説明

重合反応装置への触媒スラリーの調整・供給方法および装置

【課題】本発明は、ポリエチレンのループ重合反応装置への触媒スラリーの調整および供給する装置と、ポリエチレンを製造するための重合反応装置への触媒スラリーの噴射を制御する装置と、重合反応装置への触媒スラリーの触媒供給を最適化する方法に関するものである。
【解決手段】本発明の特徴は、希釈した触媒スラリーを反応装置(1)中の反応物の濃度の関数で制御されるメンブレンポンプ(5)を用いて反応装置(1)へ移送する点にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は触媒反応に関するものである。
本発明の第1の観点から、本発明は触媒スラリーを調製し、重合反応装置に供給するための装置に関するものである。
本発明はさらに、重合反応装置への触媒のフィード(供給)を制御するための装置に関するものである。
本発明の他の観点から、本発明は重合反応装置への触媒スラリーの供給を最適化するための方法に関するものである。
本発明のさらに他の観点から、本発明は重合反応装置への触媒のフィードを制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)はエチレン(CH2=CH2)モノマーと任意成分の高次1-オレフィンコモノマー、例えば1-ヘキセン、1-オクテンまたは1−デセンとの重合で製造される。PEは安価、安全であり、大抵の環境に安定かつ加工が容易であるため多くの用途で有用である。一般に、PEは合成法によっていくつかのタイプ、例えばLDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線形低密度ポリエチレン)およびHDPE(高密度ポリエチレン)に分類できる。各タイプのポリエチレンは互いに異なる性質と特性を有している。
【0003】
オレフィン、例えばエチレンの重合、特気相重合プロセスではオレフィンモノマーを触媒と、使用する触媒に応じた任意成分の助触媒とを用いて重合するということは公知である。ポリオレフィン、特にポリエチレンの製造に適した触媒はクロム−タイプの触媒、チーグラー‐ナッタ触媒およびメタロセン触媒である。
【0004】
重合反応が使用する触媒の量に極めて敏感であるということは公知である。触媒が予定外に非制御下に反応装置に噴射されると反応が暴走するため、反応装置への触媒流の制御は重要である。しかし、反応装置への触媒スラリーの従来の噴射方法の主たる問題点の1つは触媒量および噴射される触媒の流速を制御するのが難しいという点にある。
【0005】
従来の触媒供給システムでは触媒は濃縮された形、例えばマッドポットから直接重合反応へ供給する方法か、希釈した形で供給する方法のいずれかである。しかし、触媒スラリーを貯蔵タンクから反応装置へ直接供給する方法では反応装置への触媒の供給速度を正しく制御できないという欠点がある。また、(濃縮)触媒が反応装置へ直接供給される場合には、触媒準備中に問題が生じた時に、触媒が反応装置中で全てフラッシュされ、そうした非制御下の触媒供給は反応装置の暴走反応を導く。
【0006】
さらに、オイルに懸濁した触媒を反応装置に直接供給した場合には、使用するポンプ、一般にプログレッシブキャビティーポンプ(progressive cavity pumps)では触媒を定量することができず、反応装置中に噴射される触媒の量を制御できない。さらに、このシステムでは、触媒の新しいバッチを反応装置に供給する度に触媒の噴射システムを切り換える必要がある。こうした噴射システムでは触媒の流速を最適化できず、信頼できる制御ができない。
【0007】
重合反応への希釈された触媒スラリーの準備・供給システムはいくつか開示されている。一般には、乾燥した固体粒子触媒と希釈剤との触媒貯蔵タンクで完全混合することで触媒スラリーを製造する。この触媒スラリーを一般に高圧条件下にある重合反応タンクへ直接移送してモノマー反応物と接触させる。
【0008】
特許文献1(英国特許第838,395号公報)には化学反応で使用する炭化水素の希釈剤中に固体触媒のスラリーを作る方法および装置が記載されている。
【0009】
この方法では炭化水素の希釈剤中に濃縮した触媒スラリーを調製し、この濃縮スラリーを追加の希釈剤と混合し、得られた混合物を反応帯域へ導入する。この方法では反応帯域へスラリーを導入する前にスラリーの比誘電率を連続的に求める。この比誘電率はスラリー中の触媒濃度に依存する。この方法ではさらに、スラリーの誘電値を一定に維持するために、上記比誘電率の所定値との差に対応する添加希釈剤に対する濃縮スラリーの比を調整する。
【0010】
特許文献2(米国特許第3,726,845号明細書)にはタンクで調製した触媒スラリーを重合反応装置へポンプを備えた管路を介してポンプ輸送するシステムが記載されている。
【0011】
この特許ではタンクで調整した触媒スラリーと希釈剤とを上記管路を介して重合反応装置へ交互に送る。すなわち、触媒を所定の数秒間送った後に希釈剤を所定の数秒間送る。
特許文献3(国際特許第WO 2004/0264455号公報)には重合反応装置へ触媒スラリーを供する組立体が記載されている。
【0012】
触媒スラリーは混合タンクで調製され、貯蔵タンクへ送られ、反応装置へ供給する前はこの貯蔵タンク中で触媒スラリーは希釈状態に維持される。触媒スラリーは弁を備えた管路を介して混合タンクから貯蔵タンクへ輸送される。貯蔵タンクを混合タンクより高いところに維持することで混合タンクから貯蔵タンクへの触媒スラリーの供給を重力で行なうことができ、従って、混合タンクと貯蔵タンクとの間でのポンプの使用を避けることができる。あるいは、高さの差やポンプを使用せずに、混合タンクと貯蔵タンクとに圧力差を付けて触媒スラリーを移動させることもできる。
【0013】
特許文献4(米国特許第5,098,667号明細書)には調整弁を備えた管路を介してマッドポットから希釈タンクへ濃縮した触媒を移送する触媒供給システムが開示されている。
【0014】
希釈した触媒スラリーは管路を介して重合反応装置に連続的供給される。この特許の方法では希釈したスラリーの流量を計算し、それに応じて反応装置に送られるスラリー中の固体粒子の流量を所望値に維持する。この触媒粒子の流量の計算値は「オンライン」で測定した反応装置へ送られる触媒スラリー流の濃度および流速と、固体触媒粒子と、予め定められたスラリーを構成する液体希釈剤の濃度とを基に得られる。
【0015】
希釈された触媒を調製するための上記の各方法は触媒流の制御を改善するが、触媒流速を重合反応装置の反応条件の関数で信頼できる状態で調整できないという欠点がある。
【0016】
希釈された触媒を調製するための従来システムの他の問題は、これらのシステムが相対的に大きな容積を必要とすることで、希釈された触媒スラリーを貯蔵しておくためのタンクが複数必要に成る場合がある。希釈された触媒スラリーに大きなタンクを使用するということは希釈剤(例えばイソブタン)用のタンクも大容量のタンクにしなければならないということにつながる。しかし、イソブタンは爆発物であり、安全上に問題が生じる。
【0017】
さらに、重合プロセスで触媒系を切り換えた時に未使用の触媒材料が多量に残るため、それを取り除く必要があるが、そのためにはコストがかかるだけでなく、厳しい環境基準の問題に直面する。それに加えて、大容積の触媒調整システムを触媒除去後に清掃するために多額のコストがかかる。
【0018】
従って、重合反応装置へ触媒を制御下に供給する方法を改善するという技術的ニーズがある。特に、ループ反応装置へ希釈された触媒スラリーを連続的に且つ信頼できる状態で供給できるシステムに対する大きな技術ニーズが残っている。
【0019】
メタロセン触媒およびチーグラー‐ナッタ触媒を用いたオレフィン重合では、単位触媒当りの重合効率をポリマー単位100万以上向上させるために一般に助触媒が使用される。重合反応装置へ助触媒を導入する方法ホは多数提案されている。しかし、予め接触させた触媒−助触媒混合物を重合反応装置に直接供給するのが好ましいが、公知の方法では反応装置に入る前に触媒と助触媒とを接触させることができない。他の方法は、重合媒体に導入する前に触媒と助触媒と接触させる方法である。しかし、この場合、通常使われる触媒系では重合開始時に最大活性がでるようになっているので、反応の暴走を避けることが難しく、ホットスポットが形成され、溶融ポリマーが凝集する危険がある。
従って、助触媒と予備接触させて重合反応装置へ供給する触媒を制御する方法の改良するという技術的ニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】英国特許第838,395号公報
【特許文献2】米国特許第3,726,845号明細書
【特許文献3】国際特許第WO 2004/0264455号公報
【特許文献4】米国特許第5,098,667号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の一般的な目的は、重合反応装置への触媒の導入を最適化する改善された方法と装置を提供することにある。
本発明の特定の目的は、ポリエチレンを製造する重合反応装置へオイル懸濁液または炭化水素溶液中提供される商業的な触媒の供給を最適化する装置および方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリエチレンを製造する重合反応装置への触媒の流速を効率的制御できる装置および方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、ポリエチレンを製造する重合反応装置への助触媒と予備接触させた触媒の供給を制御できる装置および方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、反応装置中のエチレンの重合反応の制御を改良するための方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、重合反応装置への触媒スラリーを調整・供給し、その触媒スラリーのポリエチレンを製造する重合反応装置への噴射を制御するための装置および方法を提供する。触媒スラリーは炭化水素希釈剤と固体触媒とから成る。
【0023】
本発明の第1の観点から、本発明は下記の(a)〜(c)から成るポリエチレンを製造するための重合反応装置に触媒スラリーを供給するための装置に関するものである:
(a)炭化水素希釈剤または鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを収容するための一つまたは複数の貯蔵タンク、
(b)この貯蔵タンクに一つまたは複数の管路を介して接続された、重合反応に適した濃度に希釈された触媒スラリーを収容するための撹拌槽であって、希釈された触媒スラリーを撹拌槽から反応装置へ移送するための一つまたは複数の管路を備えた撹拌槽、
