説明

重合可能なポリヒドロキシ化合物の製造方法

本発明は、グリセロールモノメタクリレート(GMMA)を製造するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エステル基中に複数個のヒドロキシル基を有する、(メト)アクリル酸の置換エステルの製造方法に関する。
【0002】
技術水準
Beinert, HildおよびRempp(Die Makromolekulare Chemie, 175, 2069-2077 (1974))では、ヘキサメチレンリン酸トリアミド(HMPT)およびジエチルエーテルから成る溶剤混合物中に含有されるメタクリル酸と塩化チオニルとを含む混合物を、2,3−O−イソプロピリデングリセリンとを反応させることによる、(2,2−ジメチル−1,3−ジオキオラン−4−イル)メチルメタクリレートの製造が記載されている。得られたメタクリレートをアニオン重合する。ポリマー類似反応中で、ポリマーをポリ(2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート)に変換する。
【0003】
モノマーの製造は、−5℃〜15℃で、毒性的に問題のある溶剤中で実施する。この方法は、毒性の問題から工業的には使用することはできない。
【0004】
WO00/63149(Hydron Ltd.)では、メタクリル酸の保護グリシン−誘導体と、酸性イオン交換体の形で固定化された酸とを反応させることによって、重合可能なジオールを製造するための方法が記載されている。得られたアセトンは、反応系からの空気と一緒に吹きとばした。
【0005】
反応容器に(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレート、脱イオン水および洗浄されたカチオン交換体を導入した。引き続いて、反応混合物の混合を確実なものとする空気流を、48時間に亘って混合物に通過させた。
【0006】
反応完了後に、イオン交換体を濾別し、かつ過剰量の水を、乾燥空気流によって搬出した。
【0007】
WO00/63149の方法は、多くの欠点を有する:
−反応混合物中への空気流の吹き込みによって、イオン交換体の高い摩耗が生じる。生成物純度を高く要求する場合には、摩耗は、濾過によってさえも完全に除去されず、許容されるものではない。
−乾燥空気の吹き込みによって生成物の含水量を減少させる方法は、許容されない収率損失を招く。刊行物においては記載されていないが、生成物損失を減少させるためのなんらかの手段がとられるものである。
−いくつかの適用に関して含水量は高すぎる。含水量を確実かつ再現可能な程度に調整する方法に関しては開示されていない。
【0008】
WO00/63150(Hydron Ltd.)では同様に、アセトンの排除下での、メタクリル酸の保護グリセリン誘導体のイオン交換体接触反応による重合可能なジオールの製造方法が記載されている。これに関して副生成物として得られたメタクリル酸は、塩基性イオン交換体を用いて、第2工程において除去される。
【0009】
さらにこれらの方法は以下の欠点を有する:
−イオン交換体の再度の使用によって、生成物中の摩耗物の割合が増加する。
−生成物の含水量は、乾燥空気の貫流によって<3%に調整される。この方法は、収率損失と結びつく。
−架橋剤(グリセリンメタクリレート)含量は0.8%に達する。
【0010】
課題
前記で検討された技術水準に基づき、本発明の課題は、グリセリンモノメタクリレート(GMMA)を製造するための方法を提供することであり、この場合、これらはもはや技術水準における欠点を有することなく、かつ、特には、
−反応混合物の熱負荷は可能なかぎり少なく、
−生成物は、定められた可能な限り少ない含水量を有し、
−大規模な処理をおこなうことなく、イオン交換体の問題となる摩耗を防止し、
−バッチ方法の代わりに半連続的方法をおこない、
−技術水準で常用の安定剤の量よりも少ない量で実施され、
−変色しないかまたはわずかにのみ変色する、貯蔵安定性の生成物が得られ、
−無毒の重合安定剤を用いて、生成物を処理する。
【0011】
高い熱負荷によってモノマー中に生じる架橋化合物は、モノマー中ですでに重合しており、かつモノマーを使用不可能なものとする望ましくない粘度増加を招く。さらには、すでにモノマー中での少ない架橋剤の量が、ポリマーの性質変化を招き、この場合、これは同様に望ましいものではない。したがって製造方法において増加する熱負荷が可能な限り小さく維持されるべきである。
【0012】
したがって、本発明の課題は、式I
【0013】
【化1】

