説明

酸素/オゾンの混合物を用いた医療施設を消毒するプロセスおよびシステム

医療施設の部屋などの部屋を酸素/オゾン混合物で消毒するためのシステムおよびプロセスが記載され、このシステムおよびプロセスは、クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)などの「超強力な細菌」を駆除するのに有効である。好ましい実施形態では、過酸化水素が追加的に使用される。本システムおよびプロセスは、ジェットノズル出口などの物理的な撹拌を同時に行って、生物膜として表面に付着した細菌を死滅させるのに有効であり、かつカーペット、カーテン、同様の吸収性表面、および多孔質表面を消毒するのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の消毒剤および滅菌システムに耐性のある残留微生物を除去する、または少なくとも許容され得るレベルまで低減するために、医療施設および公的医療施設などで使用される消毒システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院および他の医療施設での過去何年にもわたる徹底的な予防の努力にもかかわらず、増大する様々な抗生物質耐性菌(時には、「超強力な細菌」とも呼ばれる)によって引き起こされる致命的な感染の発生が、著しく増大し、世界中の医療スタッフにとって重大な問題となっている。雑誌「Science」(2008年、7月)の社説によると、米国の医療施設における細菌感染による2006年の死亡者数は、同年の米国のHIV/AIDSによる死亡者数を上回り、米国では、恐らく1年間に70,000人にもの死亡者数に達する。これは、医療スタッフが医療施設およびその内部の機器を適切に除菌する最大限の努力を払ったにもかかわらずである。
【0003】
病院での感染(院内感染)の主な病原体(細菌)は、クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)である。
【0004】
米国での全救急入院患者の約5%が、院内感染を発症し、1,000人日当たり5件の感染発生率であり、加えて450億ドルを超える費用がかかる(非特許文献1)。この発生率が、米国の7,000の救急機関に入院する患者3,500万人に当てはめられると、1年に200万を超える症例が存在すると推定される。院内感染は、すべての入院患者の死亡および罹患危険率の少なくとも2倍と推定される。
【0005】
医療施設での抗生物質耐性細菌の著しい発生の増加は、一部で「サイレントエピデミック(Silent Epidemic)」とも呼ばれている。国際的には、4つのWHOの地域(欧州、地中海東岸、東南アジア、および西太平洋)を代表する14の国々での55の病院の世界保健機構の調査により、入院患者の平均8.7%が院内感染したと報告された。WHOの推定によると、いかなる時も、世界中で140万を超える人々が病院で感染した感染症に苦しんでいる。
【0006】
これに関連して特に問題となるのは、細菌C.difficileおよびMRSAである。近年まで、C.difficileは比較的まれであったが、現在は、世界の多くの地域で広まってきている。実際、C.difficileは、現在、財政的および健康的影響が計り知れない世界的流行(世界的流行病)として、ますます多くの公衆衛生当局によって認識されている。MRSAは、米国整形外科学会(American Academy of Orthopaedic Surgeons)によって外科処置の際の1つの大きな問題として認識されており、MRSAが「サイレントエピデミック」の1つであるという最近の雑誌の記事に意見が一致している。現行の医療施設での除菌および滅菌処置では、C.difficileおよびMRSAの他、上記の大腸菌;緑膿菌;およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、有効に処置されず、続いて除去されるため、これらの病原体のコロニーが、医療施設、特にカーペットおよびカーテンなどの多孔質表面に蓄積される。
【0007】
緑膿菌および黄色ブドウ球菌などの細菌によってもたらされる院内感染を撲滅する試みは、有害な環境因子から細菌を保護する生物膜内で細菌が増殖するという事実によって阻まれている。生物膜は、細胞が互いに、かつ/または表面に接着する微生物の凝集体である。微生物は、通常、細胞外DNA、タンパク質、および多糖からなる高分子凝集塊である細胞外高分子物質(EPS)の自己産生マトリックスの中に入り込む場合が多い。生物膜は、水蒸気の存在下で、例えば、病院内の表面に形成される。
【0008】
プランクトン(単細胞)モードで浮遊している微生物は、表面に付着し、すぐに除去されないと、除去されにくいように自身をその表面に固定する。これらの最初の外来種は、他の細胞の到着のための多様な接着部位を提供するため、生物膜を一緒に保持するマトリックスを形成し始めて、到達する細胞に対してさらなる固定部位を提供する。生物膜は、細胞分裂と増加の組み合わせによって成長する。生物膜が確立されると、凝集細胞コロニーは、抗生物質耐性を明らかに高める。生物膜細菌は、化学兵器を利用して消毒剤および抗生物質に対して自身を防御することも報告された(非特許文献2参照)。
【0009】
生物膜に生息する細菌は、生物膜の密度および防御環境により様々な方法で協働して相互作用できるため、プランクトン型の同じ種とは有意に異なる特性を有している。従来の抗生物質治療は、通常、慢性感染を根絶するには十分ではなく、細菌が残留する1つの大きな要因は、有害な環境因子から細菌を保護する生物膜内での細菌の増殖能力によるものであると思われる。
【0010】
増大する懸念は、潜在的に致死性の細菌を使用する切迫した生物兵器テロリストおよび生物兵器攻撃である。一部の最も危険な細菌、例えば、炭疽菌は、従来の滅菌剤および処置に対する耐性が高い。このような細菌による公共施設の汚染は、残留量のこのような細菌を現在の方法で除去することがほぼ不可能であるため、人類にとって大きな脅威である。
【0011】
従来技術の簡単な参照
病院および他の医療施設の衛生化の現在の処置手順は、次第に有効性が低くなってきており、施設の至るところに致死性の細菌が蓄積されている。すべてではないにしても殆どの国における医療施設の設置のコストの上昇により、除菌および滅菌処置手順に最小限以上の時間を費やしたり、努力を注ぐことが困難である。
【0012】
アンモニアを含む塩素化溶液とアンモニアを含まない塩素化溶液が、一般的に使用されているが、成功例は僅かであることが分かっている。この問題に加えて、このような溶液は、病棟、術後室、手術室などに一般に設置されている電子機器に使用することができない。
【0013】
気化過酸化水素(VHP)は、平滑な表面に適用する場合には非常に有効であるが、多孔質の材料および布に対しては殆どまたは全く効果が無い。さらに、VHPは、電子機器に重大な損傷を与える。
【0014】
カーペット、カーテン、寝具類、および天井の多孔質材料などの非医療表面に、耐性の高い病原体、特にC.difficileなどの胞子形成菌が入り込むと、このような非医療表面は、現在利用可能な薬剤およびプロセスでは効果的に消毒することができない。
【0015】
オゾンは、強力な抗菌剤、抗真菌剤、および抗ウイルス剤であることが周知である。100年以上にわたって、オゾンは水の浄化に使用されてきた。オゾンは、そのようなプラントにおけるレジオネラ菌、大腸菌、およびシュードモナス菌集団に対して有効であることが周知である。
【0016】
しかしながら、医療施設でのオゾンの使用には問題がある。オゾンを含む溶液は、温まると爆発しやすい。オゾンは、曝露された個体にとって医学的に有害であり、たとえ低くても安全なレベルの曝露を超えると、眼および粘膜を刺激し、肺水腫および慢性呼吸器疾患を引き起こす。さらに、オゾンは、環境危険因子であることが広く認識されている。
【0017】
Artsらによる特許文献1に、移動隔離室および病室などの部屋の空気の汚染除去のためのオゾンと紫外線照射を組み合わせた使用が開示されている。空気は、フィルターを備えた携帯型ユニット内に通されてオゾンに曝露される。
【0018】
