説明

重合性液晶組成物およびそれを用いた光学異方性フィルム

【課題】広範囲な液晶相領域を有し、有機溶剤への溶解性に優れ、配向形態の制御が容易な重合性液晶組成物の提供する。
【解決手段】式(1)で表されるフルオレン誘導体と式(2)で表されるビスフェノール骨格を有する化合物を含有する重合性液晶組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合性の液晶性化合物を含む液晶組成物を重合させて得られる重合体、この重合体を用いて得られる光学異方性を有する成形体、およびこの重合体を含有する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、偏光板、位相差板などの光学異方性体に重合性の液晶化合物が利用されている。この化合物が液晶状態において光学異方性を示し、重合によりこの異方性が固定化されるためである。光学異方性を有する成形体に必要な光学的特性は目的によって異なるので、目的にあった特性を有する化合物が必要である。このような目的に使用される化合物は、単独では前記の異方性を制御することが困難であることが多いために種々の化合物と組み合わせ、組成物として利用されることがある。
【0003】
本発明者らはフルオレン骨格を有する重合性液晶化合物(特許文献1)を開発した。これらの化合物を用いた重合性液晶組成物は、その塗布性を調整する目的で有機溶剤を加えたインキとして使用されることがある。重合性液晶組成物を使用して光学異方性を有するフィルムを製造するには、重合性液晶化合物、光重合開始剤、界面活性剤などを有機溶剤に溶解させて溶液粘度、レベリング性などを調整したインキを調製する。このインキを配向処理した透明基板フィルムに塗布し、溶剤を乾燥させ、重合性液晶組成物を基板フィルム上に配向させる。次に紫外線を照射して重合させ、配向状態を固定化させる。有機溶剤には一般的にトルエンなどの炭化水素系の溶剤、あるいはメチルエチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤を使用するが、近年、環境への負荷、安全性(変異原性、毒性)などの問題から、より環境への負荷が少ない、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(PGMEA)などの安全性の高い有機溶剤の使用を求められている。しかしながら、これらの化合物もPGMEAなどの溶剤への溶解性が悪く、高濃度のインキが調製できない。また、融点が高く、一旦加熱して液晶とした後、室温に放置すると結晶が析出しやすいなどの欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US 6,824,709
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、広範囲な液晶相発現領域を有し、室温に放置した場合においても液晶相を示すほど再結晶化温度が低く、PGMEAなどの安全性の高い溶剤に対する溶解性に優れている重合性液晶組成物を提供することである。第2の目的は、重合性液晶の配向を制御し、用途に応じた光学異方性を示す重合体を提供することである。第3の目的は、この光学異方性を示す重合体を含有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は特定骨格を有するフルオレン系重合性液晶化合物とビスフェノール骨格を有する重合性化合物を成分とする重合性液晶組成物により、上記の課題の多くが解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明の重合性液晶組成物は次の[1]項に示される。
【0007】
[1] 式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(A)成分および式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(B)成分を含有し、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよく、そして式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい重合性液晶組成物。


(Wは独立して水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
11は単結合、−COO−、−CH=CH−COO−、−CHCH−COO−、−CHO−、−CONH−、−(CH−、−CHCH−または−C≡C−であり;
12は単結合、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−OCH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−または−C≡C−であり;
13およびZ14は独立して単結合または−O−であり;
は独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレンにおける任意の水素は、フッ素、塩素、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;
は独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。)


(Aは式(A2−1)〜式(A2−18)のいずれか1つで表される基であり;


は独立して水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
は独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のフルオロアルキルであり;
は独立して単結合、−CH=CH−、または−(CH−であり;
n2は独立して2〜15の整数である。)


(式(3−1)において、
31は独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31は独立して水素またはメチルであり;
32は独立して水素またはフッ素であり;
n31は独立して2〜10の整数であり;
式(3−2)において、
32は独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31は独立して−O−または式(a)で表される基であり;


32は独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−であり;
33は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
34は独立して水素またはフッ素であり;
n32は独立して2〜10の整数である。)


(Xは水素、フッ素またはメチルであり;
は−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり;
は水素またはフッ素であり;
41は−O−または前記の式(a)で表される基であり;
42は単結合、−C≡C−または−COO−であり;
n4は2〜10の整数である。)
【発明の効果】
【0008】
特定骨格を有するフルオレン系重合性液晶化合物である式(1)の化合物と、ビスフェノール骨格を有する重合性化合物である式(2)の化合物を重合性液晶組成物の成分として用いることにより、PGMEAなどの安全性の高い溶剤に対して良好な溶解性を有する重合性液晶組成物が得られ、各種配向の制御が可能となる。本発明の重合体は、例えば、液晶表示素子の構成要素である位相差板、偏光素子、反射防止膜、選択反射膜、輝度向上フィルムおよび視野角補償膜などに利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。液晶化合物は、液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶相はネマチック相、スメクチック相、コレステリック相などであり、多くの場合ネマチック相を意味する。重合性は、光、熱、触媒などの手段により単量体が重合し、重合体を与える能力を意味する。式(1−1)で表わされる化合物を、化合物(1−1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様の簡略化法に従って称することがある。用語「液晶性」の意味は、液晶相を有することだけに限定されない。それ自体は液晶相を持たなくても、他の液晶化合物と混合したときに、液晶組成物の成分として使用できる特性も、液晶性の意味に含まれる。化合物の構造を説明する際に用いる用語「任意の」は、位置だけでなく個数についても任意であることを意味する。そして、例えば、「任意のAはB、CまたはDで置き換えられてもよい」という表現は、任意のAがBで置き換えられる場合、任意のAがCで置き換えられる場合および任意のAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB〜Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。但し、任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいとする定義には、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。
【0010】
本発明は上記の[1]項と下記の[2]〜[18]項とで構成される。
[2] 式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(A)成分および式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(B)成分を含有し、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよく、そして式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい組成物であって、
式(1)において、
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
11が−COO−、−CH=CH−COO−または−CHCH−COO−であり;
12が−OCO−、−OCO−CH=CH−または−OCO−CHCH−であり;
13およびZ14が独立して単結合または−O−であり;
が独立して1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであって、これらの環における任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
が独立して炭素数2〜14のアルキレンであって、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
式(2)において、
が式(A2−1)〜式(A2−8)および式(A2−11)〜式(A2−18)のいずれか1つで表される基であり;
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素またはフッ素であり、
が独立して単結合、−CH=CH−または−(CH−であり;
n2が独立して2〜10の整数であり;
式(3−1)において、
31が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31が独立して水素またはメチルであり;
32が独立して水素またはフッ素であり;
31は独立して2〜10の整数であり;
式(3−2)において、
32が独立して水素、フッ素またはメチルであり:
31が独立して−O−または式(a)で表される基であり;
32がそれぞれ独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−であり;
33が独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
34が独立して水素またはフッ素であり;
32が独立して2〜10の整数であり;
式(4)において
が水素、フッ素またはメチルであり;
が−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり;
が水素またはフッ素であり;
41が−O−または式(a)で表される基であり;
42が単結合、−C≡C−または−COO−であり;
n4が2〜10の整数である、
[1]項に記載の重合性液晶組成物。
【0011】
[3] 式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(A)成分および式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(B)成分を含有し、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよく、そして式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい組成物であって、
式(1)において、
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素またはメチルであり;
11が−COO−、−CH=CH−COO−または−CHCH−COO−であり;
12が−OCO−、−OCO−CH=CH−または−OCO−CHCH−であり;
13およびZ14が独立して単結合または−O−であり;
が独立して1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであって、これらの環における任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
が独立して炭素数2〜14のアルキレンであって、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
式(2)において、
が式(A2−1)、式(A2−4)、式(A2−11)、式(A2−12)、式(A2−16)および式(A2−18)のいずれか1つで表される基であり;
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素またはフッ素であり、
が独立して単結合、−CH=CH−、または−(CH−であり;
n2が独立して2〜10の整数であり;
式(3−1)において、
31が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31は独立して水素またはメチルであり;
32は独立して水素またはフッ素であり;
31は独立して2〜10の整数であり;
式(3−2)において、
32が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31が独立して−O−または式(a)で表される基であり;
32が独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−であり;
33が独立して水素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
34が水素であり;
n32は独立して2〜10の整数であり;
式(4)において
が水素またはメチルであり;
が−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり;
が水素またはフッ素であり;
41が−O−または式(a)で表される基であり;
42が単結合、−C≡C−または−COO−であり;
n4が2〜10の整数である、
[1]項に記載の重合性液晶組成物。
【0012】
[4] (A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0013】
[5] (A)成分、(B)成分および(D)成分を含有する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0014】
[6] (A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0015】
[7] 式(5−1)〜式(5−2)で表されるシランカップリング剤の少なくとも1つをさらに含有する[1]〜[6]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物であって、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対するシランカップリング剤の重量比が0.01〜0.15である重合性液晶組成物。


