説明

重合反応のための光重合開始システムにおけるアリールスルフィン酸塩

電子供与体および増感化合物を含む組成物が提供される。より具体的には、電子供与体はアリールスルフィン酸塩である。エチレン性不飽和モノマーおよび光重合開始システムを含む、光重合性組成物からポリマー材料を調製するのに使用できる重合方法もまた提供される。光重合開始システムは電子供与体および増感化合物を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
フリーラジカル重合反応のための重合開始システム中で、電子供与体として使用できるアリールスルフィン酸塩が提供される。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカル重合反応は、典型的に重合開始システムを有する。用途によっては、重合開始システムは、様々な化学的アプローチに基づくことができる光重合開始システムである。例えばフリーラジカル重合反応は、電子受容体、電子供与体、および増感化合物を含む三要素光重合開始システムを使用して開始できる。代案としては、増感化合物と組み合わさった電子供与体を光重合開始システムとして使用できる。
【0003】
電子供与体、電子受容体、および増感化合物を含む三要素光重合開始システムでは、典型的に電子供与体と電子受容体の間に直接反応はない。正確に言えば、増感化合物は通常、化学線を吸収して、励起された増感化合物の形成が帰結する。電子供与体は励起された増感化合物に電子を提供できる。すなわち増感化合物が還元され、電子供与体が酸化されることができる。還元された増感化合物は電子を電子受容体に提供して、重合反応のための重合開始フリーラジカルを生じることができる、ラジカルアニオンであることができる。重合開始フリーラジカルは、還元された電子受容体であることができる。いくつかの三要素光重合開始システムの例では、酸化された電子供与体は、重合開始フリーラジカルとしても機能するラジカル種であることができる。
【0004】
別の光重合開始システムは増感化合物および電子供与体を有するが、電子受容体を有さない。増感化合物は化学線を吸収して、励起された増感化合物を形成できる。電子供与体は励起された増感化合物に電子を提供でき、電子供与体の酸化が帰結する。酸化された電子供与体は、重合反応のために重合開始フリーラジカルとして機能するラジカル種であることができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
電子供与体および増感化合物を含む組成物が提供される。より具体的には、電子供与体はアリールスルフィン酸塩である。フリーラジカル重合反応を使用してポリマー材料を調製するのに使用できる、重合方法もまた提供される。重合反応は、アリールスルフィン酸塩および増感化合物を含む組成物で光重合開始される。
【0006】
本発明の一態様は、電子供与体および250〜1000nmの波長範囲の化学線を吸収できる増感化合物を含む組成物を提供する。電子供与体は、N,N−ジメチルホルムアミド中で銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位を有し、
式I、
【化1】

のアニオンを有し、かつ、少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩を含む。式I中のAr1基は、置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。組成物はさらにエチレン性不飽和モノマーを含むことができる。
【0007】
本発明の第2の態様は、光重合性組成物がゲル化または硬化するまで光重合性組成物を化学線で照射するステップを含む光重合方法を提供する。光重合性組成物はエチレン性不飽和モノマー、増感化合物、および電子供与体を含む。増感化合物は250〜1000nm範囲の化学線の波長を吸収できる。電子供与体は、N,N−ジメチルホルムアミド中で銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位を有し、アリールスルフィン酸塩を含む。アリールスルフィン酸塩は、
式I、
【化2】

のアニオン、および少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有する。式IのAr1基は、置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。
【0008】
本発明の別の態様は、アリールスルフィン酸塩を提供する。化合物の一実施態様では、アリールスルフィン酸塩は、
式I、
【化3】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである)のアニオンを有する。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。アリールスルフィン酸塩のカチオンは、
式II、
【化4】

(式中、
1はアルキルまたはアリールであり、各R4は独立して、水素、アルキルまたはアリールである)を有する。R1およびR4基は、置換されていないまたは置換されていてもよい。アルキル基はヒドロキシで置換できる。アリールは、ヒドロキシ、アルキル、またはそれらの組み合わせで置換できる。
【0009】
化合物の別の実施態様では、アリールスルフィン酸塩は、
式I、
【化5】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである)のアニオンを有する。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。アリールスルフィン酸塩のカチオンは、正に帯電した窒素原子と、窒素、酸素、イオウ、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのその他のヘテロ原子とを備えた、4〜12員環複素環式基を含む環構造である。複素環式基は、飽和または不飽和であることができる。カチオン環構造は、置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせから選択される置換基を有することができる。
【0010】
化合物のさらに別の実施態様では、アリールスルフィン酸塩は、
式I、
【化6】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである)のアニオンを有する。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。アリールスルフィン酸塩のカチオンは、
式III、
【化7】

(式中、
各R2は独立して、置換されていないまたは置換されたアルキルまたはアリールである)を有する。アルキルは、ヒドロキシで置換できる。アリールは、ヒドロキシ、アルキル、またはそれらの組み合わせで置換できる。
【0011】
上の概要は、本発明の開示される各実施態様またはあらゆる実装について説明するものではない。続く詳細な説明セクションが、これらの実施態様をより詳しく例証する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
電子供与体および増感化合物を含む組成物が提供される。より具体的には、電子供与体はアリールスルフィン酸塩である。エチレン性不飽和モノマーおよび光重合開始システムを含む光重合性組成物からポリマー材料を調製するのに使用できる、重合方法もまた提供される。光重合開始システムは、電子供与体および増感化合物を含む。
【0013】
定義
ここでの用法では、単数形(「a」、「an」、および「the」)の用語は区別なく使用され、「少なくとも1つの」とは、1つ以上の要素について述べられることを意味する。
【0014】
ここでの用法では、「化学線」という用語は、光化学活性を生じられる電磁放射線を指す。
【0015】
ここでの用法では、「アシル」という用語は、式−(CO)Ra(式中、Raはアルキルまたはアリール基である)の一価の基を指す。
【0016】
ここでの用法では、「アルケニル」という用語は、アルケンの一価のラジカルを指す(すなわちアルケンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する脂肪族化合物である)。
【0017】
ここでの用法では、「アルコキシ」という用語は、式−OR(式中、Rはアルキル基である)の基を指す。例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシなどが挙げられる。
【0018】
ここでの用法では、「アルコキシカルボニル」という用語は、式−(CO)OR(式中、Rはアルキル基である)の一価の基を指す。例はエトキシカルボニルである。
【0019】
ここでの用法では、「アルコキシスルホニル」という用語は、式−SO3R(式中、Rはアルキル基である)を有する一価の基を指す。
【0020】
ここでの用法では、「アルキル」という用語は、アルカンの一価のラジカルを指す。アルキルは、直鎖、分枝鎖、環式、またはそれらの組み合わせであることができ、典型的に1〜30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施態様では、アルキル基は、1〜20、1〜14、1〜10、4〜10、4〜8、1〜6、または1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−オクチル、n−ヘプチル、およびエチルヘキシルが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0021】
ここでの用法では、「アルキルスルホニル」という用語は、式−SO2R(式中、Rはアルキル基である)の一価の基を指す。
【0022】
ここでの用法では、「アルキニル」という用語は、アルキンの一価のラジカルを指す(すなわちアルキンは、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する脂肪族化合物である)。
【0023】
ここでの用法では、「アミノ」という用語は、式−NRb2(式中、各Rbは独立して水素、アルキル、またはアリール基である)の一価の基を指す。第一級アミノ基では、各Rb基は水素である。第二級アミノ基では、Rb基の1つは水素であり、その他のRb基はアルキルまたはアリールのいずれかである。第三級アミノ基では、Rb基の双方がアルキルまたはアリールである。
【0024】
ここでの用法では、「アミノカルボニル」という用語は、式−(CO)NRb2(式中、各Rbは独立して水素、アルキル、またはアリールである)の一価の基を指す。
【0025】
ここでの用法では、「芳香族」という用語は、炭素環式芳香族化合物または基および複素環式芳香族化合物または基の双方を指す。炭素環式芳香族化合物は、芳香族環構造中に炭素原子のみを含有する化合物である。複素環式芳香族化合物は、芳香族環構造中にS、O、N、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する化合物である。
【0026】
ここでの用法では、「アリール」という用語は、一価の芳香族炭素環式ラジカルを指す。アリールは1つの芳香族環を有することができ、または芳香族環に結合または縮合した5個までの炭素環式環構造を含むことができる。その他の環構造は、芳香族、非芳香族、またはそれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナントリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、およびフルオレニルが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
ここでの用法では、「アリールオキシ」という用語は、式−OAr(式中、Arはアリール基である)の一価の基を指す。
【0028】
ここでの用法では、「アリールオキシカルボニル」という用語は、式−(CO)OAr(式中、Arはアリール基である)の一価の基を指す。
【0029】
ここでの用法では、「アリールオキシスルホニル」という用語は、式−SO3Ar(式中、Arはアリール基である)を有する一価の基を指す。
【0030】
ここでの用法では、「アゾ」という用語は、式−N=N−の二価の基を指す。
【0031】
ここでの用法では、「カルボニル」という用語は、式−(CO)−の二価の基を指し、炭素原子は酸素原子に二重結合によって結合する。
【0032】
ここでの用法では、「カルボキシという用語は、式−(CO)OHの一価の基を指す。
【0033】
ここでの用法では、「抱合された」という用語は、交互の炭素−炭素一重結合および炭素−炭素二重または三重結合がある、少なくとも2つの炭素−炭素二重または三重結合を有する不飽和化合物を指す。
【0034】
ここでの用法では、「シアノ」という用語は、式−CNの基を指す。
【0035】
ここでの用法では、「ジアルキルホスホナト」という用語は、式−(PO)(OR)2(Rはアルキル基である)を指す。式「(PO)」は、リン原子が二重結合によって酸素原子に結合していることを示唆する。
【0036】
ここでの用法では、「ジアリールホスホナト」という用語は、式−(PO)(OAr)2(式中、Arはアリール基である)を指す。
【0037】
ここでの用法では、「電子供与体」という用語は、電子を提供できる置換基を指す。適切な例としては、第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0038】
ここでの用法では、「電子吸引」という用語は、電子を吸引できる置換基を指す。適切な例としてはハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0039】
ここでの用法では、「フルオロアルキル」という用語は、フッ素原子で置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキル基を指す。
【0040】
ここでの用法では、「ホルミル」という用語は、式−(CO)Hの一価の基を指し、炭素は二重結合によって酸素原子に付着する。
【0041】
ここでの用法では、「ハロ」という用語は、ハロゲン基(すなわち、F、Cl、Br、またはI)を指す。いくつかの実施態様では、ハロ基はFまたはClである。
【0042】
ここでの用法では、「ハロカルボニル」という用語は、式−(CO)X(式中、Xはハロゲン基(すなわち、F、Cl、Br、またはI)である)の一価の基を指す。
【0043】
ここでの用法では、「ヘテロアリール」という用語は、環中に独立して、S、O、N、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む5〜7員環の芳香族環を有する一価のラジカルを指す。このようなヘテロアリール環は、芳香族、脂肪族、またはそれらの組み合わせである5個までの環構造に結合または縮合していることができる。ヘテロアリール基の例としては、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル、アクリジニル、およびインダゾリルなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。ヘテロアリールは複素環式基のサブセットである。
【0044】
ここでの用法では、「複素環式」という用語は、飽和または不飽和であり、環中に独立して、S、O、N、またはそれらの組み合わせから選択される1つ以上のヘテロ原子を含む環構造を有する一価のラジカルを指す。複素環式基は単環、二環式であることができ、または別の環式または二環式基に縮合していることができる。縮合した環式または二環式基は飽和または不飽和であることができ、炭素環式であることができ、またはヘテロ原子を含有していることができる。
【0045】
ここでの用法では、「ヒドロキシ」という用語は、式−OHの基を指す。
【0046】
ここでの用法では、「メルカプト」という用語は、式−SHの基を指す。
【0047】
ここでの用法では、「ペルフルオロアルキル」という用語は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を指す。ペルフルオロアルキルはフルオロアルキルのサブセットである。
【0048】
ここでの用法では、「ペルフルオロアルキルスルホニル」という用語は、式−SO2f(式中、Rfはペルフルオロアルキルである)の一価の基を指す。
【0049】
ここでの用法では、「重合」という用語は、モノマーまたはオリゴマーからより高分子量の物質を形成することを指す。重合反応はまた、架橋反応を伴うことができる。
【0050】
ここでの用法では、重合開始システムおよび重合性材料を含有する組成物について述べるとき、「保存安定性」とは組成物が、室温(すなわち、20℃〜25℃)でいかなる可視的ゲル形成もなく、少なくとも1日間保存できることを意味する。
【0051】
ここでの用法では化合物について述べるとき、「酸化的安定性」という用語は、室温(すなわち20℃〜25℃)で化合物の50重量%(t1/2)を酸化するのに必要な時間を指し、それはK.A.コナーズ(Connors)「化学速度論:溶液中での反応速度の研究(Chemical Kinetics:The Study of Reaction Rates in Solution)、第2章、VCH、New York、1990に記載されているように擬一次速度式を使用して計算できる。
【0052】
ここでの用法では、「スルホ」という用語は、式−SO3Hを有する基を指す。
【0053】
組成物
重合反応のための重合開始システムにおいて電子供与体として使用される多様な材料が知られている。しかしこれらの材料のいくつかは、エチレン性不飽和モノマー中で限定的な溶解性を有する。さらにこれらの材料のいくつかは、限定的な酸化安定性、保存安定性、またはそれらの組み合わせを有する。
【0054】
本発明の一態様は、電子供与体および増感化合物を含む組成物を提供する。より具体的には、電子供与性体はアリールスルフィン酸塩を含む。組成物は、フリーラジカル重合反応のための光重合開始システムとして使用できる。
【0055】
電子供与体は、N,N−ジメチルホルムアミド中で銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位を有し、
式I、
【化8】

