説明

重心動揺型分類装置

【課題】被計測者の歩行に関する運動能力を容易に判断する。
【解決手段】検知部131の重心算出部133が、圧力分布センサ11上における立位静止状態の被計測者の重心位置を算出する。重心動揺型分類部141が、制御周期毎に被計測者の重心位置を検出すると共に、先の制御周期で検出した重心位置からの移動方向及び移動距離を算出する。方向別積算部144が、解析結果記憶部143に記憶された内容に基づいて、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のそれぞれについて、移動距離を積算する。分類部146が、積算結果に基づいて、重心位置記憶部134を参照して、被計測者の重心動揺型を、集中型、前後型、左右型、斜め型、複合型及び分散型のいずれかに分類する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢、病気及びケガなどにより歩行に関する運動能力が低下している患者に対して、運動能力を回復させる運動プログラムを提供するにあたって、当該患者の運動能力を判断するために用いられる重心動揺型分類装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加齢、病気及びケガなどにより歩行に関する運動能力が低下している患者の運動能力を回復させるため、ロードセルを用いて患者が自身の立位状態における重心位置を確認しつつ、指示された重心位置と一致するように自身の重心位置を移動させる訓練を行う技術が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平07−275307号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者によって運動能力が異なるため、上述した技術では、当該患者の運動能力を回復させるのに適切な訓練が行われていない可能性がある。この点、指導員が患者に様々な動作を指示することによって患者の運動能力を把握した後に、当該患者の運動能力を回復させるのに適切な運動プログラムを指示することが行われているが、患者の運動能力の把握は、指導員の長年の経験に基づいてなされるため、患者の運動能力を正確に把握することが難しい。
【0005】
本発明の主たる目的は、被計測者の歩行に関する運動能力を容易に把握することができる重心動揺型分類装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の重心動揺型分類装置は、被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有する圧力分布センサと、被計測者が前記圧力分布センサ上で静止したときに、前記圧力分布センサからの圧力分布データに含まれる前記複数の圧力検知領域のそれぞれで検知される圧力に対応した出力値から、前記圧力分布センサ上における被計測者の荷重状態を検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて、静止状態における被計測者の重心動揺型を分類する重心動揺型分類手段とを備えている。
【0007】
本発明によると、圧力分布センサを用いて、歩行に関する運動能力の指標となる被計測者の重心動揺型を分類するため、被計測者の歩行に関する運動能力を容易に把握することができる。これにより、被計測者の運動能力を回復させる適切な運動プログラムを容易に指示することができる。
【0008】
本発明においては、前記重心動揺型分類手段は、前記圧力分布センサ上における被計測者の重心位置の軌跡が、所定の範囲内にのみ存在しているときは、当該被計測者の重心動揺が小さく安定している集中型に、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する当該被計測者の前後方向に関する移動距離の比率が第1閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記前後方向に関して最も大きくなっている前後型に、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する当該被計測者の左右方向に関する移動距離の比率が前記第1閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記左右方向に関して最も大きくなっている左右型に、当該被計測者の重心動揺型を分類することが好ましい。これによると、被計測者の重心動揺型を、歩行に関する運動能力を判断するのに好適な、集中型、前後型及び左右型に分類することができる。ここで、前後方向には、被計測者の前方向及び後方向をそれぞれ中央とする所定範囲内の角度を有する全ての方向が含まれており、左右方向には、被計測者の左方向及び後方向をそれぞれ中央とする所定範囲内の角度を有する全ての方向が含まれている。
【0009】
