説明

重合性化合物及び該化合物を用いた重合性組成物

【課題】重合性の液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、前記重合性の液晶組成物を硬化させた場合に優れた耐熱性、機械強度及び大きな屈折率異方性を示す重合性化合物を提供する。
【解決手段】一般式(I)


で表わされる重合性化合物、具体的には例えば下記構造の化合物で例示される。


当該化合物を構成部材とする液晶組成物、更に、当該液晶組成物を用いた光学異方体、又は液晶デバイスを提供する。本願発明の重合性化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性化合物を含有する重合性成物は、液晶相温度範囲が広く当該重合性組成物を用いた光学異方体は、耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性化合物、及び当該化合物を含有する液晶組成物、更に当該液晶組成物の硬化物である光学異方体又は液晶デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い液晶ディスプレイに必須な偏向板、位相差板などに用いられる光学補償フィルムの重要性は益々高まっており、耐久性が高く、高機能化が求められる光学補償フィルムには重合性の液晶組成物を重合させる例が報告されている。光学補償フィルムの特性は用いられる光学異方体の光学特性、強度、耐熱性等の物理特性に大きな影響を受け、これらの特性は光学異方体を構成する重合性化合物の重合速度、溶解性、融点、ガラス転移点、重合物の透明性、機械的強度、表面硬度及び耐熱性等の向上が重要な因子となる。コレステリック液晶を用いた偏光反射板においては、輝度を向上させるため、光学特性の内でも大きな屈折率異方性を有する重合性化合物が求められている。
【0003】
光学補償フィルムを構成する重合性化合物として従来は、1,4−フェニレン基をエステル結合によって連結した構造を有する化合物(特許文献1参照)や、フルオレン基を有する化合物(特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、当該引用文献記載の重合性化合物は溶解性が低い等の問題があった。一方、溶解性を向上させるために構造を非対称とした重合性化合物が開示されており(特許文献3参照)、従来の重合性化合物と比較して溶解性の点で改善がなされているものの十分でなく、また耐熱性や機械強度が低い等の問題があった。大きな屈折率異方性に関してはナフタレン骨格や桂皮酸骨格を用いた重合性化合物が提案されているが、屈折率異方性は改善されているが十分でなく、また他の液晶材料や重合性化合物との相溶性が低く実用に堪えないものであった(特許文献4及び5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平10−513457号公報
【特許文献2】特開2005−60373公報
【特許文献3】特表2001−527570公報
【特許文献4】特開2008−179654公報
【特許文献5】特表2008−527136公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、重合性の液晶組成物を構成した場合他の液晶化合物と優れた溶解性を有し、前記重合性の液晶組成物を硬化させた場合に優れた耐熱性、機械強度及び大きな屈折率異方性を示す重合性化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは重合性化合物における種々の置換基の検討を行った結果、特定の構造を有する重合性化合物が前述の課題を解決できることを見出し本願発明を完成するに至った。
【0007】
本願発明は、一般式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは以下の式(R-1)から式(R-15)の何れか
【0010】
【化2】

【0011】
を表し、
は、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−に置き換えられても良い炭素数1〜12のアルキレン基、又は単結合を表し、
及びLはお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−C−、―COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、―CH=CH−OCO−、−COO―CH=CH−、−OCO―CH=CH−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、
Zは、水素原子、F、Cl、CN、SCN、OCF、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、該アルキル基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、硫黄原子、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO、−CH=CH−、又は−C≡C−で置換されて良く、
Zはあるいは−L−S−Rを表し、(式中、RはRと、SはSと、LはLとそれぞれ同じ意味を表す。)、
及びMは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表わし、Mは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基、1,3,4−ベンゼントリイル基、1,3,4,5−ベンゼンテトライル基、1,3,5−シクロヘキサントリイル基又は1,3,4−シクロヘキサントリイル基を表し、M、M及びM上の水素原子は、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていても良く、ただしMが1,4−フェニレン基の場合は、Lは単結合、−S−、−CHO−、−CO−、−C−、―COO−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、―COCO−、―CCOO−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、mは0、1及び2を表し、nは1、2又は3を表し、Zが複数ある場合は、同一であっても異なっていても良い。)で表される重合性化合物を提供し、当該化合物を構成部材とする液晶組成物、更に、当該液晶組成物を用いた光学異方体、又は液晶デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の重合性化合物は、他の液晶化合物との優れた溶解性、大きな屈折率異方性を有することから重合性組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性化合物を含有する重合性組成物は、液晶相温度範囲が広く、当該重合性組成物を用いた光学異方体は耐熱性が高く、偏向板、位相差板等の光用途に有用である。また、高分子安定化表示素子等の液晶デバイスに用いた場合は、液晶の配向規制力が高く、良好な表示特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一般式(I)において、R及びRはお互い独立して重合性基を表すが、重合性基の具体的な例としては、下記に示す構造が挙げられる。
【0014】
【化3】

