説明

重心高さ測定装置

【課題】測定対象物の重心高さを定位置で測定することができる重心高さ測定装置を提供する。
【解決手段】荷重を検出する複数のロードセル11〜14と、ロードセル11〜14によって支持され、重心高さの測定対象物4を載せる載台5と、測定対象物4が載せられた載台5を水平方向に自由振動させる振動発生手段(18,19,21,23,24)と、自由振動状態にある載台5の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段(30,31)と、ロードセル11〜14からの検出信号と振動状態量検出手段(30,31)からの検出信号とに基づいて測定対象物4の重心高さを演算する演算手段(50,51)とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば貨物トラックの重心高さを測定する重心高さ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、貨物トラックの横転による大事故がしばしば発生している。積荷の関係等で貨物トラックの重心位置が高くなると、低速走行でも曲路で横転する可能性が高くなる。貨物トラックの横転を防止する上で、貨物トラックの重心高さの測定が重要となる。
【0003】
貨物トラックの重心高さの測定に資するものとして、例えば特許文献1にて提案されている技術がある。この特許文献1に係る技術においては、貨物トラックの荷台に取り付けた荷重センサや加速度センサ、傾斜センサなどからの信号に基づいて、積み荷を含む荷台の重心高さを求めるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−97072号公報
【0005】
ところで、特許文献1に係る技術において、荷台の重心高さを求める上で必要とされる加速度センサや傾斜センサなどからの信号は、貨物トラックが曲路または傾斜路を走行することで得られるものとなっている。
【0006】
このため、特許文献1に係る技術では、貨物トラックが曲路または傾斜路を走行しない限り重心高さを測定することができない。したがって、重心高さが未知のままでの曲路走行等が実施されることになり、安全性の観点から好ましくないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、測定対象物の重心高さを定位置で測定することができる重心高さ測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による重心高さ測定装置は、
荷重を検出する複数のロードセルと、
前記ロードセルによって支持され、重心高さの測定対象物を載せる載台と、
測定対象物が載せられた前記載台を水平方向に自由振動させる振動発生手段と、
自由振動状態にある前記載台の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段と、
前記ロードセルからの検出信号と前記振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて測定対象物の重心高さを演算する演算手段と
を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記振動発生手段は、前記載台に対し水平方向の力を与えるアクチュエータと、前記載台の水平方向の変位に対して復元力を発生する復元力発生機構とを備えてなるものとすることができる(第2発明)。
【0010】
本発明において、前記測定対象物は、荷物を載せた車両であり、前記振動発生手段は、前記載台に進入した前記車両が停止する際にその車両から受ける力を利用して前記載台に対し自由振動を特定方向に与えるリンクと、前記載台の水平方向の変位に対して復元力を発生する復元力発生機構とを備えてなるものとすることができる(第3発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の重心高さ測定装置においては、ロードセルによって支持される載台に測定対象物が載せられる。測定対象物が載せられた載台は、振動発生手段によって水平方向に自由振動状態とされる。自由振動状態にある載台の変位および加速度のいずれか一方または両方は、振動状態量検出手段によって検出される。ロードセルからの検出信号と振動状態量検出手段からの検出信号とに基づく演算が演算手段によって実行され、測定対象物の重心高さが求められる。
本発明の重心高さ測定装置によれば、測定対象物が載せられた載台を水平方向に自由振動させることにより、重心高さを求める上で必要とされる載台の変位および加速度のいずれか一方または両方が得られるので、測定対象物の重心高さを定位置で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る重心高さ測定装置の平面図(a)および(a)のA−A線矢視図(b)
【図2】図1(a)のB−B線矢視図
【図3】載台の支持構造の説明図
【図4】復元力の発生の理論説明図
【図5】重心高さ測定装置の制御系の概略システム構成図
【図6】制御装置の機能ブロック図