(c)希釈された触媒スラリーを前記撹拌槽から反応装置へ移送するための上記撹拌槽を重合反応装置に接続する一つまたは複数の管路であって、各管路はスラリーを反応装置へポンプ輸送するためのメンブレンポンプを備え、このメンブレンポンプは反応物の濃度の関数で制御可能である管路。
【0024】
本発明は、重合反応で使用する、一般に鉱油、ヘプタンまたはヘキサン中に懸濁状態で供給される商業的な触媒を用いて、所定濃度の触媒スラリーを調製するための装置を提供する。触媒が乾燥状態で供給されることもある。
【0025】
本発明では、貯蔵タンク(以下、触媒移送タンクともよぶ)から反応装置へ触媒を直接導入しない。本発明装置は撹拌槽をさらに有している。この撹拌槽は貯蔵タンクと反応装置との間の「バッファー」の役目もする。「撹拌槽」および「バッファータンク」は同じ意味を有する同義語である。撹拌槽は反応装置中の圧力以下の圧力で運転される。従って、高圧下の反応装置中に非制御下で触媒が噴射される危険はない。さらに、この撹拌槽は反応装置に触媒が不連続に供給される変動を減らすことができる。本発明の撹拌槽を用いる他の効果は、重合反応装置中で使用するのに適した濃度に触媒スラリーを希釈でき、スラリーが所望の実質的に一定な濃度に調製できる点にある。さらに、適当な比較的低濃度の触媒、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜4重量%、さらに好ましくは0.1〜1重量%、最も好ましくは0.5重量%の濃度の触媒にすることによって、触媒スラリーはメンブレンポンプを用いて輸送でき、反応装置中へ噴射することができる。希釈された触媒スラリーを使用することで噴射された触媒の量および流速の制御がより容易になるという効果が得られる。
【0026】
本発明の装置ではメンブレンポンプが使用できるので、触媒スラリーを反応装置へ制御可能な触媒流速で移送することができる。メンブレンポンプは反応装置中で起きる重合反応に適し触媒流速値に調整するのに適している。すなわち、このポンプは反応装置中の反応物の濃度の関数で制御することができる。
【0027】
本発明の他の実施例では、本発明は触媒スラリーを貯蔵タンクから撹拌槽へ移すための一つまたは複数の管路が希釈剤の噴射手段を有する装置に関するものである。この噴射手段は反応装置に噴射する前にインラインで、特に、貯蔵タンクから撹拌槽へスラリーを移送する間に、触媒スラリーを希釈するに適している。
【0028】
本発明のさらに他の好ましい実施例では、本発明は触媒スラリーを撹拌槽から反応装置へ移送するための管路に触媒流速を測定するための手段を有する装置に関するものである。
【0029】
反応装置への触媒供給に関する他の問題は重合反応ナかに助触媒をどのようにして供給するかという点にある。助触媒の導入方法に関しては、例えば、重合反応装置へ助触媒を直接供給する方法を含めて、既に多数の方法が提案されている。しかし、公知の方法では反応装置に入れる前に触媒と助触媒とを接触させることができない。一方、予備接触した触媒-助触媒の混合物が効果的であり、望まれていることである。他の方法では重合倍立つ中へ導入する前に触媒と助触媒とを接触させている。しかし、この後者の方法では触媒の予備接触時間を制御するのが難しい。
【0030】
本発明の他の実施例では、本発明装置は反応装置に触媒スラリーを供給する前に、所定時間の間、触媒スラリーを適当な量の助触媒と接触させることができる助触媒分配システム(以下、助触媒供給システムともいう)を提供する。好ましい実施例でのこのシステムは助触媒貯蔵タンクと、このタンクに連結された助触媒を移送するために管路とから成る。他の好ましい実施例では、この管路はその管路中で触媒スラリーを助触媒と接触させる接触時間を長くするための接触タンクを備えている。
【0031】
本発明の別の態様から、本発明は下記の(1)〜(4)の段階を有する、ポリエチレンを製造する重合反応装置への触媒スラリーの供給を最適化する方法に関するものである:
(1)一つまたは複数の貯蔵タンク中に炭化水素希釈剤または鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを用意し、
(2)この濃縮された触媒スラリーを重合反応に適した濃度に希釈し、この希釈を貯蔵タンクから撹拌槽へ移送する間に行ない、希釈された触媒スラリーを保持し、
(3)必要な場合には、貯蔵タンク中で触媒スラリーをさらに希釈し、
(4)希釈された触媒スラリーを一つまたは複数の管路(4)を介して、この管路(4)に設けたポンプ手段(5)を用いて撹拌槽(3)から重合反応装置(1)へ制御された流速でポンプ輸送する。
【0032】
この本発明方法は、商業上固体粒子として供給される触媒を適切に制御され、一定の流速で重合反応装置へ噴射する方法を改良する。従って、本発明方法は、反応装置へ噴射する前に、濃縮された触媒スラリーをバッファタンクへ移送し、そこで触媒を希釈して適当な濃度にする方法を含む。本発明方法では貯蔵タンクから反応装置へ触媒を直接噴射することはない。本発明方法の特徴は、反応装置へ噴射する前に、触媒スラリーをインラインで希釈、特に貯蔵タンクから撹拌槽まで移送する間に希釈する点にある。必要な場合には撹拌槽で触媒スラリーをさらに希釈することができる。
【0033】
本発明は特に、完全に制御可能な流速で触媒スラリーを反応装置へ供給することができる触媒供給方法を提供する。本発明方法は反応装置中の反応物の濃度を決定することによって反応装置への触媒スラリーの流速を制御する。従って、本発明方法では反応装置中の重合反応を関数にして反応装置への触媒の供給を微調整することができる。反応装置の重合生産速度は反応装置への触媒供給速度を制御することで制御できる。この観点から、反応装置へは最適濃度かつ適当な供給速度で触媒スラリーが供給され、その結果、重合反応装置の生産性および重合製品の均一性(コンシステンシー)が大幅に改善される。重合反応で生じる重合製品の品質および性質の変動を避けることができる。反応装置中の反応物の濃度の関数で触媒供給を制御するためには、実際には反応装置にバッファタンクを接続する管路に反応装置中の反応物の濃度の関数で微調整が可能なポンプ、好ましくはメンブレンポンプ(membrane pumps)を設ける。
【0034】
特に、ポンプ手段、好ましくはメンブレンポンプは撹拌槽から重合反応装置へ触媒スラリーを移す各管路に設ける。これらのポンプは反応装置への触媒スラリーの移送を制御可能な流速で行なうことができる。さらに、メンブレンポンプは反応装置中の重合反応の関数で反応装置への触媒流を調整するように制御できる。すなわち、このポンプは反応装置中の反応物の濃度の関数で制御および調節が可能である。
【0035】
本発明の装置および方法では、最適濃度の触媒スラリーを適当な触媒流速で反応装置へ送ることができ、その結果として反応装置の重合反応の生産性を大幅に改善することができる。
【0036】
本発明は、反応装置への触媒供給を最適化することによって反応装置中の重合反応を最適化する装置および方法と、設計が単純で、構造が強固で、経済的に作ることができるそのための装置を提供する。「重合反応を最適化する」とは重合反応の効率を向上させること、および/または、得られた重合製品の品質を向上させることを意味する。
【0037】
本発明の方法および装置はエチレンの重合方法、特にビモダルなポリエチレンの製造プロセスで特に有用である。
本発明を特徴づける各種の機能は特許請求の範囲に記載されている。本発明の利点および本発明によって達成される目的のよりよい理解のために、以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】重合反応装置への触媒の噴射を制御するための本発明の装置の好ましい実施例の概念図。
【図2】本発明装置で使われる貯蔵タンクから撹拌槽への触媒スラリーの移送を制御するための計量弁の好ましい実施例の詳細図。
【図3】反応装置へ触媒を供給するための本発明装置の他の好ましい実施例の概念図。
【図4】単一ループ重合反応装置の概念図。
【図5】ダブルループ重合反応装置の概念図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は重合反応装置に触媒を供給する方法に適用できる。以下、エチレンを重合するループ反応装置への触媒供給に関して本発明を説明する。エチレンの重合プロセスはループ反応装置で実行できる。「エチレン重合」にはエチレンの単独重合だけでなく、エチレンと高次1-オレフィンコモノマー、例えばブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンまたは1-デセンとの共重合も含まれる。エチレンの重合ではモノマーのエチレンと、軽質炭化水素の希釈剤、触媒および任意成分のコモノマーおよび水素を含む反応物を反応装置に供給する。
【0040】
本発明の実施例ではコモノマーはヘキセンであり、希釈剤はイソブタンである。本発明の特に好ましい実施例では、本発明はビモダル(bimodal)なポリエチレンPEを製造する重合反応装置に触媒を供給する方法に関するものである。「ビモダルなポリエチレン」とは互いに直列に接続された2つの反応装置を使用して製造されるPEを意味する。しかし、本発明方法は反応装置への触媒の供給を最適化するために他のタイプの反応装置の重合反応にも同様に適用できるということは理解できよう。
【0041】
「触媒」とは反応で自分自身は変化せずに重合反応の速度を変えることができる物質と定義できる。エチレンの重合で使用可能な任意の触媒を使用できる。そうした触媒の例はバナジウムまたはクロムをベースにしたチーグラー-ナッタタイプの触媒およびメタロセン触媒である。本発明の1つの好ましい実施例の触媒はメタロセン触媒またはクロム触媒である。他の実施例の触媒はチーグラー‐ナッタ触媒である。他の特に好ましい実施例では触媒はSi担体に支持された触媒である。
【0042】
触媒スラリーは種々の方法で調製できる。その一つの方法は炭化水素のような適当な希釈剤中に懸濁した固体触媒粒子からなる触媒スラリーを用意することから始める。一般に、この触媒スラリーを重合反応タンクへ移してモノマー反応物と直接接触させることができる。
【0043】
触媒スラリーは鉱油中に懸濁した固体触媒粒子の形で商業的に入手できる。オイル懸濁液中に触媒を含んだ商用タンクを適当なポンプを備えた管路を介して反応装置に接続することによって上記触媒スラリーは反応装置へ直接噴射することができる。このポンプはかなりの量の固体粒子をオイル中に含む液体をポンプ輸送するのに適したものである。そうしたタイプのポンプの例としてはモアノー(Moineau)ポンプまたはプログレッシブキャビティーポンプとして知られたものが商業的に入手できる。
