説明

醸造酢及びその製造法

【課題】 魚節の製造により発生する煮熟液を原料として用い、生臭さなどの臭気が低減し酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有し、タウリン、グルタミン酸、必須アミノ酸を高含有する醸造酢及び簡易、迅速に製造し、加えて煮熟液の廃水処理を不要とし、環境保護を図ることができる醸造酢を製造する方法を提供する。
【解決手段】 魚節の製造により副生する煮熟液に麹または糖類を加えこれに酵母を添加してアルコール発酵後、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことにより、タウリン、グルタミン酸、必須アミノ酸を高含有し、且つ、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減し、酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有した醸造酢を製造する。前記のアルコール発酵を省いて、アルコールを添加後、酢酸菌を入れて酢酸発酵させてもよい。また、煮熟液にプロテアーゼを添加した後、アルコール発酵及び酢酸発酵をさせてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醸造酢及びその製造方法に関し、詳しくは魚節の製造により副生される煮熟液を原料とした醸造酢及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚節の主要な物として、鰹節が挙げられる。この製造工程で副生する煮熟液はタウリン、グルタミン酸、必須アミノ酸を含んでいる。しかしながら、魚類特有の生臭さなどの臭気を有しているため、そのまま食品に利用されることはなく、濾過、濃縮して調味料エキスとして食品の添加物として利用されている。しかしながら、調味料エキスは生臭さなどの臭気が残存しているため、利用できる食品が限られており、価値の低いものとして扱われている。そのため、煮熟液の一部は活性汚泥による廃水処理に回されているため、処理槽に負荷がかかる。このような現状において、煮熟液の新用途開発は魚節製造業者や調味料エキス製造業者の新産業分野への展開や、資源活用、環境保護の点でも重要な問題となっている。
【0003】
タウリンは、アミノ酸の一種で、植物以外のほとんどの生物に存在し、体の各部分の機能を高めることで様々な症状や病気に対する抵抗力をつけ、疲労を回復させたり、生活習慣病の予防や改善、血圧降下作用、総コレステロール値の低下、善玉コレステロール値の増加等の様々な働きに関与するといわれている。
【0004】
また、グルタミン酸は、アミノ酸の一種であり、旨味成分として広く知られている。更に、必須アミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリンであり、人の体内で合成できないアミノ酸であるため必ず食事として摂取する必要がある。
【0005】
一方、市販されている醸造酢は、調味料として利用されていたが、最近はアミノ酸、ビタミン、ミネラル等の栄養成分を豊富に含み、血圧降下作用、総コレステロール値の低下作用等が認められており、機能性食品としてもその重要性がクローズアップされており、需要の拡大が見込まれている。しかしながら、グルタミン酸及び必須アミノ酸は5〜40mg/100mlであり、グルタミン酸及び必須アミノ酸がさらに高含量の醸造酢の出現や、消費者のニーズに合った、人体の健康増進の上で有用な成分を多種かつ多量に含んだ新しいタイプの醸造酢の製造が待望されている。また、市販されている醸造酢の原料は全て植物由来のため、タウリンを含有する醸造酢は未だ知られていない。
【0006】
また、米黒酢は、醸造酢の一種であり、近年、血圧降下作用、総コレステロール値の低下作用等の機能性が注目されている。米黒酢は、玄米及び米麹を原料として酢酸発酵により製造されているが、酢酸発酵が終了した直後は、刺激的な酸味を有するため、1〜3年間長期熟成させることで酸味及び刺激が和らいだ醸造酢が得られている。しかしながら、市販されている米黒酢はそのまま飲むには酸味及び刺激が強いため、水道水やジュース等で薄めてから飲まれている。また、リンゴ、オレンジ等の果実の絞り汁などと混合して、酸度が0.5容量%程度の飲料として市販されている。そのため、米黒酢の栄養成分を摂取するためには、米黒酢を薄めた飲料を大量に飲まなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
