説明

重合体組成物およびその製造方法

【課題】洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された耐ゲル性と再汚染防止能を兼ね備えた重合体組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
重合開始剤の存在下で、ポリオキシアルキレン系化合物および酸基含有不飽和単量体を重合して得られる重合体組成物であって、前記ポリオキシアルキレン系化合物は、末端に炭素数8未満のアリール基、炭素数8未満のアルキル基および炭素数8未満のアルケニル基の少なくとも一つ、および/または2つ以上の水酸基を有し、さらに前記ポリオキシアルキレン系化合物は、オキシアルキレン基を有し、ポリオキシアルキレン系化合物1モルあたりのオキシアルキレン基由来の構造の含有量が10〜400モルであり、前記ポリオキシアルキレン系化合物由来の構造と前記酸基含有不飽和単量体由来の構造との質量比が、95:5〜50:50であり、特定の化合物を前記酸基含有不飽和単量体100質量部に対し、0.3〜20質量部含有する、重合体組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣料類に用いられる洗剤には、洗剤の洗浄効果を向上させることを目的として、ゼオライト、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの洗剤ビルダー(洗剤助剤)を配合することが行われている。
【0003】
また、上記の各種洗剤ビルダーに加えて、近年では、重合体が洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合されている。
【0004】
例えば、所定量のグラフト成分と、所定の鎖長を有するポリグリコールエーテル鎖を介して当該グラフト成分と結合されている疎水性残基とを有する水溶性/水分散性グラフト重合体を、洗剤ビルダーとして用いることが開示されている(特許文献1、特許文献2を参照)。
【0005】
ここで、近年の消費者の環境問題への意識の高まりより、洗剤ビルダーに要求される性能が変化しつつある。すなわち、消費者が風呂の残り湯を洗濯に使用することにより節水を図ったり、排水する洗剤成分の低減の志向により使用量の少ない洗剤(洗剤組成物のコンパクト化)を好んだりするようになってきた。
残り湯の使用により、カルシウム成分の濃縮による高硬度条件下や、汚れ成分の多い条件下で洗濯をしなければならない問題が発生する。前者に対しては、高硬度の洗濯条件下でも析出などすることを押さえ、効果を発現する、所謂耐ゲル性が従来より一層高い剤、後者に対しては、汚れ成分の洗濯中の繊維などへの再付着を抑制する再汚染防止能が従来より一層高い剤が要求されている。
更に、洗剤組成物のコンパクト化の要求から、1成分に複数の要求性能を兼ね備えさせる要求も高まっている。
【0006】
なお、洗剤ビルダー用途ではないが、ポリオキシアルキレン系化合物に対して、酸基含有不飽和単量体がグラフト重合されてなるグラフト重合体は従来から用いられている。例えば、特許文献3では、特定のアゾ系ラジカル開始剤の存在下でグラフト重合させることによって、ポリウレタン樹脂の製造に適したグラフト共重合体が得られることが記載されている。さらに、紙のインク滲み防止に用いられるサイズ剤の分散剤として用いられるグラフト重合体として、モノエチレン性不飽和カルボン酸系単量体を含むモノエチレン性不飽和単量体成分をポリアルキレン系化合物にグラフト重合してなる水溶性グラフト重合体が知られている(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−62614号公報
【特許文献2】特開2007−254679
【特許文献3】特開昭50−15894号公報
【特許文献4】特開平11−279984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、従来、種々のグラフト重合体が報告されてはいるものの、上述した現在の消費者ニーズに適応した洗剤ビルダーの開発が求められている。
そこで、本発明は、洗剤用途に用いられた場合に従来より一層改善された耐ゲル性と再汚染防止能を兼ね備えた、すなわち高硬度下の再汚染防止能をさらに向上させうる重合体組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、特定の重合開始剤を用いて、ポリオキシアルキレン系化合物と、酸基含有単量体とを重合させると、得られた重合体組成物の耐ゲル性と再汚染防止能が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。さらに、酸基含有単量体がグラフトされなかったポリオキシアルキレン系化合物の残存量が減少する、すなわち、グラフト体の収率が向上し、組成物の均一性が向上するため、組成物の経時安定性が向上することを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、重合開始剤の存在下で、ポリオキシアルキレン系化合物および酸基含有不飽和単量体を重合して得られる重合体組成物であって、前記ポリオキシアルキレン系化合物は、末端に炭素数8未満のアリール基、炭素数8未満のアルキル基および炭素数8未満のアルケニル基の少なくとも一つ、および/または2つ以上の水酸基を有し、さらに前記ポリオキシアルキレン系化合物は、オキシアルキレン基を有し、ポリオキシアルキレン系化合物1モルあたりのオキシアルキレン基由来の構造の含有量が10〜400モルであり、前記ポリオキシアルキレン系化合物由来の構造と前記酸基含有不飽和単量体由来の構造との質量比が、95:5〜50:50であり、下記化合物1〜3から選択される少なくとも一つを前記酸基含有不飽和単量体100質量部に対し、0.3〜20質量部含有する、重合体組成物である。
【0011】
【化1】

