説明

酸素分離膜エレメントおよびその製造方法

【課題】高い触媒活性を長期にわたって維持し得る高い担持量で触媒体を酸素分離膜の多孔質基材側の表面に形成してなる酸素分離膜エレメント製造する方法であって、多孔質基材や酸素分離膜を劣化させることなく触媒体を形成して酸素分離膜エレメントを製造する方法を提供すること。
【解決手段】本発明により提供される酸素分離膜エレメント10の製造方法は、酸素分離膜14と多孔質基材12とからなる膜エレメント本体1を用意すること、触媒体を構成する金属元素を構成元素とする少なくとも1種の金属レジネートを有機溶剤に溶解させてなるレジネート溶液を用意し、該レジネート溶液を多孔質基材12内に含浸させること、および上記レジネート溶液が含浸した膜エレメント本体1を焼成することにより触媒体を形成すること、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素イオンを選択的に透過する酸素イオン伝導モジュールおよびその製造方法に関する。詳しくは、金属レジネートを用いて触媒体を付与してなる酸素分離膜エレメントを製造する方法、およびそのような方法を用いて製造された酸素分離膜エレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素イオン(典型的にはO2−;酸化物イオンとも呼ばれる。)伝導性を有する酸素イオン伝導体として、いわゆるペロブスカイト型構造の酸化物セラミックスが知られている。特に、酸素イオン伝導体であることに加え、電子伝導性を兼ね備えた酸素イオン−電子混合伝導体(以下、単に「混合伝導体」という。)であるペロブスカイト型酸化物から成る緻密なセラミック材、典型的には膜状に形成されたセラミック材は、その両面を短絡させるための外部電極や外部回路を用いることなく一方の面から他方の面に連続して酸素イオンを透過させることができる。このため、一方の面に供給された酸素含有ガス(空気等)から酸素を他方の面に選択的に透過させる酸素分離材として、特に使用温度が800〜1000℃というような高温域で好適に利用することができる。
【0003】
例えば、ペロブスカイト型酸化物等の混合伝導体から構成される酸素分離膜は、多孔質基材(多孔質支持体)上に形成されて酸素分離膜エレメントとして用いられ、深冷分離法やPSA(Pressure Swing Adsorption)法に代わる有効な酸素精製手段として好適に使用することができる。
或いはまた、かかる構成の酸素分離膜エレメントは、酸素含有ガス(空気)と炭化水素ガスとを隔絶し、酸素を選択的に透過させて炭化水素の部分酸化反応を行うための酸化反応装置、いわゆる隔膜リアクタの構成要素として好適に利用することができる。すなわち、酸素分離膜の一方側の表面に酸素含有ガス、他方側の表面に炭化水素ガス(例えばメタン)をそれぞれ接触させると、一方の表面から酸素分離膜内を透過して供給される酸素イオンによって、他方の面において炭化水素が部分酸化される。このように酸素分離膜を利用して炭化水素を部分酸化する技術は、合成液体燃料(メタノール等)を製造するGTL(Gas To Liquid)技術、或いは燃料電池分野で好適に使用される。
【0004】
ところで、上記構成の酸素分離膜エレメントにおいて、酸素分離膜の両側の表面上には、典型的には触媒体が形成(担持)される。例えば、上記酸素分離膜における酸素含有ガスと接触する側の表面には、当該表面に供給された酸素含有ガス中の酸素を他方の面へ酸素イオンとして効率よく透過させるために、酸素を解離してイオンとしての透過を促進する触媒体(酸素イオン透過促進触媒)が付与される。また、上記酸素含有ガスと接触する側とは反対側の表面(例えば、上記のような構成の酸化反応装置では炭化水素ガスが供給される側)には、上記透過してきた酸素イオンを単体の酸素(酸素ガス)に再結合(すなわち酸化)するのを促進する触媒(または、炭化水素ガスとの酸化反応を促進する触媒)が付与され得る。
【0005】
触媒を付与する一般的な方法としては、種々の方法が提案されている。例えば特許文献1〜3には、粉末状の触媒材料を溶剤等と混合して調製したスラリー状またはペースト状組成物を、触媒付与面にディップコートあるいは印刷することにより触媒層を形成する方法が例示されている。特に特許文献3では、印刷法の一つであるスクリーン印刷ドクターブレード成形法が例示されている。その他の方法としては、スプレー法や、特許文献4で提案されている転写法、あるいは真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の薄膜形成方法による触媒体の付与が挙げられる。ここで、多孔質基材を備える構成の酸素分離膜エレメントにおいて、上記のような方法を適用することにより、多孔質基材とは接していない側の酸素分離膜表面に触媒体(典型的には触媒層)を担持(形成)することは可能である。しかし、かかる構成の酸素分離膜エレメントの製造工程において、触媒体の担持工程は、一般的には当該膜エレメントを製造した後に行われるので、酸素分離膜における多孔質基材側の表面(すなわち多孔質基材との界面)上に触媒体を形成することは極めて困難である。このため、酸素分離膜における多孔質基材側に触媒体を付与する際には、該多孔質基材の内部に(好ましくは酸素分離膜との界面にまで到達し得る深さ領域まで)触媒体を付与することが求められる。しかし、上述の方法では、多孔質基材の細孔内に均質に、且つ該基材の内部深くにまで触媒体を付与することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−261287号公報
【特許文献2】特開2003−225567号公報
【特許文献3】特開平7−134996号公報
【特許文献4】特開2006−82039号公報
【特許文献5】特開2003−144867号公報
【特許文献6】特開平5−158229号公報
【特許文献7】特開平7−176448号公報
【特許文献8】特開平8−169788号公報
【特許文献9】特開2005−79504号公報
【特許文献10】特開2005−285699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記酸素分離膜のような緻密膜を支持する多孔質持基材の細孔内に触媒体を担持させる方法としては、特許文献5に記載されるように、触媒体の構成成分(典型的には金属成分)を所定の溶媒に溶解させ、かかる溶液を散布または浸漬させる方法が挙げられる。この方法を適用するにあたり、例えば触媒体の構成金属成分を溶解させた浸漬用水溶液を用いる場合には、かかる浸漬用水溶液の濃度は上記構成金属成分の金属塩の水に対する溶解度に依存するので、溶解度が低ければ高濃度の水溶液を調製できず、多孔質基材内に触媒体を付与(担持)できる量に限界がある。また、水に可溶な金属塩しか用いることができず、使用できる金属塩に限りがある。さらに、このような浸漬用水溶液を用いて、多孔質基材として好適材料である酸化マグネシウムや酸化カルシウムから構成される多孔質基材に触媒体を付与しようとすると、かかる多孔質基材は水和反応を起こして劣化し、その機械的強度が低下し得る。この水和反応を抑制するために、水に代えて有機溶剤に上記金属成分の金属塩を溶解させようとしても、有機溶剤に対する溶解度は典型的には水よりも一層低下するので、著しく低濃度の金属溶液しか調製できない。このことにより触媒能を発揮し得る程度の付与量を実現し得る高濃度の金属溶液を調製することが困難である。他方、触媒体の粉末を分散させた分散液を用いて多孔質基材に触媒体を付与しようとすると、かかる触媒粉末の粒子の大きさを支持基材の細孔径よりも小さく制御する必要があるとともに、このように小さな粒径を備えた触媒粉末は有機溶剤に分散させても凝集し易く、均質な分散液を調製することが困難である。
【0008】
なお、金属元素を有機溶剤に溶解させるために、有機レジネート(有機金属化合物)を利用する方法が知られている。例えば特許文献6には、金属レジネートを含む有機溶液をSi基板表面に塗布して形成される金属薄膜について記載されている。また、特許文献7〜10には、金属レジネートを含む導体ペースト(レジネート組成物)をセラミックグリーンシートに積層して形成されるセラミックコンデンサの内部電極について記載されている。しかし、これらの文献に記載された技術は、酸素分離膜に関係するものではない。
【0009】
本発明は、上述のように酸素分離膜エレメントにおいて多孔質基材の細孔内にまで十分な量の触媒体を担持することが困難である点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、高い触媒活性(例えば酸素イオンの透過を促進する触媒活性)を長期にわたって維持し得る高い担持量で触媒体を酸素分離膜の多孔質基材側の表面に形成してなる酸素分離膜エレメントを製造する方法であって、多孔質基材や酸素分離膜を劣化させることなく触媒体を形成して酸素分離膜エレメントを製造する方法を提供することである。また、そのような方法により製造された酸素分離膜エレメントの提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を実現するべく、本発明により提供される酸素分離膜エレメントの製造方法は、酸素イオン(典型的にはO2−;酸化物イオンとも呼ばれる。以下同じ。)伝導性セラミック体からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜の少なくとも一方の表面に形成されたセラミック製の多孔質基材と、該多孔質基材の内部および/または該基材側の上記酸素分離膜表面に形成された少なくとも1種の金属元素から構成される触媒体とを備える酸素分離膜エレメントを製造する方法である。そして、かかる製造方法は、以下の工程;(1)上記酸素分離膜と上記多孔質基材とを備える膜エレメント本体を用意すること、(2)上記金属元素を構成元素とする少なくとも1種の金属レジネートを有機溶剤に溶解させてなるレジネート溶液を用意し、該レジネート溶液を上記多孔質基材内に含浸させること、および(3)上記レジネート溶液が含浸した上記膜エレメント本体を焼成することにより上記触媒体を形成すること、を包含する。
【0011】
本発明に係る酸素分離膜エレメントの製造方法は、酸素分離膜と該酸素分離膜の少なくとも一方の表面に形成された多孔質基材とからなる膜エレメント本体において、上記多孔質基材の細孔内および好ましくは上記酸素分離膜の多孔質基材側の表面に少なくとも1種の金属元素から構成される触媒体を形成させて酸素分離膜エレメントを製造する方法である。かかる方法では、上記触媒体に含まれる上記金属元素を構成元素とする金属レジネート(有機金属化合物)を用いることにより、該金属レジネートを有機溶剤に高濃度に溶解させることができる。かかる高濃度のレジネート溶液を利用することにより、上記金属元素を含む触媒体を上記多孔質基材の細孔内表面に一様に形成させる(コートするまたは分散させる)ことができるとともに、上記酸素分離膜の多孔質基材側の表面(すなわち酸素分離膜と多孔質基材との界面)に到達する程度の内部深さまで形成して触媒活性を十分に発揮し得る高い担持量で担持することができる。
したがって、本発明に係る酸素分離膜エレメントの製造方法によると、上記のように水溶液として調製し難い金属元素でも金属レジネートとして多孔質基材に付与することができるとともに、多孔質基材の機械的強度を低下させることなく、上記付与された金属元素から構成される触媒体であって高い触媒活性を発揮し得る高担持量の触媒体を多孔質基材の内部(好ましくは該基材側の酸素分離膜表面までの深さ領域における細孔内表面)に形成させてなる酸素分離膜エレメントを製造することができる。
なお、本明細書中で「膜」とは特定の厚みに限定されず、上記酸素分離膜は、酸素水製造用膜エレメントにおいて少なくとも「酸素イオン伝導体」として機能する膜状若しくは層状の部分をいう。
【0012】
ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の好ましい一態様では、上記レジネート溶液を含浸させる前に、用意したカルボン酸溶液を前記膜エレメント本体に含浸させることをさらに包含する。より好ましくは、上記カルボン酸としてギ酸を用いる。
かかる構成の製造方法では、上記レジネート溶液を上記膜エレメント本体に含浸させる前にカルボン酸溶液を含浸させることにより、多孔質基材における細孔内の表面が改質されて金属レジネートが均質に且つより多く付与され易くなる。このことにより、かかる構成の製造方法によると、より一層高い触媒活性が発揮され得る優れた酸素分離膜エレメントを製造することができる。また、かかるカルボン酸の中でもギ酸の使用は、上記改質効果がより高まるので好ましい。
【0013】
ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の別の好ましい一態様では、上記多孔質基材として、少なくとも酸化マグネシウム(MgO)および/酸化カルシウム(CaO)を含む材料からなる多孔質体を用いる。
上記のような材料は、水または水溶液に浸漬すると水和反応を起こして劣化し得るため、このような材料からなる多孔質基材を備えた膜エレメント本体に、触媒体を構成する金属元素が溶解した水溶液を含浸させるのは不適である。しかし、かかる構成の製造方法では、有機溶剤を溶媒とするレジネート溶液を用いるので、上記水溶液の含浸に不適な上記材料からなる多孔質基材にも好ましく適用することができる。すなわち、かかる構成の製造方法によると、金属レジネートを含むレジネート溶液を膜エレメント本体に含浸することによって、水溶液の浸漬に不適な上記材料からなる多孔質基材を備える膜エレメント本体に対しても、該多孔質基材を劣化させてその機械的強度を低下させることなく高担持量で均質に触媒体を付与することができ、高い触媒機能を発揮し得る優れた酸素分離膜エレメントを製造することができる。
【0014】
ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の別の好ましい一態様では、上記レジネート溶液は、上記触媒体として一般式:La1−xMO3−δ (1)
(ただし、Aは、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)およびカルシウム(Ca)からなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成される触媒体が得られる組成となるように、調製されている。好ましくは、上記一般式(1)のMを構成する元素として、Co、Fe、Ni、Ti、およびMnからなる群から選択される1種または2種以上を含む。
かかる構成の製造方法によると、上記のような組成のレジネート溶液を用いることにより、高い触媒活性を長期にわたり維持し得る優れた触媒体を、多孔質基材内に形成させることができる。特に、上記一般式(1)のMとしてCo、Fe、Ni、Ti、およびMnのうちから1種以上含まれ得る触媒体は、酸素を酸素イオンに解離して該酸素イオンの酸素分離膜内の透過を促進する酸素イオン透過促進触媒体、または、酸素イオンを酸素に酸化すること若しくは酸素イオンによって炭化水素ガスを部分酸化することを促進する酸化促進触媒体として機能し得るので酸素分離膜エレメントに形成させる触媒体として好ましい。
【0015】
ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の好ましい一態様では、上記金属レジネートとして、少なくとも上記金属元素のオクチル酸塩を用いる。
このような金属レジネートをそれ単独、または他の金属レジネートとの組み合わせで用いることにより、例えば炭化水素系の有機溶剤に高濃度に溶解させてなるレジネート溶液を用意(調製)することができる。したがって、かかる構成の製造方法によると、より高担持量で触媒体が形成されて高触媒活性を示す優れた酸素分離膜エレメントを製造することができる。
【0016】
ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の別の好ましい一態様では、上記レジネート溶液には、該溶液全体の1質量%〜30質量%の割合で上記金属元素が含まれている。
このような濃度のレジネート溶液は、上記多孔質基材との濡れ性が良好となる。このため、かかるレジネート溶液が上記多孔質基材の細孔内表面に一様に付与(塗布)され、高い触媒活性を示す触媒体を形成することができる。
【0017】
本発明は、他の側面として、ここで開示されるいずれかの製造方法により製造される酸素分離膜エレメントを提供する。かかる酸素分離膜エレメントは、酸素イオン伝導性セラミック体からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜の少なくとも一方の側の表面に形成されて該酸素分離膜を支持するセラミック製の多孔質基材と、該多孔質基材の内部および/または該基材側の上記酸素分離膜表面に形成された少なくとも1種の金属元素から構成される触媒体とを備えており、高い触媒活性を長期にわたり維持し得る優れた酸素分離膜エレメントが実現される。
【0018】
また、好ましくは、かかる酸素分離膜エレメントは、上記セラミック製多孔質基材の内部および/または該基材側の上記酸素分離膜表面に形成された触媒体として、一般式:
La1−xMO3−δ (1)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成される触媒体を備える。好ましくは、上記一般式(1)のMを構成する元素として、Co、Fe、Ni、Ti、およびMnからなる群から選択される1種または2種以上を含む。
かかる触媒体は、酸素を酸素イオンに解離して該酸素イオンの酸素分離膜内の透過を促進する酸素イオン透過促進触媒体、または、酸素イオンを酸素に酸化(再結合)すること若しくは酸素イオンにより炭化水素ガスを部分酸化することを促進する酸化促進触媒体として長期にわたり機能し得る。したがって、かかる触媒体を備えることによって、高い触媒活性を長期にわたり維持し得る優れた酸素分離膜エレメントが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】酸素分離膜エレメントの一形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】後述するサンプル1の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図3】後述するサンプル2の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】後述するサンプル3の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】後述するサンプル4の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】後述するサンプル5の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】後述するサンプル6の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】実施例における酸素透過試験を実施するために用いた評価装置の要部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、触媒体の組成および該触媒体の担持方法)以外の事項であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、原料粉末の混合方法や押出成形方法、または成形体の焼成方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0021】
