説明

重量計測式水分量測定装置

【課題】測定装置の運転中に含有水蒸気濃度が上昇する気体を、試料と前記輻射エネルギ放出面との間の空間から排除する。
【解決手段】本発明に係る重量計測式水分量測定のための測定装置10は、少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構11と、計量セル43と、この計量セルと連結可能な試料載置部材60とを備えている。試料載置部材は、この試料載置部材に試料62を載置することと、この試料載置部材から試料を除去することとが可能に構成されている。輻射エネルギ放出機構は輻射エネルギ放出面12を有しており、この輻射エネルギ放出面は、試料に対向して試料の表面の略々全域に均一強度の輻射エネルギを照射するようにしてある。この測定装置は、この測定装置の運転中に含有水蒸気濃度が上昇する気体を、試料と前記輻射エネルギ放出面との間の空間から排除するための排除機構を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重量計測式水分量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる水分量を測定するには、その試料を乾燥させ、その乾燥プロセスの前後における試料の重量を計測すればよい。しかしながらこの方法は、非常に手間のかかる方法であるため、高コストである上に測定誤差も大きくなりがちである。
【0003】
また、乾燥プロセスの進行途中で、試料の重量の減少量を計測するという方法も用いられている。所与の試料の重量の減少量は、温度と、乾燥を開始してからの経過時間と、テスト・コンパートメント内の条件との関数となり、その重量は、その試料の乾燥重量に漸近する重量−時間曲線に従って変化して行く。所与の試料に適用すべき重量−時間曲線は比較試験によって求められ、その曲線は近似式によって数学的に表される。現在利用可能なエレクトロニクス技術を適当に組込んだ重量計測式水分量測定装置は、上記曲線のパラメータの計測値に基づいて、また更に、乾燥を開始してからの経過時間に基づいて、計算によって試料の水分量を求めることができ、そのようにして求めた測定値をディスプレイユニットに表示する。この方法を用いれば、物質を乾燥させるにしても、完全乾燥状態にまでする必要はなく、重量−時間線図における2つの測定点の座標を求めるだけで、十分に測定の目的を達することができる。
【0004】
上でも述べたように、試料の重量の変化は、概ね、温度と、乾燥を開始してからの経過時間と、テスト・コンパートメント内の条件との関数になる。しかるに、特に、テスト・コンパートメントに課される要求が非常に厳しいために、また、テスト・コンパートメントに構造上の問題があるために、市販のこの種の測定装置では、その測定精度に限界があった。
【0005】
ここで使用している「テスト・コンパートメント」という用語は、普段は測定装置のハウジングによって囲繞されており、試料の搬出入の際には開放可能な空間のことである。また、テスト・コンパートメントの中には、試料載置部材と、試料加熱手段とが配設される。そして、試料載置部材は重量計測装置に連結されている。
【0006】
多くの場合、試料は、例えば試料トレイなどの平坦で扁平な試料載置部材の上に、薄い層を成すようにひろげて載置される。試料トレイは、重量計測式水分量測定装置の中に装着したときに、その試料載置領域が水平になるようにしておくことが望ましく、そうすれば、試料がサラサラした低粘度の液体である場合にも、その試料が、試料トレイの(荷重方向に関して)最低位置となる箇所に集まってしまうのを防止することができる。
【0007】
また、試料加熱手段としては、様々な輻射エネルギ発生源が使用されており、例えば、放熱ラジエータ、マイクロ波発生器、ハロゲンランプ、それにクオーツランプなどが用いられている。以上に述べた種類の重量計測式水分量測定装置の一例を挙げるならば、例えば、ヨーロッパ特許EP 0 611 956 B1号公報に記載されているものがある。同特許公報の重量計測式水分量測定装置においては、計量パンに試料物質を載置する際には、その計量パンを重量計測式水分量測定装置の外部に取出すようにしている。またそのために、重量計測式水分量測定装置のうちの天秤部分を摺動可能な担持部材に載置してあり、その担持部材を抽斗のようにして重量計測式水分量測定装置のハウジングから引き出せるようにしている。また、輻射エネルギ発生源としては、リング形のハロゲンランプを使用しており、この測定装置の運転中はそのハロゲンランプが試料載置部材の真上に位置している。
【0008】
実験を行って確認されたところによれば、在来の重量計測式水分量測定装置の測定精度を低下させていた特に重大な原因は、使用している輻射エネルギ発生源の構造及び形状が不適当であることにある。例えば、多数の孔が形成された輻射エネルギ放出機構や、輻射エネルギの発生部位の形状が点状または線状である輻射エネルギ放出機構などを使用している場合には、試料に対する輻射エネルギの照射が不均一となり、試料上の幾つかの点状領域において輻射エネルギ密度が高くなり過ぎ、その何箇所かにおいて、熱により試料が損なわれることがある。
【0009】
また、輻射エネルギ放出機構が、薄くひろげられた試料の全域に亘って延展している場合には、試料とその輻射エネルギ放出機構との間の空間に、含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体の塊が形成されて滞留するために、試料からの更なる水蒸気の離脱が阻害されるおそれがある。このことは、乾燥プロセスに対する妨害となるものであって、乾燥継続時間に大きな影響を及ぼすおそれがあり、またその場合に、特に、輻射エネルギ放出機構と試料との間の空間に、温度に応じたランダムな対流が発生し、その対流の影響が測定結果に誤差をもたらすことになる。
【0010】
乾燥プロセスにおける妨害により生じる乾燥継続時間の誤差、及び/または、熱分解により生じる試料の重量計測誤差のために、上述した数学モデルを用いた解析によって得られる測定の精度が低く抑えられている。このような数学モデルを用いる方法の替わりに、可能な限りの水分を試料から駆逐することを必要とする周知の方法を採用することもできるのであるが、しかしながら、その方法では乾燥に要する時間が非常に長くなり、輻射エネルギ放出機構から放出される輻射熱の形態の輻射エネルギが長時間に亘って試料に照射されるため、試料が熱分解したり、酸化されたりするリスクが大きなものになる。
【0011】
