説明

重金属不溶化剤及び重金属汚染土壌処理剤

【課題】 重金属汚染土壌を安定化処理するために必要な重金属不溶化剤および重金属汚染土壌処理方法を提供する。
【解決手段】 平均ペリクレース結晶子径が10〜50nmであり、BET比表面積が5〜20m/gであり、且つ、平均粒子径が1〜5μmであって、粒子径が10μmを超える粒子の割合が10体積%未満であり、そして見かけ密度が0.3〜0.8g/cmの範囲にある酸化マグネシウムと、粉末キレート剤を含んでなることを特徴とする重金属不溶化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重金属汚染土壌に重金属不溶化剤を添加して、その溶出量を環境基準値以下に防止する重金属汚染土壌処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重金属汚染土壌の薬剤添加による重金属不溶化処理方法としては、
(1)セメント、石灰、石膏などに代表される固化材を用いる方法
(2)特許文献1に記載されている様なキレート能を有する添加剤と固化材との混合薬剤を使用する方法
(3)液体有機キレート剤を直接汚染土壌に添加処理する方法
(4)硫化ソーダ等の不溶化剤を添加して硫化物として不溶化する方法
が行われてきた。
【0003】
しかし、上記の処理方法では、以下の問題があり、土壌からの重金属の溶出を確実に抑える事が出来なかった。
(1)の処理方法は、固化材が固化する過程において、重金属がその結晶構造中又は土粒子中に固定化される事によって不溶化する方法であることから、固化材が固化するまで重金属の溶出量を抑えることができず、初期の抑制効果が劣る。また、鉛などの両性金属(酸性、アルカリ性の両方の領域で溶解度が増加する金属)は、使用する固化材の種類によって溶出量が増加したり、効果が無かったりする。更に高濃度の汚染土壌処理には効果が小さい。しかし、固化材による処理方法は、長期的安定性に優れている方法である。
(2)の処理方法は、固化材に有機キレート能を有する天然物質を混合することにより、(1)の処理方法の欠点を克服し、且つ、長期安定性を図った方法であるが、天然の物質は、化学合成により得られる有機キレート剤と比較してキレート能が劣る欠点がある。
(3)の処理方法は、高価格な合成キレート剤を使用するため、多量の汚染土壌を処理するには非常に高いコストがかかる。また、チオカルバミン酸系キレート剤を用いると、土壌が酸性の場合には二硫化炭素や硫化水素臭が発生し、セメント等の高アルカリ固化剤と併用した場合にはアミンガスを発生するため、処理作業環境上の問題も指摘されている。また、合成キレート剤は、少量でその効果を発揮するが、少量の薬剤を多量の土へ均一に混合する事が困難なことなどの欠点がある。更にこれらキレート剤は、過剰に添加すると一旦、形成された不溶性の錯体が再溶出する場合があり、処理に極めて注意が必要となる。
(4)の処理方法は、処理剤そのものから硫化水素が発生する事(特に土壌と混合する事により発生する)から作業環境が著しく悪化する欠点がある。
【特許文献1】特開2005−000712号公報
【特許文献2】特開2007−084360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、前述した重金属汚染土壌を安定化処理するために必要な重金属汚染土壌処理剤を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、この様な各種処理剤の問題を解決する為に鋭意検討した結果、この目的を達成しうる重金属汚染土壌処理剤を見出すに至った。すなわち、本発明によれば、酸化マグネシウム粉末と有機粉末キレート剤とを主たる構成成分とする事を特徴とする処理剤及びその処理剤を用いた重金属汚染土壌処理方法を提供できる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の酸化マグネシウムを重金属不溶化剤として用いることにより、汚染土壌に含まれる重金属を速やかに、且つ、長期間安定的に不溶化させることが可能となる。また、酸化マグネシウムと粉末キレート剤を併用することにより、更に初期不溶化効果に優れた土壌処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の対象となる土壌は、重金属、例えば水銀、鉛、クロム、砒素、カドミウム、セレン、フッ素、ホウ素で汚染された土壌である。また、重金属汚染土壌だけでなく、焼却飛灰など重金属を含有している廃棄物に対して用いても良い。