このとき、前記重心動揺型分類手段は、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する前記前後方向と前記左右方向との間の方向である斜め方向に関する移動距離の比率が前記第1閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記斜め方向に関して最も大きくなっている斜め型に、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する前記前後方向、前記左右方向及び前記斜め方向のうちいずれか2つの各方向の移動距離の比率が全て第2閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記2つの各方向に関して大きくなっている複合型に、前記集中型、前記前後型、前記左右型、前記斜め型及び前記複合型のいずれでもないときは、当該被計測者の重心動揺が全ての方向に関して大きくなっている分散型に、当該被計測者の重心動揺型を分類することがより好ましい。これによると、被計測者の重心動揺型を、集中型、前後型及び左右型に加えて、斜め型、分散型及び複合型に分類することができる。これにより、指導者が、被計測者の歩行に関する運動能力を正確に把握することができるため、指導者が、被計測者に対してより適切な運動プログラムを指示することができる。ここで、斜め方向は2つあり、斜め方向の一方には、被計測者の前方向と右方向との間の方向及び後方向と左方向との間の方向をそれぞれ中央とする所定範囲内の角度を有する全ての方向が含まれており、斜め方向の他方には、被計測者の前方向と左方向との間の方向及び後方向と右方向との間の方向をそれぞれ中央とする所定範囲内の角度を有する全ての方向が含まれている。
【0010】
本発明においては、前記重心動揺型分類手段は、所定の周期毎に前記重心位置を検出すると共に、先の周期で検出した前記重心位置からの移動方向及び移動距離を算出する重心位置解析手段と、前記重心位置解析手段によって検出された前記重心位置に関する前記移動方向及び前記移動距離を周期毎に記憶する記憶手段と、前記記憶手段に周期毎に記憶された前記移動方向を、前記前後方向、前記左右方向及び前記斜め方向のいずれかに分類すると共に、分類された各方向について前記移動距離を積算する積算手段と、前記重心位置の総移動距離に対する、各方向に関する前記移動距離の積算値の比に基づいて、被計測者の重心動揺型を分類することが好ましい。これにより、被計測者の重心動揺型を簡単なアルゴリズムで分類することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る好適なの実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、第1の実施形態の重心動揺型分類装置の概略構成を示す外観図である。図2は、重心動揺型分類装置1の機能ブロック図である。
【0012】
重心動揺型分類装置1は、被計測者が圧力分布センサ11上で静止した立位静止状態にあるときの当該被計測者の重心位置の動揺パターン(以下、重心動揺型と称す)を、歩行に関する運動能力の特性に対応する、集中型、前後型、左右型、斜め型、複合型及び分散型(図4参照後述)に分類するものである。指導者は、重心動揺型分類装置1による被計測者の重心動揺型の分類結果に基づいて、被計測者の歩行に関する運動能力を把握し、当該被計測者に対して運動能力を回復させる運動プログラムを指示する。
【0013】
図1に示すように、重心動揺型分類装置1は、シート状の圧力分布センサ11と、圧力分布センサ11に接続された圧力検出部12と、パーソナルコンピュータ(パソコン)20と、圧力検出部12とパソコン20とを接続する接続ユニット40とを備えている。接続ユニット40は、インターフェースボックス45及びインターフェースケーブル46を含んでおり、その両端が圧力検出部12及びパソコン20の各入出力インターフェース(図示しない)に接続されている。
【0014】
圧力分布センサ11は、多数の感圧センサ11aが格子状に配置された圧力検知領域を有している。圧力分布センサ11の厚さは、約0.1〜0.2mmである。被計測者がその上に立つための十分な剛性を有する検出板は必要ではなく、被計測者の両足は圧力分布センサ11上に載せることができる。また、圧力分布センサ11は、シート単体での使用も可能であるが、シートの保護の観点から、ゴムシートを緩衝用に積層してもよい。また、床上へのセッティングを容易にする目的でセンサを保持するアルミなどの金属製や樹脂製の板の上に積層してもよい。
【0015】
圧力検出部12は、多数の感圧センサ11aのそれぞれに接続されており、各感圧センサ11aの状態を検出する。本実施形態においては、各感圧センサ11aの状態は、それらに加えられる圧力に対応した0〜255のデジタル出力値によって表される。圧力検出部12は、このデジタル出力値をパソコン20に対して出力する。
【0016】
パソコン20は、ディスプレイ21と、キーボード25と、マウス26と、制御部30(図2参照)とを有している。ここで、制御部30には、重心動揺型分類装置1に係る各種動作を制御する重心動揺型分類プログラムやデータなどが格納されたハードディスク、重心動揺型分類装置1の各部の動作を制御する信号を生成するために各種演算を実行するCPU、CPUでの演算結果などのデータを一時保管するRAMなどが含まれている。