【0044】
重合反応装置に触媒を供給する従来方法は多くの文献に記載されている。下記文献には反応装置中にチーグラー‐ナッタ触媒のスラリーを導入する方法が記載されている。
【特許文献5】米国特許第US 3,846,394号明細書
【0045】
この特許の方法はチーグラー‐ナッタ触媒を調整し、貯蔵装置帯帯域から計量部へ供給管を介してスラリーを移送し、スラリーを反応装置への導入する段階から成る。この特許では、反応装置中のモノマーやその他の内容物がチーグラー‐ナッタ触媒の上記供給管へ逆流するのを避けるために、上記方法ではチーグラー‐ナッタ触媒に対して不活性な希釈剤で上記供給管をフラッシュしている。この希釈剤は計量部の下流で上記供給管中へ供給される。
【0046】
チーグラー−ナッタ系として公知のオレフィンの重合および共重合のための触媒系は、触媒として元素の周期律表のIV〜VII族に属する遷移金属の化合物と、助触媒としての元素周期律表のI〜III族に属する金属の化合物とから成る。最も一般的に使用されている触媒はチタンとバナジウムのハロゲン誘導体をマグネシウム化合物と組合せたものである。また、最も一般的に使用されている助触媒は有機アルミニウム化合物または有機亜鉛化合物である。全てのチーグラー‐ナッタ触媒の特徴は直鎖重合体ができる点にある。
【0047】
このチーグラー‐ナッタ触媒は好ましくは一般式:MXnで表される。ここで、Mは第IV族〜第VII族から選択される遷移金属化合物、Xはハロゲン、nは金属の原子価数である。Mは第IV族、第V族または第VI族金属であるのが好ましく、好ましくはチタン、クロムまたはバナジウムであり、最も好ましくはチタンである。Xは塩素または臭素であり、最も好ましくは塩素である。この遷移金属化合物の例はTiC13、TiC4であるが、これに限定されるものではない。本発明の特に好ましい実施例の触媒は四塩化チタン(TiC4)触媒である。
【0048】
チーグラー−ナッタタイプの触媒は一般に担体上に支持され、例えば固体結晶担体上に堆積される。担体はチーグラー‐ナッタ触媒成分に対して化学的に不活性な不活性固体でなければならない。担体はマグネシウム化合物であるのが好ましい。触媒成分の担体として用いることができるマグネシウム化合物の例はハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化ジアルコキシマグネシウム、マグネシウムオキシハライド、ジアルキルマグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよびマグネシウムカルボキシレートである。
【0049】
「メタロセン触媒」とは一つまたは複数のリガントの間に金属原子が「サンドイッチ」された任意の遷移金属複合体を意味する。メタロセン触媒の好ましい例は一般式:MXで表される。ここで、Mは第IV族から選択される遷移金属化合物、Xは一つまたは複数のシクロペンタジエニル(Cp)、インデニル、フルオレニルまたはこれらの誘導体から成るリガントである。メタロセン触媒の例はCp2ZrC12、Cp2TiC12またはCp2HfC12であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
一般に、メタロセン触媒は担体に支持されている。担体は不活性の固体でなければならない、従来のメタロセン触媒の成分に化学的に不活性なものなければならない。シリカ化合物の担体が好ましい。
メタロセン触媒のポリオレフィン、特にポリエチレン製造での使用は公知である。メタロセン触媒は周期律表の第IV族遷移金属、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、その他の化合物で、金属化合物と一つまたは2つのシクロペンタジエニル、インデニルまたはその誘導体から成るリガントとの配位構成を有する。メタロセン触媒をオレフィン重合触媒として使用することには多くの利点が有る。メタロセン触媒は活性が高く、チーグラー‐ナッタ触媒を使用して調製したポリマーと比較して物理特性が広いポリマーを製造することができる。メタロセン触媒は一般に助触媒、例えば当業者に公知の有機金属化合物や非配位のルイス酸とアルキルアルミニウムの混合物と一緒に用いられる。メタロセン触媒のキーはその錯体構成にある。メタロセン触媒の構成および幾何構造は所望するポリマーに応じて各メーカーの特定のニーズに合わせて変えることができる。メタロセンは単一の金属サイトを有し、それによってポリマーの分子量分布や分岐度を制御できる。モノマーは金属間に入り、ポリマー鎖が成長する。
【0051】
クロム−タイプ触媒は担体、例えばシリカまたはアルミニウム担体上に酸化クロムを支持させた触媒を意味する。クロム触媒の例はCrSi4またはCrAl23であるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
助触媒はチーグラー-ナッタまたはメタロセン触媒の活性を改善するために用いる。「助触媒」とは他の触媒と一緒に用いられて他の触媒の重合反応の活性を改善するために使われる触媒と定義できる。本発明の好ましい実施例では、助触媒はチーグラー‐ナッタ触媒またはメタロセン触媒と一緒に使うのに適した触媒である。この助触媒はチーグラー‐ナッタ触媒またはメタロセン触媒の重合活性を促進するために用いる。本発明では一般に周期律表の第I〜III族の有機金属化合物系が助触媒として好ましく用いられる。メタロセン触媒と一緒に用いることができる触媒には有機金属化合物または非配位のルイス酸とアルキルアルミニウムとの混合物が含まれる。
【0053】
本発明の特に好ましい実施例でチーグラー-ナッタおよびメタロセン触媒と一緒に用いるのに適した助触媒はハロゲン化されていてもよい一般式:AlR3またはAlR2Yて表される有機アルミニウム化合物の触媒である。ここで、Rは1〜16の炭素原子を有するアルキルであり、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、Yは水素またはハロゲンにある。助触媒の例としてはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、tri-イソブチルアルミニウム、tri-ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライドまたはジエチルアルミニウムエトキシド水素化物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明で特に好ましく用いられる助触媒はtri-クソブチルアルミニウム(TIBAL)である。
【0054】
「触媒スラリー」とは懸濁した触媒固体粒子から成る組成物である。「濃縮された触媒」とは触媒の濃度が少なくとも10重量%を超える懸濁した触媒固体粒子から成る組成物を意味する。「希釈された触媒」とは触媒の濃度が少なくとも10重量%以下である懸濁した触媒固体粒子から成る組成物を意味する。
【0055】
以下、本発明による触媒の調整、噴射に必要な装置の実施例を示す。一つの反応装置に少なくとも2つの(異なる)触媒を供給する必要がある場合には、本発明装置を2つ以上用いるか、触媒をブレンドし、それを本発明の装置を用いて供給することができる。
【0056】
本発明の第1実施例では、本発明は下記の(a)〜(c)から成る反応装置へ触媒スラリーを供給する装置に関するものである:
(a)炭化水素希釈剤中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを収容するための一つまたは複数の貯蔵タンク。貯蔵タンクはそこから撹拌槽へ触媒スラリーを移送する手段を備えている。
(b)上記の移送手段を介して貯蔵タンクに接続された、触媒スラリーを重合反応に適した濃度に希釈するための撹拌槽、
(c)希釈された触媒スラリーを撹拌槽から反応装置へ移送するための一つまたは複数の管路。各管路はスラリーを反応装置へポンプ輸送するためのポンプ手段を備えている。
【0057】
この実施例の装置はポリエチレンを製造する重合反応装置へのメタロセン触媒スラリーまたはクロム触媒スラリーの噴射を制御するのに特に適している。
【0058】
好ましい一つの実施例では触媒スラリーを貯蔵タンクから撹拌槽に移すための上記の一つまたは複数の管路が触媒スラリーを第1の貯蔵タンクから撹拌槽へ移すための第1の管路を有し、この第1の管路は、触媒スラリーを第2の貯蔵タンクから撹拌槽へ移すための第2の管路と、第1の手段と第2の手段とを連結しているラインを介して、切り換え可能である。
【0059】
さらに好ましい実施例では、触媒スラリーを貯蔵タンクから撹拌槽へ移すための管路の各々がラインの下流に計量弁を有する。
【0060】
本発明のこの実施例について以下ではメチルアルミノキサン(MAO)を含浸したシリカに担持されたメタロセン触媒のエチレンの重合を行う重合反応装置への供給制御に関して説明する。好ましい実施例では、イソブタンが触媒の希釈剤として使われる。メタロセン触媒のための助触媒としてここではトリ−イソブチルアルミニウム(以下、TIBAL)助触媒を用いる。しかし、本発明装置は他の触媒、例えばクロム触媒と、他タイプの助触媒にも適用できるということは理解できよう。
【0061】
[図1]は本発明装置の概念図である。本発明装置はメタロセン触媒とイソブタン希釈剤との固体/液体スラリを収容した一つまたは複数の貯蔵タンク2、いわゆるマッドタンク(mud tank)マッドポット(mud pot)を有している。このスラリーは管路6、7と管路15とを組み合わせた管路を介してマッド貯蔵タンク2から撹拌槽3へ送られ、この撹拌槽3中でスラリーは適当な濃度に希釈される。本発明装置はさらに、重合反応装置1に撹拌槽3を接続する一つまたは複数の管路4を有している。この管路4には希釈された触媒スラリーを撹拌槽3から反応装置1へポンプ輸送するためのポンプ手段5が設けられている。
【0062】
メタロセン触媒は市販ドラムまたは缶26に乾燥状態で供給される。一般に、乾燥粉末の触媒を収容したこのドラムは高圧下に取扱うことができない。ドラム中の圧力は例えば1.1〜1.5バール、好ましくは1.3バールである。触媒は貯蔵タンク2中でより高圧条件下にすることが要求される。その圧力は使用する希釈剤に依存する。従って、希釈剤の種類によって必要な場合には、適当な装置を用いて触媒をドラムから高圧を扱うのに適した貯蔵タンク2へ移すのが好ましい。これは例えばイソブタンを使う場合である。すなわち、この希釈剤は高圧下でのみ液体である。逆に、希釈剤としてヘキサンを使う場合には貯蔵タンク2は不要である。この希釈剤は低い圧力で液体である。好ましい実施例では、メタロセン触媒は管路27を介して好ましくは窒素ガス圧で移送するか、重力でドラム26から貯蔵タンク2へ移す。しかし、貯蔵タンクへの触媒供給は他の任意のタイプで行うことがで、そうした方法も本発明の範囲内であることは明らかである。別の実施例では、7〜16バールの高圧での扱いに適した商用コンテナでメタロセン触媒が提供される。この場合には商用コンテナを貯蔵タンク2とみなしてそこから直接撹拌槽3へ触媒を送ることができる。
