポリ(マレイン酸/アクリル酸)共重合体の分子量分布は、得られる被覆フィルムに多大な影響を及ぼす。遊離マレイン酸は、テンター時の加熱で無水マレイン酸を形成し、潜在的に刺激性を生じる。代表的には、例えば、シグマ・アルドリッチ社から市販される共重合体では、その平均分子量(特に断らない限り、本明細書に記載される全ての分子量は、重量平均分子量を示す。)は約3000であり、分子量分布には多数の低分子量成分が含まれる。驚くべきことに、好ましくは約3500〜約5000、より好ましくは約3700〜約4700の分子量を有する高平均分子量ポリマーを使用すると、排出ガス量を最小限に抑制された実用的な塗膜が形成可能であることが見出された。他の実施形態では、上記ポリ(マレイン酸/アクリル酸)共重合体を蒸気ストリッピング又は蒸留工程(合わせてストリッピングという)、好ましくは共沸蒸留に供し、低分子量成分を実質的に除去することにより、同様の結果を達成することが出来る。この方法により、好ましくは、約500以下の分子量を有する成分を除去することが出来る。本発明では従来公知の蒸気ストリッピング工程を使用することが出来る。
【0022】
上記のマレイン酸および酢酸の共重合体をビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体と併用することにより、本発明の塗布組成物が形成される。上記ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体としては、例えば、ランダム共重合体が挙げられる。上記共重合体は、ビニルアミンを約8モル%〜約15モル%、好ましくは約9モル%〜約12モル%の量で含有することが出来る。特定の一実施形態では、例えば、ランダム共重合体は、ビニルアミンを約10モル%の量で含有することが出来る。
【0023】
ビニルアルコール及びビニルアミンのランダム共重合体の製造方法の一例は、米国特許第6559227号明細書(本願に参照により包含される)に記載される。上記米国特許第6559227号明細書に記載される方法によって製造される製品は、本発明に従った塗布組成物の形成に好適に使用可能である。上記米国特許第6559227号明細書に記載されるように、その製造方法は、通常、N−ビニルアミド単位および酢酸ビニル単位から成る共重合体を、塩基性条件下で水に分散させながら加水分解する工程を含む。N−ビニルアミド単位は、例えば、N−ビニルホルムアミド又はN−ビニルアセトアミドから得られる。製造工程中に、酢酸ビニル及びN−ビニルアミドは、少なくとも約70%以上、好ましくは約90%以上、より好ましく約95%以上の割合で加水分解される。得られる共重合体の重量平均分子量は種々の要因によって変化する。一実施形態では、例えば、重量平均分子量は約80000より大きく、好ましくは約90000より大きい。
【0024】
上記製造方法において、共重合体中のN−ビニルアミド単位および酢酸ビニル単位のモル比は、約1:99〜約50:50、好ましくは5:95〜50:50の範囲である。もし必要なら、出発共重合体は、得られる共重合体の所望の特性に悪影響がない限り、更に他の任意のモノマー単位を含有してもよい。他のモノマーの含有量は、全モノマー単位に対し30モル%以下である。
【0025】
上記したように、加水分解は塩基性条件下で行われる。塩基性条件は苛性アルカリ等の強アルカリを添加することにより生起し得る。苛性アルカリとしては、例えば、苛性ソーダ及び苛性カリが挙げられる。アルカリの添加量は、全モノマー当量当たり、通常0.1〜10当量、好ましくは0.5〜5当量である。
【0026】
加水分解の終了時に、反応混合物は、通常、スラリー状である。このスラリーを冷却し、固形分を適当な手段によって反応液から分離する。次いで、回収されたポリマーを洗浄して不純物を除去することが出来る。洗浄は、1)アルコール、2)20℃以下冷却水、および3)塩水から選択された少なくとも1種を含有する洗浄液を用いて行い、ポリマー中の不純物を最小のポリマーロスで除去する。
【0027】
ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体の製造方法の他の例は、米国特許第5300566号明細書、米国特許第5194492号明細書および米国特許第5491199号明細書(全て本願に参照により包含される)に記載される。
【0028】
例えば、米国特許第5300566号明細書には、以下の一般式で示される共重合体の製造方法が記載される。
【0029】
【化1】

【0030】
式中、mは、0〜15モル%を示し、nは、50〜99モル%を示し、xは、0〜30モル%を示し、yは、1〜50モル%を示す。
【0031】