(式(5−1)において、
は独立してメチルまたはエチルであり;
は1〜5の整数であり;
式(5−2)において、
51は炭素数1〜4のアルキルであり;
52は炭素数1〜10のアルキルであり;
53は独立して水素または炭素数1〜10のアルキルであるが、共に水素であることはなく;
51は1〜3の整数である。)
【0016】
[8] 式(5−1)において、
がエチルであり;
が1〜5の整数であり;
式(5−2)において、
51がメチルまたはエチルであり;
52が炭素数1〜10のアルキルであり;
53が独立して水素または炭素数1〜10のアルキルであるが、共に水素であることはなく;
51が3であり、
そして、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対するシランカップリング剤の重量比が0.03〜0.10である、[7]項に記載の重合性液晶組成物。
【0017】
[9] 非イオン性界面活性剤をさらに含有する[1]〜[6]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物であって、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する非イオン性界面活性剤の重量比が0.0001〜0.03である重合性液晶組成物。
【0018】
[10] 非イオン性界面活性剤がフッ素系、シリコーン系、または炭化水素系の非イオン性界面活性剤である、[9]項に記載の重合性液晶組成物。
【0019】
[11] (A)成分〜(D)成分の合計重量を基準とする割合で、(A)成分が5〜95重量%であり、(B)成分が1〜30重量%であり、(C)成分が0〜47重量%であり、そして(D)成分が0〜47重量%である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0020】
[12] (A)成分〜(D)成分の合計重量を基準とする割合で、(A)成分が10〜90重量%であり、(B)成分が1〜28重量%であり、(C)成分が0〜45重量%であり、そして(D)成分が0〜44重量%である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0021】
[13] (A)成分〜(D)成分の合計重量を基準とする割合で、(A)成分が15〜85重量%であり、(B)成分が1〜25重量%であり、(C)成分が0〜42重量%であり、そして(D)成分が0〜42重量%である、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【0022】
[14] [1]〜[13]のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物の少なくとも1つを重合させて得られる光学異方性を有するフィルム。
【0023】
[15] 重合性液晶の配向がホモジニアス配向である、[14]項に記載の光学異方性を有するフィルム。
【0024】
[16] 重合性液晶の配向がホメオトロピック配向である、[14]項に記載の光学異方性を有するフィルム。
【0025】
[17] 重合性液晶の配向がハイブリッド配向である、[14]項に記載の光学異方性を有するフィルム。
【0026】
[18] [14]〜[17]のいずれか1項に記載の光学異方性を有するフィルムを含有する液晶表示素子。
【0027】
本発明の組成物は、式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を(A)成分として含有する。


【0028】
式(1)における記号の意味は次の通りである。
は独立して水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり、好ましくは水素またはメチルである。
は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、好ましくは水素、フッ素またはメチルであり、より好ましくは水素またはメチルである。
11は単結合、−COO−、−CH=CH−COO−、−CHCH−COO−、−CHO−、−CONH−、−(CH−、−CHCH−または−C≡C−であり、好ましくは−COO−、−CH=CH−COO−、または−CHCH−COO−である。
12は単結合、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−OCH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−または−C≡C−であり、好ましくは−OCO−、−OCO−CH=CH−、または−OCO−CHCH−である。
13およびZ14は独立して単結合または−O−である。
は独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルである。1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレンにおける任意の水素はフッ素、塩素、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、またはトリフルオロメチルで置き換えられてもよい。このとき、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられる水素の合計数は1または2であることが好ましい。Aの好ましい例は1,4−フェニレンおよび1,3−フェニレンであり、これらの環の任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよい。
は独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。Yの好ましい例は炭素数2〜14のアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよい。
【0029】
本発明の組成物は、式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を(B)成分として含有する。


【0030】
式(2)における記号の意味は次の通りである。
は独立して水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり、好ましくは水素またはメチルである。
は独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキルまたは炭素数1〜3のフルオロアルキルであり、好ましくは水素またはフッ素である。
は独立して単結合、−CH=CH−、または−(CH−である。
は独立して2〜15の整数であり、好ましくは2〜10の整数である。
【0031】
は式(A2−1)〜式(A2−18)のいずれか1つで表される基である。


【0032】
の好ましい例は、式(A2−1)〜式(A2−8)、および式(A2−11)〜式(A2−18)で表される基であり、より好ましい例は式(A2−1)、式(A2−4)、式(A2−11)、式(A2−12)、式(A2−16)および式(A2−18)で表される基である。
【0033】
本発明の組成物は、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を(C)成分として含有してもよい。


【0034】
式(3−1)における記号の意味は次の通りである。
31は独立して水素、フッ素またはメチルである。
31は独立して水素またはメチルである。
32は独立して水素またはフッ素である。
31は独立して2〜10の整数である。
式(3−2)における記号の意味は次の通りである。
32は独立して水素、フッ素またはメチルである。
31は独立して−O−または式(a)で表される基である。
32はそれぞれ独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−である。
33は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、好ましくは水素、メチルまたはトリフルオロメチルである。
34は独立して水素またはフッ素であり、好ましくは水素である。
32は独立して2〜10の整数である。
【0035】
本発明の組成物は、式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物を(D)成分として含有してもよい。


【0036】
式(4)における記号の意味は次の通りである。
は水素、フッ素またはメチルであり、好ましくは水素またはメチルである。
は−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシである。
は水素またはフッ素である。
41は−O−または式(a)で表される基である。
42は単結合、−C≡C−または−COO−である。
は2〜10の整数である。
【0037】
本発明の組成物は、(C)成分と(D)成分をそれぞれ単独で含有してもよく、これらの成分を共に含有してもよい。
【0038】
本発明の組成物は、(A)成分〜(D)成分以外に式(5−1)〜式(5−2)で表されるの化合物の群から選択される少なくとも1つのシランカップリング剤を含有してもよい。


【0039】
式(5−1)における記号の意味は次の通りである。
は独立してメチルまたはエチルであり、好ましくはエチルである。
は1〜5の整数である。
式(5−2)における記号の意味は次の通りである。
51は炭素数1〜4のアルキルであり、好ましくはメチルまたはエチルである。
52は炭素数1〜10のアルキルである。
53は同時には水素原子とならない炭素数1〜10のアルキルであり、好ましくは炭素数1〜6のアルキルであり、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルまたはtert−ブチルであり、さらに好ましくはメチルまたはイソブチルである。
51は1〜3の整数であり、好ましくは3である。
【0040】
本発明の組成物は、(A)成分〜(D)成分以外に非イオン性界面活性剤を含有してもよい。非イオン性界面活性剤の例は、フッ素系、シリコーン系、または炭化水素系であり、好ましくはフッ素系である。
【0041】
本発明の組成物における成分について、それぞれの好ましい態様を上記のように説明した。前記の[2]〜[13]項は、これらの成分の好ましい態様での組み合わせの例である。
【0042】
本発明の組成物は室温でネマチック相を有し、プラスチック基板上、プラスチックの薄膜で表面が被覆された支持基板上、またはガラス基板上でラビング処理等の表面処理がなされておらず、組成物に単官能成分(化合物(4))が含まれている場合は、ホメオトロピックに配向する傾向がある。ラビング処理を行い、組成物に単官能成分(化合物(4))が含まれていない場合は、ホモジニアス配向やハイブリッド配向となる傾向がある。しかしながら、これらの傾向は,後述のようにシランカップリング剤や非イオン性界面活性剤の添加によって影響を受けやすい。
【0043】
本発明の組成物に用いる化合物について説明する。
化合物(1)はフルオレン環を中心とする特定構造の骨格と2つの重合性基を有する。この化合物は液晶性を示し、この重合性液晶化合物の重合体は三次元構造になりうるので、1つの重合性基を有する化合物に比較して硬い重合体を与える。また、PGMEAなどの安全溶剤に対して良好な溶解性を示す。
【0044】
化合物(2)はビスフェノール骨格および2つの重合性基を有する。この重合性化合物の重合体は三次元構造になりうるので、1つの重合性基を有する化合物に比較して硬い重合体を与える。この化合物は液晶性を示しても示さなくてもよい。この化合物は重合性液晶組成物の融点を下げる作用がある。また、支持基板や添加物などの条件に依存するが、この化合物を他の重合性液晶化合物と併用するとホメオトロピック配向やハイブリッド配向となりやすい。
【0045】
化合物(3−1)〜化合物(3−2)は液晶骨格および2つの重合性基を有する。この化合物は、支持基板、添加物などの条件に依存するが、ホモジニアスに配向しやすい。また、広い温度範囲で液晶相を示し、比較的大きな複屈折値を示す傾向がある。以下の説明では、化合物(3−1)〜化合物(3−2)の総称として化合物(3)を用いることがある。
【0046】
化合物(4)は液晶骨格および1つの重合性基を有する。この化合物は、他の液晶分子のチルト角を大きくする性質や融点を下げる性質を有する。
【0047】
化合物(5−1)〜化合物(5−2)はアミン系のシランカップリング剤である。この化合物は支持基板との密着性を改善させる効果、およびホメオトロピック配向を促進させる効果がある。
【0048】
本発明の組成物は、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3−1)〜化合物(3−2)、化合物(4)および化合物(5)とは異なるその他の重合性化合物を含有してもよい。この組成物は、薄い塗膜を生成させるために、界面活性剤のような添加物をさらに含有してもよい。この組成物は、重合反応に適した重合開始剤、光増感剤などの添加物を含有してもよい。この組成物は、重合体の特性を向上させるために紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、光安定剤などの添加物を含有してもよい。この組成物は有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、均一な厚さの塗膜(paint film)を生成させるのに有用である。
【0049】
本発明の組成物における各成分の割合について説明する。
(A)成分の好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準として5〜95重量%である。より好ましい割合は10〜90重量%である。さらに好ましい割合は15〜85重量%である。
【0050】
(B)成分の好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準として1〜30重量%である。より好ましい割合は1〜28重量%である。さらに好ましい割合は1〜25重量%である。
【0051】
(C)成分の好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準として0〜47重量%である。より好ましい割合は0〜45重量%である。さらに好ましい割合は0〜42重量%である。
【0052】
(D)成分の好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準として0〜47重量%である。より好ましい割合は0〜44重量%である。さらに好ましい割合は0〜42重量%である。
【0053】
シランカップリング剤を添加する場合の好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.15である。より好ましい重量比の範囲は0.03〜0.10である。
【0054】
非イオン性界面活性剤を添加する場合の好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.03である。
【0055】
その他の重合性化合物を添加するとき、その好ましい割合は、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.20であり、好ましくは0.03〜0.10である。重合開始剤などのような添加物を用いるとき、その使用量は目的を達する最小量でよい。
【0056】
本発明の組成物における各成分の組み合わせについて説明する。
ホモジニアス配向を形成する場合は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の組み合わせが好ましい。配向均一性を調整する場合には、非イオン性界面活性剤と組み合わせてもよい。非イオン性界面活性剤はホモジニアス配向を安定化させる効果をも有する。ホメオトロピック配向を形成する場合は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分およびシランカップリング剤の組み合わせが好ましい。塗布均一性を調整する場合には非イオン性界面活性剤を更に加えてもよい。これらの組み合わせにおいて、その他の重合性化合物がさらに含まれてもよい。
【0057】
次に、化合物の合成法を説明する。本発明に用いられる化合物は、フーベン・ヴァイル(Houben Wyle, Methoden der Organischen Chemie, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、オーガニック・シンセセーズ(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載された、有機化学における合成方法を適切に組み合わせることにより合成できる。
【0058】
化合物(1)の合成方法は、WO2008/136265号パンフレットに記載されている。
【0059】
化合物(2)の合成方法は、特開2007−16213号公報および特開2008−133344号公報に記載されている。
【0060】
化合物(3−1)の合成方法は、特開2003−238491号公報に記載されている。化合物(3−2)の合成方法は、Makromol. Chem., 190, 3201-3215 (1989)、Makromol. Chem., 190, 2255-2268 (1989)、WO97/00600号パンフレット、特開2004−231638号公報および特開2006−307150号公報などに記載されている。α−フルオロアクリロイルオキシ(CH=CF−COO−)の導入法には、α−フルオロアクリル酸、α−フルオロアクリル酸クロリドを用いることもできるが、α−フルオロアクリル酸フルオリド(CH=CFCOOF)を作用させる方法が有用である。J. Org. Chem., 1989, 54, 5640、特開昭60−158137号公報、特開昭61−85345号公報などにα−フルオロアクリル酸フルオリドの合成法が記載されており、それらの方法に準じて合成が可能である。これらの化合物を出発物質として利用することにより、化合物(3−1)および化合物(3−2)を合成することができる。
【0061】
合物(4)は、Macromolecules, 26, 6132-6134 (1993)、DE19504224、WO97/00600号パンフレット等に記載された方法で合成できる。
【0062】
化合物(1)の例を次に示す。


