説明

重合体の製造方法、セメント混和剤用重合体、セメント混和剤、およびセメント組成物

【課題】水溶性ポリマーの架橋重合体であって、スランプ保持性能が良好に維持されたまま低い粘度を実現できる優れたセメント混和剤に適用し得る、重合体の製造方法を提供する。また、そのようなスランプ保持性能に優れたセメント混和剤用重合体を提供する。さらに、そのようなセメント混和剤用重合体を含むセメント混和剤、およびそのようなセメント混和剤を含むセメント組成物を提供する。
【解決手段】本発明の重合体の製造方法は、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に特定の連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体をせん断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体の製造方法、セメント混和剤用重合体、セメント混和剤、およびセメント組成物に関する。詳細には、セメント混和剤に適用し得る重合体の製造方法、スランプ保持性能に優れたセメント混和剤を提供し得るセメント混和剤用重合体、そのようなセメント混和剤用重合体を含むセメント混和剤、およびそのようなセメント混和剤を含むセメント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートなどのセメント組成物は、セメントと水との水和反応などにより、配合後の時間の経過と共にコンシステンシーが低下し、作業性の低下をきたす。この現象は、一般にスランプロスと呼ばれている。
【0003】
セメント組成物におけるスランプロスは、生コンクリートにおいて、運搬時間の制限、打設現場での待機時間等による品質変化、施工性不良、コールドジョイント等による耐久性低下などの障害をおこす。また、コンクリート二次製品製造工場などにおいて、セメント組成物のポンプ圧送を昼休みやトラブルによって一時中断し、その後圧送を再開した時に、圧送圧が急激に増加したりポンプが閉塞したりするなどの事故の原因となり、また型枠にセメント組成物を打ち込んだ後、何らかの理由で締め固めなどの成型が遅れた場合に未充填等の問題を生ずる。
【0004】
したがって、セメント組成物におけるスランプロスは、生コンクリート工場、二次製品製造工場その他において、セメント組成物の品質管理上および施工性改善のために解決しなければならない重要な課題である。
【0005】
スランプロス防止、すなわち、スランプ保持性能を向上させるため、セメント混和剤が用いられている。セメント混和剤は、セメント組成物の流動性を高めてセメント組成物を減水させることにより、硬化物の強度や耐久性等を向上させる作用を有する。このようなセメント混和剤の中でもポリカルボン酸系重合体を含むもの(特許文献1〜4参照。)は、従来のナフタレン系等のセメント混和剤に比べて高い減水性能を発揮するため、高性能AE減水剤として実績がある。
【0006】
スランプ保持性能に優れたセメント混和剤として、水溶性ポリマーの架橋重合体が報告されている(特許文献5参照。)。しかし、架橋が進むにつれて大きく増粘するため、分散安定性や取り扱い性が悪化するという問題がある。また、増粘によって、セメント組成物に配合されたときに水になじみにくく、セメント組成物が不均一になり、セメント混和剤の局部的な存在により硬化不良などが起こりやすい。
【特許文献1】特開2001−220417号公報
【特許文献2】特開2002−121055号公報
【特許文献3】特開2002−121056号公報
【特許文献4】特開2004−519406号公報
【特許文献5】特許第2978560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、水溶性ポリマーの架橋重合体であって、スランプ保持性能が良好に維持されたまま低い粘度を実現できる優れたセメント混和剤に適用し得る、重合体の製造方法を提供することにある。また、そのようなスランプ保持性能に優れたセメント混和剤用重合体を提供することにある。さらに、そのようなセメント混和剤用重合体を含むセメント混和剤、およびそのようなセメント混和剤を含むセメント組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の重合体の製造方法は、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体をせん断する。
【化1】

【0009】
好ましい実施形態においては、上記架橋重合体が、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマーに該水溶性ポリマーに対して3.4〜5.7重量%の架橋剤を反応させて得られる。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記せん断後の架橋重合体の、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が120cps以上である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記せん断後の架橋重合体の、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が2000cps以下である。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記せん断は、上記架橋重合体の水溶液または水分散液に対して行う。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記せん断は、1000〜20000rpmの回転数で行う。
【0014】
本発明の別の局面によれば、セメント混和剤用重合体が提供される。本発明のセメント混和剤用重合体は、本発明の製造方法で得られる。
【0015】
本発明の別の局面によれば、セメント混和剤用重合体が提供される。本発明のセメント混和剤用重合体は、重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体であって、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が120〜2000cpsである。
【化2】

【0016】
好ましい実施形態においては、上記架橋重合体が、重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマーに該水溶性ポリマーに対して3.4〜5.7重量%の架橋剤を反応させて得られる。
【0017】
本発明の別の局面によれば、セメント混和剤が提供される。本発明のセメント混和剤は、本発明のセメント混和剤用重合体を含む。
【0018】
本発明の別の局面によれば、セメント組成物が提供される。本発明のセメント組成物は、本発明のセメント混和剤を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、水溶性ポリマーの架橋重合体であって、スランプ保持性能が良好に維持されたまま低い粘度を実現できる優れたセメント混和剤に適用し得る、重合体の製造方法を提供することができる。また、そのようなスランプ保持性能に優れたセメント混和剤用重合体を提供することができる。さらに、そのようなセメント混和剤用重合体を含むセメント混和剤、およびそのようなセメント混和剤を含むセメント組成物を提供することができる。
【0020】
上記のような効果は、重合体の製造方法において、特定の架橋重合体に対してせん断処理を行うことによって発現することができる。また、セメント混和剤用重合体として、特定の架橋重合体であって、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が120〜2000cpsである架橋重合体を採用することによって発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
〔重合体の製造方法〕
本発明の重合体の製造方法は、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体をせん断する。上記重合体は、好ましくは、セメント混和剤用重合体である。
【化3】

【0022】
本発明の製造方法において、せん断前の架橋重合体(以下、単に「架橋重合体」と称することがある)は、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する。
【0023】
本発明において、架橋重合体は、2以上の主鎖が互いに架橋されている構造を有する。この主鎖は、炭素−炭素結合のみからなるか、または、それを主体とする構造を有する。
【0024】
上記架橋は、一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合である。この結合(架橋構造)は、エステル結合を有しているが、その位置が重要である。すなわち、主鎖の炭素原子から少なくとも炭素原子1個分離れてエステル結合を有しているか、または、エステル結合が主鎖の炭素原子に直接結合している場合には一般式(1)の構造においてRが−CH(OH)−CH−であるかのいずれかである。このような結合としては、任意の適切な結合を採用し得る。例えば、一般式(2)〜(4)で表される3つが挙げられる。
【化4】