米国特許第5300566号明細書では、上記共重合体は、アルコール中、好ましくはメタノール中で、2相加水分解によって製造される。より具体的には、上記製造方法は、反応容器中の反応混合物に酢酸ビニルモノマー及びN−ビニルホルムアミドモノマーを連続的に供給する工程を含む。酢酸ビニル及びN−ビニルホルムアミドは共重合し、ポリ酢酸ビニル−ポリ(N−ビニルホルムアミド)共重合体を生成する。上記共重合体は、次いで、反応容器から抜き出され、共重合体のアセテート官能基をメタノール性媒体中で加水分解することによって、メタノール及び酢酸メチルで膨潤したゲル状のビニルアルコール共重合体を生成する。ゲルは、粉砕されて、微粒状共重合体製品を与える。
【0032】
微粒状共重合体製品は、必要に応じてメタノールで洗浄した後、メタノール中のスラリーとして酸または塩基により加水分解され、PVOH/PVAm粒子を生成する。PVOH/PVAm粒子はメタノールで洗浄して可溶性塩および副生成物を除去する。得られた共重合体は、次いで、乾燥して所望の用途に使用される。得られた共重合体は、好適な分子量、好ましくは約10000〜約200000の平均分子量を有する。
【0033】
上記重合反応の好適な遊離ラジカル開始剤としては、有機過酸化物が挙げられる。上記開始剤は、反応混合物中に約2重量%以下の量で存在させる。
【0034】
米国特許第5491199号明細書に記載の方法では、出発物質を水性溶媒中で、第1遷移族またはVIII族元素に属する遷移金属から成る触媒の存在下で加熱することによって、ビニルアルコール及びN−ビニルホルムアミドの共重合体等の実質的に塩無含有共重合体が製造される。この範囲内で、触媒は、金属酸化物を含む金属または金属錯体から形成することが出来る。VIII族元素に属する金属を含む触媒としては、パラジウム、白金またはロジウムを含有する触媒が挙げられる。第1遷移族に属する金属としては、バナジウム、クロム、マンガン、銅および亜鉛が挙げられる。反応時間は、約0.25〜12時間である。
【0035】
上記水性媒体は、少なくとも約50モル%の水を含有し、メタノール等の他の溶媒を含んでいてもよい。触媒は、出発ポリマーの濃度に基づき、約5〜約70モル%の濃度で存在させる。反応はバッチ法でも連続法で行われてもよい。
【0036】
米国特許第5491199号明細書に従った上記方法では、単一工程で、共生成物塩の除去の必要なく、N−ビニルホルムアミドポリマーが、対応する塩無含有ビニルアミンポリマーに変換される。
【0037】
ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体は、種々の市販品から入手可能である。特定の一実施形態では、例えば、三菱化学社から市販されるDIAFIXを用いて、本発明の塗膜を形成することが出来る。
【0038】
米国特許第6709735号明細書には、マレイン酸およびアクリル酸の共重合体とポリビニルアルコールを併用して成る酸素バリア塗布組成物が開示される。米国特許第6709735号明細書に開示される塗布組成物は、従来技術において多大の進展を与えるものであるが、本発明者らは、ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体を使用することにより、更に良好な酸素バリア性が得られることを見出した。以下で詳述するように、酸素バリア性の改良は、約50%より大きな相対湿度等の比較的高湿度下で、特に顕著である。即ち、本発明の塗布組成物は、食肉およびチーズ包装材料等の高湿度用途においてより好適に使用できる。
【0039】
上記した2種の異なる共重合体に加えて、本発明の塗布組成物は、多数の他の成分を含有することが出来る。例えば、一実施形態では、本発明の塗布組成物に架橋剤を添加することが出来る。他の一実施形態では、例えば、ジアルデヒド架橋剤を使用することが出来る。
【0040】
別の実施形態では、架橋剤はα−ヒドロキシ酸またはβ−ヒドロキシ酸などのヒドロキシ酸から成る。ヒドロキシ酸は、例えば、カルボン酸基を含んでいてもよい。特定の一実施形態では、架橋剤は、グリコール酸から成る。
【0041】
架橋剤は、固形分に対し、約3〜約15重量%の量で存在させる。例えば、グリコール酸を架橋剤として使用する場合、グリコール酸は、約10〜約12重量%の量で存在させることが出来る。他方、ジアルデヒド架橋剤は、約4〜約6%の量で存在させることが出来る。
【0042】
また、本発明の塗布組成物に脱泡剤を添加することが出来る。シリコーン無含有炭化水素系アルコール脱泡剤が好適である。好ましくは、アセチレン型単一成分脱泡剤が使用される。好ましい特許脱泡剤としては、トランスケムコ(Transchemco)社から市販される「TRANS280」が挙げられる。脱泡剤の使用量は、出来るだけ少ない方が好ましい。脱泡剤は、塗膜中の固形分に対し約50ppmの量で使用するだけで、良好な結果を与える。
【0043】
更に、塗膜に界面活性剤を添加することが出来る。更に、本発明の塗膜に澱粉を添加することが出来る。本発明の塗膜で使用する好ましい澱粉としては、冷水可溶澱粉が挙げられる。また、トリクロサン及びメチルパラベン等の抗微生物剤を、含有していてもよい(好ましいポリビニルアルコールは、微量の殺生剤を含有する)。更に、本発明の塗膜にグリセリン等の他の可塑剤を添加することも出来る。