以上に説明した事情から、重量計測式水分量測定装置によって水分量の確実な値を得ることは殆ど不可能となっている。そのため、物質の水分量をより高精度で測定するためには、今なお、周知のカール・フィッシャー滴定法が用いられている。この方法は、非常に手間がかかり、操作が不適切であることに起因する誤差が生じやすく、更に高コストでもある。
【特許文献1】ヨーロッパ特許EP 0 611 956 B1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、次のような重量計測式水分量測定装置を提供することにあり、即ち、その重量計測式水分量測定装置は輻射エネルギ放出機構を備え、その輻射エネルギ放出機構が試料に照射する輻射エネルギの分布を改善したものである。また更に、その重量計測式水分量測定装置は、輻射エネルギの分布を改善するのと引き替えに試料から水分を離脱させる脱水能力が損なわれることがないようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載した重量計測式水分量測定のための測定装置によって達成される。
【0014】
本発明に係る重量計測式水分量測定のための測定装置は、少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構と、計量セルと、該計量セルと連結可能な試料載置部材とを備えている。前記試料載置部材は、該試料載置部材に試料を載置することと、該試料載置部材から試料を除去することとが可能に構成されている。前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構は、輻射エネルギ放出面を有しており、該輻射エネルギ放出面は、試料に対向して試料の表面の略々全域に均一強度の輻射エネルギを照射するようにしてある。更に、前記輻射エネルギ放出機構は、荷重方向に関して試料の上方に配設されて試料の全体に亘って延展している。この測定装置は、この測定装置の運転中に含有水蒸気濃度が上昇する気体を、試料と前記輻射エネルギ放出面との間の空間から排除するための排除機構を備えている。
【0015】
前記排除機構は、様々な形態に構成し得るものである。
【0016】
本発明の第1の実施の形態に係る測定装置においては、前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構の少なくとも前記輻射エネルギ放出面が、試料に対して相対的に回転可能とされている。測定装置の運転中に、輻射エネルギの照射によって、また特に輻射熱の形態の輻射エネルギの照射によって、試料から水蒸気が離脱しはじめたならば、前記輻射エネルギ放出面と試料との間の空間に、含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体の塊が形成される可能性がある。しかるに、前記輻射エネルギ放出機構の前記輻射エネルギ放出面を回転させているため、その気体の塊のうちの前記輻射エネルギ放出面に隣接する部分が、前記輻射エネルギ放出面に引きずられて流動し、更に遠心力によって前記輻射エネルギ放出面の周縁部へ押しやられる。こうして前記輻射エネルギ放出面の周縁部へと移動した、水蒸気を高濃度で含有している気体は、例えば吸引機構により形成されている流れに引き込まれるなどして、そこから排除される。またこれとは別の可能な構成例として、前記試料載置部材の周縁部の隣接領域から、加熱された気体を排除するために、低温であるがゆえに比重の大きい気体を流入させるようにしてもよい。それによって、高温の気体がテスト・コンパートメント内で上昇するため、従来より知られた構成と同様にして、換気用のスリットを介してテスト・コンパートメントから流出させることができる。
【0017】
従って、回転可能に支持された前記輻射エネルギ放出面は、それを回転させておくだけで、排除機構として機能するものとなる。尚、前記輻射エネルギ放出面を回転させるということには、前記輻射エネルギ放出機構の全体を回転可能に支持して回転させるということも含まれる。回転させるための駆動システムは、アクティブ型駆動システムとすることもでき、パッシブ型駆動システムとすることもできる。アクティブ型システムは、例えば電気モータなどを用いたシステムであり、パッシブ型システムは、例えば、テスト・コンパートメント内の上昇流を形成している高温の空気などの気体によって駆動されるタービンなどに代表されるシステムである。
【0018】
上で説明したように、回転する輻射エネルギ放出面は、その輻射エネルギ放出面と試料との間の気体の塊のうちの一部を引きずり効果により流動させる。輻射エネルギ放出面の回転速度が同じであるならば、輻射エネルギ放出面の表面粗度を大きくするほど、前記輻射エネルギ放出面の周縁部へ流動させられる気体の流量が増大する。それゆえ、前記輻射エネルギ放出面の表面粗度は0.0001mm以上としておくことが好ましい。ただし、その表面粗度を大きくするほど、前記輻射エネルギ放出面の全域における輻射エネルギ分布の均一性は低下しがちとなる。しかるに、輻射エネルギ放出面を試料の表面に対して相対的に回転させるという概念は、輻射エネルギ分布を均一なものにするという目的を支援する利点を併せて提供する。更に、輻射エネルギ放出面の表面粗度は、輻射エネルギ放出機構から試料までの距離に適合した大きさにすることも必要である。この距離が小さいほど、その距離に合わせて選択される好適な表面粗度は細かくなり、なぜならば、回転する輻射エネルギ放出面によって乱れた空気の流れが発生し、その空気の流れが強すぎると、計量結果に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。更に、回転する輻射エネルギ放出面の適切な回転速度は、輻射エネルギ強度や温度に応じたものとなり、なぜならば、試料から離脱する水分の離脱速度は、一般的に、輻射エネルギ強度や温度に対して直接的な依存性を持っているからである。
【0019】
回転させることで分散効果が得られるため、更に、前記輻射エネルギ放出面が少なくとも1つの突条、溝、凹部、またはチャネル部を有するようにするとよい。前記輻射エネルギ放出面に設ける突条、溝、凹部、またはチャネル部の形状及び個数に関しては殆ど何の制約もない。
【0020】
ただし、前記突条の天頂面の形状及び寸法を、前記突条と前記突条との間に形成される凹部の形状及び寸法に等しくしておくことが好ましく、そうしておけば、前記輻射エネルギ放出面の回転中心と周縁部との間の輻射エネルギ分布の均一性を損なうことがない。
【0021】