【0012】
【発明の効果】
【0013】
本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして使用すれば、本願の重合体組成物が優れた耐ゲル性、高い再汚染防止能を有していることに起因して、高硬度下においても高い再汚染防止能を発現することができる。よって、本発明の重合体組成物は、洗剤添加物として好ましく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の重合体組成物は、特定の重合開始剤の存在下で、ポリオキシアルキレン系化合物および酸基含有不飽和単量体を重合して得られる重合体組成物である。
【0016】
[ポリオキシアルキレン系化合物]
本発明のポリオキシアルキレン系化合物は、炭素数8未満のアリール基、炭素数8未満のアルキル基および炭素数8未満のアルケニル基の少なくとも一つから選択される基、および/または2以上の水酸基を有し、さらに本発明のポリオキシアルキレン系化合物は、オキシアルキレン基を含有するものである。ここで、ポリオキシアルキレン系化合物1モルあたりのオキシアルキレン基由来の構造の含有量(オキシアルキレン基の付加モル数)は10〜400モルである。
【0017】
特に限定されるものではないが、本発明のポリオキシアルキレン系化合物として、具体的には、以下の式(1)の構造を有するものが挙げられる。
【0018】
【化2】

【0019】

上記式(1)において、Rは、水素原子、炭素数8未満のアリール基、炭素数8未満のアルキル基および炭素数8未満のアルケニル基である。アルキル基またはアルケニル基は、直鎖であっても、分岐であってもよい。この際、Rの有する炭素数は、0以上8未満であり好ましくは1〜6である。Rの有する炭素数が8未満であると、耐ゲル性が向上する傾向にある。
【0020】
グラフト重合体は、その構造中に芳香環を含まないことが好ましい。これは、本発明のグラフト重合体が環境中に排出された場合、重合体が分解すると、重合体中に含まれる芳香環は有害物質の原因となりうるためである。かような観点からは、Rは、水素原子、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。さらに、比較的粘度が低く取扱いが簡便であるという観点からは、Rは第2級のアルキル基またはアルケニル基であることが好ましい。
【0021】
炭素数8未満のアルキル基とは、炭素数8未満の置換されたアルキル基または炭素数8未満の無置換のアルキル基を表す。炭素数8未満の置換されたアルキル基とは、アルキル基を構成する1または1以上の水素原子が他の有機基で置換されたアルキル基であって、全体として炭素数8未満である基を表す。上記有機基としては、重合反応に大きく悪影響を与えるもので無ければ良く、例えば、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基等である。
【0022】
同様に、炭素数8未満のアルケニル基とは、炭素数8未満の置換されたアルケニル基または炭素数8未満の無置換のアルケニル基を表す。炭素数8未満の置換されたアルケニル基とは、アルケニル基を構成する1または1以上の水素原子が他の有機基で置換されたアルケニル基であって、全体として炭素数8未満である基を表す。上記有機基の具体例としては、炭素数8未満の置換されたアルケニル基と同様である。
【0023】
同様に、炭素数8未満のアリール基とは炭素数8未満の置換されたアリール基または炭素数8未満の無置換のアリール基を表す。炭素数8未満の置換されたアリール基とは、アリール基を構成する1または1以上の水素原子が他の有機基で置換されたアリール基であって、全体として炭素数8未満である基を表す。上記有機基としては、重合反応に大きく悪影響を与えるもので無ければ良く、例えば、アルキル基、アルキレン基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基等である。
【0024】
炭素数8未満のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基などが挙げられる。
また、炭素数8未満のアルケニル基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基などが挙げられる。
【0025】
炭素数8未満のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0026】
上記式(1)において、Xは、
【0027】
【化3】

【0028】

を表し、pは、0〜1である。なお、pは0である(すなわち、Xは存在しない)ことがより好ましい。
【0029】
上記式(1)において、Yは、
【0030】
【化4】

【0031】

のいずれかを表す。ここで、R〜Rはそれぞれ独立して、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4、より好ましくは炭素数2〜3、最も好ましくは炭素数2のアルキレン基を表す。また、Rは、水素原子、炭素数8未満のアルキル基、または下記化学式(2)で表される基:
【0032】
【化5】

