説明

重合性化合物および重合性組成物

【課題】高屈折率な新規な重合性化合物、これを用いた重合性組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される重合性化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な重合性化合物、これを用いた重合性組成物およびその硬化物に関する。さらに詳しくは、本発明は、バリア積層体の有機層を形成するための重合性組成物に適している新規な重合性化合物、これを用いた重合性組成物およびその硬化物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示素子や液晶表示素子はフレキシブルな有機フィルム上に当該素子機能層を形成して作製することが可能である。しかし、実際に表示素子として用いるためには、視認性を高めるために、反射防止性能を有する層の形成が必要不可欠である。従来、表示素子用の反射防止膜としては、高屈折率層と低屈折率層との積層膜よりなるものが提案されており、これらの積層膜は、通常、スパッタ法や反応性スパッタ法で成膜される(例えば、特許文献1)。一方で、有機EL表示素子や液晶表示素子は酸素や水蒸気の存在下で急速に劣化することから、ガスバリア性を有する層で表示素子を保護する必要がある。このため、ガスバリア性能と反射防止性能を併せ持ったフィルムの開発が強く望まれている。
【0003】
この問題を解決するために、プラスチックフィルム上に有機無機積層型の積層体を形成したガスバリアフィルムを用いることが知られている。特許文献2には、6官能のアクリレ−トもしくはメタクリレ−トのモノマーもしくはオリゴマーを含む組成物を硬化させた有機層と、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物、インジウムとスズの複合酸化物、インジウムとセリウムの複合酸化物等の中から選ばれた酸化物からなる無機層を積層したガスバリアフィルムが開示されている。しかしながら、特許文献2には、硬化用組成物中の6官能のアクリレ−トモノマー等の含有量を30質量%以上の範囲内でなるべく多くした方がバリア性が高まると記載されているが、含有量が100質量%であるものであっても水蒸気透過率は0.08g/m2/dayに留まっている。
【0004】
一方、有機EL素子に用いるための基板にはさらに高いバリア性が要求される。水蒸気透過率はMOCON法の測定限界である0.005g/m2/day未満であることが好ましい。かかる要求に応えるための手段として、特許文献3には有機層と無機層の複数層の交互積層体をバリア層とすることにより、水蒸気透過率として0.005g/m2/day未満を実現する技術が開示されている。該明細書によれば有機層と無機層がそれぞれ1層ずつしか積層されていない場合は、水蒸気透過率が0.011g/m2/dayであり、多層積層することの技術的価値が明確に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−142603号公報
【特許文献2】特開2002−264274号公報
【特許文献3】米国特許第6,413,645号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、産業上の利用性を考慮すると、特許文献3に記載されるように有機層と無機層を多層積層することは生産性を低下させることになるため、ガスバリアフィルムを大量に供給する上で大きな問題となる。ガスバリアフィルムを低コストで大量に製造するには、できるだけ少ない積層数であっても高いバリア性を発現することが求められる。これらの背景から、有機層、無機層の組が1組で0.005g/m2/day以下、特に0.001g/m2/day未満の水蒸気透過率を達成できる有機無機積層型の積層体の開発が望まれる。このような積層体を達成するための1つの方針として、有機層を、重合性組成物を硬化させて形成する場合の、重合性組成物の改善が挙げられる。具体的には、重合性組成物に含まれる重合性化合物の重合率が高いことが挙げられる。さらに、かかる重合性化合物の屈折率が高ければ、優れたガスバリア性能と反射防止性能とを兼備するバリア積層体を提供できる。
本願発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、重合率が高い重合性化合物であって、かつ、硬化後の屈折率が高い重合性化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明者らが鋭意研究の結果、紫外線による硬化が速く、また、その硬化物が高屈折率な重合性組成物を見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、下記<1>により、好ましくは<2>〜<10>により、上記課題は解決された。
<1>一般式(1)で表される重合性化合物。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、メチル基、またはシクロヘキシル基を表わす。nは0〜2の整数である。Xは、それぞれ独立に下記式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表す。)
【化2】