第2の実施の形態に係る測定装置においては、試料と前記輻射エネルギ放出機構との間に、輻射エネルギ透過性材料から成る少なくとも1つの静止型排出誘導部材が配設されており、この静止型排出誘導部材が排除機構として機能するようにしてある。この実施の形態は、加熱された気体は、流入してくる低温で比重の大きい気体によって、前記輻射エネルギ放出面と試料との間の空間から排除され、前記輻射エネルギ放出面へ向けて押し上げられるという作用を利用したものである。低コストを維持しつつ可能な限り均一な輻射エネルギ分布を提供するという要求条件が、前記輻射エネルギ放出面の構造に対して大きな制約となっており、それについて以下に説明する。この要求条件を実現するための最も容易な方法は、前記輻射エネルギ放出機構の前記輻射エネルギ放出面を平坦面として、その輻射エネルギ放出面が、試料に対して平行となるようにすることである。しかしながら、そうした場合には、含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体が、試料と前記輻射エネルギ放出面との間の空間に滞留することになる。そのため、静止型排出誘導部材によって、水蒸気を大量に含有した気体を排除できるようにしているのであり、これが可能であるのは、静止排出誘導部材の形状が、加熱された気体を輻射エネルギ放出面の周縁部へ誘導するような形状とされているからである。ここで強調すべきことは、純粋に熱だけによって、輻射エネルギ放出面と試料との間の空間に必然的に発生する対流作用は、本発明でいうところの排除機構には該当しないということである。その対流作用が、静止型排出誘導部材に関連して発生することによってはじめて、本発明でいうところの排除機構に該当するものとなるのである。
【0022】
気体に含有されている水蒸気が、前記静止型排出誘導部材の表面で凝縮するのを防止するために、前記静止型排出誘導部材に部分吸収手段を備えるようにすれば理想的であり、この部分吸収手段は、輻射エネルギの僅かな部分を熱に変換することによって、前記静止型排出誘導部材の全体を、または、前記静止型排出誘導部材のうちの試料に対向している表面部分を加熱するものである。このような部分吸収手段として利用し得るものには、例えば、表面に貼着した金属蒸着フィルムや、静止型排出誘導部材の材料に混入した金属製フィラーなどがあり、また更に、静止型排出誘導部材の中に埋設した金属製インサート、金属箔、網体、芯材などがある。
【0023】
前記少なくとも1つの静止型排出誘導部材を前記輻射エネルギ放出面に連結した構成とすることもでき、また、前記少なくとも1つの静止型排出誘導部材を測定装置のハウジングの一部に連結した構成とすることもできる。
【0024】
前記静止型排出誘導部材の形状に関しては殆ど何の制約もなく、なぜならば、前記静止型排出誘導部材は輻射エネルギ透過性を備えているため、試料の表面における輻射エネルギ分布に対して極めて僅かな影響しか及ぼさないからである。前記静止型排出誘導部材の構成に関する理想的な選択肢は、円錐形状または半球面形状のキャップ部材、或いは、彎曲した板部材とするものである。前記静止型排出誘導部材の形態に関する唯一考慮すべき点は、加熱された気体が滞留しない形状にするということだけである。前記静止型排出誘導部材を平板状の板部材とする場合には、その板部材を、例えば荷重方向に対して角度αをなすように配設して、その傾斜角αのために、加熱された気体が少なくとも一方の側へ導かれるようにする必要があり、ここで角度αは、0°<α<90°の範囲内の角度である。
【0025】
第3の実施の形態に係る測定装置においては、前記輻射エネルギ放出面がその中心にベアリングを有しており、また、前記静止型排出誘導部材を備えている場合には当該静止型排出誘導部材もその中心にベアリングを有している。荷重方向に平行な回転軸心を中心として回転可能なシャフトが、そのベアリングに挿通されており、このシャフトの試料の方を向いた端部に少なくとも1つの運動型排出誘導部材が連結されている。前記輻射エネルギ放出面の面積と比べて、中心の孔及び前記シャフトの断面積が小さいほど、輻射エネルギ分布に対する悪影響が少なくなる。前記シャフトそれ自体が輻射エネルギを放出するようにすれば理想的である。また更に、前記シャフトから放出される輻射エネルギの大きさは、試料からそのシャフトまでの距離と、試料から前記輻射エネルギ放出面までの距離とに、適合した大きさとすることが好ましい。
【0026】
前記運動型排出誘導部材もまた、様々な形態のものとすることができる。例えば、前記輻射エネルギ放出面との間に小さな間隙を保ちつつ、前記輻射エネルギ放出面に沿って移動して行く一種のワイパーブレードのごとき部材とすることが考えられる。更にその他の可能な構成例として、前記シャフトの端部に複数のワイパーブレードを放射状に取付けた構成としてもよい。更に、タービンやポンプの羽根車の羽根板のように、そのワイパーブレードを、前記シャフトの軸心に対して径方向及び/または軸心方向に彎曲した形状とするのもよい。
【0027】
前記排除機構が発生させる流れの流量を大きなものにするには、前記輻射エネルギ放出面の回転方向を、前記少なくとも1つの運動型排出誘導部材が連結された前記シャフトの回転方向と逆方向にするのがよい。こうすることによって、試料に対する前記輻射エネルギ放出面の相対的な回転速度、並びに前記シャフトの相対的な回転速度を、比較的低速に抑えることができ、このことは、試料と前記輻射エネルギ放出機構との間の空間に、流れの大きな乱れが発生するのを抑制する上で非常に効果的である。
【0028】
ただし、前記静止型排出誘導部材と同様に、前記運動型排出誘導部材についても、それを円錐形状または球面形状のキャップ部材として、前記輻射エネルギ放出面の全域を覆って延展するようにすることができ、ただしその場合には、その運動型排出誘導部材を、輻射エネルギ透過性材料から成るものとする必要がある。
【0029】
また、前記静止型排出誘導部材に関連して先に説明したのと同様に、前記運動型排出誘導部材についても、少なくともその一部に部分吸収手段を備え、及び/または、少なくとも1つの突条、溝、チャネル部、または凹部を有するものとすることができる。
【0030】