希釈剤のイソブタンは制御弁32を介して貯蔵タンク2へ供給される。
【0063】
貯蔵タンク中でメタロセン触媒は液体オレフィンフリーなイソブタン圧力下、好ましくは7〜16バールのし圧力下に収容される。貯蔵タンクから反応装置へ触媒がリークするのを避けるために貯蔵タンクの圧力は反応装置の圧力以下にする。貯蔵タンク2には撹拌手段がないので、触媒は貯蔵タンク2中で沈殿する。
【0064】
次に、触媒は貯蔵タンク2から撹拌槽3へ移され、この撹拌槽3中で触媒は重合反応に適した濃度に希釈される。比例的に固体を多量に含む貯蔵タンク2の触媒混合物は管路6、7を介して撹拌槽3へ送るのが好ましい。図では2つの貯蔵タンクに対して2つの異なる管路6、7を介して一つの共通撹拌槽3が接続されている。この場合、管路6、7中の触媒混合物は撹拌槽3に供給される前に共通管路15中に入るのが好ましい。しかし、本発明では貯蔵タンク2は1つでもよい。貯蔵タンク2中に触媒が残るのを避けるためには貯蔵タンク2をイソブタンでフラッシュして、触媒を撹拌槽3へ移す。
【0065】
特に好ましい実施例では、管路6、7はライン8を介して互いに接続されている。ライン8は異なる貯蔵タンク2を管路6、7と一緒に全て使うことができるようにする。例えば、[図1]に示すように、各管路6または7を有する2つの貯蔵タンク2を用いる場合、触媒を第1の貯蔵タンク2から撹拌槽3へ移すための管路6を、触媒を第2の貯蔵タンク2から撹拌槽3へ移すための第2の管路7と切り換えてるのに第1の管路6と第2の管路7と連結するライン8を用いる。この切換え接続路を用いることによって管路6を介した触媒の移送が中断した時に第2の管路7を介して触媒を混合槽3へ送ることができる。
【0066】
各管路6、7は撹拌槽3への触媒流の供給速度を制御する計量弁9を備えているのが好ましい。これらの計量弁9はライン8の下流にあるのが好ましい。貯蔵タンク2と撹拌槽3との間の圧力差によって撹拌槽へ触媒を送る力が与えられる。
【0067】
計量弁9を用いることによって撹拌槽3へ所定容積の触媒を移送することができる。たれらの弁を介して吐出される触媒スラリーはイソブタン流によって撹拌槽へ運ばれる。従って、希釈剤でのフラッシングするために、各管路6、7にはポート24を設けるのが好ましい。このポートは計量弁9の下流に設けるのが好ましい。
【0068】
好ましい実施例では、計量弁9はボールチェックフィーダであるか、フィーダ弁である。[図2]は本発明装置で使用するのに適したボール逆止弁フィーダの構造を示している。しかし、本発明では他のタイプの弁も使用できるということは明らかである。[図2]に示した好ましい実施例の弁は入口17と出口18とを有する計量室20を有する本体16と、少なくとも2つの位置で入口17および出口18と連通する上記本体16内で回転自在な部材19と、部材19が回転した時に計量室20内を往復運動するボールピストン21とを有する。この弁の作動機構は(1)チャージング、(2)弁作動および(3)貯蔵タンク2から撹拌槽3への一定容積の触媒スラリーの排出のシーケンスを含む。すなわち、実際の作動では、弁が第1の位置にある時に一定量の濃縮したスラリーが入口17を介して弁9内の計量室20に充填される。次に、弁が第2の位置に駆動されると、上記の量が撹拌槽3へ放出される。すなわち、この弁9は貯蔵装置2から一定量の濃縮したスラリーを配達する役目をする。
【0069】
この特殊なボール逆止弁9の更に詳細な機構は以下のとおりである。この弁9は第1の位置で所定容積の触媒と希釈剤の混合物で充填される。このボール逆止弁9は周期的に第2の位置へ駆動される。それによって上記容積の混合物は弁から撹拌槽3中へ放出される。次に、ボール逆止弁9は所定容積の上記混合物で充填され、第1の位置へ戻る。ここで、第2の容積の混合物が弁から撹拌槽3中へ放出される。このように計量弁9の周期的な運動によって貯蔵タンク2から撹拌槽3への放出が行われる。ボール逆止弁9のサイクル時間によって撹拌槽3への触媒の流速が決まる。例えば、このサイクル時間を長くすると、触媒の流速は低下する。
【0070】
希釈度が高く且つ貯蔵タンク2から撹拌槽3への触媒の供給にポンプを使用することで撹拌槽3への触媒の供給速度を有利に制御できる。また、本発明の供給方式では撹拌槽3中の触媒スラリーの濃度を実質的に一定に保つことができる。すなわち、弁9で調節される撹拌槽3への触媒流は撹拌槽3中の触媒量(濃度)と希釈剤によって決まる。本発明の好ましい実施例では、撹拌槽中の触媒スラリーの濃度は実質的に一定に保たれる。本発明では希釈剤と触媒との間の比を確実に制御できる。これは貯蔵タンクおよび計量弁9からの触媒供給を制御し、撹拌槽へのイソブタンの量を制御することで行うことができる。
【0071】
触媒の廃棄物は一つまたは複数のダンプタンク28へ送ることができる。このダンプタンク28には攪拌手段25を備え、廃棄物の中和および除去のために鉱油を入れておくのが好ましい。ダンプタンクは管路29を介して触媒供給管路6または7に計量弁9の上流で接続するのが好ましい。ダンプタンク28は撹拌槽3にも管路23を介して接続して触媒の廃棄物を移すのが好ましい。ダンプタンク28を蒸気ジャケットを有する加熱タンクにしてイソブタンを蒸気にし、蒸留塔またはフレアへ送る。イソブタンを移すときに触媒断片が一緒に移送されるのを避けるためにダンプタンク28には保護フィルタを設けるのが好ましい。さらに、ダンプタンク28中の圧力を制御する圧力制御手段を設ける。ダンプタンク28の底に残った触媒の廃棄物抜き出し、ドラムに入れ、破壊する。
【0072】
本発明ではメタロセン触媒が貯蔵タンク2から撹拌槽3へ送られる。イソブタン流は管路6および7に設けた弁を介して撹拌槽3に送られる。このイソブタン流の追加の機能は濃縮スラリーを希釈することである。撹拌槽3は液体充填状態でもなくてもよいが、撹拌槽3は完全に液体が充填された状態で運転するのが好ましい。すなわち、窒素との間に界面があると、触媒スラリーがタンク壁に付着する危険がある。
【0073】
メタロセン触媒スラリーは撹拌槽3中で炭化水素の希釈剤によって0.1〜10重量%の濃度に希釈されるのが好ましい。より好ましくはスラリーを0.1〜4重量%、より好ましくは0.1〜1重量%、最も好ましくは0.5重量%の濃度へ炭化水素の希釈剤で希釈する。この濃度に希釈したスラリーを調製することによって以下で説明するようにメンブレンポンプ5を使用して反応装置1中へスラリーを噴射することができる。撹拌槽3はスラリーを均質に維持するための攪拌機25を備えている。
【0074】
希釈したスラリーは一つまたは複数の管路4を介して撹拌槽3から抜き出され、これらの管路を介して重合反応装置1へ送られる。各管路4は触媒スラリーの反応装置1への移送および噴射を制御するポンプ手段5を備えている。特に好ましい実施例では、ポンプ手段はメンブレンポンプである。管路4は撹拌槽3から上向きに延びるのが好ましい。この傾斜角度は0°以上、好ましくは10°以上、より好ましくは30°以上である。また、管路はポンプ手段5から下向きに延びるのが好ましい。傾斜角度は10°以上である。そうすることでポンプ手段5を止めたときに触媒スラリーがポンプ手段5中に沈殿したり、閉塞するのが避けられる。しかし、管路4を充分にフラッシングすることができる場合には下向きに延びる必要はないということは理解できよう。
【0075】
[図1]に示すように、管路4はメンブレンポンプの入口30と出口33にイソブタンのフラッシング手段をさらに備えている。このイソブタンフラッシュ手段30、33を用いることによって管路4をイソブタンでフラッシングでき、管路4およびポンプ手段5の閉塞を防ぐことができる。反応装置1に至るメンブレンポンプ5の下流の管路4はイソブタン・フラッシング手段33によって連続的にフラッシュしているのが好ましい。ポンプ5の上流側の管路4はイソブタン・フラッシング手段30によって時々フラッシュすることができる。一般に、複数の管路4で撹拌槽3を反応装置1に接続する場合、駆動中のポンプ手段5を有する1つの管路をアクティブにし、他の管路4およびポンプ手段5はスタンドバイモードに保つ。この後者の場合、ポンプ5の下流の管路4は希釈剤でフラッシュするのが好ましい。ポンプ5の上流側の管路4は間欠的にフラッシュできる。ポンプ手段5を止めないために二方向弁31を管路4に設けることができる。
【0076】
制御された正しい遅い流速に制御して反応装置へ触媒を送り、所定の低速度で触媒スラリーを反応装置へポンプ輸送することが重要である。反応装置への流速が急変すると暴走反応に至る危険がある。また、反応装置へ流れが変動すると、製品の品質が変動し、効率が低下する。従って、特に好ましい実施例では噴射ポンプ5の流速を反応装置1の活性で制御する。
【0077】
ポンプ手段は反応装置中の反応物の濃度の関数で制御できる。この反応物は反応装置中のモノマーすなわちエチレンの濃度であるのが好ましいが、反応装置中の他の反応物、例えばコモノマまたはこの水素濃度の関数で制御することもできるということは明らかである。メンブレンポンプ5を使用することによって本発明では触媒流を良好に制御できる。特に、反応装置への触媒流速はメンブレンポンプのストロークおよび/または周期を調整して制御できる。さらに、ポンプの流速は反応装置中のエチレン濃度で制御できる。反応装置中のエチレン濃度が高い場合には多くの触媒を供給し、逆の場合は逆にする。こうしたエチレン重合速度の変化と実際の生産速度を考慮することで製品の性質は大幅に変化することはなくなる。エチレン重合速との変化を考慮することで重合反応の最適触媒供給条件が得られる。
【0078】
本発明の上記実施例の装置の運転開始時には以下のステップを実行する。先ず最初に、撹拌槽3と弁9の下側の管路に希釈剤のイソブタンを充填する。次に、貯蔵タンク、弁9の上流の管路6、ライン8にイソブタンを供給する。その後、弁9を短時間操作する。ここで、反応装置1へのフラッシングを開き、触媒が管路4を介して反応装置に噴射される。
【0079】
他の実施例では、本発明は下記(a)〜(d)から成る重合反応装置に触媒を供給するための装置に関するものである:
(a)鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを収容するための(貯蔵)タンク、
(b)重合反応に適した濃度に希釈された触媒スラリーに希釈するためのバッファータンク。このバッファータンクは濃縮された触媒スラリーを(貯蔵)タンクからバッファータンクへ移送するための一つまたは複数の管路を備え、さらに、希釈された触媒スラリーをバッファータンクから反応装置へ移送するための一つまたは複数の管路を備えている。