(式(a)、(b)および(d)中、R3は、水素原子またはメチル基を表す。)
<2>R1がメチル基である、<1>に記載の重合性化合物。
<3>nが0である、<1>または<2>に記載の重合性化合物。
<4><1>〜<3>のいずれか1項に記載の重合性化合物(A)を含む重合性組成物。
<5>さらに、光重合開始剤(C)を含有する、<4>に記載の重合性組成物。
<6>バリア積層体形成用である、<4>または<5>に記載の重合性組成物。
<7><4>〜<6>のいずれか1項に記載の重合性組成物の硬化物。
<8>基材フィルム上に、<4>〜<6>のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化してなる有機層を有する積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。本明細書において、アルキル基等の「基」は、特に述べない限り、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、炭素数が限定されている基の場合、該炭素数は、置換基が有する炭素数を含めた数を意味している。
【0009】
本発明の化合物は、一般式(1)で表される重合性化合物である。
一般式(1)
【化3】

(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、メチル基、またはシクロヘキシル基を表わす。nは0〜2の整数である。Xは、それぞれ独立に下記式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表す。)
【化4】

(式(a)、(b)および(d)中、R3は、水素原子またはメチル基を表す。)
一般式(1)中、R1はメチル基が好ましい。R2は、水素原子が好ましい。
1、R2、およびXは、1つの化合物中に、複数含まれるが、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、それぞれ、同じであることが好ましい。R3が、1つの化合物中に、2つ以上含まれる場合も、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
nは0または1が好ましく、0がより好ましい。
【0010】
以下に、一般式(1)で表される化合物を例示するが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
【化5】

【0011】
本発明における重合性化合物は、下記エポキシ化合物(i)と(メタ)アクリル酸、グリシジルメタクリレートまたはクロロメチルスチレンとの反応、または下記多価フェノール(ii)と(メタ)アクリル酸イソシアナトアルキル類との反応等で得ることができる。
【化6】

(式(i)および(ii)中、R1、R2、およびnは、それぞれ、一般式(1)におけるR1、R2、およびnと同義である。)
式(i)および(ii)中のR1、R2、およびnの好ましい範囲は、それぞれ、一般式(1)におけるR1、R2、およびnと同義である。
【0012】
<重合性組成物>
本発明の重合性組成物は、上記の一般式(1)で表される重合性化合物(A)を含むことを特徴とする。
【0013】
不飽和基含有化合物(B)
さらに好ましくは、重合性化合物(A)成分以外の不飽和基含有化合物(B)を含むことが好ましい。(A)成分以外の不飽和基含有化合物(B)としては、例えば反応性単量体や反応性オリゴマーがあげられ、(メタ)アクリレート系の反応性単量体や(メタ)アクリレート系の反応性オリゴマーが好ましい。
【0014】
反応性単量体としては、例えばアクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o−フェニルフェニルオキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(ジブロモフェニル)オキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系の反応性単量体、N−ビニルカプロラクタム等があげられる。
【0015】
反応性オリゴマーとしては、例えばエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物であるエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオール類と有機ポリイソシアネート類と水酸基含有(メタ)アクリレート類の反応物であるウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系の反応性オリゴマーがあげられる。
【0016】
エポキシ(メタ)アクリレートを得るために使用するエポキシ樹脂類としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0017】
エポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応は、エポキシ樹脂類のエポキシ基の1化学当量に対して(メタ)アクリル酸を好ましくは約0.8〜1.5化学当量、特に好ましくは約0.9〜1.1化学当量となる比で反応させ、反応時に希釈剤として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の光重合性ビニル系モノマーを使用し、さらに反応を促進させるために触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビン等)を使用することが好ましく、該触媒の使用量は反応混合物に対して好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.3〜5重量%である。反応中の重合を防止するため重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、フェノチアジン等)を使用するのが好ましい。その使用量は反応混合物に対して好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。反応温度は好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃である。
【0018】
ウレタン(メタ)アクリレートを得るために使用するポリオール類としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール等があげられる。
【0019】
ウレタン(メタ)アクリレートを得るために使用する有機ポリイソシアネート類としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート等があげられる。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリレート類としては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクトン付加物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0021】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール類の水酸基1化学当量あたり有機ポリイソシアネート類のイソシアネート基の、好ましくは1.1〜2.0化学当量を、好ましくは70〜90℃の反応温度で反応させて、ウレタンオリゴマーを合成し、次いでウレタンオリゴマーのイソシアネート基1化学当量あたり、水酸基含有エチレン性不飽和化合物の水酸基の、好ましくは1−1.5化学当量を、好ましくは70〜90℃の反応温度で反応させることにより得ることができる。
【0022】
不飽和基含有化合物(B)は、シランカップリング剤であることも好ましい。シランカップリング剤としては、シランカップリング基を含有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
以下にリン酸系モノマーもしくはシランカップリング基含有モノマーの好ましい具体例を示すが、本発明で用いることができるものはこれらに限定されるものではない。
【0023】
【化7】

