説明

酸素分圧検知方法

【課題】広い酸素分圧範囲で正確なセンサ出力を得ることができる酸素分圧検知方法を提供する。
【解決手段】固体電解質を用いた酸素センサによりガス中の酸素分圧を検知するための酸素分圧検知方法であって、固体電解質の酸素イオン輸率が1に近い温度−酸素分圧域である電解伝導領域Da,Dbが異なる複数種の酸素センサ21a,21bを構成し、検知対象ガスの酸素分圧が高いときは、電解伝導領域Daの酸素分圧域が高い酸素センサ21aの出力を採用し、検知対象ガスの酸素分圧が低いときは、電解伝導領域Dbの酸素分圧域が低い酸素センサ21bの出力を採用することを特徴とする酸素分圧検知方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質を用いて酸素分圧を検知する酸素分圧検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電解質を含む電気化学的な酸素ポンプ及び酸素センサを有する酸素分圧制御装置により、酸素分圧を制御した雰囲気ガスを用いて、単結晶試料等を作成する方法が知られている(例えば、特許文献1,2)。
【0003】
特許文献2に示された図4の酸素分圧制御装置は、バルブ102を通った不活性ガスの流量を設定値に制御するマスフローコントローラ(MFC)103と、このマスフローコントローラ103を通った不活性ガスを目的の酸素分圧に制御可能な電気化学的な酸素ポンプ104と、酸素ポンプ104で制御された不活性ガスの酸素分圧を検出して試料育成装置などの次工程(装置)に供給する供給ガス用の酸素センサ105を有する。
【0004】
さらにこの装置は、所望の酸素分圧値を設定する酸素分圧設定部106と、酸素センサ105による検出値を酸素分圧設定部106による設定値と比較して酸素ポンプ104から送り出される不活性ガスの酸素分圧を所定値に制御する制御部107と、酸素センサ105による検出値を表示する酸素分圧表示部108を備える。
【0005】
酸素センサ105は、図5に示すように、酸素イオン伝導性を有する筒状の固体電解質105aの内外両面に電極105b、105cを形成している。固体電解質105aは、例えばジルコニア系の固体電解質であり、図示しないヒーターで加熱される。筒状固体電解質105aには、その内面側及び外面側の一方に既知の酸素分圧を有する基準ガス、他方に未知の酸素分圧を有する検知対象ガスが供給される。固体電解質の内外に異なる酸素分圧が存在することにより、濃淡電池が形成され、酸素イオンの移動に伴って電極105b、105c間に、次のネルンストの式(式1)で表される起電力が発生する。
E=(RT/4F)ln(Po2'/Po2'') (式1)
ここで、各記号は以下のものを示す。
E:起電力
F:ファラデー定数
R:気体常数
T:絶対温度
Po2':標準極側の酸素分圧
Po2'':測定極側の酸素分圧
上記式1は、イオン輸率が1であることを前提としている。したがって、実際の起電力は、式1の「E」にイオン輸率を乗じた値となる。
【0006】
この起電力Eは、検知対象ガスの酸素分圧Po2''に対応したものとなる。したがって、起電力Eを測定することにより、検知対象ガスの酸素分圧を検知することができる。固体電解質を用いたこの種の酸素センサは、例えば特許文献1〜3に記載されている。
【0007】
なお、酸素ポンプ104も筒状の固体電解質の内外両面に電極を形成している点で同様の構造を有するが、酸素ポンプ104においては、筒状の固体電解質内に供給される精製対象ガスから酸素を固体電解質外へ排出するために、固体電解質の内外電極間に電圧が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−122566号公報
【特許文献2】特開2007−522454号公報