【図7】重心高さの求め方の理論説明図(1)
【図8】重心高さの求め方の理論説明図(2)
【図9】第1の実施形態の重心高さ測定装置で実行される重心高さ測定プログラムの処理内容を説明するフローチャート
【図10】第1の実施形態の重心高さ測定装置の計測動作のタイムチャート
【図11】本発明の第2の実施形態に係る重心高さ測定装置の要部構造説明図(a)および載台の変位拘束の理論説明図(b)
【図12】制御装置の機能ブロック図
【図13】第2の実施形態の重心高さ測定装置で実行される重心高さ測定プログラムの処理内容を説明するフローチャート
【図14】第2の実施形態の重心高さ測定装置の計測動作のタイムチャート
【図15】載台支持構造の他の態様例の説明図(1)で、正面図(a)、(a)のC−C線断面図(b)および(a)のD部拡大図(c)
【図16】載台支持構造の他の態様例の説明図(2)で、正面図(a)、(a)のE−E線断面図(b)および(a)のF部拡大図(c)
【図17】載台支持構造の他の態様例の説明図(3)で、正面図(a)、(a)のG−G線断面図(b)
【図18】図15に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルを表わす図(a)および図16に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルを表わす図(b)
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による重心高さ測定装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
〔第1の実施形態〕
<重心高さ測定装置の概略構成の説明>
図1および図2に示されるように、重心高さ測定装置1は、設置ベース2上に組み付けられた計量台3を備えている。計量台3は、重心高さの測定の対象である測定対象物4(本例では、貨物トラック)が載ることのできる四角形の板状部材からなる載台5と、この載台5の四隅を下方から支持する4個のロードセル11,12,13,14とにより構成されている。
重心高さ測定装置1は、貨物トラック(測定対象物4)の重量を測定する装置(トラックスケール)と、貨物トラック(測定対象物4)の重心高さを測定する装置とを兼ねるものである。
なお、設置ベース2としては、例えば地表面を掘り下げて形成されるピットや、地表面上に敷設される床部材などが挙げられる。また、測定対象物4としては、コンテナ貨物等の荷物を積んだ貨物トラック以外に、コンテナ貨物単体など荷物だけの場合もあり得る。
【0015】
<ロードセルの基本構造の説明>
図3に示されるように、ロードセル11〜14は、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型ロードセルであり、弾性体15と、密封ケーシング16とを備えている。
弾性体15は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属製で略円柱形状に形成され、その軸線を鉛直方向に向けて起立配置されている。
弾性体15は、軸線方向中央部に形成される起歪部17と、上端に形成される上側凸面18と、下端に形成される下側凸面19とを有している。上側凸面18および下側凸面19はいずれも、所定の曲率半径Rの部分球面形状に形成されている。
弾性体15は、起歪部17が密封ケーシング16内に気密に収められ、上端部および下端部がそれぞれ密封ケーシング16から露出させた状態で密封ケーシング16に組み込まれている。
【0016】
<ロードセルの上側受け部材および下側受け部材の説明>
弾性体15の上端部と載台5との間には、上側受け部材20が介在されている。上側受け部材20は、水平座面21を有し、この水平座面21を弾性体15の上側凸面18に接触させた状態で載台5に固定されている。
弾性体15の下端部と設置ベース2との間には、下側受け部材22が介在されている。下側受け部材22は、水平座面23を有し、この水平座面23を弾性体15の下側凸面19に接触させた状態で設置ベース2に固定されている。
【0017】
<復元力発生機構の基本構成の説明>
復元力発生機構は、弾性体15の上側凸面18および上側受け部材20の水平座面21と、弾性体15の下側凸面19および下側受け部材22の水平座面23とにより構成されている。復元力発生機構は、載台5の水平方向の変位yに対して復元力Fを発生する。この復元力Fについて、図4を用いて以下に説明する。
【0018】
<復元力の発生の理論説明>
図4には、載台5の水平方向の変位yに伴ってロードセル11〜14の弾性体15が垂直状態から横方向にyだけ移動してθだけ傾斜した状態が示されている。図中記号を以下のように定める。
:弾性体15の上部の移動量
S:弾性体15の上部と下部の接触点長さ
H:弾性体15の高さ(ロードセル11〜14の高さ)
A:上側凸面18の曲率半径(=R)
B:下側凸面19の曲率半径(=R)
N:弾性体15に作用する垂直荷重
θ:弾性体15の傾斜角
【0019】
図4において、弾性体15の傾斜角θの値が微小であるならば、次式(1)が成立する。

