説明

重合体を含有する液体の静的脱揮装置

【課題】重合体溶液から揮発成分を脱揮するための装置を提供する。
【解決手段】静的脱揮装置1は、重合体脱揮のために重合体類を含む液体7を処理する役割を果す。容器10内において液体空間が圧力で膨張することによって、揮発成分が重合体類から分離される。揮発処理された重合体類のための排出ポンプ3は廃液領域の底に位置する。揮発成分から構成されたガス類8用の抜き取りライン4と少なくとも1つの相分離室2が当該容器の上方領域11,12に配置されている。この室は、処理する液体の入口20、重合体排出領域の下方開口部210及びガス排出領域の単一又は複数の上方開口部220が含まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体脱揮の目的、即ち当該重合体類から揮発性成分を分離することを目的とする重合体含有液体用の静的脱揮装置、およびこの重合体脱揮を行うための方法に関する。処理する液体は、例えばその中で溶媒が当該揮発性成分を形成するか、揮発成分としてモノマー類を伴う重合体溶融物である重合体溶液である。
【背景技術】
【0002】
重合体脱揮はプラスチックス類の製造、特に処理の重要な部分工程で、それは重要であり、それゆえ多くの場合複雑である。処理する液体に関して適する工程またはこの形式の工程の組合せが選択される種々な脱揮工程が利用できる。当該選択はこの工程では経験に基づき、そして実験で裏打ちされて経験的に行われる。機械装置群、例えば回転する構成部品で動くような押出し機や他の脱揮装置がしばしば使用される。しかしながら機器装置、即ちポンプ類(脱揮重合体用排気ポンプ、熱伝達媒体用のポンプ)のみが機械の要素を形成している静的脱揮装置類も使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
重合体類を含有する液体の脱揮に適している更なる静的脱揮装置を提供するのが本発明の目的であるが、当該液体が膨張時に発泡し、この工程で遊離したガスと低ガス性重合体の混合物が生じる。(本明細書では蒸気はガスとして、そして低ガス重合体は揮発性成分の残留物を一方では溶解した形で、また一方ではその直径が比較的広い範囲の値に亘っている状態の細かい泡の形で含有する液体と理解されるものである)。本発明の基本的な目的は請求項1で定義する脱揮装置で満たされる。
【0004】
当該静的脱揮装置は重合体脱揮を目的として、重合体を含有する液体を処理するのに供される。この工程においては、当該圧力下におかれた液体状態を容器の中にて膨張させて、揮発性成分類を当該重合体類から分離する。当該脱揮処理された重合体用の排出ポンプは排液領域の底に置かれている。当該揮発成分類からなるガス類用の抽出ラインは当該容器の上方領域に接続され、少なくとも1つの相分離室は当該容器の上方領域に配置されている。当該室には処理する液体用の入口、重合体排出領域の下方開口部群およびガス排出領域の1つの上方開口部或いは複数の上方開口部群が含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従属請求項2から5は本発明に基づいた脱揮装置の効果的な実施形態に関する。対応する脱揮工程が請求項6から11の目的である。
本発明は以下において図面を参考にして説明することになる。
【0006】
例えば、図1において第1の実施形態で示すような本発明に基づいた静的脱揮装置1を用いて重合体類を含有している高粘度液体7を処理する。この処理が当該重合体類から揮発成分を分離する重合体脱揮であり;これは膨張蒸発を用いて実施される。既に知られている方法のように、揮発成分類から形成されるガス類は一部が容器10中の流下薄膜および/または流下縄状物から遊離され、それは通例排出できる。当該容器10の内部空間には頭部領域11、中央領域12および脱揮された、または部分的に脱揮された重合体73が集まる排液領域13が含まれる。脱揮された重合体7は、当該排液領域13における当該重合体73の調整レベルの維持のための機器(示されていない)を用い、底部にある排出ポンプ3により容器10から除去される。当該脱揮された重合体7は依然揮発性成分の残留物を含有する可能性があり、必要であればそれは更なる脱揮装置(示していない)にて除去ができる。遊離されたガス類用の抜き取りラインが当該容器10に接続されている。
【0007】
相分離室2は当該頭部領域で当該容器10に一体化されている。複数の相分離室2を同じように当該容器10に一体化することもできる。当該室2には処理する溶液の入口である開口部20’、下方開口部210を伴う重合体排出領域および上方開口部220を伴うガス排出領域が含まれる。当該上方開口部220の全断面表面は下方開口部210の全断面表面積と比較して相当小さくすることができ、効果的には合計が最小で5%になる。
