酸素運搬体用収容体
【課題】酸素運搬体を生体内へ投与する際に収容体の内部でのヘモグロビンのメト化を抑制できる酸素運搬体用収容体を提供する。
【解決手段】ヘモグロビンを含む酸素運搬体を脱酸素化した状態で収容する運搬体収容部23および当該運搬体収容部23と連通して前記酸素運搬体を外部へ搬出するための搬出口28が備えられた収容パック21と、前記運搬体収容部23を密封して覆う酸素非透過性の第1外包部61を有する包材と、を有する酸素運搬体用収容体2である。
【解決手段】ヘモグロビンを含む酸素運搬体を脱酸素化した状態で収容する運搬体収容部23および当該運搬体収容部23と連通して前記酸素運搬体を外部へ搬出するための搬出口28が備えられた収容パック21と、前記運搬体収容部23を密封して覆う酸素非透過性の第1外包部61を有する包材と、を有する酸素運搬体用収容体2である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に投与する酸素運搬体を脱酸素化した状態で保管するための酸素運搬体用収容体に関し、特に、酸素運搬体を投与する際にも脱酸素化した状態を保持できる酸素運搬体用収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
脳、心筋などの虚血性疾患における病巣や、糖尿病等により循環状態の悪化した末梢組織、あるいは放射線治療や抗癌剤治療に対する反応性を向上させるために腫瘍組織のように低酸素状態となった局所組織への酸素供給を満たすための血液代替物もしくは治療薬として、安全でかつ効果的な酸素供給源であるヘモグロビンの利用が検討されている。これらの病態に対する酸素供給の担い手として、動物あるいはヒトの赤血球から赤血球膜(ストローマ)などの膜成分を除去してストローマフリーヘモグロビン(SFH)とし、これに架橋、重合などの化学的修飾を施してヘモグロビン溶液として、あるいは脂質膜小胞体内に取り込んで人工酸素運搬体(人工赤血球)として利用することが検討されてきた。例えば、特許文献1には、ヘモグロビンをリポソームカプセル内に封入し、外表面に親水性修飾基を修飾して製剤(ヘモグロビン含有リポソーム)化することで、遊離ヘモグロビンに比べてヘモグロビンの生体内半減期を延長し、かつ末梢への酸素運搬能を向上させることが記載されている。
【0003】
ヘモグロビンの酸素運搬能は、ヘモグロビンと、酸素分子との可逆的結合(可逆的酸素化過程)によるものである。この可逆的酸素化過程では、ヘム鉄が2価に保たれているヘモグロビン(Fe2+)は酸素結合能を有するが、ヘモグロビン自体は、酸素の存在下では徐々に酸化(メト化)されて酸化型ヘモグロビン(メトヘモグロビン)となる。ヘム鉄が3価のメトヘモグロビン(Fe3+)は酸素結合能を有さない。
【0004】
したがって、ヘモグロビン含有製剤の保管時には、酸素運搬能の維持のためにヘモグロビンのメト化を抑制することが必要であるが、脱酸素型(各ヘムが酸素を結合していない状態)ヘモグロビンの製剤ではヘム鉄の酸化反応は進行し難いことから、ヘモグロビン含有製剤を酸素透過性の収容体に収容し、さらに酸素非透過性の包材に脱酸素剤とともに保存することで、ヘモグロビン含有製剤を脱酸素化状態で保存することが有用であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−104069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヘモグロビン含有製剤を収容している酸素透過性の収容体を酸素非透過性の包材から取り出すと、ヘモグロビンのメト化が進行するため、数時間以内に使用する必要がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、酸素運搬体を生体内へ投与する際にも、収容体の内部でのヘモグロビンのメト化を抑制できる酸素運搬体用収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の酸素運搬体用収容体は、ヘモグロビンを含む酸素運搬体を脱酸素化した状態で収容する運搬体収容部および当該運搬体収容部と連通して前記酸素運搬体を外部へ搬出するための搬出部が備えられた容器と、前記運搬体収容部を密封して覆う酸素非透過性の第1外包部を有する包材と、を有する酸素運搬体用収容体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る酸素運搬体用収容体は、運搬体収容部を密封して覆う第1外包部が、搬出部と隔絶して形成されているため、運搬体収容部の第1外包部による密封状態を維持したまま、搬出部に輸液チューブやシリンジを接続することができる。したがって、搬出部から酸素運搬体を搬出する際にも、運搬体収容部の内部の酸素運搬体の脱酸素化状態が維持されて、メト化が進行せず、1つの酸素運搬体用収容体を長時間使用できる。
【0010】
前記包材が、吊り下げ用の孔部を有するようにすれば、運搬体収容部を包材に収容した状態で吊り下げることができ、酸素運搬体を時間をかけて注入する使用時にも酸素運搬体の脱酸素化状態を維持できる。
【0011】
前記包材が前記第1外包部と隔絶して前記搬出部を覆う第2外包部を有するようにすれば、使用直前まで、搬出部を汚染することなく使用することができ、高い安全性を得ることができる。
【0012】
前記包材が、第2外包部に開封を誘導するための開封誘導部を有するようにすれば、第2外包材を容易に開封でき、かつ第1外包部の誤開封を抑制できる。
【0013】
前記第1外包部の内部に収容される脱酸素剤を有するようにすれば、第1外包部に収容される運搬体収容部の内部の酸素運搬体の脱酸素化状態を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体を含む酸素運搬体投与システムを示す平面図である。
【図2】適用例としての脳梗塞の際の血栓部位および虚血部位を説明するための概略図である。
【図3】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体を示す平面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う断面図である。
【図5】酸素運搬体酸素化装置を示す平面図である。
【図6】マイクロカテーテルを示す断面図である。
【図7】血栓除去用構造体であるリトリーバーを示す平面図である。
【図8】酸素運搬体用収容体を開封する際を示す平面図である。
【図9】酸素運搬体投与システムによる虚血部位への酸素の供給を示す説明図である。
【図10】酸素運搬体投与システムによる血栓形成部位へのリトリーバーの挿入を示す説明図である。
【図11】酸素運搬体投与システムにより血栓を取り除く際を示す説明図である。
【図12】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の他の例を示す平面図である。
【図13】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の更に他の例を示す平面図である。
【図14】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の更に他の例を示す平面図である。
【図15】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の更に他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