【0044】
このように、本発明のバリア塗膜(多くの場合、非常に小さな膜厚を有する塗膜)で被覆されたポリマーフィルムは、食品包装に理想的に好適であり、食品との接触または医薬品等の他の摂取物質との接触の必要がある他の使用用途に好適であると考えられる。被覆フィルムは、耐溶媒性および耐水性の両方に優れている。
【0045】
一実施態様では、本発明の塗布組成物は、約3〜約7重量%、好ましくは約4〜約6重量%のビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体、および約3〜約7重量%、好ましくは約4〜約6重量%のマレイン酸および酢酸の共重合体を含有することが出来る。
【0046】
バリア塗膜の各成分は、好ましくは水または水含有溶媒中への分散液または溶液として処方することが出来る。他の方法では、アルコール又は他の好適な有機溶媒を、単独または水と組み合わせて使用することが出来る。固形分含量は約50重量%以下、好ましくは約0.01〜約30重量%、より好ましくは約5〜約15重量%である。
【0047】
一実施形態では、塗布組成物のpH値を上昇させるため、当該塗布組成物にpH調整剤を添加してもよい。より詳細には、pH調整剤は、マレイン酸および酢酸の共重合体に結合して、上記共重合体とビニルアルコール及びビニルアミンのランダム共重合体間で、反応が即座に起こることを防止する。一般に、好適なpH調整剤または塩基は、マレイン酸および酢酸の共重合体に配合して、共重合体含有水性分散液のpH値を約7より大きく、好ましくは約7.5〜約8に上昇させる。一実施形態では、例えば、マレイン酸および酢酸の共重合体にアンモニアを配合してもよい。
【0048】
他の実施形態では、pH調整剤の添加は必要ない。例えば、本発明者らは、グリコール酸を架橋剤として使用する場合、塗布組成物のpH値は、pH調整剤の添加の必要なしで、約7より大きな値に保持することが可能であることを見出した。
【0049】
pH値を約7より大きな値に保持すると、共重合体間の反応は、種々の成分が乾燥等によって蒸発するまで生起しない。それ故、pH値を約7より大きな値に保持することにより、種々の利点および長所が達成される。
【0050】
例えば、特定の一実施形態では、延伸前のフィルムに塗布組成物を水性分散液として塗布することが出来る。次いで、フィルムは、例えば、テンターフレーム上で延伸そして加熱される。この方法では、本発明の酸素バリア層は、フィルムの延伸が完了するまでは形成されない。
【0051】
本発明の塗膜の一つの利点は、小さな膜厚で良好な酸素バリア性を達成できることである。必要な塗布量が減少する結果、コストが最小限に節減され、透明性が改良され、被覆フィルム又は他の基材を包装用途のために最適化することが出来る。より大きな塗布厚を使用することも可能であり、ある種の用途には好適であるが、塗膜の厚さは、好ましくは約0.01〜約1ミクロンの範囲である。別の態様では、塗膜の厚さは、好ましくは約0.001〜約0.3ミクロン、より好ましくは約0.04〜約0.1ミクロンの範囲である。
【0052】
他方、フィルム基材の厚みは、特定用途およびフィルムの形成に使用されるポリマーの種類に依存して異なる。フィルム厚は、通常約5ミル未満、好ましくは約3ミル未満である。例えば、種々の実施形態では、フィルム厚は、約2ミル、約1ミル又は約0.5ミルである。
【0053】
上記したように、本発明に従って形成されるバリア塗膜は、酸素流の通過を著しく防止するのに好適である。例えば、本発明の塗膜は、温度23℃及び相対湿度0%において、酸素透過率を、約4cc.mil/m/day/atmより小さな値に減少させることが出来る。
【0054】
更に、本発明に従って形成される塗膜は、また、比較的高湿度で非常に良好に作用する。例えば、本発明の塗膜は、温度23℃および相対湿度25%において、約5cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有する。また、本発明の塗膜は、相対湿度50%においては、温度23℃で約6cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは温度23℃で約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有する。更に、本発明の塗膜は、相対湿度60%においては、温度23℃で約8cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは温度23℃で約6cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有する。更に、本発明の塗膜は、相対湿度70%においては、温度23℃で約20cc.mil/m/day/atm未満、好ましくは温度23℃で約18cc.mil/m/day/atm未満、より好ましくは温度23℃で約15cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有する。