【特許文献3】特開平6−265522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図6は、酸素センサに用いられる固体電解質の温度及びガスの酸素分圧によって特定されるイオン輸率を示す図である。固体電解質には、例えば図6のグラフに示すように、イオン輸率≧0.99と定義される電解伝導領域がある。酸素センサをこの領域内で作動させれば、高いイオン輸率に基づき効率的な起電力の発生(センサ出力)が得られるが、この領域外の作動ではイオン輸率が小さく、これに伴って実際の起電力(式1の起電力Eにイオン輸率を乗じた値)が低くなり、正確なセンサ出力が得られ難かった。
【0010】
従来は、酸素センサに単一種の固体電解質を用いていたため、電解伝導領域がその固体電解質固有の範囲に限られていた。その結果、正確なセンサ出力が得られる酸素分圧の上下限が、用いる固体電解質の電解伝導領域により制限されていた。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来技術の問題点を解決し、広い酸素分圧範囲で正確なセンサ出力を得ることができる酸素分圧検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記目的を達成するため、固体電解質を用いた酸素センサによりガス中の酸素分圧を検知するための酸素分圧検知方法であって、固体電解質の酸素イオン輸率が1に近い温度−酸素分圧域である電解伝導領域が異なる複数種の酸素センサを構成し、検知対象ガスの酸素分圧が高いときは、酸素分圧域の高い電解伝導領域を有する酸素センサの出力を採用し、検知対象ガスの酸素分圧が低いときは、酸素分圧域の低い電解伝導領域を有する酸素センサの出力を採用することを特徴とする酸素分圧検知方法を提供するものである。
【0013】
上記検知方法においては、電解伝導領域が異なる複数種の酸素センサを構成し、検知対象ガスの酸素分圧が高いときは、電解伝導領域の酸素分圧域が高い酸素センサの出力を採用し、検知対象ガスの酸素分圧が低いときは、電解伝導領域の酸素分圧域が低い酸素センサの出力を採用する。また、正確なセンサ出力を確実に得るには、検知対象ガスの酸素分圧を、電解伝導領域の酸素分圧域に含む酸素センサを用いるのが望ましい。本発明では、これらの観点から、検知対象ガスの酸素分圧が高いときは、電解伝導領域の酸素分圧域が高い酸素センサの出力を採用し、検知対象ガスの酸素分圧が低いときは、電解伝導領域の酸素分圧域が低い酸素センサの出力を採用する。こうして出力を採用される酸素センサは、図3と共に後述するように、電解伝導領域内での作動に基づき、検知対象ガスの酸素分圧(対数)に対して直線性に優れた起電力を発生し、正確なセンサ出力の発生を可能とする。上記した電解伝導領域の酸素分圧域が高い酸素センサの作動は、検知対象ガスの酸素分圧低下と共に、電解伝導領域の下限を下回ると、センサ出力の上記直線性が低下する。これに対し、検知対象ガスの酸素分圧が低くなったときに、電解伝導領域の酸素分圧域が低い酸素センサの出力を採用することにより、その酸素センサを電解伝導領域内で作動させることができ、この段階においても酸素センサは、検知対象ガスの酸素分圧との対応が直線性に優れた起電力を発生し、正確なセンサ出力の発生を可能とする。このようにして、本発明によれば、酸素分圧が高いときにも低いときにも、正確なセンサ出力を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明に係る酸素分圧検知方法によれば、広い酸素分圧範囲で正確なセンサ出力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る酸素分圧検知方法を実施するための装置を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る酸素分圧検知方法に関し、固体電解質の温度と到達酸素分圧との関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係る酸素分圧検知方法に関し、検知対象ガスの酸素分圧と酸素センサの起電力との関係を示すグラフである。
