説明

重ね合わせ部材及び重ね合わせ部材の接合装置

【課題】耐久性及び健康面での安全性に優れた重ね合わせ部材及び重ね合わせ部材の接合装置を提供することができる。
【解決手段】接合装置2のずれ止め21により、接合する木材3a〜3c同士のずれを防止するとともに、ボルト22及びナット23により木材3a〜3cを締め付けて一体化する。ずれ止め21の差込部を円錐台形状に形成したので、テーパ部分が木材3a〜3cの差込穴に密接に嵌合されることにより、強度が向上する。また、人体に少なからず影響を与えるおそれがある接着剤を用いないようにしたので、健康面での安全性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、重ね合わせ梁、重ね合わせ柱等の重ね合わせ部材及び重ね合わせ部材の接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重ね合わせ梁、重ね合わせ柱等の重ね合わせ部材としては、集成材が用いられる場合が多かった。
集成材は、ひき板又は小角材等をその繊維方向を互いにほぼ平行にして、厚さ、幅及び長さの方向に接着剤により集成接着を施して作られる。集成材の材料としては、輸入材のホワイトウッドなどが用いられる。
【0003】
このような集成材としては、例えば、厚さの異なる二種類以上のひき板を用いて形成して、ひき板の調達の選択幅を広げ、ひき板の厚さのバリエーションを広げる目的のもの等がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−150412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した集成材による重ね合わせ部材では、湿気に弱く接着面が剥がれてしまうおそれがあり耐久性が乏しいという問題があった。
【0005】
また、上述した集成材による重ね合わせ部材では、接着剤に用いられる薬剤が人体に少なからず影響を与えるおそれがあるという健康面での安全性の問題があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、耐久性及び健康面での安全性に優れた重ね合わせ部材及び重ね合わせ部材の接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の重ね合わせ部材は、
複数の木材が接合されて構成される重ね合わせ部材であって、
前記複数の木材の各接合面には連結部嵌合穴及びテーパ穴からなる差込穴が連通して形成され、
前記連結部嵌合穴に嵌合される連結部と、前記連結部の両端に連結してそれぞれ形成されるとともに前記差込穴に差し込まれて嵌合される円錐台形状の差込部と、前記連結部及び前記差込部内に連通して形成されたボルト挿嵌孔とを有するずれ止めと、
前記ボルト挿嵌孔及び前記複数の木材に挿嵌されるボルトと、
前記ボルトの両端に螺合されるとともに、前記複数の木材を締め付けて一体化する一対のナットとを有する接合装置を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記接合装置を複数備え、
前記複数の接合装置は、それぞれ前記複数の木材の中心に対して対称に配置されたことを特徴とする。
【0009】
また、断面形状がT字型、L字型、十字型のいずれかであって、
前記接合装置が90度向きを変えて交互に配置されるようにしてもよい。
【0010】
また、前記複数の木材のうち中段の木材に開口部を形成するようにしてもよい。
【0011】
また、前記開口部は、配管を配置するための開口を兼ねるようにしてもよい。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明の重ね合わせ部材の接合装置は、
複数の木材が接合されて構成される重ね合わせ部材の接合装置であって、
前記複数の木材の各接合面に形成された連結部嵌合穴に嵌合される連結部と、前記連結部の両端に連結してそれぞれ形成されるとともに、前記複数の木材の各接合面の連結部嵌合穴に連通して形成されたテーパ穴からなる差込穴に差し込まれて嵌合される円錐台形状の差込部と、前記連結部及び前記差込部内に連通して形成されたボルト挿嵌孔とを有するずれ止めと、
前記ボルト挿嵌孔及び前記複数の木材に挿嵌されるボルトと、
前記ボルトの両端に螺合されるとともに、前記複数の木材を締め付けて一体化する一対のナットとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐久性及び健康面での安全性に優れた重ね合わせ部材及び重ね合わせ部材の接合装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る重ね合わせ部材及び重ね合わせ部材の接合装置について、以下図面を参照して説明する。
【0015】
重ね合わせ部材1,1aは、重ね合わせ梁、重ね合わせ柱等として用いられる。重ね合わせ部材1,1aは、図5及び図6に示すように、3本の木材3(3a〜3c)を、接合装置2を用いて接合することにより製造される。
【0016】
重ね合わせ部材1,1aの接合装置2は、図3に示すように、2つのずれ止め(コッター)21と、ボルト22と、一対のナット23とを備えている。
【0017】
ずれ止め21は、接合する木材3a〜3c同士のずれを防止するための部材である。ずれ止め21は、図1及び図2に示すように、コマ形をしており、連結部21aと、連結部21aの両端にそれぞれ一体に形成された円錐台形状の一対の差込部21bと、連結部21a及び差込部21b内の中央に連通して形成されたボルト挿嵌孔21cとを備えている。ずれ止め21は、例えば鉄等の金属や、黒炭、タモ材等で一体に形成されている。
