説明

重合反応装置への触媒スラリーの供給を最適化する方法および装置

【課題】重合反応装置(1)への触媒スラリー供給の最適化方法。
【解決手段】(a)重合反応で使用するのに適した濃度の固体触媒を炭化水素の希釈剤中に含む触媒スラリーをタンク(3)中で調製し、(b)得られた触媒スラリーを上記タンク(3)からバッファータンク(4)へ送り、その中に貯蔵し、(c)このバッファータンクから管路(8)を介して所定流速で上記触媒スラリーを重合反応装置(1)へ供給し、(d)上記触媒スラリーを重合反応装置中に供給する前に、所定量の助触媒を上記触媒スラリーと接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒反応に関するものである。
第1の観点から、本発明は重合反応装置への触媒スラリーの供給を最適化する方法に関するものである。
別の観点から、本発明は触媒を調整して重合反応装置へ供給する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)はエチレン(CH2=CH2)モノマーの重合で製造される。PEは安価、安全であり、大抵の環境に安定かつ加工が容易であるため多くの用途で有用である。一般に、PEは合成法によっていくつかのタイプ、例えばLDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線形低密度ポリエチレン)およびHDPE(高密度ポリエチレン)に分類できる。各タイプのポリエチレンは互いに異なる性質と特性を有している。
【0003】
オレフィン、例えばエチレンの重合ではチーグラー−ナッタ有機金属触媒と助触媒を用いてオレフィンモノマーを重合するということは公知である。チーグラー−ナッタ系として公知のオレフィンの重合および共重合のための触媒系は、触媒として元素の周期律表のIV〜VII族に属する遷移金属の化合物と、助触媒としての元素周期律表のI〜III族に属する金属の化合物とから成る。最も一般的に使用されている触媒はチタンとバナジウムのハロゲン誘導体をマグネシウム化合物と組合せたものである。また、最も一般的に使用されている助触媒は有機アルミニウム化合物または有機亜鉛化合物である。触媒が高度に活性である場合、特に多量の助触媒の存在下で使用した場合、かなりの量のポリマーの凝集が観測される。代表的なチーグラー−ナッタ触媒では、モノマー、例えばエチレンまたはプロピレンが懸濁した触媒中に泡をたたせ、エチレンまたはプロピレンは迅速に高分子量の線形ポリエチレンまたはポリプロピレンに重合される。チーグラー‐ナッタ触媒の特性から、得られるものは全て直鎖の重合体である。
【0004】
重合プロセスで使用するチーグラー‐ナッタ触媒の改良は1950年代のチーグラーとナッタの研究を始めとして古くから多数提案されてきた。活性と立体選択性との両方を改良することがこの触媒系の開発が続く原動力であった。この触媒系は支持物質の外に実際の触媒としての遷移金属化合物、例えばアルミニウム含有助触媒を加えるだけで活性化されるチタン化合物を含む。
【0005】
チーグラー‐ナッタ触媒を使う際には、反応装置の反応帯帯域中へ、希釈剤スラリーとして触媒を噴射し、重合されるオレフィンを導入するのが一般的である。重合反応装置中に触媒を供給する方法は多くの公知文献に記載されている。下記文献には反応装置中にチーグラー‐ナッタ触媒のスラリーを導入する方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第US 3,846、394号明細書
【0006】
この特許の方法はチーグラー‐ナッタ触媒を調整し、貯蔵装置帯帯域から計量部へ供給管を介してスラリーを移送し、スラリーを反応装置への導入する段階から成る。この特許では、反応装置中のモノマーやその他の内容物がチーグラー‐ナッタ触媒の上記供給管へ逆流するのを避けるために、上記方法ではチーグラー‐ナッタ触媒に対して不活性な希釈剤で上記供給管をフラッシュしている。この希釈剤は計量部の下流で上記供給管中へ供給される。下記文献には重合反応装置へ触媒スラリーを供する組立体が記載されている。
【特許文献2】国際特許第WO2004/026455号公報
【0007】
触媒スラリーは混合タンクで調製され、一つまたは複数の貯蔵タンクへ送られる。貯蔵タンクは撹拌機を含み、触媒スラリーは基本的に均質な固体対液体比に維持される。触媒スラリーは流量計を備えた流路に沿って貯蔵タンクから重合反応装置へポンプ輸送される。触媒スラリーは連続流にすることができ、および/または、測定パラメータに基づいて調整できる。このシステムの主たる欠点は適切な助触媒と予め接触が済んだ重合反応装置中に触媒を導入するのではないという点にある。
【0008】
重合反応は使用する触媒の量に極めて敏感であるということは周知である。また、反応装置中に加えられる触媒の量は反応装置に対する触媒の流速をベースにするということも公知である。しかし、従来法でチーグラー‐ナッタ触媒の希釈剤とのスラリーを反応装置中へ噴射する場合の主たる問題の1つは噴射するチーグラー‐ナッタ触媒の量を制御するのが難しいという点にある。さらに、触媒がポンプ等の触媒噴射手段やスラリー運搬ラインを詰らせる傾向もある。
【0009】
例えば、下記文献には、触媒量を慎重に制御し、ラインやポンプ等の装置の清浄度を制御して閉塞を防止するために、触媒の供給法、触媒量の制御法、触媒ラインの保守法およびポンプフリーな反応帯帯域中への触媒スラリーおよび希釈剤の交互供給法が記載されている。
【特許文献3】米国特許第3,726,845号明細書
【0010】
下記文献には化学反応で使用する炭化水素の希釈剤中に固体触媒のスラリーを作る方法および装置が記載されている。
【特許文献4】英国特許第838,395号公報
【0011】
この方法では炭化水素の希釈剤中に濃縮した触媒スラリーを調製し、この濃縮スラリーを追加の希釈剤と混合し、得られた混合物を反応帯域へ導入する。この方法では反応帯域へスラリーを導入する前にスラリーの比誘電率を連続的に求める。この比誘電率はスラリー中の触媒濃度に依存する。この方法ではさらに、スラリーの誘電値を一定に維持するために、上記比誘電率の所定値との差に対応する添加希釈剤に対する濃縮スラリーの比を調整する。
【0012】
触媒の供給に関するさらに他の問題はチーグラー‐ナッタ触媒の流量を適切に制御するのが難しいという点にある。従って、チーグラー‐ナッタ触媒の流量は一定の運転条件下では一般に固定しており、触媒の供給システムは流量の変化を考慮に入れていない。
【0013】
触媒の流量を制御することができるシステムも開示されている。例えば下記文献には希釈した触媒スラリーを重合反応装置に連続的にポンプ輸送することで微粒子固体の連続流を反応装置に供給するシステムが開示されている。
【特許文献5】米国特許第5,098、667号明細書
【0014】
