説明

重心移動訓練システム

【課題】使用者にスムーズな重心移動を習得させるための訓練が可能な重心移動訓練システムを提供する。
【解決手段】算出部は使用者の左右の荷重の比率を表すバランス値を算出し、指標生成部は、このバランス値に基づいて、指標映像31を生成して表示装置3に表示させる。模範生成部は、記憶部に記憶されている設定値に従って、重心移動の模範となるバランス値の周期的な変化を示す模範映像32を生成して表示装置3に表示させる。これにより、使用者に対して、模範映像32中の棒グラフの動きを指標映像31で追従するように、左右の各脚に掛かる荷重の割合を変化させるための重心移動を行わせることができる。評価部は、模範映像32と指標映像31との間でバランス値が変化するタイミングのずれを評価し、その評価結果は提示部により提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の重心移動の訓練に用いられる重心移動訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
人の重要な運動機能の1つに重心移動の機能があるが、たとえば病気や怪我により身体の動きに障害のある患者や高齢者等においては、この重心移動の機能が衰えている場合がある。重心移動の機能が不十分な人は、たとえば左右の脚に交互に体重が掛かるようにスムーズに重心移動させることができないがために、歩行などの基本的な運動にも支障がでる場合がある。そのため、重心移動をスムーズに行わせるための重心移動訓練は、たとえばリハビリテーションの分野等に広く取り入れられている。
【0003】
一方、使用者(利用者)の足元に配置され使用者の前後左右における荷重の比率を測定する測定装置(バランス検出装置)を備え、測定装置の出力から求まる使用者の重心位置を示す映像を表示装置に表示させるシステムが提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1記載のシステムを用いれば、使用者は、重心位置を目標位置に一致させるように姿勢を修正することによって、重心が中心に位置するときの正しい姿勢を習得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−277195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載のシステムでは、重心位置が使用者にフィードバックされることによって、正しい姿勢からの重心位置の変動を少なくする訓練はできるものの、歩行などに必要なスムーズな重心移動を使用者に習得させるための訓練は難しい。すなわち、特許文献1記載のシステムは、重心位置の移動軌跡等も表示可能であるが、重心位置の移動軌跡からではスムーズに重心移動できているか否かの評価は難しく、スムーズな重心移動を習得させるための訓練に用いるには不十分である。
【0006】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、使用者にスムーズな重心移動を習得させるための訓練が可能な重心移動訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の重心移動訓練システムは、表示面に映像を表示する表示装置と、前記表示装置に映像を表示させる制御装置と、前記表示面と向き合う使用者の足元に配置され水平面内での前記使用者の荷重の分布を測定する測定装置とを備え、前記制御装置は、前記測定装置の測定結果に基づいて前記使用者の左右または前後の荷重の比率を表すバランス値を算出する算出部と、前記使用者の重心移動に伴う前記バランス値の変化を示す指標映像を生成し前記表示装置に表示させる指標生成部と、前記重心移動の模範となる前記バランス値の周期的な変化を示す模範映像を生成し前記表示装置に表示させる模範生成部と、前記模範映像と前記指標映像との間で前記バランス値が変化するタイミングのずれを評価する評価部と、前記評価部の評価結果を提示する提示部とを有することを特徴とする。
【0008】
この重心移動訓練システムにおいて、前記評価部は、前記模範映像と前記指標映像との間で同一タイミングにおける前記バランス値の差を評価対象に含むことが望ましい。
【0009】
この重心移動訓練システムにおいて、前記制御装置は、前記模範映像の動きを決めるための設定値を記憶する記憶部と、前記記憶部内の前記設定値を前記評価部の評価結果に応じて変更する設定更新部とをさらに有することがより望ましい。