(ここで、R20は、例えば、アルキレンオキシドから導かれる2価の基をあらわす。)
【化5】

(ここで、R21は、例えば、アルキレン基を表す。なお、R21が2個以上ある場合、すべてのR21が同一の基である必要はない。)
【化6】

(ここで、R21は、例えば、アルキレン基を表す。なお、R21が2個以上ある場合、すべてのR21が同一の基である必要はない。)
【0025】
本発明の製造方法において、架橋重合体中の水溶性ポリマー構造は、重量平均分子量が500〜100000であり、好ましくは3000〜50000、より好ましくは5000〜50000、さらに好ましくは10000〜50000、特に好ましくは20000〜50000、最も好ましくは30000〜50000である。上記水溶性ポリマー構造の重量平均分子量が上記範囲を外れると、分散安定性に劣るおそれや、空気量が異常に増大するおそれがある。
【0026】
本発明において、架橋重合体中の水溶性ポリマー構造は、好ましくは、一般式(5)〜(9)で表される官能基の少なくとも1種を含む。
【化7】

(ただし、mは0または1〜50の整数であり、nは0または1であり、Mは水素、一価金属、二価金属、三価金属、アンモニウム基、および有機アミノ基のいずれかであり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基である。なお、mが2以上である場合、複数のROはすべて同じ基である必要はなく、また、複数のROが互いに異なる基である場合、それらの配列は規則的でもランダムでもよい。)
【0027】
上記Mは水素、一価金属、二価金属、三価金属、アンモニウム基、および有機アミノ基のいずれかである。一価金属としては、例えば、ナトリウム、カリウムが挙げられる。二価金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウムが挙げられる。三価金属としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。有機アミノ基としては、例えば、トリメチルアミノ基、トリエチルアミノ基、トリエタノールアミノ基が挙げられる。
【0028】
本発明において、架橋重合体中の水溶性ポリマー構造は、好ましくは、一般式(10)〜(16)で表される官能基の少なくとも1種を含む。
【化8】

(ただし、pは1〜10の整数であり、qは0または1〜100の整数であり、rおよびsはそれぞれ1〜3の整数であり、tおよびuはそれぞれ1〜100の整数、Aは炭素数2〜4のアルキレンイミンの2価または3価の開環基(2価の場合、直鎖状であり、3価の場合、分岐状である)であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RはCHまたはCであり、RはH、CHまたはCであり、R10はHまたは炭素数1〜5のアルキル基であり、Xはアニオン性対イオンである。なお、pが2以上の場合、複数のAはすべて同じ基である必要はなく、また、複数のAが互いに異なる基である場合、それらの配列は規則的でもランダムでもよい。qが0でない場合、AとROとの配列は順番が逆でもよく、また、規則的でもランダムでもよい。qが2以上である場合、tが2以上である場合およびuが2以上である場合、それぞれ、複数のROはすべて同じ基である必要はなく、また、複数のROが互いに異なる基である場合、それらの配列は規則的でもランダムでもよい。1つの式中に同じ記号で表される基が2以上含まれる場合、すべて同一の基である必要はない。)
【0029】
上記一般式(10)で表される官能基は、例えば、−COOM基を有する水溶性ポリマーのその−COOM基に対してアルキレンイミンおよびアルキレンオキサイドのうちの少なくともアルキレンイミンを任意の適切な方法により付加反応させることで得ることができる。アルキレンイミンを単独で付加させても良いし、アルキレンイミンとアルキレンオキサイドとを共付加させても良い。共付加の場合には、それらを同時に−COOM基に反応させることもでき、また、逐次的にアルキレンイミンを反応させた後にアルキレンオキサイドを反応させることもできる。アルキレンイミンとしては任意の適切なアルキレンイミンが挙げられる。例えば、エチレンイミン、プロピレンイミンなどが挙げられる。
【0030】
本発明の製造方法において、架橋重合体は、水溶性ポリマー構造を構築するための単量体、および、架橋構造を構築するための単量体を、併用して重合することで得ることができる(方法I)。
【0031】
また、本発明の製造方法において、架橋重合体は、まず、水溶性ポリマー構造を構築するための単量体を重合して水溶性ポリマーを製造し、それに架橋構造を構築するための架橋剤を反応させて得ることができる(方法II)。
【0032】
上記方法IIにおいては、架橋重合体は、好ましくは、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマーに該水溶性ポリマーに対して3.4〜5.7重量%の架橋剤を反応させて得られる。架橋剤の量は、より好ましくは、3.5〜5.6重量%、さらに好ましくは3.6〜5.5重量%である。架橋剤の量が上記範囲を外れると、本発明の効果が十分に発揮できない架橋重合体となるおそれがある。
【0033】
上記方法Iおよび方法IIにおいて、水溶性ポリマー構造を構築するための単量体としては、例えば、一般式(i)〜(vi)、一般式(ix)〜(xiv)で表される単量体が挙げられる。これらの単量体は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【化9】

(ただし、mは0または1〜50の整数であり、nは0または1であり、Mは水素、一価金属、二価金属、三価金属、アンモニウム基および有機アミノ基のうちのいずれかであり、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはCHであり、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基である。なお、mが2以上である場合、複数のROはすべて同じ基である必要はなく、また、複数のROが互いに異なる基である場合、それらの配列は規則的でもランダムでもよい。1つの式中に同じ記号で表される基または数が2以上含まれる場合、すべて同一の基または数である必要はない。)
【化10】