【0033】

である。式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素数2〜6、好ましくは炭素数2〜4、より好ましくは炭素数2〜3、最も好ましくは炭素数2のアルキレン基を表す。また、sは0〜100であり、好ましくは0〜50であり、より好ましくは0〜30である。なお、sが2以上である場合、R7としては1種のみが単独で存在していてもよいし、2種以上が混在していてもよい。ここで、再汚染防止能の向上という観点からは、Yは好ましくは−O−R−である。
【0034】
上記式(1)において、Zは、オキシアルキレン基を表す。この際、Zの有する炭素数は、2〜20であり、好ましくは2〜15であり、より好ましくは2〜10であり、さらに好ましくは2〜5であり、特に好ましくは2〜3であり、最も好ましくは2である。オキシアルキレン基としては、例えば、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)、イソブチレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、2−ブテンオキサイド、トリメチルエチレンオキサイド、テトラメチレンオキサイド、テトラメチルエチレンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、オクチレンオキサイド、スチレンオキサイド、1,1−ジフェニルエチレンオキサイド等の化合物由来の基が例示されうる。なかでも、Zは、EOまたはPO由来の基(すなわち、オキシエチレン基またはオキシプロピレン基)であることが好ましく、オキシエチレン基であることがより好ましい。なお、Zとしては、1種のみが単独で存在してもよいし、2種以上が混在していてもよい。上記式(1)において、qは、9〜399であり、好ましくは9〜200であり、より好ましくは10〜99であり、さらに好ましくは12〜50である。qが9未満であると、重合が困難となる虞がある。また、重合体の水溶性の低下に伴って、再汚染防止能も低下する虞がある。一方、qが399以上であると、粘度が高くなり、重合が困難となるか、仮に重合できたとしてもビルダーとしての使用が困難となる虞がある。なお、qが大きくなるにつれ、グラフト体の収率が向上する。
【0035】
オキシアルキレン基により形成される基(すなわち、上記式(1)中のZq)は、オキシエチレン基(−O−CH2−CH2−)を主体とするものであることが好ましい。この場合、「オキシエチレン基を主体とする」とは、オキシアルキレン基が単量体中に2種以上存在する場合に、全オキシアルキレン基の存在数において、オキシエチレン基がその大半を占めるものであることを意味する。これにより、製造時の重合がスムーズに進行し、かつ、水溶性や耐ゲル性が向上するという優れた効果が得られる。
【0036】
上記式(1)中のZqにおいて、「オキシエチレン基を主体とする」ことを全オキシアルキレン基100モル%中のオキシエチレン基のモル%で表すとき、50〜100モル%であることが好ましい。オキシエチレン基の含量が50モル%未満であると、オキシアルキレン基から形成される基の親水性が低下する虞がある。より好ましくは、60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、より特に好ましく最も好ましくは90モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。
【0037】
上記式(1)において、rは、1〜6の整数である。rが2以上である場合、上記式(1)で表されるポリオキシアルキレン系化合物は、上記で説明したR(所定のアルキル基またはアルキレン基)の異なる炭素原子に、上記式(1)のかっこ書きで表される基がそれぞれ結合している構造を有するのであって、上記式(1)のかっこ書きで表される基を繰り返し単位とする繰り返し構造が含まれるわけではない。この際、上記式(1)のかっこ書きで表される基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。なお、rは、好ましくは1〜4であり、より好ましくは1〜2であり、最も好ましくは1である。
【0038】
式(1)で表される化合物中、本発明において最も好ましく用いられるポリオキシエチレン系化合物は下記式(3)で表される化合物である。
【0039】
【化6】

