説明

醤油の製造方法

本発明は、炭水化物結合モジュールを含んで成るデンプン分解酵素を用いての醤油の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物結合モジュールを含んで成るデンプン分解酵素を用いての醤油の製造法方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
様油は、大豆及び任意には他の植物成分、例えば小麦及び米から製造される。その工程の間、所望には、澱粉及び他の炭水化物が糖に分解され、この糖が香気化合物の形成のためのエネルギー源及び基質としての発酵のために使用される微生物により利用され得る。澱粉の分解は従来、こうじ発酵の間に使用される培養物により生成されるデンプン分解酵素により達成される。澱粉加水分解の効率は、醤油の製造のために重要である。
【発明の開示】
【0003】
発明の要約:
本発明者は、炭水化物結合モジュール(CBM)を含んで成るデンプン分解酵素の使用が、醤油製造のために適切な条件下でCBMを有さないデンプン分解酵素に比較して、高められた澱粉加水分解速度を導くことを見出した。
【0004】
従って、本発明は、i) デンプン分解酵素により植物材料を処理し;そしてii) 前記処理された植物材料から醤油を生成することを含んで成り、ここで前記デンプン分解酵素が炭水化物結合モジュールを含んで成る、醤油の生成方法に関する。さらなる観点においては、本発明は、炭水化物結合モジュールを含んで成るデンプン分解酵素の醤油の生成のためへの使用、及び本発明の方法により得られる醤油に関する。
発明の特定の開示:
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
酵素
本発明において使用される酵素は、炭水化物結合モジュール(CBM)を含んで成るデンプン分解酵素である。デンプン分解酵素は、澱粉及び関連するオリゴ糖及び多糖を分解できる酵素である。好ましいデンプン分解酵素は、αアミラーゼ(EC 3.2.1.1 )、β−アミラーゼ(EC 3.2.1.2)、マルトゲン性α−アミラーゼ(EC 3.2.1 .133)及びグルコアミラーゼ(EC 3.2.1 .3)である。EC(酵素委員会)番号は、Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular Biology (IUBMB)の酵素定義を言及する。
【0006】
炭水化物結合モジュール(CBM)、又はしばしば言及されるような炭水化物結合ドメイン(CBD)は、多糖又はオリゴ糖(炭水化物)に、但し必ずしも独占的ではないが、その水不溶性(結晶を包含する)形に選択的に結合するオリゴペプチドアミノ酸配列である。
澱粉分解酵素に由来するCBMはしばしば、澱粉結合モジュール又はSBM(一定の澱粉分解酵素、例えば一定のグルコアミラーゼ、又は酵素、例えばシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ、又はエンドアミラーゼにおいて生じ得るCBM)として言及される。SBMはしばした、SBD(澱粉結合ドメイン)として言及される。澱粉結合モジュールであるCBMが本発明のために好ましい。
【0007】
CBMは、特に基質加水分解のための活性部位を含む触媒モジュール、及び問題の炭水化物基質に結合するための炭水化物結合モジュール(CBM)を典型的には含んで成る加水分解酵素(ヒドロラーゼ)において、複数のポリペプチドアミノ酸配列領域から成る大きなポリペプチド又はタンパク質の内在性部分として見出される。そのような酵素は、1つよりも多くの触媒モジュール、及び1,2又は3個のCBMを含んで成り、そして任意にはさらに、CBMと触媒モジュール、及び1,2又は3個のCBMを含んで成り、そして任意にはさらに、CBMと触媒モジュールとを結合する、1又は複数のポリペプチドアミノ酸配列領域を含んで成り、後者のタイプの領域は通常、“リンカー”として示される。CBMはまた、藻類において、例えば紅藻類ポルフィラ・パープレア(Porphra purpurea)において、非加水分解多糖−結合タンパク質の形で見出されている。
【0008】
CBMが存在するタンパク質/ポリペプチド(例えば、酵素、典型的には加水分解酵素)においては、CBMはN又はC末端、又は内部位置に位置することができる。
【0009】
CBM自体を構成するポリペプチド又はタンパク質(例えば、加水分解酵素)のその部分は、典型的には、約30〜約250個のアミノ酸残基から成る。“ファミリー20の炭水化物結合モジュール”又はCBM−20モジュールは、本発明においては、Joergensen et al (1997) in Biotechnol. Lett. 19:1027-1031により図1に開示されるポリペプチドの炭水化物結合モジュール(CBM)に対して少なくとも45%の同一性を有する。約100個のアミノ酸配列として定義される。CBMは前記ポリペプチドの最後の102個のアミノ酸、すなわちアミノ酸582〜アミノ酸683の副配列を含んで成る。
【0010】