(ただし、rおよびsはそれぞれ1〜3の整数であり、tおよびuはそれぞれ1〜100の整数であり、RおよびRはそれぞれ独立にHまたはCHであり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、RはCHまたはCであり、RはH、CHまたはCであり、R10はHまたは炭素数1〜5のアルキル基であり、Xはアニオン性対イオンである。なお、tが2以上である場合およびuが2以上である場合、それぞれ、複数のROはすべて同じ基である必要はなく、また、複数のROが互いに異なる基である場合、それらの配列は規則的でもランダムでもよい。1つの式中に同じ記号で表される基が2以上含まれる場合、すべて同一の基である必要はない。)
【0034】
単量体(i)の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ならびに、それらの一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0035】
単量体(ii)の例としては、マレイン酸、シトラコン酸、これらの無水物、ならびに、それらの一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0036】
単量体(iii)の例としては、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−スルホプロピル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、1−スルホプロパン−2−イル(メタ)アクリレート、2−スルホブチル(メタ)アクリレート、3−スルホブチル(メタ)アクリート、4−スルホブチル(メタ)アクリレート、1−スルホブタン−2−イル(メタ)アクリレート、1−スルホブタン−3−イル(メタ)アクリレート、2−スルホブタン−3−イル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、1,1−ジメチル−2−スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホアルキル(メタ)アクリレート類およびその一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩もしくは有機アミン塩;スルホエトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スルホプロポキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スルホブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スルホエトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スルホプロポキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、スルホブトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のスルホアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類およびその一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩もしくは有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0037】
単量体(iv)の例としては、アクリルアミドメタンスルホン酸、アクリルアミドエタンスルホン酸、アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリルアミドメタンスルホン酸、メタクリルアミドエタンスルホン酸、およびそれらの一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩、または有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0038】
単量体(v)の例としては、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、および、これらの一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0039】
単量体(vi)の例としては、p−スチレンスルホン酸などのスルホン化スチレン、ならびに、その一価金属塩、二価金属塩、三価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0040】
単量体(ix)の例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0041】
単量体(x)の例としては、上記単量体(ix)に任意の適切な四級化剤、例えば、ハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、ジアルキル硫酸等を反応させて得られるものなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0042】
単量体(xi)の例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジエチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジエチルアミノプロピルメタクリルアミドなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0043】
単量体(xii)の例としては、上記単量体(xi)に任意の適切な四級化剤、例えば、ハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、ジアルキル硫酸等を反応させて得られるものなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
単量体(xiii)の例としては、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノメタリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメタリルエーテル、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタリルエーテルなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテルなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0045】
単量体(xiv)の例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシプロポリピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0046】
上記方法Iにおいて、架橋構造を構築するための単量体(X)としては、架橋構造を構築できるものであれば任意の適切な単量体を採用し得る。例えば、下記の反応(a)〜(e)で得られる単量体が挙げられる。
【0047】
(a)モノエステルジオールおよびポリエステルポリオールの少なくとも一方と、これらの化合物の水酸基と反応可能な官能基を有する重合性単量体との反応。
【0048】
(b)モノエステルジカルボン酸およびポリエステルポリカルボン酸の少なくとも一方と、これらの化合物のカルボキシル基と反応可能な官能基を有する重合性単量体との反応。
【0049】
(c)ポリオールおよびポリエポキシ化合物の少なくとも一方と、重合性二重結合から少なくとも炭素原子1個離れてカルボキシル基を有する重合性単量体との反応。
【0050】
(d)ポリカルボン酸と、重合性二重結合から少なくとも炭素原子1個離れて水酸基またはエポキシ基を有する重合性単量体との反応。
【0051】
(e)モノエステルポリエポキシ化合物およびポリエステルポリエポキシ化合物の少なくとも一方と、これらの化合物のエポキシ基と反応可能な官能基を有する重合性単量体との反応。
【0052】
上記(a)の製造方法におけるモノエステルジオールおよびポリエステルポリオールとしては、ジオール化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等と2塩基酸、例えば、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸等との反応生成物;上記2塩基酸と環状エーテル、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等との反応生成物;上記ジオール化合物とオキシカルボン酸、例えば、グリコール酸、α−ヒドロキシアクリル酸、サリチル酸、マンデル酸等の反応生成物;上記オキシカルボン酸と環状エーテルとの反応生成物;上記ジオールまたは多価アルコール、例えば、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等とラクトン、例えば、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等の反応生成物;等が挙げられる。
【0053】
上記(a)の製造方法における水酸基と反応可能な官能基を有する重合性単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリロイルオキシエチルアジリジン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、塩化(メタ)アクリロイル、塩化アリル等が挙げられる。
【0054】
上記(b)の製造方法におけるモノエステルジカルボン酸および/またはポリエステルポリカルボン酸としては、上記(a)の製造方法に例示した化合物と同様のものを用いて得ることができる。
【0055】
上記(b)の製造方法におけるカルボキシル基と反応可能な官能基を有する重合性単量体としては、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリロイルオキシエチルアジリジン、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記(c)の製造方法におけるポリオールとしては、上記(a)の製造方法に例示したポリエステルポリオールの他に、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール等が挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,4−ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、2−メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシド2〜6モル付加反応物等または上記のジオール化合物とシュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸の反応生成物であるジオール、または、上記ジオール化合物とε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトン付加反応生成物であるポリエステルジオール等をジオール成分とするポリカーボネートポリオール;このようなポリカーボネートポリオールのエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドまたはε−カプロラクトンまたはδ−バレロラクトン付加反応生成物であるポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。このようなポリカーボネートポリオールは、市販品として容易に入手することができる。例えば、デスモフェン2020E(住友バイエルポリウレタン(株)製、平均分子量2000)、DN−980(日本ポリウレタン(株)製、平均分子量2000)、DN−981(日本ポリウレタン(株)製、平均分子量1000)等が挙げられる。ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテルをエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール化合物を開始剤として重合させることによって得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。このようなポリエーテルポリオールは市販品として容易に入手することができる。例えば、サンニックスPP−1000(三洋化成(株)製、ポリプロピレングリコール、分子量1000)、PTG−500P(保士ヶ谷化学工業(株)製、ポリテトラメチレングリコール、分子量2000)等が挙げられる。ポリブタジエンポリオールとしては、分子末端に水酸基を有する、1,4−ブタジエンあるいは、1,2−ブタジエンの重合物が挙げられる。また、水添ポリブタジエンポリエーテルは、上記ポリブタジエンポリオールの分子中の不飽和二重結合を水素化したものを挙げることができる。これらは市販品として容易に入手することができる。例えば、NISSO−PB G−1000、G−2000、G−3000(日本曹達(株)製、液状ポリブタジエングリコール)、NISSO−PB GI−1000、GI−2000、GI−3000(日本曹達(株)製、水添ポリブタジエングリコール)、Polybd R−45TH(出光石油化学(株)製、液状ポリブタジエングリコール)等が挙げられる。
【0057】
上記(c)の製造方法における重合性二重結合から少なくとも炭素原子1個以上離れてカルボキシル基を有する重合性単量体としては、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、4−カルボキシフェニル(メタ)アクリレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸等が挙げられる。
【0058】
上記(d)の製造方法におけるポリカルボン酸としては、上記(b)の製造方法に例示したモノエステルジカルボン酸およびポリエステルポリカルボン酸の他に、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、トリカルバリン酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0059】
上記(d)の製造方法における重合性二重結合から少なくとも炭素原子1個以上離れて水酸基を有する重合性単量体としては、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−〔(2−メチル−1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕プロピルアクリレート等が挙げられる。
【0060】
上記(d)の製造方法における重合性二重結合から少なくとも炭素原子1個以上離れてエポキシ基を有する重合性単量体としては、オキシラニルメチル(メタ)アクリレート、9−オキシラニルノニル(メタ)アクリレート、(3−メチルオキシラニル)メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸9,10−エポキシ化オレイル(新日本理化(株)製、リカレジンESA)等が挙げられる。
【0061】
上記(e)の製造方法におけるモノエステルポリエポキシ化合物およびポリエステルポリエポキシ化合物としては、上記(b)の製造方法に例示したモノエステルジカルボン酸および/またはポリエステルポリカルボン酸とエピクロルヒドリンとの反応生成物、テレフタル酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、下記構造式を有する化合物等が挙げられる。
【化11】

