説明

重質油燃焼ボイラ

【課題】重質油燃焼ボイラにおいて、ばいじん濃度を制御することでボイラの燃焼効率の低下を抑制可能とする。
【解決手段】燃料油として使用する重質油をバーナ16により燃焼可能に構成し、燃料油に粘度調整剤を供給可能な粘度調整油供給配管22及び流量調整弁23と、バーナ16に加熱蒸気を供給可能なバーナ蒸気供給配管24及び流量調整弁25と、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定して各流量調整弁23,25の開度を調整する制御装置28とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油を精製して燃料油や石油化学製品などを製造した後、取り出される石油残渣などの重質油を燃料とする重質油燃焼ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油を石油精製設備により精製することで、燃料油や石油化学製品などを製造した後、この設備からは石油残渣などの重質油が取り出される。この重質油は、粘度が非常に高いことから、エネルギとして利用する場合には、加熱することで粘度を低下させ、この状態で火炉まで移送し、この火炉内に供給している。
【0003】
重質油の粘度を低下させてから火炉に供給する技術として、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものがある。特許文献1に記載された重質油燃焼方法では、水性ガス化反応や微小水滴爆裂効果等の燃焼促進効果を有する水エマルジョン燃焼法と、燃料を微粒化する二段混合型噴霧ノズルとを組み合わせている。また、特許文献2に記載された重質油燃焼ボイラでは、燃料油として重質油を使用し、燃料油をバーナに投入した蒸気で微粒化してから燃焼可能とし、蒸気の投入量を燃料油の粘度領域ごとに得られるバーナ蒸気割合と煤塵濃度との相関関係から粘度領域及び所定の煤塵濃度に対応するバーナ蒸気割合を求めて算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−159113号公報
【特許文献2】特開2010−107166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に記載された重質油燃焼方法では、燃料油を水エマルジョン化して燃焼させることから、水を蒸発させるための熱量が必要となり、ボイラの燃焼効率が低下してしまう。また、燃料油を水エマルジョン化して燃焼させると、燃料油の粘度が高いままの状態で燃焼させることから、燃焼排ガス中のばいじん濃度が増大してしまう。
【0006】
また、特許文献2に記載された重質油燃焼ボイラでは、燃料油をバーナに投入した蒸気で微粒化してから燃焼することで、ボイラの設置コストやランニングコストを低減することができる。ところが、重質油は粘度が非常に高いことから、加熱により粘度を低下させた状態でボイラまで移送する必要がある。この場合、重質油に低粘度の燃料油を混合して粘度を低下させることが考えられるが、これを燃焼させる場合には、ボイラの燃焼効率が低下してしまう問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、ばいじん濃度を制御することでボイラの燃焼効率の低下を抑制可能とする重質油燃焼ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の重質油燃焼ボイラは、燃料油として重質油を使用し、この重質油をバーナにより燃焼させる重質油燃焼ボイラにおいて、燃料油に粘度調整剤を供給可能な粘度調整剤供給手段と、前記バーナに蒸気を供給可能な蒸気供給手段と、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定する供給量設定手段と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、燃料油に粘度調整剤を供給することで、燃料油の粘度が低下して良好に移送することができ、また、燃料油に蒸気を供給してバーナにより燃焼することで、良好な燃焼状態を確保することができ、このとき、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定することで、ばいじん濃度を所定値以下に制御するができ、その結果、ボイラの燃焼効率の低下を抑制することができる。
【0010】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、前記供給量設定手段は、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量とばいじん濃度との関係を表すマップに基づいて粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を設定することを特徴としている。
【0011】
