説明

重量充填装置の制御方法及び重量充填装置

【課題】重量充填装置の異常を感度良く検出することができる制御方法、及びその方法を実施するための重量充填装置の提供。
【解決手段】複数の載せ台と複数の供給装置と複数の計量器とを備え、風袋に被計量物を充填した後にさらに被計量物を充填し、被計量物の計量を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、第1、第2の充填に要する第1、第2充填時間を算出するステップと、特定の供給装置に係る第1ないし第2充填時間と他の供給装置に係る第1ないし第2充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置及び当該特定の供給装置に係る特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生しているか否かを判定するステップと、異常状態が発生していると判定された場合に、前記特定の供給装置に係る第1および第2充填時間と他の供給装置に係る第1および第2充填時間との差異とを比較し、異常状態が発生している計量器を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量充填装置の制御方法に関し、特に重量充填装置の異常の原因を特定することができる制御方法、およびその方法を実施するための重量充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大量の被計量物を貯蔵した貯槽から所定の容器に対して、被計量物を一定量ずつバッチ供給する充填装置がある。このような充填装置において、供給経路における通流状態が安定するような性質を有する物質が被計量物である場合(例えば、液体)、供給経路に一定の開口面積を有するバルブを設け、そのバルブを一定時間だけ開くことによって被計量物の一定体積量を容器へ供給する方式が従来から用いられている。
【0003】
ところで、被計量物が液体である場合、温度によって被計量物の密度が変化したり、貯槽における貯蔵液面の高さが異なると単位時間当たりにバルブ開口面を流れる液体の重量が異なったりするため、一定時間バルブを開いたとしても一定の重量の被計量物を容器へ供給することができない場合がある。
【0004】
貯槽液面の高さの変化に伴う容器への供給流量の変化を回避するためには、例えば、貯槽から目標供給量に相当する一定体積容量を有するシリンダへ液体を一旦注入した後、シリンダから容器へピストンによって供給するように構成された充填装置がある。
【0005】
しかし、このような充填装置の場合、被計量物を供給するための供給部の構造が複雑になるため、供給部の分解洗浄に相当な時間を要するという問題、および洗浄レベルが低くなるため滅菌環境における充填には不向きであるという問題などがある。また、このような充填装置の場合でも被計量物の密度の変化に伴う容器への供給流量の変化を回避することはできない。
【0006】
このように、前述したような体積充填方式では供給流量の変化に対応することができない。そして、液体の価値は基本的に重量によって決定される。そこで、被計量物である液体の重量を測定しながら充填し、所定の重量に到達した場合に供給を停止するという重量充填装置が提案されるようになっている。
【0007】
重量充填装置の場合、被計量物の重量を測定しながら一定の重量分の被計量物を通すようにバルブの開口部を調節するため、前述した体積充填方式の充填装置の場合と比べて、供給部の構造が単純になる。しかし、重量を測定するために重量センサを備えた計量器が必要となる。そして、被計量物は液体であることが多く、その場合は充填装置の周囲の環境は湿度が高くなるため、精密な計量器が用いられる環境としては劣悪であり、良好な環境で使用されるはかりと比べると、計量器の故障確率が高くなる。また、回転式重量充填装置の場合では、回転する計量器の上に容器が乗り込むという構成となるため、同様にして精密な計量器が用いられる環境としては劣悪であり、計量器の故障確率が高くなる。
【0008】
さらに、重量充填装置の場合、単位時間当たりの容器への充填処理能力を高めるために、充填装置1台当たりに多くの計量器が設けられる構成が一般的である。そのため、充填装置1台当たりでの計量器の故障確率も高くなる。
【0009】
そこで、従来から、重量充填装置において、計量器の出力が異常となったり、容器への被計量物の供給時間が異常値を示したりした場合に、警報を発したり供給動作を制御したりする機能が実現されている。具体的には、被計量物の充填時間を実測し、その実測された充填時間と予め設定された基準の充填時間とを比べて差がある場合には被計量物の流量が所定の基準値になるように流量を調節することができる重量充填装置が特許文献1に開示されている。この重量充填装置(以下、従来技術1という)は、いくつかの供給装置またはすべての供給装置の実際の充填時間の平均値と基準の充填時間との差を関数として実際の充填時間が基準の充填時間になるように被計量物の流量を調節するように構成されている。
【0010】
また、被計量物を容器へ供給する複数の供給装置のうち、特定の供給装置の実際の充填時間と予め設定されている基準の充填時間または臨界充填時間(許容充填時間)とを比較し、実際の充填時間が基準の充填時間または臨界充填時間を超えたときに警報を出力するような重量充填装置が提案されている。この重量充填装置(以下、従来技術2という)の場合、臨界充填時間は、例えば予めオペレータにより設定されるかまたは複数の供給装置の実際の充填時間の平均値から算出される。
【0011】
ところで、重量充填装置において、容器に対する充填時間が許容充填時間の範囲を超えるような事態が起こる場合として、以下の3つを挙げることができる。
(1)被計量物の密度または粘度が変化したり、貯槽内の液面高さが変化したために流速が変化したりする場合。
(2)計量器が故障した場合。
(3)被計量物の供給装置(被計量物が液体の場合はバルブ、粉体の場合はスクリューフィーダなど)が故障した場合。
【0012】
上記のうち、(1)については重量充填装置の故障ではなく、重量充填装置の周囲の温度環境の変化、または重量充填装置への被計量物の供給状態の変化により起こり得るものである。一方、(2)および(3)は、重量充填装置の故障により起こり得るものである。
【0013】
上記(2)の場合において、特定の計量器が故障し、その計量器が備えている重量センサのスパンが小さくなる方向に変化したときは、被計量物である液体の体積の割に重量が小さく測定されることになるため、液体の流量(g/sec)が実際より小さく測定されることになる。その結果、故障した計量器においては、液体重量がw1からw2(w1<w2)に到達する時間が他の計量器と比べて長くなるため、従来技術2のように、特定のバルブの充填時間と他のバルブの充填時間の平均値とを比較することにより異常を検出することができる。また、従来技術1の場合であっても、実測された充填時間と予め設定された基準の充填時間とを比べると差が生じるため、異常を検出することができる。
【0014】
また、上記(3)の場合において、例えばバルブが故障したために動作不良が発生し、その結果バルブの開口度が所定の値まで大きくならなかったときでも、前述した場合と同様にして液体重量がw1からw2(w1<w2)に到達する時間が他の計量器と比べて長くなる。したがって、この場合でも、従来技術1および従来技術2により異常を検出することができる。
【0015】
以上のように、従来の重量充填装置によって、上記(2)および(3)の何れの場合でも異常を検出することができる。
【0016】
ところで、重量充填装置における計量動作において、いわゆる大投入過程に要する大投入時間(大投入過程における充填時間)をt1とし、小投入過程における小投入時間(小投入過程における充填時間)をt2とした場合、大投入時間t1および小投入時間t2はともに、計量器およびバルブの動作が正常であっても計量器の振動によるノイズによりほぼ一定の範囲でばらついたり、液体密度の変化などに起因して伸縮したりする。また、各バルブ間で比べた場合でも、それぞれの供給経路の管路抵抗、バルブ開口度などによって大投入時間t1および小投入時間t2が少しずつ異なる。
【0017】
従来の重量充填装置の場合、以上のようなばらつき要因を考慮して、大投入時間t1または小投入時間t2に対して上下限値を定め、且つ計量器およびバルブが正常な状態での標準の大投入時間t1sおよび標準の小投入時間t2sを調整の際に定めていた。その上、1〜nで識別されるバルブ毎に異なるばらつき要因が生じ得るため、バルブ毎に標準の大投入時間t1s1〜t1snおよび標準の小投入時間t2s1〜t2snを調整の際に設定し、計量器およびバルブが正常な場合のそれらのばらつき量に基づいて上下限値±teを定めることによって、以下の式1のような異常有無の判定式を設定していた。
【0018】
t1sn−te≦t1n≦t1sn+te … 式1
この式1はバルブnの大投入時間t1nが正常であるか否かを判定するための判定式である。
【0019】
バルブnの大投入時間t1nが式1を満足しないと判定した場合、異常が発生していると判定される。なお、正常な状態において大投入時間t1および小投入時間t2がばらつく場合、その要因はすべてのバルブに共通であるため、各バルブに共通の境界値teが用いられる。
【0020】
上述したようにして異常の発生を検出することによって、高精度な計量を継続させることが可能となる。
【0021】
また、計量器の異常を検出した場合に装置の稼働を停止させることなく運転を継続させる方法としては、例えば、正常に稼働運転している場合の大投入時間t1nと小投入時間t2nとを最新のN個ずつ記憶させておき、異常が発生した計量器nを停止させたときの生産量の低下を回避するために、異常判定直前のM個(M<N)を除く最新の(N−M)個の大小投入時間の平均値を用いて充填を継続させるものが提案されている。このような方法において異常判定直前のM個のデータを除く理由は、異常判定がなされる前であってもその直前のデータは既に異常傾向を示す場合が多いというものである。
【0022】
その他にも、予め調整モードにおいて正常な状態での標準的な大小投入時間をバルブ毎に記憶させておき、その記憶値を、特定の計量器が異常であると判定された場合に大小投入時間として用いる方法が提案されている。
【特許文献1】特開平3−679495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の重量充填装置の場合、単に充填時間を基準値等と比較するだけであるため、異常を検出することができたとしても、上記(2)または(3)の何れが原因であるのか、すなわち計量器が故障したために異常が発生したのか、それともバルブが故障したために異常が発生したのかを判別することができない。そのため、異常が検出されたことを示す警報が発せられたとしても、自動的に故障状態を復旧させることは不可能であり、作業者が異常の原因調査を行って計量器またはバルブの何れが故障したのかを特定した上で復旧させる必要があった。したがって、復旧に相当な時間を要するという問題があった。
【0024】
また、上記式1の場合、例えば液体の密度が変化したり貯槽内の液面高さが変化したりしたことに起因してバルブnの大投入時間t1nが変化する分を、境界値teの中に予め見込んでおかなければならない。液体密度の変化および貯槽内の液面高さの変化によって投入時間が変化する現象は重量充填装置に異常があったために起きたわけではないので、そのような現象が起きたとしても重量充填装置は正常であると判定されなければならないためである。
【0025】
しかしながら、そのために境界値teを大きな値とすることは、他の要因によりバルブnの大投入時間t1nが変化した場合における異常検出感度の低下につながるという問題があった。
【0026】
また、上述したような従来の装置の稼働を停止させることなく運転を継続させる方法の場合、少なくとも異常判定時点以降の液体密度の変化及び液面高さの変化が考慮されていないため、精度の高い充填を行うことができないという問題があった。
【0027】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、重量充填装置において検出される異常が、被計量物の計量器の故障によるものなのか、それとも被計量物の供給装置によるものなのかを判別することができる制御方法、およびその方法を実施するための重量充填装置を提供することにある。
