重金属汚染土壌の浄化方法
【目的】本発明は安価に重金属汚染土壌を浄化する重金属汚染土壌の浄化方法を提供する。
【構成】重金属汚染土壌を解砕し、粒子径毎に分級された複数の粒子群とした後、最初に最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の前記最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、残余の、分級された粒子群の重金属汚染土壌を、小さい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌から大きい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、最後に最も粒子径の大きい粒子群の重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いは好ましくはpH2以下の領域を行う。
【構成】重金属汚染土壌を解砕し、粒子径毎に分級された複数の粒子群とした後、最初に最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の前記最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、残余の、分級された粒子群の重金属汚染土壌を、小さい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌から大きい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、最後に最も粒子径の大きい粒子群の重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いは好ましくはpH2以下の領域を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛などの重金属に汚染された土壌を酸性溶液により洗浄する浄化方法に関し、安価な費用で浄化が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
鉛などの重金属に汚染された土壌を浄化する技術として、a水洗分級法、b加熱処理法、c電気泳動法が知られている。
【0003】
水洗分級法は、水洗・分塊,もしくは物理的な土壌研磨等により粗い土壌粒子表面から汚染物質または汚染物質を多量に含む微粒子を分離,濃集,捕捉する方法である。
【0004】
水洗分級法の場合、土壌磨砕が不十分であると、粗い土壌粒子からの汚染物質または汚染物質を多量に含む微粒子が完全に除去されず、汚染物質を土壌指定基準値以下まで低減できない可能性がある。
【0005】
また、土壌磨砕時間を長くしたり、粗い土壌粒子表面を完全に研磨する高度磨砕装置を適用することにより、粗い土壌粒子からの汚染物質または汚染物質を多量に含む微粒子の除去率を向上させることは可能であるが、この場合においても高濃度に汚染された土壌では、汚染物質を土壌指定基準値以下まで確実に低減できるとは限らない。さらに、この場合、前者はランニングコストの増大,後者は装置イニシャルコストの増大となることが指摘されている。また、磨砕による微粒子量が増加し浄化土壌の歩留まりが低下させることとなる。
【0006】
加熱処理法は、土壌をロータリーキルンや電気抵抗炉等で加熱焼結またはガラス固化することにより、汚染物質である鉛等の重金属などを非常に安定な状態として封じ込める方法である。
【0007】
加熱処理法の場合、鉛などの重金属により汚染されている土壌の場合、加熱焼結またはガラス固化状態にするために、加熱焼結:800〜1200℃,ガラス固化:1600〜2000℃まで加熱する必要があり、大量の熱源を必要とし、ランニングコストの増大を招く。
【0008】
さらに、加熱時に発生する排ガスに対しても適切に処理する付加設備等が必要となり、イニシャルコスト増大につながる。また、汚染物質である鉛などの重金属を揮発除去していない場合、加熱焼結やガラス固化状態が完全に形成されていないと、汚染物質が再溶出する可能性のあることが指摘されている。
【0009】
電気泳動法は、汚染された土壌に対して陽極と陰極を設け、電解液等を加えた後に直流電流を流すことにより、汚染物質を電極近傍に集め、除去する方法である。
【0010】
電気泳動法の場合、低電圧,低電流で実施した場合、その浄化速度は非常に遅くなり、浄化完了まで非常に長時間を要する。また、高電圧,高電流で実施した場合、浄化速度は速くなると考えられるが、多量の電力を必要とし、ランニングコストが非常に高いものとなる。また、電極表面が汚染物質等で覆われてしまうと、その除去効率が劣化するため、随時、電極近傍に濃集された汚染物質を除去しなければならず、特別な構造をもった電極及び汚染物質回収装置が必要となることが指摘されている。
【0011】
上述したように、水洗分級法、加熱処理法、電気泳動法のいずれの方法にも、欠点があるため近年では浄化時間の短縮,鉛汚染物質の除去効率の向上を図ることを目的として、酸性溶液での薬剤抽出,洗浄が提案されている。
【0012】
例えば、特許文献1には酸性溶液添加時、もしくは添加後、強いアトリッションを加え、重金属汚染物質の除去する方法が記載されている。特許文献2では酸性溶液で重金属汚染物質を抽出後、その抽出液に界面活性剤を加え気泡により重金属を回収する方法が記載されている。特許文献3でも酸性溶液を使用した土壌抽出,洗浄法が記載されている。
【0013】
特許文献1〜3に開示されている浄化方法の場合、土壌性状,薬剤種類,薬剤濃度,洗浄時間,固液重量比等、多くのパラメータが存在するため、これらのパラメータの中から、最適条件を見出すことは非常に困難で、技術を具体化し、現地に適用する場合、種々の不利益が生じている。
【0014】
例えば、過度の薬剤濃度や洗浄時間,固液重量比で洗浄を行なった場合は、装置が大きくなり、ランニングコストが増大するため、浄化コストアップの要因となるばかりか土壌粒子の溶解による浄化土壌の歩留まりも低下する。また、薬剤濃度や洗浄時間,固液重量比が不足した条件下で洗浄を行なった場合、洗浄後の土壌を土壌指定基準値以下まで低減できない危険性がある。
【0015】
これらの問題を解決すべく、本発明者らは特願2004−099599号でコストパフォーマンスに優れた土壌浄化技術を開発した。
【0016】
【特許文献1】特開平11−197643号公報
【特許文献2】特開2002−371324号公報
【特許文献3】特開2001−149913号公報
【0017】
特願2004−099599号は、シルト・粘土質からなる細粒土壌等の高濃度に汚染された土壌を洗浄した酸性溶液を固液分離し、回収された酸性溶液を砂質からなる粗粒土壌等の低濃度に汚染された土壌の洗浄に使用するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら特願2004−099599号記載の方法では固液分離後の土壌への酸性溶液の付着が少なからず発生するため、固液分離装置によって酸性溶液を完全に回収することができず、再利用できる量が減少する。
【0019】
また、酸性溶液で洗浄された土壌を各粒子群毎に濯ぎ洗いを行う場合には、多くのリンス槽を必要とし、更に、それらリンス槽を設置するためのスペースも大きくなる。
【0020】
本発明は、これらの問題点を解決した、更にコストパフォーマンスに優れた土壌浄化技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、重金属に汚染された土壌(以下、重金属汚染土壌)を酸性溶液を用いて浄化する方法について鋭意検討し、シルト・粘土などの細粒汚染土壌(以下、細粒汚染土壌)や高濃度に汚染された汚染土壌(以下、高濃度汚染土壌)を洗浄して得られるスラリ中に、砂質などの粗粒汚染土壌(以下、粗粒汚染土壌)やより低濃度に汚染された土壌(以下、低濃度汚染土壌)を混合して洗浄を行うコストパフォーマンスに優れた土壌浄化技術を完成させた。本発明においてスラリは酸性溶液により浄化された汚染土壌と、汚染土壌を洗浄した後の酸性溶液を含む。
【0022】
図9は重金属の一つである鉛に汚染された土壌(以下、鉛汚染土壌)について、土壌粒子径毎の鉛含有率を調査した結果を示すもので、土壌粒子径に依存して鉛含有率は変化し、土壌粒子径が大きくなると鉛含有率は低下する。
【0023】
また、シルト・粘土などの細粒土壌の場合、土壌微粒子、特に粘土鉱物による永久電荷作用やアロフェンなどの変異電荷作用により重金属などの汚染物質と強固に結合しやすい。また、細粒土壌は粗粒土壌に比べ活性が高く重金属と難溶性の化合物、鉱物を形成しやすい。一方、砂質などの粗粒土壌の場合は、土粒子表面への物理吸着や付着などで比較的緩やかに結合している場合が多い。
【0024】
そこで、本発明は、重金属汚染土壌を土壌粒子径毎に分級し、土壌粒子径が小さい土壌を浄化する場合は低いpH領域すなわち高い酸容量(高い酸濃度および/または少ない酸性溶液量)とし、土壌粒子径が大きい場合は土壌粒子径が小さい場合に比べて高いpH領域、すなわち低い酸容量(低い酸濃度および/または多い酸性溶液量)とする。
【0025】
鉛汚染土壌は塩酸で洗浄すると最も除去効率が高い。図10、11は鉛汚染土壌を種々の酸性溶液で洗浄した場合の、洗浄後の鉛含有量を示し(攪拌翼の回転数300rpmの攪拌洗浄装置を用い15分間洗浄、塩酸濃度:図11は1mol/L、図10は3mol/L、塩酸量:図10は固液重量比1:1、図11は1:2での試験結果。)、図10は土壌粒子が粗粒(砂質)の場合、図11は土壌粒子が細粒(シルト・粘土)の場合を示す。
【0026】
本発明では入手価格や、鉛を除去する性能の観点より酸性溶液として、塩酸を用いることが好ましい。
【0027】
本発明は、