【0063】


【0064】


【0065】


【0066】


【0067】


【0068】
式(1−1)〜(1−38)において、Xは水素、フッ素、塩素、メチル、またはトリフルオロメチルであり、nは2〜15の整数である。
【0069】
化合物(2)の好ましい例を次に示す。


【0070】


【0071】
式(2−A2−11−A)〜式(2−A2−12−A)および式(2−A2−16−A〜式(2−A2−16−C)において、Xは水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、Wは水素またはフッ素であり、nは2〜15の整数である。
【0072】
化合物(3−1)の好ましい例を次に示す。


【0073】
式(3−1−A)〜式(3−1−D)において、X31は水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり、n31は2〜10の整数である。
【0074】
化合物(3−2)の好ましい例を次に示す。


【0075】
式(3−2−A)〜式(3−2−D)において、X32は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり、n32は2〜10の整数である。
【0076】
化合物(4)の好ましい例を次に示す。


【0077】
式(4−1−A)〜式(4−1−F)において、Xは独立して水素、フッ素またはメチルであり、Wは水素またはフッ素であり、Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシまたは−OCFであり、nは2〜10の整数である。
【0078】
化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、化合物(4)、化合物(5−1)および化合物(5−2)の具体例を次に示す。
【0079】


【0080】


【0081】


【0082】


【0083】


【0084】


【0085】


【0086】


【0087】


【0088】


【0089】


【0090】

【0091】


【0092】


【0093】


【0094】


【0095】


【0096】


【0097】


【0098】


(Rは炭素数1〜10のアルキルまたは炭素数1〜10のアルコキシである。)
【0099】


【0100】


(Rは炭素数1〜10のアルキル、炭素数1〜10のアルコキシ、または−OCFである。)
【0101】


【0102】
次に、非イオン性界面活性剤を例示する。
シリコーン系の非イオン性界面活性剤の例は、変性シリコーンを主成分とした共栄社化学(株)製のポリフローATF―2、グラノール100、グラノール115、グラノール400、グラノール410、グラノール435、グラノール440、グラノール450、グラノールB−1484、ポリフローKL−250、ポリフローKL−260、ポリフローKL−270、ポリフローKL−280、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−307、BYK−310、BYK−315、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−337、BYK−341、BYK−344、BYK−345、BYK−346、BYK−347、BYK−348、BYK−370、BYK−375、BYK−377、BYK−378、BYK−3500、BYK−3510、およびBYK−3570である。
【0103】
フッ素系の非イオン性界面活性剤の例は、BYK−340、フタージェント251、フタージェント221MH、フタージェント250、FTX−215M、FTX−218M、FTX−233M、FTX−245M、FTX−290M、FTX−209F、FTX−213F、フタージェント222F、FTX−233F、FTX−245F、FTX−208G、FTX−218G、FTX−240G、FTX−206D、フタージェント212D、FTX−218、FTX−220D、FTX−230D、FTX−240D、FTX−720C、FTX−740C、FTX−207S、FTX−211S、FTX−220S、FTX−230S、KB−L82、KB−L85、KB−L97、KB−L109、KB−L110、KB−F2L、KB−F2M、KB−F2S、KB−F3M、およびKB−FaMである。
【0104】
炭化水素系の非イオン性界面活性剤の例は、アクリル系ポリマーを主成分としたポリフローNo.3、ポリフローNo.50EHF、ポリフローNo.54N、ポリフローNo.75、ポリフローNo.77、ポリフローNo.85HF、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95、BYK−350、BYK−352、BYK−354、BYK−355、BYK−358N、BYK−361N、BYK−380N、BYK−381、BYK−392、およびBYK−Silclean3700である。
なお、上記のポリフローおよびグラノールはどちらも共栄社化学(株)から販売されている商品の名称である。BYKはビックケミー・ジャパン(株)から販売されている商品の名称である。フタージェント、FTXおよびKBは(株)ネオスから販売されている商品の名称である。
本発明では、上記の非イオン性界面活性剤を用いることができ、これらの2つ以上を併用してもよい。
【0105】
次に、その他の重合性化合物、添加物、有機溶剤を例示する。これらの化合物は市販品でもよい。その他の重合性化合物の例は、重合性基を1つ有する化合物、重合性基を2つ有する化合物および重合性基を3つ以上有する多官能化合物である。
【0106】
重合性基を1つ有する化合物の例は、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、脂肪酸ビニル(例:酢酸ビニル)、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など)、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル(アルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル(ヒドロキシアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル(アミノアルキルの炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸のエーテル酸素含有アルキルエステル(エーテル酸素含有アルキルの炭素数3〜18、例:メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、およびブチルカルビルエステル)、N−ビニルアセトアミド、p−t−ブチル安息香酸ビニル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2,2−ジメチルブタン酸ビニル、2,2−ジメチルペンタン酸ビニル、2−メチル−2−ブタン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2−エチル−2−メチルブタン酸ビニル、ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート、重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル又はジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素原子数1〜6のアルキル基によってキャップされた重合度1〜100のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステルである。
【0107】
重合性基を2つ有する化合物の例は、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ビスフェノールA EO付加ジアクリレート、ビスフェノールAグリシジルジアクリレート(ビスコート V#700)、ポリエチレングリコールジアクリレート、およびこれらの化合物のメタクリレート化合物、式(α−1)〜式(α−6)に示されるカルド構造を有する重合性ビスフェノールフルオレン誘導体などである。これらの化合物は、重合体の被膜形成能をさらに高めるのに適している。