のアニオンを有し、かつ、少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩である。式I中のAr1基は、置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。
【0056】
電子供与体は、酸化電位を規定範囲に有するように選択される。酸化電位は、サイクリックボルタンメトリーを使用して判定できる。ここで記載するように、酸化電位は対象の化合物を支持電解質(すなわち、0.1モル/L六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム)を含有する非水性溶剤(すなわちN,N−ジメチルホルムアミド)に溶解して測定される。得られる溶液をアルゴンなどの不活性ガスでパージする。作用電極(すなわちガラス状炭素電極)、参照電極(すなわちアセトニトリル中に溶解された0.01モル/Lの硝酸銀中の銀ワイヤ)、および対電極(すなわち白金ワイヤ)を含む三電極構造を使用する。酸化または還元電位は、酸化反応の最大電流に対応する電圧である。
【0057】
組成物の一構成要素は電子供与体である。電子供与体は、
式I、
【化9】

のアニオンを有し、かつ、少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩である。式IのAr1基は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。アリールスルフィン酸塩は典型的に、フリーラジカル重合反応を被ることができるモノマー、および多様な非極性および極性溶剤に可溶性である。ここでの用法では、「可溶性」という用語は、溶剤またはモノマーなどの所定の材料中に、少なくとも0.05モル/Lに等しい、少なくとも0.07モル/L、少なくとも0.08モル/L、少なくとも0.09モル/L、または少なくともに0.1モル/Lに等しい量で溶解できる化合物を指す。
【0058】
いくつかのアリールスルフィン酸塩では、Ar1基は置換されたフェニルまたは炭素環式芳香族環を有する、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール基である。アリール基は単一炭素環式芳香族環を有することができ、または炭素環式芳香族環に縮合または結合した追加的炭素環式環を有することができる。あらゆる縮合したまたは結合した環は、飽和または不飽和であることができる。アリールは、5個の環まで、4個の環まで、3個の環まで、2個の環まで、または1個の環を含有することが多い。アリール基は、通常、30個までの炭素原子、24個までの炭素原子、18個までの炭素原子、12個までの炭素原子、または6個までの炭素原子を有する。単環または多重縮合環を有するアリール基の例としては、フェニル、アントリル、ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、フェナントレニル、ペリレニル、およびアントラセニルが挙げられるが、これに限定されるものではない。一重結合、メチレン基(すなわち、−C(Rb2−(式中、各Rbは独立して、水素、アリール、またはアルキルである))、カルボニル基(すなわち、−(CO)−)、またはそれらの組み合わせは多重環を結合できる。多重結合環を有するアリール基の例としては、アントラキノニル、アントロニル、ビフェニル、テルフェニル、9,10−ジヒドロアントラセニル、およびフルオレニルが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0059】
その他のアリールスルフィン酸塩では、式I中のAr1基は、独立して、S、O、N、またはそれらの組み合わせから選択される、1つ以上のヘテロ原子を環中に含有する5〜7員環芳香族環を有する、置換されていないまたは置換されたヘテロアリールであることができる。ヘテロアリールは、単環を有することができ、または共に結合または縮合した多重環を有することができる。あらゆる追加的な結合または縮合した環は、炭素環式であることができ、またはヘテロ原子を含有し、飽和または不飽和であることができる。ヘテロアリール基は、5個までの環、4個までの環、3個までの環、2個までの環、または1個の環を含有することが多い。ヘテロアリールは典型的に30個までの炭素原子を含有する。いくつかの実施態様では、ヘテロアリールは20個までの炭素原子、10個までの炭素原子、または5個までの炭素原子を含有する。ヘテロアリール基の例としては、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル、アクリジニル、アザフェナントレニル、およびインダゾリルが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
式I中のAr1基は、アリールスルフィン酸塩がN,N−ジメチルホルムアミド中で銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位を有する限り、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基で置換できる。電子供与性基は、例えば第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキル、またはそれらの組み合わせから選択できる。電子求引性基は、例えばハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択できる。
【0061】
いくつかの実施態様では、Ar1基はスルフィネート基に結合する電子求引性基を含む。例えばAr1基は、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択される電子求引性基で置換されたフェニルであることができる。
【0062】
式Iのアリールスルフィネートアニオンの具体例としては、4−クロロベンゼンスルフィネート、4−シアノベンゼンスルフィネート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、1−ナフタレンスルフィネート、2−ナフタレンスルフィネート、および1−アントラキノンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0063】
アリールスルフィン酸塩は、少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかがあるカチオンを有する。一実施態様では、アリールスルフィネートのカチオンは、
式II、
【化10】