【0062】
上記(e)の製造方法におけるエポキシ基と反応可能な官能基を有する重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニルエチルアミン、ビチルブチルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
単量体(X)は上記製造方法によって得られるだけでなく、市販品として容易に入手することができるものもある。例えば、KAYARAD MANDA、HX−220、HX−620、R−526、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120(日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0064】
上記方法Iにおいては、単量体(i)〜(vi)、単量体(ix)〜(xiv)、単量体(X)の他に、これらと共重合可能な任意の適切な他の単量体(g)を用い得る。その使用量は、単量体(i)〜(vi)、単量体(ix)〜(xiv)、単量体(X)の合計量に対して、好ましくは0〜30重量%である。
【0065】
他の単量体(g)としては、炭素数1〜20個の脂肪族アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル;(メタ)アクリルアミド;マレイン酸、フマル酸、あるいは、これらの酸と炭素数1〜20個の脂肪族アルコールまたは炭素数2〜4個のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル酸2〜100のポリアルキレングリコールとのモノエステルあるいはジエステル;酢酸ビニル、酢酸プロペニル等の酢酸アルケニルエステル;スチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル;塩化ビニル;等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0066】
上記方法Iにおいては、好ましくは、単量体を下記の組み合わせで用いる。
(組み合わせI−1)単量体(i)、単量体(xiv)、単量体(X)
(組み合わせI−2)単量体(i)、単量体(iv)、単量体(X)
(組み合わせI−3)単量体(i)、単量体(iv)、単量体(xiv)、単量体(X)
(組み合わせI−4)単量体(i)、単量体(iii)、単量体(X)
(組み合わせI−5)単量体(i)、単量体(iii)、単量体(xiv)、単量体(X)
【0067】
上記方法IIにおいては、好ましくは、単量体を下記の組み合わせで用いて水溶性ポリマーを得る。
(組み合わせII−1)単量体(i)、単量体(xiv)
(組み合わせII−2)単量体(i)、単量体(iv)
(組み合わせII−3)単量体(i)、単量体(iv)、単量体(xiv)
(組み合わせII−4)単量体(i)、単量体(iii)
(組み合わせII−5)単量体(i)、単量体(iii)、単量体(xiv)
【0068】
上記(組み合わせI−1)の場合、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(i)は、単量体(X)0.1〜50重量%、単量体(xiv)1〜98.9重量%、単量体(i)1〜98.9重量%(ただし、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましい。
【0069】
上記(組み合わせI−2)の場合、単量体(X)、単量体(iv)、単量体(i)は、単量体(X)0.1〜50重量%、単量体(iv)1〜98.9重量%、単量体(i)1〜98.9重量%(ただし、単量体(X)、単量体(iv)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましい。
【0070】
上記(組み合わせI−3)の場合、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(iv)、単量体(i)は、単量体(X)0.1〜50重量%、単量体(xiv)1〜70重量%、単量体(iv)1〜97.9重量%、単量体(i)1〜97.9重量%(ただし、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(iv)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(X)1〜20重量%、単量体(xiv)5〜59重量%、単量体(iv)1〜49重量%、単量体(i)39〜93重量%(ただし、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(iv)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのがより好ましい。
【0071】
上記(組み合わせI−4)の場合、単量体(X)、単量体(iii)、単量体(i)は、単量体(X)0.1〜50重量%、単量体(iii)1〜98.9重量%、単量体(i)1〜98.9重量%(ただし、単量体(X)、単量体(iii)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましい。
【0072】
上記(組み合わせI−5)の場合、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(iii)、単量体(i)は、単量体(X)0.1〜50重量%、単量体(xiv)1〜70重量%、単量体(iii)1〜97.9重量%、単量体(i)1〜97.9重量%(ただし、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(iii)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(X)1〜20重量%、単量体(xiv)5〜59重量%、単量体(iii)1〜49重量%、単量体(i)39〜93重量%(ただし、単量体(X)、単量体(xiv)、単量体(iii)、単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのがより好ましい。
【0073】
上記(組み合わせII−1)の場合、単量体(xiv)と単量体(i)とは、単量体(xiv)1〜99.9重量%および単量体(i)99〜0.1重量%(ただし、単量体(xiv)と単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(xiv)50〜80重量%および単量体(i)20〜50重量%(ただし、単量体(xiv)と単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのがより好ましい。単量体(xiv)が少なすぎると、スランプ保持性能が劣るおそれがあり、多すぎると、連行空気が多くなるおそれがある。また、単量体(i)が少なすぎると、分散能が劣るおそれがあり、多すぎると、硬化遅延性が現れるおそれがある。
【0074】
上記(組み合わせII−2)の場合、単量体(iv)と単量体(i)とは、単量体(iv)1〜99重量%および単量体(i)1〜99重量%(ただし、単量体(iv)と単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(iv)1〜40重量%および単量体(i)60〜99重量%(ただし、単量体(iv)と単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのがより好ましい。単量体(iv)または単量体(i)が上記範囲をはずれると、分散性が不足したり、材料分離を引き起こしたり、あるいは、スランプロスが増大したりするおそれがある。
【0075】
上記(組み合わせII−3)の場合、単量体(iv)、単量体(i)、単量体(xiv)は、単量体(iv)1〜98重量%、単量体(i)1〜98重量%、単量体(xiv)1〜70重量%(ただし、単量体(iv)、単量体(i)、単量体(xiv)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(iv)1〜50重量%、単量体(i)39〜94重量%、単量体(xiv)5〜60重量%(ただし、単量体(iv)、単量体(i)、単量体(xiv)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのがより好ましい。単量体(iv)、単量体(i)、単量体(xiv)のいずれかが上記範囲をはずれると、分散性不足、材料分離、スランプロス増大または空気量増加が起こるおそれがある。
【0076】
上記(組み合わせII−4)の場合、単量体(iii)と単量体(i)とは、単量体(iii)1〜99重量%および単量体(i)1〜99重量%(ただし、単量体(iii)および単量体(i)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(iii)1〜40重量%および単量体(i)60〜99重量%(ただし、単量体(iii)と単量体(i)の合計は100重量%である〕の比率で用いられるのがより好ましい。単量体(iii)または単量体(i)が上記範囲をはずれると、分散性が不足したり、材料分離を引き起こしたり、あるいは、スランプロスが増大したりするおそれがある。
【0077】
上記(組み合わせII−5)の場合、単量体(iii)、単量体(i)、単量体(xiv)は、単量体(iii)1〜98重量%、単量体(i)1〜98重量%、単量体(xiv)1〜70重量%(ただし、単量体(iii)、単量体(i)、単量体(xiv)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのが好ましく、単量体(iii)1〜50重量%、単量体(i)39〜94重量%、単量体(xiv)5〜60重量%(ただし、単量体(iii)、単量体(i)、単量体(xiv)の合計は100重量%である)の比率で用いられるのがより好ましい。単量体(iii)、単量体(i)、単量体(xiv)のいずれかが上記範囲をはずれると、分散性不足、材料分離、スランプロス増大または空気量増加が起こるおそれがある。
【0078】
上記方法IIで用いる、架橋構造を構築するための架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を採用し得る。好ましくは、水溶性ポリマーのもつ官能基(たとえばカルボキシル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基など)と反応しうる官能基を持つ化合物が挙げられる。例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル等のごとき多価アルコール類;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル等のごとき多価グリシジル化合物類;などが挙げられる。
【0079】
架橋剤として多価アルコールを用いる場合は、水溶性ポリマーを重合する際に重合性二重結合から少なくとも炭素原子1個以上離れたところにカルボキシル基を持つ単量体、たとえば、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸等を共重合し、さらに架橋剤の多価アルコールとエステル化することにより目的の構造を有する架橋重合体を得ることができる。
【0080】
架橋剤の使用量は、水溶性ポリマーの有する官能基(カルボキシル基および/または水酸基および/またはスルホン酸基など)に対して官能基モル比(架橋剤の有する官能基/水溶性ポリマーの有する官能基)で0.001〜1.0となるように用いることが好ましく、0.01〜0.3がより好ましい。このモル比が前記範囲よりも少ないと、スランプロス防止効果が十分ではなく、セメント混和剤の性能が得られないおそれがあり、多いと性能の向上が認められないか、または、架橋重合体の取り扱いに問題がでるおそれがある。
【0081】
