説明

酸素吸収組成物

【課題】 アルミニウム単位質量あたりの酸素吸収能を大幅に向上できると共に、副反応としての水素が発生しにくい酸素吸収組成物を提案する。
【解決手段】 金属アルミニウム単位と、アルミニウム化合物単位と、銀または銀化合物の単位とをそれぞれ含有することを特徴とする酸素吸収組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の包装時に同梱等され、内容物の酸化劣化を防止できる酸素吸収組成物等に関する。特に、アルミニウムを酸素吸収の主剤とする酸素吸収組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装体に小袋同梱等の形態で用いることで、包装体内部を無酸素状態に保ち、保存中の内容物の酸化劣化による変色、退色、味の変化やその他の性能変化等を防止できる酸素吸収剤が、近年多用されている。これらの酸素吸収剤は、例えば、鉄粉やシリコン微粉等の無機系酸素吸収組成物を主剤としたものや、アスコルビン酸や不飽和脂肪酸等の有機系酸素吸収組成物を主剤としたものが多い。
【0003】
ところで、アルミニウムは、鉄とは異なり磁気による金属検出器には検知されないため、アルミニウムを主体とした酸素吸収剤は、食品と共に密封したあとに食品の異物混入検査が可能となる利点を有する。また、アルミニウムは比較的安価で、一般に包装材料として多用されるアルミ箔やアルミ蒸着フィルムと同素材であるためゴミの分別廃棄が容易(易廃棄性)であるという利点も有する。さらに、酸素との反応活性も高い。これらのため、アルミニウムを酸素吸収剤の主剤として用いる提案もなされている。
【0004】
しかし、アルミニウムは酸化により表面に緻密な酸化被膜を形成し、この酸化被膜は酸素や水の透過性が低いことがよく知られている。つまり、酸素吸収が表面だけに限定される。そのため、アルミニウムに塩化ナトリウム等の塩類を加えたり(例えば、特許文献1参照)、アルミニウムとアルカリ金属酸化物および/又はアルカリ土類金属との混合物としたりすることで(例えば、特許文献2参照)、アルミニウムの酸素吸収量をわずかでも増加させようとする試みがなされてきた。しかし、いずれの場合も酸素吸収量は同当量の鉄と比較しても微々たるものにすぎず、アルミニウム粒子の形状や性状も酸素吸収の前後でほとんど変化がない。そのため、アルミニウムを主剤とする酸素吸収剤の実用化にはほど遠いのが実情である。
【0005】
また、アルミニウムの酸化は主に水の共存下において生じるため、アルミニウムを主剤とする酸素吸収剤では、アルミニウムが、有酸素状態での水素が発生する副反応にも消費されてしまい、アルミニウムの利用効率が低下するという問題点があった。
【特許文献1】特開平3−137935号公報
【特許文献2】特開平9−117660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アルミニウムの単位質量あたりの酸素吸収能を大幅に向上できると共に、使用中に水素が発生しにくい酸素吸収組成物を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の第1は、金属アルミニウム単位と、アルミニウム化合物単位と、銀または銀化合物の単位とをそれぞれ含有することを特徴とする酸素吸収組成物である。ここで、前記のアルミニウム化合物が、アルミニウム酸化物であることは好ましい。また、前記のアルミニウム酸化物が、γ−アルミナであることは好ましい。また、前記のアルミニウム酸化物が、ベーマイトであることは好ましい。また、前記の銀化合物が、酸化銀または硝酸銀であることは好ましい。
【0008】
発明の第2は、前記のいずれかの酸素吸収組成物を、酸素透過可能に包含してなる酸素吸収剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸素吸収組成物等は、高い酸素吸収能を有する。条件によっては、アルミニウムの理論吸収量の上限値に近づく値を得ることも可能となる。そのため、少ない金属量で必要な酸素吸収能を得ることができる。一方で、酸素吸収中の副反応による水素発生量が低減され、金属アルミニウムの酸素吸収への利用率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。酸素吸収組成物は、金属アルミニウム単位と、アルミニウム化合物単位と、銀または銀化合物の単位とをそれぞれ含有してなる混合物である。ここで単位とは、これら3種類の物質のそれぞれが、互いに独立した形態をなしていることを意味する。つまり、酸素吸収組成物は、これら少なくとも3種類の単位の混合によって構成される。