従って、マップを用いて粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を設定することで、制御の簡素化を可能とすることができる。
【0012】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、前記供給量設定手段は、燃料油の粘度に応じて粘度調整剤の供給量を設定し、調整後の燃料油の粘度に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定することを特徴としている。
【0013】
従って、燃料油の粘度に応じて粘度調整剤の供給量を設定してから蒸気の供給量を設定することで、燃料油を適正に移送可能な粘度に調整することができると共に、燃料油を適正に燃焼可能な粘度に調整することができる。
【0014】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、燃料油の状態を検出する状態検出手段が設けられ、前記供給量設定手段は、該状態検出手段が検出した燃料油の状態に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように粘度調整剤の供給量及び蒸気の供給量を設定することを特徴としている。
【0015】
従って、燃料油の状態を事前に確認することで、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を高精度に設定することができる。
【0016】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、粘度調整剤が供給された燃料油の状態を検出する状態検出手段が設けられ、前記供給量設定手段は、該状態検出手段が検出した燃料油の状態に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定することを特徴としている。
【0017】
従って、粘度調整剤が供給された燃料油の状態を事前に確認することで、蒸気の供給量を高精度に設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の重質油燃焼ボイラによれば、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定する供給量設定手段を設けるので、ばいじん濃度を制御することでボイラの燃焼効率の低下を抑制可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施例に係る重質油燃焼ボイラを表す概略構成図である。
【図2】図2は、バーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係を表すグラフである。
【図3】図3は、バーナ蒸気割合と粘度調整油混合割合との関係を表すグラフである。
【図4】図4は、バーナ蒸気割合と発電コストとの関係を表すグラフである。
【図5】図5は、石油の移送粘度範囲及び燃焼粘度範囲を表すグラフである。
【図6】図6は、油粘度に対するばいじん濃度を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る重質油燃焼ボイラの好適な実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る重質油燃焼ボイラを表す概略構成図、図2は、バーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係を表すグラフ、図3は、バーナ蒸気割合と粘度調整油混合割合との関係を表すグラフ、図4は、バーナ蒸気割合と発電コストとの関係を表すグラフ、図5は、石油の移送粘度範囲及び燃焼粘度範囲を表すグラフ、図6は、油粘度に対するばいじん濃度を表すグラフである。
【0022】
近年、燃料油の白油化指向に伴って粘度の高い重質油が増加してきている。このような重質油を燃料とする重質油燃焼ボイラにおいては、高粘度の重質油を昇温させたり、粘度調整剤を混合したりして低粘度化する必要がある。また、石油精製設備による精製作業では、最終的に高い重質性の石油残渣が取り出されることとなるが、ここでも、近年、石油残渣の重質化が進んでいる。
【0023】
石油の精製過程では、図5に示すように、軽油Aや重油Bが精製されて一般的な石油残渣Cが取り出されるが、近年は、この石油残渣Cもアスファルトなどとして精製され、高重質性の石油残渣Dが取り出される。このような軽油A、重油B、石油残渣C、高重質性の石油残渣Dを一般的な重質油燃焼ボイラで使用する場合、燃料タンクからボイラまで移送するとき、所定の移送粘度範囲(300〜700mm/sec)まで低下させ、更に、ボイラで燃焼するとき、所定の燃焼粘度範囲(15〜100mm/sec程度)まで低下させる必要がある。
【0024】