【0108】
多官能化合物は1分子内に3〜70個の重合性基を有する非液晶性の重合性化合物である。これらの化合物は市販品でもよい。多官能化合物の好ましい例は、ペンタエリストールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールEO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ビスコート V#802(官能基数=8)、ビスコート V#1000(官能基数=平均14)である。「ビスコート」は大阪有機化学株式会社の商品名である。官能基が16以上のものはPerstorp Specialty Chemicalsが販売しているBoltorn H20(16官能)、Boltorn H30(32官能)、Boltorn H40(64官能)を原料にそれらをアクリル化することで得られる。
【0109】
先に述べた非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、ポリエーテル系、チタネート系化合物、イミダゾリン、4級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、ポリエチレングリコールおよびそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族または芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキル基を有するウレタン等の種々の化合物を用いることができる。界面活性剤は組成物を支持基板などに塗布するのを容易にするなどの効果を有する。界面活性剤の好ましい割合は、界面活性剤の種類、組成物の組成比などにより異なるが、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.03であり、好ましくは0.0005〜0.03である。
【0110】
重合性液晶組成物の重合速度を最適化するために、公知の光重合開始剤を用いてもよい。光重合開始剤の好ましい添加量は、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.20である。この重量比のより好ましい範囲は0.001〜0.15である。さらに好ましい範囲は0.01〜0.15である。光重合開始剤の例は、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュアー1173)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュアー184)、イルガキュアー127、イルガキュアー500(イルガキュアー184とベンゾフェノンの混合物)、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー754、イルガキュアー1300、イルガキュアー819、イルガキュアー1700、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー1870、ダロキュアー4265、ダロキュアーMBF、ダロキュアーTPO、イルガキュアー784、イルガキュアー754、イルガキュアーOXE01、およびイルガキュアーOXE02である。上記のダロキュアーおよびイルガキュアーはどちらもチバ・ジャパン(株)から販売されている商品の名称である。これらに公知の増感剤(イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、エチル−4ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEDB)、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート(ダロキュアーEHA)など)を添加してもよい。
【0111】
光ラジカル重合開始剤のその他の例は、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物などである。
【0112】
1種または2種以上の連鎖移動剤を重合性液晶組成物に加えて、重合体の機械特性を制御することが可能である。連鎖移動剤を用いることによりポリマー鎖の長さまたはポリマーフィルムにおける2つの架橋ポリマー鎖の長さを制御することができる。これらの長さを同時に制御することもできる。連鎖移動剤の量を増大させると、ポリマー鎖の長さは減少する。好ましい連鎖移動剤は、チオール化合物である。単官能性チオールの例はドデカンチオール、2−エチルへキシル−(3−メルカプトプロピオネートである。多官能性チオールの例は、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(カレンズMT BD1)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(カレンズMT PE1)、および1,3,5−トリス(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(カレンズMT NR1)である。「カレンズ」は昭和電工株式会社の商品名である。
【0113】
重合性液晶組成物には、保存時の重合開始を防止するために重合防止剤を添加することができる。公知の重合防止剤を使用できるが、その好ましい例は、2,5−ジ(t−ブチル)ヒドロキシトルエン(BHT)、ハイドロキノン、メチルブルー、ジフェニルピクリン酸ヒドラジド(DPPH)、ベンゾチアジン、4−ニトロソジメチルアニリン(NIDI)、o−ヒドロキシベンゾフェノンなどである。
【0114】
重合性液晶組成物の保存性を向上させるために、酸素阻害剤を添加することもできる。組成物内で発生するラジカルは雰囲気中の酸素と反応しパーオキサイドラジカルを与え、重合性化合物との好ましくない反応が促進される。これを防ぐ目的で酸素阻害剤を添加することが好ましい。酸素阻害剤の例はリン酸エステル類である。
【0115】
重合性液晶組成物の耐候性を更に向上させるために、紫外線吸収剤、光安定剤(ラジカル捕捉剤)および酸化防止剤等を添加してもよい。紫外線吸収剤の例は、チヌビンPS、チヌビンP、チヌビン99−2、チヌビン109、チヌビン213、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン328、チヌビン329、チヌビン384−2、チヌビン571、チヌビン900、チヌビン928、チヌビン1130、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン460、チヌビン479、チヌビン5236、アデカスタブLA−32、アデカスタブLA−34、アデカスタブLA−36、アデカスタブLA−31、アデカスタブ1413、およびアデカスタブLA−51である。「チヌビン」はチバ・ジャパン(株)の商品名であり、「アデカスタブ」は旭電化(株)の商品名である。
【0116】
光安定剤の例は、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292、チヌビン622、チヌビン770、チヌビン765、チヌビン780、チヌビン905、チヌビン5100、チヌビン5050、5060、チヌビン5151、キマソーブ119FL、キマソーブ944FL、キマソーブ944LD、アデカスタブLA−52、アデカスタブLA−57、アデカスタブLA−62、アデカスタブLA−67、アデカスタブLA−63P、アデカスタブLA−68LD、アデカスタブLA−77、アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87、サイテック社製のサイアソーブUV−3346、およびグッドリッチ社のグッドライトUV−3034である。「キマソーブ」はチバ・ジャパン(株)の商品名である。
【0117】
酸化防止剤の例は、旭電化社製のアデカスタブAO−20、AO−30、AO−40、AO−50、AO−60、AO−80、住友化学(株)から販売されているスミライザーBHT、スミライザーBBM−SおよびスミライザーGA−80、並びにチバ・ジャパン(株)から販売されているIrganox1076、Irganox1010、Irganox3114およびIrganox245である。これらの市販品を用いてもよい。
【0118】
重合性液晶組成物には、基板との密着性を制御するために、化合物(5)以外のシランカップリング剤をさらに添加しても良い。具体的には、ビニルトリアルコキシシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−クロロトリアルコキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランなどである。別の例は、これらの化合物において、アルコキシ基(3つ)のうちの1つをメチルに置き換えられたジアルコキシメチルシランである。
【0119】
重合性液晶組成物はそのまま基板面に塗布することもある。しかしながら、通常は塗布を容易にするために、溶剤を用いて重合性液晶組成物を希釈するか、または溶剤に重合性液晶組成物の各成分を溶解して、重合性液晶組成物と溶剤とからなる重合性液晶組成物の溶液が調製され、この溶液が用いられる。この溶剤は単独でも使用できるし、2つ以上を混合して使用してもよい。溶剤の例はエステル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤および脂環式炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、およびアセテート系溶剤である。
【0120】
エステル系溶剤の好ましい例は、酢酸アルキル(例:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチルおよび酢酸イソペンチル)、トリフルオロ酢酸エチル、プロピオン酸アルキル(例:プロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピルおよびプロピオン酸ブチル)、酪酸アルキル(例:酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソブチルおよび酪酸プロピル)、マロン酸ジアルキル(例:マロン酸ジエチル)、グリコール酸アルキル(例:グリコール酸メチルおよびグリコール酸エチル)、乳酸アルキル(例:乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸イソプロピル、乳酸n-プロピル、乳酸ブチルおよび乳酸エチルヘキシル)、モノアセチン、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンである。
【0121】
アミド系溶剤の好ましい例は、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミドジメチルアセタール、N−メチルカプロラクタムおよびジメチルイミダゾリジノンである。
【0122】
アルコール系溶剤の好ましい例は、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、t−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ブタノール、2−エチルブタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、1−ドデカノール、エチルヘキサノール、3、5、5−トリメチルヘキサノール、n−アミルアルコール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−3−メトキシブタノール、シクロヘキサノールおよびメチルシクロヘキサノールである。
【0123】
エーテル系溶剤の好ましい例は、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビス(2−プロピル)エーテル、1,4−ジオキサンおよびテトラヒドロフラン(THF)である。
【0124】
グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の好ましい例は、エチレングリコールモノアルキルエーテル(例:エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:プロピレングリコールモノブチルエーテル)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート(例:ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、およびジエチレングリコールメチルエチルエーテルである。
【0125】
芳香族炭化水素系溶剤の好ましい例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−プロピルベンゼン、t−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、n−ブチルベンゼン、およびテトラリンである。ハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤の好ましい例はクロロベンゼンである。脂肪族炭化水素系溶剤の好ましい例は、ヘキサンおよびヘプタンである。ハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤の好ましい例は、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンである。脂環式炭化水素系溶剤の好ましい例は、シクロヘキサンおよびデカリンである。
【0126】
ケトン系溶剤の好ましい例は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、およびメチルプロピルケトンである。
【0127】