【0008】
本発明で使用される酸化マグネシウムは、平均ペリクレース結晶子径10〜50nm、BET比表面積5〜20m/g、平均粒子径が1〜5μm、粒子径が10μmを超える粒子の割合が10体積%未満であり、そして見かけ密度が0.3〜0.8g/cmである。これは、極めて高活性な粉末であり、汚染土壌に含まれる処理対象重金属及び土粒子と速やかに反応し、重金属を不溶化すると共に長期間安定的に不溶化させることができる。
【0009】
本発明で使用される酸化マグネシウムの平均ペリクレース結晶子径は、10〜50nm、好ましくは20〜40nmである。平均ペリクレース結晶子径は、酸化マグネシウム粒子を形成する結晶子の平均径であり、酸化マグネシウム粉末の反応性を表す指標の一つとなる。平均ペリクレース結晶子径が上記の範囲よりも小さいと、反応性が高くなりすぎることになる。一方、平均ペリクレース結晶子径が上記の範囲よりも大きいと、土壌硬化の発現が遅くなる。
【0010】
本発明で使用される酸化マグネシウムのBET比表面積は、5〜20m/g、好ましくは10〜20m/gである。BET比表面積は、酸化マグネシウム粉末の反応性を表す指標の一つとなる。BET比表面積が上記の範囲よりも小さいと、土壌硬化の発現が遅くなる。一方、BET比表面積が上記の範囲よりも大きいと、反応性が高くなりすぎることになる。
【0011】
本発明で使用される酸化マグネシウムの平均粒子径は、1〜5μmである。平均粒子径は、酸化マグネシウム粉末の分散性やハンドリング性を表す指標の一つとなる。平均粒子径が上記の範囲よりも大きいと、土壌が軟弱な場合に均一に分散させることが難しくなる。一方、平均粒子径が上記の範囲よりも小さいと、粉末のハンドリング性が低下する。
【0012】
本発明で使用される酸化マグネシウムにおいて、粒子径が10μmを超える粒子の割合は、10体積%未満である。酸化マグネシウム粉末の分散性を表す指標の一つとなる。粒子径が10μmを超える粒子の割合が10体積%を以上では、土壌が軟弱な場合に均一に分散させることが難しくなる。
【0013】
本発明で使用される酸化マグネシウムの見かけ密度は、0.3〜0.8g/cm、好ましくは0.5〜0.8g/cmである。見かけ密度は、酸化マグネシウム粉末の分散性やハンドリング性を表す指標の一つとなる。見かけ密度が上記の範囲よりも小さいと、粉末のハンドリング性が低下する。一方、見かけ密度が上記の範囲よりも大きいと、土壌が軟弱である場合に均一に分散させることが難しくなる。
【0014】
本発明の酸化マグネシウムは、海水に水酸化カルシウムなどのアルカリを加えて生成させた水酸化マグネシウム粒子を、650〜900℃の温度、好ましくは680〜900℃の温度にて焼成することによって製造することができる。海水から得られる水酸化マグネシウム粒子には、海水中の硫酸根が取り込まれるため、この水酸化マグネシウム粒子を上記の温度範囲にて焼成して得られる酸化マグネシウム粉末には、通常は硫酸根が0.5〜2.5質量%の範囲の量にて含まれる。焼成時間は、焼成温度や水酸化マグネシウム粒子サイズなどの要因によって異なるが、一般に10〜120分間である。
【0015】
本発明における「平均ペリクレース結晶子径」は、X線回折装置を用いて、管電圧40kV、管電流20mAの条件で酸化マグネシウム粉末ペリクレース結晶子の(200)面のX線回折パターンを測定して求められる数値である。標準試料にはシリコンを使用する。
【0016】
本発明における「BET比表面積」は、BET法により求められる数値である。
【0017】
本発明における「平均粒子径」及び「粒子径が10μmを超える粒子の割合」は、酸化マグネシウム粉末をイオン交換水に投入し、超音波分散処理を30秒間行なった後、レーザー回折式粒度分布測定装置(SKレーザーLMS−30、セイシン企業社製)を用いて粒度分布を測定して求められる数値である。
【0018】
本発明における「見かけ密度」は、容量50cmメスシリンダーに、酸化マグネシウム粉末を、メスシリンダーの50cmの標線まで少しずつゆっくり投入した後、メスシリンダー内の酸化マグネシウム粉末の質量を秤量して、下記の式により算出した数値である。