本発明によって提供される酸素分離膜エレメントの製造方法は、酸素イオン伝導性セラミック体からなる酸素分離膜の少なくとも一方の側の表面に形成されて該酸素分離膜を支持するセラミック製の多孔質基材の内部に、少なくとも1種の金属元素から構成される触媒体を形成(担持)して酸素分離膜エレメントを製造する方法であって、上記酸素分離膜と多孔質基材とからなる膜エレメント本体に、上記金属元素を含む金属レジネートを有機溶剤に溶解させてなるレジネート溶液を含浸し、この膜エレメント本体を焼成して上記触媒体を形成することによって特徴付けられるものである。したがって、上記目的を達成し得る限りにおいて、その他の構成成分の内容や組成については、種々の基準に照らして任意に決定することができる。以下、ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法の一好適例について説明する。
【0022】
まず、かかる酸素分離膜エレメントの本体部である膜エレメント本体を用意する。膜エレメント本体としては、酸素イオン伝導性(酸素イオンを選択的に透過させる性質)を有するセラミック体(典型的には酸素イオン伝導性の酸化物セラミック体)を緻密な膜状に形成してなる酸素分離膜を備えるとともに、該酸素分離膜の少なくとも一方の側の表面(典型的にはいずれか一方側の表面)に形成されて該酸素分離膜を支持する多孔質基材を備える構成のものを好ましく用いることができる。膜エレメント本体の形状としては特に限定されず、例えば、板状(平面状および曲面状等を含む。)、円筒状または管状(両端が開口した開管状のもの、一端が開口しており他端が閉じている閉管状のもの等を含む。)、ハニカム状、あるいはこれらが組み合わさった形状等の多孔質基材を採用することができる。かかる形状を呈する多孔質基材の一方の表面(典型的には、多孔質基材の厚み方向と直交する表面)に酸素分離膜が形成(積層)された構成の膜エレメント本体を用いることができる。特に、板状、管状等の多孔質基材の一方の表面(例えば管状の多孔質基材の外周側面)の全面または一部に酸素分離膜が形成された構成の積層型の膜エレメント本体を用いることが好ましい。
【0023】
膜エレメント本体における酸素分離膜を構成する材料としては、酸素イオン伝導性セラミック体であればよく、従来の酸素分離膜と同様の材料を特に制限なく用いることができる。酸素イオン伝導性セラミック体としては、例えばイットリア(Y)で安定化したジルコニア(YSZ)、カルシア(CaO)で安定化したジルコニア(CSZ)、スカンジア(Sc)で安定化したジルコニア(SSZ)等のジルコニア系酸化物、または、酸化セリウム(セリア)やその一部がイットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、サマリウム(Sm)等で還元されたセリア等のセリア系酸化物、あるいはペロブスカイト型酸化物等が好ましく挙げられる。ここで、ペロブスカイト型酸化物については、特定の構成元素のものに限られないが、酸素イオン伝導性と電子伝導性の両方を有する優れた混合伝導体となるような元素で構成されることが好ましい。酸素分離膜が混合伝導性を有する場合には、酸素分離膜の一方の側(酸素含有ガスが供給される側)と他方の側(酸素分離膜を透過した酸素イオンが酸素ガスとして酸化される側、あるいは供給された炭化水素ガスと反応する側)とを短絡させるための外部電極や外部回路を用いることなく、一方から他方へと連続的に酸素イオンを透過させることができるとともに、酸素イオンの透過速度を上げることができるため好ましい。
【0024】
混合伝導性のペロブスカイト型酸化物の好適例としては、そのペロブスカイト型構造のBサイトに、電子伝導性を向上させ得るFeと、該ペロブスカイト型酸化物の機械的強度を向上させ得るTiまたはZrとを含むペロブスカイト型酸化物が挙げられる。例えばLa1−pSrTi1−qFe3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物(具体的にはLa0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.93−δ、La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.73−δ等のLSTF酸化物)や、La1−pSrZr1−qFe3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物(具体的にはLa0.6Sr0.4Zr0.1Fe0.93−δ、La0.6Sr0.4Zr0.3Fe0.73−δ等のLSZF酸化物)が挙げられる。ここで、上記「p」は、このペロブスカイト型構造においてLaがSrによって置き換えられた割合を示す値であり、「q」はTiまたはZrがFeによって置き換えられた割合を示す値であり、典型的には0<p<1であり、0<q<1である。このようなペロブスカイト型酸化物は、酸素分離膜に混合伝導性と耐久性(例えば耐還元膨張性)とをバランスさせて付与することができる。
なお、上記δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。上記化学式における酸素原子数は、ペロブスカイト型構造の一部を置換する原子の種類および置換割合その他の条件により変動するため正確に表示することは困難である。このため、電荷中性条件を満たすように定まる値として、1を超えない正の数δ(0<δ<1)を採用し、酸素原子の数を3−δと表示するのが妥当であるが、以下では便宜的に3と表示することもある。ただし、該酸素原子の数を便宜的に3として表示しても、異なる化合物を表しているわけではない。
【0025】
上記のような材料から構成される酸素分離膜は、緻密であって(例えば、理論密度に対する相対密度が95%以上であり)、実質的にガス不透性であることが好ましい。また、かかる酸素分離膜の厚さ寸法については、1000μm以下の範囲内が適当であり、好ましくは200μm以下(典型的には、凡そ5μm〜200μm)の範囲であり、より好ましい態様では凡そ100μm以下(典型的には、凡そ5μm〜100μm)の範囲である。酸素分離膜の厚さが上記範囲内にあることにより、酸素イオン透過性能と機械的強度(例えば酸素分離膜の両側に生じる応力によって発生し得るクラックが抑制される等の耐久性)とが高い次元で両立し得る酸素分離膜が実現される。なお、ここで開示される膜エレメント本体に係る酸素分離膜は多孔質基材によって支持されているので、酸素分離膜自体に機械的強度は要求されず、酸素分離膜の緻密性が維持される範囲にあれば、上記厚さ寸法の下限は特に限定されない。
【0026】
上記膜エレメント本体を構成する多孔質基材としては、従来のこの種の膜エレメント(例えば酸素分離膜エレメント)で採用されている種々の性状のセラミック製多孔質体を使用することができる。また、かかる多孔質基材は、酸素分離膜エレメントの使用温度域(典型的には500℃以上、例えば800〜1000℃)において安定な耐熱性を有する材質からなるものが好ましく用いられる。より好ましくは、上記酸素分離膜が該多孔質基材上に強い接着強度で形成されるように、その熱膨張係数を酸素分離膜材料と近似させ得ることができる材料からなる多孔質基材であることが好ましい。かかる多孔質基材用の好適な材料としては、例えば、ペロブスカイト型構造のセラミック多孔質体(例えば上記酸素分離膜と類似組成の酸化物)、あるいは酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化カルシウム(カルシア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、窒化ケイ素、炭化ケイ素のうちの1種以上を主体とするセラミック多孔質体を用いることができる。ここで、酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウムを(主体として)含む材料は、水または水溶液に浸漬すると水和反応を起こして劣化して多孔質基材の機械的強度を低下させ得るが、ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法では、後述のように金属レジネートを有機溶剤に溶解させたレジネート溶液を用いるので、当該製造方法の適用は、上記のように水溶液への浸漬に不適な上記材料からなる多孔質基材に対して特に有効である。
【0027】
上記多孔質基材の気孔率(水銀圧入法に基づく)は特に限定されないが、例えば凡そ80体積%以下(典型的には凡そ5体積%〜80体積%)が適当である。酸素分離膜エレメントの機械的強度や製造容易性(例えば多孔質基材の表面への酸素分離膜の付与し易さ等をいう。)の観点からは、上記多孔質基材の気孔率は60体積%以下(典型的には20体積%〜60体積%)が好ましい。また、かかる多孔質基材の平均細孔径(水銀圧入法に基づく)として、例えば50μm以下(典型的には0.1〜50μm)であるものを用いることができる。平均細孔径が10μm以下(典型的には1〜10μm)の多孔質基材を用いることが好ましい。このような気孔率および平均細孔径を有する多孔質基材は、酸素含有ガス等の気体の透過を妨げることがなく、またその表面により薄い酸素分離膜を適切に形成することができる。
【0028】