1 重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を解砕し、粒子径毎に分級された複数の粒子群とした後、最初に最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の前記最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の、分級された粒子群の重金属汚染土壌を、小さい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌から大きい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も粒子径の大きい粒子群の重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
2 最も粒子径の大きい粒子群を添加し、混合洗浄して得られたスラリを固液分離装置で土壌と酸性溶液に分離し、前記土壌の濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする1記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
3 濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整することを特徴とする1または2記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
4 濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整後、重金属汚染土壌を採取した地点もしくは近傍の非汚染土壌および/または腐葉土を混合することを特徴とする3記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
5 固液分離装置で分離された土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする1乃至4のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
6 重金属汚染土壌を解砕し、最も粒子径の小さい粒子群を粒子径0.075mm未満とし、最も粒子径の大きい粒子群を粒子径0.075mm以上2.0mm以下とし、前記粒子径0.075mm未満の粒子群を、前記粒子径0.075mm未満の粒子群と混合後においてpH−0.3以下となる酸性溶液で洗浄しスラリとした後、次に、粒子径0.075mm以上2.0mm以下に分級された粒子群の土壌を前記スラリに添加し、混合後においてpH0.5以下となる酸性溶液で洗浄することを特徴とする5記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
7 重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を汚染濃度毎に分別された複数の群とした後、最初に最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の、前記最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の群の重金属汚染土壌を、汚染濃度の高い重金属汚染土壌の群から汚染濃度の低い重金属汚染土壌の群を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も汚染濃度の低い重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
8 重金属が鉛で、酸性溶液が塩酸であることを特徴とする1乃至7のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
9 重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
10 重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、酸性溶液を用いた重金属汚染土壌の洗浄において、細粒汚染土壌や高濃度汚染土壌を洗浄した酸性溶液を余すことなく粗粒汚染土壌や低濃度汚染土壌の洗浄に再利用するため、安価な費用で大量の重金属汚染土壌が浄化でき産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、酸性溶液を用いて、重金属に汚染された土壌を浄化する方法において、特定の粒子径を境に分級された汚染土壌の複数の粒子群に対し、粒子径の小なるものからなる粒子群を酸性溶液で洗浄し、洗浄後の土壌と酸性溶液が混合してなるスラリへ、より粒子径の大なるものからなる粒子群を逐次添加し、混合洗浄することにより、粒子径毎に新たな酸性溶液を使用する場合に比べて酸性溶液の使用量を大幅に低減させたことを特徴とする。以下、本発明を具体的な工程を用いて詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明に係る土壌浄化方法の一実施形態を示す工程図で、重金属汚染土壌を大小二つの粒子径群に分級した場合を示す。図において、1は重金属汚染土壌を、単体粒子に解砕する工程(以下、第一の工程)、2は第一の工程により解砕された、重金属汚染土壌を分級機により特定の粒子径を境に分級する工程(以下、第二の工程)、3は、第二の工程で分級された粒子径の小なるものからなる粒子群を酸性溶液にて洗浄する工程(以下、第三の工程)、4は、第三の工程で生成される粒子径の小なるものからなる粒子群と酸性溶液が混合されたスラリに、粒子径の大なるものからなる粒子群を添加し混合洗浄する工程(以下、第四の工程)、5は、第四の工程により洗浄された土壌を固液分離装置により酸性溶液を分離する工程(以下、第五の工程)、6は、第五の工程により酸性溶液により洗浄された土壌を濯ぎ液により洗浄する工程(以下、第六の工程)を示す。
【0031】
[第一の工程]
第一の工程は,掘削された重金属汚染土壌を解砕手段により、土壌粒子が凝集し、塊状となった状態から単粒子にときほぐすことを目的とする。
【0032】
第一の工程により、単体粒子にときほぐされた土壌は、土壌粒子の大きさごとに分級が可能となる。また、酸性溶液による洗浄において、土壌粒子と酸性溶液の接触面積が増大し、洗浄時間が短縮し、汚染物質を除去する効率も向上する。土壌解砕機は、ドラムウオッシャー、パドルミキサー、ロットミル、アトライター、ボールミルなど既存の装置を利用する。
【0033】
尚、解砕する前、又は解砕後の土壌から、重金属汚染物質が付着しやすい炭ガラ、金属片などの異物を比重選別機、磁力選別機、浮遊選別機で取り除いたり、大きな土粒子を振動スクリーンで取り除くことが望ましい。
【0034】
[第二の工程]
第二の工程は、第一の工程で単体粒子にときほぐされた土壌を、特定の粒子径を境に粒子群毎に分級することを目的とする。
【0035】
分級は振動スクリーン、クラシファイア、スパイラル分級機、遠心分離機、サイクロン、フィルタプレスなどを単独または組み合わせて行う。
【0036】
分級する場合、粒子径0.075mm以下はシルト・粘土質、粒子径0.075mm超え2.0mm以下は砂質で土壌の性質が異なり、酸性溶液による洗浄条件が大きく相違するため、粒子径0.075mm以下と粒子径0.075mm超え2.0mm以下の少なくとも2種類の粒子群に分級することが好ましい。粒子径0.075mm以下と粒子径0.075mm超え2.0mm以下のそれぞれを更に分級しても良い。
【0037】
図2は鉛汚染土壌において、土壌と塩酸溶液の固液重量比を1:1〜1:2とした場合の塩酸洗浄後の鉛含有量に及ぼすpHの影響を示すもので、粒子径0.075mm未満のシルト・粘土質の場合は、pH=−0.3以下、好ましくは−0.5以上、−0.3以下とし、粒子径0.075mm以上2.0mm以下の砂質の場合は、pH=0.5以下、好ましくは0以上、0.5以下とすると優れた洗浄効果が得られる。
【0038】
すなわち、図2に示すとおり、粒子径0.075mm未満のシルト・粘土質の場合は、pH=−0.3以下、粒子径0.075mm以上2.0mm以下の砂質の場合は、pHが0.5以下にて鉛の溶解、抽出効果が優れていることが分かる。
【0039】
しかしながら、pHが低くなるほど鉛を溶解、抽出するほか、土壌を構成する主要鉱物、物質の溶解、抽出比率が増加し、浄化土壌の歩留まりが低下する上、洗浄後の液の処理、濯ぎに使用する水の量が増加するなどコストパフォーマンスが著しく低下するため、シルト・粘土質の場合はpH−0.5以上、砂質の場合はpH0以上が好ましい。
【0040】
尚、図2は攪拌洗浄装置(攪拌翼の回転数:300rpm)を用いて洗浄条件:1回×15分間での試験結果であり、pHは土壌に塩酸を添加混合した状態で測定したものである。
【0041】
[第三の工程]
第三の工程は、第二の工程で分級された二つの粒子群から粒子径のより小なるものからなる粒子群を酸性溶液にて洗浄することを目的とする。この洗浄においては、攪拌翼による混合洗浄等の土壌と酸性溶液を十分に混合できる装置であればよい。
【0042】
[第四の工程]
第四の工程は、第三の工程で生成される酸洗後の粒子径の小なるものからなる粒子群と酸性溶液が混合されたスラリに、更により粒子径の大なるものからなる粒子群を添加し混合洗浄することを目的とする。
【0043】
すなわち、前記のように、鉛に汚染された土壌を塩酸で洗浄する場合、粒子径の小さい土壌を洗浄する場合は土壌に塩酸を添加混合後のpHを低くするため高濃度の塩酸が必要であるが、粒子径が大きくなるに従い、低濃度の塩酸が利用できるので、粒子径の小さい土壌洗浄後の塩酸溶液をより粒子径の大きい土壌の洗浄に利用し、浄化コストを低減することが可能である。
【0044】
したがって、粒子径の小さい土壌を高濃度の酸性溶液で洗浄し、さらに、このスラリに粒子径の大きい土壌を加え、このスラリに含まれる残酸により洗浄することにより、大幅に浄化コストを低減することができる。