【0011】
酸素吸収組成物に含まれる金属アルミニウム単位は、酸素吸収の主剤であり、酸素分子と接触することにより酸化されて、結果的に酸素ガスを吸収する役割を担っている。金属アルミニウムは、表面に酸化被膜が生成されていないものでもよいが、製造時に空気中の酸素に触れて表面に薄い酸化被膜が自然に生じたものをそのまま用いてもよい。また、金属アルミニウムに含まれる他の金属等の不純物は、むしろ酸素吸収の妨げになる傾向があるので、アルミニウム純度は高い方がよい。望ましくは95質量%以上、より望ましくは99質量%以上である。
【0012】
金属アルミニウム単位の形態は特に制限されないが、質量の割に表面積が広くなる形態が望ましく、例えば、箔状、繊維状、粒子状、微粒子状、粉体状等とするのが望ましい。また、粒子や粉体等が集合した塊状のものでもよい。酸素吸収速度を大きくするには、金属アルミニウム1gあたりの表面積が広い形態が望ましいが、一定期間にわたって酸素吸収を安定して持続させる観点からは、表面に直接現れない体積部分も確保しておくことが望ましい。製造の容易さの観点も加味すると、微粒子状とするのが望ましい。具体的には、アルミニウム粒子の平均粒径は、0.1μm以上1000μm以下とするのが好ましく、より好ましくは1μm以上300μm以下である。特に好ましくは3μm以上100μm以下である。
【0013】
金属アルミニウム単位の形態を粒子状、微粒子状、粉体状等とする場合、個々の金属アルミニウム粒子の形状は、球状、涙滴状、燐片状、針状、不定形のいずれでも良く、吸収速度、持続時間、使用アルミ量、製造の容易さ等を考慮して適宜選択すればよい。
【0014】
このような金属アルミニウム単位は、通常のアトマイズ法や破砕法等の各種の常法で得ることができる。また、金属アルミニウム単位には、反応活性をより向上させる目的で、酸やアルカリ、表面処理剤等による前処理を行ってもよいが、行わなくとも良い。
【0015】
金属アルミニウム単位は、後述するアルミニウム化合物(及び水分)の共存下における酸素吸収によって、全く意外にも、表面だけではなく金属アルミニウムの内部に至るまでほぼ完全に酸化されうる。そのため、当初の金属アルミニウム単位が一定の平均粒径を有する球形粒子だったとしても、十分な酸素吸収後は、ほぼ全体が、鉄の赤さびに類似した酸化アルミニウム粉体の集合物に変化する。この集合物は容易に崩れやすく、元の形状を留めることが困難である。従って、アルミニウム当量から計算した酸素吸収の理論値(上限値)に近いところまで酸化を生ぜしめることも可能であり、酸素吸収能が大幅に向上する。
【0016】
このような意外な現象が生じる原因は不明であるが、共存するアルミニウム化合物単位のなんらかの作用により、金属アルミニウム単位の表面酸化被膜が破壊されると共に、新たな被膜形成が阻害されているのではないかと推測している。
【0017】
次に、酸素吸収組成物のアルミニウム化合物単位について説明する。アルミニウム化合物単位は、上記の通り、金属アルミニウム単位の酸化促進剤であり、水分との共存下で金属アルミニウム単位を表面のみならず内部まで酸化せしめる作用を有する。ここにいうアルミニウム化合物とは、アルミニウム元素と、アルミニウム元素等に結合しているその他の元素との質量比率が、1:9〜8:2の範囲内のものである。この範囲内で酸素吸収組成物としたときの酸素吸収能が高くなる。より好ましくは2:8〜7:3である。さらに好ましくは3:7〜6:4であり、最も好ましくは3:7〜5.5:4.5である。アルミニウム化合物におけるアルミニウムの酸化数は1、2、3のいずれでも良いが、酸化数3のものが好ましい。
【0018】
好適なアルミニウム化合物としては、アルミニウムの酸化物、水酸化物、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物、酢酸塩等が挙げられ、中でも、酸化物または水酸化物が好ましい。
【0019】
アルミニウムの酸化物または水酸化物としては、α−アルミナ、γ−アルミナ、η−アルミナ、δ−アルミナ、k−アルミナ、ρ−アルミナ等の無水アルミニウム化合物や、Al(OH)3またはAl23・3H2Oで表されるギブサイト、パイヤライト、ノルストランダイト等のアルミニウム化合物の3水和物や、AlO(OH)またはAl23・H2Oで表されるべーマイト、ダイアスボア等のアルミニウム化合物の1水和物や、さらにトーダイト(5Al2a・H2O)や、アルミナゲル(Al23・nH2O)等の単体やこれらを1種以上含む混合物が拳げられる。