【0017】
制御部30は、図2に示すように、検知部131と、重心動揺型分類部141と、表示制御部151とを有している。また、制御部30には、ディスプレイ21と、キーボード25と、マウス26とが接続されている。
【0018】
検知部131は、圧力分布センサ11上における被計測者の重心位置(荷重状態)を検知するものであり、圧力分布データ記憶部132と、重心算出部133と、重心位置記憶部134とを有している。
【0019】
圧力分布データ記憶部132は、圧力検出部12から接続ユニット40を介してパソコン20に送信された圧力分布データを記憶するものである。圧力分布データ記憶部132には、圧力分布センサ11に格子状に配置された多数の感圧センサ11a毎に、計測時間内におけるサンプル時間おきの圧力分布データが記憶されている。つまり、各サンプル時間に対応する1つの検知時刻における多数の感圧センサ11aの圧力分布データが、検知時刻の数だけ記憶されている。従って、この圧力分布データに基づいて、各感圧センサ11aで検知される圧力の時間的な変化を把握することができる。また、圧力分布センサ11で検出される圧力分布の時間的な変化を検知することができる。
【0020】
重心算出部133は、圧力分布データ記憶部132に記憶された圧力分布データに基づいて、検知時刻ごとに圧力分布センサ11上の被計測者の重心位置を算出するものである。
【0021】
重心算出部133における重心位置の算出方法について、図3を参照して説明する。図3は、所定時間において多数の感圧センサ11aで検知される圧力分布データを示している。本実施形態の圧力分布センサ11では、多数の感圧センサ11aが、X軸方向(図中左右方向)にm+1列に配置されていると共に、Y軸方向(図中上下方向)にn+1列に配置されている。従って、多数の感圧センサ11aは、(m+1)×(n+1)の格子状に配置されている。
【0022】
また、図3では、各感圧センサ11aで検知された圧力データが記号で示されている。例えば、X軸方向にはu列目であって且つY軸方向にはv列目に対応する感圧センサ11aによって検知される圧力データは、a(u、v)(但し、uは0以上m以下の整数、vは0以上n以下の整数)と表されている。
【0023】
この場合のX軸方向の重心位置Cfxは、次式で算出される。
【数1】

【0024】
また、Y軸方向の重心位置Cfyは、次式で算出される。
【数2】

【0025】
図2に戻って、重心位置記憶部134は、重心算出部133が算出した重心位置を記憶するものである。
【0026】
重心動揺型分類部141は、検知部131の検知結果、すなわち、重心位置記憶部134に記憶された重心位置に基づいて、被験者の重心動揺型を分類するものである。本実施形態においては、被験者が計測時間内において圧力分布センサ11上で立位静止状態をとったときの重心位置動揺型を分類する。また、重心動揺型分類部141は、重心解析部142と、解析結果記憶部143と、方向別積算部144と、積算距離記憶部145と、分類部146とを有している。
【0027】
重心解析部142は、重心位置記憶部134の記憶内容に基づいて、制御周期(例えば、10msec)毎に被計測者の重心位置を検出すると共に、先の制御周期で検出した重心位置からの移動方向及び移動距離を算出するものである。
【0028】
解析結果記憶部143は、重心解析部142の解析結果、すなわち、制御周期毎の重心位置に関する移動方向及び移動距離を制御周期毎に記憶するものである。
【0029】
方向別積算部144は、解析結果記憶部143に制御周期毎に記憶された移動方向を、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のいずれかに分類すると共に、分類された各方向について移動距離を積算するものである。なお、移動方向の分類については、被計測者の前方を0°としたとき、移動方向が、前方0°を中央とする45°の範囲(337.5°以上22.5°未満)又は後方180°を中央とする45°の範囲(157.5°以上202.5°未満)にあるときは、当該移動方向を前後方向に分類し、移動方向が、右方90°を中央とする45°の範囲(67.5°以上112.5°未満)又は左方270°を中央とする45°の範囲(247.5°以上292.5°未満)にあるときは、当該移動方向を左右方向に分類し、移動方向が、右前方45°を中央とする45°の範囲(22.5°以上67.5°未満)又は左後方225°を中央とする45°の範囲(202.5°以上247.5°未満)にあるときは、当該移動方向を斜め方向の一方に分類し、移動方向が、左前方315°を中央とする45°の範囲(292.5°以上337.5°未満)又は右後方135°を中央とする45°の範囲(112.5°以上157.5°未満)にあるときは、当該移動方向を斜め方向の他方に分類する(図5参照)。積算距離記憶部145は、方向別積算部144によって積算された移動距離を、移動方向毎に記憶するものである。