【0040】

式(3)において、R、R、Zおよびqは、式(1)中のものと同義である。具体的には、上記式(1)の欄で説明したものと同様である。
【0041】
このようなポリオキシアルキレン系化合物は、商品が市販されている場合には当該商品を購入したものであってもよいし、自ら調製したものであってもよい。ポリオキシアルキレン系化合物を自ら調製する手法としては、例えば、1)アルカリ金属の水酸化物、アルコキシド等の強アルカリや、アルキルアミン等を塩基触媒として用いるアニオン重合、2)金属および半金属のハロゲン化物、鉱酸、酢酸等を触媒として用いるカチオン重合、3)アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属のアルコキシド、アルカリ土類化合物、ルイス酸等を組み合わせたものを用いる配位重合などの手法を用いて、ポリオキシアルキレン系化合物の炭化水素基部分を含むアルコール、エステル、アミン、アミド、チオール、スルホン酸などに、上述したアルキレンオキサイドを付加する手法が挙げられる。また、ポリオキシアルキレン系化合物の例としては、例えば、ポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ブトキシエチレングリコール、フェノキシポリエチレングリコールが挙げられる。
【0042】
[酸基含有不飽和単量体]
本発明のポリオキシアルキレン系化合物に酸基含有不飽和単量体がグラフト重合されてなる重合体(以下、単に「グラフト重合体」とも称する)において、酸基含有不飽和単量体は、グラフト重合により、上述したポリオキシアルキレン系化合物のポリオキシアルキレン鎖の炭素原子にグラフトした鎖を形成する。
【0043】
酸基含有不飽和単量体は、酸基を有する単量体である。ここで、酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ホスホン酸基などが挙げられる。かような酸基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、2−メチレングルタル酸などのカルボキシル基を有する単量体;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシ−1−プロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−ブテンスルホン酸などのスルホン酸基を有する単量体;ビニルホスホン酸、(メタ)アリルホスホン酸などのホスホン酸基を有する単量体等が例示される。なかでも、重合性が高く、弱酸性で取扱いが簡便であるという観点からは、酸基含有不飽和単量体は、カルボキシル基を有するものであることが好ましく、(メタ)アクリル酸、マレイン酸であることがより好ましく、アクリル酸、マレイン酸であることがさらに好ましく、アクリル酸であることが特に好ましい。これらの酸基含有不飽和単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
なお、酸基含有不飽和単量体に加えて、当該酸基含有不飽和単量体と共重合可能な他の単量体が含まれてもよい。他の単量体としては、特に制限はないが、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有アルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜18のアルコールとのエステル化により得られるアルキル(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたはその4級化物等のアミノ基含有アクリレート;(メタ)アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド等のアミド基含有単量体類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;スチレン、スチレンスルホン酸等の芳香族ビニル系単量体類;マレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系単量体類;(メタ)アクロレイン等のアルデヒド基含有ビニル系単量体類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール:ビニルピロリドン等のその他官能基含有単量体類;等が挙げられる。これらの他の単量体についても、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、単量体成分が酸基含有不飽和単量体に加えて他の単量体を含む場合、これらの単量体成分から構成されるグラフト鎖において、各単量体成分由来の構成単位の付加形態は特に制限されず、例えばランダム状に付加していてもよいし、ブロック状に付加していてもよい。以下、酸基含有不飽和単量体および酸基含有不飽和単量体と共重合可能な他の単量体を「単量体成分」とも称する。
【0045】
なお、酸基含有不飽和単量体および酸基含有不飽和単量体と共重合可能な他の単量体全体に占める酸基含有不飽和単量体の割合は特に制限されないが、本発明の作用効果を十分に発揮させるという観点から、単量体成分の全量に対する酸基含有不飽和単量体の割合は、好ましくは80〜100モル%であり、より好ましくは90〜100モル%であり、さらに好ましくは95〜100モル%であり、最も好ましくは100モル%である。
【0046】
[グラフト重合体]
上述したように、本発明のグラフト重合体は、ポリオキシアルキレン系化合物に対して、酸基含有不飽和単量体がグラフト重合されてなる構造を有する。
【0047】
本発明のグラフト重合体の重量平均分子量は、洗剤ビルダーとしての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明のグラフト重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜50000であり、より好ましくは500〜30000であり、さらに好ましくは1000〜20000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のグラフト重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0048】
また、本発明のグラフト重合体の数平均分子量は、洗剤ビルダーとしての所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明のグラフト重合体の数平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜40000であり、より好ましくは200〜25000であり、さらに好ましくは500〜15000である。この数平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この数平均分子量の値が小さすぎると、再汚染防止能が低下し、洗剤ビルダーとして十分な性能が発揮されなくなる虞がある。なお、本発明のグラフト重合体の数平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0049】
酸基含有不飽和単量体のグラフト量は特に制限されず、洗剤ビルダーとしての所望の性能や製造の容易さなどを考慮して適宜設定されうる。特に、単量体成分に含まれる酸基含有不飽和単量体の量を制御するとよい。
【0050】
本発明のグラフト重合体は、上述したように、洗剤ビルダーとして用いられると、優れた再汚染防止能を有する。従って、本発明のグラフト重合体は、洗剤ビルダーとして用いられることが好ましい。
【0051】
[重合体組成物]
重合体組成物中には、グラフト重合体が必須に含まれる。この他、未反応のポリオキシアルキレン系化合物、未反応の酸基含有不飽和単量体、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物、酸基含有不飽和単量体からなる重合体等が含まれうる。
【0052】
重合体組成物中に存在するポリオキシアルキレン系化合物由来の構造と酸基含有不飽和単量体由来の構造との質量比が、ポリオキシアルキレン系化合物由来の構造:酸基含有不飽和単量体由来の構造の比で、95:5〜50:50であり、好ましくは94:6〜55
:45であり、より好ましくは94:6〜60:40であり、さらに好ましくは93:7〜65:35であり、特に好ましくは92:8〜70:30である。酸基含有不飽和単量体由来の構造の量が少なすぎると、水溶性が低下する虞がある。一方、酸基含有不飽和単量体由来の構造の量が多い場合、グラフト体の収率は向上する傾向にあるが、重合体組成物の安定性が低下する傾向にあるため、上記上限内であることが好ましい。
【0053】
なお、ポリオキシアルキレン系化合物由来の構造とは、グラフト重合体中のポリオキシアルキレン系化合物由来の構造および未反応のポリオキシアルキレン系化合物(生成する場合には、ポリオキシアルキレン系化合物同士の重合体も含む)の合計を指す。したがって、ポリオキシアルキレン系化合物由来の構造の質量は、グラフト重合の際に用いられるポリオキシアルキレン系化合物の質量と同じになる。同様に、酸基含有不飽和単量体由来の構造とは、グラフト重合体中の酸基含有不飽和単量体由来の構造および未反応の酸基含有不飽和単量体(酸基含有不飽和単量体同士の重合体を構成する単量体も含む)の合計を指す。したがって、酸基含有不飽和単量体由来の構造の質量は、グラフト重合の際に用いられる酸基含有不飽和単量体の質量と同じになる。
【0054】
本発明のように、特定の重合開始剤を用いることによって、未反応のポリオキシアルキレン系化合物が減少する。具体的には、反応したポリオキシアルキレン系化合物と未反応のポリオキシアルキレン系化合物との合計100質量部(反応系に添加されたポリオキシアルキレン系化合物100質量部)に対して、反応したポリオキシアルキレン系化合物が、好ましくは45〜100質量部、より好ましくは50〜100質量部、さらに好ましくは55〜100質量部である。なお、反応したポリオキシアルキレン化合物の量は、後述の実施例に記載の未反応のポリオキシアルキレン系化合物量から算出される。
【0055】
なお、本願でいう重合体組成物は、特に制限されるものではないが、生産効率性の観点から、好ましくは、不純物除去などの精製工程を経ずに得られる。本発明の重合体組成物は、残存するポリオキシアルキレン系化合物が低減され、グラフト重合体(グラフト体)の収率が向上しているため、洗剤に用いられた場合にも、界面活性剤析出抑制効果が効果的に得られる。さらに、重合工程の後に、得られた混合物を、取り扱いの便のため、少量の水にて希釈(得られた混合物に対して1〜400質量%程度)したものも本願でいう重合体組成物に含まれる。
【0056】
また、本願でいう「組成物」なる語は、グラフト重合体を必須に主成分として含み、グラフト重合体以外に、後述の化合物1〜3を1種または2種以上含む混合物であるという意味で用いられる。
【0057】
グラフト体の収率は、後述するグラフト体収率の算出方法で算出された値で比較できる。なお、単量体の組成比を増加すれば、ある組成比までグラフト体収率は増加する。しかし、単量体組成比は、耐ゲル性や、重合体組成物の安定性に影響を与えるため、最適範囲を超えて単量体組成比を増やすことはできない。ある組成比を超えて単量体の組成比を増加すれば、単量体の単独重合体が生成し、グラフト体収率は、低下していくこととなる。本願の重合体組成物は、同様の単量体組成比で比較した場合、優れたグラフト体収率を示す。
【0058】
酸基含有不飽和単量体の含有量(酸基含有不飽和単量体同士の重合体を構成する単量体も含む)は、組成物中、好ましくは1000質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下であり、最も好ましくは0質量ppmである。
【0059】
[化合物1〜3]
本発明の重合体組成物においては、下記式で表される化合物1〜3の少なくとも1つが含まれうる。
【0060】
【化7】