【0055】
本発明の塗膜は、また、金属化により相乗効果を発揮する。バリアフィルムは、美的目的または他の理由によって、バリア性を向上させるために金属化されることがある。金属化には、従来公知の方法を使用し得る。代表的には、約2.4の光学密度の金属化が度々使用される。金属化は、従来、真空蒸着アルミニウム原子を使用して行われる。得られる層はアルミニウム原子から成る。本発明の塗膜は、金属化された未被覆フィルム又は従来の金属接着下地層を有する金属化フィルムに比較して、金属化によりバリア性が改良される。理論上これに限定するものではないが、本発明の塗膜は、酸素バリア性を向上させる金属/酸素結合の形成が可能であると考えられる。金属層は、もし存在する場合、本発明に従って形成される塗膜上に配置されるか、又はフィルムの反対側に形成されるか、又はフィルムの両側に形成することが出来る。
【0056】
最適な水蒸気バリア性を達成するために、被覆ポリマーフィルム(好ましくは、ポリエステルフィルム)は、ポリオレフィンフィルム等の種々の他のポリマーフィルムと積層することが出来る。水蒸気特性の改良に加えて、本発明の塗膜を基材フィルム上に封止するため、被覆ポリマーフィルムに他のフィルムを積層してもよい。一実施形態では、例えば、ポリエチレンフィルムに基材フィルムを積層することが出来る。
【0057】
本発明のフィルムは透明であってもよいが、本発明の塗膜および/またはフィルム基材は、透明である必要はなく、種々の実施形態では不透明であってもよい。上記2種の共重合体は、透明塗膜を形成する。これら合計ヘーズは、ポリエステルフィルムの透明度を測定する好ましい方法であり、これによって当当該フィルムの透明バリアフィルムとしての適性を決定することが出来る。ヘーズは、ASTM法D1003−61、手順A「透明プラスチックのヘーズ及び光透過率」に従って、BYKガードナー「ヘーズガードプラス」装置を使用して測定する。
【0058】
本発明のバリア塗膜には、従来公知の添加剤が含まれていてもよい、本発明のバリア塗膜に、例えば、顔料、他の着色剤、安定剤、帯電防止剤、接着促進剤、酸化防止剤、つや消し剤、フィラー、可塑剤などが含有されていてもよい。通常、かかる添加剤を使用する場合、単に少量で使用される。
【0059】
上記したように、小さな塗膜厚は最もコスト効果が高いが、本発明のバリア塗膜は、更に高膜厚の用途にも好適であり、ある種の塗膜は、共押出し用途にも好適である。
【0060】
本発明の塗布組成物は、単に、所望の塗布成分を配合するだけで処方可能である。均一分散液または溶液を確保するためには、撹拌を使用してもよい。
【0061】
基材フィルム:
本発明の塗膜および方法の多くの好ましい使用のために、ポリマーフィルム基材が、最も有用である。ポリマーフィルム基材は、軽量、実質的に透明、安価、使い捨て可能およびリサイクル可能な基材を提供し、バリアフィルムの多くの最終使用形態に適応する。更に、得られる被覆ポリマーフィルムは、熱接着または接着剤によって容易に種々の他の基材に積層可能である。
【0062】
本発明のバリア塗膜および塗布方法は、バリア塗膜用基材として使用可能な全てのポリマーフィルムにも適用可能である。例えば、本発明は、ナイロンに例示されるポリアミド類、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類、ポリアセタール類、ポリカーボネート類等から成るポリマーフィルムに適用可能である。特に、本発明は、ポリエステル類、最も好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はポリブチレンテレフタレートに適用可能である。本発明は、また、ポリエチレンテレフタレートイソフタレート等の共重合ポリエステルを含むポリマーフィルムにも適用可能である。基材フィルムの好ましい製造方法は、Culbertson他の米国特許明細書第5350601号(参照により本願に包含される)に記載される。一般的には、グリコールと、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、マロン酸、アジピン酸、アゼライン酸、グルタル酸、スベリン酸、コハク酸等のジカルボン酸(又はそのエステル等価物)又はこれらの2種以上の混合物との重縮合によって得られたポリマーから成るいかなるポリエステルフィルムも、本発明において好ましく使用される。好適なグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール等のポリオール類等が挙げられる。これらグリコールの2種以上の混合物も、同様に、好適に使用される。
【0063】