本発明の実施形態に係る酸素運搬体用収容体2は、予め脱酸素化したヘモグロビンを含有する酸素搬送体を無菌状態で保管するものであり、保管される酸素搬送体を酸素化し、血管を経由して血栓形成部位Yを越えて虚血部位X(図2参照)へ選択的に投与する酸素運搬体投与システム10に備えられる。
【0017】
酸素運搬体投与システム10は、図1に示すように、脱酸素化した酸素運搬体を収容して保存する酸素運搬体用収容体2と、酸素運搬体用収容体2から酸素運搬体を搬送する搬送チューブ3と、搬送される脱酸素化した酸素運搬体を無菌状態で酸素化する酸素運搬体酸素化装置7と、搬送された酸素運搬体を加圧するポンプ4と、加圧された酸素運搬体を生体内へ導くマイクロカテーテル5と、を備えている。
【0018】
酸素運搬体は、ヘモグロビンベースのものであって、ヒトまたは動物由来の赤血球から、赤血球膜(ストローマ)などの膜成分を除去してストローマフリーヘモグロビン(SFH)とし、これに架橋、重合などの化学的修飾を施したヘモグロビン溶液型や、ストローマフリーヘモグロビンをリポソームに封入ないしは化学修飾したヘモグロビン含有リポソーム型がある。より具体的には、例えば、特開2006−104069号公報、2009−263269号公報などに記載のものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。なお、酸素運搬体は、一般的に、特開2006−104069号公報、2009−263269号公報に記載されているように、懸濁液として調製されている。
【0019】
具体的には、酸素運搬体は、以下のように調製されてもよい。例えば、ストローマフリーヘモグロビンをリポソームで封入し、このリポソームの外表面をポリエチレングリコール(PEG)のような親水性修飾基によって修飾する工程を含むことによって調製されてもよい。このようにして、ヘモグロビン含有リポソーム型の人工酸素運搬体を作製することができるが、このような方法に限定されず、当業者であれば、従来公知の知見を参照し、あるいは組み合わせることによって調製することができる。
【0020】
なお、酸素運搬体はかような方法によって調製されたものに限定されず、酸素運搬能を備えれば他の酸素運搬体や、血液製剤を用いてもよい。
【0021】
本実施形態では、特開2006−104069号公報に記載のヘモグロビン含有リポソーム型を使用している。
【0022】
酸素運搬体用収容体2は、図3,4に示すように、酸素運搬体を、長期保存の目的で脱酸素化した状態を維持しつつ収容するものである。酸素運搬体用収容体2は、実際に酸素運搬体を収容する収容パック21(容器)と、収容パック21を覆う包材6とを備えている。
【0023】
収容パック21は、酸素運搬体を収容する運搬体収容部23と、運搬体収容部23と連通して酸素運搬体を搬出するための搬出部である筒体25とを備える。運搬体収容部23は、酸素透過性を備えるフィルム状の材料によって内部に空間を有するように形成される。収容パック21の筒体25が設けられる側と反対側の縁部には、使用時にフックJに吊り下げることが可能な吊り下げ孔26が形成される。
【0024】
運搬体収容部23は、例えばポリエチレン(PE)製であるが、酸素透過性を備えればこれに限定されない。また、酸素透過性の材料は、運搬体収容部23の一部のみに備えられてもよい。
【0025】
筒体25は、運搬体収容部23と連通するように、運搬体収容部23を構成するフィルム状の材料と熱溶着または接着されている。筒体25は、運搬体収容部23と同様にポリエチレン(PE)製であるが、これに限定されない。筒体25は、運搬体収容部23から一端が突出するように配置され、突出側に設けられる搬出口28の内部に、運搬体収容部23の内部空間を密封するゴム体27が設けられる。
【0026】
包材6は、収容パック21の全体を包み、酸素非透過性を備えるフィルム状の材料により形成される。また、包材6の材料は、内部を視認可能なように透明であることが望ましい。酸素非透過性および光透過性を備える材料としては、例えばナイロン、EVOH(エチレン酢酸ビニルアルコール共重合体)、O−PVA(ニ軸延伸ポリビニルアルコール)、PVDC(塩化ビニリデン共重合体)等の酸素バリア性樹脂層や、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム上に酸化ケイ素やアルミナなどの無機酸化物の薄膜を蒸着などによるコーティングしたバリア層を有するフィルムなどが適用されるが、酸素非透過性を備えるのであればこれに限定されない。
【0027】
包材6は、収容パック21の運搬体収容部23を覆う第1外包部61と、筒体25の搬出口28側を覆う第2外包部62と、第1外包部61と第2外包部62の間を封止する封止部64とを備えている。
【0028】
封止部64は、包材6を構成するフィルム状の樹脂材料を熱溶着することで、筒体25の外表面にも密着して形成される。なお、封止部は、接着剤により接着して形成しもよく、または、より確実に封止するために、接着剤により接着した後に熱溶着してもよい。
【0029】
第1外包部61および第2外包部62の各々の内部には、脱酸素剤68(例えば、三菱ガス化学株式会社製のエージレス(登録商標))と、酸素を色調で検知する酸素検知剤69(例えば、三菱ガス化学株式会社製のエージレスアイ(登録商標))とが封入される。したがって、運搬体収容部23内の酸素運搬体に含まれるヘモグロビンは、包材6によって包装された後、酸素透過性を備える運搬体収容部23のフィルムを介して第1外包部61内の脱酸素剤68によって脱酸素化される。また、第2外包部62の内部も脱酸素化されて、筒体25やゴム体27を介して運搬体収容部23へ酸素が進入することが抑制される。そして、包材6が酸素非透過性であるために酸素運搬体が脱酸素化した状態で維持され、酸素検知剤69によって脱酸素化した状態を目視で確認できる。
【0030】
包材6は、第2外包部62の縁部に形成されたシール部に切欠部63(開封誘導部)が形成されており、切欠部63から引き裂いて第2外包部62を容易に開封可能となっている。また、包材6に、切欠部63からの開封方向を誘導するために、厚みや剛性を変化させた部位を直線状に設けるなどの構造(開封誘導部)が設けられてもよい。
【0031】
包材6の第1外包部61の縁部に形成されたシール部には、使用時にフックJに吊り下げるための吊り下げ孔65が形成される。
【0032】
酸素運搬体を搬送する搬送チューブ3は、一端に中空針31が連結されており(図1参照)、この中空針31を収容パック21のゴム体27に突き刺すことによって、収容パック21の内部に連通される。そして、搬送チューブ3の他端は酸素運搬体酸素化装置7に接続されており、収容パック21の内部の酸素運搬体を搬送チューブ3を経由して酸素運搬体酸素化装置7に搬送することができる。また、搬送チューブ3は、ガスバリア性を有していればより好ましい。
【0033】
酸素運搬体酸素化装置7は、図5に示すように、搬送チューブ3に連通するように連結される酸素透過チューブ71と、酸素透過チューブ71を覆うように設けられる酸素供給室72とを備えている。酸素供給室72は、酸素供給口73から酸素が供給され、酸素排出口74から余分な酸素が排出される。酸素透過チューブ71は、酸素供給室72内の酸素を内側へ透過させ、内部に形成される流路77を流れる酸素運搬体の酸素化を可能とする。
【0034】