アセテート系溶剤の好ましい例は、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、アセト酢酸メチル、および1−メトキシ−2−プロピルアセテートである。
【0128】
重合性液晶化合物の溶解性の観点からは、アミド系溶剤、芳香族炭化水素系、ケトン系溶剤の使用が好ましく、溶剤の沸点を考慮すると、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤の併用も好ましい。溶剤の選択に関して特に制限はないが、支持基材として プラスチック基板を用いる場合は、基板の変形を防ぐために乾燥温度を低くすること、および溶剤が基板を侵食しないようにする必要がある。このような場合に好ましく用いられる溶剤としては、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、アセテート系溶剤、グリコールモノアルキルエーテル系溶剤である。
【0129】
重合性液晶組成物の溶液における溶剤の割合は、この溶液の全重量を基準として50〜95%である。この範囲の下限は重合性液晶化合物の溶解性およびこの溶液を塗布する際のその最適粘度を考慮した数値である。そしてその上限は、溶剤コストおよび溶剤を蒸発させる際の時間や熱量といった経済的観点を考慮した数値である。この割合の好ましい範囲は60〜90%であり、より好ましい範囲は70〜85%である。
【0130】
以下の説明では、重合性液晶組成物から得られる本発明の液晶フィルムを単に液晶フィルムと称することがある。液晶フィルムは、次のようにして形成させることができる。まず、重合性液晶組成物の溶液を支持基板上に塗布し、これを乾燥させて塗膜を形成させる。つぎに、その塗膜に光照射して重合性液晶組成物を重合させ、塗膜中の組成物が液晶状態で形成するネマチック配向を固定化する。使用できる支持基板は、ガラスおよびプラスチックフィルムである。プラスチックフィルムの例は、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロースおよびその部分鹸化物、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、およびシクロオレフィン系樹脂などのフィルムである。
【0131】
シクロオレフィン系樹脂としてノルボルネン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。これらの中で、不飽和結合を有さないか、又は不飽和結合が水素添加されたものが好適に用いられる。例えば、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体の水素添加物、1種又は2種以上のノルボルネン系モノマーの付加(共)重合体、ノルボルネン系モノマーとオレフィン系モノマー(エチレン、α−オレフィン等)との付加共重合体、ノルボルネン系モノマーとシクロオレフィン系モノマー(シクロペンテン、シクロオクテン、5,6−ジヒドロジシクロペンタジエン等)との付加共重合体、及び、これらの変性物等が挙げられ、具体的には、ZEONEX、ZEONOR(日本ゼオン社製)、ARTON(JSR社製)、TOPAS(チコナ社製)、APEL(三井化学社製)、エスシーナ(積水化学工業社製)、OPTOREZ(日立化成社製)等が挙げられる。
【0132】
これらのプラスチックフィルムは、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。これらのプラスチックフィルムは、例えば、コロナ処理やプラズマ処理などの親水化処理、あるいは疎水化処理などの表面処理を施したものであってもよい。親水化処理の方法は特に制限はないが、コロナ処理あるいはプラズマ処理が好ましく、特に好ましい方法はプラズマ処理である。プラズマ処理は、特開2002−226616号公報、特開2002−121648号公報などに記載されている方法を用いても良い。また、液晶フィルムとプラスチックフィルムとの密着性を改良するためにアンカーコート層を形成させてもよい。このようなアンカーコート層は液晶フィルムとプラスチックフィルムの密着性を高めるものであれば、無機系、有機系のいずれの材料であっても何ら問題はない。また、プラスチックフィルムは積層フィルムであってもよい。プラスチックフィルムに代えて、表面にスリット状の溝をつけたアルミニウム、鉄、銅などの金属基板や、表面をスリット状にエッチング加工したアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、フリントガラスなどのガラス基板などを用いることもできる。
【0133】
これらのガラス、プラスチックフィルム等の支持基板には、重合性液晶組成物の塗膜形成に先立って、ホモジニアス配向およびハイブリッド配向の液晶フィルムを形成する場合には、ラビング等による物理的、機械的な表面処理を行う。ホメオトロピック配向の液晶フィルムを形成する場合はラビング等の表面処理を行わない場合が多いが、配向欠陥等を防止する点でラビング処理を行ってもよい。ラビング処理には任意の方法が採用できるが、通常はレーヨン、綿、ポリアミドなどの素材からなるラビング布を金属ロールなどに捲き付け、支持基板または重合体被膜に接した状態でロールを回転させながら移動させる方法、ロールを固定したまま支持基板側を移動させる方法などが採用される。ラビング処理は支持基板に直接施されていてもよく、または支持基板上に予め重合体被膜を設け、その重合体被膜にラビング処理を施してもよい。ラビング処理の方法は前述のとおりである。支持基板の種類によっては、その表面に酸化ケイ素を傾斜蒸着して配向能を付与することもできる。
【0134】
重合性液晶組成物またはその溶液を塗布する際、均一な膜厚を得るための塗布方法の例は、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、メニスカスコート法およびダイコート法である。特に、塗布時に液晶組成物にせん断応力がかかるワイヤーバーコート法等を、ラビング等による基板の表面処理を行わないで液晶組成物の配向を制御する場合に用いてもよい。
【0135】
重合性液晶組成物の溶液を調製する際には、化合物(5)は予め溶剤で希釈してから用いられてもよい。このような溶剤は化合物(5)と十分な相溶性を有し、更に本発明の目的である重合性液晶組成物のホメオトロピック配向の安定性および均一性を損なわない溶剤から選択される。このような溶剤の例は、重合性液晶組成物の溶液を調製する際に用いられる前記の溶剤である。そして、その使用量も重合性液晶組成物の安定性を損なわない範囲内で設定される。
【0136】
本発明の重合性液晶組成物の溶液を塗布するときには、塗布後に溶剤を除去して、支持基板上に膜厚の均一な重合性液晶層、即ち重合性液晶組成物の層を形成させる。溶剤除去の条件は特に限定されない。溶剤がおおむね除去され、重合性液晶組成物の塗膜の流動性がなくなるまで乾燥すればよい。室温での風乾、ホットプレートでの乾燥、乾燥炉での乾燥、温風や熱風の吹き付けなどを利用して溶剤を除去することができる。重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比によっては、塗膜を乾燥する過程で、塗膜中の重合性液晶組成物のネマチック配向が完了していることがある。従って、乾燥工程を経た塗膜は、後述する熱処理工程を経由することなく、重合工程に供することができる。
【0137】
塗膜を熱処理する際の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、光源から照射する光の量などは、重合性液晶組成物に用いる化合物の種類と組成比、光重合開始剤の添加の有無やその添加量などによって、好ましい範囲が異なる。従って、以下に説明する塗膜の熱処理の温度および時間、光照射に用いられる光の波長、および光源から照射する光の量についての条件は、あくまでもおよその範囲を示すものである。
【0138】
塗膜の熱処理は、溶剤が除去され重合性液晶の均一配向性が得られる条件で行うことが好ましい。重合性液晶組成物の液晶相転移点以上で行ってもよい。熱処理方法の一例は、前記重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度まで塗膜を加温して、塗膜中の重合性液晶組成物にネマチック配向を形成させる方法である。重合性液晶組成物がネマチック液晶相を示す温度範囲内で、塗膜の温度を変化させることによってネマチック配向を形成させてもよい。この方法は、上記温度範囲の高温域まで塗膜を加温することによって塗膜中にネマチック配向を概ね完成させ、次いで温度を下げることによってさらに秩序だった配向にする方法である。上記のどちらの熱処理方法を採用する場合でも、熱処理温度は室温〜120℃である。この温度の好ましい範囲は室温〜100℃であり、より好ましい範囲は室温〜90℃、さらに好ましい範囲は室温〜85℃である。熱処理時間は5秒〜2時間である。この時間の好ましい範囲は10秒〜40分であり、より好ましい範囲は20秒〜20分である。重合性液晶組成物からなる層の温度を所定の温度まで上昇させるためには、熱処理時間を5秒以上にすることが好ましい。生産性を低下させないためには、熱処理時間を2時間以内にすることが好ましい。このようにして本発明の重合性液晶層が得られる。
【0139】
重合性液晶層中に形成される重合性液晶化合物のネマチック配向状態は、この重合性液晶化合物を光照射により重合することによって固定化される。光照射に用いられる光の波長は特に限定されない。電子線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)などを利用することができる。通常は、紫外線または可視光線を用いればよい。波長の範囲は150〜500nmである。好ましい範囲は250〜450nmであり、より好ましい範囲は300〜400nmである。光源の例は、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などである。光源の好ましい例は、メタルハライドランプやキセノンランプ、超高圧水銀ランプおよび高圧水銀ランプである。光源と重合性液晶層との間にフィルターなどを設置して特定の波長領域のみを通すことにより、照射光源の波長領域を選択してもよい。光源から照射する光量は、2〜5000mJ/cm2である。光量の好ましい範囲は10〜3000mJ/cm2であり、より好ましい範囲は100〜2000mJ/cm2である。光照射時の温度条件は、上記の熱処理温度と同様に設定されることが好ましい。また、重合環境の雰囲気は窒素雰囲気、不活性ガス雰囲気、空気雰囲気のいずれでも良いが、窒素雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気が硬化性を向上させる観点から好ましい。
【0140】
本発明の重合性液晶層、およびこれを光や熱などにより重合させた液晶フィルムを様々な光学素子に用いる場合、または液晶表示装置に用いる光学補償素子として適用する場合には、厚み方向におけるチルト角の分布の制御が極めて重要となる。
【0141】
チルト角を制御する方法の一つは、重合性液晶組成物に用いる液晶性化合物の種類や組成比などを調整する方法である。この重合性液晶化合物に他の成分を添加することによっても、チルト角を制御することができる。液晶フィルムのチルト角は、重合性液晶組成物中の溶剤の種類や溶質濃度、他の成分の1つとして加える界面活性剤の種類や添加量などによっても制御することができる。支持基板または重合体被膜の種類やラビング条件、重合性液晶組成物の塗膜の乾燥条件や熱処理条件などによっても、液晶フィルムのチルト角を制御することができる。さらに、配向後の光重合工程での照射雰囲気や照射時の温度なども液晶フィルムのチルト角に影響を与える。即ち、液晶フィルムの製造プロセスにおけるほとんど全ての条件が多少なりともチルト角に影響を与えると考えてよい。従って、重合性液晶性組成物の最適化と共に、液晶フィルムの製造プロセスの諸条件を適宜選択することにより、任意のチルト角にすることができる。
【0142】
ホモジニアス配向は、チルト角が基板界面から自由界面にかけて一様に0°に近く、特に0°〜5°に分布している。この配向状態は、(A)成分、(B)成分および非イオン性界面活性剤を成分とする本発明の重合性液晶組成物を、ラビング等の表面処理を行った支持基板表面に塗布し、塗膜を形成させることによって得られる。
【0143】
本発明において均一なホモジニアス配向を得るためには、非イオン性界面活性剤の使用割合を、(A)成分および(B)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.03の範囲とすることが好ましい。使用する非イオン性界面活性剤の好ましい例は、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコーン系非イオン性界面活性剤、および炭化水素系非イオン性界面活性剤である。なお、(C)成分および(D)成分は必ずしも必要ではないが、(C)成分は複屈折の調整で、(D)成分はチルト角や融点の調整等で併用してもよい。(C)成分および(D)成分を併用する場合の非イオン性界面活性剤の使用割合は、上記と同様、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.0001〜0.03の範囲とすることが好ましい。
【0144】
ホモジニアス配向を得るために好ましい成分化合物の例を以下に示す。
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1−1−2)、化合物(1−3−1)、化合物(1−15−1)、化合物(1−16−1)、化合物(1−17−1)、化合物(1−18−1)、化合物(1−19−1)、化合物(1−20−1)、化合物(1−21−1)、化合物(1−22−1)、化合物(1−23−1)、化合物(1−24−1)、化合物(1−25−1)、化合物(1−26−1)、化合物(1−27−2)、化合物(1−28−2)、化合物(1−33−1)、化合物(1−34−1)、化合物(1−35−1)、化合物(1−36−1)、化合物(1−37−1)および化合物(1−38−1)である。化合物(1)は複数種併用してもよい。