【0061】

これらの化合物は、後述するように、好ましくはグラフト重合体を製造する際に用いられる重合開始剤の分解物である。したがって、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート(以下、PBZとも称する)を用いた場合には、重合体組成物には、化合物1が含まれる。同様に、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(以下、PBIとも称する)を重合開始剤として用いた場合には、重合体組成物には、化合物3が、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレエート(以下、PHVとも称する)を用いた場合には、化合物2がそれぞれ含まれうる。
【0062】
なお、重合開始剤は1種単独で用いられる場合もあるし、2種以上用いられることもある。したがって、本発明の重合体組成物には、上記化合物1〜3が2以上含まれる場合もある。
【0063】
化合物1〜3の組成物中に含まれる含有量は、組成物全体(組成物の固形分換算)に対して、0.01〜1.0質量%であることが好ましい。かような範囲であれば、用いられる重合開始剤が適当量であり、性能に優れたグラフト重合体を含む組成物を得ることができる。なお、上記含有量は、化合物1〜3が2以上含まれる場合は合計含有量を指す。化合物1〜3の組成物中の含有量は、後述の実施例に記載の方法によって測定される。
【0064】
また、組成物中において、化合物1〜3は、酸基含有不飽和単量体100質量部に対し、0.3〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部含まれる。かような範囲であれば、用いられる重合開始剤が適当量であることを意味し、再汚染防止能に優れたグラフト重合体を含む組成物を得ることができる。なお、ここで酸基含有不飽和単量体の量は、グラフト重合体を製造される際に用いられる酸基含有不飽和単量体の全量を指す。すなわち、酸基含有不飽和単量体の量は、重合体組成物中、グラフト重合体中の酸基含有不飽和単量体由来の構造、未反応の酸基含有不飽和単量体、酸基含有不飽和単量体からなる重合体の合計量とも言える。
【0065】
[製造方法]
本発明の重合体組成物は、例えば、特定の重合開始剤(好ましくは、135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤)を用いて製造される。
【0066】
特許文献2の段落「0072」には、実質的に溶媒を含まない条件で、ポリオキシアルキレン系化合物に対して酸基含有不飽和単量体のグラフト重合を行うと、効率的に単量体成分がグラフトされることが示されている。本発明者らが鋭意検討した結果、特許文献2のグラフト重合体の製造方法によれば、ポリオキシアルキレン系化合物に対する単量体量を減少させた条件においては、単量体成分はポリオキシアルキレン系化合物に効率的にグラフトされ、残存する酸基含有単量体は減少する一方、未反応のポリオキシアルキレン系化合物が依然として存在することが明らかとなった。
すなわち、特許文献2の方法によれば、酸基含有単量体由来の構造を多く有するグラフト重合体と、酸基含有単量体由来の構造を全く有しない未反応のポリオキシアルキレン系化合物が得られることから、酸基含有単量体由来の構造が偏在化しやすいグラフト重合体の製造方法であることが明らかとなった。
【0067】
本発明者らは上記現状に鑑み、検討した結果、特に特定の重合開始剤を用いてグラフト重合体を製造すれば、ポリオキシアルキレン系化合物に対する単量体量を低減させた条件においても、グラフト体の収率が向上した重合体組成物が得られることを見出したものである。図1に示すように、PBI、PHVを重合開始剤として用いると、ジ−tert−ブチルパーオキシド(以下、「PBD」とも称する)を用いた場合と比較して、グラフト体の収率(ポリアルキレン系化合物と酸基含有不飽和単量体との重合体(グラフト重合体)の質量/反応系に添加されたポリオキシアルキレン化合物の質量と酸基含有不飽和単量体との合計量)は向上することが明らかとなった。なお、図1において、横軸は、重合に用いられたアクリル酸(AA)量(質量%)を示す。また、グラフの凡例の説明中、「PBI 10wt%」とは、重合に用いられたアクリル酸に対して、10質量%のPBIを重合に際して用いたことを意味する。
【0068】
また、本発明の組成物を洗浄剤添加物として用いた場合には、耐ゲル性、再汚染防止能が向上した。これは、グラフト体の収率の向上からも推定できるように、酸基含有不飽和単量体由来の構造が、偏在せずに、より均等に存在していることによると考えられる。汚れ成分に対する吸着基としての酸基含有不飽和単量体由来の構造が、重合体中により均等に分布していることから、汚れ成分に対し吸着しやすいと考えられ、それに起因して、再汚染防止能が向上したと考えられる。また、酸基含有不飽和単量体由来の構造が偏在化した場合と比較して、酸基含有不飽和単量体由来の構造が、重合体中により均等に分布していれば、酸基がカルシウムイオン等を補足しても、近傍のノニオン性親水性基の影響により析出(ゲル化)し難くなることによると考えられる。
【0069】
得られた重合体組成物は、取り扱いの便のため、通常は少量の水で希釈して保存する。本発明の重合体組成物は、従来の製造方法により得られたグラフト重合体組成物と比較して、水で希釈した場合の安定性が極めて良好であることが判明した。この理由は、特定の重合開始剤を用いた場合、重合体の収率が向上し、重合体組成物中の残存ポリオキシアルキレン系化合物量が減少することに起因すると考えられる。なお、上記メカニズムは推定であり、これに限定されるものではない。
【0070】
本発明において、重合体組成物の製造方法について特に制限はなく、従来公知の知見を適宜参照することにより、製造可能である。好ましくは、特許文献2で開示されているように、実質的に塊状重合(バルク重合)の形態で、具体的には、このグラフト重合の反応系として、溶媒の含有量が反応系の全量に対して10質量%以下で重合が行われる。重合の具体的な形態は特に制限されず、塊状重合(バルク重合)に関する従来公知の知見が適宜参照され、さらに必要に応じて改良されうる。
【0071】
グラフト重合を行う際には、まず、グラフト重合体の幹となるポリオキシアルキレン系化合物およびグラフト重合体の枝となる単量体成分を、それぞれ所望の量だけ準備する。この際、準備する各成分の量は、質量比でポリオキシアルキレン系化合物:酸基含有不飽和単量体=95:5〜50:50であり、好ましくは94:6〜55
:45であり、より好ましくは94:6〜60:40であり、さらに好ましくは93:7〜65:35であり、特に好ましくは92:8〜70:30である。
【0072】
グラフト重合を行う際に用いられる重合開始剤としては、135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤が好適である。かような範囲の重合開始剤を用いることによって、グラフト体の収率がより向上するため好ましい。
【0073】
本発明において、135℃の半減期とは、日油株式会社 有機過酸化物カタログ第10版に記載の方法によって測定される。具体的には、以下の測定方法によって得られる値を言う。
【0074】
まず、重合開始剤を比較的不活性な溶媒(例えば、ベンゼン等)を使用して、0.1mol/Lまたは0.05mol/Lの重合開始剤溶液を調製し、窒素置換したガラス管中に密封する。これを135℃にセットした恒温槽に浸し、熱分解させる。かような方法により、重合開始剤濃度が初期濃度の半分になる時間が求められる。
【0075】
135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(半減期13分)、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(半減期6.3分)、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレエート(半減期30分)、t−ブチルパーオキシベンゾエート(半減期22分)、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート(半減期15.6分)、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン(半減期13.1分)が挙げられる。
【0076】
グラフト重合に用いられる135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤の使用量は特に制限されないが、グラフト重合に用いられる酸基含有不飽和単量体100質量%に対して、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは2〜10質量%であり、さらに好ましくは3〜7質量%である。
【0077】
有機過酸化物重合開始剤の使用量が少なすぎると、ポリオキシアルキレン鎖への単量体成分のグラフト体の収率が低下する虞がある。一方、有機過酸化物重合開始剤の使用量が多すぎると、ポリオキシアルキレン系化合物同士の反応が起こり、高分子量化に伴う反応時の高粘度化により製造が困難になる、高分子量化により組成物がゲル化し、不溶分が生成するため、品質が劣化する虞がある、製造コストが上昇する虞がある等の問題点が生ずる。
【0078】
135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤のほか、適宜その他の重合開始剤を用いてもよい。ただし、未反応のポリオキシアルキレン系化合物の減少という本発明の効果を顕著に得るためには、その他の重合開始剤は、重合開始剤全体の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(その他の重合開始剤を含まない)ことがさらに好ましい。その他の重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられ、公知の有機過酸化物が適宜用いられうる。
【0079】