(式中、
1はアルキルまたはアリールであり、各R4は独立して、水素、アルキル、またはアリールである)を有する。R1およびR4基は、置換されていないまたは置換されていてもよい。アルキル基は、ヒドロキシで置換できる。アリールは、アルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換できる。
【0064】
式IIのいくつかの例では、R1および各R4基は独立して、置換されていないまたはヒドロキシで置換されたC2~30アルキルである。例えばR1および各R4は、独立して、20個まで、10個まで、8個まで、6個まで、または4個までの炭素原子を有するアルキル基であることができる。アルキル基は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも6個、または少なくとも8個の炭素原子を有することが多い。いくつかの化合物中では、アルキル基は、4〜30、8〜30、3〜10、4〜10、4〜8、または4〜6個の炭素原子を有することができる。具体例では、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、テトラブチルアンモニウムイオンである。
【0065】
式IIのその他の例では、R1および2つのR4基は、それぞれ独立して、置換されていないまたはヒドロキシで置換されていてもよいC2~30アルキルである。残るR4基は水素である。さらに別の例では、R1および1つのR4基は、それぞれ独立して、置換されていないまたはヒドロキシで置換されたC4~30アルキルであり、2つの残るR4基は水素である。さらに別の例では、R1は置換されていないまたはヒドロキシで置換されたC8~30アルキルであり、R4基は水素である。
【0066】
式II中のR1基および各R4基は独立して、置換されていない、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリール基であることができる。例示的なカチオンは、テトラフェニルアンモニウムイオンである。別の実施例では、R1および1個のR4は独立して、置換されていない、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリール基であり、2つの残るR4基は水素である。例示的なカチオンは、ジフェニルアンモニウムイオンである。
【0067】
その他の実施態様では、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、正に帯電した窒素原子がある4〜12員環複素環式基を含む環構造である。複素環式基は、飽和または不飽和であることができ、窒素、酸素、イオウ、またはそれらの組み合わせから選択される3個までのヘテロ原子を含有できる(すなわち1個の正に帯電した窒素原子、および窒素、酸素、イオウ、またはそれらの組み合わせから選択される2個までのその他のヘテロ原子がある)。環構造は、置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択される置換基を有することができる。
【0068】
カチオン環構造中の複素環式基は、単環、二環式であることができ、または別の環式または二環式基と縮合していることができる。縮合した環式または二環式基は飽和または不飽和であることができ、0〜3個のヘテロ原子を有することができる。環構造は、30個までの炭素原子、24個までの炭素原子、18個までの炭素原子、12個までの炭素原子、6個までの炭素原子、または4個までの炭素原子、および6個までのヘテロ原子、4個までのヘテロ原子、2個までのヘテロ原子、または1個のヘテロ原子を含むことができる。いくつかの実施態様では環構造は、0〜3個のヘテロ原子を有する芳香族環に縮合した4〜12員環複素環式基である。いくつかの例では、複素環式基は二環式である。
【0069】
正に帯電した窒素原子を含有する5員環複素環式基の適切な例としては、ピロリウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、イソキサゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イソチアゾリウムイオン、オキサジアゾリウムイオン、オキサトリアゾリウムイオン、ジオキサゾリウムイオン、およびオキサチアゾリウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのイオンは、置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせで置換されていてもよい。用途によっては、カチオンは置換されていないまたは置換されたイミダゾリウムイオンまたはオキサゾリウムイオンである。
【0070】
5員環複素環式基は、別の環式基に縮合していることができる。いくつかの例示的な環構造では、5員環複素環式基は芳香族基に縮合している。例示的な環構造としては、インドールイオン、インダゾリウムイオン、ベンゾピロリジニウムイオン、ベンゾイミダゾリウムイオン、ベンゾトリアゾリウムイオン、ベンゾイソキサゾリウムイオン、ベンゾキサゾリウムイオン、ベンゾチアゾリウムイオン、ベンゾイソチアゾリウムイオン、ベンゾキサジアゾリウムイオン、ベンゾキサトリアゾリウムイオン、ベンゾジオキサゾリウムイオン、ベンゾキサチアゾリウムイオン、カルボゾリウムイオン、およびプリニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのイオンは、置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせで置換されていてもよい。用途によっては、カチオンは置換されていないまたは置換されたベンゾキサゾリウムイオンまたはベンゾチアゾリウムイオンである。
【0071】
正に帯電した窒素原子を含有する6員環複素環式基の適切な例としては、ピリジニウムイオン、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピペラジニウムイオン、トリアジニウムイオン、オキサジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、オキサチアジニウムイオン、オキサジアジニウムイオン、およびモルホリニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのイオンは、置換されていないまたはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、またはカルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせで置換されていてもよい。用途によってはカチオンは、置換されていないまたは置換されたピリジニウムイオンまたはモルホリニウムイオンである。
【0072】
6員環複素環式基は、別の環式基と縮合できる。いくつかの例示的な環構造では、6員環複素環式基は芳香族基に縮合する。例示的な環構造としては、イソキノリニウムイオン、キノリニウムイオン、シンノリニウムイオン、キナゾリニウムイオン、ベンゾピラジニウムイオン、ベンゾピペラジニウムイオン、ベンゾトリアジニウムイオン、ベンゾキサジニウムイオン、ベンゾピペリジニウムイオン、ベンゾキサチアジニウムイオン、ベンゾキサジジニウムイオン、ベンゾモルホリニウムイオン、ナフチリジニウムイオン、およびアクリジニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらのイオンは置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、またはカルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせで置換されていてもよい。
【0073】
正に帯電した窒素原子を含有する7員環複素環式基の適切な例としては、例えば、アゼピニウムイオンおよびジアゼピニウムイオンが挙げられる。これらのイオンは置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせで置換されていてもよい。
【0074】
二環式である複素環式基の例としては、置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせで置換されたN−アルキル化またはN−プロトン化1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびN−アルキル化またはN−プロトン化1−アザ二環式[2.2.2]オクタンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0075】
その他の実施態様では、アリールスルフィン酸塩のカチオンは、
式III、
【化11】

(式中、各R2は独立して、置換されていないまたは置換されたアルキルまたはアリールである)の正に帯電したリン原子を含有する。アルキル基はヒドロキシで置換できる。アリールは、アルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換できる。
【0076】
式IIIのいくつかの例では、全てのR2基がアリール基である。例えばカチオンは、テトラフェニルホスホニウムイオンであることができる。その他の例では、1、2、または3個のR2基はアリールであり、残りのR2基または基群はC2~30アルキルである。
【0077】
アリールスルフィン酸塩のいくつかは、
式IV、
【化12】

のアニオン、および正に帯電した窒素原子を含むカチオンを有する。式IVでは、R3は、ベンゼン環のオルト、パラ、またはメタ位であることができ、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、またはアミノカルボニルから選択される電子求引性基である。いくつかの化合物では、R3はシアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、またはアルキルスルホニルから選択される。その他の化合物では、R3はハロ、シアノ、またはアルコキシカルボニル基である。
【0078】
3がフェニル環のパラ位に位置する式IVの具体例としては、4−シアノベンゼンスルフィネート、4−クロロベンゼンスルフィネート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、および4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートが挙げられる。フェニル環のメタ位に位置するR3の具体例としては、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートが挙げられる。
【0079】
いくつかの用途では、アリールスルフィン酸塩は、式IVのアニオン、およびテトラアルキルアンモニウムイオンであるカチオンを含む。テトラアルキルアンモニウムイオンのアルキル基は同一または異なることができ、典型的に2〜30個の炭素原子を含有する。例えばアルキル基は、4〜30個の炭素原子、8〜30個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、4〜10個の炭素原子、4〜8個の炭素原子、または4〜6個の炭素原子を含有できる。具体的なアリールスルフィン酸塩としては、テトラブチルアンモニウム4−クロロベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、およびテトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0080】
電子供与体のその他の具体例としては、テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィネート、およびテトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム4−シアノベンゼンスルフィネート、N,N−ジメチルモルホリニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、3−エチル−2−メチルベンキソキサゾリウム4−シアノベンゼンスルフィネート、1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン4−シアノベンゼンスルフィネート、およびN−ヘキサデシルピリジニウム4−シアノベンゼンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0081】
組成物の別の構成要素は、250〜1000nmの範囲の化学線を吸収できる増感化合物である。いくつかの実施態様では、増感化合物は、300〜1000nmの範囲、350〜1000nmの範囲、250〜850nmの範囲、250〜800nmの範囲、400〜800nmの範囲、425〜800nmの範囲、または450〜800nmの範囲の化学線を吸収できる。
【0082】
染料である適切な増感化合物としては、ケトン(例えばモノケトンおよびジケトン)、クマリン染料(例えばクマリン153などのケトクマリン)、キサンテン染料(例えばローズベンガルおよびローダミン6G)、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料(例えばメチレンブルーおよびメチレンバイオレット)、オキサジン染料(例えばベーシックブルー3およびナイルブルークロリド)、アジン染料(例えばメチルオレンジ)、アミノケトン染料、ポルフィリン(例えばポルフィラジン)、芳香族多環式炭化水素、p−置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、シアニン染料(例えばBiochemistry、12、3315(1974)に記載されているシアニン染料)、スクアリリウム染料、ピリジニウム染料、ベンゾピリリウム染料、およびトリアリールメタン(例えばマラカイトグリーン)が挙げられるが、これに限定されるものではない。用途によっては、増感化合物はキサンテン、モノケトン、ジケトン、またはそれらの組み合わせを含む。その他の適切な増感染料については、F.J.グリーン(Green)、シグマ・アルドリッチ染料、色素、および指示薬ハンドブック(The Sigma−Aldrich Handbook of Stains,Dyes,and Indicators)、Aldrich Chemical Company,Inc.,Milwaukee,WI(1990)に記載されている。
【0083】
いくつかの実施態様では、増感化合物はフルオロセイン、ローダミン、エオシン、およびピロニンなどのキサンテン染料である。
【0084】
例示的なモノケトンとしては、2,2−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、ジ−2−ピリジルケトン、ジ−2−フラニルケトン、ジ−2−メルカプトフェニルケトン、ベンゾイン、フルオレノン、カルコン、ミヒラーケトン、2−フルオロ−9−フルオレノン、2−クロロメルカプトキサントン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、1−または2−アセトナフト、9−アセチルアントラセン、2−、3−、または9−アセチルフェナントレン、4−アセチルビフェニル、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、バレロフェノン、2−、3−、または4−アセチルピリジン、3−アセチルクマリン、などが挙げられる。
【0085】
例示的なジケトンとしては、アントラキノン、フェナントレンキノン、o−、m−、およびp−ジアセチルベンゼン、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,7−、および1−8ジアセチルナフタレン、1,5−、1,8−、および9,10−ジアセチルアントラセンなどのアラルキルジケトンが挙げられる。例示的なα−ジケトンとしては、2,3−ブタンジオン、2,3−ペンタンジオン、2,3−ヘキサンジオン、3,4−ヘキサンジオン、2,3−ヘプタンジオン、3,4−ヘプタンジオン、2,3−オクタンジオン、4,5−オクタンジオン、ベンジル、2,2’−、3,3’−、および4,4’−ジヒドロキシベンジル、フリル、ジ−3,3’−インドリルエタンジオン、2,3−ボルナンジオン(カンファキノン)、ビアセチル、1,2−シクロヘキサンジオン、1,2−ナフタキノン、アセナフタキノンなどが挙げられる。
【0086】
染料は約150,000l−モル-1cm-1までのモル吸光係数を有することができる。用途によっては、染料は85,000l−モル-1cm-1まで、70,000まで、50,000まで、30,000まで、10,000まで、または5,000l−モル-1cm-1までのモル吸光係数を有する。
【0087】
深層硬化(例えば歯科用複合材などの高密度充填複合材の硬化、または厚いサンプルの硬化)を要する用途では、1000l−モル-1cm-1未満の吸光係数を有する増感化合物が典型的に選択される。いくつかの例では、光重合で使用される化学線の波長における吸光係数は、500未満または100l−モル-1cm-1未満である。例えばα−ジケトンは、このような用途のために使用できる増感化合物である。
【0088】
増感化合物はまた、その内容全体を本願明細書に引用した米国特許第4,959,297号明細書および米国特許第4,257,915号明細書に記載されているように、顔料であることができる。適切な無機顔料としては、チタン二酸化、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、亜鉛セレン化物、硫化カドミウム、カドミウムセレン化物、カドミウムテルル化物、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。適切な有機顔料としては、フタロシアニンブルー(顔料ブルー15)、銅ポリクロロフタロシアニングリーン(顔料グリーン7)、銅ポリブロモクロロフタロシアニン(顔料グリーン36)、ペリレンスカーレット(バッドレッド29)、ペリレンバーミリオン(顔料レッド23)、ペリレンマルーン、ペリレンボルドー、ペリレン二無水物(ペリレンレッド)、およびカーク−オスマー(Kirk−Othmer)「化学技術百科(Encyclopedia of Chemical Technology)」第3版、第17巻の「顔料−無機(Pigments−Inorganic)」および「顔料−有機(Pigments−Organic)」、pp.788〜817、John Wiley and Sons、New York、1982に記載されているものが挙げられるが、これに限定されるものではない。有機顔料はまた、Y.M.パウシュキン(Paushkin)ら「有機ポリマー半導体(Organic Polymeric Semiconductors)」John Wiley & Sons、New York、1974、およびJ.M.ピアソン(Pearson)、Pure and Appl.Chem.、49、463〜477(1977)に記載されているように半導体ポリマーであることができる。
【0089】
組成物はさらに、フリーラジカル重合反応を使用して重合できるモノマーを含むことができる。モノマーは典型的に、少なくとも1つのエチレン性−不飽和二重結合を含有する。モノマーは、例えばモノアクリレート、ジアクリレート、ポリアクリレート、モノメタクリレート、ジメタクリレート、ポリメタクリレート、またはそれらの組み合わせであることができる。モノマーは置換されていない、またはヒドロキシで置換されていてもよい。例示的なモノマーとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、およびトリス−ヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメチルアクリレートが挙げられる。モノマーはまた、200〜500の平均分子量(Mn)を有するポリエチレングリコールのビス−アクリレートおよびビス−メタクリレートと、米国特許第4,652,274号明細書に記載されているものなどのアクリル化モノマーの共重合性混合物と、米国特許第4,642,126号明細書に記載されているものなどのアクリル化モノマーと、メチレンビス−アリールアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、ジエチレントリアミントリス−アクリルアミド、およびβ−メタクリルアミノエチルメタクリレートなどの不飽和アミドと、スチレン、ジアリルフタラート、ジビニルスクシナート、ジビニルアジパート、およびジビニルフタラートなどのビニルモノマーであることができる。所望ならば2つ以上のモノマーの混合物が使用できる。
【0090】
電子供与体および増感化合物は、エチレン性−不飽和モノマーのフリーラジカル重合を可能にするのに効果的な量で存在できる。用途によっては電子供与体は、モノマー重量を基準にして、4重量%まで、3重量%まで、2重量%まで、1重量%まで、または0.5重量%までの量で存在できる。例えば電子供与体は、モノマー重量を基準にして、0.1〜4重量%、0.1〜3重量%、0.1〜2重量%、または0.5〜1重量%の量で存在できる。
【0091】
増感化合物は、モノマー重量を基準にして4重量%までの量で使用されることが多い。用途によっては、増感化合物は、モノマー重量を基準にして、3重量%まで、2重量%まで、1重量%まで、0.5重量%までの量で存在する。例えば増感化合物は、モノマー重量を基準にして、5ppm〜4重量%、10ppm〜2重量%、15ppm〜1重量%、または20ppm〜0.5重量%の量で存在できる。
【0092】
組成物は、重合された材料の所望の用途次第で多種多様な添加剤を含有できる。適切な添加剤としては、溶剤、希釈液、樹脂、バインダー、可塑剤、無機および有機強化または増量充填材、チキソトロープ剤、UV吸収剤、医薬品などが挙げられる。
【0093】
組成物は、典型的に酸化状態の金属イオン、過硫酸塩、過酸化物、ヨードニウム塩、ヘキサアリールビスイミダゾール、またはそれらの組み合わせなどの電子受容体を含まない。
【0094】
いくつかの実施態様では、組成物の構成要素は、硬化速度、硬化深度、および貯蔵寿命の有用な組み合わせを提供するように選択できる。いくつかの組成物は、大量の充填材を装填された場合でも良好に硬化できる。組成物を使用して、フォーム、成型品、接着剤、充填または強化された複合材、研磨材、コーキングおよびシーリング調合物、キャスティングおよびモールディング調合物、ポッティングおよび封入調合物、含浸およびコーティング調合物などを形成できる。
【0095】
組成物の適切な用途としては、グラフィックアート画像形成(例えば色校正システム、硬化性インク、およびシルバーレス画像形成のための)、印刷プレート(例えば投影プレートおよびレーザープレートのための)、光レジスト、プリント基板のためのはんだマスク、被覆された研磨材、磁気媒体、光硬化性接着剤(例えば歯科矯正および一般ボンド用途のための)、光硬化性複合材(例えば自動車ボディ修復および歯科用修復のための)、保護コーティング、および耐摩耗コーティングが挙げられるが、これに限定されるものではない。組成物はまた、高強度/短パルスレーザーが適切な染料および共反応物質との組み合わせで使用されて、画像形成、微細複製構造およびステレオ平板印刷用途に有用な重合性組成物が生成される、多光子プロセスで使用するのに適している。組成物は、当業者に知られているその他の用途で使用できる。
【0096】
重合方法
本発明はまた、フリーラジカル重合反応を使用してエチレン性不飽和モノマーを光重合する方法を提供する。光重合方法は、光重合性組成物がゲル化または硬化するまで光重合性組成物を化学線で照射するステップを含む。光重合性組成物は、光重合開始システムおよびフリーラジカル重合反応を被ることができるモノマー(すなわちエチレン性不飽和モノマー)を含む。光重合開始システムは、電子供与体および増感化合物を含む。光重合性組成物のいくつかの実施態様では、使用前に構成要素を共に混合して少なくとも1日間保存できる。
【0097】
光重合開始システム中の電子供与体は、
式I、
【化13】