(c)(貯蔵)タンクからバッファータンクへ触媒スラリーを移送させる各管路に設けたポンプ、
(d)バッファータンクから反応装置へ希釈された触媒スラリーを移送させる各管路に設けたポンプ。
本発明の上記実施例の装置は各種タイプの触媒、例えばクロム−タイプ触媒、メタロセン触媒、チーグラー‐ナッタ触媒のために使うのに適しており、特に、鉱油中に懸濁した
固体粒子として提供される触媒に適している。
【0080】
上記実施例の本発明装置は反応装置にスラリーを供給する前貯蔵タンクからバッファタンクへ濃縮された触媒スラリーを送るのに適している。従って、本発明の他の好ましい実施例では、本発明装置は濃縮した触媒スラリーを貯蔵タンクからバッファタンクに移すための管路にポンプ、好ましくはプログレッシブキャビティーポンプが設けられている。このポンプは固体量が多い液体、特に鉱油中に懸濁した触媒固体粒子をポンプ輸送するのに特に適している。
【0081】
本発明はさらに、反応装置中の反応条件の関数で反応装置への触媒流を調整することができる装置を提供する。従って、他の好ましい実施例では、バッファタンクから反応装置へ希釈された触媒スラリーを移すための管路に設けたポンプはメンブレンポンプから成る。このポンプは触媒の流速を制御できるという効果がある。さらに、このポンプは反応装置中の反応物の濃度の関数で制御できる。フィードバック機構を用いることで、メンブレンポンプは調整でき、反応装置中の反応物の濃度の関数で反応装置への触媒の流速を調節することができる。
【0082】
さらに、本発明装置は互いに異なるバッチの触媒に使えるという利点がある。すなわち、触媒を含む新しい商用タンクが本システムに接続される度に装置を変える必要はない。
【0083】
上記のように、本発明装置の上記実施例は異なるタイプの触媒、すなわちチーグラー‐ナッタ触媒、クロム−タイプ、メタロセン触媒の全てに同じように使うことができる。しかし、以下では本発明をエチレンを重合する重合反応装置にチグラー−ナッタ触媒、特に、四塩化チタン(TiCl4)触媒を供給するため方法および装置に関して説明する。チーグラー‐ナッタ触媒用の助触媒としてはトリ−イソブチルアルミニウム助触媒を参照する。しかし、上記のように、本発明装置は他のタイプの触媒および助触媒にも適用できるということは明らかである。
【0084】
[図3]は本発明装置の好ましい実施例が示している。一般に、本発明装置はオイル中に懸濁した触媒を収容するタンク2と、適当な濃度に希釈した触媒スラリーを調整して重合反応へ送る貯蔵するバッファタンク3とを有している。濃縮した触媒スラリーはポンプ50によってタンク2から一つまたは複数の管路40を介してバッファタンク3に移される。希釈された触媒スラリーはバッファタンク3からポンプ5によって一つまたは複数の管路4を介して反応装置に連続的に移される。図を明瞭にするために弁の構造の詳細は図示していない。これらは当業者には周知のものである。
【0085】
本発明では固体粒子は鉱油、ヘキサンまたはヘプタン中に懸濁した状態で市販のドラムで提供される。また、乾燥した形で供給されることもある。触媒はこの商用ドラムからタンク2へ移すことができる。好ましい実施例では触媒は商用ドラムからタンク2まで窒素の圧力で移送されるか、重力で送られる。タンク2中の触媒濃度は鉱油を加えることで調整できる。他の炭化水素を使うこともできる。
【0086】
一般に、タンク2中の圧力は約7〜16バールにすることができる。タンク2中のスラリーが「濃縮した」または「重い」とは触媒固体粒子を相対的に多量に含んだものを意味し、この濃度は10〜50重量%、好ましくは20〜40重量%である。
【0087】
好ましい実施例では、濃縮したチーグラー‐ナッタ触媒はタンク2からバッファタンク3へ移され、そこで重合反応装置中で使用するのに適当な濃度に触媒は希釈される。従って、バッファタンク3にはバッファタンク3に適当な希釈剤を供給する手段34を備えている。管路4を介してバッファタンク3に供給された濃縮された触媒は管路34を介してバッファタンク3に供給される希釈剤によって希釈され、希釈された触媒スラリーが得られる。バッファタンク3は液体充填状態でも、そうでなくてもよいが、触媒スラリーが窒素との境界でタンク壁に付着するのを防ぐために、バッファタンク3は液体充填状態で運転するのが好ましい。
【0088】
四塩化チタン(TiCl4)を触媒とする場合、触媒を希釈するのにはヘキサンまたはイソブタンのような炭化水素を使用して触媒スラリーを得るのが好ましい。しかし、触媒を調製するための希釈剤としてヘキサンを使用する最大の欠点はヘキサンの一部が最終ポリマー製品中に残ることであり、それは望ましくないことである。イソブタンはヘキサンより取り扱いと精製が容易で、重合プロセスで再利用できる。例えば、エチレンの重合プロセスでイソブタンを反応希釈剤として加え、触媒の希釈剤としてイソブタンを使うことで、重合プロセスで容易に再利用できる。従って、好ましい実施例ではイソブタンが四塩化チタン(TiCl4)触媒の希釈剤として使われる。
【0089】
イソブタンは室温、大気圧で一般に気体で存在する。希釈された触媒スラリーを調製するための液体イソブタンを得るためにはバッファタンク3の圧力を8〜17バール、好ましくは4〜5バールの圧力レベルにする。バッファタンクから反応装置への触媒のリークを避けるために、バッファタンク3の圧力は反応装置の圧力以下にする。
タンク2からバッファタンク3へチーグラー‐ナッタ触媒を移す前に、イソブタンをタンク3に入れる。タンク3はこの希釈剤の供給用入口34を備えている。タンク2およびバッファタンク3は濃縮された触媒および希釈された触媒を均質化するための攪拌または混合手段25を有している。バッファタンク3は新しいバッチを調製する時と同じ充分な量の触媒スラリーを収容できるだけの1日タンク容量の大きさを有するのが好ましい。これによって、重合反応の触媒を連続的に生産でき、供給できる。あるいは、新しいバッチを第2のタンク2で調製することもできる。
【0090】
バッファタンク3のスラリーは触媒固体粒子の量が相対的に低いので「希釈された」スラリーとよばれる。この希釈されたスラリーは0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜4重量%の濃度を有する。この濃度を有する希釈された触媒スラリーを調製することで以下で説明するように反応装置1へ希釈された触媒を噴射するのにメンブレンポンプ5を使用することができる。他の濃度の触媒スラリーを加える場合には他のタイプのポンプで加えることができるということは明らかである。
【0091】
タンク2からバッファータンク3へのチーグラー‐ナッタ触媒の移送は一つまたは複数の管路40を介して行うのが好ましい。タンク2からバッファタンク3へのチーグラー‐ナッタ触媒の移送は各管路40に設けたポンプ50で行なう。好ましい実施例ではポンプ50は原油中に固体を多量に含む液体をポンプ輸送できるポンプにする。油井ポンプのような普通のタイプの往復動ポンプは固体粒子によって損傷してしまう。
【0092】
このタイプのポンプの例は商業的に入手できる一般にモワノー(Moineau)ポンプまたはプログレッシブキャビティーポンプとして公知のものである。この種のプログレッシブキャビティーポンプはモワノー(Moineau)原理で作動し、その基本は回転要素(回転子)と固定要素(固定子)との間の幾何学的フィットで、回転子と固定子との間の界面にキャビキィーと呼ばれる一連の密封されたチャンバーが作られる。回転子が固定子内を偏心回転することでポンピング作用が生じる。流体は入口に形成されたキャビキィーから入り、キャビキィー中を出口へ送られる。その結果、ポンプ速度に正比例する非脈流のポジティブ移動が生じる。これによって、このプログレッシブキャビティーポンプは小量のショットから連続流まで材料を広範囲な流速で移送することができる。
【0093】
[図3]に示すように、管路40はタンク2から上向きに離れ、その傾斜角は10°以上、好ましくは30°以上である。また、管路40はポンプ50の下流で濃縮した触媒スラリーを下向きに導く管路を有し、その傾斜角は10°以上である。この構成にすることによってポンプ50の性能を挙げることができ、更にはポンプ50が中断または止まった時にポンプ50中での閉塞を避けることができる。
【0094】
[図3]に示すように、管路40はスラリポンプ50の入口、出口またはその両方に脈動緩衝装置、安全弁およびイソブタンフラッシング手段300、330をさらに備えている。イソブタンのフラッシング手段300;330を用いることで管路40をイソブタン希釈剤でフラッシュして管路40およびポンプ50の閉塞を防ぐことができる。イソブタン流を噴射するための管路300、330上には測定手段を設けることができる。一般に、タンク2をバッファタンク3に接続するのに異なる管路4を使用する場合、1つのアクティブなポンプ50を有する1つの管路をアクティブにし、その他の管路40およびポンプ50は非作動モードに保つ。
【0095】
好ましくはバッファタンクに濃縮したスラリーを噴射してバッファタンク中の触媒に対するイソブタン希釈剤の比を一定の濃度にする。また、管路40には手段の管路40の濃縮した触媒スラリーの流速を容易に測定するための流量測定手段設けることができる。希釈剤に対する触媒の比はポンプ50の速度を制御し、イソブタン希釈剤の濃度を測定することで正しく制御できる。
【0096】
触媒の廃物は弁39を備えた管路37を介して一つまたは複数のダンプタンク38に取り出す。ダンプタンク38は攪拌手段を有し、廃棄物を中和し、除去するための鉱油を主要している。ダンプタンク38はバッファタンク3より大きいのが好ましい。
【0097】
不適当な触媒が準備された場合には、それをタンク3からダンプタンク38へ送ることができる。ダンプタンク38はスチームジャケットを有する加熱タンクであるのが好ましい。ここで希釈剤のイソブタンは蒸気にされる。蒸気ジャケットはイソブタンを脱着するので好ましい。蒸発し希釈剤は蒸留またはフレア(炎)中に送る。触媒の断片が蒸発された希釈剤と一緒に随伴するのを避けるためにダンプタンク38にはガードフィルタを備えるのが好ましい。また、ダンプタンク38はそのタンク中の圧力を制御するための圧力調節部を備えている。希釈剤が蒸着した後に残る触媒の廃物はタンク38から好ましくはタンク38の底に設けた排出システムによって抜き取る。抜き取った廃物はドラムに入れ、破壊する。
【0098】
希釈されたチーグラー‐ナッタ触媒スラリーはバッファタンク3から一つまたは複数の管路4を介して反応装置1に送られる。この管路4の内径は0.3〜2cm、好ましくは0.6〜1cmである。各管路4はポンプ5を備え、このポンプ5は反応装置1へ噴射される希釈されたチーグラー‐ナッタ触媒スラリーの移送を制御する。特に好ましい実施例ではポンプはメンブレンポンプである。