135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤および、場合によってはその他の重合開始剤の添加形態は特に制限されない。ただし、単量体成分と同時に、かつ、予めポリオキシアルキレン系化合物と混合されていない状態で添加されることが好ましい。しかしながら、重合開始剤を予めポリオキシアルキレン系化合物または単量体成分の少なくとも一方に添加した状態でグラフト重合を行う形態もまた、採用されうる。
【0080】
グラフト重合の際には、上述した重合開始剤に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0082】
溶媒の使用量は、反応系の全量に対して好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下であり、特に好ましくは3質量%以下であり、最も好ましくは実質的に溶媒を含まない。「実質的に溶媒を含まない」とは、グラフト重合時に積極的に溶媒を添加しない形態を意味し、不純物程度の溶媒の混入は許容されうることを意味する。
【0083】
反応系が溶媒を含む場合、用いられる溶媒は特に制限されないが、単量体成分の溶媒への連鎖移動定数が小さいものや、常圧下で使用可能な沸点70℃以上のもの等が好ましい。このような溶媒としては、例えば、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のジエーテル類;酢酸、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル等の酢酸系化合物;等が挙げられる。これらの溶媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。上記アルコール類およびジエーテル類中のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0084】
グラフト重合の際の温度は好ましくは100℃以上であり、より好ましくは100〜160℃であり、さらに好ましくは110〜150℃である。重合時の温度が低すぎると、反応液の粘度が高くなり過ぎ、グラフト重合が進行しにくく、単量体成分のグラフト率が低下する虞がある。一方、重合時の温度が高すぎると、ポリオキシアルキレン系化合物および得られるグラフト重合体の熱分解が起こる虞がある。また、単量体や開始剤が揮発する虞れがある。なお、グラフト重合時の温度は、重合反応の進行中において、常に一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間または昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応の進行中に経時的に重合温度を変動(昇温または降温)させてもよい。
【0085】
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜240分である。なお、本発明において、「重合時間」とは単量体を添加している時間を表す。
【0086】
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0087】
グラフト重合の際には、グラフト重合体の幹となるポリオキシアルキレン系化合物の一部または全部を反応系に仕込んだ状態で、重合を開始するとよい。例えば、ポリオキシアルキレン系化合物の全量を反応系に仕込み、反応系を昇温させた後、単量体成分および重合開始剤を別々に添加して、グラフト重合反応を進行させる形態が例示される。かような形態によれば、得られるグラフト重合体の分子量が容易に調整されうるため、好ましい。なお、グラフト重合は、回分式で行われてもよいし、連続式で行われてもよい。
【0088】
[重合体、重合体組成物の用途]
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0089】
<水処理剤>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
【0090】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0091】
<繊維処理剤>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体(あるいは重合体組成物)を含む。
【0092】
上記繊維処理剤における本発明の重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0093】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0094】
本発明の重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明のアミノ基含有共重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0095】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0096】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のアミノ基含有共重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のアミノ基含有共重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0097】
上記無機顔料分散剤中における、本発明の重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0098】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0099】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0100】
<洗剤組成物>
本発明の重合体(あるいは重合体組成物)は、洗剤組成物にも添加しうる。
【0101】
洗剤組成物における本発明の重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、本発明の重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0102】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0103】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0104】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0105】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0106】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0107】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0108】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するためのその他の再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0109】
上記洗剤組成物は、本発明の重合体(あるいは重合体組成物)に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0110】
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0111】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0112】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0113】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明における共重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗浄剤組成物は、再汚染防止能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0115】
また、本発明のグラフト重合体の重量平均分子量、数平均分子量、化合物1〜3の定量ならびに重合体組成物および重合体水溶液の固形分量は、下記の方法に従って測定した。
<重量平均分子量および数平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ,GF−710−HQ,GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5mL/min
検量線:創和科学株式会社製 POLYETHYLENGLYCOL STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)。
【0116】
<未反応ポリオキシアルキレン化合物の定量方法>
重合体組成物中の未反応のポリオキシアルキレン化合物の定量は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
高速液体クロマトグラフィー
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)。
【0117】
<化合物1〜3の定量方法>
重合体組成物中の化合物1〜3の定量は、以下の条件の高速液体クロマトグラフィーで行った。
高速液体クロマトグラフィー
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:
(化合物1、3)
10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=90/10(体積比)
(化合物2)