希釈したスラリーの流量を連続的に操作して反応装置に送られるスラリー中の固体粒子の流量を所望値に維持する。下記文献には触媒の供給速度を操作することによって重合反応装置から取出す反応廃液中の未反応モノマー濃度を維持するシステムが開示されている。
【特許文献6】米国特許第4,619、901号明細書
【0015】
このシステムの欠点はシステムが複雑であることと、触媒スラリー特性および重合条件を正しく測定しなければならないことにある。
反応装置への触媒の供給に関する他の問題は重合反応中、助触媒を供給しなければならない点にある。チーグラー触媒系の活性は助触媒として使用する有機金属化合物の量を増加させると改善されることが分っている。この場合、一般に助触媒として比較的多量の有機金属化合物を重合で使用する必要がある。しかし、これらの化合物は空気に触れると自然発火するため、安全上不利である。
【0016】
助触媒の導入方法は種々提案されている。その1つの方法は例えば重合反応装置中に助触媒を直接導入する方法である。しかし、この方法では反応装置に入れる前にチーグラー‐ナッタ触媒を助触媒と接触させることができない。効果的なチーグラー−ナッタ混合物を得るためには予め接触させることが特に望ましい。
【0017】
他の方法は導入前に触媒と助触媒を重合媒体中に導入する方法である。例えば、下記文献には希釈剤との混合物を重合反応装置中に入れる前に、チーグラー‐ナッタ触媒をアルミニウムアルキル助触媒と接触させるシステム及び方法が開示されている。
【特許文献7】米国特許第3,726、845号明細書
【0018】
しかし、この方法では触媒との予備接触時間の制御が難しい。しかも、触媒と助触媒との予備接触が不十分であると望ましくないワックスが形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の全体的な目的は、重合反応装置中への触媒の導入を最適化する方法を改良することにある。
本発明の一つの目的は、ポリエチレンを製造する重合反応装置中へのチーグラー‐ナッタ触媒の供給方法を最適化することにある。
本発明の特に重要な目的は、ポリエチレンを製造する重合反応装置中への触媒、特にチーグラー‐ナッタ触媒の流量を制御する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリエチレンを製造する重合反応装置中へ助触媒と予備接触した触媒、特にチーグラー‐ナッタ触媒を供給する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、重合反応装置中に最適化されたチーグラー‐ナッタ触媒−助触媒混合物を供給する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、触媒スラリー、特にチーグラー‐ナッタ触媒を調整し、それを制御され且つ有効な方法で重合反応装置中に触媒スラリー供給するための装置を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、適切な触媒−助触媒混合物を調製し、それを制御され且つ有効な方法で重合反応装置中に供給するための装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の観点から、本発明は下記(a)〜(d)の段階から成る触媒の供給を最適化する方法に関するものである:
(a)重合反応で使用するのに適した濃度の固体触媒を炭化水素の希釈剤中に含む触媒スラリーをタンク中で調製し、
(b)得られた触媒スラリーを上記タンクからバッファータンクへ送り、その中に貯蔵し、
(c)このバッファータンクから管路を介して所定流速で上記触媒スラリーを重合反応装置へ供給し、
(d)上記触媒スラリーを重合反応装置中に供給する前に、所定量の助触媒を上記触媒スラリーと接触させる。
本発明の特徴は、重合反応装置に所定の触媒−助触媒混合物を供給する点にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
特に、本発明方法では触媒スラリーを反応装置に供給する前に所定の時間、適切な量の助触媒を触媒スラリーと接触させる。本発明方法では助触媒を反応装置に直接供給する場合より、接触がよくなり、より良い触媒−触媒混合物が形成される。反応装置へ適切な助触媒−触媒混合物を供給することによって反応装置での重合反応をより良く制御でき、均一性のレベルも向上する。また、触媒と助触媒とを予備接触させることによって最終重合製品の粒子形状(granulometry)が良くなり、かさ密度が向上し、重合反応装置中での重合製品の沈殿効率が良くなる。本発明方法は噴射時の触媒−助触媒比をより正確に制御できる。驚くことに、重合反応装置中へ噴射する前に触媒スラリーへ助触媒を加えても噴射手段やスラリーの輸送ラインの閉塞はない。
【0022】
本発明方法の特徴は、触媒スラリーと助触媒との接触時間を充分かつ確実に制御できることにある。助触媒はバッファタンク中で触媒スラリーに供給することができ。これは触媒と助触媒との間の予備接触時間を比較的長くする必要がある場合に適している。あるいは、本発明方法ではバッファータンクを重合反応装置に接続している上記管路中で触媒スラリーと助触媒、好ましくは上記定義の助触媒とを接触させることができる。
【0023】
本発明の好ましい一実施例では、重合反応装置とバッファータンクとを接続する管路中での触媒スラリーと助触媒との接触時間を長くするために、管路の容積を局所的に大きくする。本発明方法では重合反応中へ噴射する前の触媒と助触媒との予備接触時間を制御することで望ましくないワックスの形成を効果的に避けることができる。ワックスが形成されると触媒スラリーの供給管路が詰まり、それによって触媒の供給が懸濁されてしまう。
【0024】
本発明はさらに、触媒の供給を完全に制御可能な流量で供給することができる、反応装置への触媒スラリーの供給方法を提供する。特に、本発明はバッファータンク中の触媒スラリーのレベルを制御する方法を提供する。本発明のより好ましい実施例ではバッファータンク中の触媒スラリーのレベルを実質的に一定の適切なレベル、好ましくはタンク容積の80〜90%に維持する。実際的にバッファータンク中の触媒スラリーのレベルは、スラリーを調製するタンク(従って、変動する量のスラリーを含む)をバッファータンクに接続することによって実質的に一定に維持する。この接続をすることによってバッファータンク中のスラリーのレベルが適切なレベル以下に下がったときに、タンクからバッファータンクにスラリーを移送することができる。所定濃度を有する触媒スラリーをバッファータンク中に実質的に一定のレベルに制御することによって重合反応装置への触媒スラリーの供給を制御することができる。
【0025】