【0015】
これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、及びアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましく、式(R−1)、式(R−2)がより好ましい。
【0016】
及びSはお互い独立してスペーサー基又は単結合を表すが、スペーサー基としては、炭素数2〜6のアルキレン基又は単結合が好ましく、該アルキレン基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良い。
【0017】
、L、及びLはお互い独立して、単結合、−OCH−、−C−、−CHO−、−COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CH=CH−COO−、−COCO−、−CCOO−、−CFO−が好ましく、安価に製造、液晶配向性、大きな屈折率異方性の観点から、単結合、―COO−、−OCO−、−OCH−、−CHO−、−CH=CH−COO−、−CCOO−がより好ましい。ただし、Mが1,4−フェニレン基の場合は、Lは単結合、−C−、−CHO−、−COO−、−CHOCOO−、−CH=CH−COO−、−COCO−、−CCOO−、−CFO−が好ましく、安価に製造、液晶配向性、大きな屈折率異方性の観点から、単結合、―COO−、−CHO−、−CH=CH−COO−、−CCOO−がより好ましい。M及びMは、1,4−フェニレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,4−シクロヘキシレン基、が好ましく、Mは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基、1,3,4−ベンゼントリイル基が好ましい。mは0、1及び2を表すが、特に0、又は1が好ましい。nは1、2又は3を表すが1又は2が好ましい。
【0018】
一般式(I)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(I-1)〜一般式(I-47)で表される化合物が好ましい。
【0019】
【化4】

【0020】
【化5】

【0021】
【化6】

【0022】
【化7】

【0023】
【化8】

【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
(式中、p及びqは、それぞれ独立的に0〜12の整数を表すが、0の場合は酸素同士が直結した構造とはならず、酸素原子をひとつ除去する。)
本発明の化合物は以下に記載する合成方法で合成することができる。
(製法1) 一般式(I-1)で表される化合物の製造
4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニルとアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ビフェニル誘導体(S-1)を得て、更に3-クロロプロピルアクリレートとを炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させて、アクリロイル基を有するビフェニル誘導体(S-2)を得る。更にトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したビフェニル誘導体(S-3)を得る。
【0029】
【化13】

【0030】
次いで2-ヒドロキシエチルアクリレートとのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-1)を得ることができる。
【0031】
【化14】

【0032】
(製法2) 一般式(I-7)で表される化合物の製造
4-ブロモ-ビフェニルとシュウ酸クロリドとを塩化アルミニム(III)を用いたフリーデルクラフト反応を行い酸クロリド基を導入した後、エタノール、水酸化ナトリウム等のアルカリで加水分解を行い4'-ブロモ-ビフェニルカルボン酸(S-4)を得る。次いでアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ビフェニル誘導体(S-5)を得て、更にトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したビフェニルカルボン酸誘導体(S-6)を得る。
【0033】
【化15】

【0034】
次いで4-(2-アクリロイルオキシ)エチルフェノールとのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-7)を得ることができる。
【0035】
【化16】

【0036】
(製法3) 一般式(I-14)で表される化合物の製造
4-ブロモ安息香酸と4-ブロモフェノールとをシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により4-ブロモフェニル 4-ブロモ安息香酸(S-7)を得る。次いでパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、フェニル安息香酸誘導体(S-8)を得て、更に4-ヒドロキシブチルアクリレートとのシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的物化合物(I-14)を得ることができる。
【0037】
【化17】

【0038】
(製法4) 一般式(I-22)で表される化合物の製造
6-ブロモ-2-ナフトールとアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ナフタレン誘導体(S-9)を得て、次いで3-アクロリイルオキシプロピルオキシ安息香酸とのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応によりアクリル基を有するナフタレン誘導体(S-10)を得る。更に、トリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したナフタレン誘導体(S-11)を得る。
【0039】
【化18】