【0028】
また、本発明の他の目的は、重量充填装置の異常を感度良く検出することができる制御方法、およびその方法を実施するための重量充填装置を提供することにある。
【0029】
さらに、本発明の他の目的は、計量器に異常が発生した場合であっても、稼働を停止させることなく、高精度な充填を継続して実行することができる制御方法、およびその方法を実施するための重量充填装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明者等は、計量器のスパンが小さい場合には被計量物である液体の重量が所定量に到達する時間が長くなるため、それに伴って被計量物の投入時間も長くなり、またバルブに故障が起きたために稼働中において調整時点で設定された開口度よりも小さい開口度となった場合も同様にして投入時間が長くなることを知見した。そして、発明者等は、この知見に基づいて以下に示す発明をした。
【0031】
前述した課題を解決するために、本発明に係る重量充填装置の制御方法は、被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、前記複数の供給装置に係る前記所定量の被計量物の充填に要する充填時間を算出するステップと、算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る充填時間と他の供給装置に係る充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置又は当該特定の供給装置に係る特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するステップとを有している。
【0032】
前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る充填時間と、他の供給装置に係る充填時間の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0033】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る充填時間と、前記複数の供給装置のそれぞれに係る充填時間の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0034】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記算出するステップは、前記充填時間を繰り返し算出し、前記判定するステップは、算出された前記特定の供給装置に係る複数の充填時間の平均値と、他の供給装置に係る複数の充填時間の平均値との差異に基づいて、前記特定の供給装置又は前記複数の計量器のうちの特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0035】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る複数の充填時間の平均値と、他の供給装置に係る複数の充填時間の平均値の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0036】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る複数の充填時間の平均値と、前記複数の供給装置のそれぞれに係る複数の充填時間の平均値の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0037】
また、本発明に係る重量充填装置の制御方法は、被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に第1の所定量の被計量物を充填した後に第1の所定量よりも少ない第2の所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、前記複数の供給装置に係る第1の所定量の被計量物の充填に要する第1充填時間を算出する第1の算出ステップと、前記複数の供給装置に係る第2の所定量の被計量物の充填に要する第2充填時間を算出する第2の算出ステップと、算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異、又は算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置及び当該特定の供給装置に係る特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生しているか否かを判定する第1の判定ステップと、前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生していると判定された場合に、前記特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異と、前記特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異とを比較し、比較した結果に基づいて前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の何れに異常状態が発生しているのかを判定する第2の判定ステップとを有している。
【0038】
前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、前記特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異に基づいて、当該特定の計量器に係るスパン補正を実行するステップを更に有するようにしてもよい。
【0039】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第1の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第1充填時間の平均値に基づいて算出するステップを更に有するようにしてもよい。
【0040】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第2の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第2充填時間の平均値に基づいて算出するステップを更に有するようにしてもよい。
【0041】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第1の算出ステップは、前記第1充填時間を繰り返し算出し、前記第2の算出ステップは、前記第2充填時間を繰り返し算出し、前記第2の判定ステップは、算出された前記特定の供給装置に係る複数の第1充填時間の平均値と他の供給装置に係る複数の第1充填時間の平均値との差異と、前記特定の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値と他の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値との差異とを比較し、比較した結果に基づいて前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の何れに異常状態が発生しているのかを判定するようにしてもよい。
【0042】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、前記特定の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値と他の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値との差異に基づいて、当該特定の計量器に係るスパン補正を実行するステップを更に有するようにしてもよい。
【0043】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第1の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第1充填時間の複数の平均値の平均値に基づいて算出するステップを更に有するようにしてもよい。
【0044】
また、前記発明に係る重量充填装置の制御方法において、前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第2の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第2充填時間の複数の平均値の平均値に基づいて算出するステップを更に有するようにしてもよい。
【0045】
また、本発明に係る重量充填装置の制御方法は、被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、前記複数の供給装置に係る前記所定量の被計量物の充填に要する充填時間を算出するステップと、前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置の異常を検出するステップと、異常が検出された前記特定の供給装置とは異なる他の供給装置に係る充填時間に基づいて算出された充填時間によって、前記特定の供給装置を制御するステップとを有している。
【0046】
この場合における特定の供給装置の異常の検出には、重量充填装置が所定の方法で異常を検出する場合のみでなく、分銅検査等によって異常が発生しているとオペレータが確認したときに、入力装置等を介して、そのオペレータから重量充填装置に対して当該異常が伝えられる場合等も含まれる。
【0047】
また、本発明の重量充填装置は、被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置において、前記複数の供給装置に係る前記所定量の被計量物の充填に要する充填時間を算出する算出手段と、 当該算出手段によって算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る充填時間と他の供給装置に係る充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置又は当該特定の供給装置に係る特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する判定手段とを備える。
【0048】
さらに、本発明の重量充填装置は、被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に第1の所定量の被計量物を充填した後に第1の所定量よりも少ない第2の所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置において、前記複数の供給装置に係る第1の所定量の被計量物の充填に要する第1充填時間を算出する第1の算出手段と、前記複数の供給装置に係る第2の所定量の被計量物の充填に要する第2充填時間を算出する第2の算出手段と、第1の算出手段によって算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異、又は第2の算出手段によって算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置及び当該特定の供給装置に係る特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生しているか否かを判定する第1の判定手段と、前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生していると判定された場合に、前記特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異と、前記特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異とを比較し、比較した結果に基づいて前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の何れに異常状態が発生しているのかを判定する第2の判定手段とを備える。
【発明の効果】
【0049】
本発明の重量充填装置の制御方法及びその方法を実施するための重量充填装置は、重量充填装置の異常原因を特定することができる。