上記方法Iおよび方法IIで行い得る単量体の重合は、任意の適切な重合方法を採用し得る。例えば、重合開始剤を用いて、単量体を重合させれば良い。重合は、溶液重合や塊状重合など、任意の適切な重合形式を採用し得る。
【0082】
溶液重合は回分式でも連続式でも行うことができる。溶液重合で使用され得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;酢酸エチル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;等が挙げられる。原料単量体および得られる水溶性ポリマーの溶解性ならびに水溶性ポリマーの使用時の取り扱い性の点からは、水および炭素数1〜4の低級アルコールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。炭素数1〜4の低級アルコール中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。
【0083】
水媒体中で重合を行う時は、重合開始剤として、アンモニウムまたはアルカリ金属の過硫酸塩あるいは過酸化水素等の水溶性の重合開始剤が使用され得る。この際、亜硫酸水素ナトリウム等の促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、酢酸エチル、あるいはケトン化合物を溶媒とする重合には、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド:クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物;等が重合開始剤として用いられる。この際、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。水と低級アルコールの混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。重合温度は、用いられる溶媒や重合開始剤により適宜定められるが、0〜120℃の範囲内が好ましい。
【0084】
塊状重合は、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシドやラウロイルパーオキシド等のパーオキシド;クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等の脂肪族アゾ化合物;等を用い得る。重合温度は、50〜150℃の範囲内が好ましい。
【0085】
方法II(まず、水溶性ポリマー構造を構築するための単量体を重合して水溶性ポリマーを製造し、それに架橋構造を構築するための架橋剤を反応させて架橋重合体を製造する方法)を用いる場合、水溶性ポリマーと架橋剤とを反応させる方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、水溶性ポリマーを水性溶媒中で直接に架橋剤と反応させる方法、水溶性ポリマーを疎水性有機溶媒中に懸濁、分散させて架橋剤を反応させる方法(逆相懸濁法)が挙げられる。
【0086】
方法IIを用いる場合、反応温度としては、任意の適切な温度を採用し得る。例えば、20〜200℃が好ましく、50〜100℃がより好ましい。
【0087】
以上のようにして得られた架橋重合体は、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が、好ましくは10000cps以下である。
【0088】
本発明の製造方法においては、以上のようにして得られた架橋重合体、すなわち、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体に対して、せん断を行う。
【0089】
一般に、ポリマーは、構成単位となっている基が1次元的に長くつながってできた鎖(あるいは糸)のようなものであり、溶液中においてこのような分子はランダムコイルと呼ばれるくにゃくにゃ曲がった形をとっている。希薄溶液では、ポリマーは独立した糸まりとして存在するが、濃度が高くなると、糸まりは互いに重なり合い、ポリマーは複雑に絡み合うようになる。架橋重合体においては、ポリマー鎖内での架橋とポリマー鎖間での架橋が存在し、特に、ポリマー鎖間での架橋が存在する架橋重合体は、ポリマー同士の絡み合いが複雑になる。他方、水溶性ポリマーの架橋重合体は、スランプ保持性能に優れているものの、架橋が進むにつれて大きく増粘するため、分散安定性や取り扱い性が悪化する。また、増粘によって、セメント組成物に配合されたときに水になじみにくく、セメント組成物が不均一になり、セメント混和剤の局部的な存在により硬化不良などが起こりやすい。この増粘を低減するために架橋の度合いを下げると、優れたスランプ保持性能が維持できず、これまでは、高架橋状態による優れたスランプ保持性能と低粘度との両立が非常に困難であった。本発明においては、高架橋状態による優れたスランプ保持性能を維持したまま、低粘度を実現できる手段として、架橋重合体を「せん断」することを考えた。架橋重合体を「せん断」することによって、高架橋状態による優れたスランプ保持性能を維持したまま、架橋重合体(ポリマー分子)同士の絡み合いを解くことができ、これによって、高架橋状態による優れたスランプ保持性能を維持したまま、低粘度を実現できるものと考えた。そして、この考えに基づいて検証を重ねた結果、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体をせん断すると、高架橋状態による優れたスランプ保持性能を維持したまま、低粘度を実現できることが判った。特に、ポリアルキレングリコール鎖を側鎖に有するポリカルボン酸系の水溶性ポリマーは、水素結合を介したポリマー間コンプレックスを生じやすいため、架橋重合体(ポリマー分子)同士の絡み合いが起こりやすく、上記せん断により、非常に効果的に、高架橋状態による優れたスランプ保持性能を維持したまま、低粘度を実現できる。
【0090】
本発明の製造方法におけるせん断の条件としては、本発明の目的が達成できる範囲内で任意の適切な条件を採用し得る。
【0091】
せん断の回転数としては、好ましくは1000〜20000rpm、より好ましくは2000〜15000rpm、さらに好ましくは2500〜10000rpmである。せん断の回転数が上記範囲から外れると、架橋重合体における高架橋状態と低粘度との両立が困難となるおそれがある。
【0092】
せん断に用いる装置としては、任意の適切なせん断装置を採用し得る。例えば、ホモミキサー、パイプラインミキサーなどが挙げられる。
【0093】
せん断は、架橋重合体に対して、任意の適切な状態で行うことができる。好ましくは、架橋重合体の水溶液または水分散液に対してせん断を行う。
【0094】
せん断後の架橋重合体の、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度は、好ましくは120cps以上であり、より好ましくは130cps以上、さらに好ましくは140cps以上、特に好ましくは150cps以上である。上記粘度が120cps未満の場合、優れたスランプ保持性能を発現できないおそれがある。
【0095】
せん断後の架橋重合体の、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度は、好ましくは2000cps以下であり、より好ましくは1500cps以下、さらに好ましくは1200cps以下、特に好ましくは1000cps以上である。上記粘度が2000cpsを超える場合、高架橋状態による優れたスランプ保持性能と低粘度との両立が困難となるおそれがある。
【0096】
〔セメント混和剤用重合体〕
本発明のセメント混和剤用重合体は、本発明の製造方法で得られるセメント混和剤用重合体である(以下、このセメント混和剤用重合体を「セメント混和剤用重合体A」と称することがある)。
【0097】
特に好ましい実施形態として、本発明のセメント混和剤用重合体は、また、重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体であって、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が120〜2000cpsである(以下、このセメント混和剤用重合体を「セメント混和剤用重合体B」と称することがある)。
【0098】
上記「20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度」は、本発明のセメント混和剤用重合体を特定する指標となり得る。
【0099】
上記粘度の下限は、好ましくは130cps以上、より好ましくは140cps以上、さらに好ましくは150cps以上である。上記粘度が120cps未満の場合、優れたスランプ保持性能を発現できないおそれがある。
【0100】
上記粘度の上限は、好ましくは1500cps以下、より好ましくは1200cps以下、さらに好ましくは1000cps以上である。上記粘度が2000cpsを超える場合、高架橋状態による優れたスランプ保持性能と低粘度との両立が困難となるおそれがある。
【0101】
セメント混和剤用重合体Bは、重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体である。上記重量平均分子量は、好ましくは30000〜45000、より好ましくは30000〜40000である。上記重量平均分子量が上記範囲から外れると、高架橋状態による優れたスランプ保持性能と低粘度との両立が困難となるおそれがある。
【0102】
セメント混和剤用重合体Bを製造する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。好ましくは、本発明の製造方法と同様の方法を用いて製造する。この場合、特に好ましくは、用いる架橋重合体が、重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマーに該水溶性ポリマーに対して3.4〜5.7重量%の架橋剤を反応させて得られるものである。このような条件で製造することによって、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度を120〜2000cpsに調整し得る。
【0103】
〔セメント混和剤〕
本発明のセメント混和剤は、本発明のセメント混和剤用重合体を含む。すなわち、本発明のセメント混和剤は、上記のセメント混和剤用重合体Aおよび/またはセメント混和剤用重合体Bを含む。
【0104】
本発明のセメント混和剤は、本発明のセメント混和剤用重合体が水に溶解または分散されていても良い。このように本発明のセメント混和剤用重合体を水に溶解または分散しておくと、取り扱いが簡便であるという利点がある上、セメント組成物を調製するときに練り混ぜ水の一部または全部として利用できる。しかも、分散安定性の問題(沈降など)が生じない。本発明のセメント混和剤用重合体を水にあらかじめ溶解または分散しておく場合、本発明のセメント混和剤用重合体と水の比率としては、任意の適切な比率を採用し得る。
【0105】
本発明のセメント混和剤は、セメントモルタルやコンクリート等のセメント組成物に対して大きな硬化遅延性をもたらすことなく高い流動性を発揮し、かつ、優れたスランプ保持性能を有しているため、モルタル工事やコンクリート工事において、作業性に著しい改善をもたらす。
【0106】
本発明のセメント混和剤は、例えば、レディミクストコンクリートをはじめとするコンクリートの流動化剤として有効に使用できるのはもちろんのこと、特に、プラント同時添加型の高性能AE減水剤として高減水率配合のレディミクストコンクリートの製造を容易にし、その流動性を一定に保つことができる。さらに、コンクリート二次製品製造用高性能減水剤としても、有効に使用できる。
【0107】
本発明のセメント混和剤は、例えば、セメントミルク、モルタルのグラウト用助剤、トレミー管により打設されるセメント配合物、水中コンクリート、連続地中壁用コンクリートなどの流動性保持と材料分離防止などの用途にも有効に使用できる。