【0040】
次いで2-ヒドロキシエチルアクリレートとのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的化合物(I-22)を得ることができる。
【0041】
【化19】

【0042】
(製法5) 一般式(I-28)で表される化合物の製造
6-ブロモ-2-ナフトエ酸とアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ナフトエ酸誘導体(S-12)を得て、次いで2-メチルヒドロキノンとのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応によりナフタレン誘導体(S-13)を得る。
【0043】
【化20】

【0044】
次いでトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したナフタレン誘導体(S-14)を得る。更に4-ヒドロキシブチルアクリレートとのシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的物化合物(I-28)を得ることができる。
【0045】
【化21】

【0046】
(製法6) 一般式(I-33)で表される化合物の製造
4-ブロモ-2-フルオロビフェニルとシュウ酸クロリドとを塩化アルミニム(III)を用いたフリーデルクラフト反応を行い酸クロリド基を導入した後、エタノール、水酸化ナトリウム等のアルカリで加水分解を行い4'-ブロモ-2'-フルオロビフェニルカルボン酸(S-15)を得る。次いでアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ビフェニル誘導体(S-16)を得る。更に6-アクロリイルオキシヘキシルオキシフェノールとのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応によりアクリル基を有するビフェニル誘導体(S-17)を得る。
【0047】
【化22】

【0048】
次いでトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換したビフェニル誘導体(S-18)を得て、更に4-ヒドロキシブチルアクリレートとのシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的物化合物(I-33)を得ることができる。
【0049】
【化23】

【0050】
(製法7) 一般式(I-41)で表される化合物の製造
4-ブロモ-2-フルオロビフェニルと塩化アセチルとを塩化アルミニム(III)を用いたフリーデルクラフト反応を行い、更にギ酸と過酸化水素水による過ギ酸によりフッ素原子により置換したヒドロキシビフェニル化合物(S-20)を得る。更にアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により、ビフェニル誘導体(S-21)を得る。
【0051】
【化24】

【0052】
次いで、プロトカテク酸エチルと6-クロロヘキサノールとを炭酸カリウム等の塩基存在下でエーテル化反応させ、水酸化ナトリウムにより加水分解を行い、プロトカテク酸誘導体(S-22)を得る。更にアクリル酸とをp-トルエンスルホン酸によるエステル化反応によりアクリル基を有するプロトカテク酸誘導体(S-23)を得る。
【0053】
【化25】

【0054】
更にビフェニル誘導体(S-21)とアクリル基を有するプロトカテク酸誘導体(S-23)とのジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により化合物(S-24)を得る。次いでトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換した化合物(S-25)を得て、更に4-ヒドロキシブチルアクリレートとのシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いたエステル化反応により目的物化合物(I-41)を得ることができる。
【0055】
【化26】

【0056】
(製法8) 一般式(I-43)で表される化合物の製造
3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(商品名EOXA,東亜合成社製)と1-ブロモ-3-クロロプロパンとを水酸化ナトリウム等の塩基の存在下でエーテル化反応させ、オキセタン誘導体(S-26)を得る。更に8-ジフルオロ-2-ナフトールとオキセタン誘導体(S-26)を炭酸カリウム等の塩基存在下でエステル化反応によりナフタレン誘導体(S-27)を得る。次いで、ノルマルブチルリチウム、トリイソプロピルホウ酸によりホウ酸化合物(S-28)を得て、次いで1-ブロモ-4−ヨードベンゼンとの鈴木カップリング反応によりオキセタン基を有するブロモベンゼン誘導体(S-29)を得る。
【0057】
【化27】

【0058】
更にアクリル酸ターシャリーブチルとのパラジウム触媒による溝呂木−ヘック反応により化合物を合成し、次いでトリフルオロ酢酸により、ターシャリーブチル基を脱離させてカルボン酸基に変換した化合物(S-30)を得る。更にオキセタン誘導体(S-26)と化合物(S-30)を炭酸カリウム等の塩基存在下でエステル化反応により目的物化合物(I-43)を得ることができる。
【0059】
【化28】

