説明

重合体、タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性とウェットグリップ性能を両立できる重合体、該重合体を用いたタイヤ用ゴム組成物、および該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物と下記一般式(II)で表されるシラン化合物とを反応させて得られる重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合して得られる重合体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、該重合体を用いたタイヤ用ゴム組成物、及び該タイヤ用ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、省エネルギー、加えて、環境保護の立場から排出炭酸ガスの低減の社会的要求が強まっている。このため、自動車に対しても排出炭酸ガスの低減を目的として、タイヤの転がり抵抗改善による低燃費性の向上が必要とされており、更に、走行時の安全性(操縦安定性)向上の要求も強まっている。タイヤ特性は、タイヤの構造、使用材料等種々の要素に左右されるが、特に路面に接するトレッド部分に用いるゴム組成物の性能が低燃費性、安全性、耐久性等のタイヤ特性への寄与が大きい。このため、タイヤトレッド用ゴムの技術的改良が多く検討、提案され、実用化されている。
【0003】
性能改善のために配合の改良が検討され、ヒステリシスロスが小さく(低燃費性が良好)、ウェットスキッド抵抗性が高い(ウェットグリップ性能が良好)配合が検討されている。しかしながら、低ヒステリシスロスと高ウェットスキッド抵抗性との関係は相反するものであり、両立は難しいのが現状である。
【0004】
特許文献1には、アミノシラン化合物により変性されたブタジエンゴムを配合することにより、低燃費性、耐摩耗性が向上することが開示されている。しかし、低燃費性とウェットグリップ性能の両立という点では未だ改善の余地を残すものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−214608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性とウェットグリップ性能を両立できる重合体、該重合体を用いたタイヤ用ゴム組成物、および該タイヤ用ゴム組成物をタイヤの各部材(特に、トレッド)に用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の方法にて課題を解決できることを見い出した。
すなわち本発明は、下記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物と下記一般式(II)で表されるシラン化合物とを反応させて得られる重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合して得られる重合体に関する。
【0008】
【化1】