[式中、RはHまたはCHであり、
Aは(CH)であり、その際、mは0または1の値であってもよく、
2〜6は、同一または異なって、OH、H、脂肪族または芳香族炭化水素を示していてもよく、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3級ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、イソボルニル、ヘプチル、オクチル、置換された炭化水素、たとえばヒドロキシエチル、2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、2−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル、2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシエチル、2−エチルヘキシル、イソオクチルであり、
nは0、1または2の値であってもよい]の化合物を製造するための方法に関し、この場合、この方法は、一般式II
【0014】
【化2】

[式中、R、R、R、R、R、R、A、mおよびnは前記意味を有し、かつRおよびRは同一かまたは異なって、メチル、エチルまたはプロピルを示していてもよい]の化合物を、少量の水と一緒に、酸性イオン交換体中で、固定床中で反応させ、かつ得られた化合物III
C=O (III)
を連続的に反応媒体から取り出し、かつ生成物を、トコフェロール誘導体を用いて重合および変色に対して安定化させることを特徴とする。化合物IIと水との有利な比は1:1〜1:3である。極めて良好な結果は1:1.1〜1:2.5の比で達成される。
【0015】
本発明の好ましい実施態様は、1:1.2〜1:2の比での使用によりもたらされる。特に好ましくは、1:1.5の比である。前記すべてのデータにおいて、イオン交換体中に存在する水の割合も考慮される。
【0016】
本発明の範囲内において、好ましくはトコフェロール化合物を、エチレン性不飽和モノマーの貯蔵安定化および着色安定化のために使用する。
【0017】
本発明の範囲内において使用可能なトコフェノール化合物は、2位で4.8.12−トリメチルトリデシル基で置換されたクロマン−6−オール(3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−6−オール)である。本発明に関して、好ましくは使用可能なトコフェロールはα−トコフェロール、β−トコフェノール、γ−トコフェノール、δ−トコフェロール、ζ2−トコフェノールおよびエタ−トコフェロールであり、前記すべての化合物はそれぞれ(2R、4’R、8’R)−型で、ならびに、α−トコフェロールは(all−rac)−型であってもよい。好ましくはα−トコフェロールは、(2R,4R’,8’R)−型(俗称:RRR−α−トコフェロール)ならびに合成されたラセミ体α−トコフェノール(all−rac−α−トコフェロール)である。なかでも、かなり低いコストに基づいて、合成されたラセミ体α−トコフェノール(all−rac−α−トコフェロール)が特に好ましい。
【0018】
ベース安定化モノマーの貯蔵および色安定性のために使用することができる、トコフェロール化合物の量は、モノマーおよび所望の効率にしたがって、広範囲に亘って異なっていてもよい。多くの使用分野のために、モノマー量に対して1000ppmまでの量で十分である。しばしばすでに10ppmまでのわずかな添加量であっても、貯蔵安定性および着色安定性における顕著な改善を達成するのには十分である。しかしながら、10ppmを下廻る量で使用する場合には、貯蔵安定性および着色安定性は一般的にはみられない。したがって、添加すべき量の好ましい範囲としては、モノマー質量に対して10〜1000ppmのトコフェロール化合物である。極めて良好な結果は50〜800ppmで達成される。本発明の好ましい実施態様は、100〜600ppmの使用量でもたらされる。特に好ましくは、約500ppmのトコフェロール化合物を使用する。
【0019】
(メト)アクリルの用語はメタクリル、アクリルおよびこれらの混合物を包含する。
【0020】
工程の説明
イソプロピリデングリセリンメタクリレート(IPGMA)の、グリセリンモノメタクリレート(GMMA)への加水分解は、実験室系において試験した。この系のフロー図は図1に示す。
【0021】
充填;分離カラム(3)の塔底(4)に、ヒドロキノンモノメチルエーテルでベース安定化したIPGMA500gを充填した。
【0022】
ベース安定化とは、(メト)アクリレート化学において常用の、モノマーまたはモノマー混合物の安定化を意味し、この場合、これらは、ヒドロキノン、たとえばヒドロキノンモノメチルエーテル、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、フェノチアジン、N−ニトロソフェニルヒドトキシアミン、ジエチルヒドロキシアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−α−(ジメチルアミノ)−p−クレゾールまたは4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(rad.)(たとえば、TEMPOL(R))またはこれら化合物の混合物を用いて安定化させることを意味するものと解する。使用された安定剤の量は、それぞれ別個の基質に対して35ppmである。ベース安定化は、反応前に負荷される。モノマーを、前記ベース安定化に混合する場合には、反応後に、貯蔵安定剤として添加されるトコフェロール量は、モノマー量に対して10〜1000ppmである。