2008年8月5日に発行されたCumberlandらによる特許文献2に、規定の時間にわたって送達されるオゾン濃度、過酸化水素濃度、温度、および湿度の特定の組み合わせを有する大気を用いて、空気中のアレルゲン、病原体、臭気、および揮発性有機化合物を低減する方法が記載されている。この特許は、住居の部屋の処置、部屋の空気中のクラドスポリウム属のカビ胞子およびペニシリウム属またはアスペルギルス属のカビの効果的な処置の実験の報告を含む。使用された正確な条件についての詳細は記載されていない。部屋の中の汚染された表面の処置の実証または開示が存在しない。特許の全体的な開示では、オゾン濃度、過酸化水素、湿度、および温度の選択された条件が、6〜9ppmよりも低いオゾン濃度で空気中のカビおよび真菌の死滅に非常に有効であると述べられているが、使用された正確な条件が開示されていない。全体として、この特許は、2〜10ppmのオゾン、大気のオゾン濃度の75重量%〜150重量%である過酸化水素の大気で、15〜27℃の温度で0.5〜3時間にわたる使用を教示している。細菌を含む多くの他の空気中の病原体は、この方法によって処置可能であると述べられているが、実験的証拠が示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】カナダ国特許出願第2,486,831号明細書
【特許文献2】米国特許第7,404,624号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Wentzel R、Edmond M D著、「The Impact of Hospital Acquired Blood Stream Infections」、Emerg.Inf.Dis.、Mar−April 2001:7(174)
【非特許文献2】Dr.Carsten Matzら著、「Biofilm Bacteria Protect Themselves With Chemical Weapons」、Helmholtz Cetre for Infection Research、Brauschweig、Inforniac.comに掲載、2008年、7月23日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
したがって、医療施設の部屋およびその中のすべてものを消毒するのに有効であり、しかも安価なシステムが要望されている。このようなシステムは、すべての汚染された空間における少なくとも上記の5つの細菌の量を、臨床上および公共上、健康に良い値まで大幅に低減(99.999%以上)するべきである。さらに、このレベルの微生物の汚染除去は、汚染除去の空間だけが最小限の期間、医療用途から除外され、残りの空間が、室内の電子機器および他の器具に対して安全かつ無害であるように達成しなければならない。したがって、汚染除去のプロセスは、システムの運転中に汚染除去空間から内容物を除去する必要がない。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、一態様から、移動型および固定型のすべての医療施設ならびに学校および庁舎などの他の重要な基幹施設の部屋およびその内容物を対象とするオゾンを用いた消毒システムを提供する。このようなシステムを用いて、オゾン含有ガスを室内に供給して、オゾン含有ガスを室内の表面、機器、および物体に適用する。この適用は、表面、場合によっては、カーテン、カーペット、および他の繊維表面などの掃除がしにくい表面の気体大気と単純な接触によって行うことができ、表面の物理的な撹拌を行う払い落としシステム(擦りブラシまたは高圧ジェットなど、時には、本明細書では「擦り」と呼ぶ)によって行うことができる。オゾン含有ガスは、制御された濃度で適用する、場合によっては、限定されるものではないが、特に厄介な5つの細菌クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含め、環境で見られる危険なウイルス、細菌、および真菌病原体を死滅させるのに有効であることが分かっている高い圧力で適用する。
【0023】
所定の空間内でエアロゾル化された病原体を有効に除去するのに加えて、本発明のシステムでは、使用者が、物理的な撹拌動作を行いながら、適切な圧力下で、直接オゾン含有ガスを所定のオゾン濃度で室内の問題となる表面に適用することもできる。このシステムは、室内の大気から残留オゾンを除去するオゾン破壊ユニットも含む。システム全体を運搬可能であるため、必要に応じて部屋から部屋に移動させることができ、室内の機器に対して無害である。殺菌プロセスが完了したら、20分以内に、大気中の残留オゾンレベルを許容可能な0.04ppm以下にして、部屋を医療用途に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】消毒する部屋の中に配設された本発明の実施形態による装置の概略図を示している。
【図2A】本発明の実施形態に使用される物理的撹拌システムの概略図を示している。
【図2B】本発明の実施形態に使用される物理的撹拌システムの概略図を示している。
【図3】運搬可能な輸送モードの本発明による装置の概略図を示している。
【図4】以下に報告する一部の試験結果を得るために使用される試験装置の概略図を示している。
【図5】以下の実施例10で報告される結果を得るために使用される試験装置の概略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特定の実施形態によるシステムの1つの大きな特徴は、消毒目的で使用されるオゾン/酸素ガス混合物の圧力を調節できることである。多くの場合、部屋およびその内容物の細菌汚染の有効な消毒は、約10〜約100ppmのオゾンを含むオゾン/酸素混合物で部屋の中の空気を通常の大気圧よりも高い圧力、例えば、約14.7psi〜約100psiまで加圧することによって達成することが最善であろうことが分かった。局所加圧空気ジェットを使用することもでき、この場合、部屋全体の圧力を上げる必要がない。部屋の圧力を上げるためには、汚染除去プロセスの前に、最初に部屋を密閉する必要があろう。手術室などの医療処置が行われる多くの部屋では、これは、このような部屋は医療処置に使用される場合には実質的に密閉されるように設計されているため単純なプロセスである。他の部屋では、このような部屋の密閉は、相当な最初の準備が必要であろう。
【0026】
本発明の別の特に好ましい実施形態は、消毒ガス大気中にオゾンはもちろん、過酸化水素も利用する。オゾンおよび過酸化水素を使用する場合は、部屋の圧力を上昇させる必要がないであろう。病院環境で院内感染を引き起こす可能性が高い特に厄介な細菌、すなわちクロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を、ステンレス鋼の表面、セラミックの表面、および大理石の表面などの病院環境の表面に撒いて、微生物が成長する生物膜を迅速に形成させる。本発明のこの好ましい態様による、適切な湿度での過酸化水素とオゾンの組み合わせを用いる処置では、化学的に生物膜を攻撃してオゾンおよび過酸化水素の殺菌作用に微生物を曝露することによって、または利用されるオゾン/過酸化水素の組み合わせによる生物膜内の細菌細胞の活性の阻害によって、またはこれらの機構の組み合わせ、場合によっては他の機構との組み合わせによって生物膜内の細菌を死滅させる。
【0027】
本発明のこの好ましい実施形態によると、一態様から、部屋の中の密閉空間における細菌および部屋の中の表面における生物膜内の細菌を駆除するプロセスであって、
少なくとも60%の相対湿度の、2〜350重量ppmの濃度のオゾンおよび0.2〜10重量%の量の過酸化水素を含む消毒大気を部屋の中で作るステップと、
内部に細菌が生息する表面を有する生物膜を、超薄膜内の細菌の有効な死滅に十分である少なくとも30分間にわたって消毒大気に曝露するステップと、
続いて大気からオゾンを0.04ppm以下まで除去するステップと、を含む、プロセスが提供される。
【0028】
好ましくは、消毒大気は、少なくとも65%の相対湿度を有する。
【0029】
別の好ましい実施形態は、微生物細菌クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);バンコマイシン耐性腸球菌(VRE);枯草菌、および/または炭疽菌の少なくとも1つを駆除するために部屋およびその中の表面を消毒するプロセスであって、部屋およびその中の表面を、表面の細菌のレベルを実質的に低減する時間にわたって、有効量のオゾンおよび有効量の過酸化水素を含む気体大気に曝露するステップと、続いて部屋の大気中の残留オゾンを安全な低いレベルまで除去するステップと、を含む、プロセスを提供する。
【0030】
このプロセスは、少なくともある程度は表面の生物膜の形成によって頑固で死滅させにくい細菌が存在する、医療処置施設に豊富に存在するステンレス鋼の表面の消毒において、物理的な撹拌を用いても用いなくても特に有効である。このプロセスは、十分に確立された炭疽菌の代用菌、枯草菌に対する有効性によって証明されているように、炭疽菌の死滅および不活化にも有効である。