【0020】
酸素吸収速度を大きくするには、無水酸化物の中ではγ−アルミナが好ましく、水和物の中では1水和物が好ましい。アルミニウム酸化物は、水和物とするのがより好ましく、最も好ましくはベーマイトである。
【0021】
また、アルミニウム化合物には、酸素吸収速度をより大きくするために、アルミニウム以外の元素としてイオン化傾向の高い金属元素を1種以上含んでいてよい。イオン化傾向が高い金属元素としては、例えば、カリウム、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、クロム、マンガン、鉄(II)等が挙げられる。
【0022】
アルミニウム化合物単位の形態は特に制限されないが、金属アルミニウム単位の表面との接触点が生じやすいように、表面積が大きく分散性が高い形態とするのがよい。例えば、繊維状、粒子状、微粒子状、粉体状等が挙げられ、さらに、粒子形状としては、球状、針状、燐片状、不定形状等が拳げられる。粒子形状とする場合の平均粒径は、0.01μm以上1000μm以下とするのが好ましく、より好ましくは0.05μm以上100μm以下である。特に好ましくは0.1μm以上10μm以下である。
【0023】
アルミニウム化合物単位は、金属アルミニウム単位との接触性を確保するために、アルミニウム化合物単位1gあたりの比表面積が1m2/g以上であることが好ましく、10m2/g以上であることがより好ましい。特に好ましくは50m2/g以上である。
【0024】
なお、アルミニウム化合物単位は、その1gを100ccの水に分散させたときのpHが、3〜11となるものであることが好ましい。このようなpHを示すように組成を調整したアルミニウム化合物単位を選択することで、アルミニウムと酸素との反応の副反応である水素発生反応がある程度は抑制される。より好ましくは4〜9である。
【0025】
アルミニウム化合物単位の製造は常法に従って行えばよく、例えば、乾式または湿式の化学反応を経て、必要により乾燥処理、焼成処理、精製処理、粉砕処理等を行って製造することができる。
【0026】
金属アルミニウム単位とアルミニウム化合物単位とを混合する質量比率は、1:99〜99:1の範囲で定めることができる。金属アルミニウム単位の比率が大きい場合は、吸収できる酸素量は多くなるが、一方で酸素吸収速度は小さくなり、特に吸収初期の吸収速度が小さくなる。アルミニウム化合物単位の比率が大きい場合はこの逆となる。混合する質量比率は、金属アルミニウム単位の表面積なども考慮しながら酸素吸収剤に求められるスペックに応じて適宜定めればよいが、通常、金属アルミニウム単位とアルミニウム化合物単位の質量比率は、30:70〜70:30程度とするのが好ましい。
【0027】
なお、アルミニウム化合物単位と水の共存下における金属アルミニウム単位の内部までの酸化作用は、金属アルミニウム単位とアルミニウム化合物単位とを薬さじで軽く混合するだけでも生じる。従って、金属アルミニウム単位の表面酸化被膜の破壊は、混合時の機械的作用によるものではないと考えられる。
【0028】
次に、酸素吸収組成物の銀または銀化合物の単位について説明する。銀または銀化合物の単位は、そのメカニズムは不明であるが水素発生の好適な抑制剤として作用し、金属アルミニウム単位の酸化反応の際の副反応による水素発生を効果的に抑制する。特に、アルミニウム化合物単位によって金属アルミニウム単位の反応性が高められているため、銀または銀化合物の単位の水素発生抑制作用がより重要となる。
【0029】
銀は通常の金属銀を意味するが、銀以外の金属が合金として混合していても良い。水素発生抑制剤として十分に作用するためには、銀の含有量が50質量%以上であることが好ましい。銀の含有量は80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0030】
銀化合物は、銀元素と他の元素とが共有結合またはイオン結合で結合した物質であればよく、例えば、硝酸塩、フッ化物、塩素酸塩、化塩素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、酸化物、硫化物、リン酸塩、フルオロ錯体、ポルフィリン銀錯体等が挙げられる。銀化合物における銀の酸化数は1〜3のいずれでも良い。好ましい銀化合物は、酸化銀または硝酸銀であり、より好ましい銀化合物は酸化銀である。銀化合物における銀元素の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0031】