【0010】
この重心移動訓練システムにおいて、前記表示面に対して前記使用者側に配置され、前記表示面に表示される映像を透過させるとともに前記使用者の鏡像を映すハーフミラーをさらに備えることがより望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、使用者にスムーズな重心移動を習得させるための訓練をさせることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態1の重心移動訓練システムにおける表示装置の表示例を示す説明図である。
【図2】同上の重心移動訓練システムのシステム構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態では、病気や怪我により重心移動の機能が衰えた患者を対象として、重心移動をスムーズに行わせるためのリハビリテーションに用いられる重心移動訓練システムについて説明する。ただし、以下の実施形態の記載は重心移動訓練システムの用途を限定する趣旨ではなく、たとえば健常者が日頃の運動や、各種のスポーツに必要な重心移動の感覚を習得するためのトレーニングなどに重心移動訓練システムを用いてもよい。
【0014】
(実施形態1)
本実施形態の重心移動訓練システム1は、図2に示すように、使用者(患者)2の正面に配置され表示面30に映像を映す表示装置3と、水平面内での使用者2の荷重の分布を測定する測定装置4と、表示装置3等の動作を制御する制御装置5とを備えている。表示装置3および測定装置4は、いずれも制御装置5に対して接続されている。
【0015】
また、この重心移動訓練システム1は、表示装置3の使用者2と向き合う表示面30の手前(使用者2側)に配置されたハーフミラー6をさらに備えている。ハーフミラー6は、その前面(鏡面)が使用者2と向き合うように、表示装置3と使用者2との間に垂直に立てて配置されており、背後の表示装置3に表示された映像を使用者2側に透過させる。
【0016】
表示装置3は、ここではプラズマディスプレイからなり、ハーフミラー6の背面側に取り付けられている。図2では、ハーフミラー6を支持する構造や、表示装置3の取付構造の図示を省略しているが、適宜選択される構造で、ハーフミラー6および表示装置3は十分な強度をもって定位置に固定される。なお、表示装置3はプラズマディスプレイに限らず、液晶ディスプレイ等、他のディスプレイ装置であってもよい。また、ディスプレイ装置の代わりに、ハーフミラー6の背面に貼り付けられる拡散シート(図示せず)と、ハーフミラー6の後方(使用者2とは反対側)から拡散シートに映像を投影する投影装置(図示せず)とで構成される表示装置を用いることも考えられる。
【0017】
本実施形態においては、ハーフミラー6は、前面が縦長の長方形状であって、使用者2の全身を映す姿見として機能する大きさに形成されている。ハーフミラー6の透過率は、ハーフミラー6を鏡として利用でき、且つ使用者2がハーフミラー6を通して表示装置3に表示される映像を視認できるように設計される。ハーフミラー6は、ガラスや合成樹脂の透明な基材の少なくとも一表面に、金属膜などによる鏡面コーティングが施されることにより形成されている。
【0018】
ここでは、表示装置3は、ハーフミラー6の背面に表示面30が接するように配置されている。表示装置3の高さ位置は、下端縁がハーフミラー6の下端から所定の間隔を空けて位置し、且つ上端縁がハーフミラー6の上端から所定の間隔を空けて位置するように決められている。ここで、表示装置3はハーフミラー6の中心よりもやや上方寄りに配置されている。また、表示装置3に表示される映像をハーフミラー6の前面に高輝度で表示できるよう、ハーフミラー6と表示面30との間には、屈折率を調節して反射を防止する透明材料が充填されていてもよい。
【0019】
上記構成によれば、ハーフミラー6の前面は、鏡として使用者2の鏡像を映し出すとともに、表示装置3の表示面30に表示された映像を映し出すように機能する。つまり、ハーフミラー6の正面に使用者2が居れば、使用者2の鏡像がハーフミラー6の前面に映るとともに、表示装置3に表示される映像がハーフミラー6を透過してハーフミラー6の前面に映し出されることになる。詳しくは後述するが、表示装置3に表示される映像は制御装置5によって生成される。
【0020】