【0050】
また、本発明の重量充填装置の制御方法及び重量充填装置は、重量充填装置の異常を感度良く検出することができる。
【0051】
さらに、本発明の重量充填装置の制御方法及び重量充填装置は、計量器に異常が発生した場合であっても、稼働を停止させることなく、高精度な充填を継続して実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、以下では、本発明の重量充填装置として回転式重量充填装置を例示する。
【0053】
図1は、本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置の構成を示す平面図である。図1に示すように、本発明の回転式重量充填装置1は、図示しない駆動源によって定常運転時には所定の一定速度で回転駆動される回転体2を備えている。なお、ラインの都合で回転体2の回転速度は変化する場合がある。この回転体2の円周方向には、容器14を載置するための複数の計量載せ台12,12…が所定の間隔で配置されており、これら計量載せ台12,12…は回転体2とともに回転されるように構成されている。
【0054】
また、回転体2の回転位置(計量載せ台12,12…の位置)を検出するために、回転体2の回転軸には位置検出手段11が設けられている。この位置検出手段11は、回転体2の1回転のスタートを示す位置でパルスを1個発信するための後述する原点用パルス発信器と、回転体2が1回転する間に複数個のパルスを発信するための後述する複数パルス発信器とを備えている。また、位置検出手段11は、制御装置10と通信可能に接続されており、原点用パルス発信器及び複数パルス発信器によって発信されたパルスを制御装置10に対して出力する。
【0055】
制御装置10は、原点用パルス発信器にてパルスが発信された時点から現時点までに複数パルス発信器にて発信されたパルス数に基づいて、回転体2の回転位置を検出する。また、制御装置10は、同じくパルス数に基づいて、回転体2の回転速度を検出する。このようにして検出された回転体2の回転位置及び回転速度を示す情報が制御装置10から後述する各計量器に対して送信される。
【0056】
前述した複数の計量載せ台12,12…には、当該計量載せ台12,12…上に載置された容器14の重量を検出するための重量センサであるロードセル13,13…がそれぞれ接続されている。また、これらの計量載せ台12,12…の上方には、当該計量載せ台12,12…上に載置された容器14に液体などの充填物を供給するための供給装置である後述するバルブがそれぞれ設けられている。
【0057】
計量載せ台12,12…には、搬送コンベヤ16によって搬送された未計量の容器14が、スターホイール15によって順次供給される。一方、後述するような計量処理が行われた後、計量載せ台上12,12…上にある計量済みの容器14はスターホイール17によって順次回収され、搬送コンベヤ18によって搬送される。なお、スターホイール15及び17と計量載せ台12,12…との間で正確に容器14の受け渡しを行うようにするために、回転体102,スターホイール15および17の回転は同期がとられる。
【0058】
図2は、計量載せ台12,12…上に載置された容器14の重量を測定するための計量器の構成を示すブロック図である。図2に示すように、計量器3はCPU23を備えており、このCPU23は増幅器21及びA/D変換器22を介して前述したロードセル13と接続されている。また、CPU23は、入出力装置(I/O)26を介して前述したバルブ27と接続されている。さらに、CPU23は、所定の記憶領域を有するメモリ24、及び制御装置10と通信するための通信インタフェース25と接続されている。
【0059】
以上のように構成された計量器3において、ロードセル13から出力されるアナログ計量信号が増幅器21によって増幅された後、A/D変換器22に供給される。そして、A/D変換器22にてアナログ計量信号がデジタル信号に変換され、その変換後のデジタル信号がCPU23に供給される。
【0060】
CPU23は、メモリ24に記憶されているコンピュータプログラムにしたがって動作する。これにより、CPU23は、A/D変換器22からの信号を重量値に変換したり、被計量物の充填量が所定の値になるようにバルブ27の開口度を制御したりする。
【0061】
また、CPU23は、通信インタフェース25を介して、後述する零計測位置,風袋計測位置,小投位置,及びエンド位置を示す情報を制御装置10から受け取る。CPU23は、これらの情報により、ロードセル13と接続されている載せ台12の位置を知ることができ、その位置に応じて以下のような処理を実行することになる。
【0062】
図3は、本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える制御装置10の構成を示すブロック図である。図3に示すように、制御装置10はCPU31を備えており、このCPU31は図示しないI/O素子を介して、キー等で構成される入力装置32、液晶ディスプレイ等で構成される表示装置33、および回転体2を回転させるためのモータ6を制御するモータ制御装置34と接続されている。また、CPU31は、所定の記憶領域を有するメモリ35、および各計量器3,3…と通信するための通信インタフェース36と接続されている。さらに、CPU31は、前述したように、位置検出手段11を介して、原点用パルス発信器4および複数パルス発信器5からの出力を受け取ることができるように構成されている。
【0063】
次に、このように構成された回転式重量充填装置1の通常運転時における基本動作を、図1および図4を参照しながら説明する。なお、図4は、本発明の回転式重量充填装置の通常運転時における被計量物の重量の変化を示すグラフである。
【0064】
[零点計測処理]
図1において、aは零点計測位置を示しており、この零点計測位置aから始まるT1は零点計測過程を示している。計量器3が備えるCPU23は、制御装置10から出力された信号に基づいて、計量載せ台12が零点計測位置aに到達したと判定した場合、その計量載せ台12上には容器14が載っていないものと判断し、零点計測処理を開始する。
【0065】
零点計測処理においては、ロードセル13からの出力された重量信号に基づいて零点計測値を求め、必要に応じて零点補正を実行する。
【0066】
なお、零点が異常であると判定された場合、計量器3は、計量器を識別するための識別信号および零点異常を示す信号を制御装置10へ送信する。これらの信号を受信した制御装置10は、零点異常が発生したことを示す情報を表示装置33に表示する。
【0067】
[風袋計測処理]
図1において、bは風袋計測位置を示しており、この風袋計測位置bから始まるT2は風袋計測過程を示している。計量器3が備えるCPU23は、制御装置10から出力された信号に基づいて、計量載せ台12が風袋計測位置bに到達したと判定した場合、その計量載せ台12上に容器14が載ったものと判断し、風袋計測処理を開始する。
【0068】
CPU23は、計量載せ台12が風袋計測過程T2にある間、ロードセル13からの出力信号に基づいて複数回重量値を演算し、その平均値を算出する。そして、CPU23は、その算出された平均値から零点を差し引いた値を風袋値としてメモリ24に記憶させる。
【0069】
なお、計量載せ台12上に容器が載せられているか否かを判断するための容器有無設定値を予め用意しておき、その容器有無設定値とメモリ24に記憶されている風袋値とを比較することによって、容器が載せられているか否かを判定することができる。そして、容器が載せられていないと判定した場合、CPU23は、次の充填処理を実行しないようにする。
【0070】
[充填処理]
図1において、T3は被計量物の大投入を行う大投入過程を、T4は被計量物の小投入を行う小投入過程をそれぞれ示している。なお、cは小投入位置を示している。
【0071】
計量器3が備えるCPU23は、ロードセル13からの出力信号に基づいて、被計量物の重量値を繰り返し演算する。そして、その重量値がゼロのときに開口度が大となるようにバルブ27の動作を制御して大投入を実行する。その後、重量値が図4に示すW1に達したときに開口度が小となるようにバルブ27の動作を制御して小投入を実行する。そして、重量値がW2に達したときに開口度がゼロ、すなわち全閉の状態になるようにバルブ27の動作を制御する。
【0072】
なお、大投入過程T3は充填時間の短縮化を図るために被計量物の流量(g/sec)を多くしており、一方小投入過程T4は充填量の精度を高めるために被計量物の流量を少なくしている。
【0073】
[安定待ち処理]
図1において、T5は計量器3を安定させるための安定待ち過程を示している。安定待ち過程において、計量器3が備えるCPU23は、バルブ27が全閉となったときにバルブ27と容器14内の液面との間にある被計量物が容器14内に完全に落下するまでの時間、計量器3を安定させるために待機する。この時間は所定の時間とし、バルブ27が全閉となったときからその所定の時間だけ待機する。
【0074】
なお、図4に示す「落差」は、バルブ27が全閉となったときにバルブ27と容器14内の液面との間にある被計量物の量を示している。小投入過程T3の終了時の被計量物の重量値W2に「落差」分の重量が加わることにより、被計量物の重量を所望の重量Wtとなるように重量値W2は決定される。
【0075】
[安定計測処理]
図1において、T6は容器14の重量を計測するための安定計測過程を示している。安定計測過程T6において、CPU23はロードセル13からの出力信号に基づいて複数回重量値を演算し、その平均値を算出する。そして、CPU23は、その算出された平均値から零点及び風袋値を差し引いた値を被計量物の重量値としてメモリ24に記憶させる。ここで、容器14の重量値が、所定の許容範囲の上限以上又は下限以下であると判定した場合、CPU23はその充填済みの容器14には過不足があると判断し、その容器14を不良側に排出するように所定の処理を実行する。
【0076】
[エンド位置]
図1において、dはエンド位置を示している。計量器3が備えるCPU23は、制御装置10から出力された信号に基づいて、計量載せ台12がエンド位置dに到達したと判定した場合、仮にその計量載せ台12上の容器14に対してバルブ27による充填処理が施されていたとしても、バルブ27の充填動作を終了させる。
【0077】
このエンド位置dを超えた後、計量載せ台12上に載置された容器14は、スターホイール17によって回収され、搬送コンベヤ18によって搬送される。
【0078】
以上に示した各過程を繰り返すことにより回転式重量充填装置1は繰り返し計量充填を実行する。なお、零点計測から次の零点計測までが1充填サイクルということになる。
【0079】
本発明のように重量充填装置の場合、被計量物の供給は重量に基づいて制御されるため、供給時間を測定する必要はない。しかし、本発明の重量充填装置では、容器に被計量物を供給している時間を大小の投入時間として測定する。
【0080】
各バルブ27における供給時間は、バルブ27の開口度(開口面積)および管路抵抗の違いなどの特性により多少異なるものの、(1)貯槽内の被計量物がなくなったとき、および(2)バルブ27に異常が発生したときにはバルブ27が全閉となり、(3)計量器3に異常が発生したときはバルブ27の全閉または後述するタイマー充填を実行する。
【0081】
以下では、(A)バルブまたは計量器の異常判定、(B)バルブまたは計量器の異常判定における計量器のスパン異常の検出、(C)計量器のスパン異常が検出された場合のスパン補正、(D)計量器の異常が検出された場合のタイマー充填、のそれぞれについて説明する。
【0082】
(A)バルブまたは計量器の異常判定
本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1は、各種の調整を行うための調整モードにおいて、バルブ27および計量器3の組が正常であることが確認された後に複数回の充填サイクルを繰り返すことによって、被計量物を所定重量分だけ容器14に充填するときのバルブ番号1〜nで識別されるバルブ27_1〜27_nのそれぞれについての大投入時間t11’〜t1n’、小投入時間t21’〜t2n’を測定する。
【0083】