【0018】
連結部21aは、一対の差込部21bを連結する部材である。連結部21aは、中央にボルト挿嵌孔21cが形成され、中空の円筒状に形成されている。連結部21aは、木材3に形成された連結部嵌合穴31a,31b,31c(図4)に嵌合される。
【0019】
一対の差込部21bは、木材3に形成されたテーパ穴である差込穴32a,32b,32c(図4)に差し込まれて嵌合される。差込部21bは、円錐台形状に形成されているので、テーパ部分が木材3の差込穴32a,32b,32cに密接に嵌合される。
【0020】
ボルト22は、ずれ止め21のボルト挿嵌孔21cに挿嵌されるとともに、木材3に形成されたボルト挿嵌孔33a,33b,33c(図4)に挿嵌される。ボルト22は、その両端に一対のナット23が螺合される。
【0021】
一対のナット23は、スクリュー型の座金であり、ボルト22の両端に螺合させることにより、木材3(3a〜3c)を一体化することができる。なお、ナット23は、木材3に形成されたナット挿嵌孔34a,34c(図4)に挿嵌される。
【0022】
木材3(3a〜3c)は、角材により構成されている。木材3(3a〜3c)には、図4に示すように、それぞれの接合面に連結部嵌合穴31a,31b,31cと、連結部嵌合穴31a,31b,31cに連通する差込穴32a,32b,32cが形成されている。 また、木材3(3a〜3c)には、差込穴32a,32b,32cに連通するボルト挿嵌孔33a,33b,33c及びナット挿嵌孔34a,34cが形成されている。なお、ナット挿嵌孔34a,34cは、木材3の上面(木材3aの上面)及び下面(木材3cの下面)に形成されている。
【0023】
重ね合わせ部材1,1aは、図5及び図6に示すように、3段に重ねられた木材3a〜3cについて、複数の接合装置2を所定の間隔で中心に対して対称な位置に配置して、これらの接合装置2により木材3a〜3cを接合することにより構成される。
【0024】
なお、木材3a〜3cには、例えば120mm角の角材が用いられ、この場合には、例えば全体の高さが50mm、連結部21aの径が36mmのずれ止め21が用いられる。また、木材3a〜3cには、例えば国産の無垢の桧材、杉材が用いられる。
【0025】
なお、図6に示した重ね合わせ部材1aでは、中段の木材3bにおいて中心に対して対称な所定の位置に複数の開口部35bが形成されている。開口部35bにより、重ね合わせ部材1aに曲げ荷重が負荷された場合に、逃げができるために、より耐久性が向上するとともに、軽量化も可能となる。なお、開口部35bには、配管等を配置するための開口としての役割を課すことも可能である。
【0026】
ここで、接合装置2を用いた重ね合わせ部材1の接合方法について説明する。まず、木材3a〜3cの差込穴32a,32b,32cにずれ止め21の差込部21bを差し込んで嵌合させるとともに、連結部嵌合穴31a,31b,31cにずれ止め21の連結部21aを嵌合させる。これにより、木材3a〜3cを重ね合わせるための位置合わせも行うことができる。
【0027】
次に、ずれ止め21のボルト挿嵌孔21c及び木材3a〜3cのボルト挿嵌孔33a,33b,33cにボルト22を挿嵌する。そして、ボルト22の両端に一対のナット23を螺合して、木材3a〜3cを締め付けることにより、木材3a〜3cは一体化し、重ね合わせ部材1が完成する。また、図6に示した重ね合わせ部材1aの製造方法も同様である。
【0028】
重ね合わせ部材をラーメン構造物の梁や柱として用いた例を図7に示す。なお、図7において、柱に用いた重ね合わせ部材1bは、断面がL字型(縦2段、横2段)であり、3本の木材が用いられている。この重ね合わせ部材1bに用いられる接続装置2aは、1つのずれ止め21を有し、90度向きを変えて交互に配置されている。
また、別の柱に用いられた重ね合わせ部材1cは、断面がT字型(縦2段、横3段)であり、4本の木材が用いられている。この重ね合わせ部材1cにおいては、1つのずれ止め21を有する接続装置2aと2つのずれ止め21を有する接続装置2が90度向きを変えて交互に配置されている。
なお、上述した重ね合わせ部材1を図7に示した梁や柱に用いることももちろん可能である。
【0029】
このように本実施の形態では、接合装置2のずれ止め21により、接合する木材3a〜3c同士のずれを防止するとともに、ボルト22及びナット23により木材3a〜3cを締め付けて一体化するようにしたので、耐久性が向上するとともに耐震性にも優れた重ね合わせ部材1,1a〜1cを提供することができる。特に、ずれ止め21の差込部21bを円錐台形状に形成したので、テーパ部分が木材3a〜3cの差込穴32a,32b,32cに密接に嵌合されることにより、強度が向上する。
【0030】
また、本実施の形態では、人体に少なからず影響を与えるおそれがある接着剤を用いないようにしたので、健康面での安全性に優れる。
【0031】
また、本実施の形態では、重ね合わせ部材1,1a〜1cを重ね合わせ柱とすることにより、ラーメン構造物特有の大きな柱形が室内に出なくなるために、建物の内部空間を有効に利用することができる。また、間口が狭小な敷地であっても、木造住宅の建築が可能になるために、土地を有効に活用することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、無垢の国産の無垢の桧材、杉材を角材として用いることができるので、国内の林業の発展につながるとともに、国内の職人の伝統技術の継承が可能になる。
【0033】
また、本実施の形態では、木材を用いるために、鉄筋コンクリート造の建物に比べて重量が軽いので、施工が容易であり、建物の基礎等に質量的な負担が少なくて済む。