上記多孔質基材の形状については特に限定されず、例えば、上述のように、板状、管状、ハニカム状、あるいはこれらが組み合わさった形状等の多孔質基材を好ましく用いることができる。
また、上記多孔質基材の厚さ寸法についても特に限定されない。例えば、平板状あるいは管状の多孔質基材では、その厚さを凡そ0.2mm〜50mmの範囲とすることができ、好ましい範囲は凡そ1mm〜20mm、より好ましい範囲は凡そ1mm〜10mm、さらに好ましい範囲は凡そ1mm〜5mmである。多孔質基材の厚さを上記範囲内とすることにより、特に機械的強度に優れ、酸素分離膜と酸素含有ガスとの接触効率のよい膜エレメント本体を得ることができる。
【0029】
上記のような構成の膜エレメント本体の製造方法は、従来の酸素分離膜エレメントの製造方法と同様の方法でよく特に限定されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
多孔質基材の製造方法について説明する。多孔質基材の原料粉末(例えば酸化マグネシウム粉末)を用意する。かかる原料粉末の平均粒径としては、通常は、多孔質基材形成用粉末の平均粒径を凡そ1μm〜150μmの範囲とすることが適当であり、好ましい範囲は凡そ20μm〜100μm、より好ましい範囲は凡そ40μm〜100μmである。この原料粉末の平均粒径は、上記のような酸素分離膜エレメントとして好適な気孔率および/または平均細孔径を備えた多孔質基材を容易に製造することができる。上記多孔質基材の組成を有する市販のセラミック粉末をそのまま多孔質基材用の原料粉末として用いてもよい。あるいは、そのようなセラミック粉末を造粒し、仮焼して所望の粒径に成長させたものを用いてもよい。例えば、原料粉末を仮焼し、湿式ボールミル等を用いて粉砕することにより、仮焼粉末を得る。次に仮焼粉末に、水、有機バインダ等の成形助剤、および分散剤を添加・混合してスラリーを調製し、スプレードライヤー等の造粒機を用いて所望する粒径(例えば平均粒径が10μm〜100μm)に造粒することができる。
【0030】
上記のようにして得られた多孔質基材用原料粉末を適当な溶媒(例えば水)、バインダ等を加えて混練する。この混練工程では、上記原料粉末に、溶剤、有機バインダ等の成形助剤、および必要に応じて分散剤を順次添加、混合して、例えばニーダー等の混練装置を用いて混練処理を施し、スラリー状組成物(成形用材料)を調製する。バインダ、分散剤は従来公知のものを使用することができる。
次に、上記スラリー状組成物を所定形状(例えば円筒(または管)状)に成形する。この成形工程では、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出し成形、鋳込み法、射出成形法等の従来公知の成形法を採用することができる。例えば、多孔質基材を円筒状に成形する場合には、押出し成形が好ましい。
次いで、上記成形体を焼成して多孔質基材を得る。焼成時の適切な焼成温度としては、多孔質基材の組成等によっても異なるが、典型的には1200℃〜1800℃(好ましくは1300℃〜1600℃)である。酸素分離膜の製膜工程における上記多孔質基材の破損や変質等を避けるために製膜温度よりも高温で焼成することが好ましい。また、好適な焼成時間は成形体の性状等に応じて異なり得るが、通常の焼成時間としては、1時間〜15時間程度が適当であり、好ましくは3時間〜10時間(例えば3時間〜5時間)である。また、この焼成工程は、有機物添加剤(例えばバインダ、分散剤等)を予め分解除去して均一な細孔を得るために、例えば一回以上の仮焼工程と、その後に行われる本焼成工程とを包含することができる。この場合、本焼成工程を上記のような焼成温度で行い、仮焼工程については本焼成工程よりも低い焼成温度(例えば800℃〜1500℃、好ましくは1000〜1300℃)で行うことが好ましい。
【0031】
上記の方法で作られた多孔質基材の表面(典型的には多孔質基材の一方側の表面)に、例えば上記LSTF酸化物等のペロブスカイト型酸化物からなる酸素分離膜を形成する。この膜形成方法については特に限定されず、従来公知の種々の手法を採用することができる。例えば、上記ペロブスカイト型酸化物を構成する金属元素を含む原料粉末を、所望するペロブスカイト型酸化物の組成比で混合する。この混合物を成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気で焼成し、焼成物(ペロブスカイト型酸化物)を得る。これを解砕して酸素分離膜用原料粉末を得る。ここで、この酸素分離膜用原料粉末の平均粒径を凡そ1μm〜30μmの範囲とすることが適当であり、好ましくは1μm〜15μmの範囲である。かかる範囲の平均粒径を有する酸素分離膜用原料粉末は、多孔質基材の表面に緻密な酸素分離膜を形成するのに好適である。なお、上記多孔質基材を製造する場合と同様に、原料粉末の代わりに、上記ペロブスカイト型酸化物粉末の市販品を酸素分離膜用原料粉末として使用しても良い。また、上記ペロブスカイト型酸化物粉末の粒径を調節したもの(例えば所定の粒径に成長させたもの、あるいは所定の粒径に粉砕したもの)等を用いてもよい。
【0032】
次いで、上記のようにして得られた酸素分離膜用原料粉末を多孔質基材の表面全体または該表面の一部分に付与する。付与する方法の一例としては、上記酸素分離膜用原料粉末を適当なバインダ、分散剤、可塑剤、溶媒等と混合してスラリー状組成物を調製し、一般的なディップコーティング等の手法によって該スラリー状組成物を多孔質基材表面に付与(塗布)する。形成する酸素分離膜の厚さは、コーティング液における酸素分離膜用原料粉末の濃度、分散剤、分散媒、可塑剤等の添加剤の種類、コーティング液の粘度、製膜条件、乾燥条件等を適宜調節することにより制御することが可能である。このようにして得られた多孔質基材上の塗布物(皮膜)を適当な温度(典型的には60〜100℃)で乾燥させ、次いで、例えば1200℃〜1800℃のような温度域(上述した多孔質基材の焼成温度と同等あるいはそれ以下の温度で焼成することが好ましい。)で酸化性雰囲気または不活性ガス雰囲気下で焼成することによって、多孔質基材の表面に上記ペロブスカイト型酸化物からなる酸素分離膜を形成することができる。以上のようにして、多孔質基材と該基材の一方の表面に形成されて該基材によって支持される酸素分離膜とを備えた膜エレメント本体を製造することができる。
上記のような工程を経ることにより、例えば、図1に示されるような、円筒形状の多孔質基材12の一方の表面(すなわち多孔質基材12の外周側面における軸方向の両端部を除くほぼ全面)に酸素分離膜14が形成(積層)された構成の酸素分離膜エレメント10に係る膜エレメント本体1を得る。
【0033】
次に、触媒体を付与する前処理として、上記のようにして作製された(用意された)膜エレメント本体の多孔質基材にカルボン酸溶液を含浸させる(カルボン酸処理)。かかる多孔質基材にカルボン酸溶液を含浸させると、含浸させない場合に比べて該多孔質基材の細孔内表面が改質されて、より均質に且つより高い担持量で触媒体を上記多孔質基材内部に形成(付与)させることができるので好ましい。
かかるカルボン酸溶液として用いられるカルボン酸としては、例えば低分子量の一級カルボン酸が好ましく、具体的にはギ酸や酢酸を好ましく挙げることができる。特にギ酸が好ましい。かかるカルボン酸溶液としては、典型的には水溶液であってそのカルボン酸の濃度が0.05mol/L〜2mol/L(より好ましくは0.1mol/L〜2mol/L、特に好ましくは0.5mol/L〜1.5mol/L、例えば0.5mol/L〜1.0mol/L)の範囲内となるように調製されているものを好ましく用いることができる。
また、上記多孔質基材に上記濃度のカルボン酸溶液を含浸させる方法としては、従来の含浸方法を特に制限なく用いることができる。典型例としては、一般的な真空(減圧)脱泡装置を利用して、浸漬槽(浸漬容器)に収容された上記カルボン酸溶液に上記膜エレメント本体を浸漬させて減圧脱泡することにより、上記多孔質基材内部、すなわち該多孔質基材と上記酸素分離膜との界面(上記酸素分離膜の多孔質側の表面)に到達する深さ領域に存在する細孔内にまで上記カルボン酸溶液を十分に含浸させることができる。浸漬時間としては膜エレメント本体の大きさによって適宜調整すればよく特に制限されない。例えば外径凡そ20mm、長さ凡そ100cmの円筒形状の膜エレメント本体であれば5分間〜30分間が適当であり、好ましくは10分間〜30分間、特に好ましくは15分間〜25分間である。このような浸漬時間であれば、例えば水和反応を起こし得る酸化マグネシウム等の材料からなる多孔質基材であっても、カルボン酸溶液で劣化することなく多孔質基材の機械的強度を高く維持したままで、上記カルボン酸溶液の改質効果を十分に発揮させることができる。
【0034】
上記のようにカルボン酸処理された膜エレメント本体を、所定温度条件(例えば50℃〜150℃)で5分間〜30分間程度乾燥する。この乾燥後の膜エレメント本体に対して触媒体を形成する。ここで、酸素分離膜エレメントとして優れた酸素分離機能を発揮させるには、膜エレメント本体における酸素分離膜の両側の表面にそれぞれ異なる触媒活性を有する触媒体が形成されることが好ましい。典型的には、酸素分離膜における酸素含有ガスと接触し得る一方の側の表面には、当該表面に供給された酸素含有ガス中の酸素を解離して酸素イオンとしての酸素分離膜中の透過を促進する触媒体(酸素イオン透過促進触媒)が担持され得る。また、上記酸素含有ガスが供給される側とは反対側の他方の側の表面(例えば炭化水素ガスが供給される側)には、上記透過してきた酸素イオンを単体の酸素(酸素ガス)に再結合(すなわち酸化)するのを促進する触媒(または、炭化水素ガスとの酸化反応を促進する触媒)が担持され得る。