【図4】従来の酸素分圧制御装置の一例を示すブロック図である。
【図5】固体電解質を用いた酸素センサの原理の説明図である。
【図6】固体電解質の温度(逆数)と到達酸素分圧(対数)との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る酸素分圧検知方法を実施するための装置を示すブロック図である。この酸素分圧検知装置1は、検知対象ガスの酸素分圧を検知する検知部10と、ガスの流路4とを備えている。流路4は、検知部10の上流側に接続された第一流路41と、検知部10の下流側に接続された第二流路42とを備えている。第一流路41には、制御弁11、レギュレータ(REG)12及びマスフローコントローラ(MFC)13が設けられている。
【0017】
流路4の始端410は、装置外のガス供給源に接続されるようになっており、該供給源から検知対象ガスが供給される。
【0018】
制御弁11は検知対象ガス流の供給及び遮断を制御し、レギュレータ12は、一流路41の圧力を一定に保持し、マスフローコントローラ13は検知対象ガスの流量を設定値に制御する。
【0019】
この酸素分圧検知装置1は、2個の酸素センサ21a,21bを備えている。各酸素センサは、図5に示したのと同様に固体電解質、起電力測定機構等を備えて構成され、各々筒状の固体電解質211a,211bの内外面に白金等の電極層が設けられている。検知部10はさらに、酸素センサ21a,21bを収容する検知室27を備えている。検知室27内の第一流路41は、酸素センサ21a,21bに接続されている。
【0020】
検知室27内には、加熱部28a,28bが設けられている。これらの加熱部は、各々酸素センサ21a,21bに対して作用し、固体電解質211a,211bを各々温度制御下に加熱するように構成されている。この加熱部は、例えば、固体電解質211の外周にシースヒータを装着し、その外側を断熱材で覆ったもの等とすることができる。加熱部の温度制御は、酸素センサに接続された制御部23により行われる。制御部23は、設定部24に接続されており、該設定部により設定された条件等に応じて加熱部28a,28bの温度等を制御する。
【0021】
酸素センサ21a,21bには、測定部26が接続されている。測定部26は、各酸素センサの固体電解質211a,211bの内外電極間の起電力を測定する機能を備えており、酸素分圧表示部25に接続されている。酸素分圧表示部25は、測定部26が出力する測定値に基づいて、該測定値に対応する酸素分圧を表示する。
【0022】
図1に示した酸素分圧検知装置1は、次のようにして使用される。設定部24及び制御部23による設定及び制御により酸素センサ21a,21bは、加熱部28a,28bにより所定温度に加熱される。この実施形態では、固体電解質211a,211bに対し、酸素分圧が既知の大気、不活性ガス等のガスが外面側に供給され、内面側に検知対象ガスが第一流路41を通じて供給される。固体電解質211a,211bを経た検知対象ガスは、第二流路42を通じて装置外へ排出される。
【0023】
酸素センサ21a,21bの固体電解質211a,211bは、固体電解質の酸素イオン輸率が1に近い温度−酸素分圧域、すなわち電解伝導領域が相互に異なるものとされている。電解伝導領域は、固体電解質の材質を異なるものとすることにより相互に異なったものとすることができる。材質の異なる固体電解質は、ジルコニア、ランタンガレート、トリア等、異なる種類のものを用いる他、同じ種類であっても添加剤等の種類や量を異ならせることにより得ることができる。この実施形態では、酸素センサ21aの電解伝導領域の酸素分圧域が高く、酸素センサ21bの電解伝導領域の酸素分圧域が低く設定されている。
【0024】
この酸素分圧検知装置1は、以下のようにして使用される。酸素センサ21a,21bは、制御部23により必要な制御状態の下に作動され、検知対象ガスが第一流路41から各酸素センサ21a,21bに供給される。酸素センサ21a,21bは、検知対象ガスの酸素分圧に応じた検出値を各々出力する。前述のように、酸素センサ21a,21bは、電解伝導領域が相互に異なるように構成されている。この構成により、以下の作用効果が得られる。