【0024】
光重合開始剤(C)
本発明の重合性組成物を、紫外線を照射して硬化する場合、光重合開始剤(C)を使用するのが好ましい。光重合開始剤(C)としては、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されているイルガキュア(Irgacure)シリーズ(例えば、イルガキュア651、イルガキュア754、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア819など)、ダロキュア(Darocure)シリーズ(例えば、ダロキュアTPO、ダロキュア1173など)、クオンタキュア(Quantacure)PDO、ランベルティ(Lamberti)社から市販されているエザキュア(Esacure)シリーズ(例えば、エザキュアTZM、エザキュアTZTなど)等が挙げられる。これらは、単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
本発明の重合性組成物に使用される各成分の使用割合は、溶剤を除く全成分に対し、重合性化合物(A)は好ましくは5〜95重量%であり、特に好ましくは20〜90重量%である。不飽和基含有化合物(B)は、好ましくは0〜95重量%であり、より好ましくは、5〜90重量%であり、特に好ましくは10〜80重量%である。光重合開始剤(C)は、(A)と(B)の合計量を成分を100重量部とした場合、0〜15重量部が好ましく、特に好ましくは0〜7重量部である。
【0026】
本発明の重合性組成物は、前記成分以外に、溶剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、重合禁止剤、帯電防止剤、着色剤(例えば染料、顔料等)、無機フィラー、有機フィラー等を併用することができる。
溶剤としては、2-ブタノン,酢酸エチル,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが例示される。
【0027】
本発明の重合性組成物は、上記の各成分を均一に混合、溶解することにより得ることができる。
【0028】
本発明の重合性組成物は、バリア性積層体の有機層を形成するための重合性組成物として好ましく用いることができる。本発明のバリア性積層体の好ましい一例としては、少なくとも1層の有機層と少なくとも1層の無機層が互いに交互に積層した構成である。さらに、かかるバリア性積層体は、基材フィルムの上に設けてバリア性積層体として用いてもよい。
【0029】
(有機層)
有機層は、本発明の重合性組成物を無機層、基材フィルム、他のデバイス等の下地の上に、層状に適用し、硬化して形成される。適用方法としては、特に定めるものではない。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、スライドコート法、或いは、米国特許第2681294号明細書に記載のホッパ−を使用するエクストル−ジョンコート法により塗布することができる。
【0030】
本発明では、重合性化合物を含む重合性組成物を、光照射して硬化させるが、照射する光は、通常、高圧水銀灯もしくは低圧水銀灯による紫外線であることが好ましい。照射エネルギーは0.1J/cm2以上が好ましく、0.5J/cm2以上がより好ましい。重合性化合物として、(メタ)アクリレート化合物を採用する場合、空気中の酸素によって重合阻害を受けるため、重合時の酸素濃度もしくは酸素分圧を低くすることが好ましい。窒素置換法によって重合時の酸素濃度を低下させる場合、酸素濃度は2%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。減圧法により重合時の酸素分圧を低下させる場合、全圧が1000Pa以下であることが好ましく、100Pa以下であることがより好ましい。また、100Pa以下の減圧条件下で0.5J/cm2以上のエネルギーを照射して紫外線重合を行うのが特に好ましい。
【0031】
本発明における有機層は、平滑で、膜硬度が高いことが好ましい。
有機層を構成する重合性化合物の重合率は85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、92%以上であることが特に好ましい。ここでいう重合率とは重合性組成物中の全ての重合性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)のうち、反応した重合性基の比率を意味する。重合率は赤外線吸収法によって定量することができる。