銀または銀化合物の単位の形態は特に制限されないが、金属アルミニウム単位の表面との接触点が生じやすいように、表面積が大きく分散性が高い形態とするのがよい。銀単位の形態としては、例えば、銀線状、繊維状、粒子状、微粒子状、粉体状等が挙げられ、粒子形状としては、球状、針状、燐片状、不定形状等が拳げられる。銀単位の粒子形状の平均粒径は、1μm以上1000μm以下とするのが好ましく、より好ましくは5μm以上300μm以下である。特に好ましくは10μm以上100μm以下である。
【0032】
銀化合物単位の形態としては、粉末状や不定形状、または多数の粉体や微粒子が集合した球状や不定形状さらには液状等が拳げられる。銀化合物単位の平均粒径は、0.1μm以上1000μm以下とするのが好ましく、より好ましくは0.5μm以上300μm以下である。特に好ましくは1μm以上100μm以下である。
【0033】
銀単位は、常法に従ってアトマイズ法や破砕法等で製造することができる。また、銀化合物単位は、常法に従って水系または有機系における化学反応を経たのち、必要により造粒しながら乾燥処理等する方法により製造することができる。
【0034】
また、酸素吸収組成物として混合する際の、金属アルミニウム単位と銀または銀化合物の単位との質量比率は、10000:1〜10:1とすることが好ましく、より好ましくは5000:1〜50:1、さらに好ましくは1000:1〜100:1である。
【0035】
酸素吸収組成物には、酸素吸収組成物の用途に合わせて、金属アルミニウム単位の酸素吸収反応に化学量論的に必要な量の水分をあらかじめ添加するようにしても良い。添加の方法としては、水をそのまま直接添加してもよいし、保水剤や担体に担持等させて添加してもよい。また、銀化合物が溶解した水溶液として添加してもよい。
【0036】
水を直接添加する場合は、特定成分の凝集等の不均一性が生じないようにするために、まず、いずれかの成分、例えばアルミニウム化合物単位を水に分散させた後、分散液をよく攪拌しながら金属アルミニウム単位を添加するなどの方法をとればよい。
【0037】
保水剤は、親水性で自重より多い水分を保持してゾルやゲルを構成できる公知の増粘剤やゲル化剤であり、例えば、ポリアクリル酸塩のような合成高分子やカラギーナンのような多糖類等を挙げることができ、特に制限されない。
【0038】
担体としては、脱脂綿や不織布等の保水性のある繊維製品や、活性炭やゼオライト、珪藻土、活性白土、シリカ、タルク、石膏、ケイ酸カルシウム、塩化カルシウム、黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ等の無機粉末あるいは無機粒状物が挙げられ、特に制限されない。保水剤や担体は一種を用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0039】
なお、酸素吸収組成物には必ずしも水分を添加せず、酸素吸収組成物と一緒に包装される食品等の被包装物から分離した水分や、包装袋の包装時に袋内に残存する空気内の水蒸気や、包装後に包装袋を透過して袋内に侵入してくる水蒸気を利用して、酸素吸収反応させるようにしても良い。
【0040】
酸素吸収組成物には、本発明の効果を損ねない限りにおいて、電子レンジのスパーク防止剤やその他の添加剤を添加してもよい。
【0041】
酸素吸収組成物は、上記の各成分を所定の比率で混合し、攪拌して均一化することにより得られる。均一化にあたっては、金属アルミニウム単位やアルミニウム化合物単位等を同時に粉砕しながら攪拌しても良い。混合及び均一化処理は、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスや炭酸ガス等を用いた無酸素雰囲気下で行うことが望ましい。酸素吸収性能の点から特に好ましいのは炭酸ガスである。
【0042】