なお、以下では、バルブ27_1〜27_nのそれぞれに対応して設けられている計量器3を計量器3_1〜3_nと呼ぶことにする。
【0084】
次に、回転式重量充填装置1は、特定のバルブ27に係る大投入時間(小投入時間)を分子とし、その特定のバルブ27以外のすべてのバルブ27に係る大投入時間(小投入時間)の平均値を分母とすることにより、前記特定のバルブ27の大小投入時間とその他のバルブ27の大小投入時間との比率(以下、大投入時間相対比率および小投入時間相対比率という)を算出する。
【0085】
なお、前述した大投入時間相対比率および小投入時間相対比率は、分子となる特定のバルブ27に係る大投入時間(小投入時間)を測定するタイミングと、分母となるその他のバルブ27に係る大投入時間(小投入時間)を測定するタイミングとができる限り異ならないようにすることが好ましい。これらのタイミングを合わせることにより、被計量物の密度および流速の変化による影響を低減することができるためである。
【0086】
以下、kt1nを、バルブ27_nの、n以外で識別されるバルブ27_1〜27_n−1に対する大投入時間相対比率とする。バルブ番号1〜nで識別されるバルブ27_1〜27_nの大投入時間相対比率は以下の式2により算出することができる。
【0087】
kt11=t11’/{(t12’+t13’+…+t1n’)/(n−1)},
kt12=t12’/{(t11’+t13’+…+t1n’)/(n−1)},…,
kt1n=t11’/{(t11’+t12’+…+t1(n―1)’)
/(n−1)}… 式2
なお、バルブ27の数が比較的多い場合、特定の1つのバルブ27に係る大投入時間の正常値からの増減量が、すべてのバルブ27_1〜27_nに係る大投入時間の平均値に対して与える影響が小さくなるため、以下の式3により各バルブ27_1〜27_nの大投入時間相対比率を算出するようにしてもよい。
【0088】
kt11=t11’/{(t11’+t12’+…+t1n’)/n},
kt12=t12’/{(t11’+t12’+…+t1n’)/n},…,
kt1n=t11’/{(t11’+t12’+…+t1n’)/n}… 式3
また、任意のk個(1<k<n)分の平均値を求めて、この値を分母にしてもよい。
【0089】
回転式重量充填装置1の制御装置10は、テストサンプルの仕様に応じて各バルブ27_1〜27_nに対して連続的に計量充填を実行しながら、式2(または式3)にしたがって算出された大投入時間相対比率kt11〜kt1nをそれぞれ複数個ずつ取得し、メモリ35に記憶する。また、小投入時間相対比率kt21〜kt2nについても同様にして取得し、メモリ35に記憶する。そして、制御装置10は、複数個のkt11〜kt1nそれぞれの平均値kt11a〜kt1naと、複数個のkt21〜kt2nそれぞれの平均値kt21a〜kt2naとを求めてメモリ35に記憶する。
【0090】
以上のような相対比率に対しては液体の密度変化などは影響しない。液体の密度変化などは、各バルブ27_1〜27_nで共通であるため、分母分子で相殺されるからである。しかし、特定の1つのバルブ27の投入時間が異常な値となった場合、そのバルブ27の投入時間が大小投入時間相対比率の分母として用いられるときは影響が少ないが、分子として用いられるときは影響が大きくなる。本発明では、この原理を利用し、大小投入時間相対比率に基づいて異常判定を行う。
【0091】
大投入時間相対比率について、バルブ27_nを含むすべてのバルブ27が正常である場合、バルブ27_nに係る大投入時間相対比率の平均値kt1na≒1となる。しかし、前述したように、各バブル27の供給経路の管路抵抗の違い、および開口度のわずかな違いなどによって、同じ重量分の被計量物を供給するために必要な時間は異なる。したがって、大投入時間相対比率の平均値kt11a〜kt1naの値は1を中心にして少しずつ異なるのが通常である。
【0092】
本発明においては、大投入時間を評価するために実行される大投入時間相対比率kt11〜kt1nに基づく異常の有無の判定を容易にするために、以下の式4によって算出される修正係数p11,p12,…,p1nを用いる。
【0093】
p11=1/kt11a,p12=1/kt12a,…,
p1n=1/kt1na …式4
この修正係数p11,p12,…,p1nは、大投入時間に関する各バルブ27のバルブ特性の違いを表す定数と考えられる。制御装置10は、修正係数p11,p12,…,p1nを求めてメモリ35に記憶する。
【0094】
回転式重量充填装置1の稼働運転時に各バルブ27_1〜27_nに係る大投入時間t11〜t1nの測定に基づいて大投入時間相対比率kt11〜kt1nが求まった場合であって、それらの値において測定要因によるばらつきが発生しているとき、それぞれの値に対して修正係数p11〜p1nを乗じる。これらの演算値は、すべてのバルブ27_1〜27_nが正常であれば、以下の式5のとおりに1となる。すなわち、大投入時間相対比率が1に正規化されることになる。
【0095】
p11・kt11〜p1n・kt1n≒1 …式5
以下、p1n・kt1nをバルブ27_nの正規化された大投入時間相対比率と呼ぶ。
【0096】
特定のバルブ27または計量器3が異常になれば、大投入時間相対比率t11〜t1nのいずれかの大きさが異常になる。その結果、異常になったバルブ27または計量器3に係る正規化された大投入時間相対比率が1から離れた値となる。
【0097】
したがって、特定のバルブ27または計量器3における異常の発生の有無を判定するためには、正規化された大投入時間相対比率p11・kt11〜p1n・kt1nの1からの変化量を用いればよい。この判定のための上下限値は、すべてのバルブ27_1〜27_n及び計量器3が正常である場合における正規化された大投入時間相対比率p11・kt11〜p1n・kt1nのばらつきの標準偏差に基づいて定められることが望ましい。
【0098】
本発明では、回転重量充填装置1の稼働運転時に各バルブ27_1〜27_nに係る大投入時間相対比率kt11〜kt1nの値を求め、それらの値に対して、予め調整運転時に求めていたバルブ27_1〜27_nの修正係数p11〜p1nをそれぞれ乗じることにより得られる正規化された大投入時間相対比率p11・kt11〜p1n・kt1nの値に基づいて正常・異常の判定を行う。そして、調整運転時において予め求めておいた正規化された大投入時間相対比率p11・kt11〜p1n・kt1nの標準偏差を求め、その値を判定の際の上下限値に用いる。
【0099】
ここでは、バルブ番号nで識別されるバルブ27_nの大投入時間相対比率kt1nのばらつきについて以下に例示する。この大投入時間相対比率kt1nは、バルブ27_nの大投入時間/全バルブ27の大投入時間の平均値で求められる。
【0100】
回転式重量充填装置1の調整運転時にバルブ27_1〜27_n毎にm回の計量充填を行わせ、m個の大投入時間を取得する。そして、制御装置10は、各バルブ27_1〜27_nの大投入時間の標準偏差s11〜s1nを求める。
【0101】
各バルブ27_1〜27_nによって大投入時間はバルブの開口度の違いなどによって少しずつ異なるが、大投入時間のばらつき要因はほぼ同じであるため、大投入時間のばらつき量も各バルブ27でほぼ等しい。そこで、全バルブ27_1〜27_nに対して共通のばらつき量を考慮することとする。
【0102】
全バルブ27の大投入時間のばらつき量の標準偏差は、以下の式6のとおり、各バルブ27の標準偏差の平均値により算出される。
【0103】
s1’=(s11+…+s1n)/n …式6
したがって、各バルブ27_1〜27_nの大投入相対時間比率kt11〜kt1nのばらつきの標準偏差s1’’は、以下の式7に示すとおり、全バルブ27_1〜27_nの大投入時間の平均値を用いて算出される。
【0104】
s1’’=s1’/(全バルブ27_1〜27_nの大投入時間の平均値) …式7
なお、s1’’として各バルブ27_1〜27_nの標準偏差の最大値を用いるようにしてもよい。
【0105】
したがって、回転式重量充填装置1の稼働運転時の各バルブ27_1〜27_nに対する判定基準p11・kt11〜p1n・kt1nの標準偏差s11〜s1nは以下の式8により算出される。
【0106】
s11=p11・s1’’,〜,s1n=p1n・s1’’ …式8
また、毎回の大投入時間に対する大投入相対時間比率kt11〜kt1nの代わりに、M個の大投入時間の平均値を用いて得られる大投入相対時間比率kt11a〜kt1naを用いる場合であれば、判定基準としてp11・kt11a〜p1n・kt1naを採用する。この場合、予め設定されたサンプル個数MよりM1/2を求め、以下の式9に示すとおり、平均値の標準偏差を求める。
【0107】
s11a=s11/M1/2 ,〜,s1na=s1n/M1/2 …式9
なお、上下限値に3シグマをとる場合はこれらの3倍の値を用いることになる。
【0108】
次に、小投入時間についても同様にして正規化された大投入時間相対比率p21・kt21,〜,p2n・kt2nの標準偏差s21〜s2nを求め、さらに判定基準p21・kt21a,〜,p2n・kt2naを求める。
【0109】
これらの標準偏差は3シグマ値に変換された後、各計量器3が備えるメモリ24に記憶される。そして、稼働運転時に各バルブ27の大投入時間t11〜t1nを測定したとき、バルブ27_nの場合であれば、大投入時間t1nの正常・異常を判定するために、まず以下の式10を用いてkt1nを算出する。
【0110】
kt1n=t1n/{(t11+t12+…+t1n)/n} …式10
次に、p1nをメモリ24から読み出し、p1n・kt1nを算出する。大投入時間t1nが正常である場合、この値は1となるため、予め記憶されている上下限値3・s1nを使用して以下の式11が成立するか否かを判定する。
【0111】
1−3・s1n≦p1n・kt1n≦1+3・s1n …式11
ここで、この式11が成立する場合、バルブ27_n及び計量器3_nは正常、すなわちバルブ及びスパンともに正常であると判定する。一方、この式が成立しない場合、異常が発生していると判定され、警報信号が制御装置10へ送られ、表示装置33に表示される。
【0112】
また、小投入時間の場合も同様にして以下の式12を用いて正常/異常の判定が行われる。
【0113】
1−3・s2n≦p2n・kt2n≦1+3・s2n …式12
なお、この場合、複数のバルブと計量器との組のうち、同時に異常が発生するのはせいぜい1〜2個程度であるとの前提条件がある。ある特定のバルブと計量器との組が異常である場合、分母は正常であるからp1n・kt1nの値は1から離れる。バルブ・計量器の数が多い場合、1個程度の異常な組が含まれていたとしても、分母に対する影響は小さい。
【0114】
投入時間の個別の変動要因としては、個々の計量器3に特有のスパン変動、個々のバルブ27に特有の動作不良等が考えられる。急激な変化ではなく徐々に変化する変動要因を検出するためには、検出の応答速度は遅くても構わないが、より高い感度が必要となる。
【0115】
なお、バルブ27_nについて、M個の大投入時間平均値の正常/異常を判定する場合は以下の式13を、M個の小投入時間平均値の正常/異常を判定する場合は以下の式14をそれぞれ用いる。
【0116】
1−3・s1na≦p1n・kt1na≦1+3・s1na …式13
1−3・s2na≦p2n・kt2na≦1+3・s2na …式14
平均値にはよらない上記式11及び式12の判定式による異常判定と、平均値による上記式13及び式14の判定式による異常判定とを共に実行する。ここで、急激な投入時間相対比率の変動に対しては式11及び式12により異常判定を行い、緩やかな変動に対しては式13及び式14により異常判定を行う。
【0117】
このように、式11及び式12並びに式13及び式14の両方を用いることによって、計量器のスパン変化のように、時間変化率も変動量も小さいために迅速な応答での異常検出は不要であるが小さい変動を検出して異常が発生した判定しなければならないものと、バルブの急な動作不良及び計量器の損傷のように、時間変化率も変動量も大きいために迅速な応答で異常を検出しなければならないものとの両方に対応することができる。
【0118】
(B)バルブ又は計量器の異常判定における計量器のスパン異常の検出