【0099】
[図3]に示すように、管路4はバッファタンク3から上方へ10°以上、好ましくは30°以上の傾斜角度で延びる。さらに、この管路4はポンプ5の下流で下向きに10°以上の傾斜角度で延びて希釈された触媒スラリーを下向きに導く。この構成にすることによって、ポンプ5の運転が中断したり止まった時でも希釈された触媒スラリーが下方へ流れるようになり、ポンプ5の動作を良くし、ポンプ5の閉塞を避けることができる。
【0100】
管路4はメンブレンポンプ5入口、出口またはその両方にパルス緩衝装置安全弁とイソブタンフラッシング手段30、33とをさらに備えている。イソブタンフラッシング手段30、33は管路4をイソブタンでフラッシュして管路4およびポンプ5の閉塞を防ぐイソブタンフラッシングを行う。メンブレンポンプ5の下流の反応装置1へ至る管路4はイソブタンフラッシングによっての連続的フラッシングするのが好ましい。一方、ポンプ5の上方流側の管路4はイソブタンフラッシング手段で間欠的にフラッシュすることができる。反応装置1にバッファタンク3を接続している各管路4が複数ある場合には、一般に1つのアクティブなポンプ5を有する1つの管路をアクティブにし、その他の管路4およびポンプ5は止めて、スタンバイモードに保っておく。この後者場合、ポンプ5の下流の管路は適当な希釈剤流でフラッシュしておくのが好ましい。ポンプ5の上流の管路は間欠的にフラッシュすることができる。
【0101】
触媒がリークする危険を減らすために、触媒は一般に約43バールで運転される反応装置中の圧力より低い圧力、例えば、6〜16バーレの圧力でバッファタンク3中に収容しなければならない。ポンプ5の下流の管路4の圧力は45〜65バールにするのが好ましい。この圧力はタンク2およびバッファタンク3の圧力に比較して高いが、希釈された触媒を充分な圧力下に反応装置へ送るにはこの圧力が必要である。
【0102】
反応装置への触媒流を正しく制御し、制御された一定の流量の触媒スラリーを反応装置へポンプ輸送することが重要である。反応装置へ予想しない流れが入ると反応が暴走することになり、反応装置へ流れが変動すると効率が低下し、製品の品質が変動することになる。従って、特に好ましい実施例では噴射ポンプ5の流速を性能装置の活性によって制御する。特に、ポンプを反応装置中の反応物の濃度の関数で制御する。反応物は反応装置中のモノマーすなわちエチレンの濃度であるのが好ましい。
【0103】
しかし、メンブレンポンプを他の反応物の濃度、例えば、反応装置中のコモノマまたは水素の濃度の関数で制御できるということは明らかである。本発明ではメンブレンポンプ5を使用することによって希釈された触媒流を良好に制御できる。特に、反応装置への触媒の流速はメンブレンポンプのストロークおよび/または周期を調整することで制御できる。さらに、ポンプ流速は反応装置中のエチレン濃度によって制御される。反応装置中のエチレン濃度が高い場合、より多くの触媒を反応装置に送る。逆の場合にはこの逆にする。このように、エチレン重合速度の変化が考慮され、実際の生産速度と製品の性質は大幅
に変動しない。
【0104】
他の実施例では、本発明装置は反応装置へ触媒スラリーを供給する前に触媒スラリーを適当な量の助触媒と適当な時間接触させるための助触媒分配システムをさらに備えている。メタロセン触媒を使用する場合にはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を助触媒として使用するのが好ましい。チーグラー‐ナッタ触媒を使用する時にもトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)を助触媒として使用するのが好ましい。
【0105】
[図1]または[図3]に記載の助触媒分配システム11は助触媒を調製し、収納する2つの助触媒貯蔵タンクから成る。1つのタンクにはそれに助触媒を供給するための管路4が接続されている。
【0106】
助触媒の廃棄物はダンプタンクへ送ることができる。ダンプタンクは攪拌手段を備え、中和と除去のための鉱油を収容してあるのが好ましい。ダンプタンクは蒸気ジャケットを備えた加熱タンクにしてイソブタンを蒸発させ、蒸留またはフレア中へ送るのが好ましい。
【0107】
助触媒は一般に商用ドラムで供給される。助触媒分配システム11の貯蔵タンク中にTIBAL助触媒は一般にヘキサンまたはヘプタン溶液で供給されるが、純粋な化合物を供給することもできる。TIBAL助触媒は反応装置1と撹拌槽3とを接続する管路4の助触媒噴射管路12を介して貯蔵タンクから供給される。この管路12はメンブレンポンプ5の下流かつ反応装置1の上流で管路4に接続している。管路4に流量測定手段10がある場合には、助触媒噴射管路12は流量計10の下流かつ反応装置上流で管路4に接続するのが好ましい。
【0108】
チーグラー-ナッタ/メタロセン触媒とTIBAL助触媒との接触時間およびチーグラー-ナッタ/メタロセン触媒とTIBAL助触媒比が最終重合製品の活性と粒子形状(granulometry)に重要な影響を与える。TIBAL助触媒を使用するとより大きなポリエチレン粒子が活性から得られる。また、TIBAL助触媒と触媒とを予備接触させるとかさ濃度が改善し、重合反応装置中でのポリエチレンの沈殿効率がよくなる。本発明では反応装置1に入れる前に適当な量のTIBAL助触媒をメンブレンポンプ5の下流で管路4に噴射する。
【0109】
TIBAL助触媒を管路4に噴射する場合の噴射位置は、反応装置に供給する前に触媒と一定の予備接触時間が与えられるような、反応装置から一定の距離の所にする。充分な予備接触時間を与えるために、メタロセン触媒スラリーとTIBAL助触媒とが5秒〜1分間にできるように、各管路4は接触タンク13を備えているのが好ましい。この接触タンク13を助触媒分配システムの噴射位置の下流に配置して管路4中での触媒スラリーと助触媒との接触時間を長くするのが好ましい。この接触タンク13は攪拌してもしなくてもよい。他の好ましい実施例では管路4の内径は0.3〜2cm、好ましくは0.6〜1 cmで、接触タンク13の直径は1〜15cm、好ましくは6〜9cmにすることができる。
【0110】
本発明の各実施例ではさらに、管路4の触媒の流速を容易に測定するための流量測定手段10を管路4に備えている。この流量測定手段10はコリオリ(Coriolis)流量メータであるのが好ましい。流量測定手段10は撹拌槽3とメンブレンポンプ5との間に設けるか、ポンプ手段5の下流に設けることができる。流量測定手段10は助触媒噴射管路11の上流に設けることができる。スラリーは触媒/イソブタン希釈剤比を制御して噴射するのが好ましい。希釈剤/触媒比はポンプ5の速度を制御し、イソブタン希釈剤の濃度を測定することによって正しく制御できる。コリオリ流量メータは撹拌槽3の出口で触媒スラリー流と濃度とを測定でき、間接的に懸濁物質の濃度を決定することができる。スラリー濃度、キャリヤ流体濃度および固体粒子濃度に基づいて懸濁物質の濃度を見積るための相関関係はある。
【0111】
他の実施例では、測定手段10、好ましくはコリオリ流量メータは貯蔵タンク2と撹拌槽3との間の管路40、例えばこの管路40のメンブレンポンプ50の下流に設ける。
【0112】
他の実施例では、触媒スラリーが制御された流速下に反応装置に噴射される。反応装置に触媒スラリーを送る管路4は一つまたは複数の弁、好ましくはピストン弁22を備えている。このピストン弁22は管路4を反応装置1に接続するオリフィスをシールする。触媒スラリーを1つの反応装置へ移すために複数の異なる管路4を使用する場合には1つの管路4のポンプをアクティブにして反応装置に触媒スラリーをポンプ輸送し、他の管路4のポンプは止め、その管路はイソブタンでフラッシュしているのが好ましい。
【0113】
明細書の図面を簡潔、明瞭にするために、ポンプ、補助装置、追加の弁、その他の従来のプロセス機器の説明は省略する。また、重合プロセスで一般に使われる追加の測定や制御デバイス等の説明や省略する。また、本発明装置の各部品の寸法は重合反応装置の大きさ、反応装置の寸法に応じて変更できるということは理解できよう。
【0114】
他の好ましい実施例では本発明の運転時に全てのライン、タンク、ポンプ、弁、その他を窒素または希釈剤のイソブタンでフラッシングまたはパージして閉塞しないようにしておくことができる。閉塞またはブロック化を避けるために本発明装置およびラインに必要なフラッシュ/パージ手段を設置できるということは理解できよう。
【0115】
本発明装置の各部品の数および寸法は重合反応装置の大きさと反応装置の寸法に応じて変更できるということは上記説明から明らかである。また、上記で示した圧力値は好ましい圧力値であり、また、それから一般に約±1バールだけはずれた圧力値でもよいということは理解できよう。また、タンク、管路、その他の全ての圧力値は重合反応装置の圧力値以下であるということも明らかである。
【0116】
他の好ましい実施例では、本発明の全てのラインまたは管路に必要に応じて流量測定手段を設置できるということは空き坂である。
【0117】
本発明装置は単一の重合反応装置への供給ができる。好ましい実施例では、本発明装置は互いに直列に接続された第1と第2の反応装置からなる液体充填式の2つのループ重合反応装置に適用される。第1の反応装置から第2の反応装置へのスラリーの輸送は第1の反応装置に接続された沈殿レグを介して行われる。この直列に連結された反応装置はビモダル(bimodal)なポリエチレンの製造に特に適している。
【0118】
本発明装置は上記反応装置の両方に備えることができる。管路4の数は第1および第2の反応装置に分けることができる。また、本発明の装置を少なくとも2つの使用すること、例えば、2つ以上の異なる触媒を使うこともできる。好ましい実施例では本発明の装置を[図4]に示す単一ループ反応装置か、[図5]に示すダブルループ反応装置で使用する。
【0119】
[図4]は互いに接続された複数のパイプ104から成る単一ループ反応装置を示している。垂直パイプセグメント104は熱ジャケット105を備えているのが好ましい。反応装置の重合熱はこのジャケット中を循環する冷却水を介して抜き出すことができる。反応物はライン107を介して反応装置100に供給される。触媒は任意成分の助触媒または活性化剤と一緒に反応装置100にライン106を介して噴射される。
【0120】