【0034】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、他の変形例として図8(A)〜(C)に示すように、断面の形状がT字型(縦3段、横3段)であり、5本の木材を重ね合わせて重ね合わせ部材1dとしてもよいし、断面の形状がL字型(縦3段、横3段)であり5本の木材を重ね合わせて重ね合わせ部材1eとしてもよいし、断面の形状が十字型(縦3段、横3段)であり5本の木材を重ね合わせて重ね合わせ部材1fとしてもよい。なお、重ね合わせ部材1d〜1fでは、接合装置2が90度向きを変えて交互に配置される。
木材の数が2本以上であれば、重ね合わせ部材を構成することは可能であり、木材の各接合面において、接続装置2,2aごとに1つのずれ止め21が用いられる。よって、木材の接合面の数によって、各接続装置の有するずれ止め21の数は決定され、3つ以上のずれ止め21を有するようにしてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、120mm角の角材を用いる例について説明したが、角材の大きさはこれに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る重ね合わせ部材の接合装置を構成するずれ止めの構成を表す斜視図である。
【図2】(A)は図1に示したずれ止めの平面図、(B)は図1に示したずれ止めの正面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る重ね合わせ部材の接合装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施形態の係る重ね合わせ部材を構成する木材に形成された差込穴等を説明するための断面図である。
【図5】(A)は本発明の実施形態に係る重ね合わせ部材の平面図、(B)は(A)に示した重ね合わせ部材の正面図である。
【図6】(A)は本発明の実施形態に係る重ね合わせ部材の変形例の平面図、(B)は(A)に示した重ね合わせ部材の正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る重ね合わせ部材を用いたラーメン構造物の構成を表す斜視図である。
【図8】(A)乃至(C)は、本発明の実施形態に係る重ね合わせ部材の他の変形例を説明するための側面図である。
【符号の説明】
【0037】
1,1a〜1f 重ね合わせ部材
2,2a 接合装置
21 ずれ止め
21a 連結部
21b 差込部
21c ボルト挿嵌孔
22 ボルト
23 ナット
3(3a〜3c) 木材
31a,31b,31c 連結部嵌合穴
32a,32b,32c 差込穴
33a,33b,33c ボルト挿嵌孔
34a,34c ナット挿嵌孔
35b 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木材が接合されて構成される重ね合わせ部材であって、
前記複数の木材の各接合面には連結部嵌合穴及びテーパ穴からなる差込穴が連通して形成され、
前記連結部嵌合穴に嵌合される連結部と、前記連結部の両端に連結してそれぞれ形成されるとともに前記差込穴に差し込まれて嵌合される円錐台形状の差込部と、前記連結部及び前記差込部内に連通して形成されたボルト挿嵌孔とを有するずれ止めと、
前記ボルト挿嵌孔及び前記複数の木材に挿嵌されるボルトと、
前記ボルトの両端に螺合されるとともに、前記複数の木材を締め付けて一体化する一対のナットとを有する接合装置を備えたことを特徴とする重ね合わせ部材。
【請求項2】
前記接合装置を複数備え、
前記複数の接合装置は、それぞれ前記複数の木材の中心に対して対称に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の重ね合わせ部材。
【請求項3】
断面形状がT字型、L字型、十字型のいずれかであって、
前記接合装置が90度向きを変えて交互に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載の重ね合わせ部材。
【請求項4】
前記複数の木材のうち中段の木材に開口部を形成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の重ね合わせ部材。
【請求項5】
前記開口部は、配管を配置するための開口を兼ねることを特徴とする請求項4に記載の重ね合わせ部材。
【請求項6】
複数の木材が接合されて構成される重ね合わせ部材の接合装置であって、
前記複数の木材の各接合面に形成された連結部嵌合穴に嵌合される連結部と、前記連結部の両端に連結してそれぞれ形成されるとともに、前記複数の木材の各接合面の連結部嵌合穴に連通して形成されたテーパ穴からなる差込穴に差し込まれて嵌合される円錐台形状の差込部と、前記連結部及び前記差込部内に連通して形成されたボルト挿嵌孔とを有するずれ止めと、
前記ボルト挿嵌孔及び前記複数の木材に挿嵌されるボルトと、
前記ボルトの両端に螺合されるとともに、前記複数の木材を締め付けて一体化する一対のナットとを備えたことを特徴とする重ね合わせ部材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−23298(P2010−23298A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185704(P2008−185704)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(504215357)株式会社みらいテクノハウス (1)
【Fターム(参考)】