のアニオンを有し、少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを含有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩を含む。式I中のAr1基は、置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。電子供与体は、N,N−ジメチルホルムアミド中で銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位を有する。いくつかの実施態様では、N,N−ジメチルホルムアミド中における銀/硝酸銀参照電極に対する酸化電位は、+0.08〜+0.4V、+0.08〜+0.3V、または+0.08〜+0.2Vである。
【0098】
光重合性組成物は、染料、有機顔料、無機顔料、またはそれらの組み合わせなどの多種多様な異なるタイプの増感化合物を含むことができる。いくつかの実施態様では、増感化合物は色を変化させてポリマー材料が硬化したことを示すことができる。色の変化は、増感化合物に対する化学的変化に起因するかもしれない。
【0099】
光重合開始システムは、波長を250〜1000nmの範囲に有する化学線に増感化合物を曝露することで活性化できる。用途によっては、化学線は波長を300〜1000nmの範囲、350〜1000nmの範囲、250〜850nmの範囲、250〜800nmの範囲、400〜800nmの範囲、425〜800nmの範囲、または450〜800nmの範囲に有する。化学線への曝露に際して励起された増感化合物が形成する。電子供与体は励起された増感化合物に電子を提供できる。増感化合物は還元され、電子供与体は酸化される。酸化された電子供与体は、重合反応のために重合開始フリーラジカルとして機能できるラジカル種である。
【0100】
光重合法のために適切なモノマーは、典型的にモノアクリレート、モノメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのエチレン性不飽和モノマー、またはそれらの組み合わせを含む。
【0101】
いくつかの実施態様では、可視光を使用して増感化合物を励起し、光重合性組成物を活性化できる。これは比較的安価な光源が使用できるので、有利であることができる。電磁スペクトルの可視領域で放射する光源は、例えば紫外線領域で放射するものよりも安価な傾向がある。紫外線放射線または紫外線および可視放射線の組み合わせを含むその他の光源もまた使用できる。典型的な光源としては、水銀蒸気放電ランプ、炭素アーク、タングステンランプ、キセノンランプ、太陽光、レーザー、発光ダイオードなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0102】
アリールスルフィナート化合物
本発明の別の態様は、アリールスルフィン酸塩を提供する。一実施態様では、アリールスルフィン酸塩は、
式I、
【化14】

(式中、Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールである)のアニオンを有する。置換されたAr1基は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有することができる。アリールスルフィン酸塩のカチオンは、
式II、
【化15】

(式中、R1は独立して、アルキルまたはアリールであり、各R4は独立して、水素、アルキル、またはアリールである)を有する。R1およびR4基は、置換されていないまたは置換されていてもよい。アルキル基は、ヒドロキシで置換できる。アリール基は、ヒドロキシ、アルキル、またはそれらの組み合わせで置換できる。
【0103】
式IIのその他の実施例では、R1および2個のR4基はそれぞれ独立して、置換されていないまたはヒドロキシで置換されたC2~30アルキルであることができる。残るR4基は水素である。さらに別の実施例では、R1および1個のR4基はそれぞれ独立して、置換されていないまたはヒドロキシで置換されたC4~30アルキルであり、2つの残るR4基は水素である。さらに別の例では、R1は置換されていないまたはヒドロキシで置換されたC8~30アルキルであり、R4基は水素である。
【0104】
式IIのその他の実施例では、R1と、R4基の少なくともいくつかは、フェニル基などのアリール基を含む。例示的なカチオンは、テトラフェニルアンモニウムイオンである。
【0105】
式Iのアニオンおよび式IIのカチオンを含むいくつかの特定のアリールスルフィン酸塩としては、テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィネート、およびテトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0106】
アリールスルフィン酸塩は、
式IV、
【化16】

(式中、
3はベンゼン環のオルト、パラ、またはメタ位にあることができる)のアニオンを有することができる。R3基は、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、またはそれらの組み合わせから選択される電子求引性基である。電子求引性基の選択および環上の位置は、アリールスルフィン酸塩の酸化電位に影響できる。式IVのカチオンの具体例としては、4−シアノベンゼンスルフィネート、4−クロロベンゼンスルフィネート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、および3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートが挙げられる。
【0107】
用途によっては、アリールスルフィン酸塩は、式IVのアニオン、およびテトラアルキルアンモニウムイオンであるカチオンを含む。アルキル基は、同一または異なることができ、典型的に1〜10個の炭素原子を含有する。例えばアルキル基は、3〜10個の炭素原子、4〜10個の炭素原子、4〜8個の炭素原子、または4〜6個の炭素原子を含有できる。具体的なアリールスルフィン酸塩としては、テトラブチルアンモニウム4−クロロベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、およびテトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0108】
アリールスルフィン酸塩の別の実施態様では、アニオンは、上述のように
式I、
【化17】