この開示に適用されるグリコシドヒドロラーゼファミリーの番号付けは、URL: http://afmb.cnrs-mrs.fr/-cazy/CAZY/index.htmlでのCoutinho, P.M. & Henrissat, B. (1999) CAZy - Carbohydrate-Active Enzymesサーバー、又は他方では、Coutinho, P.M. & Henrissat, B. 1999; The modular structure of cellulases and other carbohydrate-active enzymes: an integrated database approach. In "Genetics, Biochemistry and Ecology of Cellulose Degradation", K. Ohmiya, K. Hayashi, K. Sakka, Y. Kobayashi, S. Karita and T. Kimura eds., Uni Publishers Co., Tokyo, pp. 15-23, and Bourne, Y. & Henrissat, B. 2001 ; Glycoside hydrolases and glycosyltransferases: families and functional modules, Current Opinion in Structural Biology 11 :593-600の概念に従う。
【0011】
本発明への使用のために適切なCBMを含んで成る酵素の例は、エンドアミラーゼ(すなわち、EC3,2,1,1でのα−アミラーゼ)、マルトゲン性α−アミラーゼ(EC3.2.1.133),グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)及びCGTアーゼ(EC2.4.1.19)である。
本発明のCBMを含んで成るデンプン分解酵素は、CBMを天然において含んで成る野生型酵素であり得るか、又はそれは組換え酵素であり得る。本発明の1つの態様においては、CBMを含んで成るデンプン分解酵素は、澱粉分解活性を有する触媒モジュールのアミノ酸配列、及び炭水化物結合モジュールのアミノ酸配列を含んで成るハイブリッド酵素である。
【0012】
炭水化物結合モジュールファミリー20のCBMが本発明のために好ましい。本発明のために適切な炭水化物結合モジュールファミリー20のCBMは、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)(SWISSPROT P36924)のβ−アミラーゼ、又はバチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)(SWISSPROT P43379)のCGTアーゼに由来する。上記に言及されるCBMアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又はさらに少なくとも90%の同一性を有するいずれかのCBMが、本発明のために好ましい。炭水化物結合モジュールファミリー20のさらに適切なCBMは、URL:http://afmb.cnrs-mrs.fr/-cazy/CAZY/index.html)で見出され得る。
【0013】
基質結合(炭水化物結合)領域をコードするヌクレオチド配列がcDNA又は染色体DNAとして同定されると、それは次に、それを興味ある酵素活性をコードするDNA配列に融合するために種々の手段で操作され得る。炭水化物結合アミノ酸配列をコードするDNAフラグメント、及び興味ある酵素をコードするDNAが、リンカーにより又はリンカーを伴わないで連結される。次に、得られる結合されたDNAは、発現を達成するために種々の手段で操作され得る。
【0014】
細菌由来のCBMは一般的に、本発明への使用のために適切であるが、しかしながら、バチルス起源のCBM、例えばバチルス・フラボサーマス(Bacillus Flavothermus)(アノキシバチルス・コンタミナンスに類似する)、好ましくはAMY1048(WO2005/003311号)、AMY1039又はAMY1079(WO2005/001064号において、それぞれ配列番号1,2及び3として開示される)からのCBM20であり、前記バシルスアミラーゼは、Diversa, Bacillus sp. TS23 (Korea) (LJn1L-L; Submitted (01 -MAR-1995) to the EMBL/GenBank/DDBJ databases. Long-Liu Lin, Food Industry Research Institute, Culture Collection and Research Center, 331 Food Road, Hsinchu, Taiwan 300, Republic of China)からのWO2002/068589号に開示される。
【0015】
本明細書において言及されるような、ハイブリッド酵素又は遺伝子的に修飾された野生型酵素は、炭水化物結合モジュール(CBM)を含んで成るアミノ酸配列に結合される(すなわち共有結合される)α−デンプン分解酵素(EC3.2.1.1)のアミノ酸配列を含んで成る種を包含する。
【0016】