上記基材フィルムは、酸化防止剤、つや消し剤、顔料、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタニウム等のフィラー、帯電防止剤などの従来公知の添加剤、またはこれらの混合物を含有してもよい。
【0064】
更に、基材フィルムはポリマー積層体であってもよい。かかる積層体としては、ポリエステル/ポリオレフィン又はポリエステル/接着剤/ポリオレフィン等のポリマー/ポリマー積層体、ポリエステル/アルミニウム等のポリマー/金属積層体、又はポリマー/紙またはポリマー/接着剤/紙積層体が挙げられる。また、被覆ポリマーフィルム又はフィルム積層体を使用することも出来る。かかる塗膜の好ましい例では、湿潤性または塗布接着性を高めるために、プライマーコートを用いることも出来る。
【0065】
上記フィルムは、従来公知の技術によって製造可能である。例えば、代表的には、ポリエステルは非晶質シート状で、鏡面回転キャストドラム上に溶融押出して、ポリマーのキャストシートを形成する。得られたシートは、急冷され、次いで一軸以上の方向で延伸配向されて、フィルムに強度および靭性を付与する。代表的には、シートは、元のキャストシートの寸法の約2〜約4倍に、一軸または二軸方向で延伸される。一軸配向でもよいが、二軸配向が最も好ましい。一般的には、上記延伸は、約ポリマーの二次遷移温度からポリマーの軟化および溶融温度未満の温度範囲で行われる。必要に応じて、フィルムは、延伸後に熱処理してフィルムを更に結晶化することにより、その特性を残留保持(ロックイン)させてもよい。この結晶化により、安定性および良好な引張り特性がフィルムに付与される。かかるポリエステルフィルムの熱処理は、一般に、約190℃〜約240℃の温度で行われる。本発明の被覆フィルムは、約215℃〜約225℃の温度で約1〜約10秒、好ましくは約2〜約10秒間熱処理することが好ましい。薄膜の場合、上記温度範囲での結晶化装置内のフィルム滞留時間は、約5秒以下であることが好ましい。
【0066】
本発明の被覆フィルムは再生可能である。廃棄被覆材料は、容易に再押出用の新たな樹脂に添加することが出来る。
【0067】
他の基材:
上記したように、本発明に従った塗膜および酸素透過率を減少させる方法は、ポリマーフィルム基材への使用に限定されない。他の基材も本発明の教示に従って被覆可能である。酸素透過性を示すポリマーフィルム等の何れの基材も、上記塗膜の形成によってバリア性を有利に付与され得る。更に、本発明の塗膜で被覆されたポリマーフィルムは、凹凸面等の他の表面に適用可能であり、これら表面にバリア性を付与することが可能であると予想される。フィルムは、これら表面に、熱接合または接着されるか、又はファスナー、クリップ等を介して機械的に付着することが出来る。
【0068】
塗布方法:
本発明の塗膜の好ましい使用方法としては、フィルム製造工程中かつその熱固定前に塗膜を形成する方法である、ベースポリマー層のインラインコーティング法が挙げられる。代表的には、英国特許第1411564号明細書に記載されるように、ベースポリマーフィルムは、コロナ処理後かつフィルムの延伸配向前に被覆されるか、もしくは米国特許第4571363号明細書に教示されるように、(二軸配向フィルム製造の場合)延伸工程間で被覆されるか、又は米国特許第3322553号明細書に教示されるように、延伸後に被覆される。
【0069】
特定の一実施形態では、ベースポリマーフィルムは、延伸配向前に、塗布組成物を塗布される。塗布組成物は、組成物のpH値を上昇させるpH調整剤を、ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体とマレイン酸および酢酸の共重合体との反応を防止するために充分な量で、含有することが出来る。フィルムは延伸後に加熱される。その加熱により、pH調整剤はフィルムから蒸発し、上記2種の共重合体間で架橋反応が生起する。
【0070】
インラインコーティング法に加えて、本発明の1つ以上の塗膜を、(フィルムを製造し熱固定した後)好ましくはポリマー基材を従来の表面改質処理に付した後、オフライン塗布することも出来る。このように、本発明の塗膜および方法は、例えば、ベースポリマーフィルムを製造し、その後、当該フィルム上に本発明の1つ以上の塗膜をオフライン被覆する方法にも使用することが出来る。また、インライン法によって本発明の1つ以上の塗膜を塗布形成した後、残りの層をオフラインにより塗布してもよい。従来のオフライン塗布法としては、ロールコーテイング、リバースロールコーテイング、グラビアロールコーテイング、リバースグラビアロールコーテイング、は毛塗り、線巻ロッド(メイヤーロッド)コーテイング、スプレーコーテイング、エアナイフコーテイング、メニスカスコーテイング又はディッピングが挙げられる。
【0071】