【0008】
泡の形成により、当該相分離室2での脱揮が生じる。当該相分離室2における少なくとも1分、好ましくは2分の平均滞留時間は当該泡の発生に対して備えたもので、この平均滞留時間は、当該相分離室2中に含有される液体容量、並びに処理量と最大充填量の室からの商に等しい。ガスに富む画分、即ち大小の泡を伴う発泡体は上方開口部220(ガス排出領域)を通って相分離室2から出るが、当該泡ははじけて揮発成分類から構成されるそれらの中味が遊離される。入口開口部20’と当該ガス放出領域の間の空間が大きければ大きいほど、当該平均滞留時間が長ければ長いほど、当該ガスに富む画分のガス分が増加できる期間が長くなる。当該揮発成分類は抜き取りライン4でガス流8(矢印8)として当該容器10から取除かれる。当該相分離室2の壁は、図1の詳しい実施形態にある下方部21および上方部22の2つの傘状部分から成り立つ。当該上方傘状部分22の凸状の中央部分下方で静止状のガス小泡が形成し、当該ガス小泡は非常に少量の液体部分を伴う発泡体にもなりうる。
【0009】
揮発成分類の残留物を溶解した形および細かい泡の形で含有する低ガス画分は下方開口部210を通って当該相分離室2から外に出る。単行本“Polymer Devolatilization”(Ramon J.Albalak著;Marcel Dekker、Inc.,1996)で知られているように、発泡プラスチックは自己相似で、フラクタル様形状の直径および小泡の分布を伴う構造を示す(Albalek et al.“Study of Devolatilization by SEM”,図9)。当該小泡の直径はそれ故に比較的広い範囲に亘って分布している。(名を挙げた本には、脱揮装置群とともに重合体脱揮における更に重要な事柄が記載されている。)
【0010】
当該ガス排出領域(開口部220)および当該重合体排出領域(開口部210)はそれぞれ当該傘様部分21および22の周縁領域に並んでいる。当該ガス流8とともに当該ガス排出領域を出た重合体72(矢印2)は下の方向に流れる。
【0011】
当該下方開口部群210は更なる脱揮のために孔または細長い形で作られている。当該低ガス画分は当該重合体排出領域を流出して縄状(または膜状)の部分流71に分割される。当該部分流71は当該排液領域13に直接落下方式または取付け物(示していない)により遅らされて移動するが、この工程で揮発成分は中央領域12に放出される。この工程で遊離したガスは抜き取りライン4経由で排出される。
【0012】
当該相分離室2の内部空間と当該容器10の中央領域12の間には圧差がある。当該脱揮を低圧(減圧ポンプで作る)で行うとき、当該最底部開口部210における最大圧差は最大で100mbarになるはずである。高脱揮圧では、当該最高圧差は、例えば500mbarの大きさにもなりうる。当該圧差は一方では当該2つの画分を開口部210および220を通して押出し、他方では当該泡を更に膨張させるので、泡が破裂する。低ガス画分の部分的流れ71で最大15kg/時間の処理量になるはずである。より多い処理量では、低ガス画分のガス分は望ましくない大きさになるであろう。工業的な施設では、当該重合体排出領域を通過する全処理量は原則として1から10kg/時間程度の大きさの値を有する。
【0013】
当該相分離室2への入口20は第一の実施形態では当該容器10内に配置されている。これは熱交換器6(熱伝達媒体60または60’、流入前51、流出後62)としてある程度は作られている。静的混合機要素群または熱伝導リブ群の形状をとる設備は当該入口20、即ち当該熱交換器6中に置かれた入口20の区域26中に効果的に配置されている。当該設備は当該熱伝達媒体60から処理する液体への熱伝達に寄与する。当該熱交換器6は中央空間12に放熱することもできる;断熱材はそれゆえ必要としない。
【0014】
図2は本発明による第二の脱揮装置1の頭部領域11を示し、これでは当該相分離室2への入口20は当該容器10の外に置かれている。当該相分離室2には当該容器内に配置された部分2aおよび当該容器外に配置された部分2bが含まれる。ここでの入口20は当該熱交換器6(但し断熱保温を伴う)と同じように作ることができる熱交換器(示していない)を通して効果的に導かれる。当該室内部分2aは図4が示す平面図のように2本の腕を伴って作られている。当該2本の腕26および26’は分配部27を経由して入口側で管要素25に接続している。当該腕26、26’の壁面はそれぞれ穿孔板23と24の2枚、そして管部品28から構成されている。当該穿孔板23は当該下方室開口部210が付いている当該重合体排出領域を形成し、当該穿孔板24は当該上方室開口部220が付いている当該ガス排出領域を形成する。当該ガス排出領域は、当該脱揮される重合体が比較的低粘度であれば当該穿孔板の代わりに唯一つの開口部から構成されることもできる。