【0060】
本願発明の化合物は、重合性及び非重合性ネマチック液晶、スメクチック液晶、キラルネマチック、キラルスメクチック、及びコレステリック液晶組成物に使用できる。本願発明の液晶組成物は、本願発明の化合物を一種以上用いる以外に、任意の範囲で他の重合性化合物を添加しても構わない。本願発明の重合性液晶組成物中に含まれる重合性液晶化合物としては、重合性官能基としてアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基を有するものが特に好ましく、更に重合性液晶化合物としては、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものが好ましい。また、本願発明の液晶組成物がコレステリック液晶の場合は、キラル化合物の添加が好ましい。また高分子により配向制御した液晶デバイスに用いる場合は、光重合開始剤の無添加又は低減が可能なため大変有用な材料である。
【0061】
本願発明以外の重合性化合物の具体例としては、一般式(I)で表される化合物を含有する以外に制限はないが、組み合わせて使用する重合性液晶化合物としては、化合物中にアクリロイルオキシ基(R-1)又はメタアクリロイルオキシ基(R-2)を有するものが好ましく、重合性官能基を分子内に2つ以上持つものがより好ましい。
【0062】
組み合わせて使用する重合性液晶化合物として具体的には一般式(II)
【0063】
【化29】

【0064】
(式中Aは、水素原子、F、Cl、CN、SCN、OCF、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、該アルキル基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、硫黄原子、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO、−CH=CH−、又は−C≡C−で置換されて良く、
Aはあるいは−L−S−Rを表し(式中、Rは、重合性基を表し、Sは、単結合、又は1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、該アルキレン基中の一つ以上の−CH−は、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−に置き換えられても良く、Lは、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−C−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表すが(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、
は、重合性基を表し、Sは、単結合、又は1〜12個の炭素原子を有するアルキレン基を表し、該アルキレン基中の一つ以上の−CH−は、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、−OCOO−に置き換えられても良く、L、及びLはお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−C−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、
、及びMはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、M、及びMはお互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基に置換されていても良く、nは0、1、2又は3を表し、nが2又は3を表す場合、2個あるいは3個存在するL及びMは同一であっても異なっていても良い。)
一般式(II)で表される化合物において、特に好ましい化合物としては、L、L、及びLがお互い独立して、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCH−又は―CHO−を表し、M、及びMがお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、又はナフタレン−2,6−ジイル基で表される化合物が好ましい。
【0065】
一般式(II)で表される多官能化合物は具体的には、一般式(II-1)〜一般式(II-22)で表される化合物が好ましい。
【0066】
【化30】

【0067】
【化31】

【0068】
(式中、a及びbは、それぞれ独立的に0〜12の整数を表すが、0の場合は酸素同士が直接結合することはなく、芳香環に結合している酸素原子は除去する。)
また、本願発明の液晶組成物に使用する重合性液晶化合物としては、液晶温度範囲や複屈折率の調節、粘度低減を目的として一般式(II)で表される単官能化合物である一般式(II-23)〜一般式(II-33)を配合することが好ましい。
【0069】
【化32】

【0070】
(式中、a及びbは、それぞれ独立的に0〜12の整数を表すが、0の場合は酸素同士が直接結合することはなく、酸素同士が直接結合する場合には、芳香環に結合している酸素原子は除去する。)
また、本願発明の液晶組成物がコレステリック液晶の場合は、通常キラル化合物を添加するが、具体的な化合物としては一般式(III-1)〜一般式(III-8)に示される。キラル化合物の配合量は、液晶組成物に対して、0.5〜30重量%が好ましく、2〜20重量%がより好ましい。
【0071】
【化33】

