説明

重合性液晶化合物、組成物および重合体

【課題】液晶組成物の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物。Rは植物由来のステロール残基であり、Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステロールのフェルラ酸エステル基と重合性の基とを有する光学活性化合物、それを含有する液晶組成物、それら光学活性化合物や液晶組成物を重合させて得られる重合体および重合体の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学異方性を有する成形体には、重合性の液晶性化合物が利用されている。これらは液晶状態で光学異方性を有し、重合することで液晶性化合物の配向が固定化される。
光学活性化合物を重合性の液晶組成物に添加することで螺旋構造が誘起されるが螺旋のピッチによって種々の光学素子としての応用がある。すなわち、螺旋軸に沿った光の伝播は、対象とする波長(λ)と螺旋ピッチの長さ(P)によって、(1)λ<<Pの場合、と(2)λ≒Pの場合の応用に分けられる。
【0003】
対象とするλを可視光とすると、(1)λ<<Pの場合は、1(μm)<Pに相当する。この場合の応用は、更に、モーガン条件を満足する場合とそうでない場合に分けられる。(A)モーガン条件を満足する場合、つまり、Φ<<2πΔnd/λが満たされているとき、入射側の光軸方向に一致または直交した直線偏光は、直線偏光のまま出射し旋光子として機能する。ここで、Φは全ねじれ角であり、dは厚み、Δnは液晶の複屈折である。また、(B)モーガン条件が満たされないとき、直線偏光は、Φ、dおよびΔnによって決まる複屈折を示す。
旋光子は、ヘッドアップディスプレイやプロジェクター用光学素子として応用できる。また、ねじれ配向の複屈折の応用として、例えば、STN(Super Twisted Nematic)型液晶ディスプレイにおける光学補償がある(特許文献1参照)。
【0004】
対象とするλを可視光とすると、(2)λ≒Pの場合、例えば、螺旋構造のねじれの方向が右である場合、液晶フィルムは、no×P<λ<ne×P(noは液晶層の常光に対する屈折率、neは液晶層の異常光に対する屈折率)の範囲の波長λを有する右回りの円偏光のみを選択的に反射して、それ以外の波長を有する右回りの円偏光や、全ての波長の左回りの円偏光を全て透過する。即ち、ある特定の波長の右円偏光と左円偏光を選択的に分離することが可能である(円偏光二色性)。光学素子の応用の観点から、具体的には、(A)350/nave(nm)<P≦800/nave(nm)、つまり、円偏光二色性の波長域が可視光領域にある場合と、(B)P< 350/nave(nm)、すなわち、円偏光二色性の波長域が紫外域にある場合に分けられる。ここで、nave=((ne+no)/2)0.5である。
【0005】
(A)350/nave(nm)<P≦800/nave(nm)である場合、非偏光を入射すると、円偏光二色性を生じる波長に応じて反射光および透過光に着色が生じる。このような着色を利用すれば、装飾部材などの意匠用途および液晶表示素子に用いられるカラーフィルターへの応用も可能である。さらに、反射光および透過光が独特の金属光沢を有すること、視野角により色調が変化すること、そして、このような光学特性を通常の複写機では複製できないことから偽造防止用途への応用も可能である。また、このような円偏光分離機能を応用して、液晶表示素子における光利用効率を改善することも可能である。例えば、偏光板に1/4λ板と円偏光分離機能を発現する光学異方性膜を積層する構成が提案されている(非特許文献1参照)。このような用途に対しては、全可視光領域(波長350〜750nmの領域)で円偏光分離機能が発現されることが望まれるため、ピッチの異なる層を複数積層したり、または、膜厚方向にピッチが連続的に変化するようにすればよい。なお、反射のスペクトル幅Δλは、Δλ=Δn×Pの関係式から、複屈折異方性値(Δn)が大きいほど広い。また、反射のスペクトルの中心波長λcは、λc=nave×Pの関係式から算出される。
その他、同様の円偏光分離機能を用いて、700/nave(nm)< P≦1.5/nave(μm)の範囲に設定すると、紫外線または近赤外線の反射フィルター等の応用も可能である。
【0006】
(B)P≦350/nave(nm)である場合、螺旋軸に垂直な面についての可視光域の屈折率は((ne+no)/2)0.5で表され、螺旋軸方向についての可視光域の屈折率はnoに等しい(非特許文献2参照)。
【0007】
このような光学的特性を有する光学異方性膜は、ネガティブC−プレートと呼ばれる。正の複屈折を有する液晶分子が、基板に対して垂直に配向した状態で黒表示(暗状態)を得る液晶表示素子において、表示素子の法線方向に対して該液晶分子の配向による複屈折は生じない。そのためこれら表示素子においては、法線方向では非常に高いコントラストが得られる。しかし表示素子の法線方向からズレた場合には複屈折が生じ、黒表示(暗状態)の透過率が増加する。すなわちこれら表示素子においては、斜め方向視野角に対してコントラストが減少する。ネガティブC−プレートは、このような表示素子の該液晶配向の法線方向からズレた場合に生じる複屈折を補償することができる。その結果、このネガティブC−プレートは、VA(Vertically Aligned)、TN(Twisted Nematic)、OCB(Optically Compensated Birefringence)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)などの表示素子における視野角特性改善に適した光学補償板となる。
【0008】
現在、圧縮したポリマーフィルムまたはプラーナー配向した負の複屈折を有するディスコチック液晶を利用したフィルム(特許文献2参照)が光学補償板に用いられている。正の複屈折を有する液晶分子からなるコレステリック液晶の重合体を利用することによって、屈折率異方性値およびその波長分散の設計の自由度が広がる。また、ネガティブC−プレートは、種々の光学補償層と組み合わせて用いることができる。
【0009】
上記の用途毎の光学設計に対して、適宜ピッチおよびΔnが調整される。
上記いずれの用途に対しても、光重合性の液晶に対して硬化前の特性として、室温で液晶相を有し、広い液晶相を有し、良好な配向性を示し、UV照射による速硬性を有し、硬化後の特性として、適切なΔnを有し、透明性を有し、耐熱性および耐湿性に優れた光重合性液晶組成物の開発が望まれている。
また、化合物を最適化する際、前記の光学特性に加えて、重合性、重合体の物理的・化学的な特性も要求を満足する必要がある。この特性は、化合物の重合速度、重合度、重合体の透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などである。
【0010】
光学活性化合物を液晶組成物に添加することで螺旋構造が誘起される(特許文献3または4参照)。ピッチ(p)は光学活性化合物の添加量(濃度c)と螺旋誘起力(Helical Twisting Power、HTP)に依存する。p=HTP−1×c−1。螺旋構造を有する液晶組成物は様々な用途に利用できる。例えば、PC(相転移、Phase Change)表示素子、ゲスト・ホスト表示素子、TN表示素子、STN表示素子、SSCT(Surface Stabilized Cholesteric Texture)表示素子、PSCT(Polymer Stabilized Cholesteric Texture)表示素子、ネガティブC−プレートなどである。
【0011】
いずれの用途においても、粘度、液晶性等、他の諸物性に悪影響が及ばない様に、光学活性化合物においても液晶相の発現する温度範囲が広い化合物であることが好ましい。偏光板、ネガティブ−Cプレート等の光学補償板、配向膜などに応用する場合、光学異方性を有する成形体を活用する。重合体の重合度、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などに優れた成形体が求められる。また、光学活性化合物を含有する液晶組成物は重合速度において優れている必要がある。
【0012】
ステロールのエステル化合物がコレステリック相を有する液晶化合物であることは知られている(特許文献5)が、重合性の基を導入し、コレステリック相を固定化する技術に関しては言及されていない。また、液晶組成物のカイラル剤として用いられるイソソルビド桂皮酸エステル誘導体などは、本発明の化合物の骨格にも含まれる桂皮酸部位が光照射により異性化して構造や物理的性質が変化するため、選択反射波長がシフトすることが知られている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平8−87008号公報(US5599478)
【特許文献2】特開2002−6138号公報(US6685998)
【特許文献3】英国特許出願公開第2298202号明細書
【特許文献4】国際公開第02/28985号パンフレット
【特許文献5】米国特許第3686235号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Y. Hisatake et al, Asia Display/IDW '01 LCT8-2
【非特許文献2】W. H. de Jeu, Physical Properties of Liquid Crystalline Materials, Gordon and Breach, New York(1980)
【非特許文献3】Alexey Yu. Bobrovsky et al, Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol. 363, 35-50(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第一の目的は、広い液晶相温度範囲を持ち、ステロールのフェルラ酸エステル骨格を有する重合性液晶化合物(の混合物)、およびこの化合物を含有する液晶組成物を提供することである。第二の目的は、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などの特性の多くに優れた重合体、およびこの重合体から製造した光学異方性を有する成形体を提供することである。第三の目的は、この重合体を含有する偏光板、光学補償板、配向膜、液晶表示素子、非線形光学素子などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は、上記の目的を達成すべく検討した結果、ステロールのフェルラ酸エステル骨格を有する重合性液晶化合物が、広いコレステリック相を有することを見出した。また、本発明の式(1)で表される化合物を含有する液晶組成物やその重合体が、光学補償フィルムなどとして優れていることを見出し、本発明を完成した。さらに本発明の化合物はγ−オリザノールを原料として用いることにより、広いコレステリック相温度範囲を有する液晶化合物を容易に、かつ安価に製造することができる。
【0017】
本発明の化合物は、次の[1]項に示される。
[1] 式(1)で表される化合物:


ここに、Aは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;mは0〜3の整数であり;mが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zは−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Rはステロール残基であり;Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基であり;Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。
【発明の効果】
【0018】
ステロール残基を有する本発明の化合物は、液晶相温度範囲が広い、電磁波の照射で重合できる、広い液晶相温度範囲を有する、他の液晶化合物との溶解性に優れている、これを混合して得られる組成物の結晶化温度を下げるなどの利点の多くを充足する。化合物(1)を含有する液晶組成物から得られる重合体は、透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などの特性の多くにも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1で得られた化合物(A−1)のH−NMRスペクトル
【図2】実施例2で得られた化合物(A−2)のH−NMRスペクトル
【図3】実施例3で得られた化合物(A−3)のH−NMRスペクトル
【図4】実施例4で得られた化合物(A−4)のH−NMRスペクトル
【図5】実施例5で得られた化合物(A−5)のH−NMRスペクトル
【図6】実施例6で得られた光学薄膜(C−1)の赤外スペクトル
【図7】実施例7で得られた光学薄膜(C−2)の赤外スペクトル
【図8】実施例8で得られた光学薄膜(C−3)の赤外スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0020】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶性化合物の用語は、液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶性化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と表記することがある。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)または式(1)の化合物と表記することがある。他の式についても同様に略記することがある。アクリレートおよびメタアクリレートの総称として(メタ)アクリレートを用いることがある。化学構造式において文字(例えばA)を六角形で囲んだ記号は、それが環構造の基(環A)であることを示す。
【0021】
化学式の構造を説明する際に用いる用語「任意の」は、「位置だけでなく数においても自由に選択できること」を意味する。例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよいという意味と、複数のAのどれもがB、C、DおよびEのいずれか1つで置き換えられてもよいという意味とに加えて、Bで置き換えられるA、Cで置き換えられるA、Dで置き換えられるA、およびEで置き換えられるAの少なくとも2つが混在してもよいという意味をも有する。任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、隣り合った−CH−が−O−で置き換えられることおよび−O−の隣の−CH−が−O−で置き換えられることは含まれない。
【0022】
本発明は前記の[1]項と次の[2]〜[25]項で構成される。
[2] Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P1)、式(P6)、式(P7)または式(P8)で表される基であり;Rが式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である、[1]項に記載の化合物。


(これらの式において、Meはメチルである。)
【0023】
[3] Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P3)、式(P4)または式(P5)で表される基あり;Rが式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である、[1]項に記載の化合物。
【0024】
[4] Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はフッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−または−COO−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;;Pが式(P1)、式(P3)および式(P5)のいずれか1つで表される重合性の基であり;Wが水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルあり;Rが請求項2に記載の式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である、[1]項に記載の化合物。
【0025】
[5] 式(1−m)で表される化合物:


ここに、Aは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;mは0〜3の整数であり;mが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Rはγ−オリザノール由来のステロール残基であり;Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基である。


(これらの式において、Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。)
【0026】
[6] 式(1−LC)で表される化合物と式(1−Ory)で表されるγ−オリザノールを反応させることによって得られる、[5]項に記載の化合物:


ここに、式(1−LC)において、Aは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;mは0〜3の整数であり;mが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Yは−OH、−COOH、−COClまたは−OCOOHであり;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基であり;