【0045】
また、鉛に汚染された土壌を分級し第三工程でシルト・粘土質,第四工程で砂質を塩酸で洗浄する場合、前記のように、第三工程のシルト・粘土質の場合、塩酸を混合した後の土壌のpHを−0.3以下とし、第四工程の砂質の場合、砂質を追加混合した後の土壌のpHを0.5以下とすることが好ましい。
【0046】
もし、第四工程での混合後のpHが0.5を超過している場合は、別途、新たな塩酸を追加投入すればよい。また、重金属汚染土壌と酸性溶液の固液重量比は、洗浄の効率、効果、設備への負荷、規模などを考慮すると1:1〜1:2が好ましい。
【0047】
この洗浄においても、攪拌翼による混合洗浄等の土壌と酸性溶液を十分に混合できる装置であればよい。
【0048】
尚、図3に示すように、上述の最適pH条件(シルト・粘土質の場合はpH=−0.3以下、砂質の場合は、pH=0.5以下)で洗浄を行なった場合、洗浄時間は土壌の粒子径によらず、5〜30分で洗浄後の鉛含有量が一定となるため、第三工程および第四工程の洗浄時間としては30分以下、洗浄装置のイニシャルコストを更に抑制する観点から好ましくは15分以下とすればよい。
【0049】
[第五の工程]
第五の工程は、第四の工程を経て洗浄された重金属汚染土壌から洗浄後の酸性溶液を固液分離装置により回収することを目的とする。固液分離装置は振動スクリーン、クラシファイア、スパイラル分級機、遠心分離機、サイクロン、フィルタプレス、膜/中空糸膜装置などの既存の装置を単独または組み合わせて行う。
【0050】
尚、固液分離装置で回収された酸性溶液を当該土壌の洗浄に再循環させる場合は、土壌を酸洗する酸性溶液が所定の洗浄能力を確保できるように新液との混合比率を適宜調整する。
【0051】
図4は第五の工程を具体化する設備の一例を示し、図において7は酸性溶液の濃度および/またはpHを検出する検出器、8は7の検出器で検出した酸性溶液の濃度および/またはpHに従い酸洗浄槽に使用する新液の量を調整する制御装置、9は新たな酸性溶液である新液の量を調整する流量調整弁、10は固液分離装置から回収した酸性溶液を当該土壌に使用する酸性溶液を供給する配管系に接合させる配管(再循環路)を示す。なお、図4は土壌を酸洗する酸性溶液が所定の洗浄能力を確保できるように新液との混合比率を適宜調整する一例である。
【0052】
[第六の工程]
第六の工程は、第五の工程で固液分離装置により酸性溶液を除去した土壌を、濯ぎ洗いをすることを目的とする。酸性溶液により洗浄された土壌を浄化土壌として再利用するために、土壌中に残留する汚染物質と薬剤成分を除去する。
【0053】
図6は、鉛汚染土壌において、シルト・粘土質を土壌と塩酸混合後のpHが−0.3以下,砂質を土壌と塩酸混合後のpHが0.5以下の条件下で洗浄を行い固液分離した後のそれぞれの土壌に対する、濯ぎ効果(濯ぎ洗い後の土壌中の鉛含有量)に及ぼす濯ぎ洗いにおけるpHの影響を示すもので、pH=2以下とするといずれの土壌も優れた濯ぎ効果が得られる。
【0054】
土壌を酸性溶液で洗浄すると、鉛を溶解、抽出するほか、土壌の構成成分である鉄、アルミニウム等も溶解する。一般に鉄、アルミニウムは、ある一定のpH以上(Fe2+:pH5.2以上,Fe3+:pH2.8以上,Al3+:pH4.3で沈殿開始)となると鉛などの重金属イオンを静電的に吸着する共沈現象を生じるが、図6に示すように、土壌/濯ぎ液混合後のpHが2以上で再付着の現象が生じて土壌中の鉛含有量が多い。
【0055】
土壌の溶解により発生する有機分やカルシウム等の存在および土壌の吸着性が相俟って、共沈現象が発生するpHよりも低いpH領域(鉄:pH2〜2.8、アルミニウム:pH2〜4.8)で抽出された土壌への再付着が発生し、土壌に残留すると考えられる。
【0056】
従って、シルト・粘土質、砂質ともに土壌と濯ぎ液の混合後のpHを2以下とすることにより、土壌の汚染物の再付着を防止することができ、優れた濯ぎ効果を得ることができる。なお、本効果は、濯ぎ洗いする土壌が、重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄後、固液分離装置により得られるものであればよく、洗浄方法を限定するものではない。濯ぎ液として水もしくは弱酸が好ましい。
【0057】
また、土壌の濯ぎ回数が不十分であると、汚染物質を大量に含んだ濯ぎ液が土壌に再度残留,付着するので、酸性溶液による洗浄効果が損なわれる。
【0058】
濯ぎ液の残留によりもたらされる汚染物質の土壌への再付着を防止するためには、濯ぎ液を土壌から完全に分離できればよいのであるが、現在の既存の固液分離装置では限界があり、ある一定の濯ぎ液が土壌に残留する。
【0059】
したがって、複数回、固液分離と土壌濯ぎを実施することにより、浄化後の土壌に対するこれらの影響を非常に小さいものとすることができるが、この場合、最適な濯ぎ回数,固液比等の条件で実施しなければ、濯ぎ液使用量,固液分離装置や濯ぎ洗い槽等の装置費が増大してしまう。
【0060】
そこで、本発明者らは、種々の濯ぎ洗い試験より、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A,固液分離後の土壌の含水率:B,酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0,土壌含有量指定基準:αと濯ぎ回数:N(0以上の整数)の間に下記(1)式の関係を見出した。
【0061】
なお、濯ぎ回数とは、酸性溶液洗浄後の固液分離された土壌を濯ぎ洗い後に再度、固液分離する工程を1工程とし、その繰り返し回数とする。
【0062】
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1―――――(1)
【0063】
図7に、種々の鉛汚染土壌サンプルに対する土壌と濯ぎ液の混合後のpHを2以下の条件下とした濯ぎ洗い試験の結果を示す。
【0064】
土壌の粒度に関わらず、上記(1)式の関係を満たす場合、浄化後の土壌の鉛含有量は環境省の定める含有量指定基準を下回るが(中抜きの記号)、満たさない場合は、浄化後の土壌の鉛含有量が環境省の定める含有量指定基準より上回った(中実の記号)。
【0065】
尚、土壌サンプルは、濯ぎ洗い前に、酸性溶液として塩酸溶液を用い、0.075mm以下のシルト・粘土質から成る細粒土壌の場合は塩酸溶液の混合後のpHを−0.5〜−0.3、0.075〜2.0mmの砂質からなる粗粒土壌の場合は塩酸溶液の混合後のpHを0〜0.5として15分間洗浄した。
【0066】
濯ぎ洗いを複数回おこなう場合において、各濯ぎ洗いでの固液比:A,含水率:B等の条件が異なる場合は、上記(1)式により、それぞれの条件下のNを算出しそれらの数値の算術平均または調和平均を用いればよい。濯ぎ洗いにおける上記(1)式の効果は、濯ぎ洗いする土壌が、重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄後、固液分離装置により得られるものであればよく、洗浄方法を限定するものではない。
【0067】
本発明は以上に述べた第一の工程〜第六の工程により、重金属汚染土壌を安価な費用で浄化することが可能である。尚、各工程の説明に用いた図1では各工程を一回実施する場合を示したが、本発明は所望の洗浄効果が得られるまで必要に応じて、いずれかの工程を複数回実施することが可能である。
【0068】
[土壌回復工程]
第六の工程後、浄化された土壌を埋め戻しする場合、掘削前の土壌と同じ値のpHに再調整し埋め戻しを行えばよい。尚、ここで同じ値とは、周辺環境の生態系が速やかに回復可能な程度であれば良く、同一であることを意味しない。
【0069】
pHを再調整する手段として、1 水による土壌洗浄を数回実施する。2 水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ性薬剤を添加する。3 非汚染が確認されている、アルカリ性の土壌および/または石炭灰を添加する。の一つもしくは複数を実施すればよい。
【0070】
また、早期に、埋め戻しを行った地点の土壌を周辺環境になじませる場合は、土壌pHの再調整が完了後、汚染土壌を採取した地点もしくは近傍の非汚染土壌および/または腐葉土を混合すればよい。
【0071】
以上の説明は、解砕後に土壌を大小二つの粒子径に分級する場合について述べたが、本発明は、解砕後の分級する粒子群の数を限定するものでなく、図5に示すように、解砕後、土壌を3つ以上の粒子径群に分級し、粒子径の小さいものから順次、酸性溶液で洗浄を行ってもよい。
【0072】
また、酸性溶液で洗浄する際に必要とする酸性溶液濃度は粒子径の他に土壌汚染濃度にも依存し、粒度構成が一定の場合、土壌汚染濃度が低くなると低い酸性溶液濃度で洗浄が可能となる。汚染濃度が異なる重金属汚染土壌を洗浄する場合について以下に述べる。
【0073】
図8は工程図で、図において、1は予め既知である重金属高汚染土壌(H)(重金属汚染土壌の高濃度汚染土壌)を酸性溶液にて洗浄する工程(以下、Aの工程)、2はAの工程により生成される高濃度汚染土壌と酸性溶液が混合されたスラリに、重金属低汚染土壌(L)(重金属汚染土壌の低濃度汚染土壌)を添加し混合洗浄する工程(以下、Bの工程)、3は、Bの工程により洗浄された土壌を固液分離装置により酸性溶液を分離する工程(以下、Cの工程)、4は、Cの工程により酸性溶液により洗浄された土壌を濯ぎ液により洗浄する工程(以下、Dの工程)を示す。洗浄,固液分離後の濯ぎ工程や土壌回復工程は粒子径毎に分級した場合に準じる。
【0074】
土壌粒度分布がほぼ同じの土地において、汚染物質種類,汚染物質流出過程,拡散状況等の影響により、平面および/あるいは深度方向に汚染濃度の高低が存在する場合に有効である。
【実施例1】
【0075】
同じ工場跡地より砂質土である高濃度鉛汚染土壌(A)および低濃度鉛汚染土壌(B)を採取した。
【0076】