このような触媒体は、一般式(1):La1−xMO3−δで表わされるペロブスカイト型酸化物から構成されることが好ましい。ここで、Aはストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)およびバリウム(Ba)のうちの少なくとも1種であり、好ましくはSrである。Mはペロブスカイト型構造を構成し得る金属元素であればよく、例えばジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、または錫(Sn)のうちの1種または2種以上である。また、上記一般式(1)における「x」は、このペロブスカイト型構造においてLaがAによって置き換えられた割合を示す値である。このxの取り得る範囲は0≦x≦1(典型的には0<x<1、好ましくは0.1≦x<1)である。
【0035】
ここで、上記酸素イオン透過促進触媒体として機能し得るペロブスカイト型酸化物としては、上記一般式(1)のM(すなわちペロブスカイト型酸化物のBサイトを構成する金属元素)として、Co、Fe、Ni、Mnのうちのいずれか1種以上含まれているものが好ましい。例えばLa1−xSrCoO3−δ(例えば0.1≦x≦0.9、好ましくは0.3≦x≦0.7、より好ましくは0.4≦x≦0.6)、La1−xSrMnO3−δ(好ましくは0.1≦x≦0.6、より好ましくは0.1≦x≦0.3)、La1−xSrCo1−yFe3−δ等が挙げられる。ここで、上記La1−xSrCo1−yFe3−δの「y」は、かかるペロブスカイト型構造においてCoがFeによって置き換えられた割合を示す値であり、当該ペロブスカイト型酸化物La1−xSrCo1−yFe3−δの「x」および「y」の取り得る好ましい範囲は、0.5≦x≦0.95および0.05≦y≦0.4、より好ましくは0.7≦x≦0.9および0.1≦y≦0.3である。
【0036】
また、上記酸素再結合促進触媒体(あるいは酸化促進触媒)体として機能し得るペロブスカイト型酸化物としては、上記一般式(1)のMとして、例えばNi、Ti、Feのうちのいずれか1種以上含まれている者が好ましく、例えばLa1−xSrTi1−yFe3−δ、La1−xSrNi1−y−zTiFe3−δ等が挙げられる。ここで、このペロブスカイト型酸化物における「y」および「z」は、かかるペロブスカイト型構造においてNiがTiあるいはFeによって置き換えられた割合を示す値である。これらペロブスカイト型酸化物における「x」、「y」および「z」の取り得る範囲は、典型的には0<x<1、0<y<1、0<z<1、好ましくは0.3≦x≦0.7、0.1≦y<1、0.1≦z<1、例えば0.4≦x≦0.6、0.1≦y≦0.3、0.4≦z≦0.85)である。
また、上記酸素再結合促進触媒体として用いることができるペロブスカイト型酸化物以外の触媒体としては、Ni、Co、および白金系元素(例えばルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir))等からなる金属触媒体であってもよい。このような金属触媒体としては、例えば酸素分離膜と同組成のペロブスカイト型酸化物(典型的には粉末体)を担体として該担体表面に該金属触媒体が担持された形態であってもよい。
【0037】
膜エレメント本体に上記のような触媒体を形成する手順としては、以下のとおりである。まず、かかる触媒体の構成元素を含む金属レジネートを用意し、次いで該金属レジネートを有機溶剤に溶解させたレジネート溶液を調製する。次に、このレジネート溶液を上記膜エレメント本体に含浸させて上記金属レジネートを多孔質基材の内部に付与し、乾燥させる。次いで、緻密な酸素分離膜上に担持させる触媒体を(例えば膜あるいは層状に)付与する。最後に、膜エレメント本体を焼成する。かかる焼成により、酸素分離膜における多孔質基材側の表面をも含む多孔質基材の内部に触媒体が形成されるとともに、酸素分離膜の多孔質基材側の表面とは反対側の表面上にも(触媒層として)触媒体が形成される。このようにして、上記触媒体が酸素分離膜の両側に好ましく形成された膜エレメント本体(すなわち本発明の酸素分離膜エレメント)が製造される。
以下では、特に限定することを意図しないが、多孔質基材側に酸素含有ガスが供給され得るとともに、酸素分離膜側で酸素を再結合させ得る(あるいは、炭化水素ガスが供給され得る)構成の酸素分離膜エレメントを製造することを例として触媒体の形成手順を説明する。
【0038】
上記多孔質基材側に酸素イオン透過促進触媒体を付与する工程について説明する。まず、酸素イオン透過促進触媒体の構成元素を含む金属レジネートを用意する。例えば、上記酸素イオン透過促進触媒として機能し得る上記一般式(1)で表わされるペロブスカイト型酸化物を構成する各金属元素(すなわち、一般式(1)におけるLa、A(例えばSr)、およびM(例えばCo))を含む金属レジネート(有機金属化合物)を用意する。かかる金属レジネートとしては、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、アビエチン酸、オレイン酸、ナフテン酸、リノレン酸、ネオデカン酸等の比較的高炭素数(例えば炭素数8以上)のカルボン酸の金属塩、スルホン酸の金属塩、あるいは、上記金属元素を含むアルキルメルカプチド(アルキルチオラート)、アリールメルカプチド(アリールチオラート)、メルカプトカルボン酸エステル等が挙げられる。上記La、AまたはMと好ましい金属塩を形成し得るものであって常温常圧下で扱えるものでれば、有機成分の種類は特に制限されず、かかる有機成分と上記金属元素とから構成される有機金属化合物を本発明に係る金属レジネートとして好ましく用いることができる。また、膜エレメント本体の上記多孔質基材に含浸させる後述のレジネート溶液の構成成分数を抑えるために、上記各金属元素の金属レジネートの有機成分は同種であることが好ましい。例えば、La1−xSrCoO3−δからなる触媒体を多孔質基材内部に担持したい場合には、La、SrおよびCoをそれぞれ含む金属レジネートとして、オクチル酸ランタン、オクチル酸ストロンチウムおよびオクチル酸コバルトを好適に用いることができる。
【0039】
上記のような金属レジネートを溶解させる有機溶剤(有機溶媒)としては、かかる金属レジネートが可溶な溶剤であれば特に制限なく、金属レジネートの溶媒として一般的に使用され得る有機溶剤を用いることができる。例えば後述するように、減圧脱泡により金属レジネートを含むレジネート溶液を上記多孔質基材に含浸させる場合には、高沸点の有機溶剤を用いることが好ましい。このような有機溶剤としては、例えばブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤、エチレングリコールおよびジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、ターピネオール等が好ましく挙げられる。
【0040】
このような有機溶剤に上記金属レジネートを溶解させてレジネート溶液を調製する。かかるレジネート溶液における金属レジネートの濃度については、該レジネート溶液中に含まれる上記金属元素(すなわち該金属レジネートの金属成分であって上記触媒体を構成する金属元素)の割合(すなわち金属含有率)が該レジネート溶液全体の1質量%〜50質量%(好ましくは5質量%〜25質量%、より好ましくは5質量%〜20質量%、例えば10質量%±5質量%)となるような濃度で溶解していることが好ましい。このような濃度範囲よりも低濃度であれば、多孔質基材の内部に形成される触媒体の量(担持量)が少なく、触媒活性を発揮し得ない虞がある。また、上記濃度範囲を超える高濃度であると、上記金属レジネートが該レジネート溶液に溶解し難くなる虞があるとともに、かかるレジネート溶液が高粘性となって多孔質基材の細孔内にまで該溶液を含浸させ難くなる虞がある。上記のような濃度範囲内で金属レジネートが溶解しているレジネート溶液を用いることにより、多孔質基材との濡れ性が良好で、該多孔質基材の細孔内表面にも好適に上記レジネート溶液が均質に塗布(付与)され得るので好ましい。また、用いるレジネート溶液の濃度を調製することにより上記多孔質基材内への触媒体の担持量を容易に制御することができ、上記濃度範囲内で高濃度のレジネート溶液を用いることにより、高い担持量で触媒体を多孔質基材の内部深くまで担持(形成)することができる。
【0041】
また、上記レジネート溶液中に含まれる各金属レジネートの配合比としては、該金属レジネートの金属成分の配合比が、所望するペロブスカイト型酸化物の組成比(化学量論比)となることが好ましい。すなわち、例えばLa0.6Sr0.4CoO3−δからなる触媒体を形成したい場合には、該ペロブスカイト型酸化物を構成する金属元素(すなわちLa、Sr、およびCo)の配合比が、Laは0.6モル、Srは0.4モルおよびCoは1モルとなるように当該各金属元素を含む金属レジネート(例えばオクチル酸ランタン、オクチル酸ストロンチウムおよびオクチル酸コバルト)を上記有機溶剤に溶解させてレジネート溶液を調製することが好ましい。
【0042】
次に、上記のようにして調製されたレジネート溶液を上記膜エレメント本体に含浸させる。かかる含浸方法については、従来の含浸方法を特に制限なく用いることができる。一典型例としては、上記カルボン酸処理と同様に、一般的な真空(減圧)脱泡装置を利用して、浸漬槽(浸漬容器)に上記レジネート溶液を収容し、該レジネート溶液中に上記膜エレメント本体全体を浸漬させて減圧脱泡することにより、上記多孔質基材の内部深くの細孔内にまで十分に上記レジネート溶液を含浸させることができる。浸漬時間としては膜エレメント本体の大きさによって適宜調整すればよく特に制限されないが、典型的には多孔質基材からの発泡の終息時または終息後しばらく減圧状態を維持した後に浸漬(当該含浸処理)を終了する。上記レジネート溶液を含浸させた膜エレメント本体を上記浸漬槽から取り出した後は、50℃〜100℃(好ましくは60℃〜90℃、例えば80℃±5℃)で5分間〜30分間乾燥させることが好ましい。