酸素供給室72に供給される酸素の全体量は、運搬体収容部23に収容される酸素運搬体内のヘモグロビンを全て酸素化するのに十分な量であることが好ましい。したがって、例えば運搬体収容部23に100mlの酸素運搬体懸濁液が収容され、当該懸濁液の中に6gのヘモグロビンが含まれる場合、1gあたりのヘモグロビンに必要な酸素が約1.35mlであるため、約8mlの酸素が必要となり、これ以上の酸素を酸素供給室72に供給する。酸素供給室72に供給される酸素は、酸素運搬体の酸素飽和度を高めるために、大気酸素分圧(約150mmHg)よりも高い酸素分圧であることが好ましく、純酸素(酸素濃度100%)を用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0035】
酸素透過チューブ71は、例えばポリプロピレン(PP),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリウレタンなどに微小な貫通孔を形成した疎水性多孔質膜を用いることができ、またはシリコーン樹脂などを用いることができ、人工心肺などで一般的に使用されるガス交換膜を適用できる。
【0036】
ポンプ4は、例えばチューブポンプであり、モータなどの駆動源によって回転可能な回転ロータ41と、回転ロータ41の周上に回転可能に固定されたローラ42と、回転ロータ41の外周に位置する弾性のある弾性チューブ43とを備えている。回転ロータ41を回転させると、弾性チューブ43の一点をローラ42が押し潰しつつ移動することで弾性チューブ43の内部の流体が押し出される。そして、弾性チューブ43の押し潰された箇所が弾性チューブ43の復元力によって元の形状に戻ることで、内部に発生する真空によって搬送チューブ3から弾性チューブ43内に酸素運搬体懸濁液が吸引される。さらに、ローラ42の回転により酸素運搬体懸濁液が加圧、送液される。なお、搬送チューブ3自体をポンプ4の回転ロータ41に取り付けて、ローラ42にて加圧、送液する方法でもよい。ポンプ4では、投与される酸素運搬体の輸注速度および輸注量を調整可能である。
【0037】
ポンプ4によって加圧、送液された酸素運搬体は、図6に示すマイクロカテーテル5(長尺体)によって生体内に導入される。マイクロカテーテル5は、内部にルーメン52が形成され、先端部に開口部53が形成されたカテーテル本体51と、カテーテル本体51の基端部に連結されるハブ部54と、ルーメン52内を摺動して移動可能な血栓除去用の構造体を備えていてもよい。その様な構造体としては、例えば、リトリーバー58(図7参照のようなものが例示される。
【0038】
ハブ部54は、カテーテル本体51のルーメン52内へ弁57を介してリトリーバー58を挿入可能な挿入孔55と、ポンプ4に接続される搬送チューブが接続し、ポンプ4からの酸素運搬体をルーメン52内に導入するポート56とを備える。
また、マイクロカテーテルは酸素運搬体とリトリーバー58等を、それぞれ個別に通過させるダブルルーメン構造としてもよい。
【0039】
リトリーバー58は、先端に螺旋状の螺旋部59が形成されるワイヤー状の部材であり、血栓Zを取り除くために用いられる。リトリーバー58は、超弾性材料により形成されており、マイクロカテーテル5のルーメン52内では螺旋部59が直線状に弾性変形して収まり、マイクロカテーテル5の開口部53から突出することで螺旋部59が元の形状に戻る構造となっている。超弾性材料には、例えばニッケル−チタン系、銅−アルミニウム−マンガン系合金等が適用されるが、これに限定されない。さらに、マイクロカテーテル内での通過性や、血管壁等の生体に対する傷害性を低減するために、表面コート、例えば、ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートのブロック共重合体のような親水性物質の被覆がなされてもよい。
【0040】
カテーテル本体51の外径は、挿入対象によって適宜設定可能であるが、脳梗塞の治療であれば、0.5mm〜2.0mm程度が好ましい。
【0041】
リトリーバー58を構成するワイヤーの外径は、リトリーバー58がルーメン52に挿入されてもルーメン52内に酸素運搬体の流路が確保される程度に、あるいはダブルルーメン構造の場合は通過するルーメン内の通過性が確保される程度に、ルーメン52の内径よりも小さいことが好ましい。
【0042】
本実施形態における酸素運搬体投与システム10を用いると、脳梗塞などの虚血性疾患における血管閉塞、あるいは狭窄によって血流が非常に低下した低酸素部位や、がん細胞が過剰増殖したことにより低酸素状態となっている腫瘍組織のように、酸素供給が極端に悪くなっている部位に効率的に酸素を供給することができる。例えば、適応疾患の一つである脳梗塞では、通常、大脳動脈の破裂(出血性脳梗塞)または血栓塞栓に起因する大脳動脈の閉塞(虚血性脳梗塞)によって起こりうる。脳梗塞は、剥離した凝血塊(血栓塞栓)が血液の流れに乗って脳の血管に入り込んで、または脳動脈に血栓ができて、脳の血管が詰まったり狭まったりして血液が流れにくくなるなど、脳の血流障害が原因となって、その血管の流域にある脳の組織(脳実質)が崩壊、壊死に陥る状態である。特に急性期脳梗塞の場合には、脳梗塞の発症から数時間以内に詰まった脳の血管内の血栓を溶かして血流を再開するあるいは詰まった脳の血管より末梢側の血管に血液(特に酸素)を十分供給することにより、その症状を回復する可能性を多いに期待することができる。酸素運搬体投与システム10を用いると、血流が低下した脳の組織(脳実質)(虚血部位)に選択的に、酸素運搬能の高い酸素運搬体を供給することができる。また、酸素運搬体投与システム10によると、酸素化された酸素運搬体が虚血部位Xに到達した後に、組織の酸素分圧に応じて酸素運搬体から酸素を解離できる。このため、酸素が不足している虚血部位Xに効率よく酸素を供給することができる。
【0043】
以下、本実施形態における酸素運搬体投与システム10を用いて、適応疾患の一つである脳梗塞(特に、急性期脳梗塞)を治療する方法の好ましい形態を、図を参照しながら説明する。ただし、本発明は、下記好ましい形態によって限定されない。
【0044】
まず、図8に示すように、包材6の切欠部63を利用して包材6の第2外包部62を開封し、筒体25の搬出口28を露出させる。なお、第2外包部62を開封しても、運搬体収容部23は第1外包部61によって密封状態が確保されているため、酸素運搬体の脱酸素化した状態は維持される。したがって、この状態で、酸素運搬体用収容体2を一定期間保管することも可能である。この後、包材6の吊り下げ孔65を利用してフックJに吊り下げる(図1参照)。
【0045】
次に、搬送チューブ3の中空針31を収容パック21のゴム体27に突き刺し、搬送チューブ3を介して、酸素運搬体を酸素運搬体酸素化装置7へ搬送する。搬出の際にも、運搬体収容部23は第1外包部61によって密封状態が確保されているため、酸素運搬体の脱酸素化した状態が維持される。酸素運搬体酸素化装置7では、酸素供給室72内の酸素分圧が大気酸素分圧よりも高いため、酸素供給室72内の酸素によって、酸素透過チューブ71内の酸素運搬体が酸素透過チューブ71を介して高い酸素飽和度で酸素化される。酸素化した酸素運搬体は、ポンプ4へ搬送され、ポンプ4により加圧してマイクロカテーテル5へ供給可能となる。
【0046】