tanθ≒y/H ・・・(1)

また、弾性体15の上部と下部の接触点長さSは、次式(2)で表わすことができる。

S≒A・tanθ+(B−H)tanθ
=(A+B−H)・y/H ・・・(2)

そして、垂直荷重Nと復元力Fとの比Kは、次式(3)で表わすことができる。

K=F/N≒S/H=(A+B−H)・y/H ・・・(3)

上記式(3)より復元力Fは、次式(4)で表わすことができる。

F=N・(A+B−H)・y/H ・・・(4)
【0020】
<自由振動の初期条件を与えるアクチュエータの説明>
図2に示されるように、載台5におけるロードセル13,14が設置されている側の近傍には、油圧シリンダ24が配置されている。油圧シリンダ24は、伸長作動時にピストンロッド25で載台5の側面を押して、載台5に対し水平方向の力を加えることにより、載台5に水平方向の変位と速度を与えることができようになっている。油圧シリンダ24は、載台5に対し自由振動の初期条件を与えるアクチュエータとして機能する。なお、油圧シリンダ24に代えて、例えば空圧シリンダや磁性流体シリンダなどを用いることもできる。
ここで、「初期条件」とは、「初期変位」と「初期速度」とを含む概念であり、これらを総称するものである。
【0021】
<油圧シリンダの油圧回路の説明>
油圧シリンダ24は、電磁弁26を介して油圧ポンプ27に接続されている。油圧ポンプ27が電動モータ28の作動によって駆動されると、油圧ポンプ27からの圧油が電磁弁26の切換動作に応じて油圧シリンダ24のヘッド側油室またはボトム側油室に供給されるようになっている。
【0022】
<油圧シリンダの作動説明>
油圧シリンダ24の伸長指令を示すバルブ切換信号が後述する制御装置40から電磁弁26に送信されると、電磁弁26はそのバルブ切換信号に応じて次のような油路切換動作を実行する。すなわち、電磁弁26は、油圧ポンプ27からの圧油を油圧シリンダ24のボトム側油室に供給すると同時に、油圧シリンダ24のヘッド側油室の内部の油をタンク29に還流させるような油路の切り換えを行う。これにより、油圧シリンダ24が伸長作動され、載台5の側面がピストンロッド25に押されて載台5に水平方向の変位と速度が与えられる。
これに対し、油圧シリンダ24の収縮指令を示すバルブ切換信号が後述する制御装置40から電磁弁26に送信されると、電磁弁26はそのバルブ切換信号に応じて次のような油路切換動作を実行する。すなわち、電磁弁26は、油圧ポンプ27からの圧油を油圧シリンダ24のヘッド側油室に供給すると同時に、油圧シリンダ24のボトム側油室の内部の油をタンク29に還流させるような油路の切り換えを行う。これにより、油圧シリンダ24が収縮作動され、載台5とピストンロッド25との接触が解除される。
【0023】
<載台の自由振動の説明>
載台5を水平方向(y方向)に自由振動させるために、まず油圧シリンダ24の伸長・収縮動作により、載台5に初期条件(初期変位と初期速度)を与える。載台5には、水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。こうして、載台5の水平方向の変位に対して復元力Fを作用させることで、載台5を水平方向に自由振動させることができる。
【0024】
<変位センサの説明>
載台5におけるロードセル11,12が設置されている側の近傍には、油圧シリンダ24と対向するように変位センサ30が配置されている。変位センサ30は、自由振動状態にある載台5の変位を検出する変位検出手段として機能する。なお、変位センサ30としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば光学式変位センサ、渦電流式変位センサ、差動変圧式変位センサなどが挙げられる。
【0025】
<加速度センサの説明>
載台5におけるロードセル11,12が設置されている側の近傍には、油圧シリンダ24と対向するように加速度センサ31が配置されている。加速度センサ31は、自由振動状態にある載台5の加速度を検出する加速度検出手段として機能する。なお、加速度センサ31としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば静電容量形加速度センサや、金属ひずみゲージ式加速度センサ、半導体ひずみゲージ式加速度センサ、圧電式加速度センサなどが挙げられる。
【0026】
<重心高さ測定装置の制御系のシステム構成の説明>
図5に示されるように、重心高さ測定装置1は、制御装置40と、操作装置41と、表示装置42とを備えている。
【0027】
<制御装置の概略説明>
制御装置40は、主として、増幅器43と、ローパスフィルタ44と、マルチプレクサ45と、A/D変換器46と、I/O回路47と、メモリ48と、マイクロプロセッサ(MPU)49とにより構成されている。
増幅器43は、送り込まれる信号をA/D変換可能な大きさに増幅して送り出す機能を有している。
ローパスフィルタ44は、低域周波数のみを信号として通過させる機能を有している。
マルチプレクサ45は、送り込まれる複数の信号を選択制御信号の指令に基づいて選択的に送り出す機能を有している。
A/D変換器46は、マルチプレクサ45からのアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有している。
I/O回路47は、A/D変換器46と、操作装置41と、表示装置42と、メモリ48と、MPU49との間で各種の信号やデータの受け渡しを行う機能を有している。
メモリ48は、PROMやRAMなどで構成され、所定プログラムや基本データなどを長期的に記憶したり、種々のデータや演算用数値などを一時的に記憶したりする機能を有している。
MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムの指示に従って、必要な信号をI/O回路47を介して受け取り、また必要なデータをメモリ48から受け取り、受け取った信号やデータに基づいて演算を実行する機能を有している。
【0028】
<操作装置の概略説明>
操作装置41は、操作スイッチや数値キーなどを備えてなり、測定開始・終了の動作や零点調整動作、使用モードの切り換え動作、数値設定動作などの種々の動作の際に用いられる。
【0029】
<表示装置の概略説明>
表示装置42は、例えば液晶ディスプレイからなり、測定結果や各種データの入出力画面などが表示される。
【0030】
<重心高さ測定装置の制御系システムの処理動作の概略説明>
重心高さ測定装置1の制御系システムにおいては、ロードセル11〜14、変位センサ30および加速度センサ31のそれぞれの信号は、増幅器43、ローパスフィルタ44、マルチプレクサ45、A/D変換器46およびI/O回路47を経由してMPU49に送られる。MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムに従って、I/O回路47からの信号を取り込み、またメモリ48に記憶されている種々のデータを読み込み、これらの信号やデータに基づいて測定対象物4の平面的重心座標の演算や重心高さの演算を実行する。そして、その演算結果は表示装置42に表示される。
【0031】
<MPUの機能説明>
MPU49においては、所定プログラムが実行されることにより、図6に示される平面的重心座標演算部50および重心高さ演算部51のそれぞれの機能が実現される。
【0032】
<重心Gの平面座標(x,y)の求め方の理論説明>
次に、図7および図8を用いて、測定対象物4の平面的重心座標、すなわち載台5に載せられた測定対象物4の重心Gを水平面(o−xy平面)に射影したときのその面上における重心Gの座標(x,y)の求め方について説明する。
なお、理論説明の簡単化のために、載台5は密度が一定の直方体と仮定する。座標系o−xyzの原点は載台5の中央にとる。ロードセル11〜14のそれぞれの出力は無負荷時において零に調整されているものとする。図7および図8中の記号および理論式で用いる記号の意味を下記のとおり定義する。
G:測定対象物4の重心
:載台5の重心
a:ロードセル11(13)とロードセル12(14)との間の距離
b:ロードセル11(12)とロードセル13(14)との間の距離
c:載台5の高さ
H:ロードセル11〜14の高さ(弾性体15の高さ)
:各ロードセル11〜14に作用する静荷重(i=1,2,3,4)
W:測定対象物4の自重(=W+W+W+W
12:W+W
24:W+W
なお、上記記号のうち、a,b,c,H,Rは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0033】
<重心Gの平面座標(x,y)の求め方の理論説明>
モーメントのつりあい条件として次式(5),(6)が成り立つ。