塗布前のベースポリマーフィルムの表面改質は必須ではないが、もしベースポリマーフィルムの片面又は両面を、本発明の塗膜の塗布前に、表面改質する場合、より良好な結果が得られることが見出された。従来の表面改質技術としては、コロナ処理が挙げられる。コロナ処理は、ポリマーベースフィルムの表面を改質してその塗布接着性を高めるための最も一般的でかつ最も好ましい方法である。コロナ処理および他の表面改質処理により、塗膜は十分に浸潤される。代表的には、1分当たり約1.0ワット/footのコロナ処理によって、所望の結果を充分に達成することが出来る。更に、ポリマーフィルムとバリア塗膜との間に、任意にプライマー層または他の中間層を配置して使用することが出来る。
【0072】
上記に鑑み、本発明によれば、ポリマーフィルムを通じた酸素透過性を制御する好ましい方法が提供される。より好ましくは、ベースポリマーフィルムの片面または両面に、本発明の塗膜が形成される。任意に、もし単に当該フィルムの片面のみが本発明の塗膜で被覆される場合、その塗膜の形成は、ベースポリマーフィルムの反対面を別の塗膜で被覆する工程前、その工程後またはその工程と同時に行うことが出来る。
【実施例】
【0073】
本発明は、以下の実施例を参照して、より詳細に説明される。以下の実施例では、本発明の利点および長所のいくつかを例示する。
【0074】
本実施例では、厚さ0.5ミルのポリエステルフィルムを本発明に従って被覆し、米国特許6709735号明細書の教示に従って調製された塗布組成物で被覆された同一のポリエステルフィルムと比較した。特に、ポリエステルフィルムの一つのサンプルは、ビニルアルコール/ビニルアミンランダム共重合体およびマレイン酸/酢酸共重合体を1:1の比率で含有する塗布組成物で被覆した。この水性塗布組成物は、約10%の固形分を含有していた。先ず、マレイン酸/酢酸重合体のpH値を、アンモニアで約8.0に上昇させ、ビニルアルコール/ビニルアミン共重合体との前反応を防止した。
【0075】
ポリエステルフィルムの第2のサンプルは、マレイン酸/酢酸重合体をポリビニルアルコールと組み合わせて含有する塗布組成物で被覆した。組成物中のポリビニルアルコールの含有量は、マレイン酸/酢酸共重合体に対し約30重量%であった。
【0076】
上記2つのポリエステルフィルムサンプルは、ほぼ同一量の塗布組成物で被覆した。塗膜の厚さは、乾燥後約0.1ミクロンであった。
【0077】
フィルムサンプルを、異なる相対湿度に調整された環境下に置いて、酸素透過性を試験した。結果を以下の表に示し、図1にそのグラフを示す。
【0078】
【表1】

【0079】
上記に示すように、本発明に従って作成されたサンプルは、特に、高湿度において、フィルムを通じた酸素透過の防止においてより有効であった。
【0080】
本発明のこれら及び他の改良および変更は、添付の請求の範囲により詳細に記載される本発明の精神および範囲を逸脱することなく、当業者によって実施可能である。更に、種々の実施形態の要旨は、全部または一部に関し相互に交換可能である。更に、当業者に理解されるように、上記記載は単に例示であって、添付の請求の範囲に記載される本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1で得られた結果を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーフィルムと、前記フィルムの少なくとも一つの側に配置された塗膜から成る被覆ポリマーフィルムであって、前記塗膜がマレイン酸およびアクリル酸の共重合体と反応したビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体から成り、前記塗膜はフィルムの酸素バリア性を向上させるのに十分な量で存在することを特徴とする被覆ポリマーフィルム。
【請求項2】
ポリマーフィルムがポリエステルフィルムである請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項3】
ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、ビニルアミンを約8モル%〜約15モル%の量で含有する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項4】
マレイン酸およびアクリル酸の共重合体が、約3500〜約5000の平均分子量を有する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項5】
塗膜を形成する塗布組成物が、ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体を固形物換算で約35〜約65重量%の量で含有する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項6】
塗膜を形成する塗布組成物が、ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体を固形物換算で約45〜約55重量%の量で含有する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項7】