本発明の他の好ましい実施例では、反応装置中の反応物質の濃度を求めることによって反応装置への触媒スラリーの流量を正しく制御する。反応装置への触媒の供給は反応装置の重合反応の関数で微調整するのが好ましい。反応装置中の重合速度は反応装置中への触媒の送り速度を制御することによって制御できる。この観点から、反応装置へは触媒スラリーが適切かつ最適な濃度で適切な送り速度で送られ、その結果、重合反応装置中の生産性および重合製品の濃度(コンシステンシー)が大幅に改善され、重合反応で生じる重合製品の品質および性質の変動を実質的に避けることができる。実際にはバッファータンクを反応装置に接続している管路にポンプ手段を設け、このポンプ手段を反応装置中の反応物質の濃度の関数で調節することで反応装置への触媒の供給を重合反応の関数で微調整することができる。
【0026】
本発明の他の観点から、本発明は、下記(a)〜(d)を有する触媒を重合反応装置(1)へ供給する装置に関するものである:
(a)重合反応で使用するのに適した濃度の固体触媒を炭化水素の希釈剤中に含む触媒スラリーを調製するタンク、
(b)上記タンクに連結された一つまたは複数の管路と触媒スラリーを重合反応装置へ供給するための一つまたは複数の管路とを有する、重合反応で使用するのに適した濃度の触媒スラリーを貯蔵するバッファータンク、
(c)このバッファータンクから重合反応装置への上記触媒スラリーの移送および供給を制御するための、上記管路上に設けたポンプ、
(d)少なくとも一つの助触媒貯蔵装置タンクと、この助触媒貯蔵装置タンクから助触媒を上記タンクおよび/または一つまたは複数の管路へ移送するための管路とを有する、重合反応装置へ触媒スラリーを供給する前に、所定量の助触媒を触媒と接触させるための助触媒分配システム。
【0027】
本発明は、重合反応で用いる所定濃度の触媒スラリーを調製するための装置を提供する。触媒はタンクで調製され、このタンクに加えられる炭化水素の希釈剤はスラリーが0.1〜10重量%の間の適切な濃度を有するように制御される。さらに、本発明装置は重合反応装置中へ触媒スラリーを制御された方法で供給する。従って、本発明装置はバッファータンクを備え、このバッファータンク中のスラリーの量は実質的に一定レベル、好ましくはタンク容積の80%〜90%の間に維持され、それによって、バッファータンクから反応装置へのスラリーの移送の変動を避けることができる。バッファータンク中のスラリーの量が適切なレベル以下に下がった時にバッファータンクにスラリーを絶えず補充することによってバッファータンク中のスラリーの量を上記の実質的に一定レベルに維持することができる。
【0028】
本発明はさらに、反応装置への触媒流を反応物の濃度および反応装置中の重合反応の関数で調整することができる装置を提供する。本発明装置はバッファータンクから反応装置へ触媒スラリーを供給するためのポンプ手段を各管路上に有する。このポンプ手段を用い、フィードバック機構を用いることによって反応装置中の反応物質の濃度の関数で反応装置への触媒の流量を調整し、微調整することができる。
【0029】
本発明は反応装置への触媒供給方法を最適化し、それを可能にする設計が単純で、構造が頑丈で、経済的に製造可能な装置を設けることによって、反応装置中の重合反応を最適化する方法を提供する。「重合反応を最適化する」とは重合反応の効率を改善し、および/または、得られた重合製品の品質を改良することを意味する。
【0030】
本発明方法および装置はエチレンの重合方法、特にビモダル(bimodal)なポリエチレンの製造方法で特に有益である。
本発明を特徴付ける各種機能は特許請求の範囲(その内容は本発明の一部を成す)に記載されている。以下、本発明のよりよい理解のために、本発明の好ましい実施例を示す添付図面を参照して本発明の運転方法の利点およびその使用目的等を説明する。
【0031】
本発明は重合反応装置へ触媒を供給する方法に適用できる。以下では特に、エチレンを重合する重合反応装置へ触媒を供給する方法に関して本発明を説明する。エチレンの重合プロセスは例えばループ反応装置で実行できる。「エチレン重合」としてはエチレンの単独重合、エチレンと高次1−オレフィン、例えば1−ブテン、1-ペンテン、1-オクテンまたは1-デセンのようなコモノマーとの共重合がなるが、これらに限定されるものではない。このエチレン重合ではモノマーのエチレン、軽質炭化水素の希釈剤、触媒、任意成分のコモノマーおよび水素を含む反応物を反応装置へ送る。本発明の一実施例では、コモノマはヘキセンであり、希釈剤はイソブタンである。
【0032】
本発明の特に好ましい実施例では、本発明方法でビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造する重合反応装置中へ触媒が供給される。「ビモダル(bimodal)ポリエチレンPE」とは互いに直列に接続された2台の反応装置を使用して製造されるPEを意味する。しかし、本発明方法は他のタイプの重合反応装置への触媒の供給を最適化するのにも同様に適用できるということは理解できよう。
【0033】
「触媒」とは反応で自分自身は消費されずに共重合反応の速度を変える物質と定義できる。本発明の一実施例では触媒はチーグラー‐ナッタ触媒にすることができる。
【0034】
「チーグラー‐ナッタ触媒」は好ましくは一般式:MXnで表される。ここで、Mは第IV族〜第VII族から選択される遷移金属化合物、Xはハロゲン、nは金属の原子価数である。Mは第IV族、第V族または第VI族金属であるのが好ましく、好ましくはチタン、クロムまたはバナジウムであり、最も好ましくはチタンでる。Xは塩素または臭素であり、最も好ましくは塩素である。この遷移金属化合物の例はTiC13、TiC4であるが、これに限定されるものではない。本発明の特に好ましい実施例の触媒は四塩化チタン(TiC4)触媒である。
【0035】
チーグラー−ナッタタイプの触媒は一般に担体上に支持され、例えば固体結晶担体上に堆積される。担体はチーグラー‐ナッタ触媒成分に対して化学的に不活性な不活性固体でなければならない。担体はマグネシウム化合物であるのが好ましい。触媒成分の担体として用いることができるマグネシウム化合物の例はハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化ジアルコキシマグネシウム、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよびマグネシウムカルボキシレートである。
【0036】
「助触媒」とは他の触媒と一緒にして活性を改善でき、重合反応での他の触媒の能力を改善できる触媒と定義できる。本発明の好ましい実施例の助触媒はチーグラー‐ナッタ触媒と一緒に使用するのに適した触媒である。この助触媒はチーグラー‐ナッタ触媒の重合活性を促進するのに用いられる。本発明では周期律表の第I〜III族の有機化合物を助触媒として使用できる。特に好ましい実施例でチーグラー‐ナッタ触媒と一緒に使用するのに適した触媒は一般式:AIR3またはAIR2Yを有する有機アルミニウム化合物であり、この化合物はハロゲン化されていてもよい(ここで、Rは1〜16の炭素原子を有するアルキルであり、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、Yは水素またはハロゲンである)。助触媒の例はトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−ヘキシルアルミニウム、ジエチル塩化アルミニウムまたはジエチルアルミニウムエトキシドであるが、これらに限定されるものではない。本発明で特に好ましく用いられる助触媒はトリ−イソブチルアルミニウム(TIBAL)である。