【0072】
(式中、a及びbは、0〜12の整数を表すが、0の場合は酸素同士が直接結合することはなく、酸素同士が直接結合する場合には、芳香環に結合している酸素原子は除去する。)
本発明の液晶化合物は、重合性基を有しない液晶組成物に添加してもよい。液晶デバイスに関しては液晶媒体に重合性化合物を添加して表示特性を向上させる例が報告されており、液晶セル内の液晶分子の配向を制御するために本願化合物を使用することもできる。具体的な組成物としては通常の液晶デバイス、例えばSTN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)液晶や、TN(ツイステッド・ネマチック)液晶、TFT(薄膜トランジスター)液晶等に使用されるネマチック液晶組成物、強誘電液晶組成物等が挙げられる。
【0073】
また、重合性官能基を有する化合物であって、液晶性を示さない化合物を添加することもできる。このような化合物としては、通常、この技術分野で高分子形成性モノマーあるいは高分子形成性オリゴマーとして認識されるものであれば特に制限なく使用することができるが、その添加量は組成物として液晶性を呈するように調整する必要がある。
【0074】
本発明の液晶組成物は、π電子が広く共役した骨格を有するためモル吸光係数が大きいという特徴がある。このため、重合開始剤を添加しなくても熱及び光による重合が可能であるが、より速い硬化速度が必要な場合光重合開始剤の添加が好ましい。添加する光重合開始剤の濃度は、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜10質量%が更に好ましく、0.4〜5質量%が特に好ましい。光開始剤としては、ベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、ベンジルケタール類、アシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。
【0075】
また、本発明の液晶組成物には、その保存安定性を向上させるために、安定剤を添加することもできる。使用できる安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%が更に好ましく、0.03〜0.1質量%が特に好ましい。
【0076】
また、本発明の液晶組成物を位相差フィルム、偏光フィルムや配向膜の原料、又は印刷インキ及び塗料、保護膜等の用途に利用する場合には、その目的に応じて金属、金属錯体、染料、顔料、色素、蛍光材料、燐光材料、界面活性剤、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等を添加することもできる。
【0077】
次に本発明の光学異方体について説明する。本発明の液晶組成物を重合させることによって製造される光学異方体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された光学異方体は、物理的性質に光学異方性を有しており、有用である。このような光学異方体は、例えば、本発明の重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiOを斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。
【0078】
重合性液晶組成物を基板上に担持させる際の方法としては、スピンコーティング、ダイコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティング、ディッピング、プリント法等を挙げることができる。またコーティングの際、重合性液晶組成物をそのまま使用しても、有機溶媒を添加しても良い。有機溶媒としては、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、塩化メチレン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、セロソルブ、シクロヘキサノン、γ−ブチルラクトン、アセトキシ−2−エトキシエタン、プロピレングリコールモノメチルアセタート、N−メチルピロリジノン類を挙げることができる。これらは単独でも、組み合わせて用いても良く、その蒸気圧と重合性液晶組成物の溶解性を考慮し、適宜選択すれば良い。また、その添加量は90重量%以下が好ましい。添加した有機溶媒を揮発させる方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。重合性液晶材料の塗布性を更に向上させるためには、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる光学異方体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
【0079】
液晶組成物を基板間に挟持させる方法としては、毛細管現象を利用した注入法が挙げられる。基板間に形成された空間を減圧し、その後液晶材料を注入する手段も有効である。
【0080】
ラビング処理、あるいはSiOの斜方蒸着以外の配向処理としては、液晶材料の流動配向の利用や、電場又は磁場の利用を挙げることができる。これらの配向手段は単独で用いても、また組み合わせて用いても良い。更に、ラビングに代わる配向処理方法として、光配向法を用いることもできる。この方法は、例えば、ポリビニルシンナメート等の分子内に光二量化反応する官能基を有する有機薄膜、光で異性化する官能基を有する有機薄膜又はポリイミド等の有機薄膜に、偏光した光、好ましくは偏光した紫外線を照射することによって、配向膜を形成するものである。この光配向法に光マスクを適用することにより配向のパターン化が容易に達成できるので、光学異方体内部の分子配向も精密に制御することが可能となる。
【0081】
基板の形状としては、平板の他に、曲面を構成部分として有していても良い。基板を構成する材料は、有機材料、無機材料を問わずに用いることができる。基板の材料となる有機材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアリレート、ポリスルホン、トリアセチルセルロース、セルロース、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、また、無機材料としては、例えば、シリコン、ガラス、方解石等が挙げられる。
【0082】
これらの基板を布等でラビングすることによって適当な配向性を得られない場合、公知の方法に従ってポリイミド薄膜又はポリビニルアルコール薄膜等の有機薄膜を基板表面に形成し、これを布等でラビングしても良い。また、通常のTN液晶デバイス又はSTN液晶デバイスで使用されているプレチルト角を与えるポリイミド薄膜は、光学異方体内部の分子配向構造を更に精密に制御することができることから、特に好ましい。
【0083】
また、電場によって配向状態を制御する場合には、電極層を有する基板を使用する。この場合、電極上に前述のポリイミド薄膜等の有機薄膜を形成するのが好ましい。
【0084】
本発明の液晶組成物を重合させる方法としては、迅速な重合の進行が望ましいので、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線を照射することによって重合させる方法が好ましい。紫外線を使用する場合、偏光光源を用いても良いし、非偏光光源を用いても良い。また、液晶組成物を2枚の基板間に挟持させて状態で重合を行う場合には、少なくとも照射面側の基板は活性エネルギー線に対して適当な透明性が与えられていなければならない。また、光照射時にマスクを用いて特定の部分のみを重合させた後、電場や磁場又は温度等の条件を変化させることにより、未重合部分の配向状態を変化させて、更に活性エネルギー線を照射して重合させるという手段を用いても良い。また、照射時の温度は、本発明の液晶組成物の液晶状態が保持される温度範囲内であることが好ましい。特に、光重合によって光学異方体を製造しようとする場合には、意図しない熱重合の誘起を避ける意味からも可能な限り室温に近い温度、即ち、典型的には25℃での温度で重合させることが好ましい。活性エネルギー線の強度は、0.1mW/cm〜2W/cmが好ましい。強度が0.1mW/cm以下の場合、光重合を完了させるのに多大な時間が必要になり生産性が悪化してしまい、2W/cm以上の場合、重合性液晶化合物又は重合性液晶組成物が劣化してしまう危険がある。
【0085】
重合によって得られた本発明の光学異方体は、初期の特性変化を軽減し、安定的な特性発現を図ることを目的として熱処理を施すこともできる。熱処理の温度は50〜250℃の範囲で、また熱処理時間は30秒〜12時間の範囲が好ましい。
【0086】
このような方法によって製造される本発明の光学異方体は、基板から剥離して単体で用いても、剥離せずに用いても良い。また、得られた光学異方体を積層しても、他の基板に貼り合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
(実施例1)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に4−ブロモ−4’−ヒドロキシビフェニル 10g(40.1ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 6.2g(48.2ミリモル)、トリエチルアミン 4.8g(48ミリモル)、酢酸パラジウム 530mg、ジメチルホルムアミド 300mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(1)に示す化合物11gを得た。
【0088】
【化34】

