説明

重力式降下搬送装置

【課題】降下搬送において荷受台の搬送姿勢が安定し、かつより安全に被搬送物を搬送する重力式降下搬送装置を提供する。
【解決手段】上下方向に向けて対向配置された一対の支柱10の上部間に連結した回転軸11と、回転軸に一体的に設けられた回転体12と、回転体に巻回されると共に回転体から下方に延在する牽引部材2と、牽引部材に連結された荷受台3とを有する搬送装置とした。また、回転軸とは独立的に回転自在に設けたウォームホイール13と、歯車と噛合する1以上の連動歯車15aを有する歯車列と、歯車列に出力軸が噛合されて歯車を降下時の回転軸の回転方向に回転させる駆動手段22と、回転軸と歯車との間に、回転軸の回転速度が歯車の回転速度よりも大きくなった際に係合して歯車と回転軸とを一体的に回転させ、回転軸の回転速度が歯車の回転速度よりも小さい際に離脱して回転軸の独立的な回転を許容する係合脱離部材11b、14とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を上段から下段に順次搬送することが可能な重力式降下搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場等の搬送ラインにおいては、被搬送物を他のベルトコンベヤよりも一段低いベルトコンベヤが設置されている場合があり、この場合には上段のベルトコンベヤと、それより一段低い下段のベルトコンベヤとの間に降下搬送装置を設ける必要がある。
【0003】
この降下搬送装置としては、通常、上段のベルトコンベヤから被搬送物を荷受けするとともに、当該被搬送物を下方に搬送して下段のベルトコンベヤに荷渡しする荷受台と、この荷受台を上下に移動可能にする上下移動機構と、この上下移動機構を介して荷受台を上下に駆動するモータや空圧シリンダ等とにより構成することになる。
【0004】
ところが、上記降下搬送装置においては、モータや空圧シリンダ等の人工的なエネルギ(例えば、電力や空圧等)を利用する装置を備えることになるので、構造が複雑になると共に、当該装置に対して電力や空圧等の人工的なエネルギを供給する必要が生じるという問題があった。
【0005】
このため、出願人は、先に出願した特願2004−328619号において、上下移動機構として、上部に配置されたプーリと、このプーリに下方から巻き回されるとともに、プーリの回転とともに上下移動する牽引部材と、この牽引部材に連結され、牽引部材とともに上下移動することにより被搬送物を搬送する荷受台と、この荷受台を上下方向に案内する案内部材とを有する降下搬送装置を提案している。
この荷受台は、上記被搬送物を載置する水平な板状の載置部と、この載置部から下方に延在して、上記載置部を水平に支持する板状の載置姿勢保持部と、この載置姿勢保持部の上端部の両側部及び下端部の両側部にそれぞれ設けられたローラとにより概略構成されている。
【0006】
この降下搬送装置によれば、上記荷受台は、上記回転体の回転に伴って上記ローラが上記案内部材に案内されつつ、牽引部材とともに降下し、上段のベルトコンベヤから供給された被搬送物を、その重量を利用して下段のベルトコンベヤに降下搬送することができる。
【0007】
しかしながら、上記降下搬送において被搬送物が重量物になるに連れ、加速のため、降下速度を制御することができなくなり易いという欠点がある。
【0008】
さらには、上記荷受台は、漸次、重力によって加速しつつ降下し、上記下段のベルトコンベヤに対応する位置において停止する際に、加速されたままのスピードにおいて急停止するため、強い振動を受けてしまうという欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被搬送物が重量物であっても、降下搬送において荷受台の搬送姿勢が安定し、かつ下段のベルトコンベヤ等の搬出位置に臨む位置において停止する際に強い振動を受けることがなく、より安全に荷受台によって被搬送物を搬送することができる重力式降下搬送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、上下方向に向けて対向配置された一対の支柱の上部間に回転軸が連結された機体と、この回転