【0030】
分類部146は、積算距離記憶部145に記憶された内容に基づいて、当該被計測者の重心位置動揺型を分類するものである。
【0031】
ここで、圧力分布センサ11上における被験者の立位静止状態について、図4を参照しつつ説明する。図4は立位静止状態を説明するための図であり、図中に示された足形は、圧力分布センサ11上に配置された被計測者の足の配置位置を示している。また、図中の曲線は、被計測者の重心位置の軌跡Cである。
【0032】
図4に示すように、被計測者が圧力分布センサ11上で立位静止状態となっているとき、時間の経過(計測時間)に伴って被計測者の重心位置が動揺する。このとき、被計測者の歩行に関する運動能力によって、重心位置の軌跡パターンに一定の特徴が表れる。本実施形態においては、この歩行に関する運動能力に対応する重心位置の軌跡パターンの特徴によって、重心動揺型を分類する。ここで、分類する重心動揺型について、図5を参照しつつ説明する。図5は、重心動揺型分類装置1が分類する重心動揺型を説明するための図である。上述したように、重心動揺型分類装置1は、被計測者の重心動揺型を、集中型、前後型、左右型、斜め型、複合型及び分散型のいずれかに分類する。
【0033】
図5に示すように、前後型は、重心位置の軌跡Cにおける総移動距離に対する被計測者を基準とする前後方向に関する移動距離の比率が、50%(第1閾値)以上となっているときの重心動揺型である。この前後型は、当該被計測者の重心動揺が前後方向に関して最も大きくなった不安定な状態であり、歩行に関する運動能力が低下していることを示している。
【0034】
左右型は、重心位置の軌跡Cにおける総移動距離に対する被計測者を基準とする左右方向に関する移動距離の比率が、50%以上となっているときの重心動揺型である。この左右型は、当該被計測者の重心動揺が左右方向に関して最も大きくなった不安定な状態であり、歩行に関する運動能力が低下していることを示している。
【0035】
斜め型は、重心位置の軌跡Cにおける総移動距離に対する被計測者を基準とする斜め方向(前後方向と左右方向との間45°又は−45°の方向)に関する移動距離の比率が、50%以上となっているときの重心動揺型である。この前後型は、当該被計測者の重心動揺が斜め方向に関して最も大きくなった不安定な状態であり、歩行に関する運動能力が低下していることを示している。
【0036】
複合型は、重心位置の軌跡Cにおける総移動距離に対する前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のうちいずれか2つの各方向の移動距離の比率が全て33.33%(第2閾値)以上となっているときの重心動揺型である。この複合型は、当該被計測者の重心動揺が2つの方向に関して大きくなった不安定な状態であり、歩行に関する運動能力が低下していることを示している。
【0037】
集中型は、被計測者の重心動揺型が、前後型、左右型、斜め型及び複合型でない場合、重心位置の軌跡Cが、所定の範囲A内にのみ存在しているときの重心動揺型である。この集中型は、当該被計測者の重心動揺が小さく安定しており、歩行に関する運動能力が正常であることを示している。本実施形態において、範囲Aは、被計測者の理想的な重心位置を中心に配置された1cm×1cmの矩形領域である。なお、範囲Aは任意の形状及びサイズを有していてよい。例えば、一方向に延在する矩形領域であってもよいし円形領域であってもよい。
【0038】
分散型は、被計測者の重心動揺型が、集中型、前後型、左右型、斜め型及び複合型のいずれでもない場合の重心動揺型である。この複合型は、当該被計測者の重心動揺が全ての方向に関して大きくなった不安定な状態であり、歩行に関する運動能力が低下していることを示している。
【0039】
図2に戻って、表示制御部151は、被計測者を圧力分布センサ11上で立位静止状態をとらせる指示内容と、当該被計測者の重心動揺型とをディスプレイ21に表示させるものである。
【0040】
次に、図6を参照しつつ重心動揺型分類装置1の動作について説明する。図6は、重心動揺型分類装置1の動作を示すフローチャートである。計測が開始されると、まず、表示制御部151が、被計測者に対して圧力分布センサ11上で立位静止状態をとることを指示する内容をディスプレイ21に表示させる。被計測者は、ディスプレイ21に表示されている内容にしたがって、圧力分布センサ11で計測時間の間、静止状態をとる。このとき、図6に示すように、被計測者の重心位置の解析を行う(ステップS101)。
【0041】
具体的には、検知部131の重心算出部133が、圧力分布センサ11上における被計測者の重心位置を算出すると共に、重心位置記憶部134に記憶する。そして、重心動揺型分類部141の重心解析部142が、重心位置記憶部134に記憶された内容に基づいて制御周期毎に被計測者の重心位置を検出すると共に、先の制御周期で検出した重心位置からの移動方向及び移動距離を算出し、その内容を解析結果記憶部143に記憶させる。さらに、方向別積算部144が、解析結果記憶部143に記憶された内容に基づいて、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のそれぞれについて、移動距離を積算し、その結果を積算距離記憶部145に記憶させる。