【0031】
この実施形態の別の態様によると、部屋、その中の表面、および、その中の機器を迅速に消毒するための運搬可能なシステムであって、
オゾンを含むガス混合物を部屋の中に放出するためのオゾン生成器と、
放出されるオゾンの量を制御するように構成されたオゾン制御装置と、
制御された量の過酸化水素を部屋の中に放出するための過酸化水素の供給源と、
過酸化水素およびオゾンを部屋の中に放出するための手段と、
処置中に部屋の相対湿度を増減するように構成された湿度調節手段と、
部屋の大気中のオゾンを後に人間が利用できる安全なレベルまで破壊するように構成されたオゾン除去装置と、を含む、運搬可能なシステムも提供される。
【0032】
時には、有効性を向上させてプロセスの時間を短縮すること、たとえ消毒ガスにオゾンおよび過酸化水素の両方を使用する場合でも高い圧力で運転することが有益である。したがって、本発明の別の態様によると、医療施設の部屋を消毒するプロセスであって、
有効量のオゾンおよび過酸化水素を含むガス混合物を部屋の中に導入するステップと、
部屋の中の圧力を大気圧よりも高くする、または加圧ガス流を導入するステップと、
部屋の中の繊維表面および多孔質表面を、過酸化水素およびオゾンを含む少なくとも60%の相対密度の大気の加圧ガス流に曝露しながら、これらの表面を物理的に撹拌するステップと、
部屋を大気圧に戻すステップと、
部屋の大気から残留オゾンを安全なレベルまで除去するステップと、を含む、プロセスが提供される。
【0033】
好ましいオゾンの量は、処置ガス大気中に約20〜350ppm、より好ましくは20〜200ppm、さらに好ましくは酸素/オゾンガス混合物中に20〜90ppm、最も好ましくは35〜80ppmのオゾンである。過酸化水素の好ましい量は、0.2〜10%、より好ましくは1〜5%の過酸化水素を含む水溶液を用いて部屋の処置大気に供給される量である。以下の記載では、使用される過酸化水素の百分率は、時にはこれらの溶液百分率で表される。過酸化水素の量は、処置室内の他の機器が重大な悪影響を受けないように選択される。消毒大気中の過酸化水素の量は、消毒大気中に蒸発する過酸化水素水の量、消毒する部屋の容積、および出発溶液中の過酸化水素の濃度から計算することができる。オゾン含有大気を部屋およびその表面に曝露する時間は、約30分〜約120分、好ましくは約60分〜約105分、最も好ましくは約90分である。これらの時間は、開始から終了までの時間が150分を超えないように、消毒段階の後に部屋のオゾンを除去(最大でも0.04ppmまで下げる)して妥当な時間内に部屋を医療用途に戻す必要があることからある程度拘束される。オゾンの除去は、非常に迅速であり、かつ十分に有効なプロセスである。過酸化水素およびオゾンの両方(およびこれらの間の相互作用のあらゆる生成物)を、部屋を通常の使用に戻す前に除去するべきである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態の別の重要な特徴は、放出部の出口端部に払い落としシステムが設けられていることである。この払い落としシステムにより、部屋の中のカーペット、カーテン、および同様の表面に浸透して、細菌の隠れた/隔離された胞子および/またはコロニーにアクセスすることができる。払い落としシステムは、ハザードスーツおよびマスクによって保護された操作者が手動で操作する、または遠隔操作する、または完全に自動化することができる。払い落としシステムは、関連した手動操作可能なジェット圧制御装置が取り付けられた、1つ以上の出口ジェットの形態としても良い。払い落としシステムは、単独または出口ジェットと組み合わせた、適切な硬さの剛毛を備えた回転式または固定ブラシの形態としても良い。細菌胞子またはコロニーを隠匿し得る離隔部分にアクセスできるように、重なったカーペットの織物および室内装飾材料の織物などをかく乱するのに有効な任意の形態の払い落としシステムを使用しても良い。これには、物理的な破壊を引き起こして繊維表面の微小な物理的な運動をもたらすことができる、例えば、空気ジェット、超音波エネルギー、高周波エネルギー、および電磁波などの非物理的な適用が含まれる。
【0035】
本発明で使用されるオゾンは、任意の周知の手段によって生成することができる。酸素からコロナ放電または他の放電を発生させる場合は、本発明の装置は、好ましくは、医療グレードの酸素コンテナを備えている。酸素コンテナは、医療施設で一般に見られるタイプの、医療用グレードの酸素を含む標準的な加圧容器とすることができる。このコンテナの酸素は、オゾン生成器に送られ、そこで酸素が、通常は高圧交流で放電を受けて、少量の酸素がオゾンに変換され、酸素とオゾンのガス混合物が生成される。混合物中のオゾンの量は、放電の電圧調節によって制御可能である。適切なオゾン生成器は周知であり、市販されている。生成されるオゾンの相対量は、比較的少なく、百万分率(ppm)で表されるが、特に本発明にしたがって過酸化水素と組み合わせられた、消毒剤としてのオゾンの力が、このような少量でも必要十分であるほどの力であるためである。
【0036】
必要に応じて、オゾン生成の大体の形態も使用することができる。酸素または空気に入射する適切な波長の紫外線が、許容され得る代替の1つである。このようなシステムでは、部屋自体の空気を、オゾン生成ユニットに送って、オゾンへの変換に必要な酸素を供給することができる。使用できるオゾン生成の他の方法には、光触媒反応やコールドプラズマなどが含まれる。
【0037】
処置空間の相対湿度は、有効な消毒のためには少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%にするべきである。これを確実にするために、内部システム貯水器からの滅菌水を使用して、排出されるガス混合物の湿度を調節および制御する加湿器を本発明のシステムに含めるのが好ましい。このようにして、殆どの有効な消毒に望ましい湿度は、カーペットまたはカーテンの表面の払い落としを行うことができる放出部の先端で達成される。調節可能な加湿器は、空間の湿度を望ましいレベルまで上昇させる際にのみ必要であり、空間内のあらゆる位置に配置することができる。オゾンに加えて過酸化水素を使用する場合は、過酸化水素蒸気が、制御された量で、加湿器から排出される空気/水蒸気に安定して供給され、これによりオゾン/酸素含有ガス混合物に適切に添加される。別法では、過酸化水素は、標的位置を加湿するために使用される水に添加することができる。過酸化水素は、標準濃度の過酸化水素水溶液として市販されている。本発明の実施形態に使用される場合は、既知の過酸化水素濃度の標準溶液が、一定量の蒸留水によって適切に希釈される。過酸化水素負荷は、望ましい範囲、例えば、40〜80%に相対湿度を上昇させるために必要な過酸化水素溶液の既知の水分量に基づいて標準化される。このことから、処置施設に導入される過酸化水素の量(容積パーセントまたは容積ppm)を計算することができる。
【0038】
本発明の実施形態による特定のシステムは、ガス混合物用の温度調節器および制御装置を備え得る。これは、部屋の大気に放出される前に、導入酸素または生成された酸素/オゾン混合物が通過する単純な加熱器/冷却器とすることができる。室外加熱システムおよびサーモスタットを用いた室温の単純な調節が有効であり得るが、カーペットおよびカーテンの表面の殆どの有効な処置では、排出されるガス混合物の温度を調節することが好ましい。オゾンおよびオゾン/過酸化水素による病原体の汚染除去に望ましい温度範囲は、15℃〜30℃である。
【0039】
本発明のシステムは、オゾン除去ユニットも含む。このようなユニットは周知であり、本発明に使用するために購入することができる。室内の大気の量およびオゾン除去ユニットの能力によっては、2つ以上のこのようなユニットを本発明のシステムに含めても良い。適切なオゾン除去ユニットは、除去媒体として活性炭を利用したユニットである。これらのユニットは、非常に迅速に作用し、有害な反応生成物の形成をもたらさない。このようなユニットを含めることにより、処置した施設を、オゾンを除去して通常の使用に迅速に戻すことができ、これは、医療施設にかかわる重要な特徴である。他のタイプには、酸化マンガンおよび他の金属酸化物などの触媒を利用したシステムが含まれ、これらの触媒を加熱して水分を除去し、プラチナまたはパラジウムを含む他の金属と共に熱破壊することができる。
【0040】