重合スラリーは、軸流ポンプ101のような一つまたは複数のポンプによって図示した矢印108に沿ってループ反応装置100中を循環される。ポンプには電動機102から電力が供給される。「ポンプ」とは例えばピストンまたは回転インペラ103で流体の圧力を上げて圧縮し、駆動する任意の装置を意味する。反応装置100は反応装置100のパイプ104に接続された一つまたは複数の沈殿レグ109を備えている。沈殿レグ109は遮断弁110を備えているのが好ましい。この弁110は通常状態では開いており、例えば沈殿レグを運転から分離する時に閉じられる。沈殿レグには製品取出し弁または排出弁111をさらに備えているのが好ましい。排出弁111が完全開放されるとポリマースラリーが放出される。沈殿レグ109中に沈殿したポリマースラリーは一つまたは複数の製品回収ライン113を介して製品回収帯域へ送ることができる。
【0121】
[図5]は互いに直列に接続された2つの単一ループ反応装置100、116からなるダブルループ反応装置100/116を示している。両方の反応装置100、116互いに接続された複数のパイプ104から成る。垂直ライン111は任意の弁にすることができ、パイプセグメント104には加熱ジャケット105を連続または周期的セクションに付けることができる。反応物はライン107を介して反応装置100に供給される。触媒は任意成分の助触媒または活性化剤と一緒に反応装置100または116にライン106を介して噴射される。重合スラリーは一つまたは複数のポンプ、例えば軸流ポンプ101によってループ反応装置100、116全体を矢印108で示す方向に循環される。ポンプには電動機102から電力が供給される。ポンプは一組の回転インペラ103を備えることができる。反応装置100、116にはさらに、反応装置100、116のパイプ104に接続した一つまたは複数の沈殿レグ109を備えている。
【0122】
沈殿レグ109は遮断弁110を備えているのが好ましい。沈殿レグには製品取出し弁または排出弁111をさらに備えることができる。反応装置100の排出弁111の下流の沈殿レグ109の出口には三方向弁114を設ける。この三方向弁114は沈殿レグ109中に沈殿したポリマースラリーを移送ライン112を介して他の反応装置116へ移送する。移送ライン112は1つの反応装置100の沈殿レグ109の出口に設けた三方弁114を介して他の反応装置116の入口とを接続する。この入り口にはピストン弁115があるのが好ましい。反応装置116の沈殿レグ109に沈殿したポリマースラリーは一つまたは複数の製品回収ライン113を介して製品回収帯域へ取り出すことができる。
【0123】
本発明はさらに、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンの重合反応装置への触媒スラリーの供給を最適化する方法に関するものである。
【0124】
一つの実施例では、本発明はポリエチレンを製造する重合反応装置1に固体触媒、好ましくは上記のメタロセン触媒と、炭化水素の希釈剤、好ましくはイソブタンとから成る触媒スラリーへの噴射制御方法に関するものであるが、本発明方法は重合反応装置1へのクロム触媒スラリーの噴射制御にも適していることは明らかである。本発明方法は重合反応装置1へのメタロセン触媒またはクロム触媒の供給を最適化するのに適した方法にす関するものである。この方法は下記の(a)〜(c)の段階を有する。すなわち、(a)一つまたは複数の貯蔵タンク2中に炭化水素希釈剤または鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを用意し、(b)この濃縮された触媒スラリーを希釈を貯蔵タンクから撹拌槽へ移送し、そこで重合反応に適した濃度に希釈し、(c)希釈された触媒スラリーをポンプ手段5を用いて制御された流速で一つまたは複数の管路4を介して撹拌槽3から重合反応装置1へポンプ輸送する。
【0125】
[図1]に示す本発明の好ましい実施例では、本発明方法は撹拌槽3中で触媒/希釈剤比を制御することによって貯蔵タンク2から撹拌槽3とへ所定の流速で触媒スラリーを移す。流速の制御は貯蔵タンク2と計量弁9、好ましくはボールチェックフィーダまたはショットフィーダ弁に接続された管路6、7から成る貯蔵タンク2から撹拌槽3へ触媒スラリーを送る触媒供給システムを設けることで行う。貯蔵タンク2から撹拌槽3への触媒流は弁9で調整され、これは撹拌槽3中に入れた触媒および希釈剤の量(濃度)に依存する。希釈剤/触媒の比は正しく制御する。これは触媒供給システムおよび計量弁9によって貯蔵タンク2からの触媒供給を正しく制御し、適当な量のイソブタン希釈剤を管路24を介して撹拌槽3へ送ることで可能である。イソブタン希釈剤の量はコリオリメータ10で求めた触媒濃度を使用して濃度測定から制御できる。
【0126】
[図3]に示す実施例では、本発明は重合反応装置1への触媒の供給を最適化するのに適した方法に関するものである。この方法は下記の(a)〜(c)の段階を有する:(a)鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを貯蔵タンク2からバッファータンク3へ移送し、(b)バッファータンク3に希釈剤を送り、重合反応に適した濃度に希釈し、(c)希釈された触媒スラリーを制御された流速でバッファータンク3から反応装置(1)へ送る。この方法は重合反応装置1へのチーグラー‐ナッタ触媒TiCl4の供給を最適化するのに特に適している。この場合、チーグラー‐ナッタ触媒は商用コンテナ2中に鉱油の固体粒子が懸濁した状態で貯蔵タンク2に供給され、バッファータンク3へ移される。この本発明方法は濃縮された触媒スラリーをタンク2からポンプ50、好ましくはプログレッシブキャビティーポンプを備えた管路40を介してバッファタンク3へ移す段階を有する。
【0127】
他の好ましい実施例では、本発明方法で炭化水素希釈剤、好ましくはイソブタンで適当な濃度、好ましくは0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは0.5〜4重量%の濃度に希釈された触媒スラリーを撹拌槽3で作る。例えば、スラリーは炭化水素希釈剤によって0.1〜4重量%、好ましくは0.1〜1.0重量%、さらに好ましくは0.5重量%の濃度に希釈される。この濃度に希釈することによって、希釈されたスラリーをメンブレンポンプ(ダイヤフラムポンプ)5を使用して反応装置1へ噴射することができる。このポンプを使用することで反応装置への触媒スラリー流の噴射を精密に正しく制御することができる。イソブタン希釈剤の量はコリオリメータ10で求めた触媒濃度を使用した濃度測定によって制御できる。
【0128】
本発明のさらに他の実施例では、本発明方法で貯蔵タンク2を撹拌槽3と連結する管路中に希釈剤を噴射して触媒スラリーを炭化水素希釈剤、好ましくはイソブタンで適当な濃度に希釈する。この実施例では、貯蔵タンクから撹拌槽へ移送中に濃縮された触媒スラリーを希釈する。希釈された触媒は保持するか、さらに希釈できる。他の実施例では、本発明方法で反応装置1中の反応物の濃度を求めることによって、反応装置1への触媒スラリーの流速を制御する。反応装置1中の反応物はモノマー、エチレンの濃度であるのが好ましい。しかし、反応装置1中の反応物は他の反応物、コモノマーまたは反応装置中の希釈剤の濃度でもよい。実際には、この機構はバッファタンクから反応装置へ触媒スラリーを供給する各管路にメンブレンポンプを設け、反応装置中の反応物の濃度の関数で触媒の流速を調整することによって得られる。
【0129】
また、触媒と助触媒とを接触させることが必要で、有益な場合もある。従って、本発明はさらに、反応装置に触媒スラリーを供給する前に触媒スラリーと助触媒とを接触させる段階を有する方法を提供する。本発明方法は助触媒を反応装置に直接供給する方法に比べてより良い接触を行わせて助触媒-触媒混合物を形成する。この助触媒-触媒混合物を反応装置へ供給することで反応装置の重合反応をより良く制御でき、均一なレベルに維持できる。また、触媒と助触媒とを予備接触させることで最終重合製品の粒度分布(granulometry)が良くなり、かさ濃度が改善し、重合反応装置中に沈殿する重合製品の沈殿効率が良くなる。この方法は触媒-助触媒噴射比をより正確に制御するためにも使用できる。
【0130】
好ましい実施例では、本発明方法で助触媒、好ましくは上記定義の助触媒が管路中に存在する間に、希釈された触媒スラリーと接触される。[図1]および[図3]に示すように、助触媒分配システム12は少なくとも一つの貯蔵タンクと、管路4に接続した管路11とから成る。他の好ましい実施例では、本発明方法ではさらに、管路4の容積を局所的に大きくすることによって管路4中での触媒スラリーと助触媒との接触時間および予備接触を長くする。触媒と助触媒との間の予備接触を行うことで最終重合製品の粒度分布(granulometry)が変わり、かさ濃度が改善され、重合反応装置中で沈殿する重合製品の沈殿効率が良くなる。活性化中に助触媒と触媒粒子との接触をあまり長くし過ぎると、触媒活性が低下するだけでなく、実際に害が起こる。本発明方法は噴射比を正確に制御するのにも使用できる。管路の容積を局所的に大きくすることによって助触媒と触媒とのより良い予備接触が得られる。この容積の増加は各管路4に接触タンク13を配置することで行うことができる。この接触タンク13の直径は管路4の直径より大幅に大きくする。
【0131】
他の好ましい実施例では、本発明はバッファタンク3から管路4を介して反応装置1へ適当な流速で触媒スラリーを連続的に供給する方法を提供する。本発明は反応装置に触媒流の中断なしに連続的に触媒を供給できる方法を提供する。この機構によって重合反応装置へ触媒スラリーを変動なしに連続的に確実に供給ずき、それによって反応装置の重合反応の効率は向上する。
【0132】
他の好ましい実施例では、本発明は反応装置への触媒の流速を即系する手段、例えば好ましくはコリオリメータ(流速測定装置)で液体の流速を正確に測定する方法に関するものである。
【0133】
本発明はさらに、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造する重合反応装置へのチーグラー‐ナッタ触媒の調製、供給を最適化するための本発明装置の使用に関するものである。
本発明はさらに、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造する重合反応装置へのメタロセン触媒の調製、供給を最適化するための本発明の装置の使用に関するものである。
本発明はさらに、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造する重合反応装置へのクロム触媒の調製、供給を最適化するための本発明の装置の使用に関するものである。