そして、図2に示すように、バルーン81付きのガイディングカテーテル8(例えば、直径2mm)を下肢、肘や手首の動脈(大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈)から挿入し、X線透視下で血栓形成部位Yの手前まで誘導する。次に、このガイディングカテーテル8を介して、より小径(例えば、直径0.5mm)のマイクロカテーテル5のカテーテル本体51を血栓形成部位Yを越えた虚血部位Xまで到達させる(図9参照)。この後、ポンプ4を作動させて、酸素化した酸素運搬体をマイクロカテーテル5を介して虚血部位Xに供給する。この虚血部位Xの酸素分圧は低い(例えば、2〜40mmHg程度)ため、酸素運搬体から当該虚血部位Xに効率よく酸素が供給される。当該方法によると、脳梗塞が発症してから短時間で、血流が低下した(酸素が欠乏した)脳の組織(脳実質)に酸素を十分かつ選択的に供給できるため、症状の回復が大いに期待できる。
【0047】
この後、図10に示すように、カテーテル本体51のルーメン52内にリトリーバー58を挿入し、マイクロカテーテル5の開口部53から突出させて、虚血部位Xで螺旋部59が元の形状に回復させる。なお、リトリーバー58による手技の間も、酸素運搬体の供給が継続されることが好ましいが、状況に応じてポンプ4を停止させ、供給を停止してもよい。
【0048】
そして、図11に示すように、リトリーバー58をカテーテル本体51とともに引き戻すと、リトリーバー58の螺旋部59に血栓Zが絡まる。この状態で、血流を調整するためにガイディングカテーテル8に取り付けられたバルーン81を膨らまし、そのままリトリーバー58をカテーテル本体51とともに更に引き戻すことで、ガイディングカテーテル8内に血栓Zを回収する。この後、バルーン81を収縮させてガイディングカテーテル8を大腿動脈、上腕動脈あるいは橈骨動脈から引き抜き、手技が終了する。
【0049】
なお、リトリーバー58は、必ずしも設けられなくてもよい。また、血栓形成部位Yが血管を完全に塞いでいるのでなければ、マイクロカテーテル5の開口部53を、血栓形成部位Yを越えた位置まで到達させずに、血栓形成部位Yの手前に配置させてもよい。この場合、血栓形成部位Yの隙間から、虚血部位Xへ酸素運搬体を送り込むことが可能である。特に、ヘモグロビン含有リポソーム型の酸素運搬体は、外径が約200nmで赤血球の60分の1程度であり、ヘモグロビン溶液型の酸素運搬体であればヘモグロビン含有リポソーム型の酸素運搬体よりも更に小さいため、狭い隙間通過して虚血部位Xへ効率よく酸素運搬体を送り込むことが可能である。
【0050】
本実施形態に係る酸素運搬体用収容体2によれば、運搬体収容部23を密封して覆う第1外包部61が、搬出口28(搬出部)を覆う第2外包部62と隔絶して形成されているため、第2外包部62を開封しても、運搬体収容部23の第1外包部61による密封状態を維持できる。したがって、生体内への酸素運搬体の投与を開始しても、運搬体収容部23内では酸素運搬体の脱酸素化状態が維持されてメト化が進行せず、1つの酸素運搬体用収容体2を長時間使用できる。
【0051】
また、包材6の第2外包部62に、開封を誘導するための切欠部63(開封誘導部)が形成されているため、第2外包部62を容易に開封でき、かつ第1外包部61の誤開封を抑制できる。
【0052】
また、包材6に吊り下げ孔65が形成されため、運搬体収容部23を包材6に収容した状態で吊り下げることができ、投与に長時間を必要とする使用時にも酸素運搬体の脱酸素状態の維持を簡便に行うことができる。さらに、図13の通り、収容パック21の筒体25が設けられる側と反対側の縁部に、包材6の縁部を重ねて接合し、収容パック21の吊り下げ孔26と包材6の吊り下げ孔65を兼用させてもよい。これにより、酸素運搬体の脱酸素状態を維持しながら、長時間投与を行うことができる。また、包材6の内部で収容パック21が固定されるため、吊り下げた際に収容パック21の位置を安定させることができる。
【0053】
また、第1外包部61の内部に脱酸素剤68が収容されているため、第1外包部61に収容される運搬体収容部23の内部の酸素運搬体の脱酸素化状態を良好に維持できる。
【0054】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、通常の虚血時における人工酸素運搬体として静脈より循環血液中に投与され、肺循環により酸素化して使用するなど、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、酸素運搬体投与システムを用いた治療方法は、脳梗塞の治療のみならず、生体内の他の虚血部位の治療や全身的な虚血状態の改善にも適用可能である。また、収容パックとマイクロカテーテルの間のいずれかに、血液フィルタ、気泡除去装置および温度調節器などを設けてもよい。また、収容パック21にも吊り下げ孔26が形成されているため、包材6から収容パック21を完全に取り出して使用することもできる。また、全身的な虚血状態を改善するために静脈より投与する場合には、点滴筒とチューブからなる通常の輸液用具のみでも使用することができる。
【0055】
また、図12に示すように、第2外包部62の開封を容易にするための開封誘導部として、封止部64上に並ぶ複数のスリット66を形成してもよい。第2外包部62を開封する際には、スリット66に沿って包材6を裂いて第1外包部61側と第2外包部62側とに分離した後、筒体25から剥ぎ取り、第2外包部62側を取り除くことで、第2外包部62を開封して搬出口28を露出させることができる。
【0056】
また、図14の通り、酸素運搬体収容体2を包む包材6をさらに外包材100で包んでもよい。これにより、患者近くで使用するとき、外包材100から包材6を使用直前に取り出すことにより、輸送中の汚染などを持ち込むことを防止することができる。
【0057】
図15は、包材6が運搬体収容部21を密封して覆い、筒体25が包材6から露出している。このように包材を、搬出部が露出状態でかつ運搬体収容部を密封して覆うようにすることにより、酸素運搬体の脱酸素状態を維持したまま、筒体25のゴム体27を介して輸液チューブやシリンジなどを接続することができる。また、搬出口28が搬出口28から剥離可能な保護シール81で覆われている。これにより使用直前まで搬出口の衛生状態を維持することができる。
【0058】
また、酸素運搬体の脱酸素化は、保管時の酸素運搬体のメト化を抑制するために行うものであるが、保管時のメト化を抑制できるのであれば、必ずしも酸素運搬体が完全に脱酸素化している必要はなく、例えば酸素運搬体の脱酸素化が不完全な状態も、当然に、酸素運搬体を脱酸素化した状態に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
2 酸素運搬体用収容体、
6 包材、
10 酸素運搬体投与システム、
21 収容パック(容器)、
23 運搬体収容部、
28 搬出口(搬出部)、
61 第1外包部、
62 第2外包部、
63 切欠部(開封誘導部)、
64 封止部、
65 吊り下げ孔、
66 スリット(開封誘導部)、
68 脱酸素剤、
X 虚血部位、
Y 血栓形成部位、
Z 血栓。
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内に投与する酸素運搬体を脱酸素化した状態で保管するための酸素運搬体用収容体に関し、特に、酸素運搬体を投与する際にも脱酸素化した状態を保持できる酸素運搬体用収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