軸に一体的に設けられた回転体と、この回転体に巻回されると共に当該回転体から下方に延在し、上記回転体の回転に伴って上下に移動する牽引部材とを有する装置本体、及びこの牽引部材に連結され、当該牽引部材と共に上下に移動するとともに、水平方向に延出して被搬送物を載置する荷受台を有し、上記荷受台上に供給された上記被搬送物を降下搬送する重力式降下搬送装置であって、上記回転軸を囲繞するように配設されるとともに、上記回転軸とは独立的に回転自在に設けられた歯車と、この歯車と噛合する1以上の連動歯車を有する歯車列と、この歯車列に出力軸が噛合されて上記歯車を上記降下時における上記回転軸の回転方向と同方向に回転させる駆動手段と、上記回転軸と上記歯車との間に設けられて、上記回転軸の回転速度が上記歯車の回転速度よりも大きくなった際に係合して上記歯車と上記回転軸とを一体的に回転させるとともに、上記回転軸の回転速度が上記歯車の回転速度よりも小さい際に離脱して上記回転軸の独立的な回転を許容する係合脱離部材とを備えてなり、かつ上記歯車列は、上記駆動手段からの駆動力を上記歯車に伝達するとともに、上記歯車側から作用する回転力を上記駆動手段側に伝達しない連動歯車が介装されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の重力式降下搬送装置において、上記荷受台は、上記牽引部材に連結された当該基端部から水平方向に延出する支持部材及び、上記被搬送物が載置されるとともに、先端部が上記支持部材の先端部と回動自在に連結されることにより上記基端部が上記支持部材に対して接離自在に設けられた載置部材を備えてなる載置部と、この載置部の基端部から上方及び/又は下方に延在して、上記支持部材を上記水平に支持する板状の載置姿勢保持部とを有し、かつ上記装置本体の搬出位置に臨む位置には、降下する上記載置部材の上記基端部を上記搬出位置に至る前に係止することにより、上記支持部材の降下に伴って当該載置部材を、その先端部が下方となるように傾斜させる係止部材が設置されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の重力式降下搬送装置において、上記牽引部材は、上記荷受台と上記回転体を介して相対する対向部に、上記荷受台に対応する重量を有するカウンタウエイトが連結されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明によれば、被搬送物が供給された荷受台は、その重量によって加速的に降下するとともに、牽引部材を下方に移動させることにより、回転体及び回転軸を回転させる。その際、回転軸は、被搬送物が供給された直後において荷受台の降下速度が小さいため、駆動手段によって、予め設定した速度において歯車を同方向に回転させると、この歯車よりも回転速度が小さく、係合離脱手段が離脱した状態において、独立的に回転する。
【0014】
次いで、回転軸は、荷受台の降下速度が徐々に加速的に上昇し、上記歯車よりも回転速度が大きくなるため、係合離脱手段によって上記歯車と係合し、歯車と一体的に回転する。その際、歯車列として、上記歯車からの回転力を駆動手段側に伝達しない連動歯車を介装したため、その回転力によって上記歯車と連動歯車とが回転することを防止し、その回転速度を上記駆動手段により抑制することができる。
【0015】
このため、上記被搬送物が供給された荷受台は、特に被搬送物が重量物である場合に、その重量によって加速的に降下しても、回転軸の回転速度が駆動手段による歯車の回転速度よりも大きくなった段階において、駆動手段によって降下速度が拘束され、その結果、降下搬送姿勢を安定化させることができる。
【0016】
特に、請求項2に記載の発明によれば、上記載置姿勢保持部に連結されて上記基端部から水平方向に延出する支持部材と、先端部が上記支持部材の先端部と回動自在に連結されることにより基端部が上記支持部材に対して接離自在に設けられた載置部材とによって載置部を構成し、かつ装置本体の搬出位置に臨む位置には、降下する載置部材の基端部を搬出位置に至る前に係止する係止部材を設けたため、荷受台が被搬送物を搬出する際に、載置部材の基端部が係止部材に係止された状態においてさらに降下する。これにより、荷受台は、被搬送物の荷重によって下方に作用する力の一部が基端部側において係止部材によって分担して支持されるため、降下速度を減速させることができ、停止する際の衝撃を抑制することができる。