本発明にておいては、バルブ又は計量器の異常判定における計量器のスパン異常の検出を、一定の重量分の被計量物を大投入又は小投入で供給するために要する時間に基づいて実行する。図4において、風袋計測値によって被計量物の重量の零点が認識され、被計量物の重量が零からW1に到達するまでの時間が大投入時間であり、W1からW2に到達するまでの時間が小投入時間である。
【0119】
被計量物が液体の場合、大投入、小投入はそれぞれバルブ開口度を大小に制御して行われる。この制御は、それぞれ予め定められた開口度D1,D2(D1>D2)で行われる。そのため、被計量物が液体のように流れの状態が安定した物性のものである場合であって、液体の密度変化又は貯槽の液面変化による液体の流速変化がないときは、大投入所要時間t1及び小投入所要時間t2はほぼ一定となる。
【0120】
しかし、液体の密度変化等が生じた場合であっても、上記(A)に示したとおり、大投入についてはp1n・kt1n、小投入についてはp2n・kt2nのパラメータは影響を受けず、特定のバルブ27が故障するか又は特定の計量器3のスパンが変動したときにこれらの値は基準値1から変化する。
【0121】
ところで、バルブ27_nと計量器3_nの組nにおいて、大小投入時間相対比率の比rnを、以下の式15と定義して取り上げると、バルブ27も計量器3も正常であればほぼrn=1が成立することは上述したとおりである。
【0122】
rn=p1n・kt1n/p2n・kt2n …式15
ここで、例えば計量器3_nのスパンが小さく変化した場合、計量器3_nがある値の重量であると計測する液体の体積量はスパン変化を起こす前に比べて増加するため、スパン変化の割合に応じて投入体積量が増え、それに伴い投入時間が増える。この場合、大投入時間及び小投入時間は同じ割合で影響を受けるため、上記式15において、kt1n及びkt2nは同一の割合で変化する。したがって、計量器3のスパンが変化してもrnの値は1に保たれる。
【0123】
なお、大投入時間t1を被計量物の重量が零からの時間測定値とした場合、時間測定の開始点直後はバルブ27が駆動応答の途上にあるため、流量変化の大きい部分の経過時間が含まれることになる。そのため、この場合は厳密な大投入時間の評価として好ましくない。したがって、0<W0<W1なる重量W0を設定し、被計量物の重量がW0〜W1の間の所要時間を大投入時間t1として測定することが好ましい。
【0124】
また、重量信号には振動的ノイズが含まれているので、上記(A)においてkt1n及びkt2nは複数回の平均値を取り、それぞれkt1na、kt2naとして、以下の式16によりrnaを求めるようにする。
【0125】
rna=p1n・kt1na/p2n・kt2na …式16
これにより、判定の信頼性を向上させることができる。
【0126】
小投入に関しても同様である。すなわち、バルブ開口度の変化する過程は流量が乱れたりバルブ動作時間がばらついたりする等の影響が考えられる。したがって、W1<W12<W2なるW12を設定し、被計量物の重量がW12〜W2の間の所要時間を小投入時間t2として測定することが好ましい。
【0127】
故障によってバルブ27_nの開口度が正常時の値から変化する場合、大投入の開口度と小投入の開口度とが同一の割合で変化しない限りは上記の比率rnaは1から変化する。しかし、バルブの異常の原因は、機械的動作不良又は電気回路の制御動作不良がほとんどであるため、同一の比率で大投入の開口度と小投入の開口度とが変化する確率は極めて小さい。したがって、rna=1であるにもかかわらず、p1n・kt1na又はp2n・kt2naが1から離れた場合には計量器3_nのスパン異常と判定し、rnaが1から離れた場合にはバルブ27_nの異常と判定することができる。
【0128】
本発明において、rnaが1付近であるか否かを判定するための境界値は以下のようにして定義する。
【0129】
上述したようにp1n・kt1n,p2n・kt2nの標準偏差はそれぞれs1n,s2nと求められるので、kt1n,kt2nのそれぞれM個の平均値がkt1na,kt2naであるとすると、p1n・kt1na,p2n・kt2naの標準偏差はそれぞれs1n/M1/2,s2n/M1/2となる。
【0130】
また、上述したようにp1n・kt1na,p2n・kt2naの標準偏差はそれぞれs1na,s2naと求められるので、バルブ27_nについての比率rna=p1n・kt1na/p2n・kt2naの標準偏差srnaは以下の式17により算出される。
【0131】
srna=(s1na2+s2na21/2 …式17
本発明では、回転式重量充填装置の稼働運転時において大小投入時間を測定し、それぞれM個の平均値を算出し、その平均値に基づいてバルブ・計量器スパンの異常判定を行う。ここで、計量器スパン又はバルブ異常判定には小投入時間測定値のM個の平均値及び上記式14を用いる。
【0132】
式14が成立する場合、バルブ及び計量器スパンの何れも異常なしと判定される。一方、式14が成立しない場合、バルブ及び計量器スパンの何れかが異常であると判定される。この場合、大投入時間測定値を用いてrnaを算出し、このrna及び以下の式18を用いて何れが異常であるのか判定する。
【0133】
1−3・srna≦rna≦1+3・srna …式18
この式18が成立すれば計量器のスパン異常であり、成立しなければバルブ異常であると判定する。
【0134】
(C)計量器のスパン異常が検出された場合のスパン補正
回転式重量充填装置1の稼働運転中に上記(B)において計量器3のスパン異常が判定された場合であって、自動的にスパン補正を実行するような設定となっているときは、計量器nに対してスパン補正が自動的に実行される。
【0135】
スパン変化率を求めるには、被計量物の流量が小さく、しかも計量器3に対して与える振動外乱が少ないために、測定値のばらつきが比較的少ない小投入時間の方を用いることが好ましい。
【0136】
調整モードにおいて計量器3のスパンにより充填動作が行われ、そのときの小投入時間から求められ正規化された小投入時間相対比率はp2n・kt2n=1であった。仮に調整モードにおける計量器3_nのスパンがKnであって、稼働運転中における計量器3_nのスパンが0.9Knに減少したとすると、小投入時間相対比率kt2nは1/0.9に増加するため、稼働運転時に求められたp2n・kt2naも1から1/0.9に増加する。したがって、稼働運転中に上記(B)においてスパン異常であると判定された場合、計量器3_nのスパンにp2n・kt2naの値を乗ずる。すなわち、計量器3_nの調整モードにおけるスパンをKn、稼働運転時の修正スパンをKn’とすると、Kn’は以下の式19により算出される。
【0137】
Kn’=p2n・kt2na・Kn …式19
本発明において、この式19を用いて自動的にスパン補正が実行される。
【0138】
(D)計量器の異常が検出された場合のタイマー充填
スパン異常の識別判定が上記(B)に示すようにしてなされた場合であっても、回転式重量充填装置1の仕様により重量測定値、大小投入時間の測定値にばらつきが大きい等のために、上記(C)に示す手順により計量器のスパン補正ができないようなとき、及び風袋計測または零点計測などの他の過程において計量器の異常が検出されたとき又は分銅検査等によって計量器の異常が検出されたとき等に、後述するタイマー充填が実行される。
【0139】
なお、貯槽の液面高さ及び液体密度変化による影響は、特定のバルブ・計量器の組も、それ以外の組も等しく受けることになる。本発明では、この現象に基づいてタイマー充填が実行される。
【0140】
本発明におけるタイマー充填では、次のようにして特定のバルブ及び計量器の組に係る大投入時間及び小投入時間が決定される。
【0141】
特定の計量器3_nが異常であると判定された場合、その異常が判定された時点における正常な計量器3_1〜3_n−1に対応するバルブ27_1〜27_n−1の大投入時間の平均値である{t11+t12+…+t1(n−1)/(n−1)}を、上記(A)において説明した係数p1nで除することにより、バルブ27_nの大投入時間t1nを算出する。すなわち、以下の式20により、大投入時間t1nを算出する。
【0142】
t1n={t11+t12+…+t1(n−1)/(n−1)}/p1n
={t11+t12+…+t1(n−1)/(n−1)}/kt1na …式20
なお、上記のバルブ27_1〜27_n−1の大投入時間の平均値を複数回算出し、その複数個の平均値の平均値を、係数p1nで除することにより、バルブ27_nの大投入時間t1nを算出するようにしてもよい。
【0143】
ここで、例えば現時点の液体の密度が調整モードの95%の値に変化していた場合であれば、すべてのバルブ27の大投入時間(t11,…,t1(n−1),t1n)は、調整モードにおける当該大投入時間(t11’,…,t1(n−1)’,t1n’)より1.05%増加していることになる。したがって、大投入時間t1nは、次のようにして算出される。
【0144】
t1n={t11+t12+…+t1(n−1)/(n−1)}・[t1n’/{t11’+t12’+…+t1(n−1)’/(n−1)}]
={(t11+t12+…+t1(n−1))・(t11’+t12’+…+t1(n−1)’)}・t1n’
=1.05・t1n’
このように、異常と判定された計量器3nを除く計量器3_1〜3_n−1に対応するバルブ27_1〜27_n−1の大投入時間の測定結果に基づいて、調整モードにおける大投入時間t1n’より長い大投入時間t1nが得られるようにする。この場合、バルブ27nが充填過程の大投入位置に到達したときに、バルブ27nの開口度を大にして上記の演算結果の時間の長さ分だけ大投入を実行させる。
【0145】
また、小投入時間も大投入時間と同様にして算出される。すなわち、バルブ27n以外のバルブ27_1〜27_n−1の小投入時間の平均値を求め、その値を係数p2nで除することにより、バルブ27nの小投入時間を算出する。そして、バルブ27nが充填過程の小投入位置に到達したときに、バルブ27nの開口度を小にして演算結果の時間の長さ分だけ小投入を実行させる。
【0146】
なお、バルブ27の数が比較的多い場合には、異常な計量器3_nに係るバルブ27nの大投入時間が含まれていてもすべてのバルブ27_1〜27nの大投入時間の平均値の変動はわずかであるから、すべてのバルブ27_1〜27_n−1の大投入時間の平均値を、係数p1nで除することにより、バルブ27_nの大投入時間t1nを算出するようにしてもよい。
【0147】
また、このように特定のバルブ27n以外のバルブ27_1〜27_n−1の大投入時間の平均値を用いたり、すべてのバルブ27_1〜27nの大投入時間の平均値を用いたりする以外にも、例えば全体の2/3程度のバルブの大投入時間の平均値を用いるようにしてもよい。どの程度の数のバルブの大投入時間の平均値を用いればよいのかは、バルブ27nの大投入時間による影響が少なく、しかもすべてのバルブ27_1〜27nに共通な変動要因が可能な限り含められるか否かを基準にして定めればよい。バルブ27の数が比較的多い場合は、応答遅れが生じない程度に、バルブの数とそれらのバルブの大投入時間の平均値の数とを適宜選択することが望ましい。
【0148】
このように回転重量充填装置1が稼働運転している場合であって、特定の計量器3_nに異常が発生したとき、他の正常な計量器3_1〜3_n−1とバルブ27_1〜27_n−1との組に係る大投入時間(小投入時間)の測定値と、計量器3_nに係るバルブ27_nのその他のバルブ27_1〜27_n−1との特性差を表す係数とに基づいて、バルブ27_nの大投入時間(小投入時間)を算出し、その算出した大投入時間(小投入時間)にしたがって充填処理(タイマー充填)を実行する。これにより、高精度で正確な所定量充填が可能となる。
【0149】
その他の正常なバルブ27_1〜27_n−1の大投入時間(小投入時間)には、異常なバルブ27_nの大投入時間(小投入時間)を算出するときの液体密度変化分及び流速変化分が含まれているため、従来のタイマー充填とは異なり、時間充填ではあっても、その都度これらの変化に応じた大投入時間(小投入時間)を算出することにより正しい重量値の被計量物を充填することができる。
【0150】
(回転式重量充填装置1の詳細な動作)
次に、以上のような基本動作を行う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1の詳細な動作について説明する。ところで、本発明の回転式重量充填装置の動作モードには、各種の調整を行うための調整モードと、計量動作を実行するための通常モードとがある。そこで、以下ではこれらの動作モード別に回転式重量充填装置1の動作を説明する。なお、各計量器3は既に正常状態に調整されているものとする。