【0037】
以下、チーグラー‐ナッタ触媒、特に四塩化チタン(TiCl4)触媒を重合反応装置へ供給してそこでエチレンを重合する方法および装置に関して本発明を説明する。チーグラー‐ナッタ触媒用の助触媒としてはトリ−イソブチルアルミニウムを用いる。しかし、本発明装置が上記以外のタイプの触媒および助触媒にも適用できるということは明らかである。
【0038】
「触媒スラリー」とは触媒固体粒子が希釈剤中に懸濁した組成物をいう。本発明の好ましい実施例の触媒スラリーでは触媒固体粒子がチーグラー‐ナッタ触媒の固体粒子で、希釈剤がイソブタンである。
【0039】
以下で説明する装置は一つの触媒を調整し、それを噴射するのに必要な装置である。2つ以上または互いに異なる触媒を反応装置へ供給する必要がある場合には、本発明の装置を2つ以上用いるか、ブレンドした触媒を作り、それを一つの本発明装置を用いて供給することができる。さらに、2つ以上の反応装置を使用する場合には、一つまたは2つ以上の反応装置で本発明の装置を使用して供給することができるということは明らかである。
【実施例】
【0040】
[図1]は本発明装置の好ましい実施例を示している。本発明の装置は一般に、触媒スラリーを調製するためのタンク3と、この触媒スラリーを重合反応に適した濃度で収容するためのバッファータンク4とを有している。触媒スラリーはバッファータンク4から一つまたは複数の管路8を介して反応装置1へ連続的にポンプを用いて供給される。[図1]では図を明瞭にするために一般的な弁、ポンプ、その他の構造は省略してある。これらは当業者に周知のものである。
【0041】
チーグラー‐ナッタ触媒TiCl4は固体で、一般に乾燥した形で市販のドラム20で供給される。乾燥した触媒粉末を収容したこのドラム20は一般に高圧で取扱うことはできない。このドラム中の圧力は例えば約1.1〜1.5バール、好ましくは1.3バールである。従って、適当なシステムを使用して触媒を上記ドラムから高圧での取扱に適した貯蔵タンク2へ送るのが好ましい。必要な場合には希釈剤を使用して送る。使用する希釈剤によっては貯蔵タンク2中で触媒を高圧条件下に置くことが要求される。これは例えばイソブタンを使う場合である。すなわち、この希釈剤は高圧下のみで液体である。希釈剤としてヘキサンを使用した場合、この希釈剤は低圧下で液体であるので、貯蔵タンク2は不要である。
【0042】
一般に、貯蔵タンク2はドラム20より大容量であり、ドラム20より高圧下、好ましくは1.1〜16バールの圧力下で取扱うことができる。この貯蔵タンク2のパージは窒素で行い、フレア中に脱気するのが好ましい。好ましい実施例ではチーグラー‐ナッタ触媒がドラム20から貯蔵タンク2へ供給されるが、別の実施例ではチーグラー−ナッタ触媒が1.1〜16バール、好ましくは6バールの高圧での取扱に適した商用コンテナで提供される。その場合には貯蔵タンク2は使用する必要がなく、触媒は商用コンテナから準備タンク3中へ直接送ることができる。
【0043】
本発明では上記タンク3中で適切な濃度の触媒スラリーが調製される。触媒スラリーは炭化水素の希釈剤中に固体触媒を含むものである。触媒としてTiCl4を使用した場合、触媒を薄めて触媒スラリーを得るためにヘキサンまたはイソブタンのような炭化水素を用いることができる。しかし、触媒を調製するために希釈剤としてヘキサンを使用した場合の望ましくない最大の欠点はヘキサンの一部が最終ポリマー製品中に残ることである。これに対してイソブタンは取扱い、清浄化および重合プロセスでの再利用がヘキサンより簡単になる。例えば、エチレンの重合プロセスでは反応の希釈剤としてイソブタンが加えられるので、触媒用希釈剤として使用したイソブタンは重合プロセスで簡単に再利用できる。従って、好ましい実施例ではTiCl4触媒の希釈剤としてイソブタンが使われる。特に好ましい実施例では純粋なイソブタンを用いて触媒が調整される。一般に、イソブタンは大気圧下、室温で気体の形で存在する。触媒スラリーの調製用に液体のイソブタンを得るためには圧力を上げる必要がある。従って、固体触媒粒子を貯蔵タンク2へ供給し、そこからタンク3へ送り、このタンク3の圧力を上げるのが好ましく、7〜16バール、好ましくは8バールの圧力を加えることができる。
【0044】
貯蔵タンク2からタンク3へのチーグラー‐ナッタ触媒の移送は重力で行うのが好ましい。貯蔵タンク2からタンク3へチーグラー‐ナッタ触媒を移す前にタンク3中にイソブタンを加える。タンク3はこの希釈剤を供給するための入口15を備えている。タンク3に希釈剤を充填した後、貯蔵タンク2を空にする。貯蔵タンク2中に触媒が残るのを避けるために貯蔵タンク2をイソブタンでフラッシュして、残った触媒を準備タンク3中へ移す。この準備タンク3中での触媒スラリーの均一性を維持するために準備タンク3には攪拌または混合手段12を設けて、攪拌を行う。
【0045】
触媒スラリーは炭化水素の希釈剤中に固体触媒を0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%、さらに好ましくは3〜4重量%の濃度で含むように調製する。この濃度に希釈された触媒スラリーに調製することによって、以下で詳細に説明するように、メンブレンポンプ5を使用して反応装置1中へ触媒スラリーを噴射することができるようになる。上記以外の触媒スラリー濃度の場合には、上記とは違う他のタイプのポンプ手段を用いることができるということは理解できよう。
【0046】
タンク3中で均質なチーグラー‐ナッタ触媒スラリーが調製された後に、タンク3をバッファータンク4に接続している一つまたは複数の管路7を介して触媒スラリーをタンク3から触媒スラリーをバッファータンク4へ移す。タンク3からバッファータンク4への移送ラインには制御弁16がある。移送は手動または自動で行なうことができる。タンク3からバッファータンク4への触媒スラリーの移送はポンプ手段によって制御された管路7で実行するのが好ましい。このポンプ手段はディップポンプ(dip punp)から成るのが好ましい。バッファータンク4中の触媒スラリーの量が一定レベル以下に下がった時にタンク3で調製された触媒スラリーをポンプでバッファータンク4へ送ることによって、バッファータンク4中の触媒スラリーの量を実質的に一定レベルに保つのが好ましい。
【0047】