【0017】
次いで、載置部材は、漸次、支持部材のみが降下することにより、基端部側において相対的に上方に変位することによって先端部が下方になるように傾斜し、被搬送物が先端部前方に搬出されるため、搬出時の衝撃を減少させ、被搬送物を安全に搬出することができる。
【0018】
さらに、請求項3に記載の発明によれば、牽引部材には、上記荷受台と上記回転体を介して相対する対向部に、上記荷受台に対応する重量を有するカウンタウエイトとを連結したため、被搬送物が載置部の先端部前方に搬出された後、対向部にカウンタウエイトの荷重が作用することによって牽引部材の荷受台の連結部が上昇し、無動力にて上記荷受台を上方に移動させることができる。このため、人工的なエネルギーを不要とし、装置本体を簡易な構造にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る重力式降下搬送装置の最良の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態の重力式降下搬送装置は、図1及び図2に示すように、床上に水平に載置された平面方向に移動自在な基台1と、この基台1の外周部に対向して立設された2本の支柱10及びこれらの支柱10の上端部同士及び下端部同士にそれぞれ1本づつ水平に架け渡された円柱状のスプロケット軸(回転軸)11からなる機体と、これらのスプロケット軸11の両端部にそれぞれ介装された1対のスプロケット(回転体)12と、この上下1対のスプロケット12に対してそれぞれ1本づつ巻回されたチェーン(牽引部材)2とにより装置本体が構成されている。
【0021】
そして、これらのチェーン2間に、被搬送物wを載置する荷受台3が配設されており、この荷受台3は、支柱10に対して図1中左側に設置された第1のベルトコンベヤ91から供給された被搬送物wを降下搬送し、第1のベルトコンベヤ91よりも下方であって、かつ支柱10に対して図1中右側に設置された第2のベルトコンベヤ92に搬出するようになっている。
【0022】
そして、上記支柱10の上端部同士に水平に架け渡された上記スプロケット軸11には、
図3及び図4に示すように、肉厚の拡径部11aが設けられている。また、この拡径部11aには、外方に向けて突出する凸部材11bが埋設されている。
【0023】
また、上記拡径部11aを囲繞するように、ドーナツ状のウォームホイール(歯車)13がスプロケット12と平行に配設されている。このウォームホイール13は、拡径部11aとの間にボールベアリング16が設けられることにより、拡径部11a回りに回転自在に設けられている。また、その内周面には凸部材11bに対応する位置に角柱状の棒状部材14が設けられている。
【0024】
この棒状部材14は、その頭頂部が凸部材11bに臨む位置に配設されるとともに、その基端部がウォームホイール13の内周面にピン接合されている。そして、その先端部が上記拡径部11aに向けて配設されるとともに、弾性部材14a(図中においてはバネ)によって拡径部11aを押圧するように配設されている。これにより、棒状部材14は、凸部材11bとともに、係合離脱部材を構成している。
【0025】
一方、上記ウォームホイール13の下方に、ウォームホイール13の回転方向に沿って、棒状のウォーム(連動歯車)15が配設されている。このウォーム15は、その歯がウォームホイール13の下部の歯に噛合するように当該長手方向に向けて螺旋状に切られており、その基端部が支柱10間に架け渡された支持枠(図示を略す)に支持されることにより水平に配設されている。また、ウォーム15の基端部は、モータ(駆動手段)22の出力軸と一体的に連結されている。
【0026】
このモータ22は、ウォームギヤ15を介してウォームホイール13を、荷受台3が降下する際のスプロケット軸11の回転方向と同方向(図4中の実線による矢印方向)に、予め設定した速度で回転させるようになっている。
【0027】