更には、以上に述べた実施の形態の特徴を組合せた構成とすることも可能である。その場合には、例えば、本発明に係る排除機構として機能させるために、前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構の少なくとも前記輻射エネルギ放出面が、試料に対して相対的に回転するようにすると共に、前記少なくとも1つの運動型排出誘導部材が、前記輻射エネルギ放出面に取付けられており、更に、前記輻射エネルギ放出面がその中央にベアリングを有しており、また、前記第1の運動型排出誘導部材も必要とあらばその中央にベアリングを有している構成とすることもできる。更に、前記ベアリングを貫通してシャフトが延在しており、該シャフトが該ベアリングによって回転可能に支持されており、該シャフトの試料の方を向いた端部に、少なくとも1つの第2の運動型排出誘導部材が連結されており、そして、前記第1の運動型排出誘導部材が、前記第2の運動型排出誘導部材の回転方向と逆方向に回転するようにした構成とすることもできる。
【0031】
輻射エネルギ分布をできるだけ均一なものにするためには、前記輻射エネルギ放出面を荷重方向と直交する平面上へ射影した領域と、試料を荷重方向と直交する平面上へ射影した領域とが、互いに寸法及び形状が同一であるという条件が、満たされるようにすることが好ましい。
【0032】
この条件は、特に、前記輻射エネルギ放出面が実質的に平坦面であるという要件と、前記輻射エネルギ放出機構がその平坦面である輻射エネルギ放出面の全域に亘って均一な輻射エネルギ強度を有するという要件とが共に満足されている場合には、その平坦面である輻射エネルギ放出面を試料の表面に対して平行となるようにすることで、容易に満たし得るものである。
【0033】
更に、これら2つ要件は、例えば、発熱プレートを使用することによって、或いは、平板状の金属製ボディに金属箔発熱体を収容したものを使用することによって、かなり良好に満足し得るものである。例えば後者の場合、発生熱量に局所的なばらつきがあっても、金属製ボディの内部においてその発生熱量のばらつきが均されて解消されることにより、輻射熱の形態の輻射エネルギが、輻射エネルギ放出面の全域において均一な輻射エネルギ強度で放出される。
【0034】
また、前記静止型または運動型排出誘導部材が、輻射エネルギ放出面の全域を覆っている構成とすることが好ましく、そうすれば、前記輻射エネルギ放出面を汚染から防護することができる。
【0035】
また、前記静止型排出誘導部材が、着脱可能な連結具を介して輻射エネルギ源またはハウジングに連結されている構成とすれば理想的であり、そうすれば、清掃を行う際に、その静止型排出誘導部材をテスト・コンパートメントから取出し、清掃後に再装着することが可能になる。
【0036】
更に、前記少なくとも1つの動的排出誘導部材及び/または輻射エネルギ放出面が、着脱可能な連結具を介してシャフトに連結されている構成とするのも有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明に係る測定装置の詳細は、図面に示した実施の形態についての以下の説明を通して明らかにして行く。
【0038】
図1に測定装置10の側面図を示した。測定装置10はハウジング20を有しており、このハウジング20の中にテスト・コンパートメント30が設けられている。ハウジング20は可動ハウジング部材22と固定ハウジング部材21とに分割されている。固定ハウジング部材21の中に、計量セル43と、校正分銅操作機構44と、少なくとも1つの電子回路モジュール45とが配設されており、それら全てが信号伝達手段51によって互いに接続されている。電子回路モジュール45は、少なくとも1つの信号処理モジュールを含んでおり、ただしこの信号処理モジュールは図示していない。電子回路モジュール45は、更に、制御及び/または調節モジュールを含んでいることもある。計量セル43は、少なくとも1つの固定部46と、荷重入力部47とを有している。様々な種類の計量セルが知られており、それらのうちには、例えば、弾性変形可能な本体部材に歪ゲージを貼着したもの、電磁力補償方式の計量セル、振動ストリングを備えた計量セル、それに、静電容量式荷重センサなどがある。計量セル43の固定部46は、固定ハウジング部材21に固定連結されている。荷重入力部47には連結部材53が取付けられており、この連結部材53は、試料載置部材60を荷重入力部47に連結している。図示のごとく、試料載置部材60には、試料62を載置した試料トレイ61を装着できるようにしてある。尚、試料載置部材60を適当な設計とすることにより、試料62を試料載置部材60の上に直に載置するようにすることもできる。
【0039】
更に、連結部材53には校正分銅載置座48が形成されている。校正分銅操作機構44によって、校正分銅載置座48に校正分銅を載置することができ、それによって現在動作条件に応じた測定信号の適正な補正値を決定することができるようにしている。校正分銅操作機構44は、操作者が手動で作動させることもでき、測定装置10の制御によって作動させることもできる。補正値の決定がなされたならば、校正分銅49は、校正分銅操作機構44によって、校正分銅載置座48から引上げられて分銅受け50に押し付けられた状態で保持され、次回の校正サイクルが実行されるまでその状態に置かれている。補正値に偏心荷重誤差が入り込むのを防止するために、校正分銅49の質量中心が、または(複数の校正分銅49が使用されている場合には)複数の校正分銅49の合成質量中心が、試料載置部材60の重心、及び/または、試料トレイ61の重心、及び/または、試料の重心を通る軸線に近接しているようにすれば理想的である。この「偏心荷重誤差」(辺縁荷重誤差ともいう)とは、ある荷重を試料載置部材の中心に作用させて計量したときの測定重量に対する、同一の荷重を試料載置部材の中心から外れた位置に作用させて計量したときの測定重量の偏差をいう。
【0040】
図1に示したように、可動ハウジング部材22は蓋部材として形成されており、その中に輻射エネルギ放出機構11が配設されている。ハウジング20の上部に設けられたヒンジ29を介して、この可動ハウジング部材22が固定ハウジング部材21に連結されており、ヒンジ29のシャフトは略々水平に延在している。可動ハウジング部材22はテスト・コンパートメント30の上側部分を形成している。図1に示した測定装置は運転状態にあるところを示しており、テスト・コンパートメント30の蓋部材は閉位置にある。
【0041】