添付の図面の図1は、本発明の実施形態によるプロセスによる消毒の準備として閉じられた患者を手術するスイート10を示している。このスイートは、実質的に密閉されている。スイートの内部には、酸素ガスを加湿器14、そこからオゾン生成器16に供給する酸素の加圧シリンダー12が設けられ、加圧シリンダー12は、生成されるオゾンの量を調節する可変電圧放電プレートを備えている。加熱器および圧力制御装置(不図示)を、オゾン生成器の入口付近に配置することができる。酸素/オゾンガス混合物の出力は、部屋の出口18、20を介してスイート10の大気に供給され、かつワンド22Aおよび/または22Bを介して、それぞれのワンド22A、22Bの出口端部に取り付けられた擦りブラシ24Aおよび24Bの形態である払い落とし手段に供給される。加熱器、圧力制御装置、オゾン生成器16に供給される電圧、および加湿器14から供給される湿度レベルはすべて、各電器接続28、30、32、および34を介して外部コントロールパネル26から制御され、調節される。スイートの中には、首振り扇風機34およびオゾン破壊フィルターユニット36も設けられている。
【0041】
スイート10の中には、過酸化水素水溶液のコンテナ19および付随する送風機21が配置されており、送風機21は、運転中に、制御された量の気化された過酸化水素を放電ワンド22Aおよび22Bに吹き込んで、放電ワンドの中のオゾン/酸素の出力と混合する。供給される過酸化水素の量は、コントロールパネル26に接続された送風機21の調節によって制御される。代替の構成では、過酸化水素を、生成器19から加湿器14に供給することができる。
【0042】
添付の図面の図2Aおよび図2Bは、各ワンド22の出口の放出端部に取り付けられた、本発明に使用される払い落とし手段24Aおよび24Bのより詳細な形態を示している。払い落とし手段24Aは、その末端の出口ジェットノズル38A、および放出端部近傍のワンド22Aに取り付けられた全体的に円形のプレート40を備えている。ワンド22Aは、プレート40の中心孔42を貫通している。プレート40は、その下面に取り付けられたブラシ剛毛46Aを備え、ブラシ剛毛46Aは、出口ジェットノズル38Aの周りに2つの円弧に配置され、ノズル38Aの出口の範囲を僅かに越えた程度まで下方に突き出ている。使用の際は、酸素/オゾンガス混合物または酸素/オゾン/過酸化水素ガス混合物が、比較的高圧でノズル38Aから排出され、ワンドを保持している操作者が、この混合物をカーペットの表面領域に案内すると同時に、カーペットの表面領域を剛毛46Aで擦ることができる。
【0043】
図2Bは、本質的の同様の構造である代替を示しているが、プレート40は、2つの回転ブラシ46Bと、これらの回転ブラシ46Bの前方に配置された、酸素/オゾン/過酸化水素を高圧で送達するための3つのジェット出口38Bとを備えている台車44に置き換えられている。
【0044】
添付の図面の図3は、本発明によるシステムの可搬性を例示している。部品は、図1に示されているように付番されている。4輪台車48が配置されており、ある部屋から別の部屋への運搬を容易にするために、4輪台車48の上にシステムのすべての構成部品を載せることができる。器具およびコントロールパネルは、運搬のために接続を取り外すことができ、装置が、図1に示されているように使用のために別の部屋に配置されたら、再接続して外部に配置することができる。台車48は、システムの使用中は取り除かれているが、別の部屋への運搬または保管のために使用後に構成部品が載せられる。
【0045】
システムの運転は、その構成部品およびそれらの内部接続の前述の説明から容易に理解できよう。構成部品が載せられた台車48は、消毒される部屋10に移動され、図1に例示されているように、構成部品が部屋に配置されて互いに接続される。ハザードスーツおよび他の適切な防護服を着ている操作者が、部屋に入り、ワンド22を把持する。この部屋は密閉されている。処置の条件が、コントロールパネル26で設定され、装置のスイッチが入れられ、制御されたオゾン濃度、過酸化水素濃度、相対湿度、温度、および高圧の酸素/オゾン/過酸化水素ガス混合物がジェットノズル38から排出される。操作者は、噴出されるガス混合物を部屋の中のカーペットの表面、カーテンの表面、および他の吸収性の表面に適用し、これと同時にこれらの表面を剛毛46で擦る。酸素/オゾンガス混合物の導入により部屋が大気圧よりも高圧になる。操作者にとって安全な作業条件が確保されるように、部屋の温度、湿度、およびオゾン濃度はもちろん、圧力を、コントロールパネル26によって絶えず監視する。部屋の中の平滑な表面は、特に過酸化水素とオゾンが組み合わせて使用される場合は、払い落とし手段を作動させなくても、部屋の中の大気との接触によって十分に消毒されるであろう。首振り扇風機34は、酸素/オゾン混合物が部屋中を循環するように処置手順中ずっと運転される。
【0046】
処置手順の設定時間が経過して、すべての適切な吸収性表面が擦られてから、通常は90分以下で、過酸化水素の供給(使用した場合)、酸素の供給、およびオゾン生成器が停止される。次いで、オゾン破壊フィルターが作動され、オゾン含有ガスが吸引され、オゾンが破壊され、純粋な酸素が排出される。ここで、部屋を開放することができ、装置の接続が取り外されて台車48に載せられ、部屋が通常の使用に戻され得る。
【0047】
実験実施例
本発明に使用するのに有効かつ最適な条件を、添付の図面の図4に全体が例示されている実験装置を用いて決定した。
【0048】
それぞれの好気性試験細菌、すなわち、大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の1つの純粋コロニーを、5%のヒツジ血液が添加されたコロンビア寒天プレートに接種した。これらを、室内空気で、35℃で18〜24時間インキュベートした。プレートから、4〜5の孤立したコロニーを選択し、トリプシン大豆ブロスに懸濁して、分光光度計を用いた測定で、0.5マックファーランド濁度基準(1.5×10cfu/ml)にした。種菌は、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6、およ10−7cfu/mlとなるように、0.1mlの元の0.5マックファーランド種菌(6×10倍)を用いて0.9mlの0.85NaClブロスの連続段階希釈を行うことにより用意した。
【0049】
微生物は、3ウェルずつ播種し、コロンビアヒツジ血液寒天プレートの表面に0.1mlのそれぞれ溶液を広げた。2組のプレート(1つの微生物に付き12枚のプレート)を、予め選択された濃度のオゾン(ppm)、湿度、および温度条件で、例示されている装置内でオゾン/酸素に曝露した。他の2組をコントロールとして処置し、オゾンに曝露しないで室温に維持した。
【0050】
オゾン曝露では、図4に全体が例示されている装置を使用した。
【0051】
試験プレートを消毒チャンバー60内に入れた。消毒チャンバー60は、その上流端部62に、オゾン入口ポート64、過酸化水素蒸気入口ポート65(以下の実施例1〜9では、閉鎖されている)、および水蒸気入口ポート66を備えていた。加圧された医療グレードの酸素のシリンダー68が設けられ、このシリンダー68が、オゾン生成器70に酸素を供給し、オゾン生成器70は、可変電圧が入力制御装置72を介して供給され得る交流電気プレートを備えていた。オゾン生成器70からの酸素/オゾン混合ガスの出力を、消毒チャンバー60のオゾン入口ポート64に供給した。水蒸気加湿器74が、水蒸気を入口ポート66に供給した。消毒チャンバー60は、加熱器/冷却器(不図示)、温度センサー76、圧力センサー78、湿度センサー80、およびオゾンセンサー82も備え、これらはそれぞれ、配線84、86、88、および90によってコントロールパネル/モニター92に電気接続され、このモニター92のフィードバックが、圧力調節目的で流れを制御するために酸素シリンダー68、オゾンの量を制御および調節するためにオゾン生成器70、消毒チャンバー60内の相対湿度を制御および調節するために水蒸気加湿器74、ならびにチャンバー内の温度を制御および調節するために加熱器/冷却器に接続されている。これらのパラメーターはすべて、コントロールパネルで望ましい値に予め設定され、実験が進むにつれて、パラメーターが、これらの値に自動的に再調整された。
【0052】
オゾン破壊フィルター94が、実験の最後にチャンバー60から排出されるオゾンを破壊するために、出口ポート98における消毒チャンバー60の下流端部96に接続されていた。ガスは、チャンバー60内を循環してから、チャンバー内に配設された送風機100を用いて、実験の終了時にチャンバー60から排出した。試験プレートをチャンバー60内に配置してから、各実験の終了までチャンバー60を密閉した。