【化2】

(RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、該一価の炭化水素基は置換アミノ基またはエーテル基を有していてもよく、また、R及びRは互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは炭素数3〜9の二価の炭化水素基、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜18の一価の炭化水素基を示す。)
【0009】
また、上記重合体は、上記重合体の停止末端が、窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物により変性されていることが好ましい。
【0010】
また、上記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンまたはイソプレンであり、上記芳香族ビニル化合物がスチレンであることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、ゴム成分100質量%中の上記重合体の含有量が5質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0012】
本発明はまた、上記タイヤ用ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物と上記一般式(II)で表されるシラン化合物とを反応させて得られる重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合して得られる重合体、すなわち、特定のアミノシラン構造を含んだ重合体であるので、低燃費性とウェットグリップ性能を両立できる。従って、該重合体を用いたタイヤ用ゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、トレッド)に好適に適用でき、低燃費性とウェットグリップ性能を両立したタイヤを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(重合体)
本発明の重合体は、上記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物と上記一般式(II)で表されるシラン化合物とを反応させて得られる重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合して得られる重合体である。
【0015】
上記一般式(I)において、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、該一価の炭化水素基は、置換アミノ基またはエーテル基を有していてもよく、また、R及びRは互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0016】
炭素数1〜18の一価の炭化水素基としては、例えば炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基などを挙げることができる。なかでも、入手容易性という理由から、上記アルキル基が好ましい。
【0017】
上記アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。上記アルキル基及びアルケニル基のなかでも、入手容易性という理由から、イソプロピル基がより好ましい。
【0018】
上記アリール基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0019】
上記アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、その例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0020】
上記炭化水素基は、置換アミノ基またはエーテル基を有していてもよく、また、これらすべてを有していてもよい。
【0021】
また、R及びRは互いに結合し、上記一般式(I)中の窒素原子とともに環構造を形成してもよい。この環構造は、飽和または不飽和の炭化水素環構造であってもよく、また酸素原子を含む(エーテル基を有する)飽和または不飽和の複素環構造であってもよい。
なかでも、入手容易性という理由から、環は、4員環〜10員環が好ましく、4員環〜8員環がより好ましい。
【0022】
上記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物としては、例えばリチウムジメチルアミド、リチウムメチル(エチル)アミド、リチウムメチル(イソプロピル)アミド、リチウムメチル(n−ブチル)アミド、リチウムメチル(sec−ブチル)アミド、リチウムメチル(tert−ブチル)アミド、リチウムメチル(ペンチル)アミド、リチウムジエチルアミド、リチウムエチル(イソプロピル)アミド、リチウムエチル(n−ブチル)アミド、リチウムエチル(sec−ブチル)アミド、リチウムエチル(tert−ブチル)アミド、リチウムエチル(ペンチル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムイソプロピル(n−ブチル)アミド、リチウムイソプロピル(sec−ブチル)アミド、リチウムイソプロピル(tert−ブチル)アミド、リチウムイソプロピル(ペンチル)アミド、リチウムアゼチジン−1−イド、リチウムピロリジン−1−イド、リチウムピペリジン−1−イド、リチウムアゼパン−1−イド、リチウムアゾカン−1−イド、リチウム2−メチルピロリジン−1−イド、リチウム3−メチルピロリジン−1−イド、リチウム2−エチルピロリジン−1−イド、リチウム2−メチルピペリジン−1−イド、リチウム3−メチルピペリジン−1−イド、リチウム4−メチルピペリジン−1−イド、リチウム3,5−ジメチルピペリジン−1−イド、リチウム2−メチルピペリジン−1−イド、リチウム1,3−オキサジナン−3−イド、リチウムモルホリン−4−イド、リチウム1−メチルテトラヒドロ−1H−ピリミジン−3−イド、リチウム4−メチルピペラジン−1−イドなどが挙げられる。なかでも、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムピロリジン−1−イド、リチウムアゼパン−1−イド、リチウムモルホリン−4−イドが好ましい。
【0023】
上記一般式(II)において、Rは炭素数3〜9のニ価の炭化水素基、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜18の一価の炭化水素基を示す。
【0024】
の炭素数3〜9の二価の炭化水素基としては、例えば炭素数3〜9(好ましくは炭素数3〜7、より好ましくは炭素数3)のアルキレン基、炭素数3〜9のアルキニレン基などを挙げることができる。なかでも、入手容易性、反応性という理由から、上記アルキレン基が好ましい。
【0025】
上記アルキレン基及びアルキニレン基は直鎖状、枝分かれ状、環状のいずれであってもよく、その例としては、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、プロぺニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基などが挙げられる。上記アルキレン基及びアルキニレン基のなかでも、入手容易性、反応性という理由から、直鎖状が好ましく、n−プロピレン基、n−ブチレン基がより好ましい。
【0026】
およびRの炭素数1〜18の一価の炭化水素基としては、R、Rと同様の基が挙げられる。なかでも、入手容易性、反応性という理由から、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜5、特に好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基が好ましい。
【0027】
上記一般式(II)で表されるシラン化合物としては、例えば1,1−ジメチル−1−シラシクロプロパン、1−メチル−1−エチル−1−シラシクロプロパン、1,1−ジエチル−1−シラシクロプロパン、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、1−メチル−1−エチル−1−シラシクロブタン、1,1−ジエチル−1−シラシクロブタン、1,1−ジメチル−1−シラシクロペンタン、1−メチル−1−エチル−1−シラシクロペンタン、1,1−ジエチル−1−シラシクロペンタン、1,1−ジメチル−1−シラシクロヘキサン、1−メチル−1−エチル−1−シラシクロヘキサン、1,1−ジエチル−1−シラシクロヘキサン、1,1−ジメチル−1−シラシクロヘプタン、1−メチル−1−エチル−1−シラシクロヘプタン、1,1−ジエチル−1−シラシクロヘプタンなどが挙げられる。なかでも、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン、1−メチル−1−エチル−1−シラシクロプロパンが好ましい。
【0028】
本発明に用いられる重合開始剤の調製方法は、上記リチウムアミド化合物と上記シラン化合物とを接触する方法であれば特に制限はない。
上記リチウムアミド化合物と上記シラン化合物とを接触させることにより、下記式(III)に示す反応が進行し、特定のアミノシラン構造を含んだ重合開始剤が得られる。該重合開始剤は、このような構造を有しているため、開始末端にアミノ基およびシリル基を導入した変性重合体を得ることができる。
【0029】
【化3】

