説明

重合性液晶化合物

【課題】 屈折率異方性が小さく、他の液晶化合物と優れた溶解性を有する重合性液晶化合物を提供する。
【解決手段】 一般式(I)
【化1】


で表される重合性液晶化合物を提供する。本願発明の重合性液晶化合物は、低い屈折率異方性と、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから液晶組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性液晶化合物を構成部材とする重合性液晶組成物は、屈折率異方性が小さくなることから波長分散に優れた光学特性を有する光学異方体を作製することが可能であり、偏向板、位相差板等の用途に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性液晶化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会の進展に伴い液晶ディスプレイに必須な偏向板、位相差板などに用いられる光学補償フイルムの重要性は益々高まっている。また、耐久性が高く、高機能化が求められる光学補償フイルムには重合性の液晶組成物を重合させる例が報告されている。光学補償フイルム等に用いる光学異方体は目的により異なるので目的にあった特性を有する化合物が必要である。また光学特性だけでなく化合物の重合速度、溶解性、融点、ガラス転移点、重合物の透明性、重合物の機械的強度なども重要な因子となる。
【0003】
重合性液晶組成物を構成する化合物として従来は、1,4−フェニレン基をエステル結合によって連結した構造を有する化合物が主として用いられてきた(特許文献1参照)。しかしながら、当該引用文献記載の重合性液晶化合物は、溶解性が低い、屈折率異方性が大きい等の問題があった。一方、溶解性を向上させるために構造を非対称とした重合性液晶化合物が開示されており(特許文献2参照)、従来の重合性液晶化合物と比較して溶解性の点で改善がなされている。しかしながら、非対称の化合物は、製造工程が煩雑であることから、光学異方性体の高価格化の要因となる問題があった。
【0004】
【特許文献1】特表平10−513457号公報
【特許文献2】特表平2001−527570公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、屈折率異方性が小さく、他の液晶化合物と優れた溶解性を有する重合性液晶化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは重合性化合物における種々の置換基の検討を行った結果、特定の構造を有する重合性化合物が前述の課題を解決できることを見出し本願発明を完成するに至った。
本願発明は、一般式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、RおよびRはお互い独立して、重合性基を表し、SおよびSはお互い独立してスペーサー基又は単結合を表し、XおよびXはお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、又は単結合を表し、(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)AおよびAはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、AおよびAは無置換又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、またはニトロ基に置換されていても良く、Bは、1,4−シクロヘキシレン基又は4,4’−ビシクロヘキシレン基を表すが、該シクロヘキシル基中の炭素原子は無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、またはニトロ基に置換されていても良く、XおよびXはお互い独立して―COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表すが、、XおよびXの少なくとも一方は―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表す、mは1、2又は3の整数を表し、nは1、2又は3の整数を表す。)で表される重合性液晶化合物及び当該化合物を用いた重合性液晶組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の重合性液晶化合物は、低い屈折率異方性と、他の液晶化合物との優れた溶解性を有することから液晶組成物の構成部材として有用である。又、本願発明の重合性液晶化合物を構成部材とする重合性液晶組成物は、屈折率異方性が小さくなることから波長分散に優れた光学特性を有する光学異方体を作製することが可能であり、偏向板、位相差板等の用途に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一般式(1)において、RおよびRはお互い独立して重合性基を表すが、重合性基の具体的な例としては、下記に示す構造が挙げられる。
【0011】
【化2】