(これらの式において、Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。)
そして、式(1−Ory)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【0027】
[7] Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P1)、式(P6)、式(P7)または式(P8)で表される基である、[5]項に記載の化合物。
【0028】
[8] Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P3)、式(P4)または式(P5)で表される基である、[5]項に記載の化合物。
【0029】
[9] Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はフッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−または−COO−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P1)、式(P3)および式(P5)のいずれか1つで表される重合性の基であり;Wが水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである、[5]項に記載の化合物。
【0030】
[10] Zが−COO−であり;Xが炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレン中の任意の隣り合わない−CH−が−O−で置き換えられてもよい、[9]項に記載の化合物。
【0031】
[11] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つおよび[5]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つのどちらか一方を含有し、少なくとも2つの化合物からなる液晶組成物。
【0032】
[12] 構成成分である化合物の全てが重合性液晶化合物である、[11]項に記載の液晶組成物。
【0033】
[13] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つおよび[5]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つのどちらか一方と式(M1)で表される化合物および式(M2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物の少なくとも1つとを含有する組成物であって、組成物全量を基準とする割合で、[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物または[5]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物が0.1〜99.9重量%であり、式(M1)で表される化合物および式(M2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物が0.1〜99.9重量%である、[11]項に記載の液晶組成物:


ここに、Pは独立して、式(P9)〜式(P12)のそれぞれで表される重合性の基のいずれか1つであり;Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のフルオロアルキルであり;Rは水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり;この炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;AおよびAは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり、これらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく;Zは独立して単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−であり;sは1〜3の整数であり;sが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
[14] 式(M1)で表される化合物および式(M2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物が、式(M1a)、式(M1b)、式(M1c)、式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)のそれぞれで表される化合物である、[13]項に記載の液晶組成物:


ここに、Pは式(P9)〜(P12)で表される重合性の基のいずれか1つであり;Rは水素、フッ素、塩素、−CN、または炭素数1〜20のアルキルであり;このアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環Aは独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Wは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく;そして、pおよびqは独立して0または1であり、nは独立して0〜5の整数である。
[15] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを重合させて得られる重合体。
[16] [5]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを重合させて得られる重合体。
[17] [11]〜[14]のいずれか1項に記載の組成物を重合させて得られる重合体。
[18] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つ、[5]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つ、または[11]〜[14]のいずれか1項に記載の液晶組成物を基板に塗布して配向させた後、電磁波を照射して化合物または組成物を重合させることにより液晶相における分子の配向を固定化した、光学異方性を有する成形体。
[19] 固定化した分子の配向がツイスト配向である[18]項に記載の成形体。
[20] [18]項または[19]項に記載の成形体からなる光学素子。
[21] 選択反射の特性を有する[20]項に記載の光学素子。
[22] 波長350〜750nmのうち、一部またはすべての領域の波長の光に円偏光二色性を示す[21]項に記載の光学素子。
[23] 波長100〜350nmの紫外光領域にて円偏光二色性を示す[21]項に記載の光学素子。
[24] [1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物、[5]〜[10]のいずれか1項に記載の化合物、[11]〜[14]のいずれか1項に記載の組成物、[15]〜[17]のいずれか1項に記載の重合体、[18]項または[19]項に記載の成形体および[20]〜[23]のいずれか1項に記載の光学素子からなる群から選択される少なくとも1つの物質を含有する液晶表示素子。
[25] [15]〜[17]のいずれか1項に記載の重合体からなるフィルム。
【0034】
本発明の化合物は式(1)で表される。


式(1)中のAは環構造の2価基である。Aは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、好ましいAは1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンである。これらの環の任意の水素がハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよい。
【0035】
特に好ましいAは、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、および基中の任意の水素がフッ素、塩素、メチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられた1,4−フェニレンである。具体例を次に示す。


【0036】
これらの環は式(1)において左右逆向きに結合してもよい。1,4−シクロへキシレンおよび1,3−ジオキサン−2,5−ジイルの立体配置はトランス型が好ましい。本発明の化合物の各元素は同位体元素を自然に存在する割合より多く含んでも、物性に大きな差異はない。
【0037】
式(1)のZは結合基である。Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、―CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−である。単結合、−COO−、−OCO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−(CHO−、−O(CH−、―CH=CH−、−CH=CHCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、および−OCOCH=CH−は液晶性を向上させる傾向がある。フッ素を有する−CFCF−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−および−OCFCHCH−は、光学異方性を小さく、または誘電率異方性を大きくする傾向がある。三重結合を有する−C≡C−、−C≡CCOO−および−OCOC≡C−は、大きな光学異方性を誘起する傾向がある。好ましいZの単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−および−OCOCH=CH−である。特に好ましいZは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−C=C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−および−OCOCH=CH−である。
【0038】
mは0〜3の整数である。好ましいmは0〜2の整数であり、特に好ましいmは0または1である。mが2であるとき、2つのAは同一であってもよいし、または異なってもよく、2つのZも同一であってもよいし、または異なってもよい。mが3であるときについても同様である。
【0039】
式(1)のXは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレンの任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよい。好ましいXは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、および任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜20のアルキレンである。特に好ましいXは、単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−および任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数1〜10のアルキレンである。Xは分岐構造を有していてもよい。これらのXにおいて任意の水素は、フッ素で置き換えられてもよい。Xが不斉炭素を有する場合、ラセミ体であっても光学活性体であってもよい。光学活性体である場合、化合物のHTPを減じないためには、ステロイド構造から誘起されるねじれ方向と同一方向のねじれ方向を誘起する基を用いる必要がある。化合物のHTPを調整する必要がある場合には、ステロイド構造から誘起されるねじれ方向と逆方向のねじれ方向を誘起する基を用いることもある。
【0040】
式(1)のXは単結合または炭素数1〜20のアルキレンである。このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。好ましいXは単結合または炭素数1〜10のアルキレンである。この炭素数1〜10のアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0041】
式(1)のZは−O−、−COO−または−OCOO−である。好ましいZは−O−または−COO−であり、そして特に好ましいZは−COO−である。
【0042】
式(1)のPは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基である。


これらの式において、Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のフルオロアルキルである。好ましいWは水素、フッ素、塩素、メチル、エチルおよびトリフロロメチルである。
【0043】
式(P1)、式(P2)、式(P6)、式(P7)または式(P8)で表される重合性の基はラジカル重合に適している。式(P3)、式(P4)または式(P5)で表される重合性の基はカチオン重合に適している。重合開始剤を添加することでより敏速に重合できる。より好ましいPは式(P1)、式(P3)、式(P5)または式(P6)で表される重合性の基であり、Wは水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。特に好ましいPは式(P1)、式(P3)または式(P5)で表される重合性の基であり、Wは水素、メチル、またはエチルである。重合開始剤を添加する、または反応温度を最適化することにより、より敏速に重合させることができる。
【0044】
式(1)のRは植物由来のステロールの残基である。このステロール残基の好ましい例は、次に示す式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である。