【0015】
図3における詳細な描写は当該重合体放出領域を通して部分的横断面を示す。処理される液体70はそれが泡立った後に穿孔板23を流れ落ちる。これは異なる大きさの直径をもつ泡5、5’を含んでいる。浮力により大きな泡5は小さな泡5’をより早く上方へ動き、小さな泡は下方領域に長く滞留する。当該室開口部210から排出される低ガス画分の部分的流れ71は非常に小さな泡5”を含み、それが膜状または縄状の部分的流れ71の伸長で変形し、泡が潰れてそのガス状中味を中央領域12へと放出できる。
【0016】
個々の偏向用要素211は下方室開口部210(図3参照)の出口に取り付けられ、それにより排出された部分流れ71は当該室の壁から遠ざけられる。
【0017】
当該重合体排出領域の孔群210を不規則に分布すると効果的にすることができ、例えば当該密集度が上方ほど増えるような密集度の段階化のような、変化する孔密集度が存在する。当該相分離室2における処理する液体7の長い滞留時間がこれで達成できる。変化ある孔密集度は当該ガス排出領域においても供することができる。当該重合体排出領域の開口部210および当該ガス排出領域の開口部220は各々異なるまたは同じ大きさで、当該開口部210および220は異なる形状を有することができる。当該孔密集度、当該孔直径および当該穿孔板群の厚さも当該脱揮装置1の定められた処理量または処理量範囲、および/または当該重合体の粘度範囲に合わせることができる。
【0018】
図5で示した相分離室2の改良型では、3つの下方穿孔金属板23a、23bおよび23c(下方開口部210を伴う)が楔形に作った重合体排出領域を形成する。当該穿孔金属板23cは張り出しのある壁部を形成する。リブ212は排出した重合体の向きを変えて当該穿孔板23a、23bおよび23cから遠ざける。シート状の金属片23dで室2の底方向は終りで、最底部を構成する。好ましくは少なくとも1つの開口部(210’)がこれらの最底部に配置され、それを通して当該室2は操業の中断時に空となる。操業の再開後、当該脱揮装置1は問題無しに再開することができる。
【0019】
処理する液体7は当該相分離室2に入る前に膨張装置、即ち弁、ダイヤフラムまたは静的混合機により、より比較的高い圧、例えば3バールから当該相分離室2の内部空間の圧力(例えば1バール)に膨張させることができる。
【0020】
図6は図2の当該脱揮装置1の改良型である実施形態を示す。弁本体90を伴う当該液体7の急激な膨張用の弁9は当該相分離室2の外側部2bに一体とされている。名を挙げた膨張装置は図6の例のように当該相分離室2の2b部分、或いは当該入口20のいずれかの位置で一体とすることできる。
【0021】
本発明による重合体脱揮はストリッピング剤(例えば、水、二酸化炭素、窒素)を用いても実施できる。当該ストリッピング剤は、当該相分離室2に入る前の処理する液体7中に、好ましくはこの目的のために使用する静的混合機により混合させる。当該ストリッピング剤は処理する液体7と高めた圧において、即ち膨張装置の前で効果的に混合する。当該混合が充分でないときは、膨張時において急激に膨張する泡により破損が起こりうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に従った脱揮装置の第一の実施形態;
【図2】本発明に従った第二の脱揮装置の頭部;
【図3】図2の脱揮装置の詳細;
【図4】図2の脱揮装置で使用される相分離室の平面図;
【図5】より詳細な相分離室;そして
【図6】図2の脱揮装置の改良型
【符号の説明】
【0023】
1 静的脱揮装置
2 相分離室
2a 室内部分
2b 室外部分
3 排出ポンプ
4 抜き取りライン
5 大きな泡
5’ 小さな泡
5” 非常に小さな泡
6 熱交換器
7 処理する液体
脱揮された重合体
8 ガス流
9 弁
10 容器
11 頭部領域
12 中央領域
13 排液領域
20 入口
20’ 入口開口部
21 下方部の傘状部分
22 上方部の傘状部分
23 穿孔板
23a 穿孔板
23b 穿孔板
23c 穿孔板
23d シート状金属片
24 穿孔板
26 腕
26’ 腕
27 分配部
28 管部
51 流入前の熱伝達媒体
60 熱伝達媒体
60’ 熱伝達媒体
62 流出後の熱伝達媒体
70 液体
71 部分流
72 ガス排出領域を出た重合体
73 重合体
90 弁本体
210 下方開口部
210’ 開口部
211 偏向用要素
212 リブ