この場合、石油精製設備から取り出されたときの高重質性の石油残渣Dは、高温状態にあることから流体化しているが、常温になると固形化してしまう。高温状態にあって流体化している石油残渣Dを重質油燃焼ボイラまで搬送するには、搬送配管を蒸気などにより加熱する必要があるものの、その加熱温度は300℃程度になってしまう。そして、石油残渣Dの搬送配管を蒸気などにより加熱することができない領域では、石油残渣Dの輸送が困難となってしまう。本実施例では、石油残渣Dなどを含む重質油に粘度調整剤(粘度調整油)を供給して粘度を低下させることで、重質油燃焼ボイラの近傍まで搬送し、バーナに蒸気を供給して燃焼させるようにしている。
【0025】
しかし、重質油燃焼ボイラに移送される燃料油の粘度は不確定である。重質油燃焼ボイラでは、燃焼粘度範囲まで低粘度化した燃料油をバーナに導入して燃焼させているものの、油粘度とばいじん濃度との関係は不明確であった。しかし、図6に示すように、油粘度の上昇に伴ってばいじん濃度が上昇する傾向があることがわかり、特に、燃料油の燃焼粘度範囲を超えた高粘度では、ばいじん濃度が著しく上昇している。粘度が不明な燃料油を加熱してからバーナにより重質油燃焼ボイラに投入して燃焼するとき、粘度が高い場合には、ばいじん濃度の高い排ガスを発生させてしまうおそれがある。
【0026】
本実施例では、燃料油として高粘度重質油を使用し、この重質油をボイラ本体まで移送させるとき、また、ボイラ本体のバーナにより燃焼させるとき、重質油の移送状態に基づいて、この重質油の状態を最適な状態に変更するようにしている。
【0027】
なお、ここで軽油(軽質油)とは、比重が0.80〜0.84程度の油であり、重油(重質油)とは、比重が0.83〜0.96程度の油であり、アスファルト(石油残渣C)とは、比重が1.02〜1.06程度の油であり、石油残渣Dは、比重が1.06以上の油を表している。
【0028】
実施例1の重質油燃焼ボイラは、図1に示すように、燃料タンク11と、輸送配管12と、輸送ポンプ13と、油加熱器14と、ボイラ本体15と、バーナ16とを有する構成となっている。
【0029】
燃料タンク11は、高粘度重質油が移送される重質油移送ライン21が連結されており、また、この重質油移送ライン21に対して粘度調整油供給配管22が連結され、この粘度調整油供給配管22に流量調整弁23が装着されている。従って、重質油移送ライン21を移送される高粘度重質油に対して、流量調整弁23の開度を調整することで、粘度調整油供給配管22から所定量(所定割合)の粘度調整油(低粘度油)を供給することができる。そのため、この燃料タンク11は、移送粘度範囲に加熱された燃料油として使用する所定粘度の重質油を貯留することができる。
【0030】
輸送配管12は、燃料タンク11からボイラ本体15まで延設された配管であり、輸送ポンプ13により燃料タンク11内の重質油をボイラ本体15まで輸送可能となっている。油加熱器14は、輸送配管12内を流れる燃料油を所定の燃焼粘度範囲まで加熱するものである。
【0031】
また、バーナ16に対して、加熱蒸気を供給可能なバーナ蒸気供給配管24が連結されており、このバーナ蒸気供給配管24に流量調整弁25が装着されている。従って、輸送配管12を移送される重質油に対して、流量調整弁25の開度を調整することで、バーナ蒸気供給配管24から所定量(所定割合)の加熱蒸気を供給することができる。そのため、このバーナ16は、燃焼粘度範囲に加熱された燃料油として使用する所定粘度の重質油に蒸気が混合されてから燃焼することができる。
【0032】
従って、燃料タンク11は、重質油移送ライン21から移送される高粘度重質油に、粘度調整油供給配管22から供給される粘度調整油が混合されて構成された重質油が貯留されており、輸送ポンプ13を作動すると、燃料タンク11内の重質油を輸送配管12により輸送し、油加熱器14により加熱されてからバーナ16に輸送し、バーナ16は、燃焼粘度範囲に加熱された燃料油にバーナ蒸気供給配管24から供給される加熱蒸気が混合された状態で、燃焼することができる。
【0033】
なお、本実施例では、粘度調整油供給配管22及び流量調整弁23が本発明の粘度調整剤供給手段として機能し、バーナ蒸気供給配管24及び量調整弁25が本発明の蒸気供給手段として機能する。
【0034】
そして、本実施例の重質油燃焼ボイラでは、重質油移送ライン21により燃料タンク11に移送される重質油の状態を検出する状態検出手段として、重質油の温度を計測する温度センサ26と、重質油の粘度(濃度)を計測する濃度センサ27が設けられている。そして、温度センサ26が計測した重質油の温度、粘度センサ27が計測した重質油の粘度に基づいて各流量調整弁23,25の開度を調整制御する供給量設定手段としての制御装置28が設けられている。この制御装置28は、重質油の温度と粘度に基づいて各流量調整弁23,25の開度を調整することで、重質油に対する粘度調整油の供給量(供給割合)と、加熱蒸気の供給量(供給割合)を最適な量(割合)となるように調整する。
【0035】