脳、心筋などの虚血性疾患における病巣や、糖尿病等により循環状態の悪化した末梢組織、あるいは放射線治療や抗癌剤治療に対する反応性を向上させるために腫瘍組織のように低酸素状態となった局所組織への酸素供給を満たすための血液代替物もしくは治療薬として、安全でかつ効果的な酸素供給源であるヘモグロビンの利用が検討されている。これらの病態に対する酸素供給の担い手として、動物あるいはヒトの赤血球から赤血球膜(ストローマ)などの膜成分を除去してストローマフリーヘモグロビン(SFH)とし、これに架橋、重合などの化学的修飾を施してヘモグロビン溶液として、あるいは脂質膜小胞体内に取り込んで人工酸素運搬体(人工赤血球)として利用することが検討されてきた。例えば、特許文献1には、ヘモグロビンをリポソームカプセル内に封入し、外表面に親水性修飾基を修飾して製剤(ヘモグロビン含有リポソーム)化することで、遊離ヘモグロビンに比べてヘモグロビンの生体内半減期を延長し、かつ末梢への酸素運搬能を向上させることが記載されている。
【0003】
ヘモグロビンの酸素運搬能は、ヘモグロビンと、酸素分子との可逆的結合(可逆的酸素化過程)によるものである。この可逆的酸素化過程では、ヘム鉄が2価に保たれているヘモグロビン(Fe2+)は酸素結合能を有するが、ヘモグロビン自体は、酸素の存在下では徐々に酸化(メト化)されて酸化型ヘモグロビン(メトヘモグロビン)となる。ヘム鉄が3価のメトヘモグロビン(Fe3+)は酸素結合能を有さない。
【0004】
したがって、ヘモグロビン含有製剤の保管時には、酸素運搬能の維持のためにヘモグロビンのメト化を抑制することが必要であるが、脱酸素型(各ヘムが酸素を結合していない状態)ヘモグロビンの製剤ではヘム鉄の酸化反応は進行し難いことから、ヘモグロビン含有製剤を酸素透過性の収容体に収容し、さらに酸素非透過性の包材に脱酸素剤とともに保存することで、ヘモグロビン含有製剤を脱酸素化状態で保存することが有用であることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−104069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヘモグロビン含有製剤を収容している酸素透過性の収容体を酸素非透過性の包材から取り出すと、ヘモグロビンのメト化が進行するため、数時間以内に使用する必要がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、酸素運搬体を生体内へ投与する際にも、収容体の内部でのヘモグロビンのメト化を抑制できる酸素運搬体用収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の酸素運搬体用収容体は、ヘモグロビンを含む酸素運搬体を脱酸素化した状態で収容する運搬体収容部および当該運搬体収容部と連通して前記酸素運搬体を外部へ搬出するための搬出部が備えられた容器と、前記運搬体収容部を密封して覆う酸素非透過性の第1外包部を有する包材と、を有する酸素運搬体用収容体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る酸素運搬体用収容体は、運搬体収容部を密封して覆う第1外包部が、搬出部と隔絶して形成されているため、運搬体収容部の第1外包部による密封状態を維持したまま、搬出部に輸液チューブやシリンジを接続することができる。したがって、搬出部から酸素運搬体を搬出する際にも、運搬体収容部の内部の酸素運搬体の脱酸素化状態が維持されて、メト化が進行せず、1つの酸素運搬体用収容体を長時間使用できる。
【0010】
前記包材が、吊り下げ用の孔部を有するようにすれば、運搬体収容部を包材に収容した状態で吊り下げることができ、酸素運搬体を時間をかけて注入する使用時にも酸素運搬体の脱酸素化状態を維持できる。
【0011】
前記包材が前記第1外包部と隔絶して前記搬出部を覆う第2外包部を有するようにすれば、使用直前まで、搬出部を汚染することなく使用することができ、高い安全性を得ることができる。
【0012】
前記包材が、第2外包部に開封を誘導するための開封誘導部を有するようにすれば、第2外包材を容易に開封でき、かつ第1外包部の誤開封を抑制できる。
【0013】
前記第1外包部の内部に収容される脱酸素剤を有するようにすれば、第1外包部に収容される運搬体収容部の内部の酸素運搬体の脱酸素化状態を良好に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体を含む酸素運搬体投与システムを示す平面図である。
【図2】適用例としての脳梗塞の際の血栓部位および虚血部位を説明するための概略図である。
【図3】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体を示す平面図である。
【図4】図3の4−4線に沿う断面図である。
【図5】酸素運搬体酸素化装置を示す平面図である。
【図6】マイクロカテーテルを示す断面図である。
【図7】血栓除去用構造体であるリトリーバーを示す平面図である。
【図8】酸素運搬体用収容体を開封する際を示す平面図である。
【図9】酸素運搬体投与システムによる虚血部位への酸素の供給を示す説明図である。
【図10】酸素運搬体投与システムによる血栓形成部位へのリトリーバーの挿入を示す説明図である。
【図11】酸素運搬体投与システムにより血栓を取り除く際を示す説明図である。
【図12】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の他の例を示す平面図である。
【図13】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の更に他の例を示す平面図である。
【図14】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の更に他の例を示す平面図である。
【図15】本実施形態に係る酸素運搬体用収容体の更に他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
本発明の実施形態に係る酸素運搬体用収容体2は、予め脱酸素化したヘモグロビンを含有する酸素搬送体を無菌状態で保管するものであり、保管される酸素搬送体を酸素化し、血管を経由して血栓形成部位Yを越えて虚血部位X(図2参照)へ選択的に投与する酸素運搬体投与システム10に備えられる。
【0017】
酸素運搬体投与システム10は、図1に示すように、脱酸素化した酸素運搬体を収容して保存する酸素運搬体用収容体2と、酸素運搬体用収容体2から酸素運搬体を搬送する搬送チューブ3と、搬送される脱酸素化した酸素運搬体を無菌状態で酸素化する酸素運搬体酸素化装置7と、搬送された酸素運搬体を加圧するポンプ4と、加圧された酸素運搬体を生体内へ導くマイクロカテーテル5と、を備えている。
【0018】
酸素運搬体は、ヘモグロビンベースのものであって、ヒトまたは動物由来の赤血球から、赤血球膜(ストローマ)などの膜成分を除去してストローマフリーヘモグロビン(SFH)とし、これに架橋、重合などの化学的修飾を施したヘモグロビン溶液型や、ストローマフリーヘモグロビンをリポソームに封入ないしは化学修飾したヘモグロビン含有リポソーム型がある。より具体的には、例えば、特開2006−104069号公報、2009−263269号公報などに記載のものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。なお、酸素運搬体は、一般的に、特開2006−104069号公報、2009−263269号公報に記載されているように、懸濁液として調製されている。
【0019】