【0045】
これらの基のフェルラ酸エステルは、γ−オリザノールの主成分であり、そして例えばJournal of Agricultural and Food Chemistry (1999), 47(7), 2724-2728 の方法により、γ−オリザノールからそれぞれを単離することができる。しかしながら、本発明の目的のためには、必ずしもこれらの基のフェルラ酸エステルを単一化合物として用いる必要はなく、γ−オリザノールを原料として用いて得られる、重合性の基とステロールのフェルラ酸エステル基とを有する化合物の混合物をそのまま用いて構わない、経済的には、むしろこの混合物をそのまま用いる方が好ましい。即ち、本発明ではγ−オリザノールを原料として用いることが好ましい。γ−オリザノールは、例えば和光純薬工業株式会社、東京化成工業株式会社、築野食品工業株式会社、株式会社岡安商店等から購入できる。なお、γ−オリザノールの主成分は、シクロアルテノールに代表されるトリテルペンアルコールのフェルラ酸エステルである。上記の式(Ory1)で表される基は、シクロアルテノールから水酸基を除いた残基である。
【0046】
即ち、本発明の化合物(1−m)は重合性の基とステロールのフェルラ酸エステル基とを有する化合物であり、式(1−LC)で表される液晶骨格を有する化合物と式(1−Ory)で表されるγ−オリザノールを反応させることによって得られることが好ましい。しかしながら、本発明の化合物(1−m)の製造方法はγ−オリザノールを用いる前記の方法に限定されるわけではなく、γ−オリザノール由来のステロール残基を導入できさえすれば、他の方法によって得られてもよい。


【0047】
式(1−LC)におけるP、X、Z、A、mおよびXは、前記の式(1)におけるこれらの記号とそれぞれ同じ意味を有する。そして、Yは−OH、−COOH、−COClまたは−OCOOHである。即ち、これらはフェルラ酸の水酸基と反応することができる官能基の代表的なものである。式(1−m)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基、即ちステロールから水酸基を除いた残りの基である。そして、γ−オリザノールにおけるこのステロール残基は単一の基ではない。即ち、γ−オリザノールは数種類のステロールとフェルラ酸とのエステルの混合物であるため、化合物(1−LC)と式(1−Ory)のγ−オリザノールを反応させることによって得られる生成物は、重合性の基とステロールのフェルラ酸エステル基とを有する化合物の混合物である。従って、化合物(1−m)は、複数の化合物からなる混合物である。そして化合物(1−m)は、次に示す式(1−a)〜式(1−f)で表される化合物の少なくとも2つを含む混合物であると、高い蓋然性を持って推定される。
【0048】


ここに、式(1−a)〜式(1−f)に共通して、Zは−O−、−COO−または−OCOO−である。そして、A、Z、X、XおよびPは式(1−LC)におけるそれぞれと同一の基であり、mは式(1−LC)におけるmと同一の値である。
【0049】
そして、式(1−a)におけるRは式(Ory1)で表される基であり;式(1−b)におけるRは式(Ory2)で表される基であり;式(1−c)におけるRは式(Ory3)で表される基であり;式(1−d)におけるRは式(Ory4)で表される基であり;式(1−e)におけるRは式(Ory5)で表される基であり;そして式(1−f)におけるRは式(Ory6)で表される基である。


(これらの式において、Meはメチルである。)
【0050】
上記の説明から明らかなように、本発明の化合物(1−m)はステロール残基の異なる化合物(1)の混合物の好ましい例であると言ってよい。以下の説明において「化合物(1)」は、特に断らない限り、式(1)で表される化合物および化合物(1−m)の総称として用いられる。化合物(1)は、重合性であり、光学活性を有することに加えて、他の液晶性化合物によく溶解することや、液晶組成物中において低温で結晶化しにくいので、使用可能温度範囲(液晶相)を広げることが可能であるなどの特徴を有する。即ち、化合物(1)は、その重合性を利用する用途の他、液晶表示素子に用いる液晶組成物の成分として用いることができる。
【0051】
化合物(1)の製法を説明する。重合性の基(P1)および(P7)はそれぞれ、水酸基およびアミノ基を持つ液晶性残基にアクリル酸クロリド類を作用させることにより導入できる。重合性の基(P2)は水酸基を有する液晶性残基にブチルビニルエーテルを作用し、エーテル交換反応を行うことにより導入できる。重合性の基(P3)および(P4)は、不飽和結合を有する液晶性残基を酸化することにより導入できる。オキシラン環およびシクロへキセンオキシド環を含む公知の中間体を使用してもよい。重合性の基(P5)はオキセタン環を含む公知の中間体、例えば、工業的に入手可能な3−アルキルオキセタン−3−イルメタノール等を使用して導入できる。重合性の基(P6)は水酸基を有する液晶性残基に無水マレイン酸を作用することで導入できる。重合性の基(P8)は、ハロゲンを有する液晶性残基にβ−クロロプロピオン酸クロリド類を作用させ、次いで脱HClすることにより導入できる。なお、液晶性残基は式(1)における−X−(A−Z)m−X−Z−を意味する。
【0052】
化合物(1)の重合性の基以外の構造は、フーベン・バイル(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセセス(John & Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(John & Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Pergamon Press)等に記載された有機合成化学的手法を適宜組み合わせることで製造できる。具体的には、6員環構造を有する有機残基を結合することで構築できる。次に結合方法を説明する。以下においてMGおよびMGは6員環構造を一つ以上有する1価の有機残基であり、互いに異なっても同一でもよい。
【0053】
<スキーム1>


【0054】
スキーム1について説明する。ボロン酸(i1)と臭化物(i2)の交錯カップリング反応でZが単結合である化合物(1A)を合成できる。カルボン酸(i3)と水酸基を有する化合物(i4)との脱水縮合反応で、結合基が−COO−である化合物(1B)を合成でき、更にカルボニル基をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−CFO−である化合物(1C)を合成できる。臭化物(i5)と化合物(i4)および塩基(B-)から、結合基に−CHO−を有する化合物(1D)を合成できる。ホスホニウム塩(i6)と塩基から得られるイリドにアルデヒド(i7)を作用しウイティッヒ反応を行うことで結合基が−CH=CH−である化合物(1E)を合成できる。塩(i6)は臭化物(i5)にPPhを作用し合成できる。結合基が−CHCH−である化合物(1F)は化合物(1E)を還元することで合成できる。ジケトン(i8)をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−CFCF−である化合物(1G)を合成できる。反応は2段階で進行するので、フッ素アニオンの力価を調整すれば、結合基が−CFCO−である化合物(i9)を取出せる。テトラフルオロエチレンにリチオ化物(i10)と(i11)を順次作用することで、結合基が−CF=CF−である化合物(1H)を合成できる。アルキン(i12)と臭化物(i2)を遷移金属触媒の存在下、交錯カップリング反応することで、結合基が−C≡C−である化合物(1J)を合成できる。
【0055】
<スキーム2>