高濃度鉛汚染土壌(A)に対し、固液重量比1:2で3.0mol/lの塩酸溶液を添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは洗浄開始直後で−0.3以下 、終了前で0であった。
【0077】
次に、高濃度鉛汚染土壌(A)と塩酸洗浄液のスラリに対し、低濃度鉛汚染土壌(B)を高濃度鉛汚染土壌(A)と同等の重量で添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは終了前で0.2であった。
【0078】
このスラリ土壌を遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水し、得られた浄化土壌を固液重量比1:2の水で濯ぎ洗いし、遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水、この濯ぎ洗い操作を3回繰り返し繰り返した。
【0079】
この時のすすぎ液におけるpHは0.6、1.2、1.7であった。さらに、消石灰を添加、混合して土壌を元の土壌と同じpH8.5とし、風乾した。この浄化土壌を環境省告示第19号の方法に準拠し、鉛含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【実施例2】
【0081】
工場跡地より採取した鉛汚染土壌に水を15%添加、パドルミキサーにより100rpm、10分間の解砕を行った後、水を固液重量比で1:1になるよう添加した。このスラリを攪拌翼の回転数300rpmで10分間水洗浄し、0.075mmの振動篩いで分級した。
【0082】
分級後の篩い下土壌に対し、固液重量比1:2で3.0mol/lの塩酸溶液を添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは洗浄開始直後、終了前ともに−0.3 以下であった。
【0083】
次に、洗浄後の篩い下土壌と塩酸洗浄液のスラリに対し、分級後の篩い上土壌を篩い下土壌の1.5倍の重量で添加し、10分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは終了前で0であった。このスラリを遠心分離器(3000rpm、10分間、脱水後の土壌含水率:40%)で脱水し、得られた浄化土壌を固液重量比1:2の水で濯ぎ洗いし、遠心分離器(3000rpm、10分間、脱水後の土壌含水率:40%)で脱水、この濯ぎ洗い操作を2回繰り返し繰り返した。さらに、消石灰を添加、混合して土壌を元の土壌と同じpH6.8とし、風乾した。この浄化土壌を環境省告示第19号の方法に準拠し、鉛含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
比較例1として、実施例2で用いた工場跡地より採取した鉛汚染土壌に水を15%添加、パドルミキサーにより100rpm、10分間の解砕を行った後、水を固液重量比で1:1になるよう添加した。このスラリを攪拌翼の回転数300rpmで10分間水洗浄し、0.075mmの振動篩いで分級した。
【0086】
分級後の篩い下土壌に対し、固液重量比1:2で3.0mol/lの塩酸溶液を添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは洗浄開始直後、終了前ともに−0.3以下であった。
【0087】
次に、洗浄後の篩い下土壌と塩酸洗浄液のスラリに対し、分級後の篩い上土壌を篩い下土壌の1.5倍の重量で添加し、10分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは終了前で0であった。このスラリを遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水し、得られた浄化土壌を固液重量比1:2の水を加えた後、消石灰を添加しpH3.0に調整し、濯ぎ洗いを行い、遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水した。
【0088】
その後、再度、固液重量比1:2の水を加え濯ぎ洗し、遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水した。さらに、消石灰を添加、混合して土壌を元の土壌と同じpH6.8とし、風乾した。この浄化土壌を環境省告示第19号の方法に準拠し、鉛含有量を測定した。結果を上述した表2に比較例1として合わせて示す。
【0089】
また、他の比較例として、実施例2での濯ぎ洗い操作を1回とし、それ以外の条件は実施例2と同じとした結果を上述した表2に比較例2として合わせて示す。
【0090】
表1、2の結果のように、本発明によれば、重金属汚染土壌に対し優れた浄化効果を確認することができた。さらに、表2の結果のように、酸性溶液での洗浄後にpH2以下の条件下で濯ぎ洗いを行なうことにより、優れた濯ぎ効果が得られた。また、最適な土壌の濯ぎ洗い回数を定義することにより、濯ぎ洗いにおける濯ぎ液(水)の使用量を低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態に係る重金属汚染土壌の浄化工程を示す図。
【図2】浄化後の土壌中の重金属(鉛)含有量に及ぼす土壌/酸性溶液(塩酸溶液)混合後のpHの影響を示す図。
【図3】浄化後の重金属(鉛)含有量に及ぼす酸性溶液(塩酸溶液)での土壌洗浄時間の影響を示す図。
【図4】固液分離装置から回収した酸性溶液の処理工程を示す図。
【図5】本発明の一実施形態の他の実施形態に係る重金属汚染土壌の浄化工程を示す図。
【図6】浄化後の土壌中の重金属(鉛)含有量に及ぼす土壌/濯ぎ液混合後のpHの影響を示す図。
【図7】酸性溶液で洗浄後の土壌に対する重金属(鉛)含有量に及ぼす濯ぎ洗い回数の関係を示す図
【図8】本発明の他の実施形態に係る汚染濃度の異なる重金属汚染土壌を浄化する工程を示す図。
【図9】重金属(鉛)汚染濃度と土壌粒子径の関係を示す図。
【図10】酸性溶液の種類と土壌(土壌粒子:0.075〜2.0mm)の浄化後の重金属(鉛)含有量の関係を示す図。
【図11】酸性溶液の種類と土壌(土壌粒子:0.075mm未満)の浄化後の重金属(鉛)含有量の関係を示す図。
【符号の説明】
【0092】
1 第一の工程
2 第二の工程
3 第三の工程
4 第四の工程
5 第五の工程
6 第六の工程
7 酸性溶液の濃度および/またはpHを検出する検出器
8 制御装置
9 新液の量を調整する流量調整弁
10 再循環流路
【技術分野】
【0001】
本発明は鉛などの重金属に汚染された土壌を酸性溶液により洗浄する浄化方法に関し、安価な費用で浄化が可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
鉛などの重金属に汚染された土壌を浄化する技術として、a水洗分級法、b加熱処理法、c電気泳動法が知られている。
【0003】
水洗分級法は、水洗・分塊,もしくは物理的な土壌研磨等により粗い土壌粒子表面から汚染物質または汚染物質を多量に含む微粒子を分離,濃集,捕捉する方法である。
【0004】
水洗分級法の場合、土壌磨砕が不十分であると、粗い土壌粒子からの汚染物質または汚染物質を多量に含む微粒子が完全に除去されず、汚染物質を土壌指定基準値以下まで低減できない可能性がある。
【0005】
また、土壌磨砕時間を長くしたり、粗い土壌粒子表面を完全に研磨する高度磨砕装置を適用することにより、粗い土壌粒子からの汚染物質または汚染物質を多量に含む微粒子の除去率を向上させることは可能であるが、この場合においても高濃度に汚染された土壌では、汚染物質を土壌指定基準値以下まで確実に低減できるとは限らない。さらに、この場合、前者はランニングコストの増大,後者は装置イニシャルコストの増大となることが指摘されている。また、磨砕による微粒子量が増加し浄化土壌の歩留まりが低下させることとなる。
【0006】
加熱処理法は、土壌をロータリーキルンや電気抵抗炉等で加熱焼結またはガラス固化することにより、汚染物質である鉛等の重金属などを非常に安定な状態として封じ込める方法である。
【0007】
加熱処理法の場合、鉛などの重金属により汚染されている土壌の場合、加熱焼結またはガラス固化状態にするために、加熱焼結:800〜1200℃,ガラス固化:1600〜2000℃まで加熱する必要があり、大量の熱源を必要とし、ランニングコストの増大を招く。
【0008】
さらに、加熱時に発生する排ガスに対しても適切に処理する付加設備等が必要となり、イニシャルコスト増大につながる。また、汚染物質である鉛などの重金属を揮発除去していない場合、加熱焼結やガラス固化状態が完全に形成されていないと、汚染物質が再溶出する可能性のあることが指摘されている。
【0009】
電気泳動法は、汚染された土壌に対して陽極と陰極を設け、電解液等を加えた後に直流電流を流すことにより、汚染物質を電極近傍に集め、除去する方法である。
【0010】
電気泳動法の場合、低電圧,低電流で実施した場合、その浄化速度は非常に遅くなり、浄化完了まで非常に長時間を要する。また、高電圧,高電流で実施した場合、浄化速度は速くなると考えられるが、多量の電力を必要とし、ランニングコストが非常に高いものとなる。また、電極表面が汚染物質等で覆われてしまうと、その除去効率が劣化するため、随時、電極近傍に濃集された汚染物質を除去しなければならず、特別な構造をもった電極及び汚染物質回収装置が必要となることが指摘されている。
【0011】
上述したように、水洗分級法、加熱処理法、電気泳動法のいずれの方法にも、欠点があるため近年では浄化時間の短縮,鉛汚染物質の除去効率の向上を図ることを目的として、酸性溶液での薬剤抽出,洗浄が提案されている。
【0012】
例えば、特許文献1には酸性溶液添加時、もしくは添加後、強いアトリッションを加え、重金属汚染物質の除去する方法が記載されている。特許文献2では酸性溶液で重金属汚染物質を抽出後、その抽出液に界面活性剤を加え気泡により重金属を回収する方法が記載されている。特許文献3でも酸性溶液を使用した土壌抽出,洗浄法が記載されている。