【0042】
その後、分類部146が、積算距離記憶部145に記憶された内容に基づいて、軌跡Cの総移動距離に対する、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のいずれか1つの方向に関する移動距離の比率が50%以上であるか否か判断する(ステップS102)。分類部146は、いずれか1つの方向に関する移動距離の比率が50%以上であると判断したとき(S102:YES)、当該方向が、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のいずれかを判断する(ステップS103)。分類部146は、当該方向が前後方向であると判断すれば(S103:前後)、当該被計測者の重心動揺型を前後型に分類し(ステップS104)、当該方向が左右方向であると判断すれば(S103:左右)、当該被計測者の重心動揺型を左右型に分類し(ステップS105)、当該方向が斜め方向であると判断すれば(S103:斜め)、当該被計測者の重心動揺型を斜め型に分類する(ステップS106)。そして、それぞれについて、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0043】
分類部146が、いずれか1つの方向に関する移動距離の比率が50%以上でないと判断したとき(S102:NO)、軌跡Cの総移動距離に対する、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のうちいずれか2つの各方向の移動距離の比率が全て33.33%以上であるか否かを判断する(S107)。分類部146が、2つの各方向の移動距離の比率が全て33.33%以上であると判断したときは(S107:YES)、当該被計測者の重心動揺型を複合型に分類し(ステップS108)、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0044】
分類部146が、2つの各方向の移動距離の比率が全て33.33%以上でないと判断したとき(S107:NO)、言い替えると、当該被計測者の重心動揺型が前後型、左右型、斜め型及び複合型のいずれでもないと判断したとき、重心位置記憶部134に記憶された内容に基づいて、重心位置の軌跡Cが、範囲A内にのみ存在しているか否かを判断する(ステップS109)。分類部146が、重心位置の軌跡Cが範囲A内にのみ存在していないと判断したときは(S109:NO)、当該被計測者の重心動揺型を分散型に分類し(ステップS110)、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。分類部146が、重心位置の軌跡Cが範囲A内にのみ存在していると判断したときは(S109:YES)、当該被計測者の重心動揺型を集中型に分類し(ステップS111)、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の重心動揺型分類装置1によると、圧力分布センサ11を用いて、被計測者の重心動揺を、歩行に関する運動能力の指標となる被計測者の重心動揺型に分類するため、分類結果に基づいて、被計測者の歩行に関する運動能力を容易に把握することができる。これにより、指導者が、被計測者の運動能力を回復させる適切な運動プログラムを指示することができる。
【0046】
また、重心動揺型分類装置1が、被計測者の重心動揺型を、歩行に関する運動能力を判断するのに好適な、集中型、前後型、左右型、斜め型、複合型及び分散型に分類する。これにより、指導者が、被計測者の歩行に関する運動能力をより正確に把握することができるため、被計測者に対してより適切な運動プログラムを指示することができる。
【0047】
さらに、方向別積算部144が、解析結果記憶部143に記憶された内容に基づいて、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のそれぞれについて、移動距離を積算し、分類部146が、積算結果に基づいて重心動揺型を分類するため、簡単なアルゴリズムで、被計測者の重心動揺型を分類することができる。
【0048】
<変形例>
次に、重心動揺型の判断手順が異なる変形例に係る重心動揺型分類装置1の動作について図7を参照しつつ説明する。図7は、変形例に係る重心動揺型分類装置1の動作を示すフローチャートである。
【0049】
図7に示すように、計測が開始されると、まず、上述したように、被計測者の重心位置の解析を行う(ステップS201)。そして、重心位置記憶部134に記憶された内容に基づいて、重心位置の軌跡Cが、範囲A内にのみ存在しているか否かを判断する(ステップS202)。なお、ここでの範囲Aは、被計測者の理想的な重心位置を中心に配置された1.2cm×1.2cm(1.44cm)〜1.3cm×1.3cm(1.69cm)の矩形領域であることが好ましい。分類部146が、重心位置の軌跡Cが範囲A内にのみ存在していると判断したときは(S202:YES)、当該被計測者の重心動揺型を集中型に分類し(ステップS203)、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0050】