【0056】
スキーム2について説明する。カルボン酸(i14)と化合物(i4)との脱水縮合反応で、結合基が−CH=CHCOO−である化合物(1K)を合成できる。カルボン酸(i14)はアルデヒド(i13)のウイティッヒ反応で合成できる。結合基が−CHCHCOO−である化合物(1L)は化合物(1K)の還元で合成でき、更にカルボニル基をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−CHCHCFO−である化合物(1M)を合成できる。カルボン酸(i15)と化合物(i4)との脱水縮合反応で、結合基が−C≡CCOO−である化合物(1N)を合成できる。更にカルボニル基をフッ素アニオンでフッ素化することで、結合基が−C≡CCFO−である化合物(1P)を合成できる。カルボン酸(i15)はアルキン(i12)をリチオ化しCOを作用することで合成できる。
【0057】
<スキーム3>


【0058】
スキーム3について説明する。臭化物(i16)と化合物(i4)と塩基から−(CHO−基を有する化合物(1Q)を合成できる。ホスホニウム塩(i17)と塩基から得られるイリドにアルデヒド(i7)を作用しウイティッヒ反応を行うことで結合基が−(CHCH=CH−である化合物(1R)を合成できる。結合基が−(CH−である化合物(1S)は化合物(1R)を還元することで合成できる。塩(i17)は臭化物(i16)にPPhを作用し合成できる。塩化物(i18)と化合物(i4)と塩基とから−CH=CHCHO−基を有する化合物(1T)を合成できる。
【0059】
化合物(1)またはそれを含有する組成物の螺旋の向きはいずれでも良く、それらから製造される円偏光分離素子は螺旋の方向に従って、左円偏光または右円偏光を選択的に反射する。
【0060】
上記方法で合成できる好ましい化合物の具体例は化合物(1−1)〜化合物(1−14)、化合物(2−1)〜化合物(2−14)、化合物(3−1)〜化合物(3−12)、および化合物(4−1)〜化合物(4−14)である。これらの化合物において、基Oryはγ−オリザノール由来のステロール残基であり、前記の式(Ory1)〜式(Ory6)で表される基の総称を意味する基であると言ってよい。ベンゼン環およびシクロヘキサン環の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたはフルオロアルキルで置き換えられてもよく、rは1〜20の整数である。Wは前記の[1]項で示したものと同一の意味を示す。
【0061】


【0062】


【0063】


【0064】


【0065】
本発明の組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを含有し、少なくとも2つの化合物からなる液晶組成物である。構成成分である化合物の全てが重合性化合物であることが好ましい。即ち、好ましい組成物は、少なくとも1つの化合物(1)と、単官能の重合性液晶化合物の群および多官能の重合性液晶化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物とを含有する重合性液晶組成物である。
【0066】
単官能の重合性液晶化合物および多官能の重合性液晶化合物の好ましい例は、化合物(M1)および化合物(M2)である。


ここに、Pは独立して、式(P9)〜式(P12)のそれぞれで表される重合性の基のいずれか1つであり、Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のフルオロアルキルである。Rは水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり、この炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよい。AおよびAは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり、これらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい。Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよい。Zは独立して単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−である。sは1〜3の整数である。そして、sが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0067】
化合物(M1)および化合物(M2)の好ましい例は、式(M1a)、式(M1b)、式(M1c)、式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)のそれぞれで表される化合物である。化合物(M1a)〜式(M2c)の好ましい含有量は、液晶組成物の全重量に基づいて0.1〜99.9重量%の範囲であり、より好ましい含有量は10〜95重量%の範囲である。


【0068】
式(M1a)〜(M2c)において、Pは式(P9)〜式(P12)で表される重合性の基のいずれか1つである。Rは水素、フッ素、塩素、−CN、または炭素数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−、または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよおい。環Aは独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、Wは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルである。Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は、−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよい。そして、pおよびqは独立して0または1であり、nは独立して0〜5の整数である。
【0069】
物性を改善する目的で、本発明の組成物に、非重合性の液晶化合物、非液晶性の重合性化合物、重合開始剤、溶媒、界面活性剤、酸化防止剤、フィラー、紫外線吸収剤、増感剤などを添加してもよい。添加物の化学構造や組成は限定されない。各成分の含有量は、組成物の液晶性を損なわない程度である。非重合性の液晶化合物の例は、データベースLiqCryst(登録商標、LCI Publisher, Hamburg, Germany)およびその掲載文献に記載の化合物である。
【0070】
組成物の特性を最適化するために、化合物(1)以外の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好適例は、化合物(Op−1)〜化合物(Op−25)である。ただし、Akは炭素数1〜15のアルキルまたは炭素数1〜15のアルコキシを、Me、EtおよびPhはそれぞれ、メチル、エチルおよびフェニルを示す。重合性の基Pは重合性があれば限定されないが、(メタ)アクリロイルオキシ部位、ビニルオキシ部位、オキシラニル部位、オキセタニル部位を含む重合性側鎖が好ましい。本発明の組成物は以下に説明する重合体の原料として用いる他、液晶表示素子の構成要素である液晶として直接用いてもよい。
【0071】