図示した実施の形態では、輻射エネルギ放出機構11は、その主たる構成要素として、輻射エネルギ放出面12を有するディスク部材16と、シャフト13と、ベアリング14と、エネルギ分配部材15とを備えている。エネルギ分配部材15は、その中心にベアリング14が形成されており、複数の支柱23を介して可動ハウジング部材22に連結されている。輻射エネルギ案内部材15は、その内部に、輻射エネルギ発生器として構成された、放熱ラジエータ、金属箔発熱体、マイクロ波発生器、ハロゲンランプ、それにクオーツランプなどを収容することが可能である。ディスク部材16は、熱伝導性の良好な材料から成るものとすることが好ましい。熱伝導性が良好であること、比重が小さく計量であること、それに加工が容易であり耐蝕性を有することから、アルミニウムないしアルミニウム合金を用いると非常に有利である。これをアルミニウム製の部品とする場合には、コーティングを施すことが好ましく、理想的なコーティングといえるのは、黒色陽極酸化被膜のコーティングである。ただし、このディスク部材16をセラミック材料やガラス材料で製作するようにしてもよい。ベアリング14は回転シャフト13を保持しており、この回転シャフト13の回転軸心は、荷重方向に延在している。シャフト13の荷重方向を向いた端部は、輻射エネルギ放出面12を有するディスク部材16に連結されており、輻射エネルギ放出面12の形状及び寸法は、試料62が広げられて載置される領域の形状及び寸法に略々一致するようにしてある。エネルギ分配部材15の内部において、輻射エネルギ(多くの場合、輻射熱の形態の輻射エネルギである)が発生され、そのエネルギがディスク部材16に伝達され、そしてこのディスク部材16が、試料62に対向している輻射エネルギ放出面を介して、輻射エネルギを試料62に照射する。乾燥プロセスの実行中には、ディスク部材16は後述する駆動機構によって回転させられている。このディスク部材16の形状が平板状であること、このディスク部材16が試料62に対して平行になるように配設されていること、このディスク部材16が回転運動をすること、それに、このディスク部材16の表面構造が試料62からの距離に適合した表面構造であることによって、輻射エネルギ放出面12から荷重方向へ放出される輻射エネルギにより試料62を均一に加熱できるようになっている。
【0042】
尚、輻射エネルギ放出機構11の全体を回転させる構成とすることも可能である。そのようにする場合には、輻射エネルギ放出面12をエネルギ分配部材15に直接形成すればよい。ただし、この構成とすると、輻射エネルギ放出機構11への給電のための構成がより複雑なものとなる。その場合の給電は、例えば、カーボンブラシを備えた集電機構などを用いて行うとよい。
【0043】
可動ハウジング部材22の内部の輻射エネルギ放出機構11の上方には、吸引機構70が装備されている。吸引機構70は、モータを収容している固定アセンブリと、軸流型ファンロータとを備えている。図示した実施の形態では、前述のシャフト13がモータ17に連結されている。ただし、シャフト13を、直接的に、またはギヤボックスを介して、吸引機構70の駆動機構に連結するようにしてもよく、そうした場合には、吸引機構70の駆動機構と別にモータ17を備えずに済む。また、テスト・コンパートメント30の中を十分な流量及び流速をもって荷重方向と逆向きに気体が流れるようにするならば、ディスク部材16に、または回転可能に支持された輻射エネルギ放出機構11に、軸流型タービンの羽根車の羽根板と同様の複数枚の羽根板を装備した構成とすることもできる。この場合、それらの羽根を通過して流れる気体の流れによって、ディスク部材16が、または輻射エネルギ放出機構11の全体が、回転させられることになる。
【0044】
テスト・コンパートメント30の下側部分は、固定ハウジング部材21の中に形成されている。計量セル43に機械的に連結されている連結部材53は、テスト・コンパートメント30の下部の中へ突き出しており、そのため、この連結部材53に連結されている試料載置部材60は、完全にテスト・コンパートメントの内部に収容されている。断熱を施すために、計量セル43とテスト・コンパートメント30との間を仕切っている固定ハウジング部材21の壁体28を、少なくとも部分的に二重壁構造とするようにしている。壁体28が二重壁構造であることによって、そこに通気ダクト27が形成されており、この通気ダクト27に気体を流して、その気体をテスト・コンパートメント30へ流入させることができる。測定プロセスの実行中には、この通気ダクト27を流れる気体が壁体28を冷却することにより、ハウジングの計量セル43を収容している部分へテスト・コンパートメントから輻射熱が入り込まないようにすることができる。ただし、通気ダクト27の中を流れる気体をテスト・コンパートメントへ流入させることは、必ずしも必要なことではない。これに関しては、米国特許第6,920,781 B2号公報に開示されているような、簡明な構成の通気ダクトを使用するようにしてもよい。
【0045】
テスト・コンパートメント30の中の試料載置部材の下方に、第2の輻射エネルギ放出機構32を配設するようにしてもよい。ただしこの領域には、含有水蒸気量が飽和濃度に達した気体の塊が形成されることはないため、この第2の輻射エネルギ放出機構32の輻射エネルギ放出面は、必ずしも回転させるようにする必要はない。しかしながら、輻射エネルギ分布を均一なものとする上で、そのように構成することが望ましいのであれば、そのようにするのもよい。
【0046】
更に、通気ダクト27の中には様々な補助デバイスを配設することができる。例えば、テスト・コンパートメント30の中の静電気を除去するために、気体をイオナイザでイオン化するようにしてもよい。また、連結部材がテスト・コンパートメントの中へ突き出せるようにするために、壁体28は、貫通口24を備えている。この貫通口24は、全周が囲繞された円筒形の通路として形成されており、それによって、通気ダクト27の中を流れる気体が、この貫通口24からテスト・コンパートメント30へ流入したり、連結部材53に力を作用させたりすることがないようにしている。
【0047】
図2aに断面図で示したディスク部材116は、その輻射エネルギ放出面112に複数の突条117が付加されている点を除けば、図1に示したディスク部材16と同一構造のものである。基本的に、それら突条の形態に関しては何の制約も存在しない。ただし、水蒸気を高濃度で含有する気体をできるだけ良好に除去できるようにするという条件と、輻射エネルギ強度をできるだけ均一にするという条件とを共に満足するためには、おのずからそれに適した好適な形態というものがあり、そのような好適な形態の2つの具体例を、図2b及び図2cに平面図で示した。それら平面図は、図2aに矢印で示した方向Xから見た平面図である。
【0048】
