説明

重合体の製造方法

【課題】 本発明は、優れた透明性を有する光学材料に好適なN−アルキルマレイミド系重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 25℃における溶解度パラメータが8〜10(cal1/2/cm3/2)である有機溶媒中で、一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミドを、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はN−アルキルマレイミド重合体の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体を効率よく経済的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−アルキルマレイミドから得られる単独重合体または共重合体(N−アルキルマレイミド系重合体)は、一般的な熱可塑性ビニル重合体と比べて高い耐熱性を示し、さらに透明性に優れた樹脂となることが知られており、光学分野における様々な用途に使用可能な透明樹脂として有望な材料である。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
N−アルキルマレイミド重合体は、ラジカル重合によって製造することができる。また、その製造方法は、塊状重合、乳化重合、溶液重合、懸濁重合等の従来公知の方法により製造することができる。しかしながら、塊状重合は除熱が困難であるために特殊な製造設備が必要であるという問題がある。また、乳化重合や懸濁重合では添加剤の除去が必要である。
【0004】
また、重合体が溶解しない溶媒中でマレイミド系共重合体を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)が、これは芳香族ビニル系単量体を必須成分とするものであり、また溶媒の溶解度パラメータに関する記載も無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−87932号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】大津隆行著、未来材料、Vol.3、No.1(第74〜79頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の溶解度パラメーターを有する有機溶媒を用いた重合によるN−アルキルマレイミド重合体の製造方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、25℃における溶解度パラメータが8〜10(cal1/2/cm3/2)である有機溶媒中で、下記一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミドを、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド重合体の製造方法に関するものである。
【0010】
【化1】