24a−W・(a/2+x)=0 ・・・(5)
12b−W・(b/2+y)=0 ・・・(6)

上記式(5),(6)より次式(7),(8)が得られる。

=a・(W24/W−1/2) ・・・(7)
=b・(W12/W−1/2) ・・・(8)

よって、W24,W12およびWの測定値を上記式(7),(8)に代入して計算することにより、重心Gの平面座標(x,y)を求めることができる。
【0034】
<測定対象物の重心高さhの求め方の理論説明>
次に、測定対象物4の重心高さhの求め方について、主に図8を用いて以下に説明する。以下の理論説明では、測定対象物4が載せられた載台5が自由振動状態にあることが前提となる。油圧シリンダ24にて自由振動の初期条件を与えるとともに、復元力発生機構からの復元力Fを作用させることにより、測定対象物4が載せられた載台5を水平方向(y方向)に自由振動させる。なお、図8では、静止時における測定対象物4の重心Gのy座標yをdで表わしている。また、o−yz座標系は空間に固定した座標系とする。
【0035】
ここで、以下の説明で用いる新しい記号を定義しておく。
(文1)

なお、上記記号のうち、m,eは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0036】
測定対象物4が剛体であるならば、測定対象物4の重心Gと載台5の重心GとのZ方向の相対変位は零である。測定対象物4が非剛体の場合、その相対変位は零ではないが、その量は微小である。よって、その相対変位の量は以下の運動方程式において無視することとする。すなわち、Z(t)=Z(t)とおく。このとき、系の運動方程式は次式(9),(10)で表わされる。
【数1】

上記式(9),(10)は、測定対象物4が剛体であるか否かとは関係なく成立する。
また、転倒モーメントのつりあい条件として次式(11)を得る。
【0037】
【数2】

ここに、δは、重心Gの重心Gに対するy方向の相対変位である。δは(b/2−d)に比較して微小であるから以下の式変形においては無視する。
【0038】
(文2)

【0039】
【数3】

上記式(12)より、測定対象物4の重心高さhを求める次式(13)が得られる。
【0040】
【数4】

【0041】
前述した復元力Fを求める式(4)において、弾性体15に作用する垂直荷重NはMg(g:重力加速度)、弾性体15の上側凸面18および下側凸面19の曲率半径A,Bはいずれも所定半径Rであるから、ロードセル11〜14によって支持される載台5の復元力Fは、次式(14)で表わすことができる。
【0042】
【数5】

上記式(14)を上記式(13)に代入してhを書き直すと次式(15)となる。
【0043】
【数6】

ただし、kは次式(16)で表わされるものである。
【数7】

(文3)

【0044】
(文4)

ここで、「剛体」とは、外力による変形が全く生じない「完全剛体」と、外力による変形が若干生じてもその変形による重心高さ測定上の影響が極めて少なくて完全剛体と見なしても何ら支障がない「見なし剛体」とを包含するものである。また、「非剛体」とは、外力による変形が生じてその変形の影響が重心高さ測定上無視できない物体を総称して表現したものである。
【0045】
【数8】

【数9】

(文5)

【0046】
<ロードセルで検出される荷重信号の補正の説明>
ところで、載台5の水平方向の自由振動に伴って、ロードセル11〜14は回転振動となる。これにより、ロードセル11〜14の軸方向に作用する荷重は、回転角θの関数となる。今、ロードセル11〜14で検出される荷重W´(t)が上記の軸方向荷重であると仮定する。
【0047】
このとき、W´(t)は次式(18)で表わすことができる。
【数10】