図2bに示したディスク部材116は、断面形状が長方形の複数の細い突条117Bを備えている。それら突条117Bは彎曲しつつ放射状に延在している。そのため、それら突条117Bによって互いに区切られた複数の凹部118Bもまた、彎曲しつつ径方向に延在している。ポンプや通気ファンなどで周知のごとく、その湾曲の強さを適宜定めることによって、径方向の流速を必要に応じた適宜の流速とすることができる。突条117Bと突条117Bとの間に気体が滞留すると、試料と輻射エネルギ放出面との間の空間に流れの大きな乱れが発生するおそれがあるが、径方向の流速を適宜の流速とすることによって、かかる気体の滞留を防止することができる。もし、そのような流れの大きな乱れが発生したならば、計量セルによる測定結果に重大な影響を及ぼすおそれがある。尚、輻射エネルギ放出面に形成する突条をただ1本だけとしてもよく、その場合には、その1本の突条が強く彎曲しつつ径方向に延在するようにして、その突条が輻射エネルギ放出面においてスパイラルを形成するようにするとよい。
【0049】
図2cに示したディスク部材116も同様に複数の突条117Cを備えており、同図では見て分かり易いように、それら突条117Cの部分をハッチングで示した。ただしそれら突条117Cは、図2bの突条と異なり、その幅が、ディスク部材116の周縁部119へ近付くにつれて次第に拡大しており、それら突条117Cに天頂面の面積と、突条117Cと突条117Cとの間に形成された複数の凹部118Cの面積とが等しくなっている。これによって、輻射エネルギ強度の均一性が、図2bに示した具体例と比べて更に改善されている。突条117Cと凹部118Cとは、図2bに関連して説明したものと同様に、彎曲しつつ径方向に延在している。
【0050】
図3に、更に別の実施の形態を模式的に示した。同図に断面図で示したように、ハウジングに固設されたベアリング224によって回転可能に支持された輻射エネルギ放出機構211は、その中心に孔を有しており、この孔に設けたベアリング214が、この孔を貫通して延在しているシャフト213を支持しており、このシャフト213の端部にワイパーブレードが運動型排出誘導部材255として取付けられている。また、輻射エネルギ放出機構211には輻射エネルギ放出面212が形成されている。尚、ここでは、輻射エネルギ放出機構211を回転可能に支持した構成としているが、これに変更を加えて、図1に示したように輻射エネルギ放出面だけを回転させる構成としてもよい。運転時には、輻射エネルギ放出機構211を、シャフト213の回転方向と逆方向に回転させるようにしており、このようにしているのは、なるべく低い回転速度で大きな単位時間あたり排出量を得るためである。尚、シャフト213と輻射エネルギ放出機構211とは、各々を個別の駆動機構に連結するようにしてもよく、ただし図3では、そのような駆動機構は不図示とした。また、駆動機構に関する別の構成例として、輻射エネルギ放出機構211とシャフト213とをギヤ段を介して連結した駆動機構を使用することも考えられる。
【0051】
図4に断面図で示した輻射エネルギ放出機構311は、ハウジングに固定状態で取付けられており、その中心に孔314を有している。シャフト313が、この孔314に挿通され、ベアリングを介して回転可能に支持されている。このシャフト313の端部に、輻射エネルギ透過性材料から成るキャップ部材として構成された運動型排出誘導部材355が取付けられている。運動型排出誘導部材355は、図示例では半球面形状であるが、この形状以外の回転対称形状のものとしてもよく、例えば、円錐形状、段付円錐形状、等々としてもよい。また、運動型排出誘導部材355には、その輻射エネルギ放出機構311とは反対側を向いた表面に、突条、溝、凹部などを形成するのもよい。
【0052】
図5に断面図で示した輻射エネルギ放出機構411は、ハウジングに固定状態で取付けられている。この輻射エネルギ放出機構411の輻射エネルギ放出面412を覆うようにして、輻射エネルギ透過性材料から成るキャップ部材が配設されており、このキャップ部材は静止型排出誘導部材455として機能するものであり、輻射エネルギ放出機構411に固定状態で取付けられている。輻射熱の形態の輻射エネルギが照射されることによって試料から離脱した水蒸気を高濃度で含有した気体は、静止型排出誘導部材455へ向かって上昇し、そしてこの静止型排出誘導部材455の形状のために、その気体は輻射エネルギ放出機構411の周縁部419へ導かれ、或いは押しやられる。この静止型排出誘導部材455は、輻射エネルギ放出機構411の方を向いた内面に、部分吸収性コーティング456が形成されている。このコーティング456は、輻射エネルギ放出機構411から放出された輻射エネルギの一部を吸収することによって、静止型排出誘導部材455を加熱するものである。これによって、試料から離脱した水蒸気が低温の排出誘導部材455の表面で凝縮するという不都合な事態が回避される。尚、この実施の形態でも、図3に示したような、静止型排出誘導部材の外形に即した形状の運動型排出誘導部材を付加するようにしてもよい。
【0053】
図6に示したのは、以上に説明した複数の実施の形態の特徴を組合せた構成例である。ここに示した輻射エネルギ放出機構611は、そのかなりの部分が、図1の輻射エネルギ放出機構と同一構成であり、その主たる構成要素として、輻射エネルギ放出面612を有するディスク部材616と、中空シャフト613と、第2のベアリング624と、エネルギ分配部材615とを備えている。エネルギ分配部材615は、その中心に第2のベアリング624が設けられており、複数の支柱623を介して測定装置のハウジング620に連結されている。回転可能なディスク部材616には、第1の運動型排出誘導部材655が取付けられている。輻射エネルギ放出面612及び第1の運動型排出誘導部材655には、中心貫通口が形成されている。中空シャフト613の中にベアリング714が設けられており、このベアリング714がシャフト713を支持している。中空シャフト613及びシャフト713は、荷重方向に平行な共通の1本の回転軸心を中心として回転可能に支持されている。シャフト713の試料の方を向いた端部には、第2の運動型排出誘導部材755が連結されている。第1の運動型排出誘導部材655が取付けられている輻射エネルギ放出面612は、第2の運動型排出誘導部材755を駆動しているシャフト713の回転方向と逆方向に回転させるようにしてある。
【0054】