を有し、カチオンは正に帯電した窒素原子を有する4〜12員環複素環式基を含む環構造である。正に帯電した窒素ヘテロ原子に加えて、複素環式環は、窒素、酸素、イオウ、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの追加的ヘテロ原子を含有する。複素環式基は、飽和または不飽和であることができる。環構造は置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル基、またはそれらの組み合わせから選択される置換基を有することができる。
【0109】
カチオン環構造のいくつかの実施態様では、複素環式基は、飽和または不飽和であり、0〜3個のヘテロ原子を有する環式または二環式基に縮合する。例えば複素環式基は、0〜3個のヘテロ原子を有する芳香族基に縮合できる。
【0110】
正に帯電した窒素原子を含有する5員環複素環式基の適切な例としては、ピラゾリウムイオン、イミダゾリウムイオン、トリアゾリウムイオン、イソキサゾリウムイオン、オキサゾリウムイオン、チアゾリウムイオン、イソチアゾリウムイオン、オキサジアゾリウムイオン、オキサトリアゾリウムイオン、ジオキサゾリウムイオン、およびオキサチアゾリウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0111】
縮合した環式基を有する5員環複素環式基の例としては、インダゾリウムイオン、ベンゾイミダゾリウムイオン、ベンゾトリアゾリウムイオン、ベンゾイソキサゾリウムイオン、ベンゾキサゾリウムイオン、ベンゾチアゾリウムイオン、ベンゾイソチアゾリウムイオン、ベンゾキサジアゾリウムイオン、ベンゾキサトリアゾリウムイオン、ベンゾジオキサゾリウムイオン、ベンゾキサチアゾリウムイオン、およびプリニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0112】
正に帯電した窒素原子を含有する6員環複素環式基の適切な例としては、ピリダジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピペラジニウムイオン、トリアジニウムイオン、オキサジニウムイオン、オキサチアジニウムイオン、オキサジアジニウムイオン、およびモルホリニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0113】
縮合した環式基を有する6員環複素環式基の例としては、シンノリニウムイオン、キナゾリニウムイオン、ベンゾピラジニウムイオン、ベンゾピペラジニウムイオン、ベンゾトリアジニウムイオン、ベンゾキサジニウムイオン、ベンゾキサチアジニウムイオン、ベンゾキサジジニウムイオン、およびベンゾモルホリニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0114】
式Iのアニオンおよび窒素含有環構造があるカチオンを有するアリールスルフィン酸塩の具体例としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム4−メチルベンゼンスルフィネート、モルホリニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、3−エチル−2−メチルベンキソキサゾリウム4−シアノベンゼンスルフィネート、および1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン4−シアノベンゼンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0115】
アリールスルフィン酸塩の別の実施態様では、アニオンは、上述のように、
式I、
【化18】

を有し、カチオンは、
式III、
【化19】

(式中、各R2は独立して、置換されたまたは置換されていないアルキルまたはアリールである)を有する。アルキルはヒドロキシで置換できる。アリールはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換できる。
【0116】
式IIIに従ったカチオンのいくつかの例では、各R2はフェニルなどのアリール基である。カチオンは置換されていない、またはテトラフェニルホスホニウムイオンで置換されていてもよい。
【0117】
式Iのアニオンおよび式IIIのカチオンを有する例示的なアリールスルフィネートとしては、テトラフェニルホスホニウム4−シアノベンゼンスルフィネートが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0118】
アリールスルフィン酸塩は、溶剤またはモノマーなどの所定の材料中で典型的に0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、または0.1モル/L以上の溶解性を有する。したがってアリールスルフィネートは、水性調合物、または大量(例えば30〜70重量%)のアルコールなどの補助溶剤がある水性システムを含む用途に限定されない。
【0119】
アリールスルフィネートは、アリールスルフィネートを溶解する目的で溶剤を添加する必要なしに、モノマーを重合するのに使用できる。例えばアリールスルフィネートを使用して、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレートなどの非極性モノマーを重合できる。重合反応は追加的溶剤の不在下で生じることができる(すなわちアリールスルフィネートはこれらの非極性モノマーに可溶性である)。
【0120】
いくつかの実施態様では、アリールスルフィネートは酸化分解を被ることなく、室温で無希釈の化合物として保存できる。例えばアリールスルフィネートのいくつかは、1日を超え、2日を超え、1週間を超え、2週間を超え、または1カ月を超えて保存できる。室温(すなわち20℃〜25℃)で50%の化合物を酸化するのに必要な時間(t1/2)を使用して、様々なアリールスルフィネートの酸化分解の相対的容易さを比較できる。t1/2は、K.A.コナーズ(Connors)「化学速度論:溶液中での反応速度の研究(Chemical Kinetics:The Study of Reaction Rates in Solution)、第2章、VCH、New York、1990に記載されているように擬一次速度式を使用して計算される。
【0121】
ここで開示されるアリールスルフィネートは、少なくともいくつかの用途では、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属から選択されるカチオンを有するアリールスルフィネートと比較して、多様なモノマー中での改善された溶解性、向上した貯蔵安定性、またはそれらの組み合わせを有する。
【実施例】
【0122】
特に断りのない限り、ここでは、
溶剤および試薬は、ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、WI))から得られた、または得ることができ、または知られている既知の方法で合成されてもよく、
サイクリックボルタンメトリーのための電気化学器具類は、テネシー州オークリッジのプリンストン・アプライド・リサーチ(Princeton Applied Research(Oak Ridge、TN))から得られ、
N,N−ジメチルホルムアミドはニュージャージー州のEMサイエンス(EM Science(Gibbstown、NJ))から得られ、
4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホニルクロリドは、マサチューセッツ州ワード・ヒルのアルファ・エーサー(Alfa Aesar(Ward Hill、MA))から得られ、
「emim」という用語は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオンを指し、
「4−HBA」という用語は、4−ヒドロキシブチルアクリレートを指し、
「HEA」という用語は、2−ヒドロキシエチルアクリレートを指し、
「HDDA」という用語は、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートを指し、
「EYB」という用語は、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Co.)から得られる90%エリスロシンBと10%エオシンYの混合物であるエリスロシン・イエローリッシュ・ブレンドを指し、
「シアニン1」という用語は、3−メチル−2−[5−(3−メチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)−1,3−ペンタジエニル]ベンゾチアゾリウムヨウ化物を指し、Biochemistry、Vol.13、no.42(1974)、pp.3315〜3330で開示される一般方法に従って調製された。
【0123】
方法
酸化電位の測定
例示的なアリールスルフィナートの電気化学測定は、プリンストン・アプライド・リサーチ(Princeton Applied Research)モデル179デジタル電量計およびモデル178電位計を装着したプリンストン・アプライド・リサーチ(Princeton Applied Research)モデル173ポテンシオスタット/ガルバノスタットに接続する、EG & G PARCモデル175ユニバーサル・プログラマーを使用して行った。オハイオ州アクロンのDATAQインストゥルメンツ(DATAQ Instruments,Inc.(Akron、OH))から入手できるモデルDI−151R5波形記録システムを使用してシグナルをデジタル化し、次にDell OptiPlex XM 590pc上で保存し分析した。走査速度は100mV/秒であった。
【0124】
参照電極、作用電極、および対電極の三電極構造を使用して、電気化学測定を行った。参照電極はアセトニトリル中の0.01M AgNO3で充填され、直径1mm×長さおよそ19cmの銀ワイヤで装着される、イリノイ州バッファロー・グローブのサージェント・ウェルチ(Sargent Welch、(Buffalo Grove、IL))から得られたフリット電極であった。対電極は、コイル径およそ10mm×コイル長約7.5cmを有するコイルに形成される直径1.0mm×長さ(全体的長さ)およそ16cmの白金ワイヤであった。作用電極は、インディアナ州ウエスト・ラファイエットのBAS(BAS,Inc.(West Lafayette、Indiana))から得られた直径およそ3.5mmのガラス状炭素電極であった。ガラス状炭素電極は、最初に3.0μmの酸化アルミニウム粉末/脱イオン水スラリー、次に0.3μmのα−アルミナ粉末/脱イオン水スラリーを使用して研磨した。磨き粉はイリノイ州エバンストンのビューラー(Buehler LTD(Evanston、IL))から得られた。
【0125】
セルは50mLの四つ口丸底フラスコであった。適切な大きさのゴム隔壁を使用して、各電極をフラスコ内に密封した。第4の注入口を使用して、アルゴンパージを導入して酸素を除去し、セルに大気中の水分が入らないようにした。
【0126】
支持電解質は、テキサス州オースティンのサウスウェスタン・アナリティカル・ケミカルズ(Southwestern Analytical Chemicals,Inc.(Austin、TX))から得られた六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6)であった。TBAPF6は、各実験前に80〜90℃の真空オーブン内で一晩乾燥させた。溶剤はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)であり、さらに精製することなく受領した状態のままで使用した。アルゴン雰囲気下でシリンジによって溶剤を電気化学セルに移し、大気中水分の取り込みを最小化した。
【0127】
最初にDMF中0.1モル濃度のTBA PF6溶液を調製して、電気化学測定を行った。アルゴンガスをセル内に流し込みながら、この溶液を、小型磁気撹拌棒を含有するセルに添加した。参照および対電極を器具類に接続した後、作用電極を上述のように研磨して、次にセル内に挿入した。例示的な化合物をセルに追加する前に、バックグラウンドスキャンを行った。次におよそ10mgの化合物をセルに添加し、それが溶解した後、測定を実施して酸化電位を記録した。電位は、第1のスキャンにおける酸化または還元反応のピーク電流で判定した。この構造では、同一電解質溶液中におけるフェロセンの酸化電位は、参照電極に対して+0.1Vである。
【0128】
酸化安定性の測定
例示的な置換されたアリールスルフィネートの酸化安定性をプロトン核磁気共鳴分光法によって判定した。アセトニトリル−d3中の化合物溶液のスペクトルを定期的間隔で得た。カチオン中のアルキル基の共鳴を初期標準として使用し、アニオンの酸化を評価した。
【0129】
調製例1
4−シアノベンゼンスルホニルクロリドの調製
再密封可能なビニル袋中で固形物を合わせ、袋を手動で練り振盪させて、4−カルボキシベンゼンスルホンアミド(188g)およびPCl5(430g)の密接混合物を作成した。磁気撹拌棒、および窒素ガス供給源に接続するホースアダプターを装着した丸底フラスコに混合物を移した。フラスコを油浴内で緩慢に60℃に加熱し、合物を撹拌しながら60℃に5時間保った。次にドライアイスで冷却されるトラップを通じてホースアダプターを水流吸引器に接続し、フラスコを排気して液体をトラップ内に蒸留しながら、油浴の温度を110℃に増大させた。蒸留速度が遅くなったら、ホースアダプターを再度窒素供給源に接続し、油浴温度を155℃に上昇させた。さらに13時間後、トラップを通じてホースアダプターを再度水流吸引器に接続し、より多くの液体を蒸留した。次に反応フラスコを室温に冷却させ、その間に褐色生成物が固化した。ウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical Co.(Milwaukee、WI))から入手できるクーゲルロール蒸留装置使用して、温度150℃および圧力0.07mmHgで、粗生成物を氷浴内で冷却される収集バルブ内に真空蒸留した。固形物黄色留出物を収集バルブからCH2Cl2で洗浄し、その溶液を回転蒸発器で濃縮して乾燥させ、167.4gの生成物を得た。
【0130】
調製例2
カリウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルホネートの調製
脱イオン水(1200mL)中のナトリウム4−カルボキシベンゼンスルホネート(75g)混合物を固形物が溶解するまで、60℃に加熱した。溶出液のpHがおよそ5.5になるまで、脱イオン水、濃縮した水性HCl、および脱イオン水で逐次洗浄して酸性化した、ペンシルベニア州フィラデルフィアのローム・アンド・ハース(Rohm and Haas Co.(Philadelphia、PA))から商品名アンバーライト(AMBERLITE)IR−120(プラス(PLUS))の下に入手できる強酸性イオン交換樹脂カラムに、この溶液を通過させた。次にカラムにナトリウム4−カルボキシベンゼンスルホネート溶液を充填し、次に全部で2Lの溶出液が収集されるまで脱イオン水で洗浄した。脱イオン水を回転蒸発器で除去して、得られた中間体を真空オーブン内で50℃で一晩乾燥させた。
【0131】
次に磁気撹拌棒、凝縮器、および窒素ガス供給源に付着するホースアダプターを装着した丸底フラスコ内で、無水エタノール(1L)に中間体を溶解した。この溶液を撹拌し、100℃で一晩油浴内で加熱した。追加的な500mLのエタノールをフラスコに添加し、加熱および撹拌をさらに4時間継続した。溶液を室温に冷却させ、アルコール性KOHでブロモチモールブルー終点まで中和した。生成物が溶液から沈殿し、真空濾過により単離させて、無水エタノールで洗浄して室温で一晩乾燥させ、75.1gの生成物を得た。
【0132】
調製例3
4−エトキシカルボニルベンゼンスルホニルクロリドの調製
磁気撹拌棒および窒素ガス供給源に接続したホースアダプターを装着した丸底フラスコに、アセトニトリル(300mL)およびスルホラン(100mL)の3:1(v/v)混合物に溶解させたカリウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルホネート(75.1g)溶液を装入した。溶液を撹拌しながらPOCl3(55mL)を緩慢に添加し、撹拌される混合物を窒素雰囲気下で3時間、75℃に加熱した。不均一な反応混合物を室温に冷却させ、次に回転蒸発器を使用して濃縮した。次にフラスコを氷浴内で冷却し、フラスコ内の混合物に氷を添加した。生成物が白色固形物として結晶化し、濾過して冷脱イオン水で洗浄した。生成物を室温および3mmHgで、2時間真空下で乾燥させて76gの白色固形物を得た。
【0133】
調製例4
1−クロロスルホニルアントラキノンの調製
ナトリウムアントラキノン−1−スルホネート(50.0g)をPOCl3(31mL)と、スルホラン(100mL)およびアセトニトリル(200mL)の1:2(v/v)混合物と合わせた。混合物を撹拌して、窒素雰囲気下で44時間110℃に加熱した。混合物を室温に冷却させ、次にさらに冷蔵庫内で冷却した。混合物を濾過して、濾液をビーカー内の氷上に注ぎ、この混合物を1時間撹拌した。褐色沈殿物を濾過し、脱イオン水で洗浄して空気中で乾燥させ、次にさらに一晩、1mmHg未満の圧力の45℃の真空オーブン内で乾燥させて、12.08gの生成物を褐色固形物として得た。
【0134】
調製例5〜8
置換されたアルカリ金属ベンゼンスルフィネートの調製
市販の、または調製例1および3で記載したようにして調製した、置換されたベンゼンスルホニルクロリドの加水分解によって、置換されたアルカリ金属ベンゼンスルフィネートを調製した。丸底フラスコ内で2.5等量のNa2SO3および2.5等量のNaHCO3と共に、各置換されたベンゼンスルホニルクロリドを脱イオン水1mLあたり0.2gの置換されたベンゼンスルホニルクロリドの濃度で、脱イオン水中で75℃で3時間撹拌した。次に各反応混合物を室温に冷却し、次に冷蔵庫で10℃に冷却した。pHが1未満になるまで、各冷溶液を濃硫酸で酸性化した。
【0135】
各沈殿固形物を酢酸エチル中に抽出し、次に回転蒸発器を使用して有機相を蒸発させて乾燥し、置換されたベンゼンスルフィン酸を無色固形物として得た。それぞれの固形の置換されたベンゼンスルフィン酸をメタノールに溶解し、およそ10重量%の溶液を得た。次に沈殿物がかろうじて形成するまで、脱イオン水を各溶液に滴下して添加した。次に全ての固形物が溶解するまで、十分なメタノールを溶液に添加した。表1で示すように、各水性メタノール溶液をアルカリ金属水酸化物(MOH)の1M水溶液で中和し、置換されたアルカリ金属置換されたベンゼンスルフィン酸塩を得て、溶剤を回転蒸発器で除去して単離した。
【0136】
【表1】