本発明の好ましい実施例ではタンク3中で調製される触媒スラリーの量は変動する。本発明の好ましい実施例ではタンク3中のレベルが20%以下、好ましくは35%以下になったときに貯蔵タンク2からチーグラー‐ナッタ触媒がタンク3へ送られる。このレベルが低い値になると、タンク3中の触媒スラリーの濃度が望ましくない変動(fluctuation)をし、バッファータンク4(ここでは触媒スラリーが実質的に一定レベルに維持される)への触媒スラリーの移送が中断される原因になり、結果的に、バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルも変動する。これは本発明では望ましくない。
【0048】
タンク3中の触媒スラリーの量が変化しても、バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルは実質的に一定である。すなわち、一定レベル以上の一定範囲内にある。バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルはそのタンク容積の40〜100%、好ましくは60〜95%、より好ましくは80〜90%の実質的に一定のレベルにある。こうした実質的に一定のレベルを維持するためには、バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルが40%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは80%以下になったときに触媒スラリーをタンク3からバッファータンク4へ移す。
【0049】
本発明の一つの実施例ではバッファータンク中の触媒スラリーのレベルを圧力の計測、すなわち、タンクの下部および上部の圧力を測定することで決定することができる。
【0050】
バッファータンク4は充分な触媒スラリーを収容するのに十分な大きさであり、一日のタンク容量(day vessel capacity)が新しいバッチを調製する時間に等しくなるような十分な大きさである。そうすることで連続生産が可能になり、重合反応で触媒を使用することができる。本発明の他の好ましい実施例では、バッファータンク4中の圧力が6〜16バール、好ましくは約7バールに維持される。
【0051】
廃触媒は制御弁21を備えた管路を介して一つまたは複数のダンプタンク10へ送られる。準備タンク3およびバッファータンク4を空にするときには共通または個別のダンプタンク10へ送ることができる。ダンプタンク1 0は上記タンク3およびバッファータンク4より大きくするのが好ましい。望ましくない触媒が調整された場合には各タンク3、4を空にするためにダンプタンク10へ送る。ダンプタンク10は蒸気ジャケットを有する加熱タンクにして、希釈剤のイソブタンを蒸気にするのが好ましい。イソブタンを脱着(desorbing)するために蒸気ジャケットが好ましい。蒸発した希釈剤は蒸留塔またはフレアへ送る。蒸発した希釈剤の移送時に触媒成分が移送されるのを避けるためにダンプタンク10にガードフィルタを備える。ダンプタンク10はタンク中の圧力を制御するための圧力調節手段も備えている。希釈剤を蒸発させた後に残る廃触媒は好ましくはダンプタンク10の低部に設けた抜き出し装置を介してダンプタンク10から抜き出す。除去した廃触媒はドラム中に入れ、さらに処理する。
【0052】
チーグラー‐ナッタ触媒スラリーはバッファータンク4から一つまたは複数の管路8を介して反応装置1へ後移される。管路8の直径は0.3〜2cm、好ましくは0.6〜1cmにする。各管路8はポンプ手段5を備え、各ポンプ手段5はチーグラー‐ナッタ触媒スラリーの反応装置1への移送および噴射を制御する。特に好ましい実施例では、ポンプ手段はがメンブレンポンプである。
【0053】
[図2]に示すように、各管路8はバッファータンク4から好ましくは10°以上の角度、さらに好ましくは30°以上の角度で上方へ向かって延びるのが好ましい。さらに、各管路8はポンプ手段5の下流で触媒スラリーを10°以上の角度で下方へ導く管路を有しているのが好ましい。この構成にすることによってポンプ手段5の作用を改良することができ、ポンプ手段5中での触媒スラリーの閉塞を防ぐことができる。すなわち、この構造にすると、ポンプ手段5が止まっている時または中断時に触媒スラリーがポンプ手段5中で沈殿する傾向がなくなる。
【0054】
[図2]に示するように、管路8はメンブレンポンプ5の入口および出口の両側に脈動緩衝装置、安全弁およびイソブタンフラッシング手段17をさらに備えている。イソブタンフラッシング手段17は管路8へイソブタンをフラッシュして、管路8およびポンプ手段5が閉塞しないようにする。バッファータンク4を複数の管路8を用いて反応装置1に接続している場合には、一般に、作動しているポンプ手段5を有する管路をアクティブにし、他の管路8およびポンプ手段5はスタバイ(待機)モードにする。後者の場合、管路8は開放したままにし、そのポンプ手段5は適切な希釈剤流で絶えずフラッシュしておくのが好ましい。
【0055】
一般に、リークの危険を減らすために、触媒はバッファータンク中に反応装置(約43バール)中より低い圧力の約7バールで貯蔵する必要がある。管路8の圧力は45〜65バールにするのが好ましい。充分な圧力下で触媒を反応装置へ送るためには、タンク3およびバッファータンク4中の圧力値に比較して上記のような高い圧力にするが必要がある。
【0056】
反応装置への触媒の流れを正しく制御し、触媒スラリーを制御された一定の流れで反応装置へポンプ輸送することが重要である。反応装置への流れが予想外の流れをすると反応が暴走する危険がある。また、反応装置への流れが変動すると効率が停止し、製品の品質が変動する。従って、本発明の好ましい実施例では、噴射ポンプ5の流量を反応装置の活性で制御する。ポンプ手段は反応装置中の反応物質の濃度の関数で制御することができる。この反応物質の濃度は反応装置中のモノマーすなわちエチレンの濃度にするのが好ましいが、他の反応物の濃度、例えば反応装置中のコモノマーまたは水素の濃度の関数でポンプ手段を制御することもできるということは明らかである。ポンプ手段5を用いることで本発明は触媒流を良好に制御できる。特に、反応装置へのチーグラー‐ナッタ触媒の流量は、ダイヤフラムポンプのストロークおよび/または周波数を調整することで制御できる。ポンプ流量を反応装置中のエチレンの濃度で制御することもできる。すなわち、反応装置中のエチレン濃度が高い場合に多くの触媒を反応装置へ送り、その逆の場合には逆にする。このように、エチレンの重合速度の変化を考慮に入れることで実際の生産性および製品の品質は大幅に変動しない。
【0057】
さらに、管路8には管路8中の触媒の流量を容易に測定する手段9が備えられている。この流量測定手段9はポンプ手段5の下流に設けたコリオリ(Coriolis)フローメータであるのが好ましい。
【0058】