以上に提示した複数の実施の形態は、種々の特性並びに様々な特徴を備えた重量計測式水分量測定装置の幾つかの構成例を示したものである。それら実施の形態は、理解を容易にすることを目的として、数多くの特性並びに特徴を、複数の実施の形態に振り分けて説明したものであり、以上に示した数多くの特徴及び特性は、1つの測定装置の中に任意に組合せて利用し得るものである。更に、シャフトが輻射エネルギ放出機構の開口を貫通して延在する構成とする替わりに、シャフトが輻射エネルギ放出機構の外側を延在するようにした構成も本発明の範囲に包含される。また、本発明は、1本のシャフトだけを備えた構成にだけに限定されるものでもない。更に、連続的に回転運動を行うことは、本発明が機能する上で必須の条件ではない。即ち、シャフト及び/または輻射エネルギ放出面が、その回転方向を正方向と逆方向とに切換えて回転振動するようにしてもよく、そのようなものも本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、計量セルの構成やハウジングの構成を図1に例示した構成としたものに限定されず、試料の上方に輻射エネルギ放出機構を配設した構成のあらゆる公知の測定装置に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】測定装置の断面図である。この測定装置はハウジングを備えており、このハウジングの中にテスト・コンパートメントと計量セルとが並置されている。この測定装置は更に、輻射エネルギ放出機構を備えており、この輻射エネルギ放出機構は、ヒンジを介してハウジングに連結され実質的に水平に延在するヒンジ軸心を中心とした揺動運動により上下動する蓋部材の中に配設されている。この測定装置は更に、蓋部材の中に組込まれた吸引機構と、計量セルとテスト・コンパートメントとの間に設けられた断熱機能を提供する吸気通路とを備えている。
【図2a】図1の拡大詳細図として示した輻射エネルギ放出面の断面図であり、輻射エネルギ放出面は複数の突条を備えている。
【図2b】図2aに示した方向Xから見た図2aの輻射エネルギ放出面の平面図であり、第1の構成例に係る突条を備えた輻射エネルギ放出面を示した図である。
【図2c】図2bに示した方向Xから見た図2aの輻射エネルギ放出面の平面図であり、第2の構成例に係る突条を備えた輻射エネルギ放出面を示した図である。
【図3】回転可能に支持された輻射エネルギ放出機構を示した断面図であり、この輻射エネルギ放出機構は中心に孔を備えており、この孔を貫通して延在するシャフトの端部に運動型排出誘導部材が取付けられている。
【図4】ハウジングに固定状態で取付けられた輻射エネルギ放出機構を示した断面図であり、この輻射エネルギ放出機構は中心に孔を備えており、この孔を貫通して延在するシャフトの端部に、輻射エネルギ透過性材料から成る運動型排出誘導部材が取付けられている。
【図5】ハウジングの固定状態で取付けられた輻射エネルギ放出機構を示した断面図であり、この輻射エネルギ放出機構は、輻射エネルギ透過性材料から成る円錐形状の静止型排出誘導部材を備えており、この静止型排出誘導部材は、輻射エネルギ放出面を覆うようにして配設されて、輻射エネルギ放出機構に固定連結されており、更に、この静止型排出誘導部材はその内面に部分吸収層を備えている。
【図6】回転可能に支持された輻射エネルギ放出機構を示した断面図であり、この輻射エネルギ放出機構は第1の運動形排出誘導部材を備えており、また、中心の孔を貫通して延在するシャフトの端部に、第2の運動型排出誘導部材が取付けられている。
【符号の説明】
【0056】
10…測定装置
11、211、311、411、611…輻射エネルギ放出機構
12、112、212、412、612…輻射エネルギ放出面
13、213、313、713…シャフト
14、214、714…ベアリング
15、615…エネルギ分配部材
16、116、616…ディスク部材
17…モータ
20、620…ハウジング
21…固定ハウジング部材
22…可動ハウジング部材
23、623…支柱
24…貫通口
27…通気ダクト
28…壁体
29…ヒンジ
30…テスト・コンパートメント
32…第2の輻射エネルギ放出機構
43…計量セル
44…校正分銅操作機構
45…電子回路モジュール
46…固定部
47…荷重入力部
48…校正分銅載置座
49…校正分銅
50…分銅受け
51…信号伝達手段
53…連結部材
60…試料載置部材
61…試料トレイ
62…試料
70…吸引機構
90…イオナイザ
117、117B、117C…突条
118B、118C…凹部
119、419…周縁部
224…ハウジングに取付けられたベアリング
255、355…運動型排出誘導部材
314…中心孔
455…静止型排出誘導部材
456…部分吸収性コーティング
613…中空シャフト
655…第1の運動型排出誘導部材
624…第2のベアリング
755…第2の運動型排出誘導部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量計測式水分量測定のための測定装置(10)であって、少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、211、311、411、611)と、計量セル(43)と、該計量セル(43)と連結可能な試料載置部材(60)とを備え、前記試料載置部材(60)は、該試料載置部材(60)に試料(62)を載置することと、該試料載置部材(60)から試料(62)を除去することとが可能に構成されており、前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11、211、311)は、荷重方向に関して試料(62)の上方に配設されて試料(62)の全体に亘って延展している、測定装置(10)において、
前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構は、輻射エネルギ放出面(12、212、312、412)を有しており、該輻射エネルギ放出面は、試料(62)に対向して試料(62)の表面の略々全域に均一強度の輻射エネルギを照射するようにしてあり、更に、該測定装置は、該測定装置の運転中に含有水蒸気濃度が上昇する気体を、試料(62)と前記輻射エネルギ放出面(12、212、312、412)との間の空間から排除するための排除機構を備えている。
ことを特徴とする測定装置(10)。
【請求項2】
排除機構として機能させるために、前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(11)の少なくとも前記輻射エネルギ放出面(12)を、試料(62)に対して相対的に回転可能にしてあることを特徴とする請求項1記載の測定装置(10)。
【請求項3】