CBM−含有ハイブリッド酵素、及びその調製及び精製の詳細な記載は、当業界において知られている(例えば、WO 90/00609号, WO 94/24158号 及びWO 95/16782号, 並びに Greenwood など. Biotechnology and Bioengineering 44 (1994) pp. 1295-1305を参照のこと)。それらは、興味ある酵素コードするDNA配列に、リンカーにより又はそれを伴わないで連結される炭水化物結合モジュールをコードするDNAのフラグメントを少なくとも含んで成るDNA構造体を用いて宿主細胞を形質転換し、そして前記形質転換された宿主細胞を増殖し、融合された遺伝子を発現することにより調製され得る。得られる組換え生成物(ハイブリッド酵素)(しばしば、“融合タンパク質”として当業界において言及される)は、下記一般式により記載され得る:
A−CBM−MR−X
【0017】
上記式中、A−CBMは、炭水化物結合モジュール(CBM)それ自体を少なくとも含んで成るアミノ酸配列のN−末端又はC−末端である。MRは中間領域(“リンカー”)であり、そしてXは、CBMが結合される酵素(又は他のタンパク質)をコードするDNA配列によりコードされるポリペプチドのアミノ酸残基の配列である。
【0018】
成分Aは、不在であるか(A−CBMがCBM自体であり、すなわちCBMを構成するそれらの残基以外のアミノ酸残基を含まない)、又は1又は複数のアミノ酸残基の配列(CBM自体の末端延長として機能する)であり得る。リンカー(MR)は、結合、又は約2〜約100個の炭素原子、特に2〜40個の炭素原子を含んで成る短い結合であり得る。しかしながら、MRは好ましくは、約2〜約100個のアミノ酸残基、より好ましくは2〜40個のアミノ酸残基、例えば2〜15個のアミノ酸残基の配列である。
【0019】
成分Xは、全体のハイブリッド酵素のN−末端又はC−末端領域のいずれかを構成することができる。
従って、問題のハイブリッド酵素におけるCBMが、ハイブリッド酵素におけるC−末端、N−末端又は内在的に位置することができることが上記から明らかであろう。
【0020】
好ましい態様においては、本発明のCBMを含んで成るデンプン分解酵素は、デンプン結合ドメインを含んで成るα−アミラーゼ、例えば澱粉結合ドメインを含んで成り、そして生澱粉に対する活性を有する酸α−アミラーゼである。本発明への使用のために適切な澱粉結合ドメインを含んで成るα−アミラーゼは、ハイブリッド酵素であるか、又はポリペプチドは、α−アミラーゼ活性及び澱粉結合ドメインを有する触媒モジュールを常に含んで成る野生型酵素であり得る。本発明の方法に使用されるポリペプチドはまた、そのような野生型酵素の変異体でもあり得る。
【0021】
澱粉結合ドメインを含んで成る適切なα−アミラーゼは、WO2005/003311A2に開示される。配列番号2,3又は4としてWO2006/066579号に、又は配列番号2又は12としてWO2006/066596号に開示されるアミノ酸配列、又はα−アミラーゼ活性を有し、そして澱粉結合ドメインを含んで成るいずれかのポリペプチド、又は上記に言及されるアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又はさらに、少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドを有するアミラーゼが好ましい。
【0022】
特定の態様においては、α−アミラーゼは、好ましくはB. リケニホルミス(B. licheniformis)、B.アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)及びB. ステアロサーモフィラス(B. stearothermophilus)由来の細菌α−アミラーゼである。
【0023】
本発明の方法においては、CBMを含んで成るデンプン分解酵素が生成され得る。用語“精製された”とは、本明細書において使用される場合、デンプン分解酵素が由来する生成物からの成分を有さないその酵素タンパク質を包含する。用語“精製された”とは、デンプン分解酵素が得られる生来の生物からの成分を有さないその酵素タンパク質も包含し、これはまた、“実質的に純粋な”デンプン分解酵素とも呼ばれ、そして天然に存在し、そして遺伝子的に、例えば1又は複数のアミノ酸残基の欠失、置換又は挿入により修飾されていないデンプン分解酵素のために特に適切である。
【0024】
従って、CBMを含んで成るデンプン分解酵素は、精製され得、すなわちわずかな少量の他のタンパク質が存在する。表現“他のタンパク質”とは、特に他の酵素に関する。用語“精製された”とは、本明細書において使用される場合、他の成分、特に他のタンパク質及び最も特定には、デンプン分解酵素の起源の細胞に存在する他の酵素の除去を言及する。デンプン分解酵素は、“実質的に純粋”であり、すなわち他の成分が生成される生物、例えば組換え的に生成されるデンプン分解酵素のための宿主生物からのその成分を有さない。好ましくは、酵素は、少なくとも75%(w/w)純粋、より好ましくは少なくとも80%、85%、90%又はさらに少なくとも95%純粋である。さらにより好ましい態様においては、デンプン分解酵素は、少なくとも98%純粋な酵素タンパク質調製物である。
【0025】
本発明の方法に使用される特定の酵素は、当業界において良く知られている方法により、当業者により選択され得る。活性的である酵素が所望される醤油工程の一部の条件下で所望する活性を有する酵素が選択され、例えば酵素は、醤油製造工程において使用される高NaCl濃度及び低pH下でその活性について選択され得る。