一方、スプロケット軸11は、荷受台3の降下とともに回転し、その回転速度がウォームホイール13の回転速度より小さい場合には、その凸部材11bが棒状部材14の基端部から頭頂部に向けて移動し、弾性部材14aを収縮させつつ、棒状部材14の側面に沿って移動することにより、独立的に回転するようになっている。
【0028】
他方、その回転速度がウォームホイール13の回転速度より大きい場合には、拡径部11aの凸部材11bが棒状部材14の頭頂部に向けて移動し、この棒状部材14の頭頂部によって係止されることにより、ウォームホイール13と一体的に回転するようになっている。
【0029】
その際に、ウォームホイール13は、スプロケット軸11の回転力が作用してもその回転がウォーム15側に伝達されないために、モータ22側の回転速度が増速されることはない。このため、スプロケット軸11は、ウォームホイール13と一体的にモータ22の回転速度で回転することになり、その結果、スプロケット軸11の回転速度の上昇を抑制するようになっている。
【0030】
荷受台3は、水平に延在し、被搬送物wが載置可能である平板状の載置部4と、この載置部4の第1のベルトコンベヤ91側の基端部から略直角に垂下し、載置部4を水平に支持する平板状の載置姿勢保持部5とにより概略構成されている。
【0031】
そして、これらの載置部4及び載置姿勢保持部5の接合部には、両者を略直角に維持するための補強用ブラケット31が設けられている。また、載置姿勢保持部5の上端部の両側部には、それぞれ側方に向けて突出するピンが設けられており、このピンが左右側方に位置するチェーン2の穴にそれぞれ挿通されることにより、荷受台3が上端部のスプロケット軸11の両端部に介装された上部スプロケット12aを介して第1のベルトコンベヤ91側に上下に向けて延在するチェーン2に連結されている。
【0032】
上記載置部4は、図5及び図6に示すように、載置姿勢保持部5との接合部において、載置姿勢保持部5の両側部から第2のベルトコンベヤ92側に向けてそれぞれ水平に延出する2本の棒状部材からなる外枠(支持部材)41を有している。また、第1のベルトコンベヤ91から第2のベルトコンベヤ92に向けて複数の回転ローラ42aが並列に配設された細長状部材42が並列に一方の支柱10から他方の支柱10に向けて等間隔に複数(図では6本)配設されるとともに、当該細長状部材42に交差する方向に延在する複数(図では2本)の棒状部材43によって一体化された載置部材44を有している。
【0033】
そして、上記外枠41の先端部と上記載置部材44の先端部とがピン45により連結されており、載置姿勢保持部5との接合部(基端部)において、載置部材44が外枠41から離間して、上方に移動可能になっている。また、上記載置部材44を構成している各細長状部材42は、それぞれ第1のベルトコンベヤ91側に突出するフック42bが設けられている。
【0034】
一方、上記載置姿勢保持部5は、上記接合部(上部)の両側部にそれぞれ複数(図中3個)のローラ51が設けられるとともに、上記下端部(下部)の両側部にそれぞれ複数(図中3個)のローラ52が設けられている。
【0035】
基台1の両側部には、それぞれ複数のローラ51、52を挟むようにして断面コ字形状の案内レール7がチェーン2に沿って上下方向に立設されており、この案内レール7は、複数のローラ51、52を第2のベルトコンベヤ92側(載置部4の先端部側)から案内する前方板体71と、複数のローラ51、52を第1のベルトコンベヤ91側から案内する後方板体72とが対向して配設されている。
【0036】
そして、上記3個のローラ51は、そのうち2個が第2のベルトコンベヤ92側に配設された前方ローラ51aであるとともに、残部の1個が第1のベルトコンベヤ91側に配設された後方ローラ51bであり、上下方向に向けて、中央部に後方ローラ51bが配設されるとともに、この後方ローラ51bを挟むようにして前方ローラ52aが均等に配設されている。
また、上記3個のローラ52は、そのうち2個が第1のベルトコンベヤ91側に配設された後方ローラ52bであるとともに、残部の1個が第2のベルトコンベヤ92側に配設された前方ローラ52aであり、上下方向に向けて、中央部に前方ローラ52aが配設されるとともに、この前方ローラ52aを挟むようにして後方ローラ52bが均等に配設されている。