具体的に、制御装置28は、重質油の温度と濃度に基づいて、図5のグラフを用いて重質油の種類を判定する。即ち、輸送配管12内の重質油は、移送粘度範囲になるように加熱されていると共に、粘度調整油が供給されていることから、粘度センサ27が計測した粘度(動粘度)が移送されている重質油の移送粘度であり、温度センサ26が計測した温度がこの移送粘度となるものを特定することで、重質油の種類を判定することができる。
【0036】
即ち、本実施例では、重質油移送ライン21により燃料タンク11に移送される重質油に対して粘度調整油を供給することで、重質油の濃度を低下させると共に、バーナの重質油に対して蒸気を投入することで、この重質油を微粒化して良好に燃焼可能としている。この場合、重質油移送ライン21に供給して重質油の粘度を低下させる粘度調整油の供給量と、バーナ16に投入して重質油を微粒化する蒸気の投入量が、図2に示すような制御マップに基づいて算出される。
【0037】
この制御マップは、重質油の粘度領域毎に得られるバーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係を示す線図であり、図示の制御マップ例では、適正粘度油(15〜30mm/sec)、高粘度油(30〜100mm/sec)、超高粘度油(100〜500mm/sec)の3領域が示されている。この場合のバーナ蒸気割合は、バーナ16に投入される重質油に対する蒸気の重量割合である。そして、この場合、重質油移送ライン21は、上述した説明の高重質性の石油残渣D(図5参照)が加熱されることで重質油として移送されており、例えば、この重質油に粘度調整油を5%だけ供給すると超高粘度油となり、重質油に粘度調整油を15%だけ供給すると高粘度油となり、重質油に粘度調整油を30%だけ供給すると適正粘度油となる。この場合の粘度調整油混合割合は、重質油移送ライン21の重質油に対する粘度調整油の重量割合である。
【0038】
バーナ16に投入する蒸気量は、この図2の制御マップで表すように、バーナ蒸気割合とばいじん濃度との相関関係を用い、使用する重質油の粘度領域及び所定のばいじん濃度に対応するバーナ蒸気割合を求めて算出される。例えば、重質油の温度と濃度に基づいて特定される重質油の種類が、超高粘度油に相当する場合、所定のばいじん濃度(例えば、300mg/Nm)に対応するバーナ蒸気割合の12%が求められる。従って、バーナ16に対する蒸気の投入量は、バーナ16に投入される重質油量に対し、重量比で12%となるように算出される。なお、所定のばいじん濃度は一例であり、重質油燃焼ボイラの諸条件に応じて適宜変化する値である。
【0039】
このようにボイラ本体15で発生する排気ガスのばいじん濃度は、重質油移送ライン21に供給して重質油の粘度を低下させる粘度調整油の供給量と、バーナ16に投入して重質油を微粒化する蒸気の投入量とに応じて変動する。そのため、本実施例にて、制御装置28は、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を、重質油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定する。具体的に、制御装置28は、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量とばいじん濃度との関係を表すマップに基づいて、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を設定する。この場合、制御装置28は、重質油の粘度に応じて粘度調整剤の供給量を設定し、調整後の燃料油の粘度に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定する。
【0040】
即ち、重質油移送ライン21に供給して重質油の粘度を低下させる粘度調整油の混合割合と、バーナ16に投入して重質油を微粒化する蒸気の投入割合と、発生するばいじん濃度と関係が、図3に示すような制御マップに基づいて算出される。この制御マップは、ばいじん濃度が所定値以下となるような粘度調整油混合割合とバーナ蒸気割合との関係を示す線図である。例えば、重質油に5%の粘度調整油を供給した場合、ばいじん濃度を所定値以下とするためには、バーナ16に12%の蒸気を投入するとよい。また、重質油に15%の粘度調整油を供給した場合、ばいじん濃度を所定値以下とするためには、バーナ16に8%の蒸気を投入し、重質油に30%の粘度調整油を供給した場合、ばいじん濃度を所定値以下とするためには、バーナ16に3%の蒸気を投入するとよい。
【0041】
なお、図6に示すように、油粘度が燃焼粘度範囲の領域では、油粘度の上昇に応じてばいじん濃度が略直線的に変化する関係(略比例関係)にある。しかし、油粘度が燃焼粘度範囲を大幅に超えた高粘度(概ね、100mm/sec以上)になると、油粘度とばいじん濃度との間に存在する略比例関係が崩れ、油粘度の上昇に伴ってばいじん濃度は急増する。従って、高粘度の燃料油をバーナ16に供給する場合には、その粘度領域に応じた粘度調整油混合割合とバーナ蒸気割合が存在すると推測される。このため、重質油の粘度領域ごとに実験を行い、図2及び図3に表す制御マップを得た。