分類部146が、重心位置の軌跡Cが範囲A内にのみ存在していないと判断したときは(S202:NO)、分類部146が、積算距離記憶部145に記憶された内容に基づいて、軌跡Cの総移動距離に対する、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のいずれか1つの方向に関する移動距離の比率が50%以上であるか否か判断する(ステップS204)。分類部146は、いずれか1つの方向に関する移動距離の比率が50%以上であると判断したとき(S204:YES)、当該方向が、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のいずれかを判断する(ステップS205)。分類部146は、当該方向が前後方向であると判断すれば(S205:前後)、当該被計測者の重心動揺型を前後型に分類し(ステップS206)、当該方向が左右方向であると判断すれば(S103:左右)、当該被計測者の重心動揺型を左右型に分類し(ステップS207)、当該方向が斜め方向であると判断すれば(S205:斜め)、当該被計測者の重心動揺型を斜め型に分類する(ステップS208)。そして、それぞれについて、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0051】
分類部146が、いずれか1つの方向に関する移動距離の比率が50%以上でないと判断したとき(S204:NO)、重心位置記憶部134に記憶された内容に基づいて、重心位置の軌跡Cが、範囲B内にのみ存在しているか否かを判断する(ステップS209)。なお、ここでの範囲Bは、被計測者の理想的な重心位置を中心に配置された2.0cm×2.0cm(4.0cm)〜2.2cm×2.2cm(4.84cm)の矩形領域であることが好ましい。分類部146が、重心位置の軌跡Cが範囲B内にのみ存在している(実質的に、被計測者の重心動揺型が、集中型、前後型、左右型及び斜め型でなく、且つ、軌跡Cが範囲A外であって範囲B内に存在している)と判断したときは(S209:YES)、当該被計測者の重心動揺型を複合型に分類し(ステップS210)、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0052】
分類部146が、重心位置の軌跡Cが範囲B外に存在していると判断したときは(S209:NO)、当該被計測者の重心動揺型を分散型に分類し(ステップS211)、ディスプレイ21に分類結果を表示して当該計測を終了する。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態では、重心動揺型分類装置1が、被計測者の重心動揺型を、集中型、前後型、左右型、斜め型、複合型及び分散型の6つに分類する構成であるが、集中型、前後型、左右型、斜め型の4つに分類する構成であってもよいし、他の歩行に関する運動能力に対応する重心動揺型に分類する構成であってもよい。
【0054】
上述した本実施形態においては、方向別積算部144が、解析結果記憶部143に記憶された内容に基づいて、前後方向、左右方向及び2つの斜め方向のそれぞれについて、移動距離を積算し、分類部146が、積算結果に基づいて重心動揺型を分類する構成であるが、軌跡Cが占有する領域の形状から重心動揺型を分類する構成であってもよい。この場合、例えば、軌跡Cの範囲を矩形領域で画定し、この矩形領域の前後方向と左右方向との比率によって、重心動揺型を分類してもよい。
【0055】
上述した本実施形態においては、被計測者の重心動揺型を分類するにあたって、最初に、当該重心動揺型が、前後型、左右型及び斜め型か否かを判断し、さらに、複合型か否かを判断し、最後に、集中型か分散型かを判断する構成になっているが、集中型、前後型、左右型、斜め型、複合型及び分散型の判断は、任意の順で行ってよい。
【0056】
また、上述した本実施形態においては、重心動揺型分類装置1は、重心動揺型を分類するに留まる構成であるが、重心動揺型を分類した後に、分類された重心動揺型に対応する運動機能を改善するための運動プログラムをディスプレイ21に表示する構成であってもよい。
【0057】
さらに、上述した本実施形態においては、重心動揺型分類装置1が重心動揺型の分類結果のみをディスプレイ2に表示する構成であるが、分類結果と共に軌跡Cをディスプレイ2に表示させる構成であってもよい。これにより、指導員は被計測者の運動能力さらに詳細に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る重心動揺型分類装置の概略構成を示す外観図である。
【図2】図1の重心動揺型分類装置の機能ブロック図である。
【図3】図1に示す感圧センサで検知される圧力分布データを示す図である。