【0053】
コントロールプレートおびオゾン処置プレートを同時にインキュベーター内に配置した。プレートのカウントを顕微鏡で読み取り、各プレートにおけるコロニー形成単位の数をカウントした。胞子は、耐気性である。
【実施例】
【0054】
実施例1
上記の一連の試験を、MRSA ATCC33592に対して行った。微生物が入った皿を、チャンバー内で、80ppmのオゾンを含む酸素/オゾン混合大気に、20℃、85%の相対湿度で90分曝露した。2枚の同一試験プレートで行った。プレートを洗浄する10μlの量のアリコートを、種菌とともに、最終希釈係数10−2、10−3、10−4、10−5、10−6、および10−7まで段階希釈した。オゾンに曝露しないコントロールプレートを用意し、上記のように24時間インキュベートした。寒天プレートの表面を溶出させて細菌コロニーを除去し、溶出物を、顕微鏡下での検査のためにプレートから取り出した。
【0055】
溶出組成物中の細菌の活性な再生コロニーの顕微鏡下でのカウントにより、10−2の希釈のコントロールプレートの溶出物が、19および11cfu(2枚の同一プレート)を有し、より高い希釈のプレートは、cfuが0であり、実験のオゾン曝露プレートは、試験したどの希釈でもcfuを示さない組成物をもたらした。3.35logの減少が達成された(8.3log〜4.9log)。
【0056】
実施例2
実施例1の実験を、同じ細菌株を用いて繰り返したが、試験プレートは、チャンバー内で、20℃、80%の相対湿度で、50ppmのオゾンを含む酸素に曝露した。
【0057】
溶出組成物中の細菌の活性な再生コロニーの顕微鏡下でのカウントにより、10−2の希釈のコントロールプレートの溶出物が、374、415、414、および423cfu(4枚の同一プレート)を有し、10−3の希釈のコントロールプレートでは、33、35、38、および37cfuであり、10−4の希釈では、4、1、2、および2cfuであり、より高い希釈では、cfuが0であった。処置プレートの溶出物は、10−2の希釈で27、11、42、および58の活性なcfuを示し、10−3の希釈では、3、1、3、および5cfu(4枚のプ同一レート)であり、より高い希釈のプレートは、cfuが0であった。
【0058】
実施例3
試験微生物として緑膿菌ATCC27853を使用した点を除き、実施例1の実験を繰り返した。オゾン曝露、希釈、インキュベーション、および試験は同じ条件を使用した。試験プレートでは、10−2の希釈で、活性なコロニーカウントが11および18であり、10−3の希釈で、活性なコロニーカウントが5および27であった。より高い希釈では、検出可能なコロニーが存在しなかった。対照的に、オゾン非曝露コントロールプレートは、最大で10−6を含むすべての希釈で、カウントするのには多すぎるコロニーを示した。2.8logの減少が達成された(7.9log〜5.1log)。
【0059】
実施例4
実施例3の実験を同じ試験微生物を用いて繰り返したが、試験サンプルを、チャンバー内で、80%の湿度で90分間、50ppmのオゾンを含むオゾン/酸素ガス混合物で処置した。同じ回収および試験処置手順により、コントロールプレートが、カウントするには多すぎるcfuを有することが判明した。試験プレートは、2枚の同一プレートで行い、10−2の希釈で、212および183のcfuカウントであり、10−3の希釈で、13および50のcfuカウントであり、より高い希釈では、cfuが0であった。
【0060】
実施例5
実施例3の実験を繰り返したが、試験微生物として大便連鎖球菌(高レベルのバンコマイシン耐性)臨床株80269を用い、21℃、80%の相対湿度で、35ppmのオゾンのオゾン/酸素混合物に90分の曝露とした。コントロールプレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2、10−3、および10−4の希釈ではカウントするのに多すぎるcfuカウントであり;10−5の希釈では、402および346のcfuカウントであり;10−6の希釈では、35および25のcfuカウントであり;10−7の希釈では、14のcfuカウントであった。対照的に、試験プレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2の希釈では、78および29のcfuカウントであり;10−3の希釈では、47および6のcfuカウントであり;10−4の希釈では、112および50のcfuカウントであり;10−5の希釈では、0および1のcfuカウントであり;10−6の希釈では、1および0のcfuカウントであり;10−7の希釈では、0および1のcfuカウントであった。2.95logの減少が達成された(7.7log〜4.7log)。
【0061】
実施例6
実施例5の実験を、試験微生物として同じVRE臨床株を用いて繰り返したが、20℃、80%の相対湿度で、50ppmのオゾンのオゾン/酸素混合物に90分の曝露とした。コントロールプレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2、10−3、および10−4の希釈ではカウントするのに多すぎるcfuカウントであり;10−5の希釈では、369および359のcfuカウントであり;10−6の希釈では、46および46のcfuカウントであり;10−7の希釈では、9および2のcfuカウントであった。対照的に、試験プレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2の希釈では、50のcfuカウントであり;10−3の希釈では、30未満のcfuカウントであり;10−5のより高い希釈では、0のcfuカウントであった。
【0062】
実施例7
実施例3の実験を、試験微生物として大腸菌株ATCC25922を用いて繰り返したが、21℃、80%の相対湿度で、35ppmのオゾンのオゾン/酸素混合物に90分の曝露とした。コントロールプレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2、10−3、および10−4の希釈ではカウントするのに多すぎるcfuカウントであり;10−5の希釈では、300を超えるcfuカウントであり;10−6の希釈では、95および66のcfuカウントであり;10−7の希釈では、3および10のcfuカウントであった。対照的に、試験プレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2の希釈では、43および38のcfuカウントであり;10−3の希釈では、25および1のcfuカウントであり;10−4の希釈では、6および15のcfuカウントであり;10−5の希釈では、3および10のcfuカウントであり;より高い希釈では、0のcfuカウントであった。
【0063】
3.22logの減少(7.8log〜4.6log)が達成された。
【0064】
実施例8
実施例7の実験を、試験微生物として同じ大腸菌株ATCC25922を用いて繰り返したが、20℃、80%の相対湿度で、50ppmのオゾンのオゾン/酸素混合物に90分の曝露とした。コントロールプレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2、10−3、および10−4の希釈ではカウントするのに多すぎるcfuカウントであり;10−5の希釈では、563および350のcfuカウントであり;10−6の希釈では、74および87のcfuカウントであり;10−7の希釈では、7および7のcfuカウントであった。対照的に、試験プレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2の希釈では、13および28のcfuカウントであり;10−3の希釈では、8および7のcfuカウントであり;10−4の希釈では、7および5のcfuカウントであり;より高い他のすべての希釈では、0であった。
【0065】
実施例9
C.difficileの株(毒素非生産臨床株番号135、Queens University Medical School、Kingston、Ontario、Canada)も試験微生物として用いたが、C.difficile株の増殖が公知の通り困難であるため(例えば、嫌気性条件を必要とする)、やや異なる準備の方法を採用した。
【0066】