(ここで、Rは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐状アルキル基、あるいは炭素数3〜6の環状アルキル基を示す。)
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明における一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミド中のRは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐状アルキル基、あるいは炭素数3〜6の環状アルキル基を示し、炭素数1〜12の直鎖状アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基等が挙げられ、炭素数3〜12の分岐状アルキル基としては、例えばイソプロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数3〜6の環状アルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、得られるN−アルキルマレイミド重合体が耐熱性に優れるものとなること及び取扱い性が良好であることから、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基が好ましく、特にエチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソプロピル基が好ましい。
【0012】
そして、具体的な一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミドとしては、例えばN−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−iso−ブチルマレイミド、N−sec−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が好ましく、特にN−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド等が好ましい。
【0013】
本発明の製造方法では、25℃における溶解度パラメータが8〜10(cal1/2/cm3/2)である有機溶媒中で重合することにより優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド系重合体を効率よく製造できるものであり、該有機溶媒としては、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトンおよびハロゲン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好ましく、任意の割合で混合することができる。
【0014】
ここで芳香族炭化水素としては、例えばトルエン(8.9)、キシレン(8.8)等が挙げられ、エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン(9.9)等が挙げられ、エステルとしては、例えば酢酸エチル(9.1)、酢酸ブチル等(8.5)等が挙げられ、ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン(9.3)、メチルイソブチルケトン(8.4)等が挙げられ、ハロゲンとしては、例えばクロロホルム(9.5)、1,2−ジクロロエタン(9.8)等が挙げられる。なお、( )の数値は25℃における溶解度パラメータであり、化学便覧(日本化学会編)等を参照できる。これらの中でも有機溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン等が好ましい
また、有機溶媒の使用量は、経済的に効率よく製造を行うことが可能となることから、N−アルキルマレイミド100重量部に対して50〜2000重量部が好ましく、さらに好ましくは80〜1000重量部、特に好ましくは100〜500重量部である。
【0015】
本発明における油溶性ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0016】
また、油溶性ラジカル重合開始剤の使用量は適宜設定することができ、好ましくはN−アルキルマレイミド100重量部に対して0.0001〜5重量部が好ましく、さらに好ましくは0.001〜2重量部であり、特に好ましくは0.1〜1重量部である。
【0017】
ここで重合する際の温度は、油溶性ラジカル重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができ、好ましくは40〜150℃、さらに好ましくは40〜100℃、特に好ましくは40〜80℃である。
【0018】
重合する際の反応器について特に制限は無く、アンカー翼、ファウドラー翼、ブルマージン翼等の攪拌翼がついたSUSあるいはGL反応器等が好的に使用される。
【0019】
本発明において、JIS Z8803に準拠して測定した30℃での重合後の溶液粘度は、透明性に優れた重合体が効率よく得られることから100〜10000cPが好ましく、さらに好ましくは150〜5000cP、特に好ましくは200〜3000cPである。
【0020】
重合後の重合体の回収方法としては、例えば攪拌下、重合体の貧溶剤中に混合する工程、沈殿した重合体をろ過する工程、重合体を貧溶剤で洗浄する工程を含む方法を用いることができる。さらに、得られた重合体を再沈殿精製することもできる。
【0021】
なお、攪拌の際の攪拌回転数は、50〜1000pmが好ましい。
【0022】
ここで貧溶剤としては、重合体を溶解、膨潤させずに未反応単量体を溶解する溶媒が好ましく、例えばメタノール、エタノール、ヘキサン等が挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは任意の割合で混合して用いることができる。
【0023】
また、本発明においては必要に応じて、アルキルメルカプタンのような連鎖移動剤、さらにヒンダードフェノール系、リン系の酸化防止剤を重合初期、重合中あるいは重合後に使用しても良い。
【0024】
本発明で得られるN−アルキルマレイミド重合体の数平均分子量に特に制限はなく、好ましくは1,000〜1,000,000、さらに好ましくは10,000〜500,000、特に好ましくは30,000〜300,000である。
【0025】
本発明で得られるN−アルキルマレイミド重合体のヘーズは特に制限はなく、好ましくは0.01〜1.0、さらに好ましくは0.01〜0.6、特に好ましくは0.01〜0.4である。
【0026】
このようにして得られたN−アルキルマレイミド重合体は、透明性に優れ、各種光学材料、シート、フィルムなどに用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の製造方法により透明性に優れたN−アルキルマレイミド重合体を効率よく製造することができる。
【実施例】
【0028】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下に実施例により得られたN−アルキルマレイミド重合体の評価・測定方法を示す。なお、断りのない限り用いた試薬は市販品を用いた。
【0029】
〜数平均分子量〜
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、カラムGMHHR−H)を用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算から算出して求めた。
【0030】
〜溶液粘度〜
JIS Z8803に準拠して、回転粘度計(東機産業製、商品名TVB−20)を用いて30℃で測定した。
【0031】
〜透明性の評価方法〜
N−アルキルマレイミド重合体の透明性を評価するために、重合体をトルエン50重量%とエチルメチルケトン50重量%からなる溶剤に溶解して樹脂成分が15重量%の溶液を作製、溶液キャスト法で厚さ200μmのフィルムを作製し、ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名NDH2000)を用い、ヘーズを測定した。
【0032】
実施例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、トルエン(25℃における溶解度パラメータ8.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.23重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1630cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−ブチルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:96%)。得られた重合体の数平均分子量は110,000であり、ヘーズは0.27であった。
【0033】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0034】
実施例2
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−エチルマレイミド75g(0.60モル)、トルエン(25℃における溶解度パラメータ8.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.21g(0.0012モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.28重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1830cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−エチルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:94%)。得られた重合体の数平均分子量は100,000であり、ヘーズは0.31であった。
【0035】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0036】
実施例3
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−プロピルマレイミド75g(0.54モル)、トルエン(25℃における溶解度パラメータ8.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.19g(0.0011モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.25重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1770cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−プロピルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:93%)。得られた重合体の数平均分子量は130,000であり、ヘーズは0.29であった。
【0037】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0038】
実施例4