具体的には、酸素運搬体は、以下のように調製されてもよい。例えば、ストローマフリーヘモグロビンをリポソームで封入し、このリポソームの外表面をポリエチレングリコール(PEG)のような親水性修飾基によって修飾する工程を含むことによって調製されてもよい。このようにして、ヘモグロビン含有リポソーム型の人工酸素運搬体を作製することができるが、このような方法に限定されず、当業者であれば、従来公知の知見を参照し、あるいは組み合わせることによって調製することができる。
【0020】
なお、酸素運搬体はかような方法によって調製されたものに限定されず、酸素運搬能を備えれば他の酸素運搬体や、血液製剤を用いてもよい。
【0021】
本実施形態では、特開2006−104069号公報に記載のヘモグロビン含有リポソーム型を使用している。
【0022】
酸素運搬体用収容体2は、図3,4に示すように、酸素運搬体を、長期保存の目的で脱酸素化した状態を維持しつつ収容するものである。酸素運搬体用収容体2は、実際に酸素運搬体を収容する収容パック21(容器)と、収容パック21を覆う包材6とを備えている。
【0023】
収容パック21は、酸素運搬体を収容する運搬体収容部23と、運搬体収容部23と連通して酸素運搬体を搬出するための搬出部である筒体25とを備える。運搬体収容部23は、酸素透過性を備えるフィルム状の材料によって内部に空間を有するように形成される。収容パック21の筒体25が設けられる側と反対側の縁部には、使用時にフックJに吊り下げることが可能な吊り下げ孔26が形成される。
【0024】
運搬体収容部23は、例えばポリエチレン(PE)製であるが、酸素透過性を備えればこれに限定されない。また、酸素透過性の材料は、運搬体収容部23の一部のみに備えられてもよい。
【0025】
筒体25は、運搬体収容部23と連通するように、運搬体収容部23を構成するフィルム状の材料と熱溶着または接着されている。筒体25は、運搬体収容部23と同様にポリエチレン(PE)製であるが、これに限定されない。筒体25は、運搬体収容部23から一端が突出するように配置され、突出側に設けられる搬出口28の内部に、運搬体収容部23の内部空間を密封するゴム体27が設けられる。
【0026】
包材6は、収容パック21の全体を包み、酸素非透過性を備えるフィルム状の材料により形成される。また、包材6の材料は、内部を視認可能なように透明であることが望ましい。酸素非透過性および光透過性を備える材料としては、例えばナイロン、EVOH(エチレン酢酸ビニルアルコール共重合体)、O−PVA(ニ軸延伸ポリビニルアルコール)、PVDC(塩化ビニリデン共重合体)等の酸素バリア性樹脂層や、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のフィルム上に酸化ケイ素やアルミナなどの無機酸化物の薄膜を蒸着などによるコーティングしたバリア層を有するフィルムなどが適用されるが、酸素非透過性を備えるのであればこれに限定されない。
【0027】
包材6は、収容パック21の運搬体収容部23を覆う第1外包部61と、筒体25の搬出口28側を覆う第2外包部62と、第1外包部61と第2外包部62の間を封止する封止部64とを備えている。
【0028】
封止部64は、包材6を構成するフィルム状の樹脂材料を熱溶着することで、筒体25の外表面にも密着して形成される。なお、封止部は、接着剤により接着して形成しもよく、または、より確実に封止するために、接着剤により接着した後に熱溶着してもよい。
【0029】
第1外包部61および第2外包部62の各々の内部には、脱酸素剤68(例えば、三菱ガス化学株式会社製のエージレス(登録商標))と、酸素を色調で検知する酸素検知剤69(例えば、三菱ガス化学株式会社製のエージレスアイ(登録商標))とが封入される。したがって、運搬体収容部23内の酸素運搬体に含まれるヘモグロビンは、包材6によって包装された後、酸素透過性を備える運搬体収容部23のフィルムを介して第1外包部61内の脱酸素剤68によって脱酸素化される。また、第2外包部62の内部も脱酸素化されて、筒体25やゴム体27を介して運搬体収容部23へ酸素が進入することが抑制される。そして、包材6が酸素非透過性であるために酸素運搬体が脱酸素化した状態で維持され、酸素検知剤69によって脱酸素化した状態を目視で確認できる。
【0030】
包材6は、第2外包部62の縁部に形成されたシール部に切欠部63(開封誘導部)が形成されており、切欠部63から引き裂いて第2外包部62を容易に開封可能となっている。また、包材6に、切欠部63からの開封方向を誘導するために、厚みや剛性を変化させた部位を直線状に設けるなどの構造(開封誘導部)が設けられてもよい。
【0031】
包材6の第1外包部61の縁部に形成されたシール部には、使用時にフックJに吊り下げるための吊り下げ孔65が形成される。
【0032】
酸素運搬体を搬送する搬送チューブ3は、一端に中空針31が連結されており(図1参照)、この中空針31を収容パック21のゴム体27に突き刺すことによって、収容パック21の内部に連通される。そして、搬送チューブ3の他端は酸素運搬体酸素化装置7に接続されており、収容パック21の内部の酸素運搬体を搬送チューブ3を経由して酸素運搬体酸素化装置7に搬送することができる。また、搬送チューブ3は、ガスバリア性を有していればより好ましい。
【0033】
酸素運搬体酸素化装置7は、図5に示すように、搬送チューブ3に連通するように連結される酸素透過チューブ71と、酸素透過チューブ71を覆うように設けられる酸素供給室72とを備えている。酸素供給室72は、酸素供給口73から酸素が供給され、酸素排出口74から余分な酸素が排出される。酸素透過チューブ71は、酸素供給室72内の酸素を内側へ透過させ、内部に形成される流路77を流れる酸素運搬体の酸素化を可能とする。
【0034】
酸素供給室72に供給される酸素の全体量は、運搬体収容部23に収容される酸素運搬体内のヘモグロビンを全て酸素化するのに十分な量であることが好ましい。したがって、例えば運搬体収容部23に100mlの酸素運搬体懸濁液が収容され、当該懸濁液の中に6gのヘモグロビンが含まれる場合、1gあたりのヘモグロビンに必要な酸素が約1.35mlであるため、約8mlの酸素が必要となり、これ以上の酸素を酸素供給室72に供給する。酸素供給室72に供給される酸素は、酸素運搬体の酸素飽和度を高めるために、大気酸素分圧(約150mmHg)よりも高い酸素分圧であることが好ましく、純酸素(酸素濃度100%)を用いることが好ましいが、これに限定されない。
【0035】
酸素透過チューブ71は、例えばポリプロピレン(PP),ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリウレタンなどに微小な貫通孔を形成した疎水性多孔質膜を用いることができ、またはシリコーン樹脂などを用いることができ、人工心肺などで一般的に使用されるガス交換膜を適用できる。
【0036】
ポンプ4は、例えばチューブポンプであり、モータなどの駆動源によって回転可能な回転ロータ41と、回転ロータ41の周上に回転可能に固定されたローラ42と、回転ロータ41の外周に位置する弾性のある弾性チューブ43とを備えている。回転ロータ41を回転させると、弾性チューブ43の一点をローラ42が押し潰しつつ移動することで弾性チューブ43の内部の流体が押し出される。そして、弾性チューブ43の押し潰された箇所が弾性チューブ43の復元力によって元の形状に戻ることで、内部に発生する真空によって搬送チューブ3から弾性チューブ43内に酸素運搬体懸濁液が吸引される。さらに、ローラ42の回転により酸素運搬体懸濁液が加圧、送液される。なお、搬送チューブ3自体をポンプ4の回転ロータ41に取り付けて、ローラ42にて加圧、送液する方法でもよい。ポンプ4では、投与される酸素運搬体の輸注速度および輸注量を調整可能である。