測定装置4は、ハーフミラー6の手前の床であって使用者2の足元に配置されている。この測定装置4は、使用者2が搭乗する搭乗台40と、搭乗台40上での使用者2の左右の各脚にそれぞれ掛かる荷重を測定する荷重センサ(図示せず)とを具備している。荷重センサは、右脚側の搭乗台40と左脚側の搭乗台40とのそれぞれに対応して少なくとも1個ずつ設けられている。
【0021】
本実施形態では、測定装置4は、各荷重センサでそれぞれ荷重を測定することにより、搭乗台40上に立つ使用者2の水平面内での荷重の分布を測定する。つまり、測定装置4は、搭乗台40の左右方向の中心線を境に左側の領域に掛かる荷重と右側の領域に掛かる荷重とをそれぞれ測定し、左脚と左脚との各々に掛かる荷重の分布をリアルタイムで測定する。
【0022】
このように、測定装置4は水平面内での使用者2の荷重の分布をリアルタイムで測定し、測定結果を制御装置5に対して出力する。制御装置5に出力される測定装置4の測定結果は水平面内での使用者2の荷重の分布を表す値であればよく、本実施形態では、測定装置4は使用者2の左脚と右脚とのそれぞれに掛かる荷重を制御装置5に出力する。
【0023】
ここで、測定装置4は、荷重センサにより使用者2の左脚と右脚との一方のみに掛かる荷重を測定する構成であってもよい。つまり、測定装置4は、使用者2の体重が既知として予め与えられていれば、たとえば左脚に掛かる荷重を測定することにより、この荷重が体重に占める割合から、使用者2の荷重の分布を求めることができる。
【0024】
ところで、本実施形態の重心移動訓練システム1は、測定装置4の測定結果に基づいて使用者2の左右の荷重の比率を表すバランス値を算出する算出部51を制御装置5に有している。さらに、制御装置5は、使用者2の重心移動に伴うバランス値の変化を示す指標映像を生成する指標生成部52と、重心移動の模範となるバランス値の周期的な変化を示す模範映像を生成する模範生成部53と、各種設定値等が記憶される記憶部54とを有している。指標生成部52および模範生成部53は、それぞれ生成した指標映像、模範映像を表示装置3に表示させる。
【0025】
算出部51は、測定装置4の測定結果から、搭乗台40の左右方向の中心線より左側の領域に掛かる荷重(左脚に掛かる荷重)と右側の領域に掛かる荷重(右脚に掛かる荷重)との比率を表すバランス値を、リアルタイムで算出する。具体的には、算出部51は、使用者2の左脚と右脚とのそれぞれに掛かる荷重に基づいて、その総和(つまり使用者2の体重)を基準として左右の各荷重が占める割合を、バランス値としてリアルタイムで算出する。
【0026】
たとえば、体重50kgの使用者2の場合に、左脚に掛かる荷重が30kg、右脚に掛かる荷重が20kgであれば、算出部51は、左=60%(=0.6)、右=40%(=0.4)というバランス値を算出する。なお、バランス値にて示される左脚に掛かる荷重の割合と右脚に掛かる荷重の割合との和は、常に100%(=1)になる。
【0027】
指標生成部52は、算出部51で算出されたバランス値に基づいて、指標映像を生成して表示装置3に表示させる。一方、模範生成部53は、記憶部54に記憶されている設定値に従って、模範映像を生成して表示装置3に表示させる。
【0028】
ここでいう指標映像および模範映像は、いずれもバランス値をリアルタイムで表す動画映像であって、本実施形態では、図1に例示するように、左脚に掛かる荷重の割合と右脚に掛かる荷重の割合とを高さで表す棒グラフの映像である。図1の例では、表示面30の左右方向に棒グラフが4本並んで表示されているが、そのうち外側の2本の棒グラフが指標映像31であって、内側の2本は模範映像32である。ここで、使用者2が指標映像31と模範映像32とを容易に区別可能となるように、たとえば指標映像31の棒グラフは白色で表示され、模範映像32の棒グラフは橙色で表示される。
【0029】
すなわち、指標映像31および模範映像32は、左脚と右脚に対応するように棒グラフを一対ずつ含んでおり、それぞれ縦長の長方形状の枠内に表示された棒グラフの高さによって、100%を上限に左右の各脚に掛かる荷重の全体重に占める割合を示している。本実施形態では、表示面30の左端に表示される棒グラフが左脚、右端に表示される棒グラフが右脚に対応しており、指標映像31および模範映像32は左右の各脚に掛かる荷重の割合を1%刻みで各棒グラフの高さに反映している。
【0030】