醸造酢は、抗菌・除菌作用とともに生臭さを消臭する効果があることが知られているため、本発明者らは、かかる煮熟液に酸度が4容量%になるように酸度15容量%の醸造酢を加えることで、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減できると予想されたが、煮熟液の臭気の改善は全く行われなかった。また、かかる醸造酢を添加した煮熟液は、酸味が強く刺激的で旨味が全くないものであった。更に、タウリンを含有する醸造酢や、魚節の製造により副生される煮熟液を原料として用いる醸造酢及びその製造法は未だ知られていない。そこで、本発明の目的は、魚節の製造により副生する煮熟液の全く新規な用途であるタウリン、グルタミン酸、必須アミノ酸を高含有し、且つ、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減し、酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有した醸造酢の提供及びかかる醸造酢を簡易、迅速に製造し、加えて煮熟液の廃水処理を不要とし、環境保護を図ることができる醸造酢を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、煮熟液に酸度が4容量%になるように醸造酢を加えたが、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減は不可能であり、酸味が強く刺激的で旨味がないものであった。そこで、煮熟液に麹や糖類及び酵母を添加してアルコール発酵を行った後、あるいは、煮熟液にエタノールを添加した後、酢酸菌を添加して酢酸発酵を行ったところ、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減し、酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有した醸造酢が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された醸造酢である。請求項2記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、生臭さなどの臭気が低減し酸味はまろやかで刺激が少なく旨味を有する醸造酢である。請求項3記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、タウリンを含有する醸造酢である。請求項4記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、タウリンを80mg/100ml以上含有する醸造酢である。請求項5記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、タウリンを含有し、グルタミン酸60mg/100ml以上、必須アミノ酸合計量350mg/100ml以上を含む醸造酢である。タウリン、グルタミン酸及び必須アミノ酸は、高速液体クロマトグラフィーを用いた外部標準物質による絶対検量線法で定量する。請求項6記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液に麹及び酵母を加えアルコール発酵後、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする請求項1〜5に記載の醸造酢の製造法である。請求項7記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液に糖類及び酵母を加えアルコール発酵後、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする請求項1〜5に記載の醸造酢の製造法である。請求項8記載の本発明は、魚節の製造により副生する煮熟液に1〜8容量%のアルコール濃度になるようにアルコールを加えた煮熟液に、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする請求項1〜5に記載の醸造酢の製造法である。請求項9記載の本発明は、1〜8容量%のアルコール濃度の煮熟液が、4〜6容量%のアルコールを含む煮熟液であることを特徴とする請求項8記載の醸造酢の製造法である。請求項10記載の本発明は、煮熟液にプロテアーゼを加えることを特徴とする請求項6〜9に記載の醸造酢の製造法の製造法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、魚節の製造工程において副生される煮熟液の全く新規な用途である醸造酢の製造法を提供でき、かかる醸造酢はタウリンを含有する全く新規な醸造酢であり、また、グルタミン酸、必須アミノ酸を高含有し、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減し、酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有している醸造酢であるため、酸味を和らげるための長期熟成が不要となるばかりでなく、水道水やジュース等で薄めることなくそのまま飲むことができる。このように、煮熟液の新用途開発は魚節製造業者や調味料エキス製造業者の新産業分野への展開や資源活用の点でも重要な問題となっている。