【0030】
本発明に用いられる重合開始剤の調製方法は、例えば、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤に上記リチウムアミド化合物、上記シラン化合物をそれぞれ別々に溶解し、当該シラン化合物溶液に当該リチウムアミド化合物溶液を撹拌下で滴下することにより重合開始剤を調製できる。なお、重合開始剤を調製する際の反応温度は、−20〜50℃が好ましい。
【0031】
炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
重合開始剤を調製する際のリチウムアミド化合物とシラン化合物のモル比(リチウムアミド化合物/シラン化合物)は0.8〜1.1が好ましく、0.9〜1.05がより好ましい。
【0033】
本発明に用いられる共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用性の面などの観点から1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0034】
本発明に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、モノマーの入手容易性などの実用性の面などの観点からスチレンが特に好ましい。なお、共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
本発明の重合体の製造方法としては、重合開始剤として、上記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物と上記一般式(II)で表されるシラン化合物とを反応させて得られる重合開始剤を用いる以外は特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。重合反応中は、下記式(IV)で表される重合末端にLiを有する重合体が生成する。
【0036】
【化4】

【0037】
本発明の重合体の製造方法は、具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を上記重合開始剤を用いて、必要に応じてランダマイザーの存在下で重合させることにより、目的の重合体が得られる。
【0038】
炭化水素系溶剤としては、上記重合開始剤の調製の場合と同様のものを好適に使用できる。
【0039】
また、前記ランダマイザーとは、重合体中の共役ジエン部分のミクロ構造制御、例えばブタジエンにおける1、2−結合、イソプレンにおける3、4−結合の増加など、あるいは重合体におけるモノマー単位の組成分布の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化などの作用を有する化合物のことである。
【0040】
ランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを用いることができる。例えば、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第三級アミン類などを挙げることができる。また、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシドなどのカリウム塩、ナトリウム−t−アミレートなどのナトリウム塩類も用いることができる。これらのランダマイザーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、入手容易性という理由から、テトラヒドロフラン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが好ましい。
【0041】
ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物(式(III)で表される重合開始剤)1モルに対して、0.01モル以上が好ましく、0.05モル以上がより好ましい。ランダマイザーの使用量が0.01モル未満では、添加効果が小さく、ランダム化しにくい傾向がある。また、ランダマイザーの使用量は、有機リチウム化合物(式(III)で表される重合開始剤)1モルに対して、1000モル以下が好ましく、500モル以下がより好ましい。ランダマイザーの使用量が1000モルをこえると、モノマーの反応速度が大きく変化してしまい、逆にランダム化しにくくなる傾向がある。
【0042】
本発明における重合体の停止末端には、官能基を導入してもよく、導入しなくてもよい。なかでも、ゴム組成物の低燃費性とウェットグリップ性能のバランスを向上させるという理由から、官能基を導入することが好ましい。なお、官能基を導入しない場合には、例えば、アルコール等の重合停止剤を添加して重合反応を終了すればよい。一方、官能基を導入する場合には、例えば、上記式(IV)で表される重合体の重合末端と、官能基を有する変性剤とを反応させて、重合反応を終了すればよい。
【0043】
変性剤による重合体の変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、重合体と変性剤とを接触させればよく、調製した重合体溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0044】
重合体の停止末端に官能基を導入するための変性剤は、窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物が好ましい。
官能基としては、例えばアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、ゴム組成物の低燃費性とウェットグリップ性能のバランスを向上させるという理由から、アミノ基、アルコキシシリル基、エーテル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基が好ましい。
【0045】
変性剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3,5−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、1−グリシジル−4−(2−ピリジル)ピペラジン、1−グリシジル−4−フェニルピペラジン、1−グリシジル−4−メチルピペラジン、1−グリシジル−4−メチルホモピペラジン、1−グリシジルヘキサメチレンイミン、11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、1−ベンジル−4−グリシジルピペラジン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−モルフォリノジチオ)ベンゾチアゾール、2−(6−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2−(2−ピリジルエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)チオプロピルトリメトキシシラン、2,2−ジエトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメトキシ−1,6−ジアザ−2−シラシクロオクタン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、2,4−ジニトロベンゼンスルホニルクロライド、2,4−トリレンジイソシアナート、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−トリブチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、2−ビニルピリジン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリメトキシシラン、2−ラウリルチオエチルフェニルケトン、3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル(トリエトキシ)シラン、3−(1,3−ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(1,3−ジメチルブチリデン)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3,4−ジアミノ安息香酸、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシジエトキシ)シラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエトキシ(メチル)シリルプロピル無水コハク酸、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)ジエトキシメチルシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸、3−トリエトキシシリルプロピル無水酢酸、3−トリフェノキシシリルプロピル無水コハク酸、3−トリフェノキシシリルプロピル無水酢酸、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−トリエトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4’−(イミダゾール−1−イル)−アセトフェノン、4−〔3−(N,N−ジグリシジルアミノ)プロピル〕モルホリン、4−グリシジル−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジニルオキシ、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−ビニルピリジン、4−モルホリノアセトフェノン、4−モルホリノベンゾフェノン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)サクシンイミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ピロール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−3−[アミノ(ポリプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[5−(トリエトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、N−[5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソペンチル]カプロラクタム、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノメチルトリメトキシシラン、N−アリル−アザ−2,2−ジエトキシシラシクロペンタン、N−アリル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジエトキシシラシクロペンタン、N−n−ブチル−アザ−2,2−ジメトキシシラシクロペンタン、N,N,N’,N’−テトラエチルアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチルチオ尿素、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素、N,N’−エチレン尿素、N,N’−ジエチルアミノベンゾフェノン、N,N’−ジエチルアミノベンゾフェノン、N,N’−ジエチルアミノベンゾフラン、N,N’−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N’−ジエチル尿素、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、N,N−ジオクチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、N,N−ジオクチル−N’−トリメトキシシリルプロピルウレア、N,N−ジエチルカルバミン酸メチル、N,N−ジグリシジルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチル−o−トルイジン、N,N−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−エチルアミノイソブチルトリエトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N−エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−ビニルベンジルアザシクロヘプタン、N−フェニルピロリドン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、n−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−メチルインドリノン、N−メチルピロリドン、p−(2−ジメチルアミノエチル)スチレン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジエトキシシラン、(アミノエチルアミノ)−3−イソブチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、アクリル酸、アジピン酸ジエチル、アセタミドプロピルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノベンゾフェノン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、エチレンオキシド、オクタデシルジメチル(3−トリメトキシシリルプロピル)アンモニウムクロリド、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリセロールトリステアレート、クロロトリエトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、クロロポリジメチルシロキサン、クロロメチルジフェノキシシラン、ジアリルジフェニルスズ、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、ジエチル(グリシジル)アミン、ジエチル、ジチオカルバミン酸2−ベンゾチアゾイルエステル、ジエトキシジクロロシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリメトキシシラン、ジグリシジルポリシロキサン、ジクロロジフェノキシシラン、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジビニルベンゼン、ジフェニルカルボジイミド、ジフェニルシアナミド、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェノキシメチルクロロシラン、ジブチルジクロロスズ、ジメチル(アセトキシ−メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、ジメチル(メトキシ−メチルシロキサン)ポリジメチルシロキサン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルエチレン尿素、ジメチルジクロロシラン、ジメチルスルホモイルクロライド、シルセスキオキサン、ソルビタントリオレイン酸エステル、ソルビタンモノラウリン酸エステル、チタンテトラキス(2−エチルヘキシオキシド)、テトラエトキシシラン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラフェノキシシラン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)シアヌレート、トリフェニルホスフェート、トリフェノキシクロロシラン、トリフェノキシメチルケイ素、トリフェノキシメチルシラン、二酸化炭素、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス[(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシメチル)−3−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ビス(2−メチルブトキシ)メチルクロロシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)−N−メチルアミン、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−エチルヘキシルオキシ)シラン、ビニルベンジルジエチルアミン、ビニルベンジルジメチルアミン、ビニルベンジルトリブチルスズ、ビニルベンジルピペリジン、ビニルベンジルピロリジン、ピロリジン、フェニルイソシアナート、フェニルイソチオシアナート、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、フタル酸アミド、ヘキサメチレンジイソシアナート、ベンジリデンアニリン、ポリジフェニルメタンジイソシアネート、ポリジメチルシロキサン、メチル−4−ピリジルケトン、メチルカプロラクタム、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ラウリルチオプロピオン酸メチル、四塩化ケイ素等があげられる。
【0046】
上記変性剤のなかでも、ゴム組成物の低燃費性とウェットグリップ性能のバランスを向上させるという理由から、下記一般式(V)〜(VII)で表される化合物が好ましい。
【0047】
【化5】