前記輻射エネルギ放出面(12)の表面粗度が0.0001mm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の測定装置(10)。
【請求項4】
前記輻射エネルギ放出面(112)は少なくとも1つの突条(117B、117C)、溝、チャネル部、または凹部(118B、118C)を有することを特徴とする請求項2又は3記載の測定装置(10)。
【請求項5】
前記突条(117C)の天頂面が占める領域の形状及び寸法が、前記凹部(118C)の形状及び寸法に等しいことを特徴とする請求項4記載の測定装置(10)。
【請求項6】
排除機構として機能させるために、輻射エネルギ透過性材料から成る少なくとも1つの静止型排出誘導部材(455)を備え、該静止型排出誘導部材(455)は試料(62)と前記輻射エネルギ放出機構(411)との間に配設されていることを特徴とする請求項1記載の測定装置(10)。
【請求項7】
前記静止型排出誘導部材(455)は、その少なくとも一部に部分吸収手段(456)を備えていることを特徴とする請求項6記載の測定装置(10)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの静止型排出誘導部材(455)は、前記輻射エネルギ放出面(412)または該測定装置(10)のハウジング部材(21、22)に連結されていることを特徴とする請求項6記載又は7記載の測定装置(10)。
【請求項9】
前記静止型排出誘導部材(455)は、円錐形状または球面形状のキャップ部材、彎曲した板部材、或いは、荷重方向に対して角度αをなすように配設された平板状の板部材であり、前記角度αは、0°<α<90°の範囲内の角度であることを特徴とする請求項6又は8記載の測定装置(10)。
【請求項10】
前記輻射エネルギ放出面(212)はその中心にベアリング(214)を有しており、また、前記静止型排出誘導部材を備えている場合には当該静止型排出誘導部材もその中心にベアリング(214)を有しており、排除機構として機能させるために、前記ベアリング(214)を貫通して延在するシャフト(213)を備え、該シャフト(213)は前記ベアリング(214)によって、荷重方向に平行な回転軸心を中心として回転可能に支持されており、該シャフト(213)の試料(62)の方を向いた端部に少なくとも1つの運動型排出誘導部材(255、355)が連結されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の測定装置(10)。
【請求項11】
前記運動型排出誘導部材(255)は、前記シャフトの軸心に対して径方向及び/または軸心方向に彎曲したワイパーブレードまたは羽根板状の部材であることを特徴とする請求項10記載の測定装置(10)。
【請求項12】
前記輻射エネルギ放出面(212)は、前記少なくとも1つの運動型排出誘導部材(255)が連結された前記シャフト(213)の回転方向と逆方向に回転するようにしてあることを特徴とする請求項10または11記載の測定装置(10)。
【請求項13】
前記運動型排出誘導部材(355)は、輻射エネルギ透過性材料から成る円錐形状または球面形状のキャップ部材であることを特徴とする請求項10記載の測定装置(10)。
【請求項14】
前記運動型排出誘導部材(355)は、少なくともその一部に部分吸収手段を備えており、及び/または、少なくとも1つの突条、溝、チャネル部、または凹部を有することを特徴とする請求項12記載の測定装置(10)。
【請求項15】
排除機構として機能させるために、前記少なくとも1つの輻射エネルギ放出機構(611)の少なくとも前記輻射エネルギ放出面(612)が、試料(62)に対して相対的に回転するようにしてあり、少なくとも1つの第1の運動型排出誘導部材(655)が、前記輻射エネルギ放出面(612)または前記輻射エネルギ放出機構(655)に連結されており、当該輻射エネルギ放出面(612)がベアリング(714)を有しており、また前記第1の運動型排出誘導部材(655)も必要とあらばベアリング(714)を有しており、前記ベアリング(714)を貫通してシャフト(713)が延在しており、該シャフト(713)は該ベアリング(714)によって、荷重方向に平行な回転軸心を中心として回転可能に支持されており、該シャフト(713)の試料(62)の方を向いた端部に少なくとも1つの第2の運動型排出誘導部材(755)が連結されており、前記輻射エネルギ放出面(612)は、前記少なくとも1つの第2の運動型排出誘導部材(755)が連結された前記シャフト(713)の回転方向と逆方向に回転するようにしてあることを特徴とする請求項1記載の測定装置(10)。
【請求項16】
前記輻射エネルギ放出面(12)を荷重方向と直交する平面上へ射影した領域と、試料(62)を荷重方向と直交する平面上へ射影した領域とが、互いに寸法及び形状が同一であることを特徴とする請求項1乃至15の何れか1項記載の測定装置(10)。
【請求項17】
前記輻射エネルギ放出面(12)を、実質的に平坦面とし、試料(62)の表面に対して平行となるようにしてあることを特徴とする請求項1乃至16の何れか1項記載の測定装置(10)。
【請求項18】
前記静止型または運動型排出誘導部材(355、455)は、前記輻射エネルギ放出面(412)の全域を覆っていることを特徴とする請求項17記載の測定装置(10)。
【請求項19】
前記静止型排出誘導部材(455)は、着脱可能な連結具を介して前記輻射エネルギ源(411)または前記ハウジング(20)に連結されていることを特徴とする請求項6乃至18の何れか1項記載の測定装置(10)。
【請求項20】
前記少なくとも1つの動的排出誘導部材(355)及び/または前記輻射エネルギ放出面(12)は、着脱可能な連結具を介して前記シャフト(13、313)に連結されていることを特徴とする請求項10乃至18の何れか1項記載の測定装置(10)。

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−20448(P2008−20448A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−179242(P2007−179242)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(599082218)メトラー−トレド アクチェンゲゼルシャフト (130)
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
【Fターム(参考)】