C.difficile株は、12〜20の前還元ブルセラ血液寒天プレートにストリークし、35℃で48時間、嫌気的にインキュベートした。各プレートを、5mlの滅菌蒸留水で満たし、プラスチック製の滅菌された細菌学的なループで細菌コロニーを寒天表面から軽く擦り取った。得られた細菌懸濁液を混合し、栄養型の細菌の浸透圧溶解が可能となるように密閉試験管内で、室温で20分間放置した。細菌懸濁液を、3,000×重力加速度で20分間遠心分離して、胞子および残った細菌細胞をペレットにした。上清を廃棄し、ペレットを5〜7mlの滅菌蒸留水に再懸濁し、強く混合して胞子および残った細菌細胞を再懸濁した。上記のステップを3回繰り返して、C.difficile胞子からなるペレットを作製した。残ったすべての栄養細菌を死滅させるために、最終懸濁液を加熱ブロックに入れ、70℃で20分間放置した。胞子を4℃で100%エタノールに保存した。この標本は、約1.5×10cfu/mlの胞子を有していた。胞子標本のグラム染色により、懸濁液が、胞子と非常に僅かな栄養細胞からなることが確認された。
【0067】
0.85%滅菌NaClでの胞子懸濁液の10倍の段階希釈を上述のように行い、次いで、0.1mlの各希釈液をBAK寒天プレートの表面に広げて接種を行った。C.difficile胞子の収量は、約6×10〜2×10cfu/mlであった。一部のプレートは、前述のように例示された装置内でオゾンに曝露し、他のプレートは、コントロールとして維持した。
【0068】
試験プレートは、21℃、80%の相対湿度で、35ppmのオゾンのオゾン/酸素混合物に90分間曝露した。続くインキュベーションは、嫌気性条件下で48時間とした。コントロールプレート(2枚の同一プレート)の溶出物は、10−2の希釈では113および50のcfuカウントであり、10−3の希釈では10−2および10のcfuカウントであったが;試験プレートの溶出物は、試験したいずれの希釈でもcfuを示さなかった。
【0069】
4logの減少(4log〜0)が達成された。
【0070】
実施例10
カーペットおよびカーテンなどの織物の汚染除去に関連した、殆どの近代的な病院が一般に直面している問題をシミュレーションするために行った実験から、静止気体環境よりも直接的な加圧気流の方が有効であることが明確に実証された。添付の図5に図式的に例示されている装置を使用した。実験が行われている間は閉じられたチャンバー100は、その一端の近傍に、生物膜が形成されるようにMRSAを含浸させて乾燥させた繊維状カーテン材料(滅菌された綿のガーゼ)の層(ディスク)104を保持するフレーム102を備えていた。オゾンを多く含む大気をチャンバーに送る。回転羽根108を備えた電気送風機106をガーゼから3cmの位置に配置して、チャンバー内のガスが高速でガーゼを通過してガーゼの物理的撹拌を起こすようにした。同様に含浸させたガーゼ112が露出するように配置された皿110をチャンバー100の他端の近傍に配置して、チャンバーの本質的に静止した大気に曝露されるようにした。同様に含浸させたが処置していないコントロールガーゼも評価した。
【0071】
結果が以下の表1に示されている。表1では、列A、B、C、およびDは、標準的な処置手順によって得られた、10倍の段階希釈での結果である。物理的に撹拌されたガーゼで測定された結果は、「直接」として記録する。本質的に静止した大気中のガーゼで測定された結果は、「間接」として記録する。
【0072】
すべての場合において、曝露時間が30分の、80%の相対湿度での80ppmのオゾンと1%Hの組み合わせが、1%Hとオゾン無しおよび80ppmのオゾンとH無しを含む他のすべての組み合わせよりも優れていることが証明された。これらの実験では、微生物処置手順に対して利用される方法論を、他の実験に関して上記した方法論と同じとした。したがって、カーペットおよび他の織物がよく見られる病院環境で6〜7logの細菌の死滅を達成するためには、オゾン/H加圧装置または物理的撹拌機が必須であるとの結論に達した。ここに示した実験および他の研究に基づいて、加圧装置によって達成可能な細菌死滅における改善は、2〜3log(100〜1000倍以上)程度である
【0073】
【表1】

【0074】
実施例11
試験細菌、すなわちクロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌(PAU);メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を前の実験で記載したように用意した(好気性細菌の用意については実施例1を、C.difficileの用意については実施例9を参照されたい)。枯草菌(炭疽菌の代用菌)は、この細菌をコロンビアヒツジ血液寒天プレートで、35℃で、室内で18〜24時間インキュベートして増殖させた点を除き、C.difficileの用意と同様に用意した。これらは別々に、プレートで24時間培養した。プレートから、4〜5の孤立したコロニーを選択し、0.85NaClに懸濁して、分光光度計を用いた測定で0.5マックファーランド濁度基準(1.5×10cfu/ml)となるようにした。種菌は、10−1、10−2、10−3、10−4、10−5、10−6、およ10−7cfu/mlの溶液となるように、0.1mlの元の0.5マックファーランド種菌(6×10倍)を0.9mlの0.85NaClブロスで連続段階希釈を行って用意した。微生物は、0.1mlの各溶液を、プレート上のコロンビアヒツジ血液寒天(好気性細菌用)またはブルセラ嫌気性血液寒天プレート(C.difficileおよび枯草菌用)の表面、またはステンレス鋼プレートに広げ、前述のように3点にプレーティングした。寒天上では、細菌は、プランクトンモードを維持する。ステンレス鋼上では、細菌を含む生物膜が形成される。
【0075】
ステンレス鋼プレート上での実験では、上記のように用意した40μlの元の種菌を、一連の直径1cmのステンレス鋼ディスクの表面に配置した。種菌スポットが乾燥するまで約45分間、これらを生物学的に安全なキャビネットで乾燥させた。ステンレス鋼ディスクを、試験チャンバーに移しやすいように滅菌ペトリ皿に入れた。乾燥したら、ペトリ皿の蓋をディスクの上に配置し、これらを、オゾン試験条件に曝露される処置位置に慎重に移した。適切な数のコントロールディスクは、生物学的に安全なキャビネットで覆ったまま放置し、オゾン試験条件には曝露しなかった。
【0076】
一部のプレートを、コントロールとして、例示されている装置内で、42〜80%の湿度、約22℃の室温で、90分間、80ppmのオゾンを用いてオゾン/酸素に曝露した。追加のコントロールは、オゾンでも過酸化水素でも処置しなかったが、同様に用意して曝露した。
【0077】
図4を参照して、試験プレートを、消毒チャンバー60内に取り付け、上述のようにオゾンおよび水蒸気で処置したが、ポート65を介して蒸気としてチャンバーに供給される過酸化水素をさらに用いた。消毒チャンバー60は、上述と同じ加熱器/冷却器システムおよびセンサーも含んでいた。
【0078】
本発明によって処置したプレートを、例示されている装置内で水溶液に空気を吹き付けて発生させた1%または3%の水溶液からの気体過酸化水素および80ppmのオゾンに曝露した。他の条件および曝露時間は、同じままとした。
【0079】
試験条件に曝露した直後に、非曝露コントロールディスクと同様に、ステンレス鋼ディスクを、ボルテックスミキサーを用いて高速で60秒間、10mlの0.85%滅菌生理食塩水中で強く撹拌してすべての生存している生細菌または胞子を溶出した。生細菌および死細菌の両方を含む溶出懸濁液を、0.85%滅菌生理食塩水で10倍に段階希釈し、希釈した細菌を、元の種菌濃度を決定するために、好気性細菌用のコロンビアヒツジ血液寒天プレートまたはC.difficile用のブルセラ嫌気性血液寒天プレートの3点に定量的にプレーティングし、適切な条件下でインキュベートした。生存コロニーのカウントを対数に変換して幾何平均を計算した。非曝露コントロールと曝露試験ディスクの細菌のカウントの差は、試験条件下で細菌の対数減少をもたらした。この処置手順で増殖が見られない場合は、生物膜内の細菌の100%が、オゾン/過酸化水素への曝露によって死滅したことになる。
【0080】
曝露後の寒天プレートをインキュベーターで24時間培養した。次いで、プレートを染色し、顕微鏡で検査し、各プレートのコロニー形成単位の数をカウントした。
【0081】
曝露される前の最初のプレートと比較して、寒天プレートまたはステンレス鋼プレートにおける生細菌の1/10の減少として、結果が以下の表2に示されている。したがって、値1は、有意な効果と見なされないコントロールサンプルに対して1/10または1logの減少を意味する。生細菌における5logまたは99.999%の減少を意味する値5が達成され、実用的に「完全な消毒」と呼ぶに十分である。生細菌における6logまたは99.9999%の減少を意味する値6が達成され、これは、「滅菌」として国際的(CDC)に定義されている。細菌株は、前の実験で報告したように用意した。枯草菌は、ATCC19659胞子とした。