【0043】
次に、上記レジネート溶液の含浸後に乾燥処理した膜エレメント本体において、その酸素分離膜側の表面上に酸素再結合触媒体(酸化促進触媒体)を形成する工程について説明する。
酸素再結合触媒体を緻密な酸素分離膜の表面に形成する方法は特に限定されない。例えば、酸素分離膜の表面に触媒体を形成する場合には、かかる触媒体を膜状に形成して該酸素分離膜上に触媒層として積層することができる。かかる触媒層を形成するにあたり、上記一般式(1)で示されるようなペロブスカイト型酸化物からなる触媒層を形成する場合には、該ペロブスカイト型酸化物を構成する金属元素を含む原料粉末を、所望する上記ペロブスカイト型酸化物の組成比(化学量論比)で混合する。かかる原料粉末としては、上記ペロブスカイト型酸化物を構成する金属元素を含む酸化物、或いは炭酸塩や硝酸塩等の加熱により酸化物となり得る化合物の1種以上を含有するものを用いることができる。次いで、原料粉末の混合により得られた混合物(混合粉末)を適当な従来公知のバインダ、分散剤、可塑剤、溶媒等と混合して含むスラリーを調製する。このスラリーを酸素分離膜の表面に塗布して乾燥させることにより未焼成状態の触媒層を酸素分離膜表面に積層させることができる。酸素分離膜表面への上記酸素再結合触媒体の形成については、該触媒体を上記表面全体または一部の領域に付与(形成)することができる。
【0044】
また、白金系元素やNi等からなる金属触媒体、あるいは、例えば酸素分離膜と同質のペロブスカイト型酸化物の粉末粒子(担体)の表面に担持された形態の金属触媒体を、酸素分離膜表面に担持する場合には、Ni水溶液に上記ペロブスカイト型酸化物の粉末体を添加して調製された分散液(あるいはスラリー状組成物)を上記酸素分離膜表面に塗布して乾燥させることにより、上記金属触媒体自体あるいは担体に担持された形態の金属触媒体を、上記酸素分離膜表面(全面または所定領域)に一様に分散するように付着(担持)させることができる。
【0045】
以上のようにして上記膜エレメント本体における多孔質基材側の内部および酸素分離膜上にそれぞれ異なる触媒機能を有する未焼成状態の触媒体を付与して乾燥した後、所定条件下で焼成する(焼き付ける)ことにより、目的とする組成のセラミック体(例えば上記一般式(1)で示されるようなペロブスカイト型酸化物)からなる触媒体が形成され、かかる触媒体が担持された膜エレメント本体(すなわち酸素分離膜エレメント)を得ることができる。この焼成における焼成温度は、500℃〜1500℃が適当であり、好ましくは800℃〜1200℃、より好ましくは900℃〜1100℃である。焼成時間については、膜エレメント本体の大きさにより異なるが、30分間〜5時間が適当であり、好ましくは30分間〜3時間、より好ましくは1時間〜2時間程度である。
以上のようにして、酸素分離膜と該酸素分離膜の一方の側の表面に形成されて該酸素分離膜を支持する多孔質基材とを備える酸素分離膜エレメントを製造することができる。そして、この酸素分離膜エレメントは、上記多孔質基材の内部であって上記酸素分離膜表面に到達し得る程度に深い領域の細孔内表面にまで酸素イオン透過促進触媒体が十分な担持量で形成されているとともに、酸素分離膜側(すなわち上記多孔質基材側表面とは反対側)の表面には酸素再結合促進触媒体が(例えば触媒層として)形成されている好ましい形態のものである。
【0046】
以上では、本発明の好適例として、多孔質基材側に酸素含有ガスが供給されるとともに、酸素分離膜側で酸素を再結合させる(あるいは、炭化水素ガスが供給され得る)構成の酸素分離膜エレメントを製造する方法について説明した。このため、かかる方法により得られた酸素分離膜エレメントは、上述のように、多孔質基材側に酸素イオン透過促進触媒体が形成されているとともに、酸素分離膜側に酸素再結合促進触媒体が形成されている形態である。しかし、本発明はかかる形態に限定されず、例えば多孔質基材側に上記酸素再結合促進触媒体を形成し、酸素分離膜側に上記酸素イオン透過促進触媒体を形成することにより、酸素分離膜側に酸素含有ガスが供給されるとともに、多孔質基材側で酸素を再結合させる構成の酸素分離膜エレメントを製造することもできる。かかる構成の酸素分離膜エレメントは、上記酸素再結合促進触媒体の構成金属元素を含む金属レジネートを溶解させたレジネート溶液を多孔質基材側に付与することにより容易に製造することができる。
【0047】
本発明により得られた酸素分離膜エレメントは、酸素を好適に分離するための酸素分離装置の基本構成要素として利用されるほか、酸素含有ガスと炭化水素ガスとを隔絶し、酸素を選択的に透過させて炭化水素の部分酸化反応を行うための酸化反応装置(隔膜リアクタ)の構成要素として好適に利用することができる。さらに、本発明に係る方法は燃料電池分野にも適用可能である。例えば、酸素イオン伝導性セラミック体であるジルコニア系酸化物(例えばイットリア安定化ジルコニア;YSZ)からなる緻密な固体電解質(膜)と、多孔質セラミック体(例えばランタンコバルトネート(LaCoO)系のペロブスカイト型酸化物)からなる空気極と、多孔質セラミック体(例えばNiとYSZのサーメット)からなる燃料極とを備える燃料電池(固体酸化物形燃料電池;SOFC)の製造において、空気極に供給された空気(酸素含有ガス)中の酸素を酸素イオンとして固体電解質の空気極側の面から燃料極側の面へ効率よく透過させるために、固体電解質の空気極側表面に空気極触媒が好ましく形成されたSOFCを製造することができる。
【0048】
以下、本発明に関する実施例を図1〜図8を参照しつつ説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0049】
<例1:多孔質基材の作製>
市販の酸化マグネシウム(MgO)粉末(平均粒径約2μm)を、水、バインダ(メチルセルロース)、ワックス等とともにボールミル等で混練し、押出し成形用のスラリー状組成物を調製した。その後、該スラリー状組成物を市販の押出成形機により、円筒形状(図1参照)に成形して乾燥させた後、かかる成形体を大気中にて350℃で2時間程度の仮焼成を行って脱バインダをした後、さらに大気中で1400℃の焼成温度で6時間程度の本焼成を行って、焼結体(多孔質基材)を得た。かかる多孔質基材は、外径が18mm、内径が14mm、高さが1000mmの円筒形状を有しており、一般的な水銀圧入法により測定した該多孔質基材の平均細孔径は約1.2μm、気孔率は35体積%であった。
【0050】
<例2:多孔質基材の前処理>
次に、多孔質基材の細孔内表面への改質効果を評価するべく、触媒体を付与する前処理として、上記例1で得られた多孔質基材に以下の溶液を含浸させた。多孔質基材に含浸させる溶液として以下の4種類の溶液を用意した。
(1)1mol/Lのギ酸水溶液。
(2)1mol/Lの酢酸水溶液。
(3)1mol/Lの硝酸(水溶液)。
(4)1mol/Lの水酸化カリウム水溶液。
上記ギ酸水溶液(溶液(1))を市販の減圧脱泡装置の浸漬容器に収容し、該ギ酸水溶液に上記例1で得られた多孔質基材の一つを浸漬した。その後、上記浸漬容器内を減圧状態にして上記多孔質基材内部に上記ギ酸水溶液を含浸させた。浸漬(含浸)時間は20分間であった。
上記溶液(2)〜(4)についても、上記溶液(1)と同様にして上記多孔質基材にそれぞれ含浸させた。
【0051】
<例3:多孔質基材の含浸処理および触媒体の担持>
上記例1で得られた多孔質基材の内部に触媒体を担持(形成)した。まず、金属レジネートとして、オクチル酸ランタン、オクチル酸ストロンチウム、およびオクチル酸コバルト(全てノリタケ機材株式会社製)を用意した。また、有機溶媒として市販のターピネオールを用意した。上記オクチル酸ランタン、オクチル酸ストロンチウム、およびオクチル酸コバルトの配合比が、Laが0.6モル、Srが0.4モルおよびCoが1モルとなるように上記各金属レジネートを秤量し、かかる配合比でターピネオールに溶解させてレジネート溶液を調製した。このレジネート溶液中に含まれる全金属成分(すなわちLa、SrおよびCo)の割合(金属含有率)は、該レジネート溶液全体の10質量%であった。
次に、上記レジネート溶液を市販の減圧脱泡装置の浸漬容器に収容し、該レジネート溶液に上記例1で得られた多孔質基材を浸漬した。その後、上記浸漬容器内を減圧状態にして上記多孔質基材内部にレジネート溶液を含浸させた(含浸処理)。浸漬(含浸)時間は20分間であった。
また、市販の硝酸ランタン(La(NO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)、硝酸コバルト(Co(NO)を用意し、これらの配合比が、Laが0.6モル、Srが0.4モルおよびCoが1モルとなるように上記各硝酸塩を秤量し、かかる配合比で精製水に溶解させて金属水溶液を調製した。かかる金属水溶液中に含まれる全金属成分(すなわちLa、SrおよびCo)の割合は、該水溶液全体の10質量%であった。この金属水溶液についても、上記レジネート溶液と同様にして上記多孔質基材内部に含浸させた。
上記レジネート溶液または金属水溶液を含浸した多孔質基材を、80℃の乾燥機内で十分に乾燥させた後に、1000℃の焼成温度下で1時間焼き付けを行うことによりLa0.6Sr0.4からなる触媒体を多孔質基材内部に形成(担持)した。