【0151】
図5は、調整モードにおける各種の設定情報の設定処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える制御装置10の動作の流れを示すフローチャートである。また、図6は、各種の設定情報を説明するためのグラフである。
【0152】
オペレータは、制御装置10の入力装置32を用いて、大投入設定量W1、小投入設定量W2、大投入時間測定用基準値W0、小投入時間測定用基準値W12、及び評価サンプル数Mを入力する。ここで、大投入設定量W1は、大投入過程において充填されるべき被計量物の重量を示しており、実際の充填処理において被計量物の重量がこの大投入設定量W1に達したときに大投入過程から小投入過程への切り替えが行われる。また、小投入設定量W2は、小投入過程において充填されるべき被計量物の重量を示しており、実際の充填処理において被計量物の重量がこの小投入設定量W2に達したときに小投入過程から安定待ち過程への切り替えが行われる。
【0153】
また、大投入時間測定用基準値W0は後述するようにして大投入時間を測定するための値であり、小投入時間測定用基準値W12は同じく小投入時間を測定するための値である。
【0154】
制御装置10は、入力装置32を介して、大投入設定量W1、小投入設定量W2、大投入時間測定用基準値W0、小投入時間測定用基準値W12、及び評価サンプル数Mの入力を受け付け(S101)、これらの設定情報を各計量器3へ送信する(S102)。
【0155】
なお、各計量器3は、制御装置10が送信された設定情報を受信し、その設定情報をメモリ24に記憶しておく。
【0156】
図7は、調整モードにおける充填処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える各計量器3の動作の流れを示すフローチャートである。このフローチャートで示す処理は、充填処理中において一定時間間隔で繰り返し実行される。なお、このフローチャートでは、大投入過程及び小投入過程における充填処理のみを表しており、上述したように、この充填処理の前には零点計測処理及び風袋計測処理が、後には安定待ち処理及び安定計測処理が実行される。
【0157】
計量器3の備えるCPU23は、ロードセル13を用いて測定された容器の重量値(測定重量値)を読み込む(S201)。そして、CPU23は、読み込んだ測定重量値から風袋計測値を減ずることにより、被計量物重量値Wnnを算出する(S202)。
【0158】
次に、CPU23は、大投入過程中であるか否かを判定する(S203)。ここで大投入過程中ではないと判定した場合(S203でNO)、CPU23は後述するステップS210に進む。
【0159】
一方、大投入過程中であると判定した場合(S203でYES)、CPU23は、被計量物重量値Wnnが大投入時間測定用基準値W0に達したか否かを判定する(S204)。ここで、被計量物重量値Wnnが大投入時間測定用基準値W0に達していないと判定した場合(S204でNO)、CPU23は処理を終了し、大投入時間測定用基準値W0に達したと判定した場合(S204でYES)、CPU23は投入時間カウント用のカウンタ値C1nを1だけインクリメントする(S205)。
【0160】
次に、CPU23は、被計量物重量値Wnnが大投入設定量W1に達したか否かを判定する(S206)。ここで、被計量物重量値Wnnが大投入設定量W1に達していないと判定した場合(S206でNO)、CPU23は処理を終了し、大投入設定量W1に達したと判定した場合(S206でYES)、CPU23はバルブ27の開口度を小に設定する(S207)。
【0161】
次に、CPU23は、カウンタ値C1nに基づいて大投入時間を求め、その大投入時間を示す大投入時間データを、通信I/F25を介して制御装置10へ送信する(S208)。その後、CPU23は、カウンタ値C1nを0にリセットし(S209)、処理を終了する。
【0162】
上述したように、ステップS203にて大投入過程中ではないと判定した場合(S203でNO)、CPU23は、ステップS210に進み、小投入過程中であるか否かを判定する。ここで小投入過程中ではないと判定した場合(S210でNO)、上述した安定待ち処理に進む。
【0163】
一方、小投入過程中であると判定した場合(S210でYES)、CPU23は、被計量物重量値Wnnが小投入時間測定用基準値W12に達したか否かを判定する(S211)。ここで、被計量物重量値Wnnが小投入時間測定用基準値W12に達していないと判定した場合(S211でNO)、CPU23は処理を終了し、小投入時間測定用基準値W12に達したと判定した場合(S211でNO)、CPU23はカウンタ値C1nを1だけインクリメントする(S212)。
【0164】
次に、CPU23は、被計量物重量値Wnnが小投入設定量W2に達したか否かを判定する(S213)。ここで、被計量物重量値Wnnが小投入設定量W2に達していないと判定した場合(S213でNO)、CPU23は処理を終了し、小投入設定量W2に達したと判定した場合(S213でYES)、CPU23はバルブ27の開口度をゼロに設定する(S214)。
【0165】
次に、CPU23は、カウンタ値C1nに基づいて小投入時間を求め、その小投入時間を示す小投入時間データを、通信I/F25を介して制御装置10へ送信する(S215)。その後、CPU23は、カウンタ値C1nを0にリセットし(S209)、処理を終了する。
【0166】
制御装置10は、各計量器3から送信された大投入時間データ及び小投入時間データを受信し、それらのデータをメモリ35に記憶しておく。なお、大投入時間データ及び小投入時間データには各計量器3を識別するための識別データが含まれており、制御装置がその識別データを参照することによって、どの計量器3の大投入時間データ及び小投入時間データであるのかを判定することができる。
【0167】
図8及び図9は、調整モードにおける投入時間の異常の有無を判定するための判定式の生成処理に伴う、本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える制御装置10の動作の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、大小投入時間相対時間の分母はすべてのバルブ27_1〜27_nの投入時間の平均値を用いるものとし、各計量器3_1〜3_nから大投入時間データ及び小投入時間データがそれぞれm個(m>M)ずつ送られてきて制御装置10のメモリ35に記憶されているものとする。
【0168】
オペレータは、制御装置10に対して、投入時間の異常の有無を判定するための判定式を生成するように入力装置32を介して指示をする。
【0169】
この指示を受けた制御装置10が備えるCPU31は、バルブ27_1〜27_n毎に、大投入時間t11〜t1nの平均値t11a〜t1na及び標準偏差シグマs11〜s1n、並びに小投入時間t21〜t2nの平均値t21a〜t2na及び標準偏差シグマs21〜s2nを算出する(S301)。そして、CPU31は、すべてのバルブ27_1〜27_nの大投入時間の平均値t1a及び小投入時間の平均値t2aを算出する(S302)。
【0170】
次に、CPU31は、各バルブ27_1〜27_nの大投入時間相対比率kt11〜kt1n及び小投入時間相対比率kt21〜kt2nを算出する(S303)。具体的には、kt11=t11a/t1a,〜,kt1n=t1na/t1a、kt21=t21a/t2a,〜,kt2n=t2na/t2aを実行する。
【0171】
次に、CPU31は、各バルブ27_1〜27_nの大投入時間修正係数p11〜p1n及び小投入時間相対比率p21〜p2nを算出する(S304)。具体的には、p11=1/kt11,〜,p1n=1/kt1n、p21=1/kt21,〜,p2n=1/kt2nを実行する。
【0172】
次に、CPU31は、すべてのバルブ27_1〜27_nの大投入時間の標準偏差s1’及び小投入時間の標準偏差s2’を算出する(S305)。具体的には、s1’=(s11+…+s1n)/n、s2’=(s21+…+s2n)/nを実行する。
【0173】
そして、CPU31は、すべてのバルブ27_1〜27_nの大投入時間相対比率の標準偏差s1’’及び小投入時間相対比率の標準偏差s2’’を算出する(S306)。具体的には、s1’’=s1’/t1a、s2’’=s2’/t2aを実行する。
【0174】
次に、CPU31は、各バルブ27_1〜27_nの大投入時間について、p11・kt11a〜p1n/kt1naの標準偏差s11aからs1naを算出する(S307)。具体的には、s11=p11・s1’’ ,〜,s1n=p1n・s1’’を用いてs11a=s11/M1/2,〜,s1na=s1n/M1/2を実行する。
【0175】
同様にして、CPU31は、各バルブ27_1〜27_nの小投入時間について、p21・kt21a〜p2n/kt2naの標準偏差s21aからs2naを算出する(S308)。具体的には、s21=p21・s2’’ ,〜,s2n=p2n・s2’’を用いてs21a=s21/M1/2,〜,s2na=s2n/M1/2を実行する。
【0176】
次に、CPU31は、大小投入時間相対比率の比r1a〜rnaの標準偏差sr1a〜srnaを算出する(S309)。具体的には、sr1a=(s11a2+s21a21/2,〜,srna=(s1na2+s2na21/2を実行する。
【0177】
次に、CPU31は、ステップS307乃至S309において算出した各標準偏差s11a〜s1na、s21a〜s2na、及びsr1a〜srnaを3倍し、その値を判定式の上下限値としてメモリ35に記憶する(S310)。
【0178】
以下では、通常モードにおける回転式重量充填装置1の動作について説明する。
【0179】
通常モードにおける充填処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える各計量器3の動作は、図7を参照して説明した調整モードの場合と同様であるため、説明を省略する。
【0180】
図10及び図11は、通常モードにおける充填処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える制御装置10の動作の流れを示すフローチャートである。このフローチャートで示す処理は、充填処理中において一定時間間隔で繰り返し実行される。なお、以下の処理は、各計量器3_1〜3_nからの送信データ(大投入時間データ又は小投入時間データ)を受信する都度、実行される。
【0181】
まず、制御装置10が備えるCPU31は、計量器3からの送信データを読み込み(S401)、その送信データが大投入時間データであるか否かを判定する(S402)。ここで、当該送信データが大投入時間データであると判定した場合(S402でYES)、CPU31は、その大投入時間データに示されている大投入時間を、当該大投入時間データに係るバルブ27の大投入時間としてメモリ35に記憶する(S403)。なお、メモリ35には、各バルブ27_1〜27_nの最新のM個の大投入時間が記憶されているようにする。
【0182】
次に、CPU31は、ステップS403にて記憶された大投入時間に係るバルブ27(ここではバルブ27_kと表す)の大投入時間の最新のM個の平均値t1kaを算出する(S404)。そして、CPU31は、すべてのバルブ27_1〜27_nの大投入時間の最新のM個の平均値t1aを算出する(S405)。
【0183】
次に、CPU31は、バルブ27_kの大投入時間相対比率kt1kaを算出する(S406)。具体的には、kt1ka=t1ka/t1aを実行する。
【0184】
そして、CPU31は、大投入時間相対比率kt1kaに修正係数p1kを乗じて、その値をメモリ35に記憶し(S407)、処理を終了する。
【0185】
上述したステップS402において、送信データが大投入時間データではないと判定した場合(S402でNO)、CPU31は、当該送信データが小投入時間データであるか否かを判定する(S408)。ここで、小投入時間データではないと判定した場合(S408でNO)、CPU31は処理を終了する。