したがって、たとえば使用者2が左脚から右脚に重心を移すように重心移動を行った場合、指標映像31は、重心移動に伴って左脚に対応する棒グラフが徐々に低くなり右脚に対応する棒グラフが徐々に高くなるように変化する。これに対して、模範映像32は、使用者2の動きには関係なく、所定の周期で左右の棒グラフが交互に高くなるように変化することにより、使用者2の重心移動の模範となるバランス値の周期的な変化を表す。
【0031】
記憶部54には、模範映像32の動きを決める設定値として、周期と運動強度と運動時間とが予め記憶されている。ここでいう周期はバランス値の変化の周期を表しており、運動強度は左右の各脚に掛かる荷重の割合の最大値(つまり棒グラフの最大値)を表しており、運動時間は使用者2に運動をさせる時間を表している。これらの設定値は、制御装置5の入力部となる入力インタフェース(キーボード等)を用いて外部から任意に設定され、記憶部54に予め記憶されている。なお、運動強度は、ここでは左脚と右脚とで別々の値が設定されてもよい。
【0032】
模範生成部53は、記憶部54に記憶されている周期と運動強度とによって決定されるバランス値の変化のパターンを示す模範映像32を生成し、この模範映像32を運動時間に亘って表示装置3に表示させる。本実施形態においては、模範生成部53は、棒グラフの高さの時間変化が正弦波状となるようなパターンで変化する模範映像32を生成する。
【0033】
なお、図1の例では、運動強度33、周期(周波数)34、運動時間35がそれぞれ表示面30における指標映像31、模範映像32の上方に表示され、残り時間36が指標映像31、模範映像32の下方に表示されている。ここでいう残り時間は、運動時間から経過時間を差し引いた時間である。これらの情報が表示されることにより、使用者2は模範映像32中の棒グラフの変化によって示される運動のパターンを定量的に認識することができる。
【0034】
上述したように指標映像31と模範映像32とが表示装置3に表示されることにより、使用者2に対して、模範映像32中の棒グラフの動きを指標映像31で追従するように、左右の各脚に掛かる荷重の割合を変化させるための重心移動を行わせることができる。すなわち、使用者2は、模範映像32中の棒グラフの動きに合わせて左右の各脚に掛かる荷重の割合を変化させるべく重心移動を行うことができる。ここで、算出部51で算出されたバランス値が、模範映像32の表すバランス値を中心とする所定の許容範囲(たとえば±3%)に入ると、模範生成部53がたとえば棒グラフの表示色を変化させるなどして使用者2に通知するようにしてもよい。
【0035】
ところで、本実施形態の重心移動訓練システム1は、模範映像32と指標映像31との間でバランス値が変化するタイミングのずれを評価する評価部55と、評価部55の評価結果を提示する提示部56とを、制御装置5にさらに有している。
【0036】
すなわち、評価部55は、使用者2の重心移動に伴うバランス値の変化を示す指標映像31と、重心移動の模範となるバランス値の周期的な変化を示す模範映像32とを対比して、両者間でバランス値の変化のタイミングのずれを評価する。この評価結果は、模範映像32にて示される模範的な重心移動に対する、指標映像31によって示される実際の使用者2の重心移動の追従性を表しており、ずれが小さいほど追従性が高いことを表す。
【0037】
具体的に説明すると、評価部55は、所定のサンプリング周期(たとえば100msec)で、一方の脚(たとえば右脚)に掛かる荷重の全体重に占める割合について、模範映像32が示す値と指標映像31が示す値との差分を算出する。このようにして算出される差分には、その大きさに応じた点数が予め割り当てられており、評価部55は、差分を算出する度に当該差分に対応する点数を加算していき、最終的に求まった合計点数を評価点とする。このようにして求まる評価点は、差分が小さい(つまりずれが小さい)ほど高得点となるように割り当てられている。
【0038】
要するに、本実施形態では、評価部55は模範映像32と指標映像31との間で同一タイミングにおけるバランス値の差を評価対象に含み、模範映像32と指標映像31とのずれを評価する。これにより、評価部55では、たとえば模範映像32と指標映像31とで、バランス値の変化のタイミングだけは合っているものの、バランス値の大きさがずれているような場合に、その大きさのずれをも評価することができる。その結果、評価部55は、模範映像32にて示される模範的な重心移動と、指標映像31によって示される実際の使用者2の重心移動とのずれを厳密に評価することができるという利点がある。