塗膜が約0.3ミクロン未満の膜厚を有する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項8】
更に、金属層を有する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項9】
塗膜が、温度23℃相対湿度0%において、約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有するフィルムを提供する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項10】
塗膜が、温度23℃相対湿度50%において、約6cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有するフィルムを提供する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項11】
塗膜が、温度23℃相対湿度70%において、約20cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有するフィルムを提供する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項12】
塗膜が、温度23℃相対湿度50%において、約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を有するフィルムを提供する請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項13】
塗膜が、更に架橋剤を含む請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項14】
架橋剤がヒドロキシ酸から成る請求項13に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項15】
架橋剤がグリコール酸から成る請求項13に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項16】
ヒドロキシ酸がカルボン酸基を含む請求項14に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項17】
前記ポリマーフィルムが第2のポリマーフィルムに積層され、前記塗膜が第1ポリマーフィルムと第2ポリマーフィルムの間に配置された請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項18】
前記第2ポリマーフィルムがポリオレフィンから成る請求項17に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項19】
前記第2ポリマーフィルムがポリエチレンから成る請求項17に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項20】
ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、水中で塩基性条件下に、N−ビニルアミド及び酢酸ビニルを加水分解することにより形成される請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項21】
ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、アルコール媒体中で、ポリ(酢酸ビニル)/ポリ(N−ビニルホルムアミド)共重合体のアセテート官能基を加水分解してビニルアルコール共重合体を生成し、次いで、スラリー状の前記ビニルアルコール共重合体を、アルコール中で、加水分解することにより生成される請求項1に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項22】
第1及び第2の側を有するポリエステルポリマーから成るポリマーフィルムと、前記ポリマーフィルムの第1の側に配置された、約0.5ミクロン未満の膜厚を有する酸素バリア塗膜から成る被覆ポリマーフィルムであって、前記酸素バリア塗膜が、ビニルアルコール及びビニルアミンのランダム共重合体から成り、前記バリア塗膜は、前記被覆ポリマーフィルムが、温度23℃相対湿度0%において、約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を示し、温度23℃相対湿度50%において、約6cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を示し、温度23℃相対湿度60%において、約8cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を示し、温度23℃相対湿度70%において、約20cc.mil/m/day/atm未満の酸素透過率を示すように、前記フィルムの酸素透過性を減少させることを特徴とする被覆ポリマーフィルム。