【0012】
これらの重合基はラジカル重合、ラジカル付加重合、カチオン重合、およびアニオン重合により硬化する。特に重合方法として紫外線重合を行う場合には、式(R−1)、式(R−2)、式(R−4)、式(R−5)、式(R−7)、式(R−11)、式(R−13)又は式(R−15)が好ましく、式(R−1)、式(R−2)、式(R−7)、式(R−11)又は式(R−13)がより好ましい。
【0013】
およびSはお互い独立してスペーサー基又は単結合を表すが、スペーサー基としては、炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、該アルキレン基は酸素原子同士が直接結合しないものとして炭素原子が酸素原子に置き換えられても良く、液晶性および他の液晶化合物との相溶性の観点から炭素数3〜8のアルキレン基がより好ましい。
【0014】
およびXはお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、又は単結合を表すが、)好ましくは−O−、―COO−、−OCO−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−又は―CHCOO−、であり、より好ましくは−O−、―COO−又は−OCO−である。AおよびAはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、AおよびAは無置換又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、またはニトロ基に置換されていても良いが、好ましくは1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基又はナフタレン−2,6−ジイル基である。Bは、1,4−シクロヘキシレン基又は4,4’−ビシクロヘキシレン基を表すが、該シクロヘキシル基中の炭素原子は無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、またはニトロ基に置換されていても良いが、好ましくは、無置換の1,4−シクロヘキシレン基又は該シクロヘキシル基中の炭素原子がアルキル基、アルコキシ基又はハロゲン基で置換された1,4−シクロヘキシレン基である。XおよびXはお互い独立して、―COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表すが、、XおよびXの少なくとも一方は―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表すが、
がOCOでXがCCOO又は、XがCOCOでXがCOOCの組み合わせが好ましい。mは1、2又は3の整数を表し、nは1、2又は3の整数を表すが、液晶性及び耐熱性の観点からm+nが2〜5の整数であることが好ましく、2〜4の整数がより好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、より具体的には、下記の一般式(I-1)〜一般式(I-16)で表される。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
本発明の化合物は以下の合成方法で合成することができる。
(製法1) 一般式(I-2)で表される化合物の製造
4-ヒドロキシ安息香酸と6-クロロヘキサノールを水酸化ナトリウムなど適当な塩基の存在下でエーテル化させた後、酸触媒を用いたアクリル酸とのエステル化反応で重合性基を有する安息香酸誘導体(S-3)を得る。
【0019】
【化6】

【0020】
一方、水素化ホウ素ナトリウムのエタノール溶液中に1,4-シクロヘキサンジオンモノエチレンアセタールのテトラヒドロフラン(以下THF)溶液を滴下してアルコールに還元した後、ベンジルブロミドと水酸化ナトリウムなど適当な塩基の存在下でエーテル化させて水酸基に保護基を結合させた後、蟻酸を用いてエチレンアセタール基の脱保護反応を行い、シクロヘキサノン誘導体(S-7)を得る。更にメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリドを用いてウィッティヒ反応を行う。更に塩酸と反応させてシクロヘキシルアルデヒド誘導体(S-9)をえる。アルカリ条件下でシクロヘキサン環の異性化反応を行い、更に同様のウィッティヒ反応を行った後に水素化ホウ素ナトリウムで還元反応を行い化合物(S-12)を得る。更に生成物にパラジウム触媒を加え、水素添加による還元反応によりアルコール保護基を脱離させシクロヘキサノール誘導体(S-13)を得る。
【0021】
【化7】

【0022】
得られた安息香酸誘導体(S-3)及びシクロヘキサノール誘導体(S-13)をジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いてエステル化反応させ目的物の化合物(I-2)を得ることができる。
【0023】
【化8】

【0024】
(製法2) 一般式(I-6)で表される化合物の製造
4-ヒドロキシフェネチルアルコールに、6-クロロヘキサノールとアクリル酸との反応物である6-クロロヘキシルアクリレートとを炭酸カリウムなど適当な塩基の存在下でエーテル化反応を行いフェネチルアルコール誘導体(S-15)を得る。
【0025】
【化9】

【0026】
更に、フェネチルアルコール誘導体(S-15)とトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸をジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水縮合剤を用いてエステル化反応させ目的物の化合物(I-10)を得ることができる。
【0027】
【化10】