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、当業者は合理的な変更および修正が可能であり、それらの変更および修正は特許請求の範囲に記載の本発明の範囲に入る。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を商業スケールのダブルループ反応装置での生産で用いた場合の例を示す。比較例としては従来の触媒供給システムおよび制御方法を使用した。
本発明を使用することによって従来の触媒供給システムおよび制御方法を使用した場合に比べてより高いスラリー濃度でより少ない変動で重合反応装置を運転することができる。下側の標準偏差から、本発明を用いることよって重合プロセスの制御が改善され、従って、製品のコンシステンシー(均一性)が得られるということが示される。
【0135】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(c)から成るポリエチレンを製造するための重合反応装置に触媒スラリーを供給するための装置:
(a)炭化水素希釈剤または鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを収容するための一つまたは複数の貯蔵タンク(2)、
(b)この貯蔵タンク(2)に一つまたは複数の管路を介して接続された、重合反応に適した濃度に希釈された触媒スラリーを収容するための撹拌槽(3)であって、希釈された触媒スラリーを撹拌槽(3)から反応装置(1)へ移送するための一つまたは複数の管路を備えた撹拌槽(3)、
(c)希釈された触媒スラリーを前記撹拌槽(3)から反応装置(1)へ移送するための上記撹拌槽(3)を重合反応装置に接続する一つまたは複数の管路(4)であって、各管路はスラリーを反応装置(1)へポンプ輸送するためのメンブレンポンプ(5)を備え、このメンブレンポンプ(5)は反応物の濃度の関数で制御可能である管路(4)。
【請求項2】
触媒スラリーを貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)へ移すための一つまたは複数の管路が希釈剤の噴射手段を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
触媒スラリーを貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)へ移すための一つまたは複数の管路が触媒スラリーを第1の貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)へ移すための第1の管路(6)を有し、この第1の管路(6)は、触媒スラリーを第2の貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)へ移すための第2の管路(7)と、第1の手段(6)と第2の手段(7)とを連結しているライン(8)を介して、切り換え可能である請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
触媒スラリーを貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)へ移すための管路(6、7)の各々がライン(8)の下流に計量弁(9)を有する請求項1下記文献のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
触媒スラリーを貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)へ移すため一つまたは複数の管路の各々がポンプ(5 0)を有する請求項1または2に記載の装置。
【請求項6】
濃縮した触媒スラリーを貯蔵タンク(2)からバッファタンク(3)へ移すための各管路に設けられた上記ポンプ(5 0)がプログレッシブキャビティーポンプである請求項5に記載の装置。
【請求項7】
希釈された触媒スラリーを撹拌槽(3)から反応装置(1)に移すための上記管路(4)に設けられた、触媒の流速を測定するための流速測定手段(10)をさらに有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
触媒スラリーを貯蔵タンク(2)から撹拌槽(3)に移すための上記管路(4)に設けられた、触媒の流速を測定するための流速測定手段(10)をさらに有する請求項1、2および5〜7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
触媒スラリーを反応装置中に噴射する前に一定量の助触媒を触媒スラリーと接触させるための助触媒供給システムをさらに有し、この助触媒供給システムは助触媒貯蔵タンク(11)と助触媒を移送するためのそれに連結した管路(12)とを有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
上記管路(4)がこの管路(4)内での触媒スラリーと助触媒との接触時間を長くするための接触タンクを備えている請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
重合反応装置(1)がポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造するのに適したものである請求項1〜10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
触媒がメタロセン触媒である請求項1〜4、7および9〜11に記載の装置。
【請求項13】
触媒が一般式:MXnを有するチグラー−ナッタ触媒(ここで、Mは第IV〜VII族から選択される遷移金属化合物、Xがハロゲン、nは金属の原子価である)である請求項1、2および5〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
助触媒が一般式AlR3またはAlR2Yを有するハロゲン化されていてもよい有機アルミニウム化合物(ここで、Rは1〜16個の炭素原子を有するアルキルであり、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、Yは水素またはハロゲンである)である請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
下記の(1)〜(4)の段階を有する、ポリエチレンを製造するための重合反応装置(1)への触媒スラリーの供給を最適化する方法:
(1)一つまたは複数の貯蔵タンク中に炭化水素希釈剤または鉱油中に固体触媒粒子が懸濁した濃縮された触媒スラリーを用意し、
(2)この濃縮された触媒スラリーを重合反応に適した濃度に希釈し、この希釈を貯蔵タンクから撹拌槽へ移送する間に行ない、希釈された触媒スラリーを保持し、
(3)必要な場合には、貯蔵タンク中で触媒スラリーをさらに希釈し、
(4)希釈された触媒スラリーを一つまたは複数の管路(4)を介して、この管路(4)に設けたポンプ手段(5)を用いて撹拌槽(3)から重合反応装置(1)へ制御された流速でポンプ輸送する。
【請求項16】
ビモダルなポリエチレンを製造するための重合反応装置(1)への触媒スラリーの供給を最適化するための請求項15に記載の方法。
【請求項17】
触媒スラリーが炭化水素の希釈剤によって0.1〜10重量%の濃度に希釈される請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
撹拌槽(3)中での希釈剤と触媒との間の比を制御することによって触媒スラリーを撹拌槽(3)から重合反応装置(1)へ制御された流速で移送する請求項15〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
反応装置に前記触媒スラリーを噴射する前に所定量の助触媒を触媒スラリーと接触させる請求項15〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
管路(4)中で助触媒を触媒スラリーと接触させる請求項19に記載の方法。
【請求項21】
管路(4)の容積を局所的に大きくすることによって管路(4)中での助触媒と触媒スラ
リーとの接触時間を長くする請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
反応装置(1)中の反応物、好ましくはエチレンの濃度を決定することによって撹拌槽(3)から重合反応装置(1)への触媒スラリーの流速を制御する請求項15〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
管路を介して撹拌槽(3)から反応装置(1)へ触媒スラリーを適当な流速で連続的に供給する請求項15〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
触媒がメタロセン触媒、好ましくは担持されたメタロセン触媒である請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
触媒が一般式:MXnを有するチグラー−ナッタ触媒(ここで、Mは第IV〜VII族から選択される遷移金属化合物、Xがハロゲン、nは金属の原子価である)である請求項15〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
助触媒が一般式AlR3またはAlR2Yを有するハロゲン化されていてもよい有機アルミニウム化合物(ここで、Rは1〜16個の炭素原子を有するアルキルであり、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、Yは水素またはハロゲンである)である請求項15〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜4、7,9〜12および14のいずれか一項に記載の装置の、ポリエチレンを製造する重合反応装置へのメタロセン触媒スラリーの調製および供給を最適化するための使用。
【請求項28】
請求項1、2、5〜11および13〜14のいずれか一項に記載の装置の、ポリエチレン、好ましくはビモダル(bimodal)なポリエチレンを製造する重合反応装置(1)へのチーグラー‐ナッタ触媒の調整および供給を最適化するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−1739(P2012−1739A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222055(P2011−222055)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【分割の表示】特願2006−552631(P2006−552631)の分割
【原出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】