【0037】
ポンプ4によって加圧、送液された酸素運搬体は、図6に示すマイクロカテーテル5(長尺体)によって生体内に導入される。マイクロカテーテル5は、内部にルーメン52が形成され、先端部に開口部53が形成されたカテーテル本体51と、カテーテル本体51の基端部に連結されるハブ部54と、ルーメン52内を摺動して移動可能な血栓除去用の構造体を備えていてもよい。その様な構造体としては、例えば、リトリーバー58(図7参照のようなものが例示される。
【0038】
ハブ部54は、カテーテル本体51のルーメン52内へ弁57を介してリトリーバー58を挿入可能な挿入孔55と、ポンプ4に接続される搬送チューブが接続し、ポンプ4からの酸素運搬体をルーメン52内に導入するポート56とを備える。
また、マイクロカテーテルは酸素運搬体とリトリーバー58等を、それぞれ個別に通過させるダブルルーメン構造としてもよい。
【0039】
リトリーバー58は、先端に螺旋状の螺旋部59が形成されるワイヤー状の部材であり、血栓Zを取り除くために用いられる。リトリーバー58は、超弾性材料により形成されており、マイクロカテーテル5のルーメン52内では螺旋部59が直線状に弾性変形して収まり、マイクロカテーテル5の開口部53から突出することで螺旋部59が元の形状に戻る構造となっている。超弾性材料には、例えばニッケル−チタン系、銅−アルミニウム−マンガン系合金等が適用されるが、これに限定されない。さらに、マイクロカテーテル内での通過性や、血管壁等の生体に対する傷害性を低減するために、表面コート、例えば、ジメチルアクリルアミドとグリシジルメタクリレートのブロック共重合体のような親水性物質の被覆がなされてもよい。
【0040】
カテーテル本体51の外径は、挿入対象によって適宜設定可能であるが、脳梗塞の治療であれば、0.5mm〜2.0mm程度が好ましい。
【0041】
リトリーバー58を構成するワイヤーの外径は、リトリーバー58がルーメン52に挿入されてもルーメン52内に酸素運搬体の流路が確保される程度に、あるいはダブルルーメン構造の場合は通過するルーメン内の通過性が確保される程度に、ルーメン52の内径よりも小さいことが好ましい。
【0042】
本実施形態における酸素運搬体投与システム10を用いると、脳梗塞などの虚血性疾患における血管閉塞、あるいは狭窄によって血流が非常に低下した低酸素部位や、がん細胞が過剰増殖したことにより低酸素状態となっている腫瘍組織のように、酸素供給が極端に悪くなっている部位に効率的に酸素を供給することができる。例えば、適応疾患の一つである脳梗塞では、通常、大脳動脈の破裂(出血性脳梗塞)または血栓塞栓に起因する大脳動脈の閉塞(虚血性脳梗塞)によって起こりうる。脳梗塞は、剥離した凝血塊(血栓塞栓)が血液の流れに乗って脳の血管に入り込んで、または脳動脈に血栓ができて、脳の血管が詰まったり狭まったりして血液が流れにくくなるなど、脳の血流障害が原因となって、その血管の流域にある脳の組織(脳実質)が崩壊、壊死に陥る状態である。特に急性期脳梗塞の場合には、脳梗塞の発症から数時間以内に詰まった脳の血管内の血栓を溶かして血流を再開するあるいは詰まった脳の血管より末梢側の血管に血液(特に酸素)を十分供給することにより、その症状を回復する可能性を多いに期待することができる。酸素運搬体投与システム10を用いると、血流が低下した脳の組織(脳実質)(虚血部位)に選択的に、酸素運搬能の高い酸素運搬体を供給することができる。また、酸素運搬体投与システム10によると、酸素化された酸素運搬体が虚血部位Xに到達した後に、組織の酸素分圧に応じて酸素運搬体から酸素を解離できる。このため、酸素が不足している虚血部位Xに効率よく酸素を供給することができる。
【0043】
以下、本実施形態における酸素運搬体投与システム10を用いて、適応疾患の一つである脳梗塞(特に、急性期脳梗塞)を治療する方法の好ましい形態を、図を参照しながら説明する。ただし、本発明は、下記好ましい形態によって限定されない。
【0044】
まず、図8に示すように、包材6の切欠部63を利用して包材6の第2外包部62を開封し、筒体25の搬出口28を露出させる。なお、第2外包部62を開封しても、運搬体収容部23は第1外包部61によって密封状態が確保されているため、酸素運搬体の脱酸素化した状態は維持される。したがって、この状態で、酸素運搬体用収容体2を一定期間保管することも可能である。この後、包材6の吊り下げ孔65を利用してフックJに吊り下げる(図1参照)。
【0045】
次に、搬送チューブ3の中空針31を収容パック21のゴム体27に突き刺し、搬送チューブ3を介して、酸素運搬体を酸素運搬体酸素化装置7へ搬送する。搬出の際にも、運搬体収容部23は第1外包部61によって密封状態が確保されているため、酸素運搬体の脱酸素化した状態が維持される。酸素運搬体酸素化装置7では、酸素供給室72内の酸素分圧が大気酸素分圧よりも高いため、酸素供給室72内の酸素によって、酸素透過チューブ71内の酸素運搬体が酸素透過チューブ71を介して高い酸素飽和度で酸素化される。酸素化した酸素運搬体は、ポンプ4へ搬送され、ポンプ4により加圧してマイクロカテーテル5へ供給可能となる。
【0046】
そして、図2に示すように、バルーン81付きのガイディングカテーテル8(例えば、直径2mm)を下肢、肘や手首の動脈(大腿動脈、上腕動脈、橈骨動脈)から挿入し、X線透視下で血栓形成部位Yの手前まで誘導する。次に、このガイディングカテーテル8を介して、より小径(例えば、直径0.5mm)のマイクロカテーテル5のカテーテル本体51を血栓形成部位Yを越えた虚血部位Xまで到達させる(図9参照)。この後、ポンプ4を作動させて、酸素化した酸素運搬体をマイクロカテーテル5を介して虚血部位Xに供給する。この虚血部位Xの酸素分圧は低い(例えば、2〜40mmHg程度)ため、酸素運搬体から当該虚血部位Xに効率よく酸素が供給される。当該方法によると、脳梗塞が発症してから短時間で、血流が低下した(酸素が欠乏した)脳の組織(脳実質)に酸素を十分かつ選択的に供給できるため、症状の回復が大いに期待できる。
【0047】
この後、図10に示すように、カテーテル本体51のルーメン52内にリトリーバー58を挿入し、マイクロカテーテル5の開口部53から突出させて、虚血部位Xで螺旋部59が元の形状に回復させる。なお、リトリーバー58による手技の間も、酸素運搬体の供給が継続されることが好ましいが、状況に応じてポンプ4を停止させ、供給を停止してもよい。
【0048】
そして、図11に示すように、リトリーバー58をカテーテル本体51とともに引き戻すと、リトリーバー58の螺旋部59に血栓Zが絡まる。この状態で、血流を調整するためにガイディングカテーテル8に取り付けられたバルーン81を膨らまし、そのままリトリーバー58をカテーテル本体51とともに更に引き戻すことで、ガイディングカテーテル8内に血栓Zを回収する。この後、バルーン81を収縮させてガイディングカテーテル8を大腿動脈、上腕動脈あるいは橈骨動脈から引き抜き、手技が終了する。
【0049】