ただし、Fi(t)およびθはそれぞれ次式(19)および式(20)で表わされる。
【数11】

【数12】

ここに、F(t)は、各ロードセル11〜14に生じる復元力Fの符号を逆にしたものである。
上記式(18)により次式(21)が得られる。
【数13】

式(21)によりW(t)がW´(t)とy(t)から求まることがわかる。
なお、傾斜補正の成されたデジタルロードセルを用いる場合は、その出力はW(t)であるから、上述の補正は不要となる。
【0048】
<重心高さ測定装置の計測動作の説明>
以上に述べたように構成される重心高さ測定装置1の計測動作について、主に、図6の機能ブロック図、図9のフローチャートおよび図10のタイムチャートを用いて以下に説明する。なお、図9において記号「S」はステップを表わす。
以下の計測動作説明は、測定対象物4が荷物を載せた車両(貨物トラック)である場合の例である。
【0049】
<ステップS1〜S4の処理内容の説明>
載台5に進入した貨物トラックが停止するまで待機する(S1)。
貨物トラックが停止した時刻tから微小時間Δtだけ経過した時刻(t+Δt)以降において、平面的重心演算部50は、ロードセル11〜14からの静荷重信号W(i=1,2,3,4)を読み込むとともに、読み込んだ静荷重信号Wから測定対象物4の質量(重量)を求める(S2)。
また、平面的重心演算部50は、次式(16)に基づいてkを演算する(S3)とともに、次式(7),(8)に基づいて測定対象物4の重心Gの平面座標(x,y)を算出する(S4)。
【数14】

=a・(W24/W−1/2) ・・・(7)
=b・(W12/W−1/2) ・・・(8)
【0050】
<ステップS5の処理内容の説明>
時刻tにおいて、制御装置40(I/O回路47)は、油圧シリンダ24の伸長作動を示すバルブ切換信号を電磁弁26に送信する。これにより、油圧シリンダ24が伸長作動され、載台5の側面がピストンロッド25に押されて載台5に水平方向の変位と速度が与えられる。その後、あらかじめ定められた変位において、制御装置40は、油圧シリンダ24の収縮作動を示すバルブ切換信号を電磁弁26に送信する。これにより、油圧シリンダ24が収縮作動され、載台5とピストンロッド25との接触が解除され、載台5に自由振動の初期条件が与えられる。そして、載台5には水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用するため、載台5は水平方向(y方向)に自由振動する。
【0051】
<ステップS6,S7の処理内容の説明>
(文6)

【0052】
<ステップS8の処理内容の説明>
載台5が静止した時刻t以降から時刻tの間において、重心高さ演算部51は、ステップS2で取得した静荷重信号WとステップS6で収得した動荷重信号W(t)とに基づいてΔW(t)およびΔW34(t)をそれぞれ演算する。
【0053】
<ステップS9の処理内容の説明>
時刻t以降から時刻tの間において、重心高さ演算部51は、次式(15)に基づいて測定対象物4の重心Gの重心高さhを演算する。なお、hの測定値は、あらかじめ定めた時間区間内の各サンプリング時刻において式(15)で計算されたhの平均値とする。
【数15】

【0054】
<ステップS10の処理内容の説明>
そして、制御装置40(I/O回路47)は、ステップS9の演算の結果得られた重心高さhの値を表示させる表示信号を表示装置42に送信する。これにより、ステップS9の演算で求められた重心高さhの値が表示装置42に表示される。
【0055】
<第1の実施形態の重心高さ測定装置の作用効果の説明>
第1の実施形態の重心高さ測定装置1によれば、貨物トラック(測定対象物4)が載せられた載台5を水平方向に自由振動させることにより、貨物トラックの重心高さを求める上で必要とされる載台5の水平方向の変位と加速度とが得られるので、貨物トラックの重心高さを定位置で測定することができる。
【0056】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る重心高さ測定装置について図11〜図14を用いて説明する。なお、第2の実施形態の重心高さ測定装置1Aにおいて、第1の実施形態の重心高さ測定装置1と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第1の実施形態の重心高さ測定装置1と異なる点を中心に説明することとする。
【0057】
<第1の実施形態の重心高さ測定装置と異なる点の概略説明>
第2の実施形態の重心高さ測定装置1Aにおいては、第1の実施形態の重心高さ測定装置1において設けられている油圧シリンダ24に代えて、図11(a)に示されるように、載台5と設置ベース2とを連結する所要のリンク55が設けられている。
【0058】
<リンクの配置とそのリンクによる載台の変位の拘束の説明>
リンク55は、図11(b)に示されるように、x座標軸に対しθの傾きを持って配置されている。このリンク55により、載台5のx方向とy方向の変位x,yは、次式(22)で示されるような関係に拘束される。