【0032】
有機層の膜厚については特に限定はないが、薄すぎると膜厚の均一性を得ることが困難になるし、厚すぎると外力によりクラックを発生してバリア性が低下する。かかる観点から、有機層の厚みは50nm〜2000nmが好ましく、200nm〜1500nmがより好ましい。
また、有機層は先に記載したとおり平滑であることが好ましい。有機層の平滑性は1μm角の平均粗さ(Ra値)として1nm未満が好ましく、0.5nm未満であることがより好ましい。上述のとおり、有機層の表面にはパーティクル等の異物、突起が無いことが要求される。このため、有機層の成膜はクリーンルーム内で行われることが好ましい。クリーン度はクラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましい。
有機層の硬度は高いほうが好ましい。有機層の硬度が高いと、無機層が平滑に成膜されその結果としてバリア能が向上することがわかっている。有機層の硬度はナノインデンテーション法に基づく微小硬度として表すことができる。有機層の微小硬度は100N/mm以上であることが好ましく、150N/mm以上であることがより好ましい。
有機層の屈折率は1.56〜1.78であることが好ましく、1.57〜1.77であることがより好ましい。
【0033】
基材フィルムについては、特開2011−102042号公報の段落番号0027〜0036に記載のプラスチックフィルム基材が好ましく採用される。
無機層については、特開2011−167882号公報の段落番号0015〜0016の記載を参酌できる。
また、本発明におけるバリア性積層体は、他の構成層を有していてもよく、これらは、特開2011−167882号公報の段落番号0018の記載や特開2011−167882号公報の段落番号0038〜004016の記載を参酌できる。
その他、バリア性積層体およびガスバリアフィルムについては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2011−102042号公報および特開2011−167882号公報の記載を参酌できる。
本発明の重合性組成物を用いて得られるバリア性積層体およびガスバリアフィルムは種々の用途に用いることが可能であり、例えば、特開2011−167882号公報に記載の太陽電池や特開2011−102042号公報に記載の有機デバイス等に好ましく用いられる。
【0034】
本発明の重合性組成物は、バリア積層体用として有用であるが、その他にフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等の透過スクリーン用、TFT用のプリズムレンズシート、眼鏡レンズなどのレンズ用、各種コーティング剤、注型剤、接着剤あるいは印刷インキ等においても有用である。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0036】
(合成例1:式(1)で表される重合性化合物(A−1))
4,4‘‐[1‐[4‐[1‐(4−ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(4.25g)、トリエチルアミン(3.34g)、テトラヒドロフラン(7g部)を仕込み、0℃に冷却した。その後、アクリル酸クロリド(2.99g)を滴下し、反応温度0℃で1時間撹拌した後、25℃で3時間撹拌した。この反応混合物に酢酸エチル(50mL)を加えて希釈し、水(50mL)で2回洗浄した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(80mL)で1回、水(50mL)で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を分取した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。得られた濾液から溶媒を減圧下に留去して、目的物である重合性化合物(A−1)(72.1g)を酢酸エチル溶液として得た。生成物の1H NMRの測定結果は以下のとおりであった。
【0037】
1H NMRデータ
【化8】