【0026】
醤油
醤油は、大豆又は大豆由来の材料に基づいて淡褐色〜黒色の液体型香辛料であり、食肉のような塩気のある風味を有し、調味料として、特にオリエンタルフードに使用される。醤油の製造においては、植物成分、例えば大豆又は大豆由来の材料、例えば大豆ミール、脱脂された大豆、及び脱脂された大豆ミール;小麦;小麦由来の材料;米;米由来の材料;及び大麦が使用される。醤油の主成分は通常、大豆又は脱脂された大豆ミール、小麦、塩及び水である。従来、醤油は、発酵工程により製造されるが、しかし発酵されていない醤油もまた製造され得る。
【0027】
発酵された醤油は通常、次の段階で製造される:こうじの調製、ブライン発酵(もろみ発酵)、濾過/低温殺菌、及び熟成。
【0028】
こうじは通常、調製された大豆又は調理された、脱脂された大豆ミールと、蒸焼きされた小麦とを混合することにより調製される。次に、その混合物は、通常アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)及び/又はアスペルギラス・ソジャエ(Aspergillus sojae)の開始培養物により接種され、そして好気性発酵のために浅いベッドに数日間、発酵される。発酵の後、こうじがブライン発酵(もろみ発酵)のためにタンクに移される。塩ブラインが添加され、通常16〜18%の合計NaCl含有率が得られ、そしてそれが通常、さらなる嫌気性発酵のために酵母及び乳酸菌培養物により接種される。得られる混合物は、もろみとして言及される。数日の発酵の後、粗醤油はもろみから圧縮され、濾過され、低温殺菌され、そして発酵のために、しばしば数ヶ月間、静置され、又はもろみは、発酵が終わるまで、発酵のために静置され、濾過される場合、消費のためにボトルにつめられる。
【0029】
こうじ及びもろみ発酵工程の間、炭水化物、例えば澱粉が加水分解され、そして得られる糖が、もろみ発酵の間、発酵され、風味及び少量のアルコール及び乳酸が生成され、そしてタンパク質がペプチド及びアミノ酸に分解される。それらの工程は、発酵された醤油の典型的な複数な風味の開発のために重要である。
【0030】
発酵されていない醤油は通常、加水分解された植物タンパク質、典型的には、例えば大豆、脱脂された大豆、小麦、小麦由来の材料、米、米由来の材料及び/又は大豆(これに、追加の成分、例えばカラメル着色剤、コーンシロップ及び塩が添加される)の酸加水分解物から調製される。
【0031】
醤油は、減塩された醤油として製造され得る。発酵された醤油の場合、これは通常、濾過及び/又はイオン交換により醤油から塩を除去することにより達成される。最終醤油は通常、4〜6.5のpH及び13〜22%のNaClの塩含有率(w/w)を有し、但し減塩された醤油は6%のNaClを有する。
【0032】
酵素処理
CBMを含んで成るデンプン分解酵素による植物材料の処理は、当業界において知られているいずれかの方法により行われ得る。処理は例えば、植物材料のスラリーに酵素を添加することにより、又は原料上に酵素を噴霧することによりもたらされ得る。酵素は例えば、こうじ発酵の前又は間、添加されるか、又は酵素は例えばもろみ発酵の前又は間、添加され得る。醤油のすべての成分は、同時にデンプン分解酵素により処理されるか、又は醤油の1又は複数の植物成分は、追加の成分と共に混合する前、処理され得る。本発明の1つの態様においては、デンプン分解酵素により処理される植物材料は、大豆及び/又は大豆由来の材料を包含する。
【0033】
本発明のもう1つの態様においては、デンプン分解酵素により処理される植物材料は、小麦;小麦由来の材料、例えば小麦粉又は小麦澱粉;米;及び/又は米由来の材料、例えば米澱粉を包含する。澱粉含有成分は、醤油の他の成分と共に混合される前、別々にデンプン分解酵素により処理され、例えば小麦、小麦澱粉、米及び/又は米澱粉はデンプン分解酵素により別々に処理され、そして大豆及び/又は大豆由来の材料、及び他の成分は、デンプン分解酵素による処理の前、添加され得る。従って、本発明の1つの態様においては、大豆及び/又は大豆由来の材料が、段階i)の後、処理された植物材料に添加される。
【0034】
使用される酵素の量は、こうじ培養物自体の澱粉加水分解に比較して、澱粉加水分解を高めるのに十分であるべきである。本発明の1つの態様においては、CBMを含んで成るデンプン分解酵素の量は、デンプン分解酵素が添加されていない類似する工程に比較して、デンプン加水分解の程度を高めるのに十分である。本発明のもう1つの態様においては、CBMを含んで成るデンプン分解酵素の量は、CBMを有さないデンプン分解酵素が添加される類似する工程に比較して、デンプン加水分解の程度を高めるのに十分である。CBMを含んで成るデンプン分解酵素は、酵素が作用すべき醤油工程の条件、例えば25〜45℃の温度、及び例えば17〜18%のもろみ発酵段階における塩(NaCl)濃度下で十分な活性を有する量で添加されるべきである。
【0035】
1つの態様においては、本発明は、本発明の方法により得ることができるか、又は得られる醤油に関する。さらなる態様においては、本発明は、醤油の製造のためへの炭水化物結合モジュールを含んで成るデンプン分解酵素の使用に関する。
【実施例】
【0036】
酵素
CBMを有する2種の細菌性α−アミラーゼ:
AMY1048:アミノ酸は、WO2006/066596号に配列番号2として与えられている。CBMを含んで成る、バチルス・フラボサーマス(アノキシバチルス・コンタミナンスに類似する)からの野生型α−アミラーゼ。触媒ドメインは、アミノ酸1〜484であり、そしてCBMは、WO2006/066596号の配列番号2のアミノ酸485〜586である。
【0037】
AX379+CBM:アミノ酸配列は、WO2006/066596号に配列番号12として与えられている。酵素は、バチルスα−アミラーゼ及びAMY1048からのCBMのハイブリッドである。
CBMを有さない2種の細菌性α−アミラーゼ:
CBMを有さないAMY1048:アミノ酸配列は、WO2006/066596号に配列番号2のアミノ酸1〜484として与えられている。
AX379:アミノ酸配列は、WO2006/066596号に配列番号12のアミノ酸1〜484として与えられる。
【0038】
実施例は、細菌性α−アミラーゼを用いて還元末端の上昇により測定されるように、可溶性オリゴ糖への小麦粉の加水分解を示す。1%(w/w)の乾燥固形物(DS)小麦粉を有するスラリーを、50mMの酢酸ナトリウム、pH5.0、20%NaClにおいて調製した。1mlの小麦粉スラリーを、試験管に分配した。その試験管を、25℃のサーモミキサー上でインキュベートした。ゼロ分で、酵素を試験管に分配した(160μg/g乾燥固形物)。36、64及び90分後、サンプルを採取した。
【0039】
オリゴ糖の開放を、DNS−試薬方法を用いて、還元末端の上昇を測定することにより決定した:
DNS−試薬:1gの3,5−ジニトロサリチル酸を、20mlの2NのNaOH及び50mlの水に溶解し、そして続いて、30gのRochelle塩(酒石酸カリウム四水和物)を添加し、そしてその溶液を約70℃に加熱し、そして続いて水により100mlに調節した。
【0040】
開放された還元糖を、50μlの反応混合物を50μlのDNS−試薬と共に100℃で10分間インキュベートすることにより決定した。煮沸の後、250μlの水を添加し、そして550nmでの吸光度を測定した。開放された還元糖の量を、D−グルコース標準曲線を用いて定量化した。結果は表1に示される。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i) デンプン分解酵素により植物材料を処理し;そして
ii) 前記処理された植物材料から醤油を生成することを含んで成り、ここで前記デンプン分解酵素が炭水化物結合モジュールを含んで成る、醤油の製造方法。
【請求項2】
前記デンプン分解酵素が、もろみ発酵工程の前又は間、添加される請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記デンプン分解酵素が、こうじ発酵工程の前又は間、添加される請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記デンプン分解酵素が、炭水化物結合モジュールを含んで成るα−アミラーゼである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記デンプン分解酵素が、炭水化物結合モジュールを含んで成る細菌α−アミラーゼである請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記植物材料が大豆及び/又は大豆由来の材料を包含する請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
大豆及び/又は大豆由来の材料が、段階i)の後、前記処理された植物材料に添加される請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記植物材料が、小麦、小麦由来の材料、米及び/又は米由来の材料を包含する請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記工程が、段階ii)においてこうじ培養物との発酵を包含する請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記工程が、段階ii)においてもろみ培養物との発酵を包含する請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
段階i)が、段階ii)の間、実施される請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
炭水化物結合モジュールを含んで成るデンプン分解酵素の醤油の生成のためへの使用。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項記載の方法により得られる醤油。

【公表番号】特表2009−521943(P2009−521943A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549008(P2008−549008)
【出願日】平成19年1月3日(2007.1.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050058
【国際公開番号】WO2007/077244
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】