【0039】
ただし、評価部55が行う評価の方法は上述した方法に限らず、模範映像32と指標映像31との間でバランス値が変化するタイミングのずれを評価できる方法であればよい。たとえば、評価部55は、所定のサンプリング周期ごとに算出した差分の累計を求め、求まった累計値を点数に換算することにより評価点を求めてもよい。
【0040】
また、同一タイミングにおけるバランス値の差を評価対象に含まない場合でも、評価部55は、模範映像32と指標映像31との間でバランス値が変化するタイミングのずれを評価することができる。つまり、評価部55は、たとえば模範映像32と指標映像31との各々から一方の脚(たとえば右脚)に掛かる荷重の全体重に占める割合の極大点(または極小点)を抽出し、時間軸方向における極大点(または極小点)のずれを数値化することで評価できる。
【0041】
提示部56は、このようにして評価部55で為された模範映像32と指標映像31とのタイミングのずれの評価結果を使用者2に提示する。具体的には、提示部56は、評価部55の評価結果を音声や光等で使用者2に提示する。あるいは、評価部55の評価結果を表示装置3に表示させる構成とし、表示装置3が提示部として兼用されてもよい。表示装置3が提示部として兼用される場合、訓練時間の終了後、表示面30に評価結果を示すメッセージが表示される構成とすることが考えられる。
【0042】
提示部56が提示する内容は、ずれの程度を数値化して定量的に表す評価点であってもよいし、評価点を複数の段階に分けてランク付けした結果であってもよい。評価部55により、たとえば右脚側に重心を移動させる際に大きくずれているといったずれの傾向が判断されている場合には、この判断結果に応じたアドバイスを提示部56が提示してもよい。
【0043】
次に、上述した重心移動訓練システムを用いて使用者2が重心移動の訓練を行う例について説明する。
【0044】
制御装置5は、入力インタフェースに対し訓練を開始する所定の操作が為されると、タイマ(図示せず)にて運動時間の計時を開始するとともに、指標映像31および模範映像32を表示装置3に表示させる。使用者2は、指標映像31と模範映像32とを見ながら、指標映像31の棒グラフの動きを模範映像32に合わせるように、重心移動を行うことで、正しい重心移動の運動を行うことができる。
【0045】
運動時間が終了すると、制御装置5は、指標映像31および模範映像32の表示を終了するとともに、評価部55にて模範映像32と指標映像31とのタイミングのずれを評価し、提示部56にて評価結果を使用者2に提示する。この状態で、入力インタフェースに対し訓練を開始する所定の操作が為されると、制御装置5は再度、運動時間の計時を開始するとともに、指標映像31および模範映像32を表示装置3に表示させる。
【0046】
以上説明した構成の重心移動訓練システム1によれば、使用者2は、模範映像32に指標映像31を合わせるように重心移動を行うことにより、模範映像32にて模範される正しい重心移動を習得することができる。ここで、使用者2は、周期的に変化する重心位置に合わせて重心移動を行うことができるように訓練することは、スムーズな重心移動を習得することに直結する。そのため、使用者2は、ゲームを楽しんでいるような感覚で身体を動かすだけで、歩行などに必要なスムーズな重心移動を習得するための訓練を行うことができる。このような訓練を行うことにより、使用者2は瞬発力も鍛えられることになり、歩行時の転倒防止などにもつながる。
【0047】
しかも、評価部55は、模範映像32と指標映像31とのタイミングのずれから、模範映像32にて示される模範的な重心移動に対する実際の使用者2の重心移動の追従性を評価し、その評価結果は提示部56から使用者2にフィードバックされる。したがって、使用者2は、自身がスムーズに重心移動できているか否かの評価結果に基づいて、重心移動訓練の必要性や効果を十分に理解することができる。
【0048】
また、本実施形態の重心移動訓練システム1では、使用者2は、ハーフミラー6に映る自身の鏡像を見ながら運動することができるので、自身がどのような姿勢のときにどのように重心が移動するのかということを視覚的に学習することができる。そのため、使用者2は、訓練を行う中で、たとえば右脚に荷重を掛ける場合には身体をどのように傾ければよいか等、重心移動に必要な身体の動きを習得することができるという利点がある。