酸素吸収組成物は、公知のようにそのまま酸素透過性の紙製小袋に封入して、酸素吸収剤として包装体内に同梱することができる。酸素吸収組成物は、酸素吸収能が比較的高いため、少ない量で必要な酸素吸収機能を果たすことができる。そのため、その他の形態の酸素吸収剤に加工して使用するのに適している。例えば、紙製造時にバインダーと共に混ぜ込んだり、酸素透過性の樹脂を用いた樹脂ペレットや樹脂シートの製造時に練り込んだりしてもよい。また、紙や樹脂シート間に、バインダーにより加工された酸素吸収組成物の層を挟み込んで、多層構造のシートやフィルムとすることができ、さらには包装体のトレーや蓋に加工してもよい。この場合、包装体の少なくとも内面部分のシートやフィルムは酸素透過性のものを用いる。包装体の外面部分のシートやフィルムは、酸素が透過しにくいものを用いるのが望ましい。必要によりシートやフィルムを水分透過性または水分不透過性とするのは任意である。
[実施例]
【0043】
以下、本発明について実施例等を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、下記実施例の具体的態様に限定されるものではない。なお、実施例等における各種物性の測定方法および評価方法は次の通りである。
(1)酸素吸収量(VOS)と水素発生量(VHG
【0044】
室温(20℃)環境下において、初期容量1000ccの保存密閉容器(本体と蓋の材質はPMMA(アクリル)、蓋パッキンはシリコンで、容器内圧が一定になるように容積可変のもの)を用意した。この容器内に、所定量の酸素吸収組成物を大気圧下で封入後、20℃雰囲気下に4時間放置した。酸素吸収組成物の投入前および、投入から4時間経過後の容器内の酸素ガス濃度及び水素ガス濃度を測定した。
【0045】
なお、酸素濃度は、コンパクト酸素分析計(愛知産業株式会社製、商品名:モデル1100BE、センサー:MAX250E)により測定した。また、水素濃度は、気中・溶存水素測定装置(エイブル株式会社、商品名:DM−10B2)により測定した。次いで、4時間経過時点における酸素吸収量を、下記式(a)により算出した。
【0046】
OS={(CO2,0/100)×V0−(CO2,t/100)×Vt}/x ・・・(a)
((a)式において、VOSは測定開始から4時間経過時までの金属アルミニウム1gあたりの酸素吸収量(cc/g)、CO2,tは4時間経過時の容器内酸素濃度(vol.%)、CO2,0は酸素吸収組成物投入前の容器内酸素濃度(vol.%)、V0は容器の初期容積(=1000cc)、Vtは保存容器の4時間経過時における容積(cc)、xは酸素吸収性組成物1gあたりに含まれる金属アルミニウムの重量(g)、をそれぞれ意味する。)
【0047】
得られた酸素吸収量(VOS)の評価を、以下の判断基準で行った。
・銀または銀化合物の単位を含めない場合(比較例1)に比して、酸素吸収量が110%以上である・・・優れている(記号「◎」で表示)。
・銀または銀化合物の単位を含めない場合(比較例1)に比して、酸素吸収量が70%以上110%未満の範囲内である・・・良好である(記号「○」で表示)。
・銀または銀化合物の単位を含めない場合(比較例1)に比して、酸素吸収量が70%未満である・・・不良である(記号「×」で表示)。
また、測定開始から4時間経過時の水素発生量(VHG)は下記式(b)により算出した。
HG=(CH2,t/100)×Vt ・・・(b)
((b)式において、VHGは測定開始から4時間経過時(測定時)までの金属アルミニウム1gあたりの水素発生量(cc/g)、CH2,tは4時間経過時における容器内水素濃度(vol.%)、Vtは保存容器の4時間経過時における容積(cc)、をそれぞれ意味する。)
得られた水素発生量(VHG)の評価を、以下の判断基準で行った。
・銀または銀化合物の単位を含めない場合(下記基準例1)に比して、水素発生量が25%未満である・・・優れている(記号「◎」で表示)。
・銀または銀化合物の単位を含めない場合(基準例1)に比して、水素発生量が25%以上40%未満である・・・良好である(記号「○」で表示)。
・銀または銀化合物の単位を含めない場合(基準例1)に比して、水素発生量が減少しているものの40%以上である・・・不十分である(記号「△」で表示)。
(2)分散液pH
【0048】
アルミニウム化合物単位1gを100ccの水に浸漬し、ガラス棒でよく攪拌して分散した後、この分散液のpHをpH計(新電元工業株式会社製、商品名:Shindengen ISFET pH計KS723)を使用して測定した。
[基準例1]
【0049】