【0186】
一方、前記送信データが小投入時間データであると判定した場合(S402でYES)、CPU31は、その小投入時間データに示されている小投入時間を、当該小投入時間データに係るバルブ27の小投入時間としてメモリ35に記憶する(S409)。なお、メモリ35には、各バルブ27_1〜27_nの最新のM個の小投入時間が記憶されているようにする。
【0187】
次に、CPU31は、ステップS409にて記憶された小投入時間に係るバルブ27(バルブ27_k)の小投入時間の最新のM個の平均値t2kaを算出する(S410)。そして、CPU31は、すべてのバルブ27_1〜27_nの小投入時間の最新のM個の平均値t2aを算出する(S411)。
【0188】
次に、CPU31は、バルブ27_kの小投入時間相対比率kt2kaを算出する(S412)。具体的には、kt2ka=t2ka/t2aを実行する。
【0189】
そして、CPU31は、小投入時間相対比率kt2kaに修正係数p2kを乗じて、その値を小投入時間としてメモリ35に記憶する(S413)。
【0190】
次に、CPU31は、バルブ27_kの小投入時間が異常であるか否かを判定する(S414)。具体的には、調整モードにおいて算出した判定式を用いて、以下の式が成立するか否かにより判断する。
【0191】
1−3・s2ka≦p2k・kt2ka≦1+3・s2ka
ここでこの式が成立する場合はバルブ27_kの小投入時間は異常ではないと判定し、成立しない場合は異常であると判定する。
【0192】
CPU31は、バルブ27_kの小投入時間が異常ではないと判定した場合(S414でNO)、処理を終了する。一方、バルブ27_kの小投入時間が異常であると判定した場合(S414でYES)、CPU31は、大小投入時間相対比率の比rka=pkn・kt1ka/p2k・kt2kaを算出する(S415)。
【0193】
次に、CPU31は、大小投入時間相対比率kt1aの比rkaが異常であるか否かを判定する(S416)。具体的には、調整モードにおいて算出した判定式を用いて、以下の式が成立するか否かにより判断する。
【0194】
1−3・srka≦rka≦1+3・srka
ここでこの式が成立する場合は大小投入時間相対比率kt1aの比rkaは異常ではないと判定し、成立しない場合は異常であると判定する。
【0195】
CPU31は、大小投入時間相対比率kt1aの比rkaが異常であると判定した場合(S416でYES)、バルブ27_kに係る計量器3_kのスパン異常が発生したと判断し、スパン異常警報信号を表示装置33に出力する(S417)。一方、大小投入時間相対比率kt1aの比rkaが異常ではないと判定した場合(S416でNO)、CPU31は、バルブ27_kに異常が発生したと判断し、バルブ異常警報信号を表示装置33に出力する(S418)。
【0196】
図12は、通常モードにおいてスパン異常が発生した場合の処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える制御装置10の動作の流れを示すフローチャートである。上述したステップS416において、バルブ27_kに係る計量器3_kのスパン異常が発生したと判断した場合に、制御装置10は以下の処理を実行する。
【0197】
まず、制御装置10が備えるCPU31は、スパン異常の程度が小さいか否かを判定する(S501)。具体的には、以下の式が成立するか否かにより判断する。なお、ここでは小投入時間相対比率4シグマを基準に判断している。
【0198】
1−4・s2ka≦p2k・kt2ka≦1+4・s2ka
ここでこの式が成立する場合はスパン異常の程度が小さいと判定し、成立しない場合はその程度が大きいと判定する。
【0199】
CPU31は、ステップS501にてスパン異常の程度が小さいと判定した場合(S501でYES)、スパン係数Kkを補正する(S502)。具体的には、Kka・p2a・kt2kaをKkに代入する処理を実行する。
【0200】
次に、CPU31は、バルブ27_kに係る計量器3_kに対して、補正されたスパン係数Kkを送信し(S503)、処理を終了する。
【0201】
一方、ステップS501にてスパン異常の程度が大きいと判定した場合(S501でNO)、CPU31は、バルブ27_k以外のバルブの大投入時間の平均値t1kna及び小投入時間の平均値t2knaを算出する(S504)。
【0202】
次に、CPU31は、バルブ27_kの次回の大投入時間t1kqを算出する(S505)。具体的には、t1kq=t1kna/p1kを実行する。同様にして、CPU31は、バルブ27_kの次回の大投入時間t2kqを算出する(S506)。具体的には、t2kq=t2kna/p2kを実行する。
【0203】
次に、CPU31は、タイマー充填を実行することを表すためのタイマー充填フラグFftに1をセットする(S507)。これにより、後述するように、タイマー充填が実行されることになる。
【0204】
図13及び図14は、通常モードにおいてタイマー充填が実行される場合に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置1が備える各計量器3の動作の流れを示すフローチャートである。このフローチャートで示す処理は、充填処理中において一定時間間隔で繰り返し実行される。
【0205】
計量器3の備えるCPU23は、ロードセル13を用いて測定された容器の重量値(測定重量値)を読み込む(S601)。そして、CPU23は、読み込んだ測定重量値から風袋計測値を減ずることにより、被計量物重量値Wnnを算出する(S602)。
【0206】
次に、CPU23は、風袋計測値の読み込みタイミングであるか否かを判定する(S603)。ここで、風袋計測値の読み込みタイミングであると判定した場合、CPU23は、タイマー充填フラグFftが1であるか否かを判定し(S604)、1ではないと判定した場合(S604でNO)、通常の風袋計測処理を実行する(S606)。
【0207】
一方、ステップS604にてタイマー充填フラグFftが1であると判定した場合(S604でYES)、CPU23は、バルブ開口度を大に設定し(S605)、風袋計測過程から大投入過程に切り替える。
【0208】
また、ステップS603にて風袋計測値の読み込みタイミングではないと判定した場合(S603でNO)、CPU23は、大投入過程中であるか否かを判定する(S607)。ここで、大投入過程中であると判定した場合(S607でYES)、CPU23は、タイマー充填フラグFftが1であるか否かを判定し(S608)、1ではないと判定した場合(S608でNO)、通常の大投入の計量充填処理を実行する(S613)。
【0209】
一方、ステップS608にてタイマー充填フラグFftが1であると判定した場合(S608でYES)、CPU23は経過時間カウント用のカウンタ値Cktを1だけインクリメントする(S609)。
【0210】
次に、CPU23は、カウンタ値Cktが、上述したようにして算出されたバルブ27_kの大投入時間t1kqと同一であるか否かを判定する(S610)。ここで、同一ではないと判定した場合(S610でNO)、CPU23は処理を終了する。
【0211】
一方、ステップS610にてカウンタ値Ckt=t1kqが成立すると判定した場合(S610でYES)、CPU23は、バルブ開口度を小に設定し(S611)、大投入過程から小投入過程に切り替える。そして、CPU23は、カウンタ値Cktを0にリセットし(S612)、処理を終了する。
【0212】
また、ステップS607にて大投入過程中ではないと判定した場合(S607でNO)、CPU23は、小投入過程中であるか否かを判定する(S614)。ここで、小投入過程中ではないと判定した場合(S614でNO)、CPU23は処理を終了する。
【0213】
一方、ステップS614で小投入過程中であると判定した場合(S614でYES)、CPU23は、タイマー充填フラグFftが1であるか否かを判定し(S615)、1ではないと判定した場合(S615でNO)、通常の小投入の計量充填処理を実行する(S620)。
【0214】
また、ステップS615にてタイマー充填フラグFftが1であると判定した場合(S615でYES)、CPU23はカウンタ値Cktを1だけインクリメントする(S616)。
【0215】
次に、CPU23は、カウンタ値Cktが、上述したようにして算出されたバルブ27_kの小投入時間t2kqと同一であるか否かを判定する(S617)。ここで、同一ではないと判定した場合(S617でNO)、CPU23は処理を終了する。
【0216】
一方、ステップS617にてカウンタ値Ckt=t2kqが成立すると判定した場合(S617でYES)、CPU23は、バルブ開口度をゼロに設定し(S618)、投入処理を終了する。そして、CPU23は、カウンタ値Cktを0にリセットし(S619)、処理を終了する。
【0217】
このようにしてタイマー充填を行うことによって、計量器に異常が発生した場合であっても、稼働を停止させることなく、高精度な充填を継続して実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明に係る重量充填装置の制御方法及び重量充填装置は、計量器の異常を感度良く検出することができ、高精度な計量動作を維持する必要がある計量装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置の構成を示す平面図である。
【図2】計量載せ台上に載置された容器の重量を測定するための計量器の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の回転式重量充填装置の通常運転時における被計量物の重量の変化を示すグラフである。
【図5】調整モードにおける各種の設定情報の設定処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図6】各種の設定情報を説明するためのグラフである。
【図7】調整モードにおける充填処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える各計量器の動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】調整モードにおける投入時間の異常の有無を判定するための判定式の生成処理に伴う、本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図9】調整モードにおける投入時間の異常の有無を判定するための判定式の生成処理に伴う、本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図10】通常モードにおける充填処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】通常モードにおける充填処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図12】通常モードにおいてスパン異常が発生した場合の処理に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える制御装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【図13】通常モードにおいてタイマー充填が実行される場合に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える各計量器の動作の流れを示すフローチャートである。
【図14】通常モードにおいてタイマー充填が実行される場合に伴う本発明の重量充填装置である回転式重量充填装置が備える各計量器の動作の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0220】
1 回転式重量充填装置
2 回転体
3 計量器
10 制御装置
11 位置検出手段
12 載せ台
13 ロードセル
14 容器
15 スターホイール
16 搬送コンベヤ
17 スターホイール
18 搬送コンベヤ
21 増幅器
22 A/D変換器
23 CPU
24 メモリ
25 通信インタフェース
26 入出力装置
27 充填バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、