【0145】
化合物(2)の好ましい例は、化合物(2−A2−11−A1)〜化合物(2−A2−11−A4)、化合物(2−A2−16−A1)、化合物(2−A2−16−A2)、化合物(2−A2−16−A5)、化合物(2−A2−16−A6)および化合物(2−A2−16−A9)である。化合物(2)は複数種併用してもよい。
【0146】
化合物(3)の好ましい例は、化合物(3−1−A1)、化合物(3−1−A3)、化合物(3−1−B1)、化合物(3−1−B3)、化合物(3−1−C1)、化合物(3−1−C2)、化合物(3−1−D1)、化合物(3−1−D2)、化合物(3−2−C1)、化合物(3−2−C2)、化合物(3−2−C5)、化合物(3−2−C6)、化合物(3−2−D1)および化合物(3−2−D2)である。化合物(3)は複数種併用してもよい。
【0147】
化合物(4)の好ましい例は、化合物(4−1−A1)、化合物(4−1−A2)、化合物(4−1−B1)、化合物(4−1−B2)、化合物(4−1−C1)、化合物(4−1−C2)、化合物(4−1−C5)、化合物(4−1−C6)、化合物(4−1−D1)、化合物(4−1−D2)、化合物(4−1−D5)および化合物(4−1−D6)である。化合物(4)は複数種併用してもよい。
【0148】
重合性液晶化合物の種類または重合性液晶組成物の組成によっては上記方法においても均一なホモジニアス配向を形成しにくい場合がある。この場合はチルト配向性が強いと考えられるため、(A)成分を増量する、(B)成分を最小量にする、または非イオン性界面活性剤を増量することにより、均一なホモジニアス配向が得られる。
【0149】
ホメオトロピック配向は、チルト角が基板界面から自由界面にかけて一様に85°〜90°に分布している。この配向状態は、(A)成分、(B)成分、(D)成分および化合物(5)を成分とする本発明の重合性液晶組成物の塗膜を支持基板表面に形成させることによって得られる。
【0150】
本発明において均一なホメオトロピック配向を得るためには、化合物(5)の使用割合を、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.01〜0.15の範囲とすることが好ましい。この割合のより好ましい範囲は0.03〜0.10の範囲である。また、化合物(5)は複数種併用してもよい。なお、(C)成分は必ずしも必要ではないが、複屈折の調整が必要な場合は併用してもよい。(C)成分を併用する場合の化合物(5)の使用割合は、上記と同様、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する重量比で0.03〜0.10の範囲とすることが好ましい。
【0151】
ホメオトロピック配向を得るために好ましい成分化合物の例を以下に示す。
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1−27−2)、化合物(1−27−3)、化合物(1−28−2)、化合物(1−28−3)、化合物(1−29−1)、化合物(1−31−1)、化合物(1−33−1)、化合物(1−34−1)、化合物(1−35−1)、化合物(1−36−1)、化合物(1−37−1)および化合物(1−38−1)である。化合物(1)は複数種併用してもよい。
【0152】
化合物(2)の好ましい例は、化合物(2−A2−11−A1)、化合物(2−A2−11−A2)、化合物(2−A2−16−A1)および化合物(2−A2−16−A2)である。化合物(2)は複数種併用してもよい。
【0153】
化合物(3)の好ましい例は、化合物(3−1−A1)、化合物(3−1−A3)、化合物(3−1−B1)、化合物(3−1−B3)、化合物(3−2−C1)、化合物(3−2−C2)、化合物(3−2−C5)および化合物(3−2−C6)である。化合物(3)は複数種併用してもよい。
【0154】
化合物(4)の好ましい例は、化合物(4−1−A1)、化合物(4−1−A2)、化合物(4−1−C1)、化合物(4−1−C2)、化合物(4−1−C5)、化合物(4−1−C6)、化合物(4−1−D1)、化合物(4−1−D2)、化合物(4−1−D5)および化合物(4−1−D6)である。化合物(4)は複数種併用してもよい。
【0155】
均一なホメオトロピック配向を形成させるために、化合物(5)は重合性液晶組成物に直接、または溶剤等で希釈して添加することができる。また、重合性液晶化合物の種類または重合性液晶組成物の組成によっては上記方法においても均一なホメオトロピック配向を形成しにくい場合がある。この場合はホモジニアス配向性が強いと考えられるため、(D)成分あるいは化合物(5)の添加量を増加させるか、または(C)成分を必要最小量まで減らすなどの最適化により、均一なホメオトロピック配向を形成できる。このようなホメオトロピック配向は支持基板の表面が親水化処理等により極性を有していると、より均一なホメオトロピック配向を得ることができる。また、ラビング等の表面処理がされていなくても得ることができる。
【0156】
垂直配向剤を支持基板上に形成する場合は、オクタデシルトリエトキシシランなどのシランカップリング剤、レシチン、クロム錯体、垂直配向用のポリイミド系配向膜、ポリアミック酸配向膜の低温(180℃未満)焼成膜、ポリアミック酸配向膜の高温(180℃以上)焼成膜、水溶性シルセスキオキサン膜あるいは側鎖型の液晶ポリマーを支持基板にコーティングしてもよい。
【0157】
ハイブリッド配向は、液晶の配向ベクトルが基板から離れるにしたがって、平行から垂直に立ちあがっている状態をいう。チルト角(傾き角)の例は5度から85度である。この配向状態は、(A)成分、(B)成分、および(D)成分を重合性成分として含有する重合性液晶組成物の塗膜をラビング等の表面処理を行った支持基板表面に形成させることによって得られる。
【0158】
本発明において均一なハイブリッド配向を得るためには、(A)成分、(B)成分、(D)成分を用いることが好ましい。(C)成分は必ずしも必要ではないが、複屈折の調整等で併用してもよい。また、非イオン性界面活性剤も必ずしも必要ではないが、レベリング性を改善する際にチルト角に影響を与えない最少量で併用してもよい。
【0159】
ハイブリッド配向を得るために好ましい成分化合物の例を以下に示す。
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1−1−2)、化合物(1−3−1)、化合物(1−15−1)、化合物(1−16−1)、化合物(1−17−1)、化合物(1−18−1)、化合物(1−19−1)、化合物(1−20−1)、化合物(1−21−1)、化合物(1−22−1)、化合物(1−23−1)、化合物(1−24−1)、化合物(1−25−1)、化合物(1−26−1)、化合物(1−27−2)、化合物(1−28−2)、化合物(1−33−1)、化合物(1−34−1)、化合物(1−35−1)、化合物(1−36−1)、化合物(1−37−1)および化合物(1−38−1)である。化合物(1)は複数種併用してもよい。
【0160】
化合物(2)の好ましい例は、化合物(2−A2−11−A1)〜化合物(2−A2−11−A4)、化合物(2−A2−16−A1)、化合物(2−A2−16−A2)、化合物(2−A2−16−A5)および化合物(2−A2−16−A6)である。化合物(2)は複数種併用してもよい。
【0161】
化合物(3)の好ましい例は、化合物(3−1−A1)、化合物(3−1−A3)、化合物(3−1−B1)、化合物(3−1−B3)、化合物(3−1−C1)、化合物(3−1−C2)、化合物(3−1−D1)、化合物(3−1−D2)、化合物(3−2−C1)、化合物(3−2−C2)、化合物(3−2−C5)、化合物(3−2−C6)、化合物(3−2−D1)および化合物(3−2−D2)である。化合物(3)は複数種併用してもよい。
【0162】
化合物(4)の好ましい例は、化合物(4−1−A1)、化合物(4−1−A2)、化合物(4−1−B1)、化合物(4−1−B2)、化合物(4−1−C1)、化合物(4−1−C2)、化合物(4−1−C5)、化合物(4−1−C6)、化合物(4−1−D1)、化合物(4−1−D2)、化合物(4−1−D5)および化合物(4−1−D6)である。化合物(4)は複数種併用してもよい。
【0163】
液晶フィルムの厚さは、目的とする素子に応じたレタデーションや液晶フィルムの複屈折率によって適当な厚さが異なる。従って、その範囲を厳密に決定することはできないが、好ましい液晶フィルムの厚さは、一応0.05〜50μmである。そして、より好ましい範囲は0.1〜20μmであり、さらに好ましい範囲は0.5〜10μmである。液晶フィルムの好ましいヘイズ値は1.5%以下であり、好ましい透過率は80%以上である。より好ましいヘイズ値は1.0%以下であり、より好ましい透過率は95%以上である。透過率については、可視光領域でこれらの条件を満たすことが好ましい。
【0164】
液晶フィルムは、液晶表示素子(特に、アクティブマトリックス型およびパッシブマトリックス型の液晶表示素子)に適用する光学補償素子として有効である。この異方性ポリマーを光学補償膜として使用するのに適している液晶表示素子の型の例は、IPS型(イン・プレーン・スイッチング)、光学的にアイソトロピックな相における切換を有するディスプレイ(例えばWO02/93244に記載)、TN型(ツィステッド・ネマティック)、STN型(スーパー・ツィステッド・ネマティック)、ECB型(電気的に制御された複屈折)、DAP型(整列相の変形効果)、CSH型(カラー・スーパー・ホメオトロピック)、VA(垂直配向)、VAN/VAC型(垂直配向したネマチック/コレステリック)、MVA(多ドメイン垂直配向)もしくはPVA(パターン化された垂直配向)、OCB型(光学的に補償された複屈折)、R−OCB(反射性OCB)、HAN(複合配向ネマティック)、OMI型(光学モード干渉)、SBE型(超複屈折効果)などである。さらにゲスト−ホスト型、強誘電性型、反強誘電性型などの表示素子用の位相レターダーとして、この異方性ポリマーを使用することもできる。好ましいのは、TN型、STN型、VA型およびIPS型ディスプレイ、特にアクティブマトリックス型のディスプレイである。なお、異方性ポリマーに求められるチルト角の厚み方向の分布や厚みなどのパラメーターの最適値は、補償すべき液晶表示素子の種類とその光学パラメーターに強く依存するので、素子の種類によって異なる。
【0165】
液晶フィルムは、偏光板などと一体化した光学素子としても使用することができ、この場合は液晶セルの外側に配置させられる。一方、光学補償素子としての液晶フィルムは、セルに充填された液晶への不純物の溶出がないかまたは少ないので、液晶セルの内部に配置させることも可能である。例えば、特開2006−285014号公報、特開2008−01943号公報に開示されている方法を応用すれば、カラーフィルター上に本発明の重合性液晶層を形成することでカラーフィルターの機能を更に向上させることが可能となる。
【0166】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例における評価法を次に示す。
<重合条件>
窒素雰囲気下において、室温で250Wの超高圧水銀灯を用いて30mW/cm(365nm)の強度の光を30秒間照射。
<ホモジニアス配向の評価>
(1)ラビング処理済み配向膜付きガラス基板の作成
厚さ1.1 m m のガラス基板に、低プレチルト角(水平配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5310 チッソ(株)製)をスピンコートし、加熱して溶剤を除去した後、210℃で30分間焼成したものをラビング処理した。
(2)液晶配向均一性の確認
液晶フィルム付基板を偏光顕微鏡観察し、配向欠陥の有無を確認した。
<ハイブリッド配向の評価>
(3)ラビング処理済み配向膜付きガラス基板の作成
厚さ1.1 m m のガラス基板に、高プレチルト角(OCB配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5580 チッソ(株)製)をスピンコートし、加熱して溶剤を除去した後、210℃で30分間焼成したものをラビング処理した。
(4)液晶配向均一性の確認
ホモジニアス配向の評価と同様に、液晶フィルム付基板を偏光顕微鏡観察し、配向欠陥の有無を確認した。
<ホメオトロピック配向の評価>
(5)評価用の支持基材は無アルカリガラス、あるいは低プレチルト角(水平配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5310 チッソ(株)製)をスピンコートし、加熱して溶剤を除去した後、210℃で30分間焼成したスライドガラスをラビング処理を行わないで用いた。
(6)液晶配向均一性の確認
クロスニコルに配置した2枚の偏光板内に得られた液晶フィルム付基板を挟持して、基板を正面から観察すると暗視野であり、上下左右の方向から観察すると明視野であることが確認されたならば、液晶骨格の配向ベクトルがガラス基板に対して垂直であることを示す為、ホメオトロピック配向であると判断した。ホメオトロピック配向の均一性は、2枚の偏光板をクロスニコルの状態にし、その間に液晶フィルム付基板を入れ、正面から観察した場合に、液晶の配向欠陥由来の光りぬけが目視で確認されないとき(暗視野)を均一配向の状態とした。
<偏光解析装置による測定:配向形態の確認>
シンテック(株)製のOPTIPRO偏光解析装置を用い、液晶フィルム付基板に波長が550nmの光を照射した。この光の入射角度をフィルム面に対して90度から減少させながらレタデーションを測定し、配向形態を確認した。レタデーション(retardation;位相遅れ)はΔn×dで表される。記号Δnは光学異方性であり、記号dは重合体フィルムの厚さである。
【0167】
実施例で使用した化合物を以下に示す。