そして、前方ローラ51a、52aは、それぞれ前方板体71に当接しつつ回転するようになっているとともに、後方ローラ51b、52bは、それぞれ後方板体72に当接しつつ回転するようになっている。
【0037】
これにより、被搬送物wの載置によりピン回りに回転方向に向けて作用するモーメント力によって、載置姿勢保持部5の載置部4との接合部に作用する力が前方板体71に当接する2個の前方ローラ51aにより分散、支持される。同様に、載置姿勢保持部5の下端部に作用する力も後方板体72に当接する2個の後方ローラ52bにより分散、支持されるため、後方ローラ52bの回転が抑制され、また後方ローラ52b及び後方板体72間の摩擦力の増加が阻止されることにより、荷受台3の降下搬送が円滑に行われる。
【0038】
また、上記後方板体72には、第2のベルトコンベヤ92に臨む位置であって、かつ第2のベルトコンベヤ92に対応する位置の上方に、水平な棒状部材17(係止部材)が連結部材17aを介して接合されている。
【0039】
このため、荷受台3は、図5に示すように、チェーン2とともに降下し、被搬送物wの搬出位置に至る前に、この棒状部材17にフック42bが係止され、この状態においてさらに降下する。これにより、被搬送物wの搬出方向の後方部において外枠41が下方に移動して載置部材44が相対的に上方に変位することによって、載置部材44の被搬送物wの載置面の先端部が下方となるように傾斜して、被搬送物wを先端部前方に向けて搬出するようになっている。
【0040】
さらに、上記下端部のスプロケット軸11は、チェーン2の上下移動が高速であることにより、スプロケット12の回転速度が設定値よりも速くなった際、スプロケット12の回転を抑制するトルクダンパー18が連結されている。
【0041】
他方、上記上部スプロケット12aを介して第2のベルトコンベヤ92側(対向部)に上下に向けて延在するチェーン2に、それぞれカウンタウエイト80載置用の平板矩形状のウエイト台81が連結されている。このウエイト台81は、それぞれチェーン2から側方に向けて延出し、その上にカウンタウエイト80が載置されている。
そして、ウエイト台81がチェーン2とともに上下移動するようになっており、基台1の両側部であって、かつ支柱10に対し第2のベルトコンベヤ92側に、ウエイト台81の角隅部に沿って、3本の断面L字状の案内軸82aがそれぞれ立設されている。これらの3本の案内軸82aは、それぞれ上端部及び下端部が連結部材82bにより連結されており、この連結部材82bとともにウエイト案内部材82を構成している。
【0042】
上述の無動力降下搬送装置を用いて、上記被搬送物wとして10kg〜30kgの重量物を降下搬送する場合の作用について説明する。
【0043】
まず、モータ22は、第1のベルトコンベヤ91から被搬送物wが荷受台3に供給されると作動し、ウォーム15を回転させる。すると、ウォームホイール13は、下部の歯がウォーム15の回転によって順次送り出され、スプロケット軸11と同方向(図4中の実線による矢印方向)に設定速度で回転する。それとともに、スプロケット軸11は、このウォームホイール13よりも低速回転し、凸部材11bが棒状部材14の基端部から頭頂部に向けて移動し、棒状部材14の側面に沿ってウォームホイール13と独立的に回転する。
【0044】
これにより、荷受台3は、スプロケット軸11の回転とともに、前方ローラ51a、52aが前方板体71に案内されつつ、後方ローラ51b、52bが後方板体72に案内され、載置部材44が水平に支持された状態において降下する。
【0045】
次いで、荷受台3が重力によって除々に加速的に降下し、スプロケット軸11がウォームホイール13よりも高速に回転するようになる。すると、スプロケット軸11は、凸部材11bが棒状部材14の頭頂部に向けて移動し、凸部材11bが棒状部材14の頭頂部によって係止されることにより、ウォームホイール13と一体的にモータ22の回転速度で回転する。このため、荷受台3は、降下速度がモータ22等により抑制され、降下搬送姿勢が安定する。
【0046】