220 上方開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(10)内の圧力によって液体空間が膨張することで重合体脱揮を行うことを目的とする重合体類を含む液体(7)の静的脱揮装置(1)であって、当該重合体から揮発成分類の分離を目的で廃液領域の底に位置する脱揮処理された重合体用の排出ポンプ(3)を備え、当該揮発性成分から構成されるガス類(8)用の抜き取りライン(4)が接続され、少なくとも1つの相分離室(2)が当該容器の上方領域(11,12)に配置されており、この室には処理する液体の入口(20)、重合体排出領域の下方開口部(210)及びガス排出領域の単一又は複数の上方開口部(220)が含まれている、静的脱揮装置。
【請求項2】
当該入口(20)は当該容器(10)の内側または外側に配置され;この入口は少なくともある程度熱交換器(6)として作成することができ;そして静的混合器要素の設備または熱伝導リブ類は、処理する液体(7)への熱伝達をするこの型の熱交換器内の入口に効果的に配置されていることが特徴である、請求項1記載の脱揮装置。
【請求項3】
当該重合体排出領域の開口部群(210)およびガス排出領域の開口部群(220)は各々異なる大きさまたは同じ大きさで、少なくとも1つの穿孔板(23,24)の孔群であることができ、当該開口部群(210または220)は異なる形状を有することができ、そして(または)種々の密集度で重合体排出領域またはガス排出領域に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の脱揮装置。
【請求項4】
リブ様の偏向用要素(211;212)は、それにより排出する重合体を当該重合体排出領域から逸らすことができるように当該重合体排出領域に付けられ;少なくとも1つの開口部(210’)は当該室がそれにより空になることができるように相分離室(2)の最底部位置に配置されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の脱揮装置。
【請求項5】
当該上方開口部群(220)の全断面積が下方開口部群(210)の全断面積と比べて相当小さく、有利には少なくとも合計5%になることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の脱揮装置。
【請求項6】
当該相分離室(2)において泡立ちによる揮発成分類の放出で脱揮を行うこと;およびガスに富む画分と低ガス画分をこの工程で作り、それらを当該ガス排出領域または当該重合体排出領域を通して室から排出することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の静的脱揮装置による重合体含有の高粘度液体の処理方法。
【請求項7】
当該相分離室(2)において処理される液体の平均滞留時間が少なくとも1分、好ましくは2分である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
当該相分離室(2)におけるより低圧での脱揮において、処理をする液体は最底部開口部(210)の上部にて当該容器(10)の内部圧より最大限100ミリバール高い圧力を生じ、;当該下方開口部(210)は最大圧力差にて当該低ガス画分が個々の開口部を通って最大15kg/時間で放出されるような大きさに作られているのが特徴である、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
当該相分離室(2)へ入れる前の処理される液体(7)にストリッピング剤を混合、好ましくは静的攪拌機にて混合することを特徴とする、請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
処理する液体(7)は当該相分離室(2)に入れる前に熱交換機(6)を流通させて加熱処理をすることを特徴とする、請求項6から9にいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
比較的高い圧のところから当該相分離室の内部圧へ弁(9)、ダイヤフラムまたは静的攪拌機にて当該処理する液体を当該相分離室(2)に入れる前に、この膨張用に当該相分離室の入口(20)に効果的に組み込んだ装置で当該処理する液体を膨張させることを特徴とする、請求項6から10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−186694(P2007−186694A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−342013(P2006−342013)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(505150095)スルザー ケムテック アクチェンゲゼルシャフト (40)
【Fターム(参考)】