【0108】
本発明のセメント混和剤は、各種水硬性材料、すなわち、セメントや、石膏等のセメント以外の水硬性材料に用いることができる。そして、水硬性材料と水と本発明のセメント分散剤とを含有し、更に必要に応じて細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)を含む水硬性組成物の具体例としては、セメントペースト、モルタル、コンクリート、プラスター等が挙げられる。
【0109】
上記水硬性組成物の中では、水硬性材料としてセメントを使用するセメント組成物が最も一般的である。このようなセメント組成物は、好ましくは、上記本発明のセメント混和剤、セメント、及び水を必須成分として含む。
【0110】
〔セメント組成物〕
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント混和剤を含む。好ましくは、本発明のセメント混和剤、セメント、及び水を必須成分として含む。
【0111】
本発明のセメント組成物において、セメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)等が挙げられ、さらに、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加しても良い。また、骨材として、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【0112】
本発明のセメント組成物においては、その1mあたりの単位水量、セメント使用量、及び水/セメント比としては、任意の適切な値を採用し得る。例えば、好ましくは、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(質量比)=0.15〜0.5(好ましくは0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
【0113】
本発明のセメント組成物における、本発明のセメント混和剤の配合割合としては、任意の適切な割合を採用し得る。例えば、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100重量部に対し、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.02〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部となる比率の量を添加すればよい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の好ましい効果がもたらされる。上記配合割合が0.01重量部未満ではセメント組成物としての性能が十分に発揮できないおそれがあり、10重量部を超える量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0114】
本発明のセメント組成物は、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり、更に、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効である。
【0115】
本発明のセメント組成物は、任意の適切なセメント分散剤を含有していても良い。例えば、分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤や、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤が挙げられる。なお、これらのセメント分散剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0116】
上記スルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸塩;ポリオール誘導体;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリスチレンスルホン酸塩;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系化合物;等が挙げられる。
【0117】
上記ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(あるいはビニルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で2〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体に更に(メタ)アクリルアミド及び/又は2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合した共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で5〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とエチレンオキシドを平均付加モル数で1〜30付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の4種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸のポリアルキレングリコールエステル系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;等が挙げられる。
【0118】
本発明のセメント組成物が、上記のようなセメント分散剤を含有する場合、本発明のセメント混和剤と上記のようなセメント分散剤との配合重量比としては、任意の適切な比を採用し得る。好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは10:90〜90:10である。
【0119】
本発明のセメント組成物は、さらに以下の(1)〜(20)に例示するような他のセメント添加剤(材)を含有することができる。なお、これらの他のセメント添加剤(材)は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0120】
(1)水溶性高分子物質:ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化若しくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部又は全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状の何れでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマー及びその四級化合物;等。
【0121】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物;等。
【0122】
(3)遅延剤:グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸又はクエン酸、及び、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩又は有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、又はデキストリン等のオリゴ糖、又はデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸並びにその塩又はホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸及びその誘導体;等。
【0123】
(4)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート;等。
【0124】
(5)鉱油系消泡剤:燈油、流動パラフィン等。
【0125】
(6)油脂系消泡剤:動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0126】
(7)脂肪酸系消泡剤:オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物等。
【0127】
(8)脂肪酸エステル系消泡剤:グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックス等。
【0128】
(9)オキシアルキレン系消泡剤:(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;等。
【0129】
(10)アルコール系消泡剤:オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類等。
【0130】
(11)アミド系消泡剤:アクリレートポリアミン等。
【0131】
(12)リン酸エステル系消泡剤:リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェート等。
【0132】
(13)金属石鹸系消泡剤:アルミニウムステアレート、カルシウムオレエート等。
【0133】
(14)シリコーン系消泡剤:ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油等。
【0134】
(15)AE剤:樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フエニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0135】
(16)その他界面活性剤:オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤;等。
【0136】
(17)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0137】
(18)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0138】
(19)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0139】
(20)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0140】
本発明のセメント組成物は、他のセメント添加剤(材)として、上記の他に、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、防錆剤、着色剤、防カビ剤等を用いることができる。
【実施例】
【0141】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(重量平均分子量の測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリエチレングリコールを標準物質として測定した。
(粘度の測定)
粘度は、Brookfield粘度計を用いて測定した。
【0142】
〔製造例1〕:水溶性ポリマー(1)の製造
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管(コンデンサ)を備えたガラス製反応器(内容量:1リットル)に、水4690gを仕込み、撹拌下で、上記反応きを窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。次に、上記反応器内に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数10)1572.5g、メタクリル酸375.0g、メタクリル酸ソーダ52.5g、および水3000gの混合溶液を4時間かけて滴下すると同時に、過硫酸アンモニウム塩の5重量%水溶液310.0gを5時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、反応混合液を95℃で1時間維持した後、室温まで冷却し、ポリマー水溶液を得た。