【0089】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(1)に示す化合物5g(16.8ミリモル)、2-ヒドロキシエチルアクリレート 2.2g(18ミリモル)、トリフェニルホスフィン 5g(19ミリモル)、塩化メチレン100mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を5℃以下に冷却した。次いでアゾジカルボン酸ジイソプロピル 3.7g(18ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、20℃以下で3時間反応させた。反応終了後、塩化メチレンを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(2)に示す化合物 6gを得た。
【0090】
【化35】

【0091】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(2)に示す化合物6gを塩化メチレン20mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸20mlを滴下し、室温で3時間攪拌した。その後ヘキサンを加えて析出化させ、析出物をジイソプロピルエーテルで洗浄し、乾燥させることにより式(3)に示す化合物 3.4gを得た。
【0092】
【化36】

【0093】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記式(3)に示す化合物3g(8.8ミリモル)、2−ヒドロキシエチルアクリレート 1.2g(10ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 120mg、塩化メチレン 50mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 1.3g(10ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(4)に示す目的の化合物1.7gを得た。
【0094】
【化37】

【0095】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:4.26(m,2H), 4.46(s,4H),4.55(m,2H),5.85−5.89(m,2H),6.14−6.24(m,2H),6.40−6.50(m,3H),6.99(d,2H),7.52−7.64(m,6H),7.76(d,1H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:62.2,62.3,62.8,66.0,115.0,116.9,127.0,128.0,128.2,128.7,131.4,132.6,133.0,142.6,145.0,158.5,165.9,166.0,166.7
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:74℃
(実施例2)
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、p-ブロモ安息香酸 10g(50ミリモル)、p-ブロモフェノール 8.6g(50ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 600mg、塩化メチレン 100mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 6.3g(50ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムによる精製、再結晶により式(5)に示す化合物15gを得た。
【0096】
【化38】

【0097】
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に上記式(5)に示す化合物10g(28ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 8.6g(67ミリモル)、トリエチルアミン 6.7g(67ミリモル)、酢酸パラジウム 750mg、ジメチルホルムアミド 200mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い式(6)に示す化合物12gを得た。
【0098】
【化39】

【0099】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(6)に示す化合物12gを塩化メチレン15mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸20mlを滴下し、室温で30分攪拌した。その後ヘキサンを加えて析出化させ、析出物をジイソプロピルエーテルで洗浄し、乾燥させることにより式(7)に示す化合物 8gを得た。
【0100】
【化40】

【0101】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記式(7)に示す化合物8g(23.6ミリモル)、4-ヒドロキシブチルアクリレート 3.7g(26ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 310mg、塩化メチレン 150mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 3.3g(26ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムにより精製を行い、塩化メチレン/メタノールによる再結晶により式(8)に示す目的の化合物9.3gを得た。
【0102】
【化41】