以上、上記例1〜例3を行うことにより、表1に示す計6種類のサンプル1〜6を作製した。なお、表1において、多孔質基材の前処理が「無」とは、上記溶液(1)〜(4)のいずれの溶液にも含浸させる前処理を実施していないことを示す。また、「ギ酸」とは前処理として上記溶液(1)に含浸させたことを示す。同様に「酢酸」は上記溶液(2)、「硝酸」は上記溶液(3)、「水酸化ナトリウム」は上記溶液(4)にそれぞれ含浸させたことを示す。また、「レジネート溶液」とは、触媒体を形成するために多孔質基材に含浸させた溶液が上記レジネート溶液であることを示す。同様に「金属水溶液」とは、触媒体を形成するために含浸させた溶液が上記金属水溶液であることを示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示されるサンプル1〜6のそれぞれについて、各サンプル1〜6の多孔質基材の内部における触媒体がどのような状態で形成されているかを評価するために、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。サンプル1〜6のSEM像を順に図2〜図7に示す。
サンプル1では、図2のSEM像に示されるように、粒状の触媒体が多孔質基材の細孔表面にある程度一様に分散して付着するように形成されていた。サンプル2では、図3に示されるように、触媒体が多孔質基材の細孔表面を一様に被覆するように(膜状に)形成されていた。サンプル3では、図4に示されるように、粒状(または塊状)の触媒体が多孔質基材の細孔表面に偏在していたものの比較的多量に付着していた。サンプル4では、図5に示されるように、粒状の触媒体が多孔質基材の細孔表面に付着していた。サンプル5では、図6に示されるように、粒状の触媒体が多孔質基材の細孔表面上に少量存在していた。サンプル6では、図7に示されるように、かかるSEM像からは多孔質基材の細孔表面には、触媒体がほとんど存在していなかった。
【0054】
<例4:膜エレメント本体の作製>
次に、多孔質基材に酸素分離膜を形成した膜エレメント本体を作製した。まず、上記例1と同様にして、円筒形状の多孔質基材を作製した。次いで、以下のようにしてかかる多孔質基材の外周側面上に酸素分離膜を形成した。すなわち、平均粒径が約1μmの市販のLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末に、適当量の一般的なバインダ(メタクリル酸n−ブチル)と溶媒(キシレン)をそれぞれ添加し、混合して酸素分離膜用スラリーを調製した。次いで、上記例1で作製した多孔質基材の外周側面上に、調製した酸素分離膜用スラリーを塗布した。これを80℃で乾燥後、大気中において1000〜1600℃の温度域(ここでは最高焼成温度:約1400℃)まで昇温し、最高焼成温度で3時間保持して焼成した。酸素分離膜の平均膜厚は100μmであった。以上のようにして、図1に示されるような酸素分離膜エレメント10を構成する膜エレメント本体1であって、多孔質基材12の外周側面に酸素分離膜14が形成された膜エレメント本体1を作製した。
【0055】
<例5:酸素イオン透過促進触媒体の形成>
次に、上記膜エレメント本体1に対して、例2に示されるような前処理を実施せずに、その多孔質基材12の内部に酸素イオン透過促進触媒体を形成した。まず、上記例3で調製したのと同じ金属レジネートを含むレジネート溶液を用意した。そして、上記例3と同様の手順で、上記膜エレメント本体1を上記レジネート溶液に浸漬して減圧脱泡することにより、該レジネート溶液を含浸させた。次いで、かかる膜エレメント本体1を上記例3と同様に80℃の温度条件下で乾燥した。
【0056】
<例6:酸素再結合促進触媒体の形成>
次に、上記膜エレメント本体1の酸素分離膜14上に酸素再結合促進触媒体を形成した。まず、Niイオンを含む水溶液に平均粒径が約1μmのLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末を添加し、分散させることにより、上記La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末の重量に対するNiの重量比が10質量%となる分散液を調製した。この分散液を上記膜エレメント本体1の酸素分離膜14上に所定の膜厚で塗布し、80℃の温度条件下で乾燥した。そして、かかる膜エレメント本体1を1000℃の焼成温度で1時間焼成した。
以上のような工程を経ることにより、多孔質基材12の内部にはLa0.6Sr0.4からなる酸素イオン透過促進触媒体が形成(担持)され、且つ酸素分離膜14上にはLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末を担体としてNiが担持された形態の酸素再結合促進触媒体が形成されてなる酸素分離膜エレメント10(図1参照)を製造した。この酸素分離膜エレメントをサンプル11とした。
【0057】
次に、上記例4と同様にして膜エレメント本体1を作製した。次いで、上記例2と同様にして、1mol/Lのギ酸水溶液(上記溶液(1))を調製し、かかる溶液(1)に上記得られた膜エレメント本体1を20分間浸漬して減圧脱泡することにより、前処理を実施した。それ以降の酸素イオン透過促進触媒体および酸素再結合促進触媒体の形成工程については、上記サンプル11と同様にして行い、酸素分離膜エレメントを作製した。これをサンプル12とした。
また、上記溶液(1)の代わりに、1mol/Lの酢酸水溶液(上記溶液(2))を用いて前処理を実施する以外は、上記サンプル12と同様にして酸素分離膜エレメントを作製した。これをサンプル13とした。
また、上記溶液(1)の代わりに、1mol/Lの硝酸水溶液(上記溶液(3))を用いて前処理を実施する以外は、上記サンプル12と同様にして酸素分離膜エレメントを作製した。これをサンプル14とした。
また、上記溶液(1)の代わりに、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(上記溶液(4))を用いて前処理を実施する以外は、上記サンプル12と同様にして酸素分離膜エレメントを作製した。これをサンプル15とした。
また、上記例5において膜エレメント本体に含浸させるレジネート溶液の代わりに上記例3に示される金属水溶液を用いること以外は、上記サンプル11と同様にして酸素分離膜エレメントを作製した。これをサンプル16とした。
以上のようにして、酸素分離膜エレメントとしてのサンプル11〜16を作製した。
【0058】
<例7:酸素分離膜の酸素透過性能評価>
上記のようにして得られたサンプル11〜16(すなわち図1に示されるような構成の酸素分離膜エレメント10)における酸素透過性能を以下のようにして評価した。かかる評価には、図8に示される構成の評価装置20を用いた。以下、図8を参照しつつかかる評価方法について説明する。
酸素透過性能評価装置20は、上記管(円筒)状の酸素分離膜エレメント10を組み込んで構築される。当該装置20は、例えば温度制御可能な恒温槽(図示せず)内に配置された容器22と、該容器22内に配置された上記酸素分離膜エレメント10とを主要構成部とする装置である。図8に示されるように、上記容器22は、その内部に配置された管状の酸素分離膜エレメント10の外周側面の外側を取り囲む空間(外部ガス通路)22aと、上記酸素分離膜エレメント10における多孔質基材12の内周側面で構成される空間(内部ガス通路)22bとの二重管構造となっている。また、上記外部ガス通路22aには外部ガス供給口24と外部ガス排出口25が設けられているとともに、上記内部ガス通路22bの両端には内部ガス供給口26と内部ガス排出口27とが設けられている。これにより、上記酸素透過性能評価装置20では、外部のガス供給源(図示せず)から外部ガス通路22aと内部ガス通路22bのそれぞれに別個独立してガスを供給することができる。また、外部ガス通路22aから排出されるガスと内部ガス通路22bから排出されるガスとを別々に回収することができる。外部ガス排出口25の下流には、図示しないTCD検出器を備えたガスクロマトグラフが装備されている。
本実施例では、酸素含有ガスとして空気を内部ガス供給口26から供給し、内部ガス通路22bを流通させることにより、その過程で空気を酸素分離膜エレメント10の内周側面(すなわち多孔質基材12)に接触させて、該空気の一部を上記多孔質基材12およびその外周側面の酸素分離膜14を透過させるとともに、透過しなかった残りの空気は内部ガス排出口27から排出させる。また、酸素分離膜14を透過した酸素イオンと反応して酸化されるガスとしてメタン(CH)ガスを外部ガス供給口24から供給し、外部ガス通路22aを流通させて外部ガス排出口25から排出させる。ここで、内部ガス通路22bから上記酸素分離膜エレメント10(における多孔質基材12および酸素分離膜14)を透過して外部ガス通路22aへ流入し得るガス成分(すなわち上記空気中の酸素ガス)は、上記メタンガスと共に外部ガス排出口25から排出されて、上記ガスクロマトグラフへと流れる。
【0059】
酸素透過性能評価試験は以下の通りで行った。まず、上記例4〜例6により得られたサンプル11(酸素分離膜エレメント10)を上記評価装置20の容器22内にセットした。そして容器22内の温度を800℃に維持した。そして、上記空気を内部ガス供給口26から内部ガス通路22b内に100mL/分の流速で供給した。また、上記メタンガスを外部ガス供給口24から外部ガス通路22a内に100mL/分の流速で供給した。上記酸素分離膜エレメント10を透過して内部ガス通路22bから外部ガス通路22aに流入し得る酸素ガスと上記メタンガスとを外部ガス排出口25から排出させ、この排出ガスの組成を上記ガスクロマトグラフで分析し、上記酸素ガスの透過速度を測定した。また、上記容器22内の温度を900℃、1000℃に変えたときの酸素ガスの透過速度を測定した。サンプル12〜16についても上記サンプル11と同様にして測定した。その結果を表2に示した。