更に、煮熟液の活性汚泥による廃水処理を不要とすることができることから、環境保護の観点からも工業的にもきわめて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明において原料として用いる煮熟液としては、魚節の製造により副生される。その一例として、魚節用原料魚としては、カツオ、さば、あじ、いわしなどがある。原料魚を常法により頭、内臓、ひれを除去した生肉を90〜95℃で60〜90分間煮熟する。この煮熟の工程で副生する溶液が煮熟液となる。煮熟液は高温での蒸煮処理が施されていることから、通常無菌状態で得られ、タウリン、グルタミン酸、必須アミノ酸や、ペプチド、蛋白質を豊富に含み栄養的にも優れた食品素材に適したものであるが、室温に放置すると腐敗しやすいことから、微生物学的に汚染されていない、例えば副生直後のものをもちいることが好ましい。また、魚節の製造工程で原料魚から除去される頭、ひれなどを煮熟して煮熟液を得て、これを原料に用いてもよい。
【0012】
請求項1〜5記載の本発明は、かかる煮熟液を原料として製造した醸造酢であり、請求項6〜10に記載した製造法が代表的な方法である。以下、本発明の醸造酢の製造法の実施の一形態を図1を参照して説明する。
【0013】
本発明の醸造酢の製造法は、魚節の製造により副生する煮熟液を必要に応じて圧搾又は濾過して清澄にして、これに麹及び酵母を加えアルコール発酵後、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする醸造酢の製造法である。用いる麹としては特に制限されるものではないが、醸造酢の製造に適した米麹、麦麹等の麹を使用することが好ましく、用いる麹菌としては焼酎麹、清酒麹、味噌麹、醤油麹等に用いられる公知の麹菌を具体的に挙げることができ、かかる麹菌が産出するアミラーゼにより麹に含まれる澱粉が加水分解されてブドウ糖が生成し、生成したブドウ糖が酵母によりエタノールに変換される。また、麹菌が産出するプロテアーゼにより煮熟液に含まれる蛋白質が加水分解され、低分子のペプチドやアミノ酸が生成する。
【0014】
麹量として5〜45w/v%の範囲、好ましくは15w/v%になるように添加することが好ましく、かかる麹量を添加して、エタノール濃度が1〜8容量%の範囲、好ましくは5容量%になるように、酵母でアルコール発酵を行うことが好ましい。また、アルコール発酵によりエタノール濃度が1〜8容量%の範囲以外となった場合は、酢酸発酵前のエタノール濃度を1〜8容量%の範囲、好ましくは5容量%になるように煮熟液あるいは水で調整することが望ましい。
【0015】
上記アルコール発酵に用いる酵母は、糖からエタノールを生成できる酵母であればどのようなものでもよく、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)に属する焼酎酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ビール酵母、パン酵母、エタノール酵母等やジゾサッカロミセス・ロキシー(Zygosaccharomyces rouxii)に属する味噌酵母、醤油酵母等を挙げることができる。通常これらの酵母は1×10個/ml以上の濃度で添加することが望ましい。また、アルコール発酵は20〜35℃の温度範囲で3〜10日間程度行うことが好ましい。
【0016】
酢酸発酵に用いる酢酸菌は、エタノールを酸化して酢酸を生成することができる微生物であればどのようなものでもよく、例えば、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)等の公知の酢酸菌が挙げられる。
【0017】
8容量%を越えるエタノールを含む溶液中では、エタノールからの酢酸の生産が低下するため、8容量%以下、例えば、1〜8容量%のエタノールを含む溶液中で行うことが好ましく、特に4〜6容量%のエタノールを含む溶液中で酢酸発酵を行うことが好ましい。また、酢酸発酵は20〜35℃の温度範囲で10〜30日間程度行うことが好ましく、かかる酢酸発酵によりエタノールが酢酸に変換される。このようにして得られる醸造酢は、必要に応じて圧搾又は濾過して清澄にして、加熱殺菌して醸造酢を得る。
【0018】
本発明において、煮熟液に麹を加える代わりに糖類を加えることも可能であり、用いる糖類としてはブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、水飴等が挙げられ、加える糖の量は2〜14w/v%の範囲、好ましくは10w/v%になるように添加することが好ましい。
【0019】
また、本発明において、アルコール発酵を行う代わりに、エタノールを添加することも可能である。添加するエタノールは、食品に利用できるエタノール含有物であればどのようなものでもよく、例えば、焼酎、清酒、エタノール等を挙げることができ、エタノール濃度が1〜8容量%の範囲、好ましくは5容量%になるように添加することが好ましい。
【0020】