【0028】
本願発明の化合物は、キラルネマチック、キラルスメクチック、およびコレステリック液晶組成物に好適に使用できる。本願発明の化合物を用いる液晶組成物において、重合性キラル化合物の添加量は、0.1〜40質量%が好ましい。
【0029】
また、本発明の重合性液晶化合物を用いた液晶組成物を重合させることによって製造される光学異方体は種々の用途に利用できる。例えば、本発明の重合性液晶組成物を、配向させない状態で重合させた場合、光散乱板、偏光解消板、モアレ縞防止板として利用可能である。また、本発明の重合性液晶組成物を配向させた状態において、重合させることにより製造された光学異方体は、物理的性質に光学異方性を有しており、有用である。このような光学異方体は、例えば、本発明の重合性液晶組成物表面を、布等でラビング処理した基板、もしくは有機薄膜を形成した基板表面を布等でラビング処理した基板、あるいはSiOを斜方蒸着した配向膜を有する基板上に担持させるか、基板間に挟持させた後、本発明の液晶を重合させることによって製造することができる。重合性液晶材料の塗布性をさらに向上させるために、基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けることや、重合性液晶材料にレベリング剤を添加するのも有効である。基板上にポリイミド薄膜等の中間層を設けるのは、重合性液晶材料を重合させて得られる光学異方体と基板の密着性が良くない場合に、密着性を向上させる手段としても有効である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
(実施例1)
撹拌装置、冷却器、及び温度計を備えた反応容器に4-ヒドロキシ安息香酸 13.8g(100ミリモル)、ヨウ化カリウム 2.5g、テトラブチルアンモニウムブロミド 0.7g、エタノール 400mlを仕込み室温で攪拌した。水酸化ナトリウム 12gの25%水溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を50℃に保ち、3-クロロプロパノール 14.2g(150ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を更に70℃に加温して更に3時間反応させた。反応終了後、10%塩酸で中和して酢酸エチルで抽出を行い、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を濃縮して式(1)に示す化合物(中間体1)を16g合成した。
【0031】
【化11】

【0032】
次いで、撹拌装置、冷却器及びディーンスタックを備えた反応容器に、上記で合成した(中間体1)を16g(81ミリモル)、アクリル酸 10g(140ミリモル)、p−トルエンスルホン酸 1g、トルエン100mlを仕込んだ。反応容器を加熱してトルエン還流させそのまま4時間反応させた。反応終了後、反応液を飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄した後、10%塩酸水溶液で中和、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して、式(2)に示す化合物(中間体2)20gを得た。
【0033】
【化12】

【0034】
また、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に水素化ホウ素ナトリウム 1.89g(50ミリモル)、エタノール200mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、1,4-シクロヘキサンジオンモノエチレンアセタール 15.6g(100ミリモル)のTHF50ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し3時間反応させた。反応液にアンモニウムクロリドの飽和水溶液 200ml加え、トルエン500mlで抽出し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去してシクロヘキサノール誘導体(中間体3)を15.5g得た。更に、後、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に中間体3 15.5g(98ミリモル)、炭酸カリウム 27g(196ミリモル)、トルエン 500mlを仕込み、反応容器を50℃に保ち、ベンジルブロミド 20g(117ミルモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を70℃に加熱して3時間反応させた。反応終了後、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して式(3)に示す化合物(中間体4)24gを得た。
【0035】
【化13】

【0036】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に上記中間体(4) 24g(98ミリモル)、蟻酸 22g(500ミリモル)、トルエン 300mlを仕込み、反応容器を70℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、トルエン200mlを加え、飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去してアセタール保護基を脱離させた中間体(5)を18gを得た。
更に、撹拌装置、冷却器、温度計及び、窒素導入管を備えた反応容器にメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 42.3g(123ミリモル)、THF300mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、ターシャリーブトキシカリウム 13.8g(123ミリモル)のTHF 100ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を0℃に保ち、2時間攪拌した。更に上記中間体(5)18gのTHF 100ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を0℃に保ち、2時間反応させた。反応液終了後、純水100ml加え、更にトルエン500mlで抽出し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して中間体(6)を得た。この中間体(6)をヘキサン/メタノール60/40ml中に分散させ、5gの過酸化水素水を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に純水40ml、ヘキサン100ml加え、メタノール/純水=2/1の混合溶液で洗浄した後、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去、シリカゲルカラムで精製を行い式(4)に示す化合物(中間体7)18.4gを得た。
【0037】
【化14】