【0103】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:1.80−1.84(m,8H),4.22−4.29(m,8H),5.81(dd,2H),6.10−6.20(m,2H),6.39(dd,2H),6.54(d,2H),7.11−7.20(m,4H),7.53−7.57(m,2H),7.65−7.75(m,2H),8.20(d,2H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:25.3,63.9,64.3,119.1,120.9,123.4,128.0,128.3,130.3,130.7,132.5,139.4,143.1,149.8,166.1,166.3
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:69℃
(実施例3)
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、p-ブロモ安息香酸 25g(124ミリモル)、メチルヒドロキノン 7.7g(62ミリモル)、ジメチルアミノピリジン 1.8g、塩化メチレン 250mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 18.7g(148ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン200mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムによる精製、再結晶により式(9)に示す化合物29gを得た。
【0104】
【化42】

【0105】
次いで撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に上記の式(9)に示す化合物 28g(57ミリモル)、ターシャリーブチルアクリレート 22g(171ミリモル)、トリエチルアミン 23g(228ミリモル)、酢酸パラジウム 1.27g、テトラブチルアンモニウムブロミド 37g(114ミリモル)、ジメチルアセトアミド 400mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を100℃に加熱し反応させた。反応終了後、酢酸エチル、THFを加え、10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラム、アセトン分散洗浄により精製を行い式(10)に示す化合物26gを得た。
【0106】
【化43】

【0107】
更に撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(10)に示す化合物 26gを塩化メチレン40mlに溶解させた後、トリフルオロ酢酸75mlを滴下し、室温で30分攪拌した。その後ジイソプロピルエーテルを加えて析出させ、アセトンで析出物を洗浄、乾燥させることにより式(11)に示す化合物 21gを得た。
【0108】
【化44】

【0109】
次いで、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に、上記の式(11)に示す化合物 5g(10.5ミリモル)、炭酸カリウム 4.4g(25ミリモル)、3-クロロプロピルアクリレート 3.4g(25ミリモル)、ジメチスルホキシド 200mlを仕込み、窒素ガス雰囲気下で反応器を90℃に加熱を行い、このままの温度で、5時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル及び純水を加え水洗し、更に10%塩酸水溶液、純水、飽和食塩水で有機層を洗浄した。溶媒を留去した後、2倍量(重量比)のシリカゲルカラムによる精製、再結晶により式(11)に示す目的の化合物 3gを得た。この化合物は、104℃から125℃までスメクチック液晶相を示し、125℃から140℃までネマチック液晶相を示した。
【0110】
【化45】

【0111】
(物性値)
H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:2.10−2.17(m,4H),2.26(s,3H),4.30−4.36(m,8H),5.84(dd,2H),6.08−6.17(m,2H),6.39(dd,2H),6.55(dd,2H),7.11−7.30(m,3H),7.57−7.77(m,6H),8.21−8.25(m,4H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:28.0,61.1,61.4,120.0,120.6,120.7,122.8,124.0,128.1,128.2,130.4,131.0,131.8,139.3,143.3,147.0,166.1,166.3
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1760,1652−1622,809 cm−1
融点:104℃
(実施例4)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物1)を調製した。
【0112】
【化46】

【0113】
重合性液晶組成物は、良好な相溶安定性を有し、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物2)を調製した。この組成物2のシクロヘキサノン溶液を、ポリイミド付きガラスにスピンコートし、これに高圧水銀ランプを用いて4mW/cmの紫外線を120秒間照射したところ、組成物2が均一な配向状態を保ったまま重合し、光学異方体が得られた。この光学異方体の表面硬度(JIS−S−K−5400による)は2Hであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、230℃、1時間加熱後の位相差は89%であり、位相差減少率は11%だった。この光学フィルムの位相差(レタデーション)と膜厚より算出(屈折率異方性:Δn=レタデーション×膜厚)した屈折率異方性は、0.2であり大きな異方性を示した。
(比較例1)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物3)を調製した。
【0114】
【化47】

【0115】
重合性液晶組成物は、ネマチック液晶相を示した。この組成物に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物4)を調製した。この組成物4を実施例4と同様な作製方法により光学異方体を得た。この光学異方体の表面硬度はBであり硬度が低いものであった。得られた光学異方体の加熱前の位相差を100%としたとき、230℃、1時間加熱後の位相差は79%であり、位相差減少率は21%だった。この光学フィルムの位相差(レタデーション)と膜厚より算出した屈折率異方性は、0.16であり屈折率異方性は小さかった。
(比較例2)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物5)を調製した。
【0116】
【化48】