本発明のさらに他の実施例では、反応装置へ触媒スラリーを供給する前に、触媒スラリーと助触媒とを接触させる助触媒分配システムを備えている。チーグラー‐ナッタ触媒を使用する場合、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を助触媒として使用するのが好ましい。この助触媒は実際の触媒として作用する。このさとは助触媒が反応装置中での重合反応に参加することを意味する。
【0059】
助触媒分配システム13は助触媒を調製し、収納するための2つの助触媒貯蔵タンクを有する。その1つのタンクは高レベルの助触媒を有し、管路14を介して準備タンク3へ助触媒を供給する。このタンクを管路8に連結して、この管路8へ助触媒を供給することもできる。他のタンクは管路14を介して管路8に連結され、[図2]に図示したように、助触媒を管路8へ送る。
【0060】
チーグラー‐ナッタ触媒とTIBAL助触媒との間の接触時間およびチーグラー‐ナッタ触媒とTIBAL助触媒の比は、最終重合製品の粒度分布だけでなく、活性に重要な影響を与える。TIBAL助触媒を使用するとより大きいポリエチレン粒子と活性が得られる。また、チーグラー‐ナッタ触媒とTIBAL助触媒とを予備接触させることでかさ密度が向上し、重合反応装置中で得られるポリエチレンの沈殿効率が向上する。必要な予備接触時間に応じて、チーグラー‐ナッタ触媒とTIBAL助触媒との間に長い予備接触時間が必要な場合にはタンク3へ適切な量のTIBAL助触媒を噴射し、チーグラー‐ナッタ触媒とTIBAL助触媒との間の予備接触時間が短くてよい場合には、ダイヤフラムポンプ5の下流で、反応装置1に入る前に、管路8に適切な量のTIBAL助触媒を噴射する。
【0061】
一般に、助触媒は商用ドラムに入れて提供される。TIBAL助触媒は一般に助触媒分配システム13の貯蔵装置タンク中にヘキサン溶液の形に保存されるが、純粋な形で保存することもできる。TIBAL助触媒は貯蔵装置タンクから助触媒噴射管路14を介してバッファータンク4と反応装置1とを連結する管路8中へ移される。この管路14はダイヤフラムポンプ5の下流かつ反応装置1の上流で管路8中に開口している。管路8に流量測定手段9が設けられている場合には、助触媒は管路14を介してこの流量測定手段9の下流で管路8へ供給するのが好ましい。
【0062】
TIBALを管路8中へ噴射する場合の噴射位置は、反応装置中へ供給する前に触媒と一定の予備接触時間が得られるように、反応装置から一定の距離の所にする。チーグラー‐ナッタ触媒スラリーとTIBAL助触媒との間に充分な予備接触時間、例えば5秒〜2分、好ましくは5秒〜1分間の予備接触時間を必要とする場合には、管路8の助触媒分配システムの噴射位置の下流に小さい接触タンク11を設ける。この接触タンク11は管路8に垂直に配置するのが好ましい。この接触タンクを攪拌することもできる。
【0063】
接触タンクは管路8の直径より少なくとも1.5倍〜50倍大きな直径を有する管路から成るのが好ましい。例えば管路8の直径の2、3、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50倍である。好ましい実施例では管路8の直径は0.3〜2cm、好ましくは0.6〜1cmであり、接触タンク11の直径は1〜15cm、好ましくは6〜9cmである。
【0064】
本発明方法で運転されるさらに好ましい実施例では、ライン、タンク、ポンプ、弁、その他の全てを窒素または希釈剤、例えばイソブタンでフラッシュすることによって閉塞を防ぐことができる。閉塞またはブロックを避けるために、必要なフラッシュ/パージ手段およびラインを本発明装置に設けることができるということは理解できよう。
【0065】
本発明の装置を使用した装置の実施例では、80kgのチーグラー‐ナッタ触媒の固体を収容したドラムを約2000kgの希釈剤のイソブタンで希釈する。この量の触媒で約1.000000 kgのポリエチレンを製造することができ、こうして調整した触媒を4〜5日間、反応装置へ低速速で送ることができる。
【0066】
本発明の他の実施例では、触媒スラリーが制御下に反応装置へ噴射される。この場合には、触媒スラリーを反応装置へ移送するための管路8に一つまたは複数の弁、好ましくはピストン弁18を設ける。[図2]に示すように、このピストン弁は管路8を反応装置1に接続するオリフィスを密封する役目をする。触媒スラリーを反応装置へ移送するのに複数の管路8を使用した場合、アクティブな管路8のポンプ手段だけで反応装置へ触媒スラリーをポンプ輸送し、他の管路8のポンプは稼動せず、その管路はイソブタンでフラッシュするのが好ましい。
【0067】
本発明装置は単一の重合反応装置への供給に使用できるが、本発明の好ましい実施例では本発明装置は直列に接続された第1と第2の反応装置から成る液体充填式のループ反応装置から成る重合反応装置への供給に使用される。この場合、スラリーは第1の反応装置の一つまたは複数の沈殿レグを介して抜き出され、第2の反応装置へ送られる。この直列に連結した反応装置はビモダルなポリエチレンの製造に特に適している。
【0068】
貯蔵タンク2、タンク3、バッファータンク4および助触媒貯蔵分配システム13から成り、必要に応じてさらに一つまたは複数のダンプタンク10を有する本発明装置は上記の2つの反応装置に用いることができる。各管路8を第1および第2の反応装置に分けることができる。2つの異なる触媒を使用する場合には2つの触媒準備・噴射装置を使用することができる。
【0069】
以上の説明から明らかなように、各装置の種々の部品の寸法は重合反応装置の寸法に関係し、反応のサイズの関数で変更できるということは理解できよう。
【0070】
本発明の他の実施例では、反応装置1への触媒スラリーの供給を最適化する方法が下記(a)〜(d)からなる:
(a)重合反応で使用するのに適した濃度の固体触媒、好ましくはチーグラー‐ナッタ触媒を炭化水素の希釈剤中に含む触媒スラリーをタンク3中で調製し、
(b)得られた触媒スラリーを上記タンク3からバッファータンク4へ送り、その中に貯蔵し、
(c)このバッファータンク4から管路8を介して所定流速で触媒スラリーを重合反応装置1へ供給し、
(d)触媒スラリーを重合反応装置中に供給する前に、所定量の助触媒を上記触媒スラリーと接触させる。
【0071】
上記方法はポリエチレン、好ましくはビモダルなポリエチレンを製造する重合反応装置1への触媒の供給を最適化するための方法であるのが好ましい。
上記のように、助触媒と触媒を接触させることが必要な場合もある。その場合の本発明方法は、反応装置へ触媒スラリーを供給する前に、触媒スラリーと助触媒とを接触させる段階を有する点に特徴がある。助触媒は上記定義のアルミニウムをベースにした複合化合物であるのが好ましい。
【0072】
助触媒と触媒スラリーとの予備接触時間が比較的に長くする必要がある場合は、タンク3中で助触媒を触媒スラリーに加えることができる。あるいは、本発明方法では助触媒、好ましくは上記定義の助触媒を管路8中に存在する触媒スラリーと接触させる。助触媒分配システム13は貯蔵装置タンクと管路8を接続された管路14とから成るのが好ましい。