得られたポリマー水溶液の半量の5kgを採り、30重量%水酸化ナトリウム水溶液184.1gを加え、エバポレーターにて固形分濃度を50重量%にまで濃縮し、pH=6.5の水溶性ポリマー(1)の水溶液を得た。水溶性ポリマー(1)の重量平均分子量は35000であった。
【0143】
〔製造例2〕:水溶性ポリマー(2)の製造
製造例1で得られたポリマー水溶液の残りの半量の5kgを採り、エバポレーターにて固形分濃度を50重量%にまで濃縮し、pH=4.5の水溶性ポリマー(2)の水溶液を得た。水溶性ポリマー(2)の重量平均分子量は35000であった。
【0144】
〔実施例1−1〕
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管(コンデンサ)を備えた容量40リットルのニーダーに、製造例1で得られた50重量%水溶性ポリマー(1)の水溶液を27.00kg仕込み、水2.649gを加えて、43rpmで撹拌しながらニーダーを窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。次に、デナコールEX−721(オルトフタル酸ジグリシジルエステル、ナガセケムテックス社製)351g(水溶性ポリマー水溶液(1)の固形分に対して2.60重量%)を加えて、内温を90〜95℃で3時間維持した。反応時の外観は、終始均一系で進み、架橋重合体(1−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)を得た。
架橋重合体(1−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の、架橋反応直後の粘度(25℃)は、600cpsであった。
【0145】
〔実施例1−2〕
300mlビーカーに実施例1−1で得られた架橋重合体(1−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)200gを入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、HV−M型)にて回転数10000rpmでせん断を行った。この際、熱で水が蒸発しないように、水冷または氷冷した。
せん断後の架橋重合体(1−2)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の粘度(25℃)は、490cpsで安定した。
【0146】
〔実施例2−1〕
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管(コンデンサ)を備えた容量40リットルのニーダーに、製造例1で得られた50重量%水溶性ポリマー(1)の水溶液を27.00kg仕込み、水2.649gを加えて、43rpmで撹拌しながらニーダーを窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。次に、デナコールEX−721(オルトフタル酸ジグリシジルエステル、ナガセケムテックス社製)371g(水溶性ポリマー水溶液(1)の固形分に対して2.75重量%)を加えて、内温を90〜95℃で3時間維持した。反応時の外観は、終始均一系で進み、架橋重合体(2−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)を得た。
架橋重合体(2−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の、架橋反応直後の粘度(25℃)は、1010cpsであった。
【0147】
〔実施例2−2〕
300mlビーカーに実施例2−1で得られた架橋重合体(2−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)200gを入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、HV−M型)にて回転数10000rpmでせん断を行った。この際、熱で水が蒸発しないように、水冷または氷冷した。
せん断後の架橋重合体(2−2)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の粘度(25℃)は、580cpsで安定した。
【0148】
〔実施例3−1〕
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管(コンデンサ)を備えた容量40リットルのニーダーに、製造例1で得られた50重量%水溶性ポリマー(1)の水溶液を27.00kg仕込み、水2.595gを加えて、43rpmで撹拌しながらニーダーを窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。次に、デナコールEX−721(オルトフタル酸ジグリシジルエステル、ナガセケムテックス社製)405g(水溶性ポリマー水溶液(1)の固形分に対して3.00重量%)を加えて、内温を90〜95℃で3時間維持した。反応時の外観は、終始均一系で進み、架橋重合体(3−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)を得た。
架橋重合体(3−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の、架橋反応直後の粘度(25℃)は、4460cpsであった。
【0149】
〔実施例3−2〕
300mlビーカーに実施例3−1で得られた架橋重合体(3−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)200gを入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、HV−M型)にて回転数10000rpmでせん断を行った。この際、熱で水が蒸発しないように、水冷または氷冷した。
せん断後の架橋重合体(3−2)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の粘度(25℃)は、930cpsで安定した。
【0150】
〔実施例3−3〕
300mlビーカーに実施例3−1で得られた架橋重合体(3−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)200gを入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、HV−M型)にて回転数5000rpmでせん断を行った。この際、熱で水が蒸発しないように、水冷または氷冷した。
せん断後の架橋重合体(3−3)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の粘度(25℃)は、1290cpsで安定した。
【0151】
〔実施例3−4〕
300mlビーカーに実施例3−1で得られた架橋重合体(3−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)200gを入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、HV−M型)にて回転数2500rpmでせん断を行った。この際、熱で水が蒸発しないように、水冷または氷冷した。
せん断後の架橋重合体(3−4)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の粘度(25℃)は、1990cpsで安定した。
【0152】
〔実施例4−1〕
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管、および還流冷却管(コンデンサ)を備えたガラス製反応器(内容量:1リットル)に、製造例2で得られた50重量%水溶性ポリマー(2)の水溶液を320g仕込み、水472.2gを加えて、撹拌しながら反応器を窒素置換し、窒素雰囲気下で95℃まで昇温した。次に、デナコールEX−721(オルトフタル酸ジグリシジルエステル、ナガセケムテックス社製)7.8g(水溶性ポリマー水溶液(1)の固形分に対して4.90重量%)を加えて、内温を90〜95℃で3時間維持した。反応時の外観は、終始不均一系で進み、架橋重合体(4−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)を得た。
架橋重合体(4−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の、架橋反応直後の粘度(25℃)は、850cpsであった。
【0153】
〔実施例4−2〕
300mlビーカーに実施例4−1で得られた架橋重合体(4−1)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)200gを入れ、ホモミキサー(特殊機化工業株式会社製、HV−M型)にて回転数10000rpmでせん断を行った。この際、熱で水が蒸発しないように、水冷または氷冷した。
せん断後の架橋重合体(4−2)の水溶液(固形分濃度20.0重量%)の粘度(25℃)は、240cpsで安定した。
【0154】
〔参考例1〕水溶性ポリマー(1)のモルタル試験
室温下、セメント(普通ポルトランドセメント)125g、砂(豊浦産標準砂)125g、製造例1で得られた水溶性ポリマー(1)を含む水60gを容器に測り取り、スパチュラを用いて手練りでかき混ぜ続けた。所定時間ごとにモルタルを採取し、フロー値を測定した。フロー値は、採取したモルタルを水平なステンレス板上に置いたSUS製の内径50mm、高さ50mmの中空円筒にすり切りまで充填し、これを静かに持ち上げて広がったモルタルの直交する長径と短径の平均値とした。
結果を図1に示す。
【0155】
〔参考例2〕架橋重合体(2−2)のモルタル試験
室温下、セメント(普通ポルトランドセメント)125g、砂(豊浦産標準砂)125g、実施例2−2で得られた架橋重合体(2−2)を含む水60gを容器に測り取り、スパチュラを用いて手練りでかき混ぜ続けた。所定時間ごとにモルタルを採取し、フロー値を測定した。フロー値は、採取したモルタルを水平なステンレス板上に置いたSUS製の内径50mm、高さ50mmの中空円筒にすり切りまで充填し、これを静かに持ち上げて広がったモルタルの直交する長径と短径の平均値とした。
結果を図1に示す。
【0156】
〔参考例3〕架橋重合体(2−1)のモルタル試験
室温下、セメント(普通ポルトランドセメント)125g、砂(豊浦産標準砂)125g、実施例2−1で得られた架橋重合体(2−1)を含む水60gを容器に測り取り、スパチュラを用いて手練りでかき混ぜ続けた。所定時間ごとにモルタルを採取し、フロー値を測定した。フロー値は、採取したモルタルを水平なステンレス板上に置いたSUS製の内径50mm、高さ50mmの中空円筒にすり切りまで充填し、これを静かに持ち上げて広がったモルタルの直交する長径と短径の平均値とした。
結果を図1に示す。
【0157】
〔モルタル試験の評価〕
図1によれば、手練り1分でのフロー値は、架橋重合体(2−2)が118mmであったのに対し、架橋重合体(2−1)は92mmと低かった。しかし、時間と共にフロー値は増大し、3分以降では、架橋重合体(2−2)は架橋重合体(2−1)とほぼ同じフロー値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明の製造方法で得られる重合体、あるいは、本発明のセメント混和剤用重合体は、スランプ保持性能に優れたセメント混和剤、セメント組成物に好適に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】モルタル試験結果を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体をせん断する、重合体の製造方法。
【化1】