【0072】


【0073】
本発明の重合体は、化合物(1)またはそれらを含有する液晶組成物をラジカル重合またはカチオン重合することで製造できる重合体である。この重合体は、螺旋構造を有する直鎖または側鎖型の重合体である。化合物(1)の1つのみを重合させると、単独重合体が得られる。複数の重合性化合物を含有する組成物を重合させると、共重合体が得られる。化合物(1)が式(1)においてステロール残基のみが異なる化合物群からなる混合物であるとき、これの重合体は共重合体であると言うこともできるが、本発明では単一重合体として扱う。
【0074】
化合物(1)およびネマチック液晶組成物を含有する重合性液晶組成物はコレステリック相を有する。基板上に本組成物の薄膜をコーティングにより形成し光を照射し重合することで、固定化されたコレステリック相(ツイスト配向)を得ることができる。これは、反射型偏光板、非線形光学素子等に利用できる。また、ピッチを基板と垂直方向に傾斜することで広波長域反射偏光板(Broadband reflective polarizer)を製造できる。ピッチの傾斜化は先行文献の技術を参考にすれば当該業者は製造できる。
【0075】
重合はエネルギー(電磁波)を照射することで実施できる。かかる電磁波は、紫外線、赤外線、可視光線、X線、γ線などである。また、イオンやエレクトロンといった高エネルギー粒子を照射してもよい。
【0076】
機械的強度、熱的強度、塗布性、配向性などを調整する目的で液晶性を有しない重合性化合物を添加してもよい。このような非液晶性の重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、スチレン化合物、ビニルエーテル化合物、オキシラン化合物、およびオキセタン化合物が好ましい。重合体の機械的強度および熱的強度をより高めるために、多官能性のアクリレート、ビニルエーテル、オキシラン、およびオキセタンを使用してもよい。
【0077】
塗布を容易にするため、または液晶の配向を制御するために、本発明の組成物に界面活性剤を加えてもよい。界面活性剤の添加量は界面活性剤の種類や目的により異なるが、本発明の液晶組成物に対して、100ppm〜10重量%、さらに好ましくは100ppm〜5重量%の範囲である。
【0078】
光ラジカル重合開始剤の例は、具体的な商品名で、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のダロキュアシリーズからTPO、1173および4265、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、2959などの商品であるが、公知のいずれの開始剤も使用できる。
【0079】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などであるが、公知のいずれの開始剤も使用できる。
【0080】
光カチオン重合開始剤の例は、具体的な商品名で、UCC(株)のサイラキューアーUVI−6990および6974、旭電化工業(株)のアデカオプトマーSP−150、152、170および172、ローディア(株)のPhotoinitiator 2074、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)のイルガキュア250、みどり化学(株)のDTS−102などであるが、公知のいずれの開始剤も使用できる。
【0081】
本発明の成形体は、本発明の化合物または組成物を基板上に塗布して塗膜を形成させ、その組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を光などの電磁波の照射により重合させることによって固定化することで製造できる。基板は、例えば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネートなどである。具体的な商品名ではJSR(株)の「アートン」、日本ゼオン(株)の「ゼオネックス」および「ゼオノア」、三井化学(株)の「アペル」などである。基板は一軸延伸フィルムでも、二軸延伸フィルムであってもよい。基板は、事前に鹸化処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
【0082】
本発明の化合物または組成物を溶媒に溶かして塗布することもできる。好ましい溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、ブチルセルソルブ、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどの単独溶媒またはこれら複数の単独溶媒を混合した混合溶媒である。
【0083】
使用中の取り扱いを容易にするため、または保存中の重合を防止するために、本発明の化合物または組成物に安定剤を添加してもよい。公知の安定剤のいずれも使用できるが、例えば、4−エトキシフェノール、ハイドロキノン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)などである。
【0084】
本発明の化合物または組成物は、スピンコート、ロールコート、カテンコート、フローコート、プリント、マイクログラビアコート、グラビアコート、ワイヤーバーコート、デップコート、スプレーコート、メニスカスコートや流延成膜法などの方法で薄膜展開し、溶媒を除去する方法で塗布できる。
【0085】
塗布前に基板表面を配向処理すれば、本発明の化合物または組成物を基板上で配向させることができる。処理方法は、例えば、ポリイミド、ポリアミドやポリビニルアルコールなどからなる薄膜を形成して、それをレーヨン布などでラビング処理する方法や、酸化ケイ素を斜方蒸着する方法、延伸フィルムまたは光配向膜やイオンビームなどを用いるラビングフリー配向である。または、基板を直接レーヨン布などでラビング処理してもよい。基板表面の処理を行わなくてもよい場合もある。
【0086】
本発明の化合物または組成物の配向は電磁波の照射で固定できる。電磁波の波長の範囲は150〜500nmが好ましい。さらに好ましい範囲は250〜450nmであり、特に好ましい範囲は300〜400nmである。照射時の温度は、化合物または組成物が液晶状態である温度であるが、熱重合を防ぐために、100℃以下が好ましい。螺旋ピッチを有する光学素子は、右または左の円偏光を選択的に反射する。反射される光の波長が350〜750nmである場合、入射する可視光領域の円偏光を選択的に反射する。反射される光の波長が100〜350nmである場合、正面から入射する可視光領域の光を透過するので、ネガティブC−プレートとして使用が可能である。即ち、本光学素子をクロスニコルとした2枚の偏光板に挟んだ場合、正面方向では光の透過は得られないが、斜め方向へは光が透過する。反射される光の波長は、光学素子の屈折率と螺旋ピッチの積に等しいので、光学素子の屈折率と螺旋ピッチを調節する事で、選択反射する光の波長を任意に最適化することが可能である。
【0087】
光学活性化合物を含有する本発明の組成物は基板上で螺旋構造を示す。組成物を重合すればツイスト配向を有する成形体を製造できる。式「λ=屈折率×螺旋のピッチ」を満足する波長(λ)を有する光において、この成形体は円偏光分離機能を有する。従って、本発明の成形体は光学素子において、輝度向上フィルムとして使用できる。光学活性化合物の種類および添加量を適時選択することで、螺旋方向およびピッチを最適化できる。ネガティブ型c−プレートを作製する場合、選択反射光の波長を350nm未満にすることが必要である。そのため、好ましい螺旋ピッチは1nm以上200nm未満、より好ましくは10nm以上200nm未満、さらに好ましくは50nm以上200nm未満、特に好ましくは50nm以上150nm未満である。
【0088】
本発明の成形体の厚さは、要求特性と成形体の光学異方性値により異なる。好ましい光学異方性値は0.05〜50μmであり、より好ましい光学異方性値は0.1〜20μmであり、更に好ましい光学異方性値は0.5〜1μmである。好ましい位相差値は0.05〜50μmであり、より好ましい位相差値は0.1〜20μmであり、更に好ましい位相差値は0.5〜10μmである。成形体の好ましいヘーズ値は、1.5%以下、より好ましいヘーズ値は1.0%以下である。成形体の可視光領域での好ましい透過率は80%以上、より好ましい透過率は85%以上である。十分な偏光性能を得るために、1.5%以下のヘーズ値が好ましい。80%以上の透過率は、この成形体を液晶表示素子に用いる際、明るさを維持するために好ましい条件である。
【0089】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。合成した化合物の化学構造は、H−NMR(ブルカーバイオスピン(株)製DRX−500)で確認した。HTPは、メルク社製ネマチック液晶ZLI−1132に本発明の化合物を1wt%混合した組成物を調整し、カノーのくさび法を用いて算出した。製造した光学薄膜は赤外分光光度計(日本分光(株)製FT/IR−610)にて測定した。なお以下において、容量の単位であるリットルを記号Lで記す。
【実施例1】
【0090】
<化合物(A−1)の合成>