【0042】
この図2及び図3の制御マップでは、ばいじん濃度を所定の値に抑える場合、粘度調整油混合割合を低く設定することで粘度低下を緩和し、粘度の高い重質油ほどバーナ蒸気割合を高く設定できることが分かる。更に、例えば、超高粘度油のように、粘度が高い領域にある重質油ほど、バーナ蒸気割合の増加に伴うばいじん濃度の低下は顕著である。この場合、図4に示すように、バーナ蒸気割合を増加すると、図4のC1のように、加熱蒸気を使用することで発電コストが増加してプラント効率が低下するが、図4のC2のように、ばいじん濃度(ばいじん量)が低下することで、発電コストが若干低減してプラント効率が向上する。また、重質油に所定割合の粘度調整油を供給することから、石油残渣Dなどの安価な燃料油の使用が可能となり、図4のC3のように、燃料油の価格が低下することで、発電コストが大幅に低減してプラント効率が向上する。その結果、本実施例の重質油燃焼ボイラでは、上述したバーナ蒸気割合を増加(C1,C2)及び粘度調整油の増加(C3)を考慮することで、図4のC4のように、発電コストを低減してプラント効率を向上することが可能となる。なお、この場合、重質油燃焼ボイラの発電コストやプラント効率にとって、ばいじん濃度、粘度調整油混合割合、バーナ蒸気割合は相反する関係にあるので、諸条件を考慮して良好なプラント効率が得られる最適な粘度調整油混合割合やバーナ蒸気割合の設定が望ましい。
【0043】
本実施例にて、制御装置28は、温度センサ26及び粘度センサ27の検出結果を受け、粘度調整油供給配管22の流量調整弁23の開度を調整するフィードバック制御を実行している。そのため、図1に示すように、高粘度重質油が重質油移送ライン21により燃料タンク11に移送されるとき、粘度調整油が粘度調整油供給配管22から重質油移送ライン21に供給され、両者が混合した所定粘度の重質油(燃料油)が燃料タンク11に貯留される。そして、輸送ポンプ13が作動すると、燃料タンク11内の重質油が輸送配管12により輸送され、油加熱器14により加熱された後に各バーナ16まで輸送される。このバーナ16は、バーナ蒸気供給配管24からバーナ蒸気が供給されることで、このバーナ16からバーナ蒸気により微粒化した重質油がボイラ本体15の内部に供給される。
【0044】
このとき、温度センサ26は、重質油移送ライン21を流れる粘度調整油が供給された重質油の温度を計測し、粘度センサ27は、重質油移送ライン21を流れる粘度調整油が供給された重質油の濃度を計測している。そして、制御装置28は、検出した重質油の温度と粘度に基づいて重質油の種類を判定し、判定した重質油の種類に応じた粘度調整油混合割合を再調整すると共に、バーナ蒸気割合を調整する。
【0045】
このように本実施例の重質油燃焼ボイラにあっては、燃料油として使用する重質油をバーナ16により燃焼可能に構成し、燃料油に粘度調整剤を供給可能な粘度調整油供給配管22及び流量調整弁23と、バーナ16に加熱蒸気を供給可能なバーナ蒸気供給配管24及び流量調整弁25と、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定して各流量調整弁23,25の開度を調整する制御装置28とを設けている。
【0046】
従って、燃料油に粘度調整剤を供給することで、燃料油の粘度が低下して良好に移送することができ、また、燃料油に蒸気を供給してバーナ16により燃焼することで、良好な燃焼状態を確保することができ、このとき、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定することで、ばいじん濃度を所定値以下に制御するができ、その結果、ボイラの燃焼効率の低下を抑制することができる。
【0047】
また、本実施例の重質油燃焼ボイラでは、制御装置28は、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量とばいじん濃度との関係を表すマップに基づいて粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を設定している。従って、マップを用いて粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を設定することで、制御の簡素化を可能とすることができる。
【0048】
また、本実施例の重質油燃焼ボイラでは、制御装置28は、燃料油の粘度に応じて粘度調整剤の供給量を設定し、調整後の燃料油の粘度に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定している。従って、燃料油の粘度に応じて粘度調整剤の供給量を設定してから蒸気の供給量を設定することで、燃料油を適正に移送可能な粘度に調整することができると共に、燃料油を適正に燃焼可能な粘度に調整することができる。
【0049】