【0013】
特許文献1〜3に開示されている浄化方法の場合、土壌性状,薬剤種類,薬剤濃度,洗浄時間,固液重量比等、多くのパラメータが存在するため、これらのパラメータの中から、最適条件を見出すことは非常に困難で、技術を具体化し、現地に適用する場合、種々の不利益が生じている。
【0014】
例えば、過度の薬剤濃度や洗浄時間,固液重量比で洗浄を行なった場合は、装置が大きくなり、ランニングコストが増大するため、浄化コストアップの要因となるばかりか土壌粒子の溶解による浄化土壌の歩留まりも低下する。また、薬剤濃度や洗浄時間,固液重量比が不足した条件下で洗浄を行なった場合、洗浄後の土壌を土壌指定基準値以下まで低減できない危険性がある。
【0015】
これらの問題を解決すべく、本発明者らは特願2004−099599号でコストパフォーマンスに優れた土壌浄化技術を開発した。
【0016】
【特許文献1】特開平11−197643号公報
【特許文献2】特開2002−371324号公報
【特許文献3】特開2001−149913号公報
【0017】
特願2004−099599号は、シルト・粘土質からなる細粒土壌等の高濃度に汚染された土壌を洗浄した酸性溶液を固液分離し、回収された酸性溶液を砂質からなる粗粒土壌等の低濃度に汚染された土壌の洗浄に使用するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら特願2004−099599号記載の方法では固液分離後の土壌への酸性溶液の付着が少なからず発生するため、固液分離装置によって酸性溶液を完全に回収することができず、再利用できる量が減少する。
【0019】
また、酸性溶液で洗浄された土壌を各粒子群毎に濯ぎ洗いを行う場合には、多くのリンス槽を必要とし、更に、それらリンス槽を設置するためのスペースも大きくなる。
【0020】
本発明は、これらの問題点を解決した、更にコストパフォーマンスに優れた土壌浄化技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、重金属に汚染された土壌(以下、重金属汚染土壌)を酸性溶液を用いて浄化する方法について鋭意検討し、シルト・粘土などの細粒汚染土壌(以下、細粒汚染土壌)や高濃度に汚染された汚染土壌(以下、高濃度汚染土壌)を洗浄して得られるスラリ中に、砂質などの粗粒汚染土壌(以下、粗粒汚染土壌)やより低濃度に汚染された土壌(以下、低濃度汚染土壌)を混合して洗浄を行うコストパフォーマンスに優れた土壌浄化技術を完成させた。本発明においてスラリは酸性溶液により浄化された汚染土壌と、汚染土壌を洗浄した後の酸性溶液を含む。
【0022】
図9は重金属の一つである鉛に汚染された土壌(以下、鉛汚染土壌)について、土壌粒子径毎の鉛含有率を調査した結果を示すもので、土壌粒子径に依存して鉛含有率は変化し、土壌粒子径が大きくなると鉛含有率は低下する。
【0023】
また、シルト・粘土などの細粒土壌の場合、土壌微粒子、特に粘土鉱物による永久電荷作用やアロフェンなどの変異電荷作用により重金属などの汚染物質と強固に結合しやすい。また、細粒土壌は粗粒土壌に比べ活性が高く重金属と難溶性の化合物、鉱物を形成しやすい。一方、砂質などの粗粒土壌の場合は、土粒子表面への物理吸着や付着などで比較的緩やかに結合している場合が多い。
【0024】
そこで、本発明は、重金属汚染土壌を土壌粒子径毎に分級し、土壌粒子径が小さい土壌を浄化する場合は低いpH領域すなわち高い酸容量(高い酸濃度および/または少ない酸性溶液量)とし、土壌粒子径が大きい場合は土壌粒子径が小さい場合に比べて高いpH領域、すなわち低い酸容量(低い酸濃度および/または多い酸性溶液量)とする。
【0025】
鉛汚染土壌は塩酸で洗浄すると最も除去効率が高い。図10、11は鉛汚染土壌を種々の酸性溶液で洗浄した場合の、洗浄後の鉛含有量を示し(攪拌翼の回転数300rpmの攪拌洗浄装置を用い15分間洗浄、塩酸濃度:図11は1mol/L、図10は3mol/L、塩酸量:図10は固液重量比1:1、図11は1:2での試験結果。)、図10は土壌粒子が粗粒(砂質)の場合、図11は土壌粒子が細粒(シルト・粘土)の場合を示す。
【0026】
本発明では入手価格や、鉛を除去する性能の観点より酸性溶液として、塩酸を用いることが好ましい。
【0027】
本発明は、
1 重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を解砕し、粒子径毎に分級された複数の粒子群とした後、最初に最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の前記最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の、分級された粒子群の重金属汚染土壌を、小さい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌から大きい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も粒子径の大きい粒子群の重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
2 最も粒子径の大きい粒子群を添加し、混合洗浄して得られたスラリを固液分離装置で土壌と酸性溶液に分離し、前記土壌の濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする1記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
3 濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整することを特徴とする1または2記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
4 濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整後、重金属汚染土壌を採取した地点もしくは近傍の非汚染土壌および/または腐葉土を混合することを特徴とする3記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
5 固液分離装置で分離された土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする1乃至4のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
6 重金属汚染土壌を解砕し、最も粒子径の小さい粒子群を粒子径0.075mm未満とし、最も粒子径の大きい粒子群を粒子径0.075mm以上2.0mm以下とし、前記粒子径0.075mm未満の粒子群を、前記粒子径0.075mm未満の粒子群と混合後においてpH−0.3以下となる酸性溶液で洗浄しスラリとした後、次に、粒子径0.075mm以上2.0mm以下に分級された粒子群の土壌を前記スラリに添加し、混合後においてpH0.5以下となる酸性溶液で洗浄することを特徴とする5記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
7 重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を汚染濃度毎に分別された複数の群とした後、最初に最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の、前記最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の群の重金属汚染土壌を、汚染濃度の高い重金属汚染土壌の群から汚染濃度の低い重金属汚染土壌の群を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も汚染濃度の低い重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
8 重金属が鉛で、酸性溶液が塩酸であることを特徴とする1乃至7のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
9 重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
10 重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、酸性溶液を用いた重金属汚染土壌の洗浄において、細粒汚染土壌や高濃度汚染土壌を洗浄した酸性溶液を余すことなく粗粒汚染土壌や低濃度汚染土壌の洗浄に再利用するため、安価な費用で大量の重金属汚染土壌が浄化でき産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、酸性溶液を用いて、重金属に汚染された土壌を浄化する方法において、特定の粒子径を境に分級された汚染土壌の複数の粒子群に対し、粒子径の小なるものからなる粒子群を酸性溶液で洗浄し、洗浄後の土壌と酸性溶液が混合してなるスラリへ、より粒子径の大なるものからなる粒子群を逐次添加し、混合洗浄することにより、粒子径毎に新たな酸性溶液を使用する場合に比べて酸性溶液の使用量を大幅に低減させたことを特徴とする。以下、本発明を具体的な工程を用いて詳細に説明する。
【0030】
図1は本発明に係る土壌浄化方法の一実施形態を示す工程図で、重金属汚染土壌を大小二つの粒子径群に分級した場合を示す。図において、1は重金属汚染土壌を、単体粒子に解砕する工程(以下、第一の工程)、2は第一の工程により解砕された、重金属汚染土壌を分級機により特定の粒子径を境に分級する工程(以下、第二の工程)、3は、第二の工程で分級された粒子径の小なるものからなる粒子群を酸性溶液にて洗浄する工程(以下、第三の工程)、4は、第三の工程で生成される粒子径の小なるものからなる粒子群と酸性溶液が混合されたスラリに、粒子径の大なるものからなる粒子群を添加し混合洗浄する工程(以下、第四の工程)、5は、第四の工程により洗浄された土壌を固液分離装置により酸性溶液を分離する工程(以下、第五の工程)、6は、第五の工程により酸性溶液により洗浄された土壌を濯ぎ液により洗浄する工程(以下、第六の工程)を示す。