見かけ密度(g/cm)=酸化マグネシウム粉末の質量(g)/50(cm
【0019】
本発明で使用される粉末キレート剤は、好ましくは、フミン酸化合物と、液体有機キレート剤を含浸させた含水非晶質二酸化珪素粉末とからなる群から選ばれる。本発明で使用される酸化マグネシウムは、汚染土壌に対し単独で添加しても効果を発揮するが、粉末キレート剤と併用すると更に初期不溶化効果を与えると共にトータル添加量が減少し、コスト的にも有利になる。
【0020】
粉末キレート剤としては、好ましくは、フミン酸又はその塩である。フミン酸は、未だその化学構造が不明な高分子であるが、その分子内にはヒドロキシル基、ニトロソ基、カルボキシル基を有しており、キレート能とイオン交換能を持ち合わせた化合物である。また、その一部は、水可溶のフルボ酸等の低分子量化合物を含むが、殆ど水不溶の化合物である。
【0021】
フミン酸又はその塩を単独で汚染土壌処理に用いた場合、フミン酸は水不溶の重金属錯体を形成し、土壌中に固定化されるが、フミン酸に含まれる低分子量の化合物あるいは、フミン酸塩を用いた場合はその一部が水に溶け出す為に、重金属の溶出量を増加させることになることもあった。
【0022】
しかし、このような可溶性のフミン酸も重金属と反応し、金属錯体を形成している事が分かっている。また、金属錯体を形成しているフミン酸溶液にマグネシウム、カルシウム、アルミニウムを含む無機塩を添加する事により、フミン酸重金属錯体は、不溶性の凝集コロイドを形成する事も分かっている。
【0023】
したがって、汚染土壌にフミン酸を添加し、錯体を形成した状態に、酸化マグネシウムを併用すれば、フミン酸重金属錯体が、不溶性のコロイドになり、酸化マグネシウムと土壌中の水分及び炭酸イオンとの反応により形成される結晶構造に錯体の状態で封じ込められると考えられる。また、従来、セメント、石灰で固化処理できなかった鉛、水銀、砒素汚染土壌を処理する事ができ、即効性と長期安定性の両方を兼ね備えた処理物を得ることができる。
【0024】
本発明で使用するフミン酸化合物は、好ましくは、天然フミン酸、ニトロフミン酸、ニトロフミン酸ナトリウム塩、ニトロフミン酸カリウム塩、ニトロフミン酸マグネシウム塩に代表されるフミン酸化合物であれば何れを用いても良い。中でもニトロフミン酸を使用する事が特に好ましい。
【0025】
また、本発明で使用する粉末キレート剤は、液体有機キレート剤を含水非晶質二酸化珪素粉末に含浸させ、粉末化した、粉末合成有機キレート剤(以下粉末キレート剤と称す)を使用しても良い。
【0026】
液体有機キレート剤は、前述した如く作業性及び処理環境上の問題を抱えており、実際の施工においては、コスト面も含めて使用に至っていない。しかし、本特許記載の如く、含水非晶質二酸化珪素粉末に含浸させ粉末化することにより、炭酸カルシウム、ゼオライト、粘土鉱物などを増量剤として任意の濃度に希釈する事ができ、また、酸化マグネシウムと併用する事ができ、前述した汚染土壌と薬剤との混合性が改善され、作業性の問題を解決する事ができた。
また、液体有機キレート剤を含水非晶質二酸化珪素粉末に含浸させて使用する事により、チオカルバミン酸系キレート剤を土壌に添加したときに発生する硫化水素臭、アミン臭を抑える事ができ、作業環境問題を解決する事が出来た。特に液体有機キレート剤にピペラジンジチオカルバミン酸塩を使用する事により、これら悪臭を完全に抑える事が可能となった。
【0027】
本発明で粉末化に使用する含水非晶質二酸化珪素粉末は、好ましい含水量が5.0%以下であり、好ましい平均粒子径は3.0μm以下、好ましい比表面積は30m/g以上である。比表面積が30m/g未満の場合、吸水量が低く、液体キレート剤を少量しか粉末化できず効率が悪い。比表面積が大きい含水非晶質二酸化珪素粉末は、キレート剤と重金属から形成される錯体を吸着する特性を有しており、また、重金属を直接吸着する特性を増す効果も期待できる。
【0028】
液体有機キレート剤は、市販の液体有機キレート剤で良く、特に限定されるものではないが、好ましくはEDTA、ジチオカルバミン酸系化合物及びピペラジンジチオカルバミン酸塩が挙げられる。ジチオカルバミン酸系化合物としては例えばジチオカルバミン酸ナトリウム、ジチオカルバミン酸カリウムが挙げられる。ピペラジンジチオカルバミン酸塩としては例えばピペラジンジチオカルバミン酸ナトリウム、ピペラジンジチオカルバミン酸カリウムが挙げられる。ジチオカルバミン酸系化合物を用いる場合は、硫化水素及び二硫化炭素ガスが発生し、製造環境が悪くなるため、ピペラジンジチオカルバミン酸塩を用いる事が特に好ましい。