【0168】


【0169】
化合物(1−1−2)、化合物(1−3−1)および化合物(1−28−2)はWO2008/136265号パンフレットに記載の方法に従って合成した。
化合物(2−A2−11−A2)、化合物(2−A2−16−A2)および化合物(2−A2−16−A9)は特開2007−16213号公報に記載の方法に従って合成し、化合物(2−A2−11−A9)は特開2008−133344号公報に記載の方法に従って合成した。
化合物(3−1−D2)は特開2006−307150号公報に記載の方法に従って合成した。
化合物(4−1−A2)はMacromolecules, 26, 6132-6134 (1993) に記載の方法と同様にして合成した。
【実施例1】
【0170】
[重合性液晶組成物(1)の調製]
化合物(1−28−2):化合物(2−A2−11−A2):化合物(4−1−A2)=65:5:30の重量比でこれらの化合物を混合した。この組成物をMIX1とする。このMIX1に重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907(チバ・ジャパン(株)製)、および重量比0.002のフッ素系の非イオン性界面活性剤FTX−218((株)ネオス製)を添加した。この組成物にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えて、モノマー濃度が25重量%である重合性液晶組成物(1)とした。
【0171】
次に、ガラス基板(松波スライドガラス:S−1112)上に低プレチルト角(水平配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5310 チッソ(株)製)を塗布し、80℃で3分間乾燥後、210℃で30分間焼成し、レーヨン製のラビング布でラビング処理した。次に、重合性液晶組成物(1)を、ラビング処理したポリアミック酸被膜付きガラス基板上にスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で3分間加熱、室温で3分間冷却し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により窒素気流下で重合させて、均一なホモジニアス配向を有する液晶フィルムを得た。このフィルムのレタデーションを測定したところ、図1のような結果であった。
【実施例2】
【0172】
[重合性液晶組成物(2)の調製]
実施例1記載のMIX1に重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907(チバ・ジャパン(株)製)を添加した。この組成物にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えて、モノマー濃度が25重量%である重合性液晶組成物(2)とした。
【0173】
次に、ガラス基板(松波スライドガラス:S−1112)上に高プレチルト角(OCBモード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5580 チッソ(株)製)を塗布し、80℃で3分間乾燥後、210℃で30分間焼成し、レーヨン製のラビング布でラビング処理した。次に、重合性液晶組成物(2)を、ラビング処理したポリアミック酸被膜付きガラス基板上にスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で3分間加熱、室温で3分間冷却し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により窒素気流下で重合させて、均一なハイブリッド配向を有する液晶フィルムを得た。このフィルムのレタデーションを測定したところ、図2のような結果であった。
【実施例3】
【0174】
[重合性液晶組成物(3)の調製]
実施例1記載のMIX1に重量比0.03の重合開始剤イルガキュアー907(チバ・ジャパン(株)製)、重量比0.10の化合物(5−1−1:チッソ株式会社製、商品名サイラエースS−330)を添加した。この組成物にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を加えて、モノマー濃度が25重量%である重合性液晶組成物(3)とした。
【0175】
次に、ガラス基板(松波スライドガラス:S−1112)上に低プレチルト角(水平配向モード)用ポリアミック酸(リクソンアライナー:PIA−5310 チッソ(株)製)を塗布し、80℃で3分間乾燥後、210℃で30分間焼成した。次に、重合性液晶組成物(3)を、ラビング処理を行っていないポリアミック酸被膜付きガラス基板上にスピンコートにより塗布した。この基板を80℃で3分間加熱、室温で3分間冷却し、溶剤が除去された塗膜を紫外線により窒素気流下で重合させて、均一なホメオトロピック配向を有する液晶フィルムを得た。このフィルムのレタデーションを測定したところ、図3のような結果であった。
【実施例4】
【0176】
支持基板として、ポリアミック酸からなる薄膜を形成させないで、無アルカリガラス(コーニング社製 1737ガラス)をそのまま用いたこと以外は、実施例3と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは実施例3と同様に均一なホメオトロピック配向であり、レタデーションも同様な傾向であった。
【実施例5】
【0177】
[重合性液晶組成物(4)の調製]
化合物(1−1−2):化合物(2−A2−11−A2):化合物(4−1−A2)=65:5:30の重量比でこれらの化合物を混合した。この組成物をMIX2とする。このMIX2を用いたこと以外は実施例4と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは実施例4と同様に均一なホメオトロピック配向であり、レタデーションも同様な傾向であった。
【0178】
[比較例1]
ビスフェノール骨格を有する化合物(2−A2−11−A2)を用いないで、化合物(1−28−2):化合物(4−1−A2)=65:35の重量比でこれらの化合物を混合した。この組成物をMIX3とする。このMIX3を用いたこと以外は実施例3と同様にして重合性液晶組成物(5)を調製し、液晶フィルムを形成させたところ、ホメオトロピック配向の液晶フィルムは得られたが、配向欠陥があり均一性が低下していた。
【0179】
[比較例2]
比較例1に記載のMIX3を用いたこと以外は、実施例2と同様にして重合性液晶組成物(6)を調製し、液晶フィルムを形成させたところ、ハイブリッド配向の液晶フィルムは得られたが、配向欠陥があり均一性が低下していた。
【0180】
[比較例3]
比較例1に記載のMIX3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして重合性液晶組成物(7)を調製し、液晶フィルムを形成させたところ、ホモジニアス配向の液晶フィルムを得られた。この液晶フィルムは配向が均一であり、実施例1記載の液晶フィルムと同様な傾向であった。
ビスフェノール骨格を有する化合物が用いられない比較例1〜3において、ホモジニアス配向のみ均一な配向の液晶フィルムを形成させることができた。即ち、ビスフェノール骨格を有する化合物を用いると各種配向状態の液晶フィルムを均一な配向状態で形成させることが可能になることが分かる。
【実施例6】
【0181】
実施例1に記載のMIX1において、化合物(2−A2−11−A2)の代わりに化合物(2−A2−16−A2)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは実施例4と同様に均一なホメオトロピック配向であり、レタデーションも同様な傾向であった。
【実施例7】
【0182】
化合物(1−28−2):化合物(3−1−D2):化合物(2−A2−11−A2):化合物(4−1−A2)=34:39:3:24の重量比でこれらの化合物を混合し、PGMEA/3−メトキシプロピオン酸メチル=7/3(重量比)の混合溶剤を用いたこと以外は、実施例2と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは均一なハイブリッド配向であり、フィルムのレタデーションは図4のような結果であった。
【0183】
[比較例4]
化合物(1−28−2):化合物(3−1−D2):化合物(4−1−A2)=35:40:25の重量比でこれらの化合物を混合したこと以外は、実施例2と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは均一に配向していたが、液晶はほとんどチルトしておらずハイブリッド配向としては不十分であり、フィルムのレタデーションは図4のような結果であった。
【実施例8】
【0184】
化合物(2−A2−11−A2)の代わりに化合物(2−A2−11−A9)を用いたこと以外は、実施例7と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは実施例7と同様に均一なハイブリッド配向であり、レタデーションも同様な傾向であった。
【実施例9】
【0185】
化合物(1−28−2):化合物(1−3−1):化合物(2−A2−11−A2):化合物(4−1−A2)=34:39:3:24の重量比でこれらの化合物を混合すること以外は、実施例2と同様にして液晶フィルムを形成した。得られる液晶フィルムは実施例2と同様に均一なハイブリッド配向であり、レタデーションも同様な傾向であった。
【0186】
[比較例5]
化合物(1−28−2):化合物(1−3−1):化合物(4−1−A2)=35:40:25の重量比でこれらの化合物を混合したこと以外は、実施例2と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは均一に配向していたが、液晶はほとんどチルトしておらずハイブリッド配向としては不十分であり、フィルムのレタデーションは図4と同様な結果であった。
【実施例10】
【0187】
化合物(1−1−2):化合物(1−3−1):化合物(2−A2−16−A2)=40:40:20の重量比でこれらの化合物を混合し、PGMEA/3−メトキシプロピオン酸メチル=1/9(重量比)の混合溶剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは均一なホモジニアス配向であり、レタデーションも図1と同様な結果であった。
【実施例11】
【0188】
化合物(1−1−2):化合物(1−3−1):化合物(2−A2−16−A9)=40:40:20の重量比でこれらの化合物を混合し、PGMEA/3−メトキシプロピオン酸メチル=1/9(重量比)の混合溶剤を用いたこと以外は、実施例1と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは均一なホモジニアス配向であり、レタデーションも図1と同様な結果であった。
【0189】
[比較例6]
化合物(1−1−2):化合物(1−3−1)=50:50の重量比でこれらの化合物を混合したこと以外は、実施例10と同様にして液晶フィルムを形成した。得られた液晶フィルムは乾燥中に結晶化が著しく進行し、評価困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明の重合性液晶組成物を用いることで種々の配向形態の液晶フィルムを得ることができ、PGMEA等の安全溶剤の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】実施例1で得られた液晶フィルム(ホモジニアス配向)のレタデーション測定結果
【図2】実施例2で得られた液晶フィルム(ハイブリッド配向)のレタデーション測定結果
【図3】実施例3で得られた液晶フィルム(ホメオトロピック配向のレタデーション測定結果
【図4】実施例7および比較例4で得られた液晶フィルム(ハイブリッド配向)のレタデーション測定結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(A)成分および式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(B)成分を含有し、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよく、そして式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい重合性液晶組成物。