【0031】
[第一の工程]
第一の工程は,掘削された重金属汚染土壌を解砕手段により、土壌粒子が凝集し、塊状となった状態から単粒子にときほぐすことを目的とする。
【0032】
第一の工程により、単体粒子にときほぐされた土壌は、土壌粒子の大きさごとに分級が可能となる。また、酸性溶液による洗浄において、土壌粒子と酸性溶液の接触面積が増大し、洗浄時間が短縮し、汚染物質を除去する効率も向上する。土壌解砕機は、ドラムウオッシャー、パドルミキサー、ロットミル、アトライター、ボールミルなど既存の装置を利用する。
【0033】
尚、解砕する前、又は解砕後の土壌から、重金属汚染物質が付着しやすい炭ガラ、金属片などの異物を比重選別機、磁力選別機、浮遊選別機で取り除いたり、大きな土粒子を振動スクリーンで取り除くことが望ましい。
【0034】
[第二の工程]
第二の工程は、第一の工程で単体粒子にときほぐされた土壌を、特定の粒子径を境に粒子群毎に分級することを目的とする。
【0035】
分級は振動スクリーン、クラシファイア、スパイラル分級機、遠心分離機、サイクロン、フィルタプレスなどを単独または組み合わせて行う。
【0036】
分級する場合、粒子径0.075mm以下はシルト・粘土質、粒子径0.075mm超え2.0mm以下は砂質で土壌の性質が異なり、酸性溶液による洗浄条件が大きく相違するため、粒子径0.075mm以下と粒子径0.075mm超え2.0mm以下の少なくとも2種類の粒子群に分級することが好ましい。粒子径0.075mm以下と粒子径0.075mm超え2.0mm以下のそれぞれを更に分級しても良い。
【0037】
図2は鉛汚染土壌において、土壌と塩酸溶液の固液重量比を1:1〜1:2とした場合の塩酸洗浄後の鉛含有量に及ぼすpHの影響を示すもので、粒子径0.075mm未満のシルト・粘土質の場合は、pH=−0.3以下、好ましくは−0.5以上、−0.3以下とし、粒子径0.075mm以上2.0mm以下の砂質の場合は、pH=0.5以下、好ましくは0以上、0.5以下とすると優れた洗浄効果が得られる。
【0038】
すなわち、図2に示すとおり、粒子径0.075mm未満のシルト・粘土質の場合は、pH=−0.3以下、粒子径0.075mm以上2.0mm以下の砂質の場合は、pHが0.5以下にて鉛の溶解、抽出効果が優れていることが分かる。
【0039】
しかしながら、pHが低くなるほど鉛を溶解、抽出するほか、土壌を構成する主要鉱物、物質の溶解、抽出比率が増加し、浄化土壌の歩留まりが低下する上、洗浄後の液の処理、濯ぎに使用する水の量が増加するなどコストパフォーマンスが著しく低下するため、シルト・粘土質の場合はpH−0.5以上、砂質の場合はpH0以上が好ましい。
【0040】
尚、図2は攪拌洗浄装置(攪拌翼の回転数:300rpm)を用いて洗浄条件:1回×15分間での試験結果であり、pHは土壌に塩酸を添加混合した状態で測定したものである。
【0041】
[第三の工程]
第三の工程は、第二の工程で分級された二つの粒子群から粒子径のより小なるものからなる粒子群を酸性溶液にて洗浄することを目的とする。この洗浄においては、攪拌翼による混合洗浄等の土壌と酸性溶液を十分に混合できる装置であればよい。
【0042】
[第四の工程]
第四の工程は、第三の工程で生成される酸洗後の粒子径の小なるものからなる粒子群と酸性溶液が混合されたスラリに、更により粒子径の大なるものからなる粒子群を添加し混合洗浄することを目的とする。
【0043】
すなわち、前記のように、鉛に汚染された土壌を塩酸で洗浄する場合、粒子径の小さい土壌を洗浄する場合は土壌に塩酸を添加混合後のpHを低くするため高濃度の塩酸が必要であるが、粒子径が大きくなるに従い、低濃度の塩酸が利用できるので、粒子径の小さい土壌洗浄後の塩酸溶液をより粒子径の大きい土壌の洗浄に利用し、浄化コストを低減することが可能である。
【0044】
したがって、粒子径の小さい土壌を高濃度の酸性溶液で洗浄し、さらに、このスラリに粒子径の大きい土壌を加え、このスラリに含まれる残酸により洗浄することにより、大幅に浄化コストを低減することができる。
【0045】
また、鉛に汚染された土壌を分級し第三工程でシルト・粘土質,第四工程で砂質を塩酸で洗浄する場合、前記のように、第三工程のシルト・粘土質の場合、塩酸を混合した後の土壌のpHを−0.3以下とし、第四工程の砂質の場合、砂質を追加混合した後の土壌のpHを0.5以下とすることが好ましい。
【0046】
もし、第四工程での混合後のpHが0.5を超過している場合は、別途、新たな塩酸を追加投入すればよい。また、重金属汚染土壌と酸性溶液の固液重量比は、洗浄の効率、効果、設備への負荷、規模などを考慮すると1:1〜1:2が好ましい。
【0047】
この洗浄においても、攪拌翼による混合洗浄等の土壌と酸性溶液を十分に混合できる装置であればよい。
【0048】
尚、図3に示すように、上述の最適pH条件(シルト・粘土質の場合はpH=−0.3以下、砂質の場合は、pH=0.5以下)で洗浄を行なった場合、洗浄時間は土壌の粒子径によらず、5〜30分で洗浄後の鉛含有量が一定となるため、第三工程および第四工程の洗浄時間としては30分以下、洗浄装置のイニシャルコストを更に抑制する観点から好ましくは15分以下とすればよい。
【0049】
[第五の工程]
第五の工程は、第四の工程を経て洗浄された重金属汚染土壌から洗浄後の酸性溶液を固液分離装置により回収することを目的とする。固液分離装置は振動スクリーン、クラシファイア、スパイラル分級機、遠心分離機、サイクロン、フィルタプレス、膜/中空糸膜装置などの既存の装置を単独または組み合わせて行う。
【0050】
尚、固液分離装置で回収された酸性溶液を当該土壌の洗浄に再循環させる場合は、土壌を酸洗する酸性溶液が所定の洗浄能力を確保できるように新液との混合比率を適宜調整する。
【0051】
図4は第五の工程を具体化する設備の一例を示し、図において7は酸性溶液の濃度および/またはpHを検出する検出器、8は7の検出器で検出した酸性溶液の濃度および/またはpHに従い酸洗浄槽に使用する新液の量を調整する制御装置、9は新たな酸性溶液である新液の量を調整する流量調整弁、10は固液分離装置から回収した酸性溶液を当該土壌に使用する酸性溶液を供給する配管系に接合させる配管(再循環路)を示す。なお、図4は土壌を酸洗する酸性溶液が所定の洗浄能力を確保できるように新液との混合比率を適宜調整する一例である。
【0052】
[第六の工程]
第六の工程は、第五の工程で固液分離装置により酸性溶液を除去した土壌を、濯ぎ洗いをすることを目的とする。酸性溶液により洗浄された土壌を浄化土壌として再利用するために、土壌中に残留する汚染物質と薬剤成分を除去する。
【0053】
図6は、鉛汚染土壌において、シルト・粘土質を土壌と塩酸混合後のpHが−0.3以下,砂質を土壌と塩酸混合後のpHが0.5以下の条件下で洗浄を行い固液分離した後のそれぞれの土壌に対する、濯ぎ効果(濯ぎ洗い後の土壌中の鉛含有量)に及ぼす濯ぎ洗いにおけるpHの影響を示すもので、pH=2以下とするといずれの土壌も優れた濯ぎ効果が得られる。
【0054】
土壌を酸性溶液で洗浄すると、鉛を溶解、抽出するほか、土壌の構成成分である鉄、アルミニウム等も溶解する。一般に鉄、アルミニウムは、ある一定のpH以上(Fe2+:pH5.2以上,Fe3+:pH2.8以上,Al3+:pH4.3で沈殿開始)となると鉛などの重金属イオンを静電的に吸着する共沈現象を生じるが、図6に示すように、土壌/濯ぎ液混合後のpHが2以上で再付着の現象が生じて土壌中の鉛含有量が多い。
【0055】
土壌の溶解により発生する有機分やカルシウム等の存在および土壌の吸着性が相俟って、共沈現象が発生するpHよりも低いpH領域(鉄:pH2〜2.8、アルミニウム:pH2〜4.8)で抽出された土壌への再付着が発生し、土壌に残留すると考えられる。
【0056】
従って、シルト・粘土質、砂質ともに土壌と濯ぎ液の混合後のpHを2以下とすることにより、土壌の汚染物の再付着を防止することができ、優れた濯ぎ効果を得ることができる。なお、本効果は、濯ぎ洗いする土壌が、重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄後、固液分離装置により得られるものであればよく、洗浄方法を限定するものではない。濯ぎ液として水もしくは弱酸が好ましい。
【0057】
また、土壌の濯ぎ回数が不十分であると、汚染物質を大量に含んだ濯ぎ液が土壌に再度残留,付着するので、酸性溶液による洗浄効果が損なわれる。
【0058】
濯ぎ液の残留によりもたらされる汚染物質の土壌への再付着を防止するためには、濯ぎ液を土壌から完全に分離できればよいのであるが、現在の既存の固液分離装置では限界があり、ある一定の濯ぎ液が土壌に残留する。
【0059】
したがって、複数回、固液分離と土壌濯ぎを実施することにより、浄化後の土壌に対するこれらの影響を非常に小さいものとすることができるが、この場合、最適な濯ぎ回数,固液比等の条件で実施しなければ、濯ぎ液使用量,固液分離装置や濯ぎ洗い槽等の装置費が増大してしまう。
【0060】
そこで、本発明者らは、種々の濯ぎ洗い試験より、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A,固液分離後の土壌の含水率:B,酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0,土壌含有量指定基準:αと濯ぎ回数:N(0以上の整数)の間に下記(1)式の関係を見出した。
【0061】