【0117】
重合性液晶組成物(組成物5)は、ネマチック液晶相を示した。この組成物5に光重合開始剤 イルガキュアー907(チバスペシャリティーケミカル社製)を3%添加して重合性液晶組成物(組成物6)を調製した。この組成物6を実施例4と同様な作製方法により光学異方体を得た。この光学異方体の表面硬度は4Bであり硬度が低いものであった。得られた光学異方体の位相差(レタデーション)と膜厚より算出した屈折率異方性は、0.19であったが、230℃、1時間加熱後の位相差変化率は63%(位相差減少率は37%)であり、耐熱性が低い光学異方体であった。
(比較例3)
以下に示す組成の重合性液晶組成物(組成物7)を調製した。
【0118】
【化49】

【0119】
重合性液晶組成物(組成物7)は、ネマチック液晶相を示したが、加熱溶解後数時間で結晶が析出し溶解性が低いことが分かった。
【0120】
このように、本発明の化合物は溶解性に優れる。また比較例の組成物4及び6は、本願発明の組成物2と比較して、得られた郷学異方体は、屈折率異方性、耐熱性に劣ることが明らかである。又、表面硬度も不十分なものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、Rは以下の式(R-1)から式(R-15)の何れか
【化2】

を表し、
は、酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、−COO−、−OCO−、又は−OCOO−に置き換えられても良い炭素数1〜12のアルキレン基、又は単結合を表し、
及びLはお互い独立して、単結合、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、−C−、―COO−、−OCO−、−OCOOCH−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、―CH=CH−OCO−、−COO―CH=CH−、−OCO―CH=CH−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF=CF−、−CF−、−CFO−、−OCF−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、
Zは、水素原子、F、Cl、CN、SCN、OCF、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、該アルキル基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子、硫黄原子、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO、−CH=CH−、又は−C≡C−で置換されて良く、Zはあるいは−L−S−Rを表し、(式中、RはRと、SはSと、LはLとそれぞれ同じ意味を表す。)、
及びMは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表わし、Mは、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基、1,3,4−ベンゼントリイル基、1,3,4,5−ベンゼンテトライル基、1,3,5−シクロヘキサントリイル基又は1,3,4−シクロヘキサントリイル基を表し、M、M及びM上の水素原子は、お互い独立して無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、又はニトロ基で置換されていても良く、ただしMが1,4−フェニレン基の場合は、Lは単結合、−S−、−CHO−、−CO−、−C−、―COO−、−CHOCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、―COCO−、―CCOO−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−CF−、−CFO−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−又は−C≡C−を表し(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)、mは0、1及び2を表し、nは1、2又は3を表し、Zが複数ある場合は、同一であっても異なっていても良い。)で表される重合性化合物。
【請求項2】
一般式(I)において、L及びLはお互い独立して、−O−、−OCH−、−CHO−、―COO−、−OCO−、−C−、−C≡C−、又は単結合を表し、M及びMは、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基又は、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表し、Mは1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、1,3,5−ベンゼントリイル基、1,3,4−ベンゼントリイル基を表わし、M、M及びMはお互い独立してアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基又はニトロ基により置換されていても良い、請求項1記載の重合性化合物。
【請求項3】
一般式(I)において、M及びMは、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基を表し、Mが1,4−フェニレン基、1,3,5−ベンゼントリイル基、1,3,4−ベンゼントリイル基を表わし、M、M及びMはお互い独立して無置換であるかアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルコキシ基、ハロゲン、又はシアノ基により置換されていても良く、mは0又は1を表す請求項1、又は2記載の重合性化合物。
【請求項4】
一般式(I)において、R及びRがお互いに独立して式(R-1)又は式(R-2)を表す請求項1、2又は3の何れかに記載の重合性化合物。
【請求項5】
が単結合及び―COO−、−OCO−を表す請求項1、2、3、又は4の何れかに記載の重合性化合物。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載される重合性化合物を含有する液晶組成物
【請求項7】
請求項6記載の重合性化合物を含有する液晶組成物の重合体により構成される光学異方体
【請求項8】
請求項6記載の液晶組成物の重合体を用いることを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2010−275244(P2010−275244A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130413(P2009−130413)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】