【0038】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に上記中間体(7)18.4g(79ミリモル)、THF100mlを仕込み、室温で10%塩酸溶液 30mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、30℃に加熱して2時間反応させた。反応終了後、トルエン200mlを加え飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して中間体(8)を17g得た。更に、中間体(8)17g、メタノール100ml、トリエチルアミン 5gをフラスコに仕込み、20%水酸化ナトリウム溶液 10mlを滴下した後、フラスコを−10℃に冷却して異性化反応を行った。異性化が終わった後、10%の塩酸で中和し、反応液にトルエン 200mlを仕込み、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して、式(5)に示す化合物(中間体9)17gを得た。
【0039】
【化15】

【0040】
撹拌装置、冷却器、温度計及び、窒素導入管を備えた反応容器にメトキシメチルトリフェニルホスホニウムクロリド 37.3g(108ミリモル)、THF300mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、ターシャリーブトキシカリウム 12.1g(108ミリモル)のTHF 100ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を0℃に保ち、2時間攪拌した。更に上記中間体(9)17gのTHF 100ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を0℃に保ち、2時間反応させた。反応液終了後、純水100ml加え、更にトルエン500mlで抽出し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して中間体(10)を得た。この中間体(10)をヘキサン/メタノール60/40ml中に分散させ、5gの過酸化水素水を加え、室温で2時間攪拌した。反応液に純水40ml、ヘキサン100ml加え、メタノール/純水=2/1の混合溶液で洗浄した後、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を留去、シリカゲルカラムで精製を行い式(6)に示す化合物(中間体11)17.2gを得た。
【0041】
【化16】

【0042】
撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に上記中間体(11)18.4g(70ミリモル)、THF100mlを仕込み、室温で10%塩酸溶液 30mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、30℃に加熱して2時間反応させた。反応終了後、トルエン200mlを加え飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して中間体(12)を16g得た。
【0043】
更に、撹拌装置、冷却器及び温度計を備えた反応容器に水素化ホウ素ナトリウム 1.28g(34ミリモル)、エタノール200mlを仕込み、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち、中間体(12)16gのTHF50ml溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し3時間反応させた。反応液にアンモニウムクロリドの飽和水溶液 200ml加え、トルエン500mlで抽出し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して中間体(13)を16.1g得た。
【0044】
次いで撹拌装置備えたオートクレーブ容器に、上記で合成した中間体(13)16.1g、パラジウムカーボン 800mg、エタノール150mlを仕込み、1気圧の水素にて還元反応(反応温度50℃、3時間)を行った。反応液をろ過した後、反応溶媒を留去して式(7)に示す化合物(中間体14)9.9gを得た。中間体14のシス−トランス比は1/9であった。
【0045】
【化17】

【0046】
更に、撹拌装置、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、上記で合成した中間体(2)20g(80ミリモル)、中間体(14)5.7g(40ミリモル)、ジメチルアミノピリジン820mg、塩化メチレン 200mlを仕込こみ、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 10g(80ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン100mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムおよび再結晶により精製を行い式(8)に示す目的の化合物 19gを得た。この化合物の融点は74℃であり、低い温度で溶解することができた。
【0047】
【化18】

【0048】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:7.99(m,4H),6.96(d,4H),6.39(d,2H),6.13(q,2H),5.85(d,2H),4.98(m,1H),4.38(m,6H),4.12(m,4H),2.25−2.20(m,4H),2.10(m,4H),1.88(m,2H),1.55(s,1H),1.4(m,4H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:166.1,165.9,162.3,162.1,1301.4,130.8,128.1,113.9,113.8,73.4,64.5,62.9,61.2,35.3,33.9,31.6,30.9,28.6,
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1765,1652−1622,810
(融点)74℃
【0049】
(実施例2)
冷却器及び温度計を備えた反応容器に6-クロロヘキシルアクリレート 19g(100ミリモル)、炭酸カリウム 27g(200ミリモル)、ジメチルホルムアミド(以下DMF) 200mlを仕込み、室温で1時間攪拌した。次いで、ヒドロキシフェネチルアルコール 13.8g(100ミリモル)のDMF溶液(30ml)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を90℃に加熱して5時間反応させた。反応終了後、酢酸エチル 500mlを加え、純水、飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去して式(9)に示す中間体(15)15gを得た。
【0050】
【化19】