更に、本発明における醸造酢製造工程において、プロテアーゼを添加することも可能である。添加されるプロテアーゼとしては、煮熟液に含まれるタンパク質とペプチドをアミノ酸に分解しうるものであれば、精製物に限らず、粗製状態のものや、プロテアーゼ含有菌体でもよく、その由来や種類(エンド型、エキソ型)も特に制限されるものでなく、かかるプロテアーゼの使用により煮熟液中のタンパク質とペプチドを加水分解することによりアミノ酸が生成し、かかる工程を含む製造工程により製造される醸造酢にアミノ酸濃度を増加させることができる。
【0021】
本発明の煮熟液から製造される醸造酢は、未だ知られていない煮熟液の新用途であり、グルタミン酸、必須アミノ酸を高含有し、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減し、酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有している醸造酢であるため、酸味を和らげるための長期熟成が不要となるばかりでなく、水道水やジュース等で薄めることなくそのまま飲むことができるという特徴を有している。
【0022】
以下に、実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【実施例1】
【0023】
煮熟液24mlに焼酎麹20gと焼酎酵母を添加し、30℃で5日間静置しアルコール発酵を行った。この発酵でアルコール発酵液40mlを得た。これに、煮熟液80mlと酢酸菌を加え、30℃で25日間酢酸発酵させた。発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾紙で濾過し、醸造酢を115ml得た。このとき得られた醸造酢の酸度は6.3%であり、この醸造酢に水を加えて酸度4%の醸造酢Aを得た。得られた醸造酢Aは、タウリン81mg/100ml、グルタミン酸132mg/100ml、イソロイシン43mg/100ml、ロイシン104mg/100ml、リジン128mg/l、メチオニン41mg/100ml、フェニルアラニン55mg/100ml、スレオニン89mg/100ml、バリン61mg/100mlであった。このグルタミン酸含有量は市販の米黒酢の24mg/100mlの約6倍程度多く、必須アミノ酸の合計量は市販の米黒酢の3.6倍多く、タウリンは市販の米黒酢には全く含まれていないことが分かった。(表1参照)
【実施例2】
【0024】
煮熟液100mlにブドウ糖10gと焼酎酵母を添加し、30℃で5日間静置しアルコール発酵を行った。この発酵でアルコール発酵液100mlを得た。これに、酢酸菌を加え、30℃で25日間酢酸発酵させた。発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾紙で濾過し、醸造酢を95ml得た。このとき得られた醸造酢の酸度は5.0%であり、この醸造酢に水を加えて酸度4%の醸造酢Bを得た。得られた醸造酢Bについてのタウリンは100mg/100mlであった。(表1参照)
【実施例3】
【0025】
煮熟液100mlにアルコール6.5ml添加して、これに、酢酸菌を加え、30℃で25日間酢酸発酵させた。発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾紙で濾過し、醸造酢を100ml得た。このとき得られた醸造酢の酸度は4.8%であり、この醸造酢に水を加えて酸度4%の醸造酢Cを得た。得られた醸造酢Cは、タウリン89mg/100mlであった。(表1参照)
【実施例4】
【0026】
煮熟液24mlにアスペルギルス属由来の酸性プロテアーゼ「スミチームFP」を0.1g添加し、実施例1と同様の方法でアルコール発酵し、次に酢酸発酵させた。発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾紙で濾過し、醸造酢を115ml得た。このとき得られた醸造酢の酸度は6.3%であり、この醸造酢に水を加えて酸度4%の醸造酢Dを得た。得られた醸造酢Dは、タウリン83mg/100ml、グルタミン酸143mg/100ml、イソロイシン58mg/100ml、ロイシン118mg/100ml、リジン138mg/100ml、メチオニン48mg/100ml、フェニルアラニン63mg/100ml、スレオニン105mg/100ml、バリン70mg/100mlであった。この必須アミノ酸の合計量は醸造酢Aの約1.2倍程度,市販の米黒酢の約4倍程度多くなることが分かった。(表1参照)
【実施例5】
【0027】
煮熟液100mlにアスペルギルス属由来の酸性プロテアーゼ「スミチームFP」を0.1g添加し、実施例2と同様の方法でアルコール発酵し、次に酢酸発酵させた。発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾紙で濾過し、醸造酢を100ml得た。このとき得られた醸造酢の酸度は6.5%であり、この醸造酢に水を加えて酸度4%の醸造酢Eを得た。得られた醸造酢Eは、タウリン101mg/100ml、グルタミン酸73mg/100ml、イソロイシン31mg/100ml、ロイシン59mg/100ml、リジン70mg/100ml、メチオニン38mg/100ml、フェニルアラニン38mg/100ml、スレオニン105mg/100ml、バリン37mg/100mlであった。この必須アミノ酸の合計量は醸造酢Bの約2倍程度,市販の米黒酢の約2.5倍程度多くなることが分かった。(表1参照)