【0060】
【表2】

【0061】
表2に示されるように、すべてのサンプル11〜16において、上記800℃〜1000℃の温度範囲の下では温度が上昇するにつれて酸素透過速度が上昇しており、酸素透過性能が向上することが確認された。
また、上記800℃、900℃および1000℃のいずれの温度条件下においても、上記レジネート溶液を用いて酸素イオン透過促進触媒体を形成したサンプル11〜15は全て2mL/分/cm以上の酸素透過速度を有しており、上記金属水溶液を用いて上記触媒体を形成したサンプル16の酸素透過速度に比べて1mL/分/cm以上の差で上回った。このことにより、上記含浸されたレジネート溶液中の金属レジネート同士が反応して多孔質基材の内部で酸素イオン透過促進触媒体として機能し得るペロブスカイト型酸化物を好ましく形成したことが示されたといえる。
また、サンプル11〜15の中では、前処理としてカルボン酸水溶液を含浸させたサンプル12およびサンプル13の酸素透過速度が、無機酸である硝酸およびアルカリ性の水酸化カリウム水溶液を含浸させたサンプル14およびサンプル15の酸素透過速度が上回った。また、前処理を実施しなかったサンプル11の酸素透過速度は、上記サンプル14およびサンプル15の酸素透過速度を上回った。このことにより、無機酸およびアルカリでの前処理は、前処理を実施しない場合に比べて酸素透過性能を低下させ得るが、カルボン酸を用いた前処理は、前処理を実施しない場合に比べて酸素透過性能を向上させ得ることがわかった。さらにカルボン酸を用いた前処理を実施したサンプル12およびサンプル13では、ギ酸を用いたサンプル12の方が酢酸を用いたサンプル13よりも酸素透過速度が上昇し、酸素透過性能が向上し得ることがわかった。
【0062】
<例8:前処理で用いるギ酸の濃度と酸素透過性能との相関性評価>
次に、上記サンプル12と同様に、上記例4〜例6に従ってギ酸水溶液で前処理した後に酸素イオン透過促進触媒体および酸素再結合促進触媒体を形成させて酸素分離膜エレメントを作製した。ここで、前処理に用いたギ酸水溶液の濃度がそれぞれ異なる4種類のサンプル21〜24を作製した。サンプル21〜24とそれに対応するギ酸水溶液の濃度との対応を表3に示した。
上記サンプル21〜24のそれぞれについて、上記例7と同様に酸素透過速度を測定することにより酸素透過性能を評価した。なお、かかる評価は上記評価装置20における容器22内の温度が1000℃である条件で実施した。その結果を表3に示した。
【0063】
【表3】

【0064】
表3に示されるように、前処理で用いたギ酸水溶液の濃度が0.1mol/L〜1.5mol/Lの範囲内では、いずれのサンプル21〜24の酸素透過速度は2mL/分/cm以上となり良好な結果が得られた。また、かかるギ酸水溶液濃度が0.5mol/L以上のサンプル22〜24では、酸素透過速度が3mL/分/cm以上となってより優れた酸素透過性能を有することがわかった。特に、かかるギ酸水溶液濃度が0.5mol/L以上1.5mol/L未満であるサンプル22およびサンプル23では、酸素透過速度が3.6mL/分/cmを上回り、さらに良好な酸素透過性能を発揮し得ることが確認された。
また、上記例1〜例7の実施例では、上記レジネート溶液中の金属成分の含有率が該溶液全体の10質量%となるような濃度で金属レジネートが溶解したレジネート溶液を使用したが、かかる含有率が1質量%〜30質量%であるレジネート溶液を用いて上記と同様の評価を行ったところ、金属水溶液を用いる場合よりも良好に触媒体を多孔質基材の内部に形成させることができることが分かった。
したがって、以上の結果より、本実施例において製造された酸素分離膜エレメントにおいて、担持したい触媒体を構成する金属元素を構成元素とする金属レジネートを有機溶剤に溶解させてなるレジネート溶液を膜エレメント本体に含浸させることは、触媒体として機能し得る化合物(ここではペロブスカイト型酸化物)を多孔質基材の内部に良好に形成させることができ、特に、前処理としてカルボン酸溶液(特にギ酸溶液)を含浸させることは上記触媒体の良好な形成に非常に有効であることが分かった。したがって、ここで開示される酸素分離膜エレメントの製造方法であってレジネート溶液を含浸する工程(好ましくは前処理としてカルボン酸溶液を含浸させる工程をさらに含む)を包含する製造方法は、酸素透過性能が向上した優れた酸素分離膜エレメントを実現する方法として好ましいことがわかった。
【0065】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、さらに別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加えうるものである。
【符号の説明】
【0066】
1 膜エレメント本体
10 酸素分離膜エレメント
12 多孔質基材
14 酸素分離膜
20 酸素透過性能評価装置
22 容器
22a 外部ガス通路
22b 内部ガス通路
24 外部ガス供給口
25 外部ガス排出口
26 内部ガス供給口
27 内部ガス排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素イオン伝導性セラミック体からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜の少なくとも一方の側の表面に形成されて該酸素分離膜を支持するセラミック製の多孔質基材と、該多孔質基材の内部および/または該基材側の前記酸素分離膜表面に形成された少なくとも1種の金属元素から構成される触媒体とを備える酸素分離膜エレメントを製造する方法であって、
前記酸素分離膜と前記多孔質基材とからなる膜エレメント本体を用意すること、
前記金属元素を構成元素とする少なくとも1種の金属レジネートを有機溶剤に溶解させてなるレジネート溶液を用意し、該レジネート溶液を前記多孔質基材内に含浸させること、および
前記レジネート溶液が含浸した前記膜エレメント本体を焼成することにより前記触媒体を形成すること、
を包含する、酸素分離膜エレメントの製造方法。
【請求項2】
前記レジネート溶液を含浸させる前に、用意したカルボン酸溶液を前記膜エレメント本体に含浸させることをさらに包含する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸としてギ酸を用いる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質基材として、少なくとも酸化マグネシウムおよび/または酸化カルシウムを含む材料からなる多孔質体を用いる、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記レジネート溶液は、
前記触媒体として、一般式:
La1−xMO3−δ (1)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成される触媒体が得られる組成となるように、調製されている、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記触媒体は、前記一般式(1)のMを構成する元素として、Co、Fe、Ni、Ti、およびMnからなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記金属レジネートとして、少なくとも前記金属元素のオクチル酸塩を用いる、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記レジネート溶液には、該溶液全体の1質量%〜30質量%の割合で前記金属元素が含まれている、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の方法により製造された酸素分離膜エレメントであって、酸素イオン伝導性セラミック体からなる酸素分離膜と、該酸素分離膜の少なくとも一方の側の表面に形成されて該酸素分離膜を支持するセラミック製の多孔質基材と、該多孔質基材の内部および/または該基材側の前記酸素分離膜表面に形成された少なくとも1種の金属元素から構成される触媒体とを備える酸素分離膜エレメント。
【請求項10】
請求項9に記載の酸素分離膜エレメントであって、
前記セラミック製多孔質基材の内部および/または該基材側の前記酸素分離膜表面に形成された触媒体として、一般式:
La1−xMO3−δ (1)
(ただし、Aは、Sr、BaおよびCaからなる群から選択される1種または2種以上の元素であり、Mは、ペロブスカイト型構造を構成し得る1種または2種以上の金属元素であり、0≦x≦1であり、δは電荷中性条件を満たすように定まる値である。)で表わされるペロブスカイト型酸化物から構成される触媒体を備える酸素分離膜エレメント。
【請求項11】
前記一般式(1)のMを構成する元素として、Co、Fe、Ni、Ti、およびMnからなる群から選択される1種または2種以上を含む、請求項10に記載の酸素分離膜エレメント。

【図1】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−16093(P2011−16093A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163122(P2009−163122)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【Fターム(参考)】