=αx,α=1/tanθ(既知) ・・・(22)
【0059】
<載台の自由振動の説明>
リンク55は、x軸の正方向に走行している貨物トラック(測定対象物4)が載台5に進入し程なくして停止する際に、その貨物トラックから受ける力を利用して載台5の自由振動の方向を、リンク55と直角を成す水平方向(特定方向u)に拘束する(図11(b)参照)。載台5には、u方向変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。こうして、載台5の水平方向(u方向)の変位に対して復元力Fを作用させることで、載台5を水平方向(u方向)に自由振動させることができる。
【0060】
<測定対象物の重心高さhの求め方の理論説明>
載台5の自由振動が水平方向(u方向)に拘束されているとき、y方向の振動成分によりロードセル11〜14に作用する力を、添字yを付してΔW(t)(=ΔW1y(t)+・・・+ΔW4y(t)),ΔW34y(t)(=ΔW3y(t)+ΔW4y(t))と書く。このとき、重心高さhの理論式は、次式(23)で表わされる。
【数16】

上記式(23)において、ΔW(t),ΔW34y(t)は、ロードセル11〜14に生じた荷重変化であるが、自由振動はx方向へも生じているから、ロードセル11〜14で検出される変化量ΔW(t),ΔW34(t)とは異なる。
以下では、ΔW(t)およびΔW34y(t)がそれぞれΔW(t)およびΔW34(t)によって求めることができることを示す。なお、添字xを付す記号はx方向の振動成分によりロードセル11〜14に作用する力を表わすものとする。
【0061】
<ΔW(t)の求め方の理論説明>
ΔW(t)は、ΔW(t)(=ΣΔW(t))を用いて表わすことができる。
すなわち、
【数17】

であり、
ΔW(t)=ΔW(t)+ΔW(t)=(1+1/α)・ΔW(t)
であるから、ΔW(t)は次式(24)で表わすことができる。
ΔW(t)=α・ΔW(t)/(1+α) ・・・(24)
また、ΔW(t)は次式(25)で表わすことができる。
ΔW(t)=ΔW(t)/(1+α) ・・・(25)
【0062】
<ΔW34y(t)の求め方の理論説明>
ΔW34y(t)は、ΔW34(t)とΔW(t)を用いて表わすことができる。
すなわち、
ΔW34(t)=ΔW34x(t)+ΔW34y(t)
であるから、ΔW34y(t)は次式(26)で表わすことができる。
ΔW34y(t)=ΔW34(t)−ΔW34x(t)
≒ΔW34(t)−ΔW(t)/2(∵b/2>>d)
=ΔW34(t)−ΔW(t)/2(1+α) ・・・(26)
【0063】
<重心高さ測定装置の計測動作の説明>
次に、第2の実施形態の重心高さ測定装置1Aの計測動作について、主に、図12の機能ブロック図、図13のフローチャートおよび図14のタイムチャートを用いて以下に説明する。なお、図13において記号「T」はステップを表わす。
以下の計測動作説明は、測定対象物4が荷物を載せた車両(貨物トラック)であり、x軸の正方向に走行している貨物トラックが載台5に進入・停止する際にその貨物トラックの重心高さを測定する場合の例である。
【0064】
<ステップT1の処理内容の説明>
載台5に進入した貨物トラックが停止するまで待機する(T1)。
このとき、リンク55は、貨物トラックが載台5に進入・停止する際にその貨物トラックから受ける力を利用して載台5に対し自由振動を特定方向(u方向)に与える。そして、載台5にはu方向変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用するため、載台5はu方向に自由振動する。
【0065】
<ステップT2,T3の処理内容の説明>
(文7)

【0066】
<ステップT4〜T6の処理内容の説明>
載台5が自由振動状態から静止状態に移行した時刻t以降から時刻tにおいて、平面的重心演算部50は、ロードセル11〜14からの静荷重信号Wを読み込むとともに、読み込んだ静荷重信号Wから測定対象物4の質量(重量)を求める(T4)。
また、平面的重心演算部50は、次式(16)に基づいてkを演算する(T5)とともに、次式(7),(8)に基づいて測定対象物4の重心Gの平面座標(x,y)を算出する(T6)。
【数18】

=a・(W24/W−1/2) ・・・(7)
=b・(W12/W−1/2) ・・・(8)
【0067】
<ステップT7の処理内容の説明>
時刻tから時刻tの間において、重心高さ演算部51は、ステップT4で取得した静荷重信号Wと、メモリ48に記憶されている動荷重信号W(t)とに基づいてΔW(t)およびΔW34(t)をそれぞれ演算する。
【0068】
<ステップT8の処理内容の説明>
時刻tから時刻tの間において、重心高さ演算部51は、次式(23),(24),(26)に基づいて測定対象物4の重心Gの重心高さhを演算する。
【数19】