【0049】
ところで、制御装置5は、記憶部54に記憶されている模範映像32の動きを決めるための設定値を、評価部55の評価結果に応じて自動的に変更する設定更新部(図示せず)を有していてもよい。この構成では、模範生成部53は、評価部55の評価結果に応じて模範映像32の内容を変更することになる。
【0050】
つまり、評価部55にて高い評価が得られた場合(ずれが小さい場合)、設定更新部は、模範映像32が示す重心移動の難易度を上げるべく、設定値の周期を短くしたり、運動強度を上げたりする。一方、評価部55にて低い評価が得られた場合(ずれが大きい場合)、設定更新部は、模範映像32が示す重心移動の難易度を下げるべく、設定値の周期を長くしたり、運動強度を下げたりする。
【0051】
その結果、重心移動訓練システム1は、使用者2の重心移動の能力に合った難易度の訓練を使用者2に受けさせることができ、使用者2に過度な負担を与えることなく、適切な運動を行わせることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、指標映像31および模範映像32として、棒グラフの映像を例示したが、この例に限らず、たとえば真上を指した基準位置から左右に振れるように回動する針の映像などであってもよい。
【0053】
(実施形態2)
本実施形態の重心移動訓練システム1は、ハーフミラーを備えていない点が実施形態1の重心移動訓練システム1と相違する。また、本実施形態では、使用者2の前方に配置され使用者2を前方から撮像する向きにレンズが向けられた撮像装置(図示せず)が設けられている。
【0054】
撮像装置は、たとえばカメラスタンド等を利用して表示装置3の正面側(使用者2側)における使用者2の目の高さ位置に設置されている。さらに、撮像装置は、その視野内に使用者2の全身が含まれ、且つ使用者2が直立した状態で使用者2の身体の左右方向における中心線が撮像した映像の左右方向の中心線に一致するように、チルト角およびパン角が調節されている。
【0055】
上述したような撮像装置の位置および向きの調節は、使用者2の立ち位置、目線の高さ等が決定してから初期設定として行われる。これにより、撮像装置では、使用者2の全身を映した動画像(以下、「全身映像」という)が撮像されることになる。
【0056】
制御装置5は、表示装置3と撮像装置との両方に接続されており、撮像装置で撮像された映像を加工して表示装置3に表示させる機能を持つ。具体的には、制御装置5は、全身映像を撮像装置から取得し、取得した全身映像を左右反転させて反転映像を生成する反転処理部(図示せず)を有する。さらに、制御装置5は、反転映像の左右方向の中心線が表示面30の左右方向の中心線に一致するように、反転映像を表示装置3に表示させる。これにより、表示装置3の表示面30には、使用者2の全身の映像が、鏡に映った鏡像のように左右反転されて表示されることになる。
【0057】
すなわち、撮像装置で撮像される映像は、何の加工も施されなければ、鏡像のように左右が反転されることはなく、表示面30に正対する使用者2から見た左右と、表示面30に表示される映像における左右とは反対になる。要するに、撮像装置で撮像された使用者2の全身の映像が、何の加工も施されずに、使用者2と正対する表示装置3の表示面30に表示されると、表示面30上では右側に使用者2の左半身が映り、左側に使用者2の右半身が映ることになる。
【0058】
これに対して、反転映像は全身映像を左右反転させた映像であるから、表示装置3は、表示面30上では右側に使用者2の右半身が映り、左側に使用者2の左半身が映るように反転映像を表示する。その結果、表示装置3は、表示面30に映る反転映像を使用者2に視認させることにより、使用者2に対して、反転映像を自らの全身の鏡像と錯覚させることができる。
【0059】
ここで、制御装置5は、撮像装置から入力される映像をリアルタイム(1秒間に15〜30フレーム程度)で加工(反転)して、表示装置3に映像信号を出力する。表示装置3は、制御装置5からの映像信号を受け、リアルタイムで反転映像を表示する。そのため、表示装置3の表示面30には、実際の使用者2の動きに合わせて動く動画像が反転映像として表示されることになる。たとえば、使用者2が右腕を上げると、その動きに合わせて表示面30に表示される反転映像においても使用者2から見て右側の腕が上がることになる。
【0060】