【0025】
酸素センサの作動工程を、固体電解質の温度(逆数)と到達酸素分圧(対数)との関係を示すグラフ上で見れば、図2のようになる。図2は、酸素分圧域が高い電解伝導領域Da(酸素センサ21a)と、酸素分圧域が低い電解伝導領域Db(酸素センサ21b)の2つの電解伝導領域を示している。電解伝導領域は、図6にも示したように、横軸に温度の逆数、縦軸に酸素分圧の対数をとったときに、縦軸に近い側を頂点とするようにV字を横向きにした横V字形(またはその一部分)の境界線を有し、その境界線内の領域が電解伝導領域に相当する。電解伝導領域Daは、酸素分圧の上限ラインUa及び下限ラインLaで囲まれた領域であり、電解伝導領域Dbは、酸素分圧の上限ラインUb及び下限ラインLbで囲まれた領域である。電解伝導領域Daにおける低酸素分圧部分と、電解伝導領域Dbにおける高酸素分圧部分とは、図示のように一部を重複させている。
【0026】
従来は、酸素センサに単一種の固体電解質を用いていたため、電解伝導領域がその固体電解質固有の範囲に限られていた。特に、低い酸素分圧の検知対象ガスの酸素分圧を検知する場合は、酸素分圧域が低い電解伝導領域Dbを有する固体電解質を用いて検知を行う。その結果、矢印(b) で示す範囲の酸素分圧が実質的な検知の限界となっていた。また、酸素分圧が下限ラインLbを下回ると、固体電解質の起電力が低下し、正確な酸素分圧を得るのが困難となるという問題があった。なお、検知対象ガスの酸素分圧が高い場合は、電解伝導領域Daを有する固体電解質を用いて検知を行うが、この場合も、矢印(a) で示す範囲の酸素分圧が実質的な検知限界となり、また、酸素分圧が下限ラインLaを下回ると、固体電解質の起電力が低下し、正確な酸素分圧を得るのが困難となるという問題があった。
【0027】
これに対し、酸素分圧検知装置1の測定部26は、検知対象ガスの酸素分圧が高いときは、酸素分圧域の高い電解伝導領域Daを有する酸素センサ21aの出力を採用し、検知対象ガスの酸素分圧が低いときは、酸素分圧域の低い電解伝導領域Dbを有する酸素センサ21bの出力を採用する。これにより、図2の矢印(c) で示すように、上限ラインUaから下限ラインLbに至る広い範囲に亘って酸素分圧の検知を行なうことができる。また、2つの酸素センサ21a,21bの出力について上記選択による採用を行うので、検知対象ガスの酸素分圧が、高い電解伝導領域Daの下限ラインLaを下回り、その固体電解質211aの起電力が低下しても、低い電解伝導領域Dbの固体電解質211bにより高い起電力が得られる。したがって、上記選択による出力を採用することにより、高い起電力に基づく正確な酸素分圧の検知を行なうことができる。なお、図2において、矢印(a), (b), (c) を水平軸方向にずらせて表示しているのは、矢印の重なりによる不明瞭を避けるための便宜的なものであり、実質的には同じ絶対温度での作動を示すものである。また、検知範囲は、各矢印において上限ラインから下限ラインまでとして表示しているが、これらのラインの間の範囲とすることもできる。
【0028】
測定部26による上記出力の選択は、具体的には、次のようにして行なうことができる。第1の方法は、複数の酸素センサが出力する酸素分圧の内、最も低い酸素分圧を採用するという方法である。すなわち、酸素センサが2個の場合は、測定部26は、酸素センサ21a,21bの出力を比較して低い酸素分圧を示す方の出力を選択する。これに関し、検知対象ガスの酸素分圧と酸素センサの起電力は、図3に示すグラフのような特性曲線を描く。図3において、酸素センサ21aの特性曲線を実線、酸素センサ21bの特性曲線を破線で示す。特性曲線Scは、酸素センサ21a及び21bに基づく合成センサ特性である。グラフに示すように、酸素センサ21aは、特性曲線Saが示すように、検知対象ガスの酸素分圧が高い場合に酸素分圧(対数)と起電力との関係において良好な直線性を示し、酸素センサ21bは、特性曲線Sbが示すように、検知対象ガスの酸素分圧が低い場合に酸素分圧(対数)と起電力との関係において良好な直線性を示す。特性曲線Scは、両センサの特性曲線Sa,Sbから抽出した直線部分を合成したものである。