また、本実施例の重質油燃焼ボイラでは、重質油の温度と粘度を検出する温度センサ26及び粘度センサ27を設け、制御装置28は、各センサ26,27が検出した重質油の温度と粘度に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように粘度調整剤の供給量及び蒸気の供給量を設定している。従って、燃料油の状態、つまり、重質油の温度と粘度を事前に確認することで、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を高精度に設定することができる。
【0050】
また、本実施例の重質油燃焼ボイラでは、制御装置28は、温度センサ26及び粘度センサ27が検出した粘度調整剤を供給した後の重質油の温度と粘度に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定している。従って、粘度調整剤が供給された燃料油の状態を事前に確認することで、蒸気の供給量を高精度に設定することができる。
【0051】
なお、上述した実施例では、温度センサ26及び粘度センサ27は、粘度調整油が供給された後の重質油の温度及び粘度を検出し、制御装置28は、この温度センサ26及び粘度センサ27の検出結果に基づいて各流量調整弁23,25の開度を調整したが、この構成に限定されるものではない。例えば、温度センサ26及び粘度センサ27は、粘度調整油が供給される前の重質油の温度及び粘度を検出し、制御装置28は、この温度センサ26及び粘度センサ27の検出結果に基づいて各流量調整弁23,25の開度を調整してもよい。また、重質油移送ライン21を流れる燃料油(重質油)の種類が事前にわかっているときには、温度センサ26及び粘度センサ27は不要となり、制御装置28は、この燃料油の種類に基づいて各流量調整弁23,25の開度を調整すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る重質油燃焼ボイラは、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定することで、ばいじん濃度を制御することでボイラの燃焼効率の低下を抑制可能とするものであり、いずれの重質油燃焼ボイラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11 燃料タンク
12 輸送配管
13 輸送ポンプ
14 油加熱器
15 ボイラ本体
16 バーナ
21 重質油移送ライン
22 粘度調整油供給配管(粘度調整剤供給手段)
23 流量調整弁(粘度調整剤供給手段)
24 バーナ蒸気供給配管(蒸気供給手段)
25 流量調整弁(蒸気供給手段)
26 温度センサ(状態検出手段)
27 粘度センサ(状態検出手段)
28 制御装置(供給量設定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油として重質油を使用し、この重質油をバーナにより燃焼させる重質油燃焼ボイラにおいて、
燃料油に粘度調整剤を供給可能な粘度調整剤供給手段と、
前記バーナに蒸気を供給可能な蒸気供給手段と、
粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を燃料油の粘度に応じて設定されるばいじん濃度に基づいて設定する供給量設定手段と、
を備えることを特徴とする重質油燃焼ボイラ。
【請求項2】
前記供給量設定手段は、粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量とばいじん濃度との関係を表すマップに基づいて粘度調整剤の供給量と蒸気の供給量を設定することを特徴とする請求項1に記載の重質油燃焼ボイラ。
【請求項3】
前記供給量設定手段は、燃料油の粘度に応じて粘度調整剤の供給量を設定し、調整後の燃料油の粘度に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の重質油燃焼ボイラ。
【請求項4】
燃料油の状態を検出する状態検出手段が設けられ、前記供給量設定手段は、該状態検出手段が検出した燃料油の状態に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように粘度調整剤の供給量及び蒸気の供給量を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の重質油燃焼ボイラ。
【請求項5】
粘度調整剤が供給された燃料油の状態を検出する状態検出手段が設けられ、前記供給量設定手段は、該状態検出手段が検出した燃料油の状態に応じてばいじん濃度が予め設定された所定値以下となるように蒸気の供給量を設定することを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の重質油燃焼ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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