【0023】
モノマーについてベース安定化をおこなわない場合には、反応後に貯蔵安定剤として使用されるトコフェロール量は100〜600ppmである。
前反応:試験開始の際に、塔底内容物を周囲圧で、ギアポンプを用いて、塔頂から、温度調節された(40℃)湿性のイオン交換体−固定床上(たとえば、Dowex M-31:Dow Chemical)(1、2)に導入した。イオン交換体中に存在する水は、GMMAおよびアセトンを形成しながらIPGMAと反応した。引き続いて、反応混合物は、分離カラムを通過させ、アセトンを反応混合物から留去し(6)、さらにここから塔底に戻し、その際、これを再度固定床に、ポンプで装入した(循環様式)。
主反応:一定の時間の後に(約30分)、一定量の水(約45g)を、固定床(5)の上流に、一定の時間間隔(約1時間)で、ポンプを用いて直接的に計量供給した。同時に、圧力を、反応循環系中で約150mバールに減圧し、可能なかぎり完全にアセトンを除去した。
後反応;引き続いて、圧力を段階的に、さらに約20mバールに減圧し、アセトンの残量および過剰量の水を除去した。一定の時間間隔の後に(約2時間)、プラントの運転を停止し、かつ最終的な反応生成物を、塔底および固定床から搬出した。
符号の説明
番号 説明
1 イオン交換体
2 加熱ジャケット
3 分離カラム
4 塔底
5 給水装置
6 アセトン−/水−留出物
表は、濁度測定の結果を示す。
【0024】
濁度測定は、実験室用濁度計2100AN型(Hach社)を用いて実施した。これは、濁度0〜10.000NTUを測定するものである(比濁計濁度単位;ホルマジン濁度単位の定義に相当する=TE/F)。濁度計は、標準EN27027(ISO7027)に相当する。このホルマジン標準は、AWWA(American Waterworks Association)により刊行された第13版(1971)で、水および廃水試験の標準方法として定められたものである。
【0025】
測定すべき試料を、分析キュベット中に充填した。引き続き、これを糸くずのない布地でこすり、さらにシリコーン油の薄層を表面に滴加した。濁度計中にフィルターモジュールを挿入した後にキュベットを挿入し、かつ濁度を測定した。
【0026】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による系のフロー図
【符号の説明】
【0028】
1 イオン交換体、 2 加熱ジャケット、 3 分離カラム、 4 塔底、 5 給水装置、 6 アセトン−/水−留出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、RはHまたはCHであり、
Aは(CH)であり、その際、mは0または1の値であってもよく、
2〜6は、同一または異なって、OH、H、脂肪族または芳香族炭化水素を示していてもよく、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル(等)であり、
nは0、1または2の値であってもよい]の化合物を製造するための方法において、
一般式II
【化2】

[式中、R、R、R、R、R、R、A、mおよびnは前記意味を有し、かつRおよびRは同一かまたは異なって、メチル、エチルまたはプロピルを示していてもよい]の化合物を、少量の水と一緒に(化合物(II)と水との比1:1〜1:3)、酸性イオン交換体上で、固体床中で反応させ、かつ、得られた化合物III
C=O
を連続的に反応媒体から取り出すことを特徴とする、式Iの化合物を製造するための方法。
【請求項2】
トコフェロール誘導体を用いて重合および着色に対して安定化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モノマー混合物に対して10ppm〜1000ppmの量のトコフェロールを用いて安定化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コンタクトレンズを製造するための、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法により得られたモノマー混合物の使用。
【請求項5】
水溶性ポリマーを製造するための、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法により得られたモノマー混合物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2007−509849(P2007−509849A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535955(P2006−535955)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008182
【国際公開番号】WO2005/047227
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】