【0137】
調製例9
N,N−ジメチルモルホリニウム水酸化物の調製
室温で撹拌される1,2−ジクロロエタン(125mL)中のN−メチルモルホリン(10.0g)溶液に、ヨウ化メチル(14.1g)を添加した。形成した無色の沈殿物を濾過して、1,2−ジクロロエタンおよび石油エーテルで逐次洗浄した。室温において空気中で固形物を乾燥させて、21.3gの生成物を得た。この生成物(1.0g)のサンプルを脱イオン水(2mL)に溶解し、10gの10%NaOH水溶液および200mLの脱イオン水で逐次洗浄したミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル(Dow Chemical Co.(Midland、MI))から商品名DOWEX 1X2−100の下に入手できる強塩基性イオン交換樹脂カラムに通過させた。サンプルを25mLの脱イオン水でカラムから洗浄した。溶出した溶液を濃縮し、回転蒸発器を使用して乾燥させ、50℃の真空オーブンを使用してさらに一晩乾燥させ、生成物を無色の固形物として得た。
【0138】
調製例10
1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン水酸化物の調製
室温で撹拌される1,2−ジクロロエタン(100mL)中の1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(10.0g)溶液に、ヨウ化メチル(12.7g)を添加した。形成した無色の沈殿物を濾過し、1,2−ジクロロエタンおよび石油エーテルで逐次洗浄した。室温において空気中で固形物を乾燥させ、21.3gの生成物を得た。次にこの全生成物を脱イオン水(200mL)に溶解し、溶液にアンモニウム六フッ化リン酸(13.7g)を緩慢に添加しながら室温で撹拌した。形成した無色の沈殿物を真空濾過し、少量の脱イオン水で洗浄した。固形物を室温において空気中で一晩乾燥させ、60℃の真空オーブンを使用してさらに一晩乾燥させて、7.1gの生成物を得た。この生成物(1.0g)のサンプルを脱イオン水(2mL)に溶解し、10gの10%NaOH水溶液および200mLの脱イオン水で逐次洗浄したミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル(Dow Chemical Co.(Midland、MI))から商品名DOWEX 1X2−100の下に入手できる強塩基性イオン交換樹脂カラムに通過させた。25mLの脱イオン水で、サンプルをカラムから洗浄した。溶出した溶液を濃縮し、回転蒸発器を使用して乾燥させ、50℃の真空オーブンを使用してさらに一晩乾燥させ、生成物を無色の固形物として得た。
【0139】
調製例11
3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウムクロリドの調製
脱イオン水(20mL)中の3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウムヨウ化物(1.0g)溶液を脱イオン水(200mL)、飽和水性NaCl(50mL)、および脱イオン水(200mL)で逐次洗浄したミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル(Dow Chemical Co.(Midland,MI))から商品名DOWEX 1X2−100の下に入手できるイオン交換樹脂カラムに通過させた。およそ50mLの脱イオン水で生成物をカラムから洗浄して濃縮し、回転蒸発器を使用して乾燥させ、0.73gの生成物を得た。
【0140】
実施例1〜4
置換されたテトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィネートの調製
対応するアルカリ金属スルフィネートから、置換されたテトラブチルアンモニウムベンゼンスルフィネートを調製した。各アルカリ金属スルフィネートを脱イオン水に溶解して、濃硫酸で酸性化した0.1M溶液を得て、スルフィン酸を無色の沈殿物として得た。各混合物を酢酸エチルで抽出し、次に回転蒸発器を使用して有機相を蒸発させて乾燥させた。それぞれの得られた固形物を50%(v/v)水性メタノールに溶解させ、この溶液を水酸化テトラブチルアンモニウムの水溶液で滴定した。回転蒸発器を使用して各混合物を蒸発させて乾燥させ、生成物を黄色油として得た。各化合物の1Hおよび13C NMRスペクトルは、指定の構造と一致した。これらの調製物および酸化および安定性データの詳細を表2に示す。
【0141】
【表2】