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−イソプロピルマレイミド75g(0.49モル)、トルエン(25℃における溶解度パラメータ8.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.23重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1890cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−イソプロピルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:95%)。得られた重合体の数平均分子量は110,000であり、ヘーズは0.30であった。
【0039】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0040】
実施例5
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ヘキシルマレイミド75g(0.42モル)、トルエン(25℃における溶解度パラメータ8.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.15g(0.0008モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.20重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1540cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−ヘキシルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:94%)。得られた重合体の数平均分子量は130,000であり、ヘーズは0.33であった。
【0041】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0042】
実施例6
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−オクチルマレイミド75g(0.37モル)、トルエン(25℃における溶解度パラメータ8.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.13g(0.0007モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.17重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1460cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−オクチルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:92%)。得られた重合体の数平均分子量は100,000であり、ヘーズは0.31であった。
【0043】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0044】
実施例7
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、テトラヒドロフラン(25℃における溶解度パラメータ9.9cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.23重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1690cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−ブチルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:96%)。得られた重合体の数平均分子量は110,000であり、ヘーズは0.28であった。
【0045】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0046】
実施例8
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、酢酸ブチル(25℃における溶解度パラメータ9.1cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.23重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は1880cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−ブチルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:94%)。得られた重合体の数平均分子量は120,000であり、ヘーズは0.31であった。
【0047】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0048】
実施例9
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、メチルエチルケトン(25℃における溶解度パラメータ9.3cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)(添加量:N−アルキルマレイミド100重量部に対し、溶媒300重量部、油溶性ラジカル重合開始剤0.23重量部)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後の溶液の粘度は2050cPであった。重合反応の終了後、フラスコの中の重合溶液を200rpmの攪拌下、過剰のメタノールと混合することによりN−ブチルマレイミド重合体を析出させた。得られた重合体を濾過後、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:95%)。得られた重合体の数平均分子量は140,000であり、ヘーズは0.27であった。
【0049】
よって、優れた透明性を有するN−アルキルマレイミド重合体が効率よく得られた。
【0050】
比較例1
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、ポリビニルアルコール(日本合成化学製、商品名ゴーセノールKH−20)0.49g、蒸留水(25℃における溶解度パラメータ23.4cal1/2/cm3/2)157g、N−ブチルマレイミド113g(0.74モル)、油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.25g(0.0015モル)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、400rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより懸濁重合を行なった。懸濁重合反応の終了後、フラスコの中の懸濁重合により得られた重合体粒子を濾過後、蒸留水500mLで4回およびメタノール500mLで4回洗浄し80℃にて乾燥し重合体を得た(収率:81%)。数平均分子量は240,000であり、ヘーズは0.82であった。
【0051】
よって、有機溶媒中で重合しなかったことから、得られた重合体は透明性に劣るものであった。
【0052】
比較例2
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、ヘキサン(25℃における溶解度パラメータ7.4cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後、析出した重合体を濾過、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:73%)。得られた重合体の数平均分子量は110,000であり、ヘーズは0.63であった。
【0053】
よって、25℃における溶解度パラメータが8cal1/2/cm3/2未満の溶媒を用いたことから、ヘーズ、収率に劣るものであった。
【0054】
比較例3
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、メタノール(25℃における溶解度パラメータ14.5cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後、析出した重合体を濾過、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:71%)。得られた重合体の数平均分子量は110,000であり、ヘーズは0.67であった。
【0055】
よって、25℃における溶解度パラメータが10cal1/2/cm3/2を超える溶媒を用いたことから、ヘーズ、収率に劣るものであった。
【0056】
比較例4
攪拌機、冷却管、窒素導入管および温度計を備えた500mLの4口フラスコに、N−ブチルマレイミド75g(0.49モル)、イソプロピルアルコール(25℃における溶解度パラメータ11.5cal1/2/cm3/2)225gおよび油溶性ラジカル重合開始剤であるtert−ブチルパーオキシピバレート0.17g(0.001モル)を入れ、窒素バブリングを1時間行なった後、200rpmで攪拌しながら50℃で6時間保持することにより重合を行なった。重合反応の終了後、析出した重合体を濾過、メタノールで十分洗浄し80℃にて乾燥した(収率:69%)。得られた重合体の数平均分子量は120,000であり、ヘーズは0.69であった。
【0057】
よって、25℃における溶解度パラメータが10cal1/2/cm3/2を超える溶媒を用いたことから、ヘーズ、収率に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における溶解度パラメータが8〜10(cal1/2/cm3/2)である有機溶媒中で、下記一般式(1)で表されるN−アルキルマレイミドを、油溶性ラジカル重合開始剤を用いて重合することを特徴とするN−アルキルマレイミド重合体の製造方法。
【化1】

(ここで、Rは炭素数1〜12の直鎖状アルキル基、炭素数3〜12の分岐状アルキル基、あるいは炭素数3〜6の環状アルキル基を示す。)
【請求項2】
N−アルキルマレイミドが、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミドおよびN−オクチルマレイミドであることを特徴とする請求項1に記載のN−アルキルマレイミド重合体の製造方法。
【請求項3】
有機溶媒が、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトンおよびハロゲン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の有機溶媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載のN−アルキルマレイミド重合体の製造方法。
【請求項4】
JIS Z8803に準拠して測定した30℃での重合後の溶液粘度が、100〜10000cPの範囲内にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のN−アルキルマレイミド重合体の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の重合後の溶液を、攪拌下、重合体の貧溶剤中に混合する工程、沈殿した重合体をろ過する工程、重合体を貧溶剤で洗浄する工程を含むことを特徴とするN−アルキルマレイミド重合体の製造方法。

【公開番号】特開2011−6508(P2011−6508A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148491(P2009−148491)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】