金属アルミニウム単位としてアルミニウム粉末0.5g(エカ・グラニュラージャパン株式会社製、グレード名8F02A、粒度8μm、純度99.7%のもの)と、アルミニウム化合物単位としてベーマイト粉末1.0g(大明化学株式会社製、グレード名AE−001、粒径0.2μm、純度99.9%、分散液pH8.7のもの)と、純水1.5gとを混合し、薬さじで攪拌して均一な基準試料を作成した。これを用いて、酸素吸収量(VOS)と水素発生量(VHG)とを測定したところ、4時間経過時点で酸素吸収量(VOS)は208.0ccと良好であったが、水素発生量(VHG)も592.4ccと大きいものであった。
【実施例1】
【0050】
基準例1で作成した基準試料の組成に、さらに、銀化合物単位としてAgO粉末0.01g(和光純薬工業株式会社製、粒径2.6μm、純度98%のもの)を加えた以外は、基準例1と同様にして均一な酸素吸収組成物の試料を作成した。これを用いて、酸素吸収量(VOS)と水素発生量(VHG)とを測定した。
【0051】
酸素の吸収量は、4時間経過時点で272cc/gと基準例より増加していた。金属アルミニウムの合計当量数から求めた理論酸素吸収量(上限値)が約620cc/gであることを考慮すると、酸化がアルミニウム表面に留まらず、明らかに粒子内部にまで進行していることがわかる。また、経時変化をたどると、4時間経過時でもまだ酸素吸収反応が続いていることがわかった。一方、水素発生量は、4時間経過時点で85cc/gにすぎず、アルミニウムの多くが酸素吸収に利用されたことがわかる。また、水素発生の経時変化をたどると、反応当初は水素が増加するが、1、2時間程度で水素濃度が平衡状態に達する、つまり、水素発生は短時間でほとんど停止してしまい、効果的に抑制されていることがわかった。また、4時間経過後の金属アルミニウム粉末の粒子を顕微鏡で目視観察したところ、元の滑らかな金属表面が失われ、鉄の赤さびの状態に酷似した不規則形状に変化していた。測定値の評価結果を表1に示す。
【実施例2】
【0052】
AgO粉末に代えて、銀化合物単位としてAg2O粉末0.1g(和光純薬工業株式会社製、粒径5.3μm、純度99%のもの)を用い、純水の量を1.5gから1.6gに増やした以外は実施例1と同様にして酸素吸収組成物の試料を作成した。これを用いて実施例1と同様にして酸素吸収量と水素発生量とを評価した。結果を表1に示した。酸素吸収能と水素発生量はいずれも優れた結果を示した。
【実施例3】
【0053】
AgO粉末に代えて、銀単位としてAg粉末0.1g(和光純薬工業株式会社製、粒径23.3μm、純度99%のもの)を用いた以外は、実施例1と同様にして酸素吸収材組成物の試料を作成し、これを用いて実施例1と同様にして酸素吸収量と水素発生量とを評価した。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0054】
AgO粉末に代えて、銀化合物単位として1モル/lの硝酸銀溶液を用い、固形分としての硝酸銀が0.02gとなるように添加し、硝酸銀溶液からきた水0.1gに加えて純水1.4gを添加した以外は、実施例1と同様にして酸素吸収材組成物の試料を作成し、これを用いて実施例1と同様にして酸素吸収量と水素発生量とを評価した。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アルミニウム単位と、アルミニウム化合物単位と、銀または銀化合物の単位とをそれぞれ含有することを特徴とする酸素吸収組成物。
【請求項2】
前記のアルミニウム化合物が、アルミニウム酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の酸素吸収組成物。
【請求項3】
前記のアルミニウム酸化物が、γ−アルミナであることを特徴とする請求項2に記載の酸素吸収組成物。
【請求項4】
前記のアルミニウム酸化物が、ベーマイトであることを特徴とする請求項2または3に記載の酸素吸収組成物。
【請求項5】
前記の銀化合物が、酸化銀または硝酸銀であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の酸素吸収組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の酸素吸収組成物を、酸素透過可能に包含してなる酸素吸収剤。

【公開番号】特開2007−60906(P2007−60906A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−247067(P2005−247067)
【出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】