次いで、荷受台3は、載置部材44のフック42bが棒状部材17に係止され、さらに係止された状態において降下する。このため、漸次、降下速度が減速するとともに、載置姿勢保持部5及び外枠41のみが降下し、搬出方向後方部側において載置部材44が相対的に上昇する。
【0047】
すると、漸次、載置部材44が先端部に向けて下方に傾斜し、被搬送物wが、その重量によって回転ローラ42aを第1のベルトコンベヤ91から第2のベルトコンベヤ92に向けて回転させるとともに、この回転ローラ42aの回転によって搬出される。
【0048】
次いで、被搬送物wが搬出された荷受台3は、カウンタウエイト80よりも軽量になるため、第1のベルトコンベヤ91に対応する位置まで上昇する。
その際、スプロケット軸11は、図4中の点線による矢印方向に回転するとともに、ウォームホイール13が停止しているため、凸部材11bが棒状部材14の基端部側から頭頂部に向けて移動し、弾性部材14aを収縮させつつ、棒状部材14の側面に沿って移動すし、独立的に回転する。
これにより、荷受台3は、再度、第1のベルトコンベヤ91から供給された被搬送物wを第2のベルトコンベヤ92に降下搬送する。
【0049】
上述の重力式降下搬送装置によれば、被搬送物wが供給された荷受台3は、その重量によって降下するとともに、チェーン2を下方に移動させることにより、スプロケット12及びスプロケット軸11を回転させる。その際、スプロケット軸11は、被搬送物wが供給された直後において荷受台3の降下速度が小さいため、モータ22によってウォームホイール13をスプロケット軸11の回転方向に予め設定した速度で回転させると、ウォームホイール13よりも低速に回転する。このため、凸部材11bが棒状部材14の基端部から頭頂部に向けて移動することにより、ウォームホイール13によって拘束されることなく、独立的に回転することができる。その結果、荷受台3は、被搬送物wの重量に応じた速度によって降下することができる。
【0050】
また、スプロケット軸11は、荷受台3が降下するに連れ、加速的に降下速度が上昇するため、ウォームホイール13よりも高速に回転し、その凸部材11bが棒状部材14の頭頂部に向けて移動し、棒状部材14の頭頂部に係止され、ウォームホイール13と一体的に回転する。その際、ウォームホイール13は、スプロケット軸11の回転力が作用してもその回転がウォーム15側に伝達されないために、モータ22側の回転速度が増速されることはない。このため、スプロケット軸11は、ウォームホイール13の設定速度を上回った段階において、ウォームホイール13の回転速度で回転することになり、回転速度が抑制される。その結果、荷受台3は、取り扱う被搬送物wの重量が不規則に変わる場合においても、降下搬送姿勢を安定化させることができる。
【0051】
また、荷受台3は、載置姿勢保持部5に連結されて基端部から水平方向に延出する外枠41と、複数の回転ローラ42aが配設された複数の細長状部材42からなる載置部材44とにより載置部4を構成し、細長状部材42の第1のベルトコンベヤ91側に突出するフック42bを設け、かつ第2のベルトコンベヤ92に臨む位置に棒状部材54を設けたため、被搬送物wを搬出する際に、フック42bが棒状部材54に係止された状態においてさらに降下する。これにより、被搬送物wの荷重によって下方に作用する力の一部が基端部側において棒状部材54によって吸収されるため、降下速度を抑制することができ、停止する際の衝撃を抑制することができる。
【0052】
次いで、載置部材44は、漸次、外枠41のみが降下することにより、被搬送物wの搬出方向後方部において載置部材44が相対的に上方に変位することによって先端部が下方に向けて傾斜し、被搬送物wが先端部前方に搬出されるため、搬出時の衝撃を減少させ、被搬送物を安全に搬出することができる。
【0053】
さらに、上部スプロケット12aを介して第2のベルトコンベヤ92側に上下に向けて延在するチェーン2に、荷受台3に対応する重量を有するカウンタウエイト80を連結したため、被搬送物wが載置部4の先端部前方に搬出された後、カウンタウエイト80の荷重が作用することによってチェーン2の荷受台3の連結部が上昇し、無動力にて荷受台3を上方に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態として示した無動力降下搬送装置の側面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の要部を説明するための一部破断説明図である。