【請求項2】
前記架橋重合体が、重量平均分子量500〜100000の水溶性ポリマーに該水溶性ポリマーに対して3.4〜5.7重量%の架橋剤を反応させて得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記せん断後の架橋重合体の、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が120cps以上である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記せん断後の架橋重合体の、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が2000cps以下である、請求項1から3までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記せん断は、前記架橋重合体の水溶液または水分散液に対して行う、請求項1から4までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記せん断は、1000〜20000rpmの回転数で行う、請求項1から5までのいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれかに記載の製造方法で得られる、セメント混和剤用重合体。
【請求項8】
重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマー構造の主鎖同士の間に一般式(1)で表される連結基を少なくとも1個含む結合を有する架橋重合体であって、20重量%水溶液または水分散液における25℃での粘度が120〜2000cpsである、セメント混和剤用重合体。
【化2】

【請求項9】
前記架橋重合体が、重量平均分子量30000〜50000の水溶性ポリマーに該水溶性ポリマーに対して3.4〜5.7重量%の架橋剤を反応させて得られる、請求項8に記載のセメント混和剤用重合体。
【請求項10】
請求項7から9までのいずれかに記載のセメント混和剤用重合体を含む、セメント混和剤。
【請求項11】
請求項10に記載のセメント混和剤を含む、セメント組成物。


【図1】
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【公開番号】特開2009−91526(P2009−91526A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266183(P2007−266183)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】