なお、リトリーバー58は、必ずしも設けられなくてもよい。また、血栓形成部位Yが血管を完全に塞いでいるのでなければ、マイクロカテーテル5の開口部53を、血栓形成部位Yを越えた位置まで到達させずに、血栓形成部位Yの手前に配置させてもよい。この場合、血栓形成部位Yの隙間から、虚血部位Xへ酸素運搬体を送り込むことが可能である。特に、ヘモグロビン含有リポソーム型の酸素運搬体は、外径が約200nmで赤血球の60分の1程度であり、ヘモグロビン溶液型の酸素運搬体であればヘモグロビン含有リポソーム型の酸素運搬体よりも更に小さいため、狭い隙間通過して虚血部位Xへ効率よく酸素運搬体を送り込むことが可能である。
【0050】
本実施形態に係る酸素運搬体用収容体2によれば、運搬体収容部23を密封して覆う第1外包部61が、搬出口28(搬出部)を覆う第2外包部62と隔絶して形成されているため、第2外包部62を開封しても、運搬体収容部23の第1外包部61による密封状態を維持できる。したがって、生体内への酸素運搬体の投与を開始しても、運搬体収容部23内では酸素運搬体の脱酸素化状態が維持されてメト化が進行せず、1つの酸素運搬体用収容体2を長時間使用できる。
【0051】
また、包材6の第2外包部62に、開封を誘導するための切欠部63(開封誘導部)が形成されているため、第2外包部62を容易に開封でき、かつ第1外包部61の誤開封を抑制できる。
【0052】
また、包材6に吊り下げ孔65が形成されため、運搬体収容部23を包材6に収容した状態で吊り下げることができ、投与に長時間を必要とする使用時にも酸素運搬体の脱酸素状態の維持を簡便に行うことができる。さらに、図13の通り、収容パック21の筒体25が設けられる側と反対側の縁部に、包材6の縁部を重ねて接合し、収容パック21の吊り下げ孔26と包材6の吊り下げ孔65を兼用させてもよい。これにより、酸素運搬体の脱酸素状態を維持しながら、長時間投与を行うことができる。また、包材6の内部で収容パック21が固定されるため、吊り下げた際に収容パック21の位置を安定させることができる。
【0053】
また、第1外包部61の内部に脱酸素剤68が収容されているため、第1外包部61に収容される運搬体収容部23の内部の酸素運搬体の脱酸素化状態を良好に維持できる。
【0054】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、通常の虚血時における人工酸素運搬体として静脈より循環血液中に投与され、肺循環により酸素化して使用するなど、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、酸素運搬体投与システムを用いた治療方法は、脳梗塞の治療のみならず、生体内の他の虚血部位の治療や全身的な虚血状態の改善にも適用可能である。また、収容パックとマイクロカテーテルの間のいずれかに、血液フィルタ、気泡除去装置および温度調節器などを設けてもよい。また、収容パック21にも吊り下げ孔26が形成されているため、包材6から収容パック21を完全に取り出して使用することもできる。また、全身的な虚血状態を改善するために静脈より投与する場合には、点滴筒とチューブからなる通常の輸液用具のみでも使用することができる。
【0055】
また、図12に示すように、第2外包部62の開封を容易にするための開封誘導部として、封止部64上に並ぶ複数のスリット66を形成してもよい。第2外包部62を開封する際には、スリット66に沿って包材6を裂いて第1外包部61側と第2外包部62側とに分離した後、筒体25から剥ぎ取り、第2外包部62側を取り除くことで、第2外包部62を開封して搬出口28を露出させることができる。
【0056】
また、図14の通り、酸素運搬体収容体2を包む包材6をさらに外包材100で包んでもよい。これにより、患者近くで使用するとき、外包材100から包材6を使用直前に取り出すことにより、輸送中の汚染などを持ち込むことを防止することができる。
【0057】
図15は、包材6が運搬体収容部21を密封して覆い、筒体25が包材6から露出している。このように包材を、搬出部が露出状態でかつ運搬体収容部を密封して覆うようにすることにより、酸素運搬体の脱酸素状態を維持したまま、筒体25のゴム体27を介して輸液チューブやシリンジなどを接続することができる。また、搬出口28が搬出口28から剥離可能な保護シール81で覆われている。これにより使用直前まで搬出口の衛生状態を維持することができる。
【0058】
また、酸素運搬体の脱酸素化は、保管時の酸素運搬体のメト化を抑制するために行うものであるが、保管時のメト化を抑制できるのであれば、必ずしも酸素運搬体が完全に脱酸素化している必要はなく、例えば酸素運搬体の脱酸素化が不完全な状態も、当然に、酸素運搬体を脱酸素化した状態に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
2 酸素運搬体用収容体、
6 包材、
10 酸素運搬体投与システム、
21 収容パック(容器)、
23 運搬体収容部、
28 搬出口(搬出部)、
61 第1外包部、
62 第2外包部、
63 切欠部(開封誘導部)、
64 封止部、
65 吊り下げ孔、
66 スリット(開封誘導部)、
68 脱酸素剤、
X 虚血部位、
Y 血栓形成部位、
Z 血栓。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘモグロビンを含む酸素運搬体を脱酸素化した状態で収容する運搬体収容部および当該運搬体収容部と連通して前記酸素運搬体を外部へ搬出するための搬出部が備えられた容器と、
前記運搬体収容部を密封して覆う酸素非透過性の第1外包部を有する包材と、を有する酸素運搬体用収容体。
【請求項2】
前記包材は、吊り下げ用の孔部を有する、請求項1に記載の酸素運搬体用収容体。
【請求項3】
前記包材は、前記第1外包部と隔絶して前記搬出部を覆う第2外包部を有する、請求項1または2に記載の酸素運搬体収容体
【請求項4】
前記包材は、第2外包部に開封を誘導するための開封誘導部を有する、請求項4に記載の酸素運搬体用収容体。
【請求項5】
前記第1外包部の内部に収容される脱酸素剤を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素運搬体用収容体。
【請求項1】
ヘモグロビンを含む酸素運搬体を脱酸素化した状態で収容する運搬体収容部および当該運搬体収容部と連通して前記酸素運搬体を外部へ搬出するための搬出部が備えられた容器と、
前記運搬体収容部を密封して覆う酸素非透過性の第1外包部を有する包材と、を有する酸素運搬体用収容体。
【請求項2】
前記包材は、吊り下げ用の孔部を有する、請求項1に記載の酸素運搬体用収容体。
【請求項3】
前記包材は、前記第1外包部と隔絶して前記搬出部を覆う第2外包部を有する、請求項1または2に記載の酸素運搬体収容体
【請求項4】
前記包材は、第2外包部に開封を誘導するための開封誘導部を有する、請求項4に記載の酸素運搬体用収容体。
【請求項5】
前記第1外包部の内部に収容される脱酸素剤を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素運搬体用収容体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−187327(P2012−187327A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54841(P2011−54841)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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