ΔW(t)=α・ΔW(t)/(1+α) ・・・(24)
ΔW34y(t)=ΔW34(t)−ΔW(t)/2(1+α) ・・・(26)
【0069】
<ステップT9の処理内容の説明>
そして、制御装置40は、ステップT8の演算の結果得られた重心高さhの値を表示させる表示信号を表示装置42に送信する。これにより、ステップT8の演算で求められた重心高さhの値が表示装置42に表示される。
【0070】
<第2の実施形態の重心高さ測定装置の作用効果の説明>
第2の実施形態の重心高さ測定装置1Aによれば、第1の実施形態の重心高さ測定装置1と同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。さらに、第2の実施形態の重心高さ測定装置1Aによれば、貨物トラックが載台5に進入・停止する際に載台5が貨物トラックから受ける力を利用して載台5をリンク55にてu方向に自由振動させるようにされているので、第1の実施形態の重心高さ測定装置1において必要とされる油圧シリンダ24や電磁弁26、油圧ポンプ27、これらを繋ぐ油圧配管、電動モータ28などを省略することができ、装置構成の簡素化を図ることができる。
【0071】
以上、本発明の重心高さ測定装置について、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0072】
<構成変更例の概要説明>
上記各実施形態では、図3に示されるように、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14とそのロードセル11〜14の上側受け部材20および下側受け部材22によって載台5を支持する構造を採用したが、これに限定されるものではなく、図15に示されるような載台支持構造を採用してもよい。
【0073】
<載台支持構造の他の態様例(1)の説明>
図15に示される載台支持構造は、載台5から垂設される一対の脚部材61,61と、一対の脚部材61,61の間に位置するように設置ベース2上に立設される一対の支柱部材62,62と、一対の支柱部材62,62の上端部同士を繋ぐ軸形ロードセル63と、一対の脚部材61,61の下端部同士を繋ぐ下部ピン64と、軸形ロードセル63と下部ピン64とに掛け渡される吊り環部材65とを備えて構成されている。
軸形ロードセル63は、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部66を有している。この窪み部66に吊り環部材65の上部が掛け止められている。また、下部ピン64も同様に、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部67を有している。この窪み部67に吊り環部材65の下部が掛け止められている。
この載台支持構造においては、軸形ロードセル63の軸線回りの振り子の作用により、載台5の前後方向(軸形ロードセル63の軸線と直交する水平方向)の変位に対する復元力が作用する。また、軸形ロードセル63の窪み部66に吊り環部材65の上部が掛け止められているので、吊り環部材65が軸形ロードセル63の軸線方向に移動した際に、吊り環部材65を窪み部66の最低部へと戻す揺り戻し力が作用する。この揺り戻し力の作用により、載台5の左右方向(軸形ロードセル63の軸線方向)の変位に対する復元力が作用する。
【0074】
<載台支持構造の他の態様例(2)の説明>
また、図15に示される載台支持構造に代えて、図16に示される載台支持構造を採用することもできる。
図16に示される載台支持構造においては、載台5から垂設される一対の脚部材61,61と、一対の脚部材61,61の間に位置するように設置ベース2上に立設される一対の支柱部材62,62と、一対の支柱部材62,62の上端部同士を繋ぐ上部ピン68と、一対の脚部材61,61の下端部同士を繋ぐ下部ピン64と、上部ピン68と下部ピン64とに掛け渡される吊り環部材69とを備えて構成されている。
上部ピン68は、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部70を有している。この窪み部70に吊り環部材69の上部が掛け止められている。
吊り環部材69の上下方向中央部には、引張形ロードセル71が介設されている。
この載台支持構造においては、上部ピン68の軸線回りの振り子の作用により、載台5の前後方向(上部ピン68の軸線と直交する水平方向)の変位に対する復元力が作用する。また、上部ピン68の窪み部70に吊り環部材69の上部が掛け止められているので、吊り環部材69が上部ピン68の軸線方向に移動した際に、吊り環部材69を窪み部70の最低部へと戻す揺り戻し力が作用する。この揺り戻し力の作用により、載台5の左右方向(上部ピン68の軸線方向)の変位に対する復元力が作用する。
【0075】
<載台支持構造の他の態様例(3)の説明>
また、図15に示される載台支持構造に代えて、図17に示される載台支持構造を採用することもできる。
図17に示される載台支持構造においては、載台5の下面に固定される上側受け部材81と、設置ベース2上に固定される下側受け部材82と、下側受け部材82上に設置されるロードセル83と、ロードセル83と上側受け部材81との間に配設される鋼球84とを備えて構成されている。
上側受け部材81には、鋼球84との間に介在される上側受け座85が形成されている。上側受け座85は、鋼球84の球面84aと接触される凹座面86を有している。
ロードセル83には、鋼球84との間に介在される下側受け座87が形成されている。下側受け座87は、鋼球84の球面84aと接触される凹座面88を有している。
凹座面86,88の曲率半径は、鋼球84の球面84aの曲率半径よりも大きく設定されている。
復元力発生機構は、鋼球84の球面84aおよび上側受け座85の凹座面86と、鋼球84の球面84aおよび下側受け座87の凹座面88とにより構成され、載台5の水平方向の変位に対して復元力を発生する。
【0076】
<用語の説明>
油圧シリンダ24が本発明の「アクチュエータ」に相当する。
変位センサ30および加速度センサ31を含む構成が本発明の「振動状態量検出手段」に相当する。
平面的重心座標演算部50および重心高さ演算部51を含む構成(MPU49)が本発明の「演算手段」に相当する。
弾性体15の上側凸面18および上側受け部材20の水平座面21と、弾性体15の下側凸面19および下側受け部材22の水平座面23とを含む構成が本発明の「復元力発生機構」に相当する。
脚部材61と、支柱部材62と、軸形ロードセル63と、下部ピン64と、吊り環部材65とを含む構成が本発明の「復元力発生機構」に相当する。
脚部材61と、支柱部材62と、上部ピン68と、下部ピン64と、吊り環部材69とを含む構成が本発明の「復元力発生機構」に相当する。
鋼球84の球面84aおよび上側受け座85の凹座面86と、鋼球84の球面84aおよび下側受け座87の凹座面88とを含む構成が本発明の「復元力発生機構」に相当する。
【0077】
<加速度検出手段の別態様例の説明>
上記実施形態においては、自由振動状態にある載台5の加速度を検出する加速度検出手段として、加速度センサ31を用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、重心高さ演算部51は、変位センサ30の検出信号に基づいて2回微分演算を実行することで、載台5の加速度を求めることができる。この場合、加速度センサ31は不要になる。なお、上記微分演算を重心高さ演算部51に実行させるのではなく、別途に加速度演算部を設け、この加速度演算部に上記微分演算を実行させる態様もあり得る。
【0078】
<動荷重変動ΔW(t)の測定の別態様例の説明>
(文8)