【0051】
撹拌装置、冷却器、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、上記で合成した中間体(15)20g(51ミリモル)、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸 4.3g(25ミリモル)、ジメチルアミノピリジン610mg、塩化メチレン 200mlを仕込こみ、氷冷バスにて5℃以下に反応容器を保ち。窒素ガスの雰囲気下でジイソプロピルカルボジイミド 7.3g(51ミリモル)をゆっくり滴下した。滴下終了後、反応容器を室温に戻し5時間反応させた。反応液をろ過した後、ろ液に塩化メチレン100mlを加え、10%塩酸水溶液で洗浄し、更に飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムおよび再結晶により精製を行い式(10)に示す目的の化合物 14gを得た。この化合物の融点は69℃であり、低い温度で溶解することができた。
【0052】
【化20】

【0053】
(物性値)
1H−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:7.11(d,4H),6.83(d,4H),6.37(d,2H),6.13(q,2H),5.85(d,2H),4.23(t,4H),4.18(t,4H),3.92(t,4H),2.85(m,4H),2.28(m,2H),2.00(m,4H),1.78(m,4H),1.69(m,4H),1.55−1.39(m,12H)
13C−NMR(溶媒:重クロロホルム):δ:175.1,166.0,157.6,130.4,129.7,129.5,128.4,114.4,67.8,65.0,64.5,42.5,34.3,29.2,28.6,28.0,25.8
赤外吸収スペクトル(IR)(KBr):2925,2855,1765,1652−1622,810
(融点)69℃
【0054】
(実施例3)
式(8)および(10)に示す化合物をUCL−001(大日本インキ化学社製)に20重量%添加したが、容易に溶解し室温に冷却しても析出しなかった。
(比較例)
式(11)に示す化合物の融点は87℃であり、UCL−001に20重量%添加したが、溶解性が悪く、室温30分で結晶が析出した。
【0055】
【化21】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、RおよびRはお互い独立して、重合性基を表し、SおよびSはお互い独立してスペーサー基又は単結合を表し、XおよびXはお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、−CO−NR11−、−NR11−CO−、−SCH−、−CHS−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、−OCOCH−、―CHCOO−、−CH=CH−、−CF=CH−、−CH=CF−、−C≡C−、又は単結合を表し、(式中、R11は炭素原子1〜4のアルキル基を表す。)AおよびAはお互い独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表すが、AおよびAは無置換又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、またはニトロ基に置換されていても良く、Bは、1,4−シクロヘキシレン基、
4,4‘−ビシクロヘキシレン基を表すが、該シクロヘキシル基中の炭素原子は無置換であるか又はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、シアノ基、またはニトロ基に置換されていても良く、XおよびXはお互い独立して―COO−、−OCO−、−CHO−、−OCH−、―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表すが、、XおよびXの少なくとも一方は―COOC−、―OCOC−、−COCO−又は−CCOO−を表す、mは1、2又は3の整数を表し、nは1、2又は3の整数を表す。)表される重合性液晶化合物。
【請求項2】
およびAがお互い独立して、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基、テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基を表し、AおよびAは無置換またはアルキル基、ハロゲン化アルキル、アルコキシ基、ハロゲン、シアノ基の置換基を有していても良く、m及びnの合計が2、3又は4である請求項1記載の重合性液晶化合物。
【請求項3】
およびXがお互い独立して、−O−、−S−、−OCH−、−CHO−、−CO−、―COO−、−OCO−、−OCOO−、―CH=CH−COO−、−OOC−CH=CH−、―COOC−、―OCOC−、―COCO−、―CCOO−、―COOCH−、−CHCOO−、又は単結合から選択される請求項1又は2記載の重合性液晶化合物。
【請求項4】
請求項1から3記載の重合性液晶化合物を含有する重合性液晶組成物。
【請求項5】
請求4記載の重合性液晶組成物を用いた光学異方体。

【公開番号】特開2008−110948(P2008−110948A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295731(P2006−295731)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】