(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びR10は、同一若しくは異なって、水素原子、またはアルキル基を表す。rは整数を表す。)
【0048】
【化6】

(式中、R11、R12及びR13は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R14は、環状エーテル基を表す。p及びqは整数を表す。)
【0049】
【化7】

(式中、R15、R16及びR17は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。sは整数を表す。)
【0050】
上記式(V)で表される化合物において、R、R及びRは、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基(好ましくは炭素数1〜3)等が挙げられる。上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0051】
上記シリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0052】
上記アセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。R、R及びRとしては、入手容易性、反応性という理由から、アルコキシ基、シリルオキシ基が好ましい。
【0053】
上記式(V)で表される化合物において、R及びR10のアルキル基としては、例えば、上記R、R及びRのアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0054】
r(整数)としては、入手容易性という理由から0〜5が好ましい。更には、rは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。rが6以上であるとコストが増大する。
【0055】
上記式(V)で表される化合物の具体例としては、上記変性剤として例示した3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0056】
上記式(VI)で表される化合物において、R11、R12及びR13は、上記式(V)で表される化合物におけるR、R及びRと同様である。
【0057】
上記式(VI)で表される化合物において、R14の環状エーテル基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、オキソラン基、オキサン基、オキセパン基、オキソカン基、オキソナン基、オキセカン基、オキセト基、オキソール基等のエーテル結合を1つ有する環状エーテル基、ジオキソラン基、ジオキサン基、ジオキセパン基、ジオキセカン基等のエーテル結合を2つ有する環状エーテル基、トリオキサン基等のエーテル結合を3つ有する環状エーテル基等が挙げられる。なかでも、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜7の環状エーテル基が好ましく、エーテル結合を1つ有する炭素数2〜4の環状エーテル基がより好ましく、オキシラン基が更に好ましい。また、環状エーテル基は環骨格内に不飽和結合を有していないことが好ましい。
【0058】
p(整数)としては、入手容易性、反応性という理由から0〜5が好ましい。更には、pは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。pが6以上であるとコストが増大する。
【0059】
q(整数)としては、入手容易性、反応性という理由から0〜5が好ましい。更には、qは1〜3がより好ましく、1が最も好ましい。qが6以上であるとコストが増大する。
【0060】
上記式(VI)で表される化合物の具体例としては、上記変性剤として例示した3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0061】
上記式(VII)で表される化合物において、R15、R16及びR17は、上記式(V)で表される化合物におけるR、R及びRと同様である。
【0062】
s(整数)としては、入手容易性、反応性という理由から0〜5が好ましい。更には、sは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。sが6以上であるとコストが増大する。
【0063】
上記式(VII)で表される化合物の具体例としては、上記変性剤として例示した3−トリフェノキシシリルプロピル無水コハク酸、3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸、3−ジエトキシ(メチル)シリルプロピル無水コハク酸等が挙げられる。なかでも、3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸が好ましい。
【0064】
本発明においては、重合体と変性剤とを反応させた後に、必要に応じて、公知の老化防止剤や重合反応を停止する目的でアルコールなどを加えてもよい。
【0065】
重合体の重量平均分子量(Mw)は1.0×10以上が好ましく、2.0×10以上がより好ましい。重合体の重量平均分子量は2.0×10以下が好ましく、1.5×10以下がより好ましく、1.0×10以下が更に好ましく、5.0×10以下が特に好ましい。重量平均分子量が1.0×10未満ではヒステリシスロスが大きく十分な低燃費性が得られにくいだけでなく、耐摩耗性も低下する傾向がある。一方、2.0×10を越えると加工性が低下する傾向がある。
なお、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0066】
重合体のスチレン量は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。50質量%を超えると、充分な低燃性が得られないおそれがある。また、重合体のスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、スチレン量は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0067】
重合体のビニル量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。80質量%を超えると、充分な低燃費性が得られないおそれがある。また、重合体のビニル量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。10質量%未満であると、充分なウェットグリップ性能が得られないおそれがある。
なお、ビニル量は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0068】
(タイヤ用ゴム組成物)
本発明では、ゴム成分として、上記重合体が使用される。ゴム成分として、上記重合体を使用することにより、低燃費性とウェットグリップ性能を両立できる。
【0069】
ゴム成分100質量%中の上記重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性、ウェットグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。
【0070】
本発明では、上記重合体以外のゴム成分として、ジエン系ゴムを使用できる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ジエン系合成ゴムが挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンコム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。なかでも、グリップ性能および耐摩耗性をバランスよく示すことから、NR、BR、SBRが好ましい。これらのゴムは単独で用いてもよく、2種以上組み合わせてもよい。