【0082】
【表2】

【0083】
実施例12
以下の表3、表4、表5、表6、表7、および表8は、実験の概要を示し、オゾン、H、湿度、および曝露時間の組み合わせを、ステンレス鋼ディスクなどの非多孔質表面に生物膜として人工的に適用されたときに次の細菌:前と同じ大腸菌;緑膿菌(PAU);枯草菌(炭疽菌の代用菌);クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);バンコマイシン耐性腸球菌(VRE);およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を除去する能力について評価した。
【0084】
試験用のステンレス鋼ディスクおよび試験用の寒天プレートを、前の実施例に記載されているように用意し、以下の表に示されている曝露条件で曝露し、試験した。ある場合には、「チャンバー」として表し、試験を、全体が図4に示されている装置を用いて実施例10に記載されているように行った。別の場合には、「部屋」として表し、試験を、全体が図1に例示されている密閉された部屋の中でディスクおよびプレートを曝露して行った。
【0085】
以下の表の結果は、数分以内の曝露後の期間(PEEP)、すなわち結果を決定するためのオゾン/過酸化水素の曝露の終了と処置手順の開始との間の時間間隔についても報告している。これは、細菌が消毒処置後に一定時間の間に死滅する、病室および同様の環境における消毒の実際の実施をシミュレーションしている。これを可能にするために、オゾン/過酸化水素の曝露が終了した時間から少なくとも25分が経過してから、消毒した部屋を通常の用途に戻すのが好ましい。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】




【0092】
枯草菌についての試験結果は、80%の相対湿度での80ppmのオゾン、1%のHでは、これらの好気性胞子が90分間曝露されると6log(+)の減少となることを明確に示している。この細菌のユニークさと、炭疽菌の代用菌として日常的に使用されるという事実から、処置パラメーターの上記の組み合わせにより、この装置が、生物兵器テロの対策において非常に有効になる。
【0093】
緑膿菌についての試験結果は、80%の相対湿度での80ppmのオゾン、1%のHでは、25分間の曝露時間で、100%死滅(7+log)することを明確に示している。同じ試験結果が、ステンレス鋼ディスク上の大腸菌サンプルの生物膜が、80%の相対湿度で、80ppmのオゾンおよび1%のHの組み合わせに25分間曝露されたときにも観察された。
【0094】
クロストリジウム・ディフィシレおよびバンコマイシン耐性腸球菌については、80ppmのオゾン、1%のH、および80%の相対湿度の同じ組み合わせが、ステンレス鋼表面に配置され45分間曝露された生物膜中の細菌の100%除去の達成に非常に有効であること証明した。
【0095】
上の表8で要約された結果は、80ppmのオゾン、1%のH、および80%の相対湿度の同じ組み合わせが、MRSAの生物膜が30分間曝露されたときに100%の死滅(6+logの減少)を達成することを明確に実証している。
【0096】
結論
上の表に示されているデータは、本発明によるプロセスが、ステンレス鋼などの非多孔質の硬い表面における生物膜標本内に含まれる細菌を完全に除去できることを明確に実証している。病院内で見られる一般的な病原体に対しては、曝露時間の僅かな調整が必要であり(25分〜45分)、枯草菌、従ってその従兄弟である炭疽菌では、ほぼ2倍の曝露時間が必要であるが、これらの病原体は病院では殆ど問題となっていない。
【0097】
したがって、本発明の一態様は、部屋を消毒するプロセスであって、部屋の中に酸素/オゾンガス混合物を導入するステップと、部屋の中の圧力を大気圧よりも高くするステップと、部屋の中の繊維表面および多孔質表面が少なくとも65%の相対湿度のオゾン含有大気に曝露されている間、これらの表面を物理的に撹拌するステップと、部屋を大気圧に戻すステップと、部屋の大気から残留オゾンを最大0.04ppmのレベルまで除去するステップとを含むプロセスである。
【0098】
本発明の別の態様は、オゾンで部屋および部屋の中の表面を消毒するための運搬可能なシステムであって、酸素コンテナと、この酸素コンテナから医療グレードの酸素が供給されて、酸素とオゾンの混合物を放出するオゾン生成器と、酸素とオゾンの混合物中のオゾンの割合を制御するように構成されたオゾン制御装置と、オゾン生成器からの酸素とオゾンの混合物を受け取る、出口端部を備えた放出管と、放出管から排出される酸素/オゾン混合物で表面を物理的に撹拌する、放出管の出口端部にある物理的撹拌システムと、物理的撹拌システムによって放出される酸素/オゾン混合物の圧力および処置されている部屋の酸素/オゾンガスの圧力を調節するように構成された、オゾン生成器に接続された圧力調節手段と、物理的撹拌システムによって放出される酸素/オゾン混合物の温度を調節するように構成された、オゾン生成器に接続された温度調節手段と、処置部位を65%以上の相対湿度まで加湿するように構成された湿度調節手段と、放出管の使用環境から酸素/オゾン混合物を受け取り、この混合物からオゾンを除去するように構成されたオゾン除去装置とを備える、システムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部屋の中の閉じられた空間内の細菌および前記部屋の中の表面の生物膜に含まれる細菌を駆除するプロセスであって、
少なくとも60%の相対湿度で、2〜350重量ppmの濃度のオゾンおよび0.2〜10重量%の量の過酸化水素を含む消毒大気を前記部屋で生成するステップと、
超薄膜内の細菌の効果的な死滅に十分な少なくとも30分間にわたって、内部に生細菌を有する生物膜を備えた表面を前記消毒大気に曝露するステップと、
続いて前記大気からオゾンを0.04ppm以下まで除去するステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記曝露の時間が、約30分〜約120分である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項3】
前記消毒大気中の前記オゾン濃度が、20〜200ppmである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記消毒大気中の前記オゾン濃度が、35〜100ppmである、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記過酸化水素の量が、0.5〜10%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記消毒大気中の前記過酸化水素の量が、1〜5%である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
駆除される前記細菌が、クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);バンコマイシン耐性腸球菌(VRE);または前記細菌の2つ以上の組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
処置される前記細菌が、枯草菌若しくは炭疽菌、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記部屋の中の多孔質表面および繊維表面を、前記消毒大気に曝露している間、物理的に撹拌するステップをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記物理的撹拌が、剛毛を当てて行われる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記物理的撹拌が、空気圧ジェットを当てて行われる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項12】
前記物理的撹拌が、物理的な撹乱を起こすことができる超音波エネルギー、高周波エネルギー、または電磁波を当てて行われる、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