【0029】
測定部26は、酸素センサ21a,21bの出力を比較して低い酸素分圧を示す方の出力を選択する。すなわち、検知対象ガスが高い酸素分圧Pg1であるとき、酸素センサ21a,21bの出力を比較すると、酸素センサ21aは出力V1、酸素センサ21bは出力V1’を出力する。各酸素センサの起電力と酸素分圧の対数値(log) とが直線的関係にあるものとして酸素分圧を推定すると、酸素センサ21aはp1、酸素センサ21bはp1’の酸素分圧を示すことになる。なお、実際には酸素センサ21bは、酸素分圧Pg1により特性曲線Sb上の点p1”に基づき起電力V1’を出力しているが、検知操作を簡単にするために酸素センサ21bの特性曲線を直線とみなすと(すなわち、合成センサ特性Scのようにみなすと)、起電力V1’は酸素分圧p1’を示すことになる。ここで、低い方の酸素分圧を示す酸素センサ21aの出力を採用し、酸素分圧p1を得る。こうして得られる酸素分圧p1は、実際の酸素分圧Pg1 またはこれに近い値となる。
【0030】
検知対象ガスが低い酸素分圧Pg2であるときは、酸素センサ21aが出力V2、酸素センサ21bは出力V2’を出力する。これらから、起電力と酸素分圧の対数値(log) とが直線的関係にあることを前提として酸素分圧を推定すると、酸素センサ21aはp2、酸素センサ21bはp2’の酸素分圧を示すことになる。ここで、低い方の酸素分圧を示す酸素センサ21aの出力を採用し、酸素分圧p2を得る。こうして得られる酸素分圧p2は、実際の酸素分圧Pg2 またはこれに近い値となる。
【0031】
このように、第1の方法は、2個の酸素センサ21a,21bにより、合成センサ特性Scを得て、検知範囲を広げていると言うことができる。同様にして、複数の酸素センサを用いる場合は、酸素センサの出力から推定される酸素分圧の内、最も低い酸素分圧を採用することにより、複数の酸素センサによる合成センサ特性を得て、広い範囲の酸素分圧を検知することができる。
【0032】
測定部26の出力を選択する第2の方法は、図2に示した酸素センサ21a,21b電解伝導領域について、以下の点を予め知得することに基づく。すなわち、電解伝導領域の酸素分圧の高い酸素センサ21aが検知時の作動温度において示す電解伝導領域の下限値、並びに、電解伝導領域の酸素分圧の低い酸素センサ21bが検知時の作動温度において示す電解伝導領域の上限値の内の、少なくとも一つの限界値を出力選択の基準とする。そして、検知対象ガスの酸素分圧が高いときは電解伝導領域の酸素分圧域が高い酸素センサ酸素センサ21aの出力を採用し、酸素センサ21a、21bの出力のいずれかが基準の限界値のいずれかに到達または接近する前に、出力を採用する酸素センサを酸素センサ21bに変更する。
【0033】
こうすることにより、酸素センサの出力となる起電力を高く維持し、酸素分圧の正確な検知を行なうことができる。すなわち、検知する酸素分圧が電解伝導領域の下限ラインを下回ると、固体電解質の起電力が低下し、正確な酸素分圧を得るのが困難となるが、上記方法により下限ラインへの到達または接近の前に酸素センサを変更すれば、固体電解質の高い起電力を維持し、上記問題の発生を回避することができる。また、酸素センサは、図2に示したように、酸素分圧域の高い電解伝導領域Daにおける低酸素分圧部分と、酸素分圧域の低い電解伝導領域Dbにおける高酸素分圧部分とが、一部を重複させて用いられる。したがって、上記方法において、検知する酸素分圧が電解伝導領域Dbの上限ラインUbに到達または接近する前に酸素センサを変更すると、電解伝導領域Daの下限ラインLaに到達または接近する前に、酸素センサ21bに変更することになるので、下限ラインLaを下回った酸素分圧で出力する酸素センサ21aへの依存を回避することができ、固体電解質が出力する起電力を高く維持し、正確な検知を行なうことができる。