また、同キレート剤を用いて製造した粉末キレート剤は、前述した如く、汚染土壌を処理する際において従来のような異臭を発生させる事が無い為、極めて作業環境上、良好となる。
【0029】
粉末キレート剤は、粉砕機又は高速粉砕混合器に含水非晶質二酸化珪素粉末を入れ、そこに液体キレート剤を添加し、粉砕混合して得られる。
【0030】
液体キレート剤と含水非晶質二酸化珪素粉末の混合比は、含水非晶質二酸化珪素粉末100質量部に対し液体キレート剤10〜200質量部の範囲が好ましく、50〜100質量部の範囲がさらに好ましい。10質量部未満では、粉末キレート剤に含まれる有効成分が少なくキレート能を発揮できない。また、200質量部を超えると、粉末がブロッキング現象を起こし、粉体流動性が悪くなるばかりでなく、酸化マグネシウムに余剰の水分が移動し、混合物が固化する。
【0031】
酸化マグネシウムと粉末キレート剤の混合比率は、酸化マグネシウム100質量部に対し粉末キレート剤0.5〜20質量部の範囲が好ましく、3〜10質量部の範囲であることがさらに好ましい。
0.5質量部範囲未満の混合比率では、重金属の不溶化機能が劣り好ましくない。また、20質量部を超える範囲では、処理コストが高くなり問題となる。
【0032】
更に、本発明で得られる酸化マグネシウムと粉末キレート剤を前述した比率で混合した混合粉末品は、炭酸カルシウム、ベントナイト、カオリン、ゼオライトなどの市販の増量剤と任意の比率で混合することができる。混合比率は、添加量、コストによって選択され、特に限定されるものではない。また、増量剤としては炭酸カルシウムがコスト的に安価で有利である。
【実施例】
【0033】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明について更に詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
尚、実施例や比較例において、使用した含水非晶質二酸化珪素粉末は、塩野義製薬社のカープレックス80Dを使用した。また、酸化マグネシウム及び液体有機キレート剤、フミン酸は、工業用製品を用いた。
【0034】
酸化マグネシウムによる各種重金属汚染土壌処理結果を表2〜4に示す。使用した処理剤は、以下の通りである。
【0035】
実施例1〜12では、下記のものを使用した。
・酸化マグネシウムB剤:平均粒子径3.3μm、平均ペリクレース結晶子径31nm、BET比表面積15.8m/g、粒子径10μmを超える粒子の割合が7体積%、見かけ密度が0.66g/cmの酸化マグネシウム
製造手順:海水に、15質量%濃度の水酸化カルシウム懸濁液を、海水中のマグネシウム量に対するカルシウム量としてモル比で0.9となるように添加して、水酸化マグネシウム粒子を生成させ、水酸化マグネシウム懸濁液を得た。得られた水酸化マグネシウム懸濁液を固形分濃度が35質量%となるように濃縮した。濃縮した水酸化マグネシウム懸濁液を工業用水にて洗浄した後、ろ過、乾燥して水酸化マグネシウム粉末を得た。得られた水酸化マグネシウム粉末の平均粒子径は3.3μmであった。この水酸化マグネシウム粉末をロータリー型キルン焼成炉にて700℃の温度で30分間焼成して、酸化マグネシウム粉末を得た。
・フミン酸塩:CHO2(テルナイト)
・液体有機キレート剤:オリトールN12(オリエンタル技研工業)
・炭酸カルシウム粉末:市販品
・含水非晶質二酸化珪素粉末:カープレックス80D(塩野義製薬)、平均粒子径8.8μm、BET比表面積155〜195m/g
【0036】
比較例1〜15では下記のものを使用した。
・酸化マグネシウムA剤:平均粒子径15.8μm、平均ペリクレース結晶子径58nm、BET比表面積12.9m/g、粒子径10μmを超える粒子の割合が60体積%、見かけ密度が0.68g/cmの酸化マグネシウム(中国産軽焼マグネシウム)
・市販粉末重金属処理剤C剤:製品名メタシール(テルナイト)
・市販液体キレートD剤:オリトールN12(オリエンタル技研工業)
・高炉B種セメント:市販品
・石灰:市販品
【0037】