【0038】
(合成例2:式(1)で表される重合性化合物(A−2))
4,4‘‐[1‐[4‐[1‐(4−ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(4.25g)、メタクリル酸グリシジル(4.71g)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.18g)、2−ブタノン(8.96g)を仕込み、反応温度80℃で8時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、これに反応混合物に酢酸エチル(50mL)を加えて希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で2回、水(50mL)で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を分取した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。得られた濾液から溶媒を減圧下に留去して、目的物である重合性化合物(A−2)(72.1g)を酢酸エチル溶液として得た。生成物の1H NMRの測定結果は以下のとおりであった。
【0039】
1H NMRデータ
【化9】

【0040】
(合成例3:式(1)で表される重合性化合物(A−3))
4,4‘‐[1‐[4‐[1‐(4−ヒドロキシフェニル)‐1‐メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール(4.25g)、2−イソシアナトエチルアクリレート(4.65g)、2−ブタノン(8.96g)、オクチル酸ビスマス塩(0.040g)(ネオスタンU−600、日東化成(株)製)を仕込み、反応温度80℃で8時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、これに反応混合物に酢酸エチル(50mL)を加えて希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(50mL)で2回、水(50mL)で1回、飽和食塩水で1回洗浄し、有機層を分取した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過した。得られた濾液から溶媒を減圧下に留去して、目的物である重合性化合物(A−3)(72.1g)を酢酸エチル溶液として得た。生成物の1H NMRの測定結果は以下のとおりであった。
【0041】
1H NMRデータ
【化10】

【0042】
(硬化物の作製)
ポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム、帝人デュポン社製、商品名:テオネックスQ65FA)を20cm角に裁断し、その平滑面側に以下の手順で有機層を形成して評価した。
【0043】
(実施例1)
PENフィルム上に、表1に示す組成を有するモノマー混合物(20g)、紫外線重合開始剤(Lamberti社製、商品名:ESACURE KTO−46)(1.5g)、2−ブタノン(190g)の混合溶液を液厚が5μmとなるようにワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥後、窒素置換法により酸素濃度が0.1%となったチャンバー内にて高圧水銀ランプの紫外線を照射(積算照射量約2J/cm2)して有機層を硬化させ、膜厚が1000nm±50nmの有機層を形成した。得られた有機層の特性値(重合率、平滑性(Ra)、屈折率)を以下の方法で測定し、結果を表1に示した。なお、試料1〜10の有機層はクラス1000のクリーンルーム内で、試料11の有機層は、通常の実験室(クラス30000相当)で作成した。
【0044】
<重合率の測定>
硬化した膜とモノマー混合物のそれぞれについて、赤外吸収スペクトルにおける1720cm-1付近のカルボニル基に基づく吸収強度と810cm-1付近の炭素−炭素二重結合に基づく吸収強度を測定し、以下の計算式にしたがって重合率を算出した。
重合率(%)={(a×d−b×c)/a×d}×100
a:硬化膜の1720cm-1付近のピーク強度
b:硬化膜の810cm-1付近のピーク強度
c:モノマー混合物の1720cm-1付近のピーク強度
d:モノマー混合物の810cm-1付近のピーク強度
【0045】
<平滑性の測定>
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、表面の平滑性を測定した。このとき、平滑性は10μm角の測定範囲に対する平均粗さRa(単位nm)で表した。
【0046】
<屈折率の測定>
硬化膜を少量削り取り、浸漬法により求めた。浸漬法とは、屈折率の値を少しずつ変化できる液体に粒子を浸して、粒子界面が不明確になる液の屈折率を測定する方法である。本発明では、この液の屈折率をATAGO製多波長アッベ屈折計DR−M2(あるいはDR−M4)で589nmの波長に対する25℃の値として求めた。
【0047】
(実施例2、3、比較例1)
実施例1において、有機層の重合性化合物を同量の下記の化合物に変え、実施例2、3、比較例1の硬化物を作成した。結果を表1に示す。
【表1】

【0048】
上記表中、TMPTAは、トリメチロールプロパントリアクリレートを示している。
表1の結果から明らかなように、本発明の重合性組成物の硬化物は、重合率が高く、平滑性に優れ、屈折率も高いことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される重合性化合物。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基を表し、R2は、メチル基、またはシクロヘキシル基を表わす。nは0〜2の整数である。Xは、それぞれ独立に下記式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表す。)
【化2】

(式(a)、(b)および(d)中、R3は、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項2】
1がメチル基である、請求項1に記載の重合性化合物。
【請求項3】
nが0である、請求項1または2に記載の重合性化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性化合物(A)を含む重合性組成物。
【請求項5】
さらに、光重合開始剤(C)を含有する、請求項4に記載の重合性組成物。
【請求項6】
バリア積層体形成用である、請求項4または5に記載の重合性組成物。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項に記載の重合性組成物の硬化物。
【請求項8】
基材フィルム上に、請求項4〜6のいずれか1項に記載の重合性組成物を硬化してなる有機層を有する積層フィルム。

【公開番号】特開2013−68896(P2013−68896A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209077(P2011−209077)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】