【0142】
実施例5
emim4−メチルベンゼンスルフィネートの調製
磁気撹拌棒を装着した丸底フラスコ内のナトリウム4−メチルベンゼンスルフィネート(3.1g)および無水エタノール(80mL)の混合物を撹拌しながらおよそ75℃に加熱した。混合物をおよそ40℃に冷却させ、次にフラスコに、無水エタノール(20mL)中の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(2.0g)溶液を添加した。混合物を2時間撹拌した後、それを濾過した。回転蒸発器を使用して濾液を濃縮して乾燥させ、不均一な黄色油を得て、それをCHCl3に取り込んだ。この混合物を濾過し、次に回転蒸発器を使用して濾液を濃縮して乾燥させ、3.12gの生成物を黄色油として得た。
【0143】
実施例6
テトラフェニルホスホニウム4−シアノベンゼンスルフィネートの調製
磁気撹拌しながら溶液をホットプレート上で加熱して沸騰させ、250mLエルレンマイアーフラスコ内で、無水エタノール(100mL)中のナトリウム4−シアノベンゼンスルフィネート(1.0g)溶液を調製した。絶え間なく撹拌しながら、沸騰する溶液に、無水エタノール(50mL)中のテトラフェニルホスホニウムクロリド(1.98g)の熱溶液を添加した。撹拌される溶液を30分間冷却し、その間に無色の沈殿物が出現した。次に撹拌しながら氷浴内でフラスコをさらに30分間冷却した。混合物を真空濾過し、回転蒸発器を使用して濾液を乾燥させ、いくらかの固形物を含有する濃黄色の油を得た。この残留物をクロロホルム(50mL)に溶解し、混合物を20分間撹拌して次に真空濾過した。回転蒸発器を使用して、濃黄色溶液を濃縮し乾燥させて透明な黄色油を得て、それを3mmHgで真空下でさらに1時間乾燥させ、2.20gの生成物を明るい黄色のワックスとして得た。
【0144】
実施例7
テトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィネートの調製
丸底フラスコ内で、1−クロロスルホニルアントラキノン(12.05g)溶液を脱イオン水(200mL)、Na2SO3(18.34g)、およびNaHCO3(12.22g)と合わせた。混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、65℃に2時間加熱した。次に溶液を室温に冷却させ、次に冷蔵庫内でさらに冷却した。形成した沈殿固形物を濾過して単離し、空気中で乾燥させた。固形物をフラスコに移し、それに200mLのメタノールおよび脱イオン水の2:1(v/v)混合物を添加した。溶液を濃赤色が持続するまで、40%水性水酸化テトラブチルアンモニウムで滴定した。回転蒸発器によって溶剤を除去し、濃赤色の油を高真空下で2日間45℃で乾燥させ、16.98gの生成物を得た。
【0145】
実施例8
テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィネートの調製
丸底フラスコに1−ナフタレンスルホニルクロリド(20.0g)、Na2SO3(33.36g)、NaHCO3(22.24g)、および脱イオン水(350mL)を装入した。窒素雰囲気下で2時間、混合物を撹拌し65℃に加熱した後、混合物を室温に冷却させ、次にさらに冷蔵庫内で冷却した。冷混合物を濃H2SO4で酸性化すると、沈殿物の形成がもたらされた。混合物を100mLの酢酸エチルで3回抽出した。有機抽出物を合わせて回転蒸発器によって溶剤を除去し、無色の固形物を得て、次にそれをビーカー内で240mLの1:1(v/v)メタノール−脱イオン水に溶解した。溶液のpHが7.2になるまで、溶液を40%水性水酸化テトラブチルアンモニウム溶液で滴定した。回転蒸発器によって溶剤を除去し、生成物を室温で真空オーブン内でさらに乾燥させ、36.4gの黄色ワックス様固形物を得た。
【0146】
実施例9
テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィネートの調製
丸底フラスコに、2−ナフタレンスルホニルクロリド(24.73g)、Na2SO3(41.25g)、NaHCO3(41.25g)、および350mL脱イオン水を装入した。混合物を窒素雰囲気下で2時間撹拌して65℃に加熱した後、混合物を室温に冷却させ、次にさらに冷蔵庫内で冷却させた。濃H2SO4で冷混合物を酸性化し、沈殿物の形成をもたらした。
【0147】
混合物を100mLの酢酸エチルで3回抽出した。有機抽出物を合わせて回転蒸発器によって溶剤を除去し、無色の固形物を得て、次にそれをビーカー内で240mLの1:1(v/v)メタノール−脱イオン水に溶解した。溶液のpHが7.2になるまで、溶液を40%水性水酸化テトラブチルアンモニウム溶液で滴定した。回転蒸発器によって溶剤を除去し、生成物を室温で真空オーブン内でさらに乾燥させ、46.9gの黄色ワックス様固形物を得た。
【0148】
実施例10
N,N−ジメチルモルホリニウム4−シアノベンゼンスルフィネートの調製
脱イオン水(10mL)中のナトリウム4−シアノベンゼンスルフィネート(0.15g)溶液に、濃硫酸を緩慢に添加した。沈殿物が形成し、硫酸を沈殿物がさらに形成しなくなるまで滴下して添加した。混合物を酢酸エチル(20mL)で2回抽出し、有機相を合わせ、回転蒸発器を使用して濃縮し乾燥させた。得られた固形物を50重量%水性メタノールに溶解し、この溶液を脱イオン水(5mL)中のN,N−ジメチルモルホリニウム水酸化物(0.85g)溶液で滴定した。回転蒸発器を使用して溶液を濃縮して乾燥させ、室温で一晩真空オーブンを使用してさらに乾燥させた。次に脱イオン水中で得られた固形物を溶解し、この溶液を酢酸エチル(20mL)で2回抽出した。回転蒸発器を使用して、合わせた有機相を濃縮して乾燥させた。室温で真空オーブンを使用して得られた固形物をさらに一晩乾燥させ、0.24gの生成物を黄色油として得た。
【0149】
実施例11
1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン4−シアノベンゼンスルフィネートの調製
脱イオン水(10mL)中のナトリウム4−シアノベンゼンスルフィネート(0.25g)溶液に、濃硫酸を緩慢に添加した。沈殿物が形成し、硫酸を沈殿物がさらに形成しなくなるまで滴下して添加した。混合物を酢酸エチル(20mL)で2回抽出し、有機相を合わせ、回転蒸発器を使用して濃縮し乾燥させた。得られた固形物を50重量%水性メタノールに溶解し、この溶液を脱イオン水(5mL)中の調製例10(0.27g)の生成物の溶液で、pHおよそ7.2に滴定した。回転蒸発器を使用して溶液を濃縮して乾燥させ、室温で一晩真空オーブンを使用してさらに乾燥させ、0.45gの生成物を黄色ワックス様固形物として得た。
【0150】
実施例12
N−ヘキサデシルピリジニウム4−シアノベンゼンスルフィネートの調製
磁気撹拌され沸騰する無水エタノール(200mL)中のナトリウム4−シアノベンゼンスルフィネート(1.0g)溶液を含有するエルレンマイアーフラスコに、エタノール(20mL)中のN−ヘキサデシルピリジニウムクロリド(1.6g)溶液を入れた。混合物を室温に冷却させ、次にさらに氷浴内で冷却した。混合物を濾過し、回転蒸発器を使用して濾液を濃縮し乾燥させた。次に残留物をクロロホルム(100mL)に溶解し、回転蒸発器を使用して濾過し濃縮して乾燥させ、2.4gの生成物を得た。
【0151】
実施例13
3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウム4−シアノベンゼンスルフィネートの調製
磁気撹拌され沸騰する無水エタノール(20mL)中のナトリウム4−シアノベンゼンスルフィネート(0.1g)溶液を含有するエルレンマイアーフラスコに、エタノール(20mL)中の3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウムクロリド(0.73g)溶液を添加した。混合物を室温に冷却させ、次にさらに氷浴内で冷却した。混合物を濾過し、回転蒸発器を使用して濾液を濃縮し乾燥させた。残留物を脱イオン水に混合し、この混合物を酢酸エチル(2×20mL)で抽出した。回転蒸発器を使用して、合わせた有機抽出物を濃縮して乾燥させた。次に得られた固形物をメチレンクロリドに溶解して濾過し、回転蒸発器を使用して蒸発させて乾燥させ、0.08gの生成物を得た。
【0152】
実施例14〜17
テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネートを使用したHEAの光硬化
HEAおよび1重量%テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネートの原液を調製した。およそ1gのこの溶液をねじ口バイアルに装入した。各バイアルに一定量の染料を添加し、染料次第で典型的に50〜1000ppmである、淡色溶液を提供するのに十分な染料濃度を得た。各溶液を窒素ガスで30秒間パージした後、バイアルを密封した。各バイアルを光源のおよそ2cm手前に保持し緩慢に撹拌して、フロリダ州ジャクソンビルのキューダ・ファイバーオプティックス(Cuda Fiberoptics(Jacksonville、FL))から入手できる100Wのクオーツ−タングステン−ハロゲン(QTH)光源(モデルI−100)で各溶液を照射した。光源シャッターは完全に開いていた。硬化時間はバイアルを撹拌した際にバイアル内で溶液が流れなくなるのに必要な時間であると見なされた。結果を表3に示す。
【0153】
【表3】

【0154】
実施例18
テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネートおよびメチレングリーンを使用した4−HBAの光硬化
4−HBA(0.5g)と1重量%の実施例4の生成物の混合物を調製した。メチレングリーンを、淡色溶液を提供するのに十分な量で添加した。デラウェア州ニュー・キャッスルのTAインストゥルメンツ(TAInstruments(New Castle、DE))から入手できるモデルDSC2920熱量計を使用して、光示差走査熱量分析(photo−DSC)によって、20mW/cm2の照射で300nmよりも低いエネルギーの化学線によって、硬化速度および程度についてサンプルを評価した。結果を表4に示す。
【0155】
【表4】

【0156】
実施例19〜22
テトラブチルアンモニウムアリールスルフィン酸塩およびEYBを使用したHDDAの光硬化
水を張った試験室超音波処理浴を使用して、ガラスバイアル内のHDDA(11.03g)およびEYB(0.056g)混合物を5分間超音波処理した。次に0.45μmシリンジフィルターを使用して混合物を濾過し、ピンク色の溶液を得て、次にそれを別個のねじ口ガラスバイアル内で9つの計量部分に分割した。HDDA溶液中の1重量%のテトラブチルアンモニウムアリールスルフィン酸塩混合物を得るのに十分な量で、4本のバイアルのそれぞれに、実施例2、4、8、および9からのテトラブチルアンモニウムアリールスルフィン酸塩の1つを添加した。これらのバイアルのそれぞれを超音波処理浴内で5分間超音波処理して、次に各混合物を窒素ガスで2分間パージした後、バイアルを密封した。各バイアルを光源のおよそ2cm手前に保持し緩慢に撹拌して、フロリダ州ジャクソンビルのキューダ・ファイバーオプティックス(Cuda Fiberoptics(Jacksonville、FL))から入手できる100Wのクオーツ−タングステン−ハロゲン(QTH)光源(モデルI−100)で各混合物を照射した。光源シャッターは完全に開いていた。硬化時間はバイアルを撹拌した際にバイアル内で溶液が流れなくなるのに必要な時間であると見なされた。結果を表5に示す。
【0157】
【表5】