【実施例6】
【0028】
煮熟液100mlにアスペルギルス属由来の酸性プロテアーゼ「スミチームFP」を0.1g添加し、実施例3と同様の方法で酢酸発酵させた。発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾紙で濾過し、醸造酢を100ml得た。このとき得られた醸造酢の酸度は4.8%であり、この醸造酢に水を加えて酸度4%の醸造酢Fを得た。得られた醸造酢Fは、タウリン87mg/100ml、グルタミン酸65mg/100ml、イソロイシン34mg/100ml、ロイシン52mg/100ml、リジン63mg/100ml、メチオニン43mg/100ml、フェニルアラニン32mg/100ml、スレオニン94mg/100ml、バリン35mg/100mlであった。このグルタミン酸含有量は醸造酢Cの約4倍、必須アミノ酸の合計量は醸造酢Cの約2倍,市販の米黒酢の約2.4倍程度多くなることが分かった。(表1参照)
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1〜6で得られた醸造酢について、香り、酸味、旨味の官能試験を熟練したパネルテスト9名により行った。その官能試験結果を表2に示す。比較例として煮熟液、市販の米黒酢及び酸度が4容量%になるように醸造酢を添加した煮熟液を同様に官能試験をした結果について併せて表2に示す。
【0031】
【表2】

判定法:3点法
香り:生臭くない・・・1 普通・・・2 生臭い・・・3
酸味:酸味が弱い・・・1 普通・・・2 酸味が強い・・・3
旨味:非常に旨味がある・・・1 普通・・・2 あまり旨味がない・・・3
【0032】
表2によれば本発明の醸造酢は、魚類特有の生臭さなどの臭気が低減し、酸味はまろやかで刺激が少なく、旨味を有している醸造酢であるため、酸味を和らげるための長期熟成が不要となるばかりでなく、水道水やジュース等で薄めることなくそのまま飲むことができるという特徴を有していることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 本発明の醸造酢の製造法の実施の一形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された醸造酢。
【請求項2】
魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、生臭さなどの臭気が低減し酸味はまろやかで刺激が少なく旨味を有する醸造酢。
【請求項3】
魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、タウリンを含有する醸造酢。
【請求項4】
魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、タウリンを80mg/100ml以上含有する醸造酢。
【請求項5】
魚節の製造により副生する煮熟液を原料として醸造により製造された、タウリンを含有し、グルタミン酸60mg/100ml以上、必須アミノ酸合計量350mg/100ml以上を含む醸造酢。
【請求項6】
魚節の製造により副生する煮熟液に麹及び酵母を加えアルコール発酵後、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする請求項1〜5に記載の醸造酢の製造法。
【請求項7】
魚節の製造により副生する煮熟液に糖類及び酵母を加えアルコール発酵後、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする請求項1〜5に記載の醸造酢の製造法。
【請求項8】
魚節の製造により副生する煮熟液に1〜8容量%のアルコール濃度になるようにアルコールを加えた煮熟液に、酢酸菌を入れて酢酸発酵を行うことを特徴とする請求項1〜5に記載の醸造酢の製造法。
【請求項9】
1〜8容量%のアルコール濃度の煮熟液が、4〜6容量%のアルコールを含む煮熟液であることを特徴とする請求項8記載の醸造酢の製造法。
【請求項10】
煮熟液にプロテアーゼを加えることを特徴とする請求項5〜8に記載の醸造酢の製造法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−135554(P2007−135554A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−359560(P2005−359560)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【Fターム(参考)】