説明

酸素・二酸化炭素等の循環方法及びその循環システム

【課題】建物から生じる酸素と二酸化炭素等を植物栽培と組み合わせて利用することで、建物から生じる酸素、二酸化炭素等を植物栽培の促進に活用し、更にエネルギー生成に活用することにより、その建物におけるエネルギーコストの低減を図る。
【解決手段】建物1において発生する二酸化炭素及びエアコン等の排気と、植物栽培室2とを空気循環させ、建物1から植物栽培室2へは二酸化炭素微増の空気CAを供給し、逆に植物栽培室2から建物1へは酸素微増の空気OAを供給し、また植物栽培室2から生じた酸素微増の空気OAをエンジン式発電機3に供給し、一方、エンジン式発電機3から生じた二酸化炭素微増の空気CAを植物栽培室2に供給することにより、建物1内で発生するゴミと、人の呼吸やエアコン等に使用する空気CA,OAを効率的に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物から排出されるエアコン排気等と、その建物から廃棄される生ゴミ等のゴミとを効率的に利用して、酸素・二酸化炭素等を活用する酸素・二酸化炭素等の循環方法及びその循環システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、昼間の建物51からは、図3のエネルギー循環の説明図に示すように、呼吸している人から二酸化炭素が吐き出され、酸素が吸引される。これらの二酸化炭素等の空気は、エアコンから排気されている。また、居住者の多い建物51では、ゴミが多量に廃棄されている。このゴミは、ゴミ処理機52によって、発酵、分解処理により、ゴミの量を減量し(バイオ減容)、また、乾燥により減量する(乾燥減容)。これらはそのままゴミ収集により廃棄される。また、ゴミ処理機52でバイオメタン発酵したメタンガスはタンク53に貯蔵し、燃料として利用される。更に、発酵、分解処理したゴミを炭化物に炭化して燃料として利用される。
【0003】
例えば、特許文献1の特開2002−69465公報「生ごみバイオガス化システム」に示すように、生ごみ中の有機物を微生物によって分解・ガス化してバイオガスを得るための生ごみバイオガス化装置と、このバイオガス化装置から回収されるバイオガスを利用するためのガス利用設備と、バイオガス化装置から排出される廃液を処理するためのUASB型の水処理装置とを備えた生ごみバイオガス化システムが提案されている。
【特許文献1】特開2002−69465
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、人が吐き出した二酸化炭素はそのまま大気に放出され、エアコンからの高温の排気も大気に放出されているため、地球温暖化の一要因になっている。なお、特許文献1の「生ごみバイオガス化システム」は、路面や建物の温度上昇を低減することで、生ごみをガス化することのみに着目したものである。この特許文献1は、建物から生じるゴミと酸素、二酸化炭素等を有効にエネルギー源として利用するものではなかった。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、建物から生じる酸素と二酸化炭素等を植物栽培と組み合わせて利用することで、建物から生じる酸素、二酸化炭素等を植物栽培の促進に活用し、更にエネルギー生成に活用することにより、その建物におけるエネルギーコストの低減を図ることができる酸素・二酸化炭素等の循環方法及びその循環システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の循環方法によれば、建物(1)内で発生するゴミと、人の呼吸やエアコン等に使用する空気(CA,OA)を効率的に利用する酸素・二酸化炭素等の循環方法であって、前記建物(1)において発生する二酸化炭素及びエアコン等の排気と、植物栽培室(2)とを空気循環させ、該建物(1)から植物栽培室(2)へは二酸化炭素微増の空気(CA)を供給し、逆に該植物栽培室(2)から建物(1)へは酸素微増の空気(OA)を供給し、前記植物栽培室(2)から生じた酸素微増の空気(OA)をエンジン式発電機(3)に供給し、一方、該エンジン式発電機(3)から生じた二酸化炭素微増の空気(CA)を前記植物栽培室(2)に供給する、ことを特徴とする酸素・二酸化炭素等の循環方法が提供される。
【0007】
前記建物(1)から廃棄されるゴミを、ゴミ処理機(4)でバイオメタン発酵処理し、その発生したメタンを、前記エンジン式発電機(3)の発電に用いる、ことが好ましい。
前記建物(1)から廃棄されるゴミをゴミ処理機(4)で処理し、堆肥化した堆肥を前記植物栽培室(2)に供給する、ことが好ましい。