【0073】
本発明方法の他の好ましい実施例では、管路8の容積を局所的に大きくして管路8上での助触媒と触媒スラリーとの接触時間を長くする。管路の容積を局所的に大きくすることで助触媒と触媒との予備接触をより良くすることができる。触媒と助触媒とが予備接触は最終重合製品の粒度にポジティブな影響を与え、かさ密度および重合反応装置中での重合製品の沈殿効率を改善する。アクティブプロセス中に助触媒が触媒粒子とあまり長く接触すると、触媒活性が低下するだけではなく、実際に害が起ることもある。本発明方法を用いることによって助触媒/触媒の噴射比を正確に制御することができる。
【0074】
一般に、触媒スラリーは固体触媒から調製され、炭化水素希釈剤中に懸濁される。一般に商用ドラムで提供される固体触媒は触媒スラリーの製造には適さない条件、すなわち、極めて少量で提供されるか、希釈剤の使用に必要な圧力を上げることができない状態下にある。使用する希釈剤に応じたより高い圧力条件下に触媒を上げることが必要である。従って、本発明方法の好ましい実施例では貯蔵タンク2からタンク3に固体触媒を移し、そこで適切な濃度に希釈された触媒スラリーが調製される追加の工程を有している。あるいは、高圧で取扱うのに適した商用コンテナでチーグラー−ナッタ触媒を調節することもできる。この場合には貯蔵タンク2を使用する必要はなく、濃縮した触媒スラリーを商用のコンテナから準備タンク3に直接送ることができる。
【0075】
本発明方法ではバッファータンク4中の触媒スラリーのレベルを制御するのが好ましい。より好ましくは、バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルを実質的一定に維持する。これは2つのタンクすなわちタンク3とバッファータンク4とを用いることで可能になる。すなわち、タンク3ではスラリーを調製し、その内部では触媒スラリーの量は変動してもよく、バッファータンク4では実質的に一定量の触媒スラリー、好ましくはバッファータンク4の40%〜100%、特に60%〜95%、より好ましくは80%〜90の触媒スラリーを収容する。バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルは管路7を介して、特にポンプ手段の制御下に、バッファータンク4をタンク3に連結することで実質的に一定に維持することができる。すなわち、バッファータンク4中の触媒スラリーのレベルが上記の値より低下した時に管路7を介して触媒スラリーがタンク3からバッファータンク4までポンプ輸送される。この機構によって重合反応装置に影響を与える変動なしに触媒スラリーを連続的に供給することができる。従って、重合反応装置には適切な濃度で触媒スラリーが連続的に供給され、その結果、反応装置の重合反応効率も向上する。
【0076】
本発明方法の他の実施例では、反応装置1中の反応物質の濃度を求めることによって反応装置1への触媒スラリーの流量が適切に制御される。この反応物質の濃度は反応装置中のモノマー、特にエチレンの濃度であるが、他の反応物、例えば反応装置中のコモノマーまたは水素の濃度でもよい。実際には、バッファータンクから反応装置へ触媒スラリーを供給するために各管路にポンプ手段を設け、反応装置中の反応物質の濃度の関数で触媒の流量を調整することによって上記の機構を行なうことができる。
【0077】
既に述べたように、助触媒と触媒とを接触させる必要がある場合もある。従って、本発明方法は反応装置に触媒スラリーを供給する前に触媒スラリーと助触媒とを接触させる段階をさらに有している。助触媒は上記定義のアルミニウムベースの化合物にするのが好ましい。
【0078】
触媒と助触媒との間に比較的長い予備接触時間が必要な場合には、タンク3中の触媒スラリーに助触媒を供給することができる。または、助触媒、好ましくは上記定義の助触媒を管路8中に存在する触媒スラリーと接触させる。助触媒分配システム13は貯蔵装置タンクと管路8に接続された管路14とを有する。本発明方法の他の好ましい実施例では、管路8の容積を局所的に大きくして管路8中での触媒スラリーと助触媒との接触機会を大きくする。管路の容積を局所的に大きくすることによって助触媒と触媒との予備接触をより良くすることができる。
【0079】
触媒と助触媒とを予備接触することで最終重合製品の粒径分布(granulometry)にポジティブな影響が与えられ、かさ密度および重合反応装置無しの重合製品の沈殿率が改善する。活性化プロセス中に助触媒と触媒粒子と接触させ過ぎると触媒活性が低下するだけではなく、実際に害が生じる。本発明方法では触媒/助触媒の噴射比を正確に制御することができる。
【0080】
本発明方法のさらに他の好ましい実施例では、管路8を介してバッファータンク4から反応装置1へ適切な流量で触媒スラリーを連続的に供給する。特に、本発明の好ましい実施例では触媒流を中断することなしに触媒を反応装置へ連続的に供給することができる。本発明方法のさらに他の好ましい実施例では、反応装置へ送られる触媒の流量を流量測定手段、好ましくはコリオリ(Coriolis)フローメータを用いて正確に測定する。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、当業者は合理的な変更および修正を行なうことができ、そうした変更は本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】触媒を調製し、それを重合反応装置中へ供給するための本発明の好ましい実施例の装置の概念図。
【図2】本発明装置で助触媒を触媒スラリーと接触させるためのシステムの詳細図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d):
(a)重合反応で使用するのに適した濃度の固体触媒を炭化水素の希釈剤中に含む触媒スラリーをタンク(3)中で調製し、
(b)得られた触媒スラリーを上記タンク(3)からバッファータンク(4)へ送り、その中に貯蔵し、
(c)このバッファータンクから管路(8)を介して所定流速で上記触媒スラリーを重合反応装置(1)へ供給し、
(d)上記触媒スラリーを重合反応装置中に供給する前に、所定量の助触媒を上記触媒スラリーと接触させる、
段階から成る触媒スラリーの供給を最適化する方法において、
重合反応装置(1)中の反応物、好ましくはエチレンの濃度を求め、触媒を所定の流速で重合反応装置(1)へ供給し、
上記触媒は一般式:MXnで表されるチーグラー‐ナッタ触媒(ここで、Mは第IV〜VII族の中から選択される遷移金属化合物であり、Xはハロゲンであり、nは金属の原子価である)であり、
上記バッファータンク(4)中の触媒スラリーのレベルを実質的に一定に維持する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