γ−オリザノール(販売元:和光純薬工業株式会社)(5.0g、8.3mmol)、4−(6−アクリロイルオキシヘキシルオキシ)安息香酸(2.5g、8.7mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.8g、8.7mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.05g、0.4mmol)およびジクロロメタン(100mL)の混合物を室温で3時間撹拌した。1M塩酸、2M水酸化ナトリウム水溶液、および水を順次用いて洗浄後、有機溶媒を減圧下で留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:300mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:19/1))で精製し、3.4g(収率46%)の化合物(A−1)を粘性のある固体として得た。H−NMRはよくその構造を支持した(図1)。HTPは3.1(−μm)であった。上記の式(A−1)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【実施例2】
【0091】
<化合物(A−2)の合成>


γ−オリザノール(販売元:和光純薬工業株式会社)(5.0g、8.3mmol)、4−(5−アクリロイルオキシペンチルオキシ)安息香酸(2.4g、8.7mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.8g、8.7mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.05g、0.4mmol)およびジクロロメタン(100mL)の混合物を室温で3時間撹拌した。1M塩酸、2M水酸化ナトリウム水溶液および水を順次用いて洗浄後、有機溶媒を減圧下で留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:300mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:19/1))で精製し、3.4g(収率47%)の化合物(A−2)を粘性のある固体として得た。H−NMRはよくその構造を支持した(図2)。HTPは3.5(−μm)であった。上記の式(A−2)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【実施例3】
【0092】
<化合物(A−3)の合成>


γ−オリザノール(販売元:和光純薬工業株式会社)(5.0g、8.3mmol)、4−(2−アクリロイルオキシエチルオキシ)安息香酸(2.1g、8.7mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.8g、8.7mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.05g、0.4mmol)およびジクロロメタン(100mL)の混合物を室温で3時間撹拌した。1M塩酸、2M水酸化ナトリウム水溶液および水を順次用いて洗浄後、有機溶媒を減圧下で留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:300mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:19/1))で精製し、4.9g(収率72%)の化合物(A−3)を無色結晶として得た。H−NMRはよくその構造を支持した(図3)。HTPは4.1(−μm)であった。上記の式(A−3)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【実施例4】
【0093】
<化合物(A−4)の合成>


γ−オリザノール(販売元:和光純薬工業株式会社)(5.0g、8.3mmol)、4−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシ)安息香酸(2.1g、8.7mmol)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.8g、8.7mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(0.05g、0.4mmol)およびジクロロメタン(100mL)の混合物を室温で3時間撹拌した。1M塩酸、2M水酸化ナトリウム水溶液および水を順次用いて洗浄後、有機溶媒を減圧下で留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:300mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:19/1))で精製し、5.5g(収率81%)の化合物(A−4)を無色結晶として得た。H−NMRはよくその構造を支持した(図4)。HTPは3.7(−μm)であった。上記の式(A−4)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【実施例5】
【0094】
<化合物(A−5)の合成>


γ−オリザノール(販売元:和光純薬工業株式会社)(10g、16.7mmol)、トリエチルアミン(3.4g、33.2mmol)、およびジクロロメタン(150mL)の混合物に氷冷下2−(2−{2−[クロロカルボニルオキシ]エトキシ}エトキシ)エチルアクリレート(4.4g、16.6mmol)のジクロロメタン溶液(10mL)を滴下し、室温で3時間撹拌した。1M塩酸、2M水酸化ナトリウム水溶液および水を順次用いて洗浄後、有機溶媒を減圧下で留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:400mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:19/1))で精製し、4.3g(収率31%)の化合物(A−5)を粘性のある固体として得た。H−NMRはよくその構造を支持した(図5)。HTPは1.7(−μm)であった。上記の式(A−5)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【実施例6】
【0095】
<化合物(A−6)の合成>


γ−オリザノール(販売元:和光純薬工業株式会社)(2.0g、3.2mmol)、ピリジン(0.28g、3.5mmol)、およびトルエン(50mL)の混合物に室温でアクリル酸クロライド(0.35g、3.8mmol)の溶液(3.1mL)を滴下し、室温で3時間撹拌した。1M塩酸、2M水酸化ナトリウム水溶液および水を順次用いて洗浄後、有機溶媒を減圧下で留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:100mL、溶出液:トルエン/酢酸エチル(容量比:50/1))で精製し、0.8g(収率38%)の化合物(A−6)を粘性のある固体として得た。HTPは3(−μm)であった。上記の式(A−6)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【実施例7】
【0096】
<光学薄膜(C−1)の製造>
実施例1で得られた化合物(A−1)(1.0g)にトルエン(9.0g)および重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製の商品名イルガキュア907)(0.05g)を加えた溶液を、ラビング処理を施したポリイミド配向膜付きガラス基板にスピンコーター(1200rpm)を用いて塗布した。70℃のホットプレート上で3分間放置し溶媒を除去して液晶層を配向させた。超高圧水銀灯(250W)を用いて紫外線(20mW/cm;365nm)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射し、赤色の選択反射を示す光学薄膜(C−1)を得た(図6)。
【実施例8】
【0097】
<光重合性液晶組成物(Mix−1)の調製と光学薄膜(C−2)の製造>
実施例1で得られた化合物(A−1)[50重量%]と実施例2で得られた化合物(A−2)[50重量%]からなる液晶組成物(Mix−1)を調整した。
次いで、組成物(Mix−1)(1.0g)にトルエン(4.0g)および重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製の商品名ダロキュアTPO)0.05g]を加えた溶液を、ガラス基板にスピンコーター(1200rpm)を用いて塗布した。70℃のホットプレート上で3分間放置し溶媒を除去して液晶層を配向させた。超高圧水銀灯(250W)を用いて紫外線(20mW/cm;365nm)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射し、赤色の選択反射を示す光学薄膜(C−2)を得た(図7)。
【実施例9】
【0098】
<光重合性液晶組成物(Mix−2)の調製と光学薄膜(C−3)の製造>
実施例1で得られた化合物(A−1)[80重量%]と化合物(B−1)[20重量%]からなる液晶組成物(Mix−2)を調整した。