前記生物膜を備えた表面が、前記消毒大気の局所ストリームに曝露される、請求項1〜12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記生物膜を備えた表面が前記消毒大気に曝露されるときの前記消毒大気の圧力が、大気圧よりも高い、請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記消毒大気の圧力が、14.7〜100psiである、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
部屋およびその中の表面を消毒するプロセスであって、
前記部屋の中に酸素/オゾンガス混合物を導入するステップと、
前記部屋の中の圧力を大気圧よりも高くするステップと、
前記部屋の中の繊維表面および多孔質表面が、少なくとも70%の相対湿度のオゾン含有大気に曝露されている間、前記表面を物理的に撹拌するステップと、
前記部屋を大気圧に戻すステップと、
前記部屋の大気から残留オゾンを最大でも0.04ppmのレベルまで除去するステップと、を含む、プロセス。
【請求項17】
前記オゾンを、混合された酸素/オゾンガスとして前記部屋の大気に送達して、前記オゾンが約10〜100ppmの量で存在するようにする、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記オゾンを、混合された酸素/オゾンガスとして前記部屋の大気に送達して、前記オゾンが約30〜90ppmの量で存在するようにする、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記オゾンを、混合された酸素/オゾンガスとして前記部屋の大気に送達して、前記オゾンが約35〜80ppmの量で存在するようにする、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記部屋の中の圧力を、14.7psi〜100psiに上げる、請求項16〜19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記部屋およびその表面を、約45〜120分間にわたって酸素/オゾン混合物に曝露する、請求項16〜20のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項22】
前記部屋およびその表面を、約60〜105分間にわたって酸素/オゾン混合物に曝露する、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
細菌クロストリジウム・ディフィシレ(C.difficile);大腸菌;緑膿菌;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA);およびバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の少なくとも1つの消毒に利用される、請求項16〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
有効量の過酸化水素を前記部屋に導入するステップをさらに含む、請求項16〜23のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項25】
部屋およびその中の表面をオゾンで消毒するための運搬可能なシステムであって、
酸素とオゾンの混合物を放出するオゾン生成器と、
前記酸素とオゾンの混合物中のオゾンの割合を制御するように構成されたオゾン制御装置と、
前記オゾン生成器からの前記酸素とオゾンの混合物を受け取る、出口端部を有する放出管と、
前記放出管の前記出口端部から排出される酸素/オゾン混合物で表面を物理的に撹拌する、前記放出管の前記出口端部にある物理的撹拌システムと、
前記物理的撹拌システムによって放出される前記酸素/オゾン混合物の圧力および処置されている前記部屋の前記酸素/オゾンガスの圧力を調節するように構成された、前記オゾン生成器に接続された圧力調節手段と、
擦り落としシステムによって放出される前記酸素/オゾン混合物の温度を調節するように構成された、前記オゾン生成器に接続された温度調節手段と、
少なくとも65%の相対湿度に処置位置を加湿するように構成された湿度調節手段と、
前記放出管の使用環境から酸素/オゾン混合物を受け取り、前記混合物からオゾンを除去するように構成されたオゾン除去装置と、を含む、システム。
【請求項26】
前記湿度調節手段が、前記オゾン生成器と酸素コンテナとの間に配設された加湿器であり、前記酸素コンテナが入力側であり、前記オゾン生成器が出力側である、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記オゾン生成器に、医療グレードの酸素が供給され、前記オゾン制御装置が、前記オゾン生成器内に配設された放電プレートであり、前記オゾン生成器に供給される前記酸素ガスに可変制御電圧を供給するように構成されている、請求項25または26に記載のシステム。
【請求項28】
前記物理的撹拌システムが、少なくとも1つのジェットノズル出口を備える、請求項25〜27のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項29】
前記物理的撹拌システムが、前記ジェットノズル出口に近接して配設された、前記ジェットノズル出口の放出端部よりも僅かに下まで突き出ている剛毛をさらに備える、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
前記オゾン生成器が、前記放出管に加えて、前記部屋への少なくとも1つの酸素/オゾン出口を備える、請求項25〜29のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムを積んで運搬するための台車をさらに備える、請求項25〜30のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項32】
部屋、その中の表面およびその中の機器を消毒するための運搬可能なシステムであって、
オゾンを含む気体混合物を前記部屋に放出するためのオゾン生成器と、
放出されるオゾンの量を制御するように構成されたオゾン制御装置と、
制御された量の過酸化水素を前記部屋に放出するための過酸化水素の供給源と、
前記過酸化水素およびオゾンを前記部屋に放出するための手段と、
処置中に前記部屋の相対湿度を増減するように構成された湿度調節手段と、
後の人間の利用のために前記部屋の大気中のオゾンを安全なレベルまで破壊するように構成されたオゾン除去装置と、を含む、システム。
【請求項33】
前記過酸化水素およびオゾンを前記部屋に放出するための前記手段が、出口端部を有する放出ワンドを備える、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記放出ワンドの前記出口端部が、前記出口端部が当てられる表面を撹拌して撹乱するための払い落としシステムを備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記払い落としシステムが、ジェットノズル出口である、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記払い落としシステムが、擦る動作をするための剛毛を備える、請求項34または35に記載のシステム。
【請求項37】
過酸化水素ガスおよびオゾンを放出するための前記手段が、前記ワンドをバイパスする出口をさらに備える、請求項32〜36のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項38】
前記システムを積んで運搬するための台車をさらに備える、請求項32〜37のいずれか1項に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−531979(P2012−531979A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518702(P2012−518702)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000998
【国際公開番号】WO2011/003179
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(511314245)メディゾーン インターナショナル インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】