【0034】
酸素センサの変更は、制御部23の作動によって行われる。制御部23は、酸素センサにより得られる酸素分圧が電解伝導領域における酸素分圧の下限値に到達または接近する手前でこれを検知する。この検知は、例えば、予め準備した電解伝導領域の分布データと、酸素センサの作動温度及び酸素分圧の測定値とを比較することにより行うことができる。すなわち、電解伝導領域の分布データは、図6に例示したように、固体電解質の材質等にしたがって定まるので、酸素センサの作動温度及び酸素分圧の測定値と分布データとの比較により、電解伝導領域に対する現在の制御位置を判別することができる。これをモニタ等することにより、酸素センサにより得られる酸素分圧が電解伝導領域における酸素分圧の下限値に到達または接近する手前でこれを検知することができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、酸素分圧検知装置は、電解伝導領域が異なる3種類以上の酸素センサを備え、検知対象ガスの酸素分圧の高低に応じて、出力を採用する酸素センサを切り換えるようにしてもよい。
【0036】
上記実施形態では、筒状をなす固体電解質の内側を、精製すべきガスの供給側とし、固体電解質の外側を酸素の排出側としたが、これを逆にして、固体電解質の外側を、精製すべきガスの供給側、内側を酸素の排出側とすることもできる。また、固体電解質を平面または曲面の板状とすることもできる。この場合は、固体電解質の一方の側及び他方の側のいずれかを、精製すべきガスの供給側、反対の側を酸素の排出側とすることができる。そして、固体電解質の供給側及び排出側のガスが相互に混合しないように、固体電解質に隣接する仕切り部材をガス精製部に設けるのが望ましい。
【符号の説明】
【0037】
1: 酸素分圧検知装置
10: 検知部
21a,21b:酸素センサ
23: 制御部
28a,28b:加熱部
211a,211b:固体電解質
Da,Db:電解伝導領域
Ua,Ub:上限ライン
La,Lb:下限ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質を用いた酸素センサによりガス中の酸素分圧を検知するための酸素分圧検知方法であって、
固体電解質の酸素イオン輸率が1に近い温度−酸素分圧域である電解伝導領域が異なる複数種の酸素センサを構成し、
検知対象ガスの酸素分圧が高いときは、電解伝導領域の酸素分圧域が高い酸素センサの出力を採用し、検知対象ガスの酸素分圧が低いときは、電解伝導領域の酸素分圧域が低い酸素センサの出力を採用することを特徴とする酸素分圧検知方法。
【請求項2】
前記酸素分圧域の高い電解伝導領域における低酸素分圧部分と、前記酸素分圧域の低い電解伝導領域における高酸素分圧部分とが、一部を重複させていることを特徴とする請求項1に記載の酸素分圧検知方法。
【請求項3】
検知対象ガスの酸素分圧の高低に応じて、出力を採用する酸素センサを変更するにあたり、複数の酸素センサが出力する酸素分圧の内、最も低い酸素分圧を採用することを特徴とする請求項1に記載の酸素分圧検知方法。
【請求項4】
検知対象ガスの酸素分圧の高低に応じて、出力を採用する酸素センサを変更するにあたり、検知対象酸素分圧が高い酸素センサの固体電解質における所定作動温度での電解伝導領域の下限値、及び、検知対象酸素分圧が低い酸素センサの固体電解質における前記所定作動温度での電解伝導領域の上限値の内の少なくとも一つの限界値について、複数の酸素センサ出力のいずれかが該限界値のいずれかに到達または接近する前に、前記変更を行なうこと特徴とする請求項1に記載の酸素分圧検知方法。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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