【図4】ウォームホイール13、拡径部11a及びウォーム15の関係を説明するための側面図である。
【図5】荷受台3の側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】被搬送物wが搬出される際の荷受台3の動作を説明するための断面模式図である。
【符号の説明】
【0055】
w 被搬送物
2 チェーン(牽引材)
3 荷受台
4 載置部
5 載置姿勢保持部
7 案内レール
10 支柱
11 スプロケット軸(回転軸)
11b 凸部材(係合脱離部材)
12 スプロケット(回転体)
13 ウォームホイール(歯車)
14 棒状部材(係合脱離部材)
15 ウォーム(連動歯車)
22 モータ(駆動手段)
51a 52a 前方ローラ
51b 52b 後方ローラ
71 前方板体
72 後方板体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に向けて対向配置された一対の支柱の上部間に回転軸が連結された機体と、この回転軸に一体的に設けられた回転体と、この回転体に巻回されると共に当該回転体から下方に延在し、上記回転体の回転に伴って上下に移動する牽引部材とを有する装置本体、及びこの牽引部材に連結され、当該牽引部材と共に上下に移動するとともに、水平方向に延出して被搬送物を載置する荷受台を有し、上記荷受台上に供給された上記被搬送物を降下搬送する重力式降下搬送装置であって、
上記回転軸を囲繞するように配設されるとともに、上記回転軸とは独立的に回転自在に設けられた歯車と、この歯車と噛合する1以上の連動歯車を有する歯車列と、この歯車列に出力軸が噛合されて上記歯車を上記降下時における上記回転軸の回転方向と同方向に回転させる駆動手段と、上記回転軸と上記歯車との間に設けられて、上記回転軸の回転速度が上記歯車の回転速度よりも大きくなった際に係合して上記歯車と上記回転軸とを一体的に回転させるとともに、上記回転軸の回転速度が上記歯車の回転速度よりも小さい際に離脱して上記回転軸の独立的な回転を許容する係合脱離部材とを備えてなり、かつ上記歯車列は、上記駆動手段からの駆動力を上記歯車に伝達するとともに、上記歯車側から作用する回転力を上記駆動手段側に伝達しない上記連動歯車が介装されていることを特徴とする重力式降下搬送装置。
【請求項2】
上記荷受台は、上記牽引部材に連結された当該基端部から水平方向に延出する支持部材及び、上記被搬送物が載置されるとともに、先端部が上記支持部材の先端部と回動自在に連結されることにより上記基端部が上記支持部材に対して接離自在に設けられた載置部材を備えてなる載置部と、この載置部の基端部から上方及び/又は下方に延在して、上記支持部材を上記水平に支持する板状の載置姿勢保持部とを有し、かつ上記装置本体の搬出位置に臨む位置には、降下する上記載置部材の上記基端部を上記搬出位置に至る前に係止することにより、上記支持部材の降下に伴って当該載置部材を、その先端部が下方となるように傾斜させる係止部材が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の重力式降下搬送装置。
【請求項3】
上記牽引部材は、上記荷受台と上記回転体を介して相対する対向部に、上記荷受台に対応する重量を有するカウンタウエイトが連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の重力式降下搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−238265(P2007−238265A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62808(P2006−62808)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】