【図4】図1に示す圧力分布センサ上における被計測者の立位静止状態を説明するための図である。
【図5】図1に示すに重心動揺型分類装置が分類する重心動揺型を説明するための図である。
【図6】図1に示す重心動揺型分類装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1 重心動揺型分類装置
11a 各感圧センサ
11 圧力分布センサ
11a 感圧センサ
12 圧力検出部
20 パソコン
21 ディスプレイ
25 キーボード
26 マウス
30 制御部
40 接続ユニット
45 インターフェースボックス
46 インターフェースケーブル
131 検知部
132 圧力分布データ記憶部
133 重心算出部
134 重心位置記憶部
141 重心動揺型分類部
142 重心解析部
143 解析結果記憶部
144 方向別積算部
145 積算距離記憶部
146 分類部
151 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者から加えられる圧力をそれぞれ検知する複数の圧力検知領域を有する圧力分布センサと、
被計測者が前記圧力分布センサ上で静止したときに、前記圧力分布センサからの圧力分布データに含まれる前記複数の圧力検知領域のそれぞれで検知される圧力に対応した出力値から、前記圧力分布センサ上における被計測者の荷重状態を検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて、静止状態における被計測者の重心動揺型を分類する重心動揺型分類手段とを備えていることを特徴とする重心動揺型分類装置。
【請求項2】
前記重心動揺型分類手段は、前記圧力分布センサ上における被計測者の重心位置の軌跡が、所定の範囲内にのみ存在しているときは、当該被計測者の重心動揺が小さく安定している集中型に、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する当該被計測者の前後方向に関する移動距離の比率が第1閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記前後方向に関して最も大きくなっている前後型に、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する当該被計測者の左右方向に関する移動距離の比率が前記第1閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記左右方向に関して最も大きくなっている左右型に、当該被計測者の重心動揺型を分類することを特徴とする請求項1に記載の重心動揺型分類装置。
【請求項3】
前記重心動揺型分類手段は、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する前記前後方向と前記左右方向との間の方向である斜め方向に関する移動距離の比率が前記第1閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記斜め方向に関して最も大きくなっている斜め型に、前記集中型でなく且つ前記軌跡における総移動距離に対する前記前後方向、前記左右方向及び前記斜め方向のうちいずれか2つの各方向の移動距離の比率が全て第2閾値以上となっているときは、当該被計測者の重心動揺が前記2つの各方向に関して大きくなっている複合型に、前記集中型、前記前後型、前記左右型、前記斜め型及び前記複合型のいずれでもないときは、当該被計測者の重心動揺が全ての方向に関して大きくなっている分散型に、当該被計測者の重心動揺型を分類することを特徴とする請求項2に記載の重心動揺型分類装置。
【請求項4】
前記重心動揺型分類手段は、
所定の周期毎に前記重心位置を検出すると共に、先の周期で検出した前記重心位置からの移動方向及び移動距離を算出する重心位置解析手段と、
前記重心位置解析手段によって検出された前記重心位置に関する前記移動方向及び前記移動距離を周期毎に記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に周期毎に記憶された前記移動方向を、前記前後方向、前記左右方向及び前記斜め方向のいずれかに分類すると共に、分類された各方向について前記移動距離を積算する積算手段と、
前記重心位置の総移動距離に対する、各方向に関する前記移動距離の積算値の比に基づいて、被計測者の重心動揺型を分類することを特徴とする請求項3に記載の重心動揺型分類装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−69237(P2010−69237A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−242880(P2008−242880)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【出願人】(307020545)公立大学法人岡山県立大学 (8)
【Fターム(参考)】