なお、濯ぎ回数とは、酸性溶液洗浄後の固液分離された土壌を濯ぎ洗い後に再度、固液分離する工程を1工程とし、その繰り返し回数とする。
【0062】
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1―――――(1)
【0063】
図7に、種々の鉛汚染土壌サンプルに対する土壌と濯ぎ液の混合後のpHを2以下の条件下とした濯ぎ洗い試験の結果を示す。
【0064】
土壌の粒度に関わらず、上記(1)式の関係を満たす場合、浄化後の土壌の鉛含有量は環境省の定める含有量指定基準を下回るが(中抜きの記号)、満たさない場合は、浄化後の土壌の鉛含有量が環境省の定める含有量指定基準より上回った(中実の記号)。
【0065】
尚、土壌サンプルは、濯ぎ洗い前に、酸性溶液として塩酸溶液を用い、0.075mm以下のシルト・粘土質から成る細粒土壌の場合は塩酸溶液の混合後のpHを−0.5〜−0.3、0.075〜2.0mmの砂質からなる粗粒土壌の場合は塩酸溶液の混合後のpHを0〜0.5として15分間洗浄した。
【0066】
濯ぎ洗いを複数回おこなう場合において、各濯ぎ洗いでの固液比:A,含水率:B等の条件が異なる場合は、上記(1)式により、それぞれの条件下のNを算出しそれらの数値の算術平均または調和平均を用いればよい。濯ぎ洗いにおける上記(1)式の効果は、濯ぎ洗いする土壌が、重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄後、固液分離装置により得られるものであればよく、洗浄方法を限定するものではない。
【0067】
本発明は以上に述べた第一の工程〜第六の工程により、重金属汚染土壌を安価な費用で浄化することが可能である。尚、各工程の説明に用いた図1では各工程を一回実施する場合を示したが、本発明は所望の洗浄効果が得られるまで必要に応じて、いずれかの工程を複数回実施することが可能である。
【0068】
[土壌回復工程]
第六の工程後、浄化された土壌を埋め戻しする場合、掘削前の土壌と同じ値のpHに再調整し埋め戻しを行えばよい。尚、ここで同じ値とは、周辺環境の生態系が速やかに回復可能な程度であれば良く、同一であることを意味しない。
【0069】
pHを再調整する手段として、1 水による土壌洗浄を数回実施する。2 水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ性薬剤を添加する。3 非汚染が確認されている、アルカリ性の土壌および/または石炭灰を添加する。の一つもしくは複数を実施すればよい。
【0070】
また、早期に、埋め戻しを行った地点の土壌を周辺環境になじませる場合は、土壌pHの再調整が完了後、汚染土壌を採取した地点もしくは近傍の非汚染土壌および/または腐葉土を混合すればよい。
【0071】
以上の説明は、解砕後に土壌を大小二つの粒子径に分級する場合について述べたが、本発明は、解砕後の分級する粒子群の数を限定するものでなく、図5に示すように、解砕後、土壌を3つ以上の粒子径群に分級し、粒子径の小さいものから順次、酸性溶液で洗浄を行ってもよい。
【0072】
また、酸性溶液で洗浄する際に必要とする酸性溶液濃度は粒子径の他に土壌汚染濃度にも依存し、粒度構成が一定の場合、土壌汚染濃度が低くなると低い酸性溶液濃度で洗浄が可能となる。汚染濃度が異なる重金属汚染土壌を洗浄する場合について以下に述べる。
【0073】
図8は工程図で、図において、1は予め既知である重金属高汚染土壌(H)(重金属汚染土壌の高濃度汚染土壌)を酸性溶液にて洗浄する工程(以下、Aの工程)、2はAの工程により生成される高濃度汚染土壌と酸性溶液が混合されたスラリに、重金属低汚染土壌(L)(重金属汚染土壌の低濃度汚染土壌)を添加し混合洗浄する工程(以下、Bの工程)、3は、Bの工程により洗浄された土壌を固液分離装置により酸性溶液を分離する工程(以下、Cの工程)、4は、Cの工程により酸性溶液により洗浄された土壌を濯ぎ液により洗浄する工程(以下、Dの工程)を示す。洗浄,固液分離後の濯ぎ工程や土壌回復工程は粒子径毎に分級した場合に準じる。
【0074】
土壌粒度分布がほぼ同じの土地において、汚染物質種類,汚染物質流出過程,拡散状況等の影響により、平面および/あるいは深度方向に汚染濃度の高低が存在する場合に有効である。
【実施例1】
【0075】
同じ工場跡地より砂質土である高濃度鉛汚染土壌(A)および低濃度鉛汚染土壌(B)を採取した。
【0076】
高濃度鉛汚染土壌(A)に対し、固液重量比1:2で3.0mol/lの塩酸溶液を添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは洗浄開始直後で−0.3以下 、終了前で0であった。
【0077】
次に、高濃度鉛汚染土壌(A)と塩酸洗浄液のスラリに対し、低濃度鉛汚染土壌(B)を高濃度鉛汚染土壌(A)と同等の重量で添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは終了前で0.2であった。
【0078】
このスラリ土壌を遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水し、得られた浄化土壌を固液重量比1:2の水で濯ぎ洗いし、遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水、この濯ぎ洗い操作を3回繰り返し繰り返した。
【0079】
この時のすすぎ液におけるpHは0.6、1.2、1.7であった。さらに、消石灰を添加、混合して土壌を元の土壌と同じpH8.5とし、風乾した。この浄化土壌を環境省告示第19号の方法に準拠し、鉛含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【実施例2】
【0081】
工場跡地より採取した鉛汚染土壌に水を15%添加、パドルミキサーにより100rpm、10分間の解砕を行った後、水を固液重量比で1:1になるよう添加した。このスラリを攪拌翼の回転数300rpmで10分間水洗浄し、0.075mmの振動篩いで分級した。
【0082】
分級後の篩い下土壌に対し、固液重量比1:2で3.0mol/lの塩酸溶液を添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは洗浄開始直後、終了前ともに−0.3 以下であった。
【0083】
次に、洗浄後の篩い下土壌と塩酸洗浄液のスラリに対し、分級後の篩い上土壌を篩い下土壌の1.5倍の重量で添加し、10分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは終了前で0であった。このスラリを遠心分離器(3000rpm、10分間、脱水後の土壌含水率:40%)で脱水し、得られた浄化土壌を固液重量比1:2の水で濯ぎ洗いし、遠心分離器(3000rpm、10分間、脱水後の土壌含水率:40%)で脱水、この濯ぎ洗い操作を2回繰り返し繰り返した。さらに、消石灰を添加、混合して土壌を元の土壌と同じpH6.8とし、風乾した。この浄化土壌を環境省告示第19号の方法に準拠し、鉛含有量を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
比較例1として、実施例2で用いた工場跡地より採取した鉛汚染土壌に水を15%添加、パドルミキサーにより100rpm、10分間の解砕を行った後、水を固液重量比で1:1になるよう添加した。このスラリを攪拌翼の回転数300rpmで10分間水洗浄し、0.075mmの振動篩いで分級した。
【0086】
分級後の篩い下土壌に対し、固液重量比1:2で3.0mol/lの塩酸溶液を添加し、15分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは洗浄開始直後、終了前ともに−0.3以下であった。
【0087】
次に、洗浄後の篩い下土壌と塩酸洗浄液のスラリに対し、分級後の篩い上土壌を篩い下土壌の1.5倍の重量で添加し、10分間攪拌(攪拌条件:攪拌翼の回転数300rpm)した。この時の塩酸洗浄液のpHは終了前で0であった。このスラリを遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水し、得られた浄化土壌を固液重量比1:2の水を加えた後、消石灰を添加しpH3.0に調整し、濯ぎ洗いを行い、遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水した。
【0088】
その後、再度、固液重量比1:2の水を加え濯ぎ洗し、遠心分離器(3000rpm、10分間)で脱水した。さらに、消石灰を添加、混合して土壌を元の土壌と同じpH6.8とし、風乾した。この浄化土壌を環境省告示第19号の方法に準拠し、鉛含有量を測定した。結果を上述した表2に比較例1として合わせて示す。
【0089】
また、他の比較例として、実施例2での濯ぎ洗い操作を1回とし、それ以外の条件は実施例2と同じとした結果を上述した表2に比較例2として合わせて示す。
【0090】
表1、2の結果のように、本発明によれば、重金属汚染土壌に対し優れた浄化効果を確認することができた。さらに、表2の結果のように、酸性溶液での洗浄後にpH2以下の条件下で濯ぎ洗いを行なうことにより、優れた濯ぎ効果が得られた。また、最適な土壌の濯ぎ洗い回数を定義することにより、濯ぎ洗いにおける濯ぎ液(水)の使用量を低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態に係る重金属汚染土壌の浄化工程を示す図。
【図2】浄化後の土壌中の重金属(鉛)含有量に及ぼす土壌/酸性溶液(塩酸溶液)混合後のpHの影響を示す図。
【図3】浄化後の重金属(鉛)含有量に及ぼす酸性溶液(塩酸溶液)での土壌洗浄時間の影響を示す図。
【図4】固液分離装置から回収した酸性溶液の処理工程を示す図。
【図5】本発明の一実施形態の他の実施形態に係る重金属汚染土壌の浄化工程を示す図。