前記ゴミ処理機(4)で処理したゴミを炭化した炭化物を、ボイラ(5)の燃焼に利用し、その燃焼の際に前記植物栽培室(2)から生じた酸素微増の空気(OA)を利用する、ことが好ましい。
【0008】
本発明のシステムによれば、建物(1)内で発生するゴミと、人の呼吸やエアコン等に使用する空気(CA,OA)を効率的に利用する酸素・二酸化炭素等の循環システムであって、エアコン等の空気調整機能を具備した建物(1)と、太陽光又は人工光により光合成作用を営む植物を栽培する植物栽培室(2)と、前記建物(1)又は植物栽培室(2)等で利用する電気エネルギーを生成するエンジン式発電機(3)と、前記建物(1)から廃棄されるゴミを処理するゴミ処理機(4)と、を備えた、ことを特徴とする酸素・二酸化炭素等の循環システムが提供される。
前記ゴミ処理機(4)で処理した炭化物を、前記植物栽培室(2)からの酸素微増の空気(OA)を利用して燃焼するボイラ(5)を更に備える、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の発明では、建物(1)から排出される二酸化炭素とエアコン等の排気と、植物栽培室(2)とを空気循環させ、昼間における植物の光合成作用により生じた酸素微増の空気(OA)をエンジン式発電機(3)に供給し、このエンジン式発電機(3)から生じた二酸化炭素微増の空気(CA)は植物栽培室(2)にそれぞれ供給することにより、酸素・二酸化炭素等を有効に活用することができる。
【0010】
建物(1)から生じた二酸化炭素微増の空気(CA)と共に、ゴミをメタン等のエネルギー源に変えてエンジン式発電機(3)を駆動させることにより、電気エネルギーを生成でき、この建物(1)のエネルギーコストの低減に寄与することができる。
ゴミ処理機(4)で処理したゴミを炭化した炭化物を用いて燃焼するボイラ(5)で発生させた蒸気は、建物(1)の暖房等に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の酸素・二酸化炭素等の循環方法は、建物内で発生するゴミや空気を効率的に利用する方法である。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施例1の酸素・二酸化炭素等の循環システムを説明する説明図である。
実施例1の酸素・二酸化炭素等の循環システムは、エアコン等の空気調整機能を具備した建物1と、太陽光又は人工光により光合成作用を営む植物を栽培する植物栽培室2と、建物1又は植物栽培室2等で利用する電気エネルギーを生成するエンジン式発電機3と、建物1から廃棄されるゴミを処理するゴミ処理機4とを備えたものである。
【0013】
建物1は、人が居住するビル、例えばマンション、スーパー、コンビニ、ファミリーレストラン、又は多数の人が集まるオフィスあるいは学校等のビルであり、エアコン等の空気調整機能を具備したビルである。更に、遊園地やフィットネスクラブ等も含まれる。
【0014】
植物栽培室2は、例えば水耕栽培又は土壌栽培をする温室であり、太陽光又は人工光により光合成作用を営む植物を栽培する建物又は装置である。この植物栽培室2で栽培する植物は光合成作用により昼間において酸素を発生するものが望ましい。
【0015】
エンジン式発電機3は、燃料を酸素で燃焼して発電する方式の発電装置である。この燃料にはLNGを始め、後述するメタンガス等を利用することができる。
【0016】
ゴミ処理機4は、建物1から廃棄されるゴミ、主として生ゴミを微生物により発酵、分解する処理装置である。このゴミ処理機4では、発酵、分解処理により、ゴミの量を減量する(バイオ減容)。更に、乾燥により更に減量する(乾燥減容)。この発酵、分解処理中にメタンガスを生成するようになっている(バイオメタン発酵)。
【0017】
このように構成した実施例1の循環システムでは、建物1から生じる二酸化炭素とエアコン排気等と、植物栽培室2とを空気循環させ、この建物1から植物栽培室2へは二酸化炭素微増の空気CAを供給する。この植物栽培室2内では、供給された二酸化炭素は昼間の植物の光合成に利用され、生育の促進に寄与することができる。
【0018】
逆に、植物栽培室2において植物の光合成で生じた酸素微増の空気OAを、建物1に供給する。更に、この植物栽培室2において生じた酸素微増の空気OAは、エンジン式発電機3に供給し、そのエンジンの燃焼の促進に寄与する。
【0019】
ゴミ処理機4では、建物1から出るゴミ、主として生ゴミをバイオメタン発酵処理し、その発生したメタンを、エンジン式発電機3の発電に用いる。このエンジン式発電機3による電気エネルギーは、夜間における植物栽培室2の照明、空調に利用する。更に、植物栽培室2の加温にも利用することができる。