【0071】
NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0072】
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。なかでも、低燃費性と耐摩耗性をバランスよく得られるという理由から、BRのシス含量は95質量%以上が好ましい。
【0073】
本発明のゴム組成物においては、補強剤としてカーボンブラックまたはシリカを配合することが好ましい。
【0074】
使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。カーボンブラックを配合することにより、補強性を高めることができるとともに、電気伝導性、耐オゾン性、耐老化性を改善できる。カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は80m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましい。80m/g未満では、十分なウェットグリップ性能が得られず、また耐摩耗性が低下するおそれがある。また、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は280m/g以下が好ましく、250m/g以下がより好ましく、200m/g以下が更に好ましく、150m/g以下が特に好ましい。280m/gを超えると、分散性に劣り、耐摩耗性が低下するおそれがある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0076】
上記ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。100質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0077】
使用できるシリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。シリカを配合することにより、低燃費性とウェットグリップ性能のバランスが向上する。
【0078】
上記シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは80m/g以上、更に好ましくは120m/g以上である。50m/g未満であると、補強効果が小さく、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは210m/g以下である。300m/gを超えると、分散性が悪く、ヒステリシスロスが増大し、低燃費性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0079】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上、より好ましく15質量部以上である。5質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。該シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。150質量部を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
【0080】
上記ゴム組成物がカーボンブラック及びシリカを含有する場合、カーボンブラック及びシリカの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは15質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは25質量部以上である。15質量部未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、該合計含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。100質量部を超えると、加工性が低下し、充分な低燃費性が得られないおそれがある。
【0081】
本発明のゴム組成物は、シリカを配合する場合、シリカとともに、シランカップリング剤を含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラフ、ルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィドなどがあげられる。なかでも、補強性改善効果などの点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドが好ましい。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。1質量部未満では、未加硫ゴム組成物の粘度が高く加工性が悪くなる傾向がある。また、該シランカップリング剤の含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。20質量部を超えると、配合量に見合ったシランカップリング剤の配合効果が得られず、コストが高くなる傾向がある。
【0083】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、クレー等の無機・有機充填剤、ステアリン酸等の加硫促進助剤、各種老化防止剤、オゾン劣化防止剤、酸化亜鉛、オイル、軟化剤、可塑剤、ワックス、硫黄又は硫黄化合物等の加硫剤、加硫促進剤などを必要に応じて適宜配合することができる。
【0084】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法等により製造できる。
【0085】
本発明のゴム組成物は、空気入りタイヤの各部材(特に、トレッド)に好適に使用できる。
【0086】
(空気入りタイヤ)
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造できる。すなわち、ゴム組成物を未加硫の段階で各部材(特に、トレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0087】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等として好適に用いられ、特に乗用車用タイヤ、二輪車用タイヤとして好適に用いられる。本発明により得られる空気入りタイヤは、低燃費性とウェットグリップ性能を両立できる。
【実施例】
【0088】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0089】
以下、製造例1〜4で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
リチウムジイソプロピルアミド:関東化学(株)製の1Mリチウムジイソプロピルアミド,n−ヘキサン−テトラヒドロフラン溶液
ピロリジン:関東化学(株)製のピロリジン
ヘキサメチレンイミン:関東化学(株)製のへキサメチレンイミン
モルホリン:関東化学(株)製のモルホリン
1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン:信越シリコーン(株)製のLS−700
n−ヘキサン:関東化学(株)製のn−ヘキサン
THF:関東化学(株)製のテトラヒドロフラン
【0090】
(製造例1)
(重合開始剤溶液(1)の合成)
十分に窒素置換した200ml容器に、n−ヘキサン88ml、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン1.3mlを加え、0℃にて1.0Mリチウムジイソプロピルアミド,n−ヘキサン−テトラヒドロフラン溶液10mlを滴下し、1時間攪拌することで重合開始剤(下記式(1))溶液(1)を得た。
【0091】
【化8】