実施例で使用する液体キレート剤は、上述した如く含水非晶質二酸化珪素粉末100質量部に液体キレート剤100質量部を混合し、以下の手順で作製した。
(1)モルタルミキサーに100質量部の含水非晶質二酸化珪素粉末を入れる。
(2)攪拌混合しながら100質量部の液体キレート剤を徐々に添加し、均一な状態になるまで混合する。
(3)混合物を粉砕ミルに入れ、数分粉砕して粉末キレート剤を得る。
また、試験手順は、以下の方法に従い実施し、重金属の分析方法は、環境庁告示第46号に記載されている方法に準拠して実施した。
【0038】
<試験手順>
(1)汚染土壌を60g秤量し、含水率が20%になるように蒸留水を加えて混合した後、汚染土に対して所定量の酸化マグネシウムを添加する。
(2)ガラス棒にて5分間攪拌混合し、サンプル袋に入れ、15時間養生する。
(3)環境庁告示第18号に基づく土壌溶出量調査に係る測定法に準じて溶出量測定検液を調整する。
(4)原子吸光光度法(還元気化法を含む)により、重金属濃度を測定する。
(5)溶出液を100mlビーカーに70mlほど入れ、pH電極を浸しpHを測定する。
【0039】
使用した試作品の配合組成示すとともに各種汚染土壌の性状を以下に示す。
【表1】

【0040】
実施例1〜12及び比較例1〜15を表2〜4に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
比較例1〜15及び実施例1〜12の試験結果より、鉛、水銀、砒素の各種汚染土壌処理において酸化マグネシウムに粉末キレート剤を混合した不溶化剤は、セメント、石灰に代表される固化材、他の液体、粉末キレート剤及び純度60〜70%軽焼マグネシウム或いは、炭酸マグネシウムを焼成して得られる結晶子が600Å〜700Åの酸化マグネシウムに比較して、非常に優れた不溶化効果を示すことがわかる。
また、これらの実施例の結果から本発明の不溶化剤を用いて処理された土壌は、土壌環境基準値(溶出量Hg;0.0005(mg/L)以下、Pb;0.01(mg/L)以下、As;0.01(mg/L)以下)又は、土壌汚染対策法に示す第二溶出基準値(溶出量Hg;0.005(mg/L)以下、Pb;0.3(mg/L)以下、As;0.3(mg/L)以下)を満足している事がわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均ペリクレース結晶子径が10〜50nmであり、BET比表面積が5〜20m/gであり、且つ、平均粒子径が1〜5μmであって、粒子径が10μmを超える粒子の割合が10体積%未満であり、そして見かけ密度が0.3〜0.8g/cmの範囲にある酸化マグネシウムと、粉末キレート剤を含んでなることを特徴とする重金属不溶化剤。
【請求項2】
前記粉末キレート剤の含有量が、前記酸化マグネシウム100質量部に対し0.5質量部から20質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の重金属不溶化剤。
【請求項3】
前記粉末キレート剤が、フミン酸化合物と、液体有機キレート剤を含浸させた含水非晶質二酸化珪素粉末とからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の重金属不溶化剤。
【請求項4】
前記含水非晶質二酸化珪素粉末が、BET比表面積30m/g以上を有し、前記液体有機キレート剤を前記含水非晶質二酸化珪素粉末100質量部に対して10〜200質量部の範囲で含有することを特徴とする、請求項3に記載の重金属不溶化剤。
【請求項5】
前記液体有機キレート剤が、EDTA、ジチオカルバミン酸系化合物及びピペラジンジチオカルバミン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項3又は4に記載の重金属不溶化剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の重金属不溶化剤を用いてなることを特徴とする、重金属汚染土壌処理方法。

【公開番号】特開2009−114291(P2009−114291A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287591(P2007−287591)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】