【実施例2】
【0020】
図2は本発明の実施例2の酸素・二酸化炭素等の循環システムを説明する説明図である。
この実施例2の循環システムは、ゴミ処理機4で処理したゴミの炭化物を、植物栽培室2からの酸素を利用して燃焼するボイラ5を更に備えたものである。実施例2では、ゴミ処理機4でゴミを処理して炭化した炭化物を、ボイラ5の燃焼に利用し、その燃焼の際に植物栽培室2から生じた酸素微増の空気OAを利用する。このボイラ5で発生させた蒸気は建物1の暖房等に利用することができる。
【0021】
ゴミ処理機4でゴミを処理して堆肥化した堆肥を、植物栽培室2に供給する。これにより肥料コストの低減になる。
【0022】
なお、本発明は、建物1から生じる酸素と二酸化炭素等を植物栽培と組み合わせて利用することで、建物1から生じる酸素、二酸化炭素等を植物栽培の促進に活用し、更にエネルギー生成に活用することにより、その建物1におけるエネルギーコストの低減を図ることができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の酸素・二酸化炭素等循環システムは、マンション、一般のビル、学校以外にコミュニティビル、病院、工場のビルにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の酸素・二酸化炭素等の循環システムの説明図である。
【図2】実施例2のボイラを追加した酸素・二酸化炭素等の循環システムの説明図である。
【図3】従来の酸素・二酸化炭素等に関するエネルギー循環システムの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 建物
2 植物栽培室
3 エンジン式発電機
4 ゴミ処理機
5 ボイラ
CA 二酸化炭素微増の空気
OA 酸素微増の空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物(1)内で発生するゴミと、人の呼吸やエアコン等に使用する空気(CA,OA)を効率的に利用する酸素・二酸化炭素等の循環方法であって、
前記建物(1)において発生する二酸化炭素及びエアコン等の排気と、植物栽培室(2)とを空気循環させ、該建物(1)から植物栽培室(2)へは二酸化炭素微増の空気(CA)を供給し、逆に該植物栽培室(2)から建物(1)へは酸素微増の空気(OA)を供給し、
前記植物栽培室(2)から生じた酸素微増の空気(OA)をエンジン式発電機(3)に供給し、一方、該エンジン式発電機(3)から生じた二酸化炭素微増の空気(CA)を前記植物栽培室(2)に供給する、ことを特徴とする酸素・二酸化炭素等の循環方法。
【請求項2】
前記建物(1)から廃棄されるゴミを、ゴミ処理機(4)でバイオメタン発酵処理し、
その発生したメタンを、前記エンジン式発電機(3)の発電に用いる、ことを特徴とする請求項1の酸素・二酸化炭素等の循環方法。
【請求項3】
前記建物(1)から廃棄されるゴミをゴミ処理機(4)で処理し、
堆肥化した堆肥を前記植物栽培室(2)に供給する、ことを特徴とする請求項1の酸素・二酸化炭素等の循環方法。
【請求項4】
前記ゴミ処理機(4)で処理したゴミを炭化した炭化物を、ボイラ(5)の燃焼に利用し、その燃焼の際に前記植物栽培室(2)から生じた酸素微増の空気(OA)を利用する、ことを特徴とする請求項1の酸素・二酸化炭素等の循環方法。
【請求項5】
建物(1)内で発生するゴミと、人の呼吸やエアコン等に使用する空気(CA,OA)を効率的に利用する酸素・二酸化炭素等の循環システムであって、
エアコン等の空気調整機能を具備した建物(1)と、
太陽光又は人工光により光合成作用を営む植物を栽培する植物栽培室(2)と、
前記建物(1)又は植物栽培室(2)等で利用する電気エネルギーを生成するエンジン式発電機(3)と、
前記建物(1)から廃棄されるゴミを処理するゴミ処理機(4)と、を備えた、ことを特徴とする酸素・二酸化炭素等の循環システム。
【請求項6】
前記ゴミ処理機(4)で処理した炭化物を、前記植物栽培室(2)からの酸素微増の空気(OA)を利用して燃焼するボイラ(5)を更に備えた、ことを特徴とする請求項5の酸素・二酸化炭素等の循環システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−312662(P2007−312662A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144849(P2006−144849)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】