【0092】
(製造例2)
(重合開始剤溶液(2)の合成)
十分に窒素置換した100ml容器に、n−ヘキサン40ml、ピロリジン0.83ml、THF4mlを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液6.25mlを滴下し、1時間撹拌してリチウムアミド化合物(リチウムピロリジン−1−イド)の溶液を調製した。次に十分に窒素置換した200ml容器に、n−ヘキサン44ml、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン1.3mlを加え、0℃にて調製したリチウムアミド化合物の溶液を滴下し、1時間撹拌することで重合開始剤(下記式(2))溶液(2)を得た。
【0093】
【化9】

【0094】
(製造例3)
(重合開始剤溶液(3)の合成)
十分に窒素置換した100ml容器に、n−ヘキサン40ml、ヘキサメチレンイミン1.13ml、THF4mlを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液6.25mlを滴下し、1時間撹拌してリチウムアミド化合物(リチウムアゼパン−1−イド)の溶液を調製した。次に十分に窒素置換した200ml容器に、n−ヘキサン44ml、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン1.3mlを加え、0℃にて調製したリチウムアミド化合物の溶液を滴下し、1時間撹拌することで重合開始剤(下記式(3))溶液(3)を得た。
【0095】
【化10】

【0096】
(製造例4)
(重合開始剤溶液(4)の合成)
十分に窒素置換した100ml容器に、n−ヘキサン40ml、モルホリン0.87ml、THF4mlを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液6.25mlを滴下し、1時間撹拌してリチウムアミド化合物(リチウムモルホリン−4−イド)の溶液を調製した。次に十分に窒素置換した200ml容器に、n−ヘキサン44ml、1,1−ジメチル−1−シラシクロブタン1.3mlを加え、0℃にて調製したリチウムアミド化合物の溶液を滴下し、1時間撹拌することで重合開始剤(下記式(4))溶液(4)を得た。
【0097】
【化11】