すなわち、本実施形態の重心移動訓練システム1は、光学的に形成される鏡像を提示することはなく、表示装置3に表示された反転映像を使用者2に視認させ、使用者2に対して、反転映像を自身の鏡像と錯覚させることができる。
【0061】
さらに、指標生成部52および模範生成部53は、反転処理部で生成された反転映像と共に、指標映像31および模範映像32を表示装置3に表示させる。反転映像は指標映像31および模範映像32と重なるように表示されてもよいが、この場合、反転映像は半透明(たとえば透過率50%)の映像として表示されることが望ましい。
【0062】
以上説明した本実施形態の重心移動訓練システム1によれば、ハーフミラーを省略した分だけ、実施形態1のシステムに比べて構成を簡略化できるという利点がある。しかも、本実施形態の構成では、比較的大型の画面を備えるディスプレイが予め備わっていれば、専用のディスプレイを新設しなくても、既存のディスプレイを表示装置3として用いることが可能であるため、システムの導入コストを低減できる。
【0063】
なお、使用者2自身の重心移動は指標映像31にて使用者2に提示されているので、使用者2が自身の像(鏡像)を見ながら運動できることは必須ではなく、反転映像を表示する機能は省略されていてもよい。
【0064】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0065】
ところで、上記各実施形態では、算出部51は使用者2の左右の荷重の比率をバランス値として求め、評価部55においてもこのバランス値に基づいて重心移動のずれが評価される例を示したが、この例に限らず、バランス値は使用者2の前後の荷重の比率でもよい。この場合、重心移動訓練システム1は、重心位置を前後方向に交互に移動させるような重心移動を行う訓練に用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 重心移動訓練システム
2 使用者
3 表示装置
4 測定装置
5 制御装置
6 ハーフミラー
30 表示面
31 指標映像
32 模範映像
51 算出部
52 指標生成部
53 模範生成部
54 記憶部
55 評価部
56 提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面に映像を表示する表示装置と、前記表示装置に映像を表示させる制御装置と、前記表示面と向き合う使用者の足元に配置され水平面内での前記使用者の荷重の分布を測定する測定装置とを備え、
前記制御装置は、前記測定装置の測定結果に基づいて前記使用者の左右または前後の荷重の比率を表すバランス値を算出する算出部と、前記使用者の重心移動に伴う前記バランス値の変化を示す指標映像を生成し前記表示装置に表示させる指標生成部と、前記重心移動の模範となる前記バランス値の周期的な変化を示す模範映像を生成し前記表示装置に表示させる模範生成部と、前記模範映像と前記指標映像との間で前記バランス値が変化するタイミングのずれを評価する評価部と、前記評価部の評価結果を提示する提示部とを有することを特徴とする重心移動訓練システム。
【請求項2】
前記評価部は、前記模範映像と前記指標映像との間で同一タイミングにおける前記バランス値の差を評価対象に含むことを特徴とする請求項1記載の重心移動訓練システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記模範映像の動きを決めるための設定値を記憶する記憶部と、前記記憶部内の前記設定値を前記評価部の評価結果に応じて変更する設定更新部とをさらに有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の重心移動訓練システム。
【請求項4】
前記表示面に対して前記使用者側に配置され、前記表示面に表示される映像を透過させるとともに前記使用者の鏡像を映すハーフミラーをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の重心移動訓練システム。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−70802(P2012−70802A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216221(P2010−216221)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】