前記複数の供給装置に係る前記所定量の被計量物の充填に要する充填時間を算出するステップと、
算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る充填時間と他の供給装置に係る充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置又は当該特定の供給装置に係る特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定するステップと
を有することを特徴とする重量充填装置の制御方法。
【請求項2】
前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る充填時間と、他の供給装置に係る充填時間の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する、請求項1に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項3】
前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る充填時間と、前記複数の供給装置のそれぞれに係る充填時間の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する、請求項1に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項4】
前記算出するステップは、前記充填時間を繰り返し算出し、
前記判定するステップは、算出された前記特定の供給装置に係る複数の充填時間の平均値と、他の供給装置に係る複数の充填時間の平均値との差異に基づいて、前記特定の供給装置又は前記複数の計量器のうちの特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する、請求項1に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項5】
前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る複数の充填時間の平均値と、他の供給装置に係る複数の充填時間の平均値の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する、請求項4に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項6】
前記判定するステップは、前記特定の供給装置に係る複数の充填時間の平均値と、前記複数の供給装置のそれぞれに係る複数の充填時間の平均値の平均値との差異が所定の範囲内にあるか否かに基づいて、前記特定の供給装置又は前記特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する、請求項4に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項7】
被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に第1の所定量の被計量物を充填した後に第1の所定量よりも少ない第2の所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、
前記複数の供給装置に係る第1の所定量の被計量物の充填に要する第1充填時間を算出する第1の算出ステップと、
前記複数の供給装置に係る第2の所定量の被計量物の充填に要する第2充填時間を算出する第2の算出ステップと、
算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異、又は算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置及び当該特定の供給装置に係る特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生しているか否かを判定する第1の判定ステップと、
前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生していると判定された場合に、前記特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異と、前記特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異とを比較し、比較した結果に基づいて前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の何れに異常状態が発生しているのかを判定する第2の判定ステップと
を有することを特徴とする重量充填装置の制御方法。
【請求項8】
前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、前記特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異に基づいて、当該特定の計量器に係るスパン補正を実行するステップを更に有する、請求項7に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項9】
前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第1の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第1充填時間の平均値に基づいて算出するステップを更に有する、請求項7又は請求項8に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項10】
前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第2の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第2充填時間の平均値に基づいて算出するステップを更に有する、請求項7又は請求項8に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項11】
前記第1の算出ステップは、前記第1充填時間を繰り返し算出し、
前記第2の算出ステップは、前記第2充填時間を繰り返し算出し、
前記第2の判定ステップは、算出された前記特定の供給装置に係る複数の第1充填時間の平均値と他の供給装置に係る複数の第1充填時間の平均値との差異と、前記特定の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値と他の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値との差異とを比較し、比較した結果に基づいて前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の何れに異常状態が発生しているのかを判定する、請求項7に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項12】
前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、前記特定の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値と他の供給装置に係る複数の第2充填時間の平均値との差異に基づいて、当該特定の計量器に係るスパン補正を実行するステップを更に有する、請求項11に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項13】
前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第1の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第1充填時間の複数の平均値の平均値に基づいて算出するステップを更に有する、請求項11又は請求項12に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項14】
前記第2の判定ステップにより前記特定の計量器に異常状態が発生していると判定された場合、その後の第2の所定量の被計量物の充填時間を、前記他の供給装置に係る第2充填時間の複数の平均値の平均値に基づいて算出するステップを更に有する、請求項11又は請求項12に記載の重量充填装置の制御方法。
【請求項15】
被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置の制御方法において、
前記複数の供給装置に係る前記所定量の被計量物の充填に要する充填時間を算出するステップと、
前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置の異常を検出するステップと、
異常が検出された前記特定の供給装置とは異なる他の供給装置に係る充填時間に基づいて算出された充填時間によって、前記特定の供給装置を制御するステップと
を有することを特徴とする重量充填装置の制御方法。
【請求項16】
被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置において、
前記複数の供給装置に係る前記所定量の被計量物の充填に要する充填時間を算出する算出手段と、
当該算出手段によって算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る充填時間と他の供給装置に係る充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置又は当該特定の供給装置に係る特定の計量器に異常状態が発生しているか否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする重量充填装置。
【請求項17】
被計量物及び当該被計量物の容器である風袋を載置するための複数の載せ台と、当該載せ台のそれぞれに対して被計量物を供給するための複数の供給装置と、前記載せ台のそれぞれに載置された被計量物の重量を計測するための複数の計量器とを備え、前記供給装置を介して前記風袋に第1の所定量の被計量物を充填した後に第1の所定量よりも少ない第2の所定量の被計量物を充填し、当該充填された被計量物の重量を前記計量器によって計測する処理を繰り返し実行するように構成された重量充填装置において、
前記複数の供給装置に係る第1の所定量の被計量物の充填に要する第1充填時間を算出する第1の算出手段と、
前記複数の供給装置に係る第2の所定量の被計量物の充填に要する第2充填時間を算出する第2の算出手段と、
第1の算出手段によって算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異、又は第2の算出手段によって算出された前記複数の供給装置のうちの特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異に基づいて、前記特定の供給装置及び当該特定の供給装置に係る特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生しているか否かを判定する第1の判定手段と、
前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の少なくとも何れか一方に異常状態が発生していると判定された場合に、前記特定の供給装置に係る第1充填時間と他の供給装置に係る第1充填時間との差異と、前記特定の供給装置に係る第2充填時間と他の供給装置に係る第2充填時間との差異とを比較し、比較した結果に基づいて前記特定の供給装置及び前記特定の計量器の何れに異常状態が発生しているのかを判定する第2の判定手段と
を備えることを特徴とする重量充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−153817(P2006−153817A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348792(P2004−348792)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】