【0098】
表1に製造例1〜4で使用した試薬およびその使用量をまとめて示す。
【0099】
【表1】

【0100】
以下、製造例5〜14で使用した各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
スチレン:関東化学(株)製のスチレン
イソプレン:関東化学(株)製のイソプレン
n−ヘキサン:関東化学(株)製のn−ヘキサン
THF:関東化学(株)製のテトラヒドロフラン
重合開始剤(1)〜(4):上記製造例(1)〜(4)で調製した重合開始剤溶液(1)〜(4)
sec−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.0Msec−ブチルリチウム,ヘキサン−シクロヘキサン溶液
変性剤(1):アヅマックス社製の3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(式(V)において、R、R及びR=メトキシ基、R及びR10=メチル基、r=3)
変性剤(2):アヅマックス社製の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(式(VI)において、R11、R12及びR13=メトキシ基、R14=オキシラン基、p=3、q=1)
変性剤(3):アジマックス社製の3−トリエトキシシリルプロピル無水コハク酸(式(VII)において、R15、R16及びR17=エトキシ基、s=3)
イソプロパノール:関東化学(株)製のイソプロパノール
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:関東化学(株)製の2,6−tert−ブチル−p−クレゾール
メタノール:関東化学(株)製メタノール
【0101】
(製造例5)
(重合体(1)の合成)
十分に窒素置換した2000ml耐圧製容器に、n−ヘキサン1500ml、スチレン25ml、ブタジエン150ml、THF10mlを加え、40℃で重合開始剤溶液(1)4.5mlを加えて撹拌した。3時問後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて重合体(1)を得た。
【0102】
(製造例6〜9、14)
(重合体(2)〜(5)、(10)の合成)
表2に示す処方に従って、重合体(1)と同様の方法にて重合体(2)〜(5)、(10)を得た。
【0103】
(製造例10)
(重合体(6)の合成)
十分に窒素置換した2000ml耐圧製容器に、n−ヘキサン1500ml、スチレン25ml、ブタジエン150ml、THF10mlを加え、40℃で重合開始剤溶液(1)4.5mlを加えて撹拌した。3時間後、変性剤(1)0.1mlを加えて撹拌した。30分後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて重合体(6)を得た。
【0104】
(製造例11〜13)
(重合体(7)〜(9)の合成)
表2に示す処方に従って、重合体(6)と同様の方法にて重合体(7)〜(9)を得た。
【0105】
得られた重合体(1)〜(10)について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
【0106】
(スチレン量およびビニル量の測定)
日本電子(株)製の核磁気共鳴装置(JNM−ECAシリーズ)を用いて測定した。
【0107】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)を用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0108】
【表2】

【0109】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150L(シス含量:98質量%)
重合体(1)〜(10):製造例5〜14で調製した重合体(1)〜(10)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN220(NSA:111m2/g)
シリカ;デグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m2/g)
シランカップリング剤:デグッサ社製のSi69((ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド))
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉未硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラ−NS
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0110】
実施例1〜9及び比較例1
表3に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、50℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で20分間、0.5mm厚の金型でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0111】
得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で10分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0112】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤを使用して、下記の評価を行った。それぞれの試験結果を表3に示す。
【0113】
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度60℃でtanδを測定した。tanδの逆数の値について比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど低燃費性に優れることを示している。
【0114】
(ウェットグリップ性能(1))
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片を用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほどウェットグリッブ性能が高いことを示す。
【0115】
(ウェットグリップ性能(2))
水を撒いて湿潤路面としたテストコースにて、タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定し、その距離の逆数の値を比較例1を100として、それぞれ指数表示した。指数が大きいほどウェットグリッブ性能が高いことを示す。
【0116】
【表3】

【0117】
表3に示すように、特定のアミノシラン構造を有する重合体(1)〜(9)を配合した実施例は、特定のアミノシラン構造を有さない重合体(10)を配合した比較例に比べて、低燃費性とウェットグリップ性能のバランスに優れたゴム組成物を提供できることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるリチウムアミド化合物と下記一般式(II)で表されるシラン化合物とを反応させて得られる重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物または共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を重合して得られる重合体。
【化1】

【化2】

(RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜18の一価の炭化水素基であり、該一価の炭化水素基は置換アミノ基またはエーテル基を有していてもよく、また、R及びRは互いに結合して環構造を形成してもよい。Rは炭素数3〜9の二価の炭化水素基、RおよびRはそれぞれ独立して炭素数1〜18の一価の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
前記重合体の停止末端が、窒素、酸素、およびケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する化合物により変性されている請求項1記載の重合体。
【請求項3】
前記共役ジエン化合物が1,3−ブタジエンまたはイソプレンであり、前記芳香族ビニル化合物がスチレンである請求項1または2記載の重合体。
【請求項4】
ゴム成分100質量%中の請求項1〜3のいずれかに記載の重合体の含有量が5質量%以上であるタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項4記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−79913(P2011−79913A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231891(P2009−231891)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】