【0079】
<ダブルコンベックス・ローディング方式以外のロードセルを採用した場合の説明>
図3に示されるダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14に代えて、図15に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルは図18(a)に示されるようになる。
この場合の復元力Fは、次式(28)で表わされる。
【数20】

このFを式(13)に代入するにあたり、式(16)と同じようにkとして表わすと、次式(29)で示されるようになる。
【数21】

このkを式(16)に代えて式(15)に用いればよい。なお、軸形ロードセル63は鉛直方向の力を検出するものであるとする。
また、測定対象物4が剛体の場合は、式(17)´のkを式(16)に代えて式(29)を用いればよい。
【0080】
また、図3に示されるダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14に代えて、図16に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルは図18(b)に示されるようになる。
この場合の復元力Fは、次式(30)で表わされる。
F=Mg・y/l ・・・(30)
このFを式(13)に代入するにあたり、式(16)と同じようにkとして表わすと、次式(31)で示されるようになる。
k=Mg/l ・・・(31)
このkを式(16)に代えて式(15)に用いればよい。なお、引張形ロードセル71は傾斜に応じた引張方向の力を検出するものであるとする。
また、測定対象物4が剛体の場合は、式(17)´のkを式(16)に代えて式(31)を用いればよい。
ただし、この場合、引張形ロードセル71は鉛直方向の力を検出していないので、式の中のΔWおよびΔW34の値は次式(32)(33)に示されるように補正演算が必要である。
【数22】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の重心高さ測定装置は、測定対象物の重心高さを定位置で測定することができるという特性を有していることから、コンテナ貨物や貨物トラックの重心高さの測定の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1,1A 重心高さ測定装置
4 測定対象物
5 載台
11〜14 ロードセル
15 弾性体
18 上側凸面
19 下側凸面
20 上側受け部材
21 水平座面
22 下側受け部材
23 水平座面
24 油圧シリンダ
30 変位センサ
31 加速度センサ
50 平面的重心座標演算部
51 重心高さ演算部
55 リンク
61 脚部材
62 支柱部材
63 軸形ロードセル
64 下部ピン
65 吊り環部材
68 上部ピン
69 吊り環部材
71 引張形ロードセル
84 鋼球
84a 球面
85 上側受け座
86 凹座面
87 下側受け座
88 凹座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を検出する複数のロードセルと、
前記ロードセルによって支持され、重心高さの測定対象物を載せる載台と、
測定対象物が載せられた前記載台を水平方向に自由振動させる振動発生手段と、
自由振動状態にある前記載台の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段と、
前記ロードセルからの検出信号と前記振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて測定対象物の重心高さを演算する演算手段と
を備えることを特徴とする重心高さ測定装置。
【請求項2】
前記振動発生手段は、前記載台に対し水平方向の力を与えるアクチュエータと、前記載台の水平方向の変位に対して復元力を発生する復元力発生機構とを備えてなるものである請求項1に記載の重心高さ測定装置。
【請求項3】
前記測定対象物は、荷物を載せた車両であり、
前記振動発生手段は、前記載台に進入した前記車両が停止する際にその車両から受ける力を利用して前記載台に対し自由振動を特定方向に与えるリンクと、前記載台の水平方向の変位に対して復元力を発生する復元力発生機構とを備えてなるものである請求項1に記載の重心高さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−53206(P2011−53206A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173750(P2010−173750)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】