次いで、組成物(Mix−2)(1.0g)にトルエン(4.0g)および重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製の商品名ダロキュアTPO)0.05g]を加えた溶液を、ガラス基板にスピンコーター(1200rpm)を用いて塗布した。70℃のホットプレート上で3分間放置し溶媒を除去して液晶層を配向させた。超高圧水銀灯(250W)を用いて紫外線(20mW/cm;365nm)を窒素雰囲気下、25℃で30秒間照射し、赤色の選択反射を示す光学薄膜(C−3)を得た(図8)。
【産業上の利用可能性】
【0099】
化合物(1)を含有する液晶組成物から得られる重合体は透明性、機械的強度、塗布性、溶解度、結晶化度、収縮性、透水度、吸水性、ガス透過性、融点、ガラス転移点、透明点、耐熱性、耐薬品性などの特性の多くにも優れるため、偏光板、光学補償板、配向膜、液晶表示素子、非線形光学素子などの多くに使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物:


ここに、Aは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイルまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;mは0〜3の整数であり;mが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zは−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Rはステロール残基であり;Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基であり;Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。
【請求項2】
Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P1)、式(P6)、式(P7)または式(P8)で表される基であり;Rが式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である、請求項1に記載の化合物。


(これらの式において、Meはメチルである。)
【請求項3】
Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P3)、式(P4)または式(P5)で表される基あり;Rが式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はフッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−または−COO−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、または−OCO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;;Pが式(P1)、式(P3)および式(P5)のいずれか1つで表される重合性の基であり;Wが水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルあり;Rが請求項2に記載の式(Ory1)〜式(Ory6)のいずれか1つで表される基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(1−m)で表される化合物:


ここに、Aは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;mは0〜3の整数であり;mが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Rはγ−オリザノール由来のステロール残基であり;Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基である。


(これらの式において、Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。)
【請求項6】
式(1−LC)で表される化合物と式(1−Ory)で表されるγ−オリザノールを反応させることによって得られる、請求項5に記載の化合物:


ここに、式(1−LC)において、Aは1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−シクロヘキセニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル、フルオレン−2,7−ジイル、または1,3−ジオキサン−2,5−ジイルであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zは単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−、−OCFCHCH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;mは0〜3の整数であり;mが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であっても異なる基であってもよく;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Yは−OH、−COOH、−COClまたは−OCOOHであり;Xは単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pは式(P1)〜式(P8)のいずれか1つで表される重合性の基であり;


(これらの式において、Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルである。)
そして、式(1−Ory)におけるRはγ−オリザノール由来のステロール残基である。
【請求項7】
Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P1)、式(P6)、式(P7)または式(P8)で表される基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CHO−、−OCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−C≡CCOO−または−OCOC≡C−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−または−CH=CH−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−、−COO−または−OCOO−であり;Xが単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−S−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P3)、式(P4)または式(P5)で表される基である、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
Aが1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり、そしてこれらの環の任意の水素はフッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;Zが単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−CHCHCOO−、−OCOCHCH−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Zが−O−または−COO−であり;Xが単結合または炭素数1〜10のアルキレンであり;このアルキレンにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−または−OCO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はフッ素で置き換えられてもよく;Pが式(P1)、式(P3)および式(P5)のいずれか1つで表される重合性の基であり;Wが水素、フッ素、塩素、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
が−COO−であり;Xが炭素数1〜10のアルキレンであり、そしてこのアルキレン中の任意の隣り合わない−CH−が−O−で置き換えられてもよい、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを含有し、少なくとも2つの化合物からなる液晶組成物。
【請求項12】
構成成分である化合物の全てが重合性液晶化合物である、請求項11に記載の液晶組成物。
【請求項13】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つと式(M1)で表される化合物および式(M2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物の少なくとも1つとを含有する組成物であって、組成物全量を基準とする割合で、請求項5〜10のいずれか1項に記載の化合物が0.1〜99.9重量%であり、式(M1)で表される化合物および式(M2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物が0.1〜99.9重量%である、請求項11に記載の液晶組成物:


ここに、Pは独立して、式(P9)]〜[式(P12)のそれぞれで表される重合性の基のいずれか1つであり;Wは水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のフルオロアルキルであり;Rは水素、フッ素、塩素、−CNまたは炭素数1〜20のアルキルであり;この炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;AおよびAは独立して、1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはフルオレン−2,7−ジイルであり、これらの環の任意の水素はハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよく;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく;Zは独立して単結合、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、−CHO−、−OCH−、−CFO−、−OCF−、−CH=CHCOO−または−OCOCH=CH−であり;sは1〜3の整数であり;sが2または3であるとき、複数のAはそれぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよく、複数のZもそれぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【請求項14】
式(M1)で表される化合物および式(M2)で表される化合物からなる群から選択される重合性化合物が、式(M1a)、式(M1b)、式(M1c)、式(M2a)、式(M2b)および式(M2c)のそれぞれで表される化合物である、請求項13に記載の液晶組成物:


ここに、Pは式(P9)〜(P12)で表される重合性の基のいずれか1つであり;Rは水素、フッ素、塩素、−CN、または炭素数1〜20のアルキルであり;このアルキルにおいて、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく、そして任意の水素はハロゲンで置き換えられてもよく;環Aは独立して1,4−シクロへキシレンまたは1,4−フェニレンであり;Wは独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のハロゲン化アルキルであり;Xは独立して単結合または炭素数1〜20のアルキレンであり、このアルキレン中の任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−または−OCOO−で置き換えられてもよく;そして、pおよびqは独立して0または1であり、nは独立して0〜5の整数である。
【請求項15】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを重合させて得られる重合体。
【請求項16】
請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物を重合させて得られる重合体。
【請求項17】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つまたは請求項11〜14のいずれか1項に記載の液晶組成物を基板に塗布して配向させた後、電磁波を照射して化合物または組成物を重合させることにより液晶相における分子の配向を固定化した光学異方性を有する成形体。
【請求項18】
固定化した分子の配向がツイスト配向である、請求項17に記載の成形体。
【請求項19】
請求項17または18に記載の成形体からなる光学素子。
【請求項20】
選択反射の特性を有する請求項19に記載の光学素子。
【請求項21】
波長350〜750nmのうち、一部またはすべての領域の波長の光に円偏光二色性を示す、請求項20に記載の光学素子。
【請求項22】
波長100〜350nmの紫外光領域にて円偏光二色性を示す、請求項20に記載の光学素子。
【請求項23】
請求項5〜10のいずれか1項に記載の化合物、請求項11〜14のいずれか1項に記載の組成物、請求項15または16に記載の重合体、請求項17または18に記載の成形体および請求項19〜22のいずれか1項に記載の光学素子からなる群から選択される少なくとも1つの物質を含有する液晶表示素子。
【請求項24】
請求項15または16に記載の重合体からなるフィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−227656(P2009−227656A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23397(P2009−23397)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】