(Wは独立して水素、フッ素、塩素、メチルまたはエチルであり;
は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
11は単結合、−COO−、−CH=CH−COO−、−CHCH−COO−、−CHO−、−CONH−、−(CH−、−CHCH−または−C≡C−であり;
12は単結合、−OCO−、−OCO−CH=CH−、−OCO−CHCH−、−OCH−、−NHCO−、−(CH−、−CHCH−または−C≡C−であり;
13およびZ14は独立して単結合または−O−であり;
は独立して1,4−シクロへキシレン、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ナフタレン−2,6−ジイル、またはテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレンにおける任意の水素は、フッ素、塩素、シアノ、メチル、エチル、メトキシ、ヒドロキシ、ホルミル、アセトキシ、アセチル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルで置き換えられてもよく;
は独立して炭素数2〜20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく、任意の−CH−は−O−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよい。)


(Aは式(A2−1)〜式(A2−18)のいずれか1つで表される基であり;


は独立して水素、フッ素、メチル、またはトリフルオロメチルであり;
は独立して水素、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル、または炭素数1〜3のフルオロアルキルであり;
は独立して単結合、−CH=CH−、または−(CH−であり;
は独立して2〜15の整数である。)


(式(3−1)において、
31は独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31は独立して水素またはメチルであり;
32は独立して水素またはフッ素であり;
31は独立して2〜10の整数であり;
式(3−2)において、
32は独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31は独立して−O−または式(a)で表される基であり;


32は独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−であり;
33は独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
34は独立して水素またはフッ素であり;
32は独立して2〜10の整数である。)


(Xは水素、フッ素またはメチルであり;
は−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり;
は水素またはフッ素であり;
41は−O−または前記の式(a)で表される基であり;
42は単結合、−C≡C−または−COO−であり;
は2〜10の整数である。)
【請求項2】
式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(A)成分および式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(B)成分を含有し、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよく、そして式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい組成物であって、
式(1)において、
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
11が−COO−、−CH=CH−COO−または−CHCH−COO−であり;
12が−OCO−、−OCO−CH=CH−または−OCO−CHCH−であり;
13およびZ14が独立して単結合または−O−であり;
が独立して1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであって、これらの環における任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
が独立して炭素数2〜14のアルキレンであって、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
式(2)において、
が式(A2−1)〜式(A2−8)および式(A2−11)〜式(A2−18)のいずれか1つで表される基であり;
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素またはフッ素であり、
が独立して単結合、−CH=CH−または−(CH−であり;
が独立して2〜10の整数であり;
式(3−1)において、
31が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31が独立して水素またはメチルであり;
32が独立して水素またはフッ素であり;
31は独立して2〜10の整数であり;
式(3−2)において、
32が独立して水素、フッ素またはメチルであり:
31が独立して−O−または式(a)で表される基であり;
32がそれぞれ独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−であり;
33が独立して水素、フッ素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
34が独立して水素またはフッ素であり;
32が独立して2〜10の整数であり;
式(4)において
が水素、フッ素またはメチルであり;
が−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり;
が水素またはフッ素であり;
41が−O−または式(a)で表される基であり;
42が単結合、−C≡C−または−COO−であり;
が2〜10の整数である、
請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
式(1)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(A)成分および式(2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(B)成分を含有し、式(3−1)〜式(3−2)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(C)成分を含有してもよく、そして式(4)で表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物である(D)成分を含有してもよい組成物であって、
式(1)において、
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素またはメチルであり;
11が−COO−、−CH=CH−COO−または−CHCH−COO−であり;
12が−OCO−、−OCO−CH=CH−または−OCO−CHCH−であり;
13およびZ14が独立して単結合または−O−であり;
が独立して1,4−フェニレンまたは1,3−フェニレンであって、これらの環における任意の水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
が独立して炭素数2〜14のアルキレンであって、このアルキレンにおける任意の−CH−は−O−で置き換えられてもよく;
式(2)において、
が式(A2−1)、式(A2−4)、式(A2−11)、式(A2−12)、式(A2−16)および式(A2−18)のいずれか1つで表される基であり;
が独立して水素またはメチルであり;
が独立して水素またはフッ素であり、
が独立して単結合、−CH=CH−または−(CH−であり;
が独立して2〜10の整数であり;
式(3−1)において、
31が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31は独立して水素またはメチルであり;
32は独立して水素またはフッ素であり;
31は独立して2〜10の整数であり;
式(3−2)において、
32が独立して水素、フッ素またはメチルであり;
31が独立して−O−または式(a)で表される基であり;
32が独立して単結合、−CHCH−または−CH=CH−であり;
33が独立して水素、メチルまたはトリフルオロメチルであり;
34が水素であり;
32は独立して2〜10の整数であり;
式(4)において
が水素またはメチルであり;
が−CN、−OCF、炭素数1〜10のアルキル、または炭素数1〜10のアルコキシであり;
が水素またはフッ素であり;
41が−O−または式(a)で表される基であり;
42が単結合、−C≡C−または−COO−であり;
が2〜10の整数である、
請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項4】
(A)成分、(B)成分および(C)成分を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項5】
(A)成分、(B)成分および(D)成分を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項6】
(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項7】
式(5−1)〜式(5−2)で表されるシランカップリング剤の少なくとも1つをさらに含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物であって、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対するシランカップリング剤の重量比が0.01〜0.15である重合性液晶組成物。


(式(5−1)において、
は独立してメチルまたはエチルであり;
は1〜5の整数であり;
式(5−2)において、
51は炭素数1〜4のアルキルであり;
52は炭素数1〜10のアルキルであり;
53は独立して水素または炭素数1〜10のアルキルであるが、共に水素であることはなく;
51は1〜3の整数である。)
【請求項8】
式(5−1)において、
がエチルであり;
が1〜5の整数であり;
式(5−2)において、
51がメチルまたはエチルであり;
52が炭素数1〜10のアルキルであり;
53が独立して水素または炭素数1〜10のアルキルであるが、共に水素であることはなく;
51が3であり、
そして、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対するシランカップリング剤の重量比が0.01〜0.15である、請求項7に記載の重合性液晶組成物。
【請求項9】
非イオン性界面活性剤をさらに含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物であって、(A)成分〜(D)成分の合計重量に対する非イオン性界面活性剤の重量比が0.0001〜0.03である重合性液晶組成物。
【請求項10】
非イオン性界面活性剤がフッ素系、シリコーン系、または炭化水素系の非イオン性界面活性剤である、請求項9に記載の重合性液晶組成物。
【請求項11】
(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準とする割合で、(A)成分が5〜95重量%であり、(B)成分が1〜30重量%であり、(C)成分が0〜47重量%であり、そして(D)成分が0〜47重量%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項12】
(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準とする割合で、(A)成分が10〜90重量%であり、(B)成分が1〜28重量%であり、(C)成分が0〜45重量%であり、そして(D)成分が0〜44重量%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項13】
(A)成分〜(D)成分の合計重量を基準とする割合で、(A)成分が15〜85重量%であり、(B)成分が1〜25重量%であり、(C)成分が0〜42重量%であり、そして(D)成分が0〜42重量%である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物の少なくとも1つを重合させて得られる光学異方性を有するフィルム。
【請求項15】
重合性液晶の配向がホモジニアス配向である請求項14に記載の光学異方性を有するフィルム。
【請求項16】
重合性液晶の配向がホメオトロピック配向である請求項14に記載の光学異方性を有するフィルム。
【請求項17】
重合性液晶の配向がハイブリッド配向である請求項14に記載の光学異方性を有するフィルム。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか1項に記載の光学異方性を有するフィルムを含有する液晶表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−77393(P2010−77393A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160405(P2009−160405)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】