10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=30/70(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)。
【0118】
<重合体組成物の固形分測定方法>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで重合体組成物(重合体組成物1.0g+水3.0g)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0119】
<重合体組成物中の酸基含有不飽和単量体量の測定>
酸基含有不飽和単量体量の測定は、下記条件にて液体クロマトグラフィーを用いて行った。
測定装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 SHODEX RSpak DE−413
温度:40.0℃
溶離液:0.1%リン酸水溶液
流速:1.0ml/min。
【0120】
<電気泳動測定条件>
未反応のポリオキシアルキレン系化合物、グラフト重合体の有する酸基の分布(偏在性)は、下記条件で調べた。電荷を有さないポリオキシアルキレン系化合物は早くに、より電荷の大きいグラフト重合体は遅く検出される。
装置名:Photal OTSUKA ELECTRONICS CAPI−3300
CAPILLARY ELECTROPHORESIS SYSTEM
カラム:大塚電子株式会社 GLキャピラリー管75μ×50cm
電圧:15kV
展開溶媒:50mmol/L 4−ホウ酸ナトリウム水溶液
泳動時間:30分
検出:UV210nm。
【0121】
<再汚染防止能>
(i)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作製した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(ii)塩化カルシウム2水和物4.41gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。
(iii)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム3.2g、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル0.4g、ホウ酸ナトリウム0.4g、クエン酸1.0gに、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
(iv)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で2%の重合体水溶液1g、カーボンブラック0.25gをポットに入れ、100rpmで1分間撹拌した。その後、白布10枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(v)手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。これを2回行った。
(vi)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した。
(vii)以上の測定結果から、下式により再汚染防止能を求めた。
(viii)再汚染防止能(%)=〔(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)〕×100
<実施例1>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、メタノールのエチレンオキサイド25モル付加物(以下、PGM25と称す。)204.6gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、100%アクリル酸(以下、「AA」とも称する。)87.7g、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシベンゾエート(以下、「PBZ」とも称する。)4204μL(4.39g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBZは210分間、AAはPBZ滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水74.0gを加え、重合反応液を希釈した。
このようにして、固形分濃度80質量%の重合体組成物(1)を得た。
【0122】
<実施例2>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、メタノールのエチレンオキサイド75モル付加物(以下、PGM75と称す。)362.4gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、AA90.6g、重合開始剤としてPBZ3996μL(4.17g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBZは210分間、AAはPBZ滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水113.0gを加え、重合反応液を希釈した。その後、35%過酸化水素水1.83g、および35%L−アスコルビン酸1.83gを添加し、60℃で30分間攪拌し、後処理を行った。
このようにして、固形分濃度80質量%の重合体組成物(2)を得た。
【0123】
<実施例3>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、フェノールのエチレンオキサイド50モル付加物(以下、PH500と称す。)789.3gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、AA87.7g、重合開始剤としてPBZ4204μL(4.39g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBZは210分間、AAはPBZ滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水220.0gを加え、重合反応液を希釈した。
このようにして、固形分濃度80質量%の重合体組成物(3)を得た。
【0124】
<実施例4>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、エタノールのエチレンオキサイド10モル付加物(以下、PGE10と称す。)131.6gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、AA87.7g、重合開始剤としてPBZ4204μL(4.39g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBZは210分間、AAはPBZ滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水56.0gを加え、重合反応液を希釈した。
このようにして、固形分濃度80質量%の重合体組成物(4)を得た。
【0125】
<実施例5>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、n−ブタノールのエチレンオキサイド45モルさらにプロピレンオキサイド5モル付加物(以下、PGB4505と称す。)350.8gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、AA87.7g、重合開始剤としてPBZ4204μL(4.39g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBZは210分間、AAはPBZ滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水111.0gを加え、重合反応液を希釈した。
このようにして、固形分濃度80質量%の重合体組成物(5)を得た。
【0126】
<比較例1>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、メタノールのエチレンオキサイド50モル付加物(以下、PGM50と称す。)789.3gを仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、AA87.7g、重合開始剤としてジt−ブチルパーオキシド(以下、「PBD」とも称する。)4204μL(4.39g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBDは210分間、AAはPBD滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水220.0gを加え、重合反応液を希釈した。
このようにして、固形分濃度80質量%の比較重合体組成物(1)を得た。
【0127】
<比較例2>
攪拌機(パドル翼)を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコにPH500を58.5g仕込み、窒素吹き込み、攪拌しながら、120℃まで昇温し、この状態を1時間維持することにより、反応系の脱水を行った。次に、還流冷却器を取り付け、135℃まで昇温し、AA87.7g、重合開始剤としてPBZ4204μL(4.39g、AAに対する質量比5.0質量%)を、それぞれ別々のノズルより滴下した。各液の滴下時間は、PBZは210分間、AAはPBZ滴下開始20分後より210分間とした。また、各液の滴下速度は一定とし、各液の滴下は連続的に行った。
AAの滴下終了後、さらに70分間、上記反応液を135℃に保持(熟成)して重合を終了した。重合終了後、重合反応液を攪拌、放冷しながら、純水56.0gを加え、重合反応液を希釈した。
このようにして、固形分濃度80質量%の比較重合体組成物(2)を得たが、激しく増粘して、ゲル化した。
【0128】
次に、実施例および比較例の重合体組成物の、高硬度下での再汚染防止能、特定の化合物量(重合体組成物に対する質量比)を上記評価方法に従って評価した。結果は以下の表3の通りである。
【0129】
【表1】