【図6】浄化後の土壌中の重金属(鉛)含有量に及ぼす土壌/濯ぎ液混合後のpHの影響を示す図。
【図7】酸性溶液で洗浄後の土壌に対する重金属(鉛)含有量に及ぼす濯ぎ洗い回数の関係を示す図
【図8】本発明の他の実施形態に係る汚染濃度の異なる重金属汚染土壌を浄化する工程を示す図。
【図9】重金属(鉛)汚染濃度と土壌粒子径の関係を示す図。
【図10】酸性溶液の種類と土壌(土壌粒子:0.075〜2.0mm)の浄化後の重金属(鉛)含有量の関係を示す図。
【図11】酸性溶液の種類と土壌(土壌粒子:0.075mm未満)の浄化後の重金属(鉛)含有量の関係を示す図。
【符号の説明】
【0092】
1 第一の工程
2 第二の工程
3 第三の工程
4 第四の工程
5 第五の工程
6 第六の工程
7 酸性溶液の濃度および/またはpHを検出する検出器
8 制御装置
9 新液の量を調整する流量調整弁
10 再循環流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を解砕し、粒子径毎に分級された複数の粒子群とした後、最初に最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の前記最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の、分級された粒子群の重金属汚染土壌を、小さい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌から大きい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も粒子径の大きい粒子群の重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
最も粒子径の大きい粒子群を添加し、混合洗浄して得られたスラリを固液分離装置で土壌と酸性溶液に分離し、前記土壌の濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする請求項1記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整することを特徴とする請求項1または2記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整後、重金属汚染土壌を採取した地点もしくは近傍の非汚染土壌および/または腐葉土を混合することを特徴とする請求項3記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
固液分離装置で分離された土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
【請求項6】
重金属汚染土壌を解砕し、最も粒子径の小さい粒子群を粒子径0.075mm未満とし、最も粒子径の大きい粒子群を粒子径0.075mm以上2.0mm以下とし、前記粒子径0.075mm未満の粒子群を、前記粒子径0.075mm未満の粒子群と混合後においてpH−0.3以下となる酸性溶液で洗浄しスラリとした後、次に、粒子径0.075mm以上2.0mm以下に分級された粒子群の土壌を前記スラリに添加し、混合後においてpH0.5以下となる酸性溶液で洗浄することを特徴とする請求項5記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を汚染濃度毎に分別された複数の群とした後、最初に最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の、前記最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の群の重金属汚染土壌を、汚染濃度の高い重金属汚染土壌の群から汚染濃度の低い重金属汚染土壌の群を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も汚染濃度の低い重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項8】
重金属が鉛で、酸性溶液が塩酸であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項9】
重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項10】
重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
【請求項1】
重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を解砕し、粒子径毎に分級された複数の粒子群とした後、最初に最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の前記最も粒子径の小さい粒子群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の、分級された粒子群の重金属汚染土壌を、小さい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌から大きい粒子径の粒子群の重金属汚染土壌を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も粒子径の大きい粒子群の重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項2】
最も粒子径の大きい粒子群を添加し、混合洗浄して得られたスラリを固液分離装置で土壌と酸性溶液に分離し、前記土壌の濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする請求項1記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項3】
濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整することを特徴とする請求項1または2記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項4】
濯ぎ洗い後に得られる土壌を解砕前の重金属汚染土壌と同じpHに調整後、重金属汚染土壌を採取した地点もしくは近傍の非汚染土壌および/または腐葉土を混合することを特徴とする請求項3記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項5】
固液分離装置で分離された土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
【請求項6】
重金属汚染土壌を解砕し、最も粒子径の小さい粒子群を粒子径0.075mm未満とし、最も粒子径の大きい粒子群を粒子径0.075mm以上2.0mm以下とし、前記粒子径0.075mm未満の粒子群を、前記粒子径0.075mm未満の粒子群と混合後においてpH−0.3以下となる酸性溶液で洗浄しスラリとした後、次に、粒子径0.075mm以上2.0mm以下に分級された粒子群の土壌を前記スラリに添加し、混合後においてpH0.5以下となる酸性溶液で洗浄することを特徴とする請求項5記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項7】
重金属汚染土壌を酸性溶液で酸洗して浄化する方法において、
重金属汚染土壌を汚染濃度毎に分別された複数の群とした後、最初に最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌を酸洗し、酸洗後の、前記最も汚染濃度の高い群の重金属汚染土壌と酸性溶液からなるスラリに、
残余の群の重金属汚染土壌を、汚染濃度の高い重金属汚染土壌の群から汚染濃度の低い重金属汚染土壌の群を順次、添加して洗浄する際、添加する都度混合洗浄を行い、
最後に最も汚染濃度の低い重金属汚染土壌を添加し、混合洗浄して得られるスラリについて固液分離装置で土壌と酸性溶液を分離し、前記土壌の濯ぎ洗いを行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項8】
重金属が鉛で、酸性溶液が塩酸であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項9】
重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ液による洗浄をpH2以下の領域で行うことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
【請求項10】
重金属汚染土壌を酸性溶液で洗浄する際、酸性溶液で洗浄した後の濯ぎ液による土壌の濯ぎ洗いにおいて、濯ぎ回数Nが下記の式を満たすことを特徴とする重金属汚染土壌の浄化方法。
但し、土壌と濯ぎ液との固液重量比:A、固液分離後の土壌の含水率:B、酸性溶液での洗浄前の対象とする汚染物質の土壌含有量:C0、土壌含有量指定基準:αとする。
N≧2.2×ln[1.3×(α/C0)]/ln[B/{A×(1−B)}]−1
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−51440(P2006−51440A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234832(P2004−234832)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000200301)JFEミネラル株式会社 (79)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)
【Fターム(参考)】
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