管路(8)中に存在する触媒スラリーと助触媒を接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記管路(8)の容積を局所的に大きくすることによって上記管路(8)中の触媒スラリーと助触媒との接触時間を長くする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
助触媒が一般式:AIR 3またはAIR 3 Yで表される有機アルミニウム化合物(ここで、Rは1〜16の炭素原子を有するアルキルで、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、Yは水素またはハロゲンである)であり、この化合物は必要に応じてハロゲン化されていてもよい、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
バッファータンク(4)中の触媒スラリーのレベルをタンク容積の80%〜90%に維持する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
固体触媒を所定圧力で収容している貯蔵タンク(2)から固体触媒を上記タンク(3)へ移す段階をさらに有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
触媒スラリーをバッファータンクから反応装置(1)へ管路(8)を介して所定の流速で連続的に供給する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
下記(a)〜(d)を有する触媒を重合反応装置(1)へ供給する装置:
(a)重合反応で使用するのに適した濃度の固体触媒を炭化水素の希釈剤中に含む触媒スラリーを調製するタンク(3)、
(b)上記タンク(3)と連結した一つまたは複数の管路(7)と触媒スラリーを重合反応装置(1)へ供給するための一つまたは複数の管路(8)とを有する、重合反応で使用するのに適した濃度の触媒スラリーを貯蔵するバッファータンク(4)、
(c)このバッファータンク(4)から重合反応装置(1)への上記触媒スラリーの移送および供給を制御するための、上記管路(8)上に設けたポンプ、
(d)少なくとも一つの助触媒貯蔵装置タンクと、この助触媒貯蔵装置タンクから助触媒を上記タンク(3)および/または一つまたは複数の管路(8)へ移送するための管路(14)とを有する、重合反応装置(1)へ触媒スラリーを供給する前に、所定量の助触媒を触媒と接触させるための助触媒分配システム。
【請求項9】
上記管路(8)中での触媒スラリーと助触媒との接触時間を長くするための接触タンク(11)を有する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
上記接触タンク(11)が上記管路(8)上で助触媒分配装置(13)の噴射位置の下流の位置にある請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
上記接触タンク(11)が上記管路(8)上に垂直に配置されている請求項8〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
上記接触タンク(11)が攪拌されている請求項8〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
上記接触タンク(11)が上記管路(8)の直径の少なくとも1.5か50倍の直径を有する管路を有する請求項8〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
上記タンク(3)をバッファータンク(4)に連結している上記管路(7)がポンプ手段によって制御されるパイプを有する請求項8〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
上記管路(8)上に設けたポンプ手段(5)が重合反応装置(1)中の反応物質の濃度の関数で制御される請求項8〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
上記管路(8)中の触媒の流量を測定するための流量測定手段(9)をさらに有する請求項8〜15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
固体触媒を所定圧力で収容し且つ固体触媒を貯蔵タンク(2)へ移すための貯蔵タンク(2)を有し、この貯蔵タンク(2)は管路(6)を介してタンク(3)と連通している請求項8介して16のいずれか一項に記載の装置
【請求項18】
重合反応装置(1)がポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造するための装置である請求項8〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
触媒が一般式:M Xで表されるチーグラー‐ナッタ触媒(ここで、Mは第IV〜VII族から選択される遷移金属化合物であり、Xはハロゲンであり、nは金属の原子価である)である請求項8〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
助触媒が一般式AlR3またはAlR2Yを有する有機アルミニウム化合物(ここで、Rは炭素原子数が1〜16のアルキルであり、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、Yは水素またはハロゲン)である。必要に応じてハロゲン化されていてもよい請求項8〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
請求項8〜20のいずれか一項に記載の装置の、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造するための重合反応装置(1)へのチーグラー‐ナッタ触媒の供給を最適化するための使用。
【請求項22】
請求項8〜20のいずれか一項に記載の装置の、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造するための重合反応装置(1)へ触媒−助触媒混合物の供給を最適化するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−522311(P2007−522311A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552614(P2006−552614)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050538
【国際公開番号】WO2005/079971
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】