【0158】
比較例1〜4
アルカリ金属ベンゼンスルフィン酸塩およびEYBを使用したHDDAの照射
実施例19〜22からのHDDAおよびEYBを含有する、残るバイアルの4本のそれぞれに、HDDA溶液中に1重量%のアルカリ金属アリールスルフィン酸塩混合物を得るのに十分な量で、表6に示すように1種のアルカリ金属ベンゼンスルフィン酸塩を添加した。超音波処理浴内でこれらの各バイアルを5分間超音波処理し、次に各混合物を窒素ガスで2分間パージした後、バイアルを密封した。各バイアルを光源のおよそ2cm手前に保持し緩慢に撹拌して、フロリダ州ジャクソンビルのキューダ・ファイバーオプティックス(Cuda Fiberoptics(Jacksonville、FL))から入手できる100Wのクオーツ−タングステン−ハロゲン(QTH)光源(モデルI−100)で各混合物を照射した。光源シャッターは完全に開いていた。各バイアルを90秒間照射した後、各混合物が完全に硬化しないことが観察された。
【0159】
【表6】

【0160】
比較例5
HDDAおよびEYBの混合物の照射
残るバイアル中実施例19〜22からのHDDAおよびEYB混合物を窒素ガスで2分間パージした後、バイアルを密封した。各バイアルを光源のおよそ2cm手前に保持し緩慢に撹拌して、フロリダ州ジャクソンビルのキューダ・ファイバーオプティックス(Cuda Fiberoptics(Jacksonville、FL))から入手できる100Wのクオーツ−タングステン−ハロゲン(QTH)光源(モデルI−100)で各混合物を照射した。光源シャッターは完全に開いていた。各バイアルを90秒間照射した後、各混合物が完全に硬化しないことが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I、
【化1】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールであり、前記置換されたAr1は電子求引性基である置換基、または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有する)のアニオンを有し、かつ、少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを有するカチオンを有するアリールスルフィン酸塩を含んでなり、N,N−ジメチルホルムアミド中において銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位を有する電子供与体、および
250〜1000nmの範囲にある化学線波長を吸収できる増感化合物
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記アリールスルフィン酸塩のAr1基が、アントリル、ナフチル、アセナフチル、フェナントリル、フェナントレニル、ペリレニル、アントラセニル、アントラキノニル、アントロニル、ビフェニル、テルフェニル、9,10−ジヒドロアントラセニル、またはフルオレニルであり、前記Ar1基が置換されていない、または電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アリールスルフィン酸塩のAr1基が、キノリニル、イソキノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、シンノリニル、ベンゾフラニル、ベンゾメルカプトフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、フタラジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアジニル、フェナジニル、フェナントリジニル、アクリジニル、またはインダゾリルであり、前記Ar1基が置換されていない、または電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記アリールスルフィン酸塩のAr1基が、置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたナフチル、または置換されていないまたは置換されたアントラキノニルであり、前記置換されたAr1が電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記Ar1基が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択される電子求引性基で置換されたフェニルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アリールスルフィン酸塩のアニオンが、4−クロロベンゼンスルフィネート、4−シアノベンゼンスルフィネート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、1−アントラキノンスルフィネート、1−ナフタレンスルフィネート、または2−ナフタレンスルフィネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、正に帯電した窒素原子を有する4〜12員環の複素環式基を含んでなる環構造であり、前記複素環式が飽和または不飽和であり、酸素、イオウ、窒素、またはそれらの組み合わせから選択される3個までのヘテロ原子を有し、前記環構造が置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択される置換基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記複素環式基が二環式である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記複素環式基が、飽和または不飽和で0〜3個のヘテロ原子を有する環式または二環式基に縮合している、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記複素環式基が、0〜3個のヘテロ原子を有する芳香族環に縮合している、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、
式II、
【化2】

(式中、
1は置換されていないアルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、置換されていないアリール、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリールであり、
各R4は独立して、水素、置換されていないアルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、置換されていないアリール、またはアルキル、ヒドロキシまたはそれらの組み合わせで置換されたアリールである)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、
式III、
【化3】

(式中、
各R2は独立して、置換されていないアルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、置換されていないアリール、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリールである)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、テトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、テトラブチルアンモニウムイオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、テトラフェニルホスホニウムイオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記アリールスルフィン酸塩が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択される電子求引性基電子で置換されたベンゼンスルフィネートであるアニオンを有し、前記カチオンがテトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記電子供与体が、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネートまたはテトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
エチレン性不飽和モノマーをさらに含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
前記エチレン性不飽和モノマーが、モノアクリレート、モノメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、酸化状態の金属イオン、過硫酸塩、過酸化物、ヨードニウム塩、ヘキサアリールビスイミダゾール、またはそれらの組み合わせから選択される電子受容体を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記増感化合物が染料、有機顔料、または無機顔料である、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記増感化合物がキサンテン染料、モノケトン、ジケトン、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
前記増感化合物がα−ジケトンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
光重合性組成物を重合性組成物がゲル化または硬化するまで化学線で照射するステップを含んでなる光重合の方法であって、前記光重合性組成物が、
エチレン性不飽和モノマー、
250nm〜1000nmの範囲の化学線の波長を吸収できる増感化合物、および
N,N−ジメチルホルムアミド中において銀/硝酸銀参照電極に対して0.0〜+0.4Vの酸化電位
を有する電子供与体を含んでなり、前記電子供与体が、
式I、
【化4】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールであり、前記置換されたAr1は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有する)のアニオンを有し、かつ、
少なくとも1つの炭素原子と、正に帯電した窒素原子または正に帯電したリン原子のいずれかを含んでなるカチオンを有するアリールスルフィン酸塩を含んでなる、光重合の方法。
【請求項25】
前記アリールスルフィン酸塩のアニオンが、4−クロロベンゼンスルフィネート、4−シアノベンゼンスルフィネート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、1−アントラキノンスルフィネート、1−ナフタレンスルフィネート、または2−ナフタレンスルフィネートである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記アリールスルフィン酸塩のカチオンが、テトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記アリールスルフィン酸塩が、ハロ、シアノ、フルオロアルキル、ペルフルオロアルキル、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロカルボニル、ホルミル、カルボニル、スルホ、アルコキシスルホニル、アリールオキシスルホニル、ペルフルオロアルキルスルホニル、アルキルスルホニル、アゾ、アルケニル、アルキニル、ジアルキルホスホナト、ジアリールホスホナト、アミノカルボニル、またはそれらの組み合わせから選択される電子求引性基電子で置換されたベンゼンスルフィネートであるアニオンを有し、前記カチオンがテトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記光重合性組成物が、モノマー重量を基準にして0.1〜4重量%の電子供与体および5ppm〜4重量%の増感化合物を含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記エチレン性不飽和モノマーが、モノアクリレート、モノメタクリレート、ジアクリレート、ジメタクリレート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはそれらの組み合わせを含んでなる、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
式I、
【化5】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールであり、前記置換されたAr1は、電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有する)のアニオン、および
式II、
【化6】

(式中、
1は置換されていないアルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、置換されていないアリール、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリールであり、
各R4は独立して、水素、置換されていないアルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、置換されていないアリール、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリールである)のカチオン
を含んでなるアリールスルフィン酸塩。
【請求項31】
前記アリールスルフィン酸塩のアニオンが、4−クロロベンゼンスルフィネート、4−シアノベンゼンスルフィネート、4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、1−アントラキノンスルフィネート、1−ナフタレンスルフィネート、または2−ナフタレンスルフィネートである、請求項30に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項32】
前記カチオンがテトラアルキルアンモニウムイオンである、請求項30に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項33】
前記カチオンがテトラブチルアンモニウムイオンである、請求項30に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項34】
前記アリールスルフィン酸塩が、テトラブチルアンモニウム4−クロロベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム3−トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム1−ナフタレンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム2−ナフタレンスルフィネート、またはテトラブチルアンモニウム1−アントラキノンスルフィネートである、請求項30に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項35】
式I、
【化7】

(式中、
Ar1は置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールであり、前記置換されたAr1は電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有する)のアニオン、および
正に帯電した窒素原子と、窒素、酸素、イオウ、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのその他のヘテロ原子とを備えた、4〜12員環複素環式基を含んでなる環構造を含んでなるカチオン
を含んでなり、前記複素環式基が飽和または不飽和であり、前記環構造が置換されていない、またはアルキル、アリール、アシル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロ、メルカプト、アミノ、ヒドロキシ、アゾ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、またはハロカルボニル基から選択される置換基で置換されていてもよい、アリールスルフィン酸塩。
【請求項36】
前記複素環式基が、飽和または不飽和で0〜3個のヘテロ原子を有する環式または二環式基に縮合している、請求項35に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項37】
前記複素環式基がヘテロ二環式基である、請求項35に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項38】
前記アリールスルフィン酸塩が、N,N−ジメチルモルホリニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、1−メチル−4−アザ−1−アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン4−シアノベンゼンスルフィネート、3−エチル−2−メチルベンゾオキサゾリウム4−シアノベンゼンスルフィネート、N−ヘキサデシルピリジニウム4−シアノベンゼンスルフィネート、またはそれらの組み合わせである、請求項35に記載のアリールスルフィン酸塩。
【請求項39】
式I、
【化8】

(式中、
Ar1は、置換されたフェニル、置換されていないまたは置換されたC7~30アリール、または置換されていないまたは置換されたC3~30ヘテロアリールであり、前記置換されたAr1は電子求引性基または電子供与性基と組み合わさった電子求引性基である置換基を有する)のアニオン、および
式III、
【化9】

(式中、
各R2は独立して、置換されていないアルキル、ヒドロキシで置換されたアルキル、置換されていないアリール、またはアルキル、ヒドロキシ、またはそれらの組み合わせで置換されたアリールである)のカチオン
を含んでなる、アリールスルフィン酸塩。
【請求項40】
前記化合物がテトラフェニルホスホニウム4−シアノベンゼンスルフィネートである、請求項39に記載の化合物。

【公表番号】特表2007−506835(P2007−506835A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527985(P2006−527985)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【国際出願番号】PCT/US2004/025258
【国際公開番号】WO2005/035591
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】