【0130】

表1に示す結果から、本発明の重合体組成物は、従来の重合体組成物と比較して、優れた高硬度下での再汚染防止能を有していることが示される。
従って、本発明の重合体組成物を洗剤ビルダーとして用いると、風呂の残り湯を用いて洗浄しても汚れの再汚染が効果的に防止されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤の存在下で、ポリオキシアルキレン系化合物および酸基含有不飽和単量体を重合して得られる重合体組成物であって、
前記ポリオキシアルキレン系化合物は、末端に炭素数8未満のアリール基、炭素数8未満のアルキル基および炭素数8未満のアルケニル基の少なくとも一つおよび/または2以上の水酸基を有し、
前記ポリオキシアルキレン系化合物は、オキシアルキレン基を有し、ポリオキシアルキレン系化合物1モルあたりのオキシアルキレン基由来の構造の含有量が10〜400モルであり、
前記ポリオキシアルキレン系化合物由来の構造と前記酸基含有不飽和単量体由来の構造との質量比が、95:5〜50:50であり、
下記化合物1〜3から選択される少なくとも一つを前記酸基含有不飽和単量体100質量部に対し、0.3〜20質量部含有する、重合体組成物。
【化1】

【請求項2】
前記重合開始剤が135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤である、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合体組成物を含む洗剤組成物。
【請求項4】
末端に炭素数8未満のアリール基、炭素数8未満のアルキル基および炭素数8未満のアルケニル基の少なくとも一つ、および/または2以上の水酸基を有し、さらにオキシアルキレン基を有し、ポリオキシアルキレン系化合物1モルあたりのオキシアルキレン基由来の構造の含有量が10〜400モルである、ポリオキシアルキレン系化合物と、酸基含有不飽和単量体とを、質量比でポリオキシアルキレン系化合物:酸基含有不飽和単量体=95:5〜50:50の割合で、
135℃の半減期が6〜60分である有機過酸化物重合開始剤の存在下で、グラフト重合させる段階を有する重合体組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−209136(P2010−209136A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53513(P2009−53513)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】