【請求項23】
前記ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、ビニルアミンを、約8モル%〜約15モル%の量で含有する請求項22に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項24】
前記酸素バリア塗膜が、更に、マレイン酸および酢酸の共重合体を含み、前記共重合体が交互構造を有し、前記バリア塗膜が架橋されている請求項22に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項25】
高酸素バリア性を有するフィルムの形成方法であって、ポリマーフィルムに塗布組成物を塗布して塗膜を形成する工程から成り、前記塗膜が、ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体とマレイン酸およびアクリル酸の共重合体との組合せから成ることを特徴とする高酸素バリア性フィルムの製造方法。
【請求項26】
前記ポリマーフィルムがポリエステルフィルムから成り、前記塗布組成物がフィルム製造中にインライン法によりポリマーフィルムに塗布される請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
更に、塗布組成物の塗布後にフィルムを延伸する工程と、前記フィルムを加熱する工程とを含み、フィルム延伸後に塗膜をフィルム上で架橋させる請求項25に記載の製造方法。
【請求項28】
前記フィルムを約190℃〜約240℃の温度に加熱する請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
温度23℃相対湿度0%において、前記被覆ポリマーフィルムが約4cc.mil/m/day/atm未満の酸素バリア性を示し、温度23℃相対湿度50%において、約6cc.mil/m/day/atm未満の酸素バリア性を示す請求項25に記載の製造方法。
【請求項30】
前記塗布組成物が、ポリビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体を固形物換算で約35〜約65重量%の量で含有する請求項25に記載の製造方法。
【請求項31】
前記ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、水中で塩基性条件下に、N−ビニルアミド及び酢酸ビニルを加水分解することにより形成される請求項25に記載の製造方法。
【請求項32】
前記ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、アルコール媒体中でポリ(酢酸ビニル)/ポリ(N−ビニルホルムアミド)共重合体のアセテート官能基を加水分解してビニルアルコール共重合体を生成し、次いで、アルコール中でスラリー状の前記ビニルアルコール共重合体を加水分解することにより生成される請求項25に記載の製造方法。
【請求項33】
ポリマーフィルムと前記フィルムの少なくとも一つの側に配置された塗膜とから成る被覆ポリマーフィルムであって、前記塗膜が架橋剤を使用して第2ポリマーと反応した第1ポリマーから成り、前記第1ポリマーがビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体から成り、前記架橋剤がグリコール酸から成ることを特徴とする被覆ポリマーフィルム。
【請求項34】
前記第2ポリマーがマレイン酸およびアクリル酸の共重合体から成る請求項33に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項35】
前記ポリマーフィルムがポリエステルフィルムから成る請求項33に記載の被覆ポリマーフィルム。
【請求項36】
前記ビニルアルコール及びビニルアミンの共重合体が、ビニルアミンを約8モル%〜約15モル%の量で含有する請求項33に記載の被覆ポリマーフィルム。

【図1】
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【公表番号】特表2008−546571(P2008−546571A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518400(P2008−518400)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/024357
【国際公開番号】WO2007/002322
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(598053374)ミツビシ ポリエステル フィルム インク (5)
【Fターム(参考)】