説明

金型交換方法

【課題】金型を交換するときに加工機、例えば、タレットパンチプレスの稼働停止時間の短縮を図ることにより、タレットパンチプレスの稼働効率を向上させることのできる金型交換方法を提供する。
【解決手段】金型交換装置35を用いることにより、ストレージ37の上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから装着金型Pを取り出してバッファ機能を有する上、下部タレット11,15に装着し、上、下部タレット11,15に装着されている交換金型Pを取り出して上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bに収容する金型交換方法であって、上、下部タレット11,15に金型が装着されていない空きステーションSを少なくとも1つ設け、金型交換装置35を動作させて上、下部タレット11,15の空きステーションSに装着金型を装着した後、上、下部タレット11,15から交換金型Pを取り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッファ機能を有するタレットを備えた加工機、例えば、タレットパンチプレスにおける金型交換方法に係り、特に、金型を交換するときにタレットパンチプレスの稼働停止時間の短縮を図ることにより、タレットパンチプレスの稼働効率を向上させることのできる金型交換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タレットパンチプレスにおいては、上部タレットに円状に多数のステーションを設け、この全ステーションに金型を構成するパンチを装着(配置)するとともに、上部タレットと対向する下部タレットに円状に多数のステーションを、上部タレットのステーションに対応させて設け、この全ステーションに、パンチとともに金型を構成し、パンチに対応するダイを装着(配置)する構成とされている。
【0003】
図5に示すように、前記したタレットパンチプレス1は、ベース3の両側にコラムフレーム5,7を立設し、このコラムフレーム5,7上には上部フレーム9が一体的に設けられている。
【0004】
そして、複数のパンチPを装着した小径の上部タレット11は、上部フレーム9から垂下する上部回転軸13によって回転自在に支持されている。
【0005】
また、上部タレット11の下方に、上部タレット11に対向させて複数のダイDを装着した大径の下部タレット15がベース3から直立する下部回転軸17によって回転自在に支持されている。
【0006】
なお、上部タレット11と下部タレット15とは偏心させて配置され、パンチング加工位置Kとパンチ交換位置(金型交換位置)Kとダイ交換位置(金型交換位置)Kが設けられていて、パンチング加工位置KのパンチPの直上にはラム19を備えた流体圧シリンダ21が設けられている。
【0007】
前記した構成により、図示を省略したサーボモータ等により、回転伝達部材を介して上部タレット11と下部タレット15とは同期して回転し、パンチング加工位置Kに位置決めされたパンチPおよびダイD(金型)は流体圧シリンダ21の動作でラム19を介して打撃され、パンチPとダイDとの協働によってワークWにパンチング加工を施す。
【0008】
前記したベース3の上部にはワークテーブル23が設けられ、このワークテーブル23の上部にはY軸駆動モータ25に連結されたボールねじ27がY軸方向(図5において左右方向)へ延伸させて設けられている。
【0009】
そして、ボールねじ27に螺合したX軸方向(図5において図面に直交する方向)へ延伸させてキャレッジベース29が設けられ、このキャレッジベース29にX軸方向へ移動自在なキャレッジ31が内装され、このキャレッジ31にはX軸方向へ変位可能な複数のワーククランプ装置33が設けられている。
【0010】
前記した構成により、キャレッジベース29がY軸方向へ移動されるとともに、キャレッジ31がX軸方向へ移動されることにより、ワーククランプ装置33に把持されたワークWはX軸、Y軸方向へ移動され、加工すべき所望の位置がパンチング加工位置Kに位置決めされる。
【0011】
前記したパンチング加工位置Kの反対側の適宜位置に、上、下部タレット11,15に隣接してパンチPおよびダイD(金型)を交換する金型交換装置35が設けられ、この金型交換装置35に隣接して複数のパンチP、ダイDを装着金型として収納したストレージ37が設けられている。
【0012】
前記した金型交換装置35は、コ字形状の支柱39が床上に立設され、この支柱39にねじ回転駆動モータ41によって回転するボールねじ43と、スプライン回転駆動モータ45によって回転するスプラインシャフト47とを備えている。
【0013】
前記したボールねじ43にはパンチ支持部材49とダイ支持部材51とが上下動自在に螺合し、パンチ支持部材49のスプラインシャフト47側に、このスプラインシャフト47に係合したパンチ交換アーム53が設けられ、ダイ支持部材51のスプラインシャフト47側に、このスプラインシャフト47に係合したダイ交換アーム55が設けられている。
【0014】
前記したパンチ交換アーム53の先端側にはパンチPを把持する、例えば、公知の構成である板バネグリッパを備えたパンチグリッパ57が設けられ、ダイ交換アーム55の先端側にはダイDを把持する、例えば、公知の構成である板バネグリッパを備えたダイグリッパ59が設けられている。
【0015】
そして、図示を省略したが、パンチ、ダイグリッパ57,59は前後方向へ伸縮自在とされている。
【0016】
前記した金型交換装置35は、図6を併せて参照するに、床上に設けたベースプレート61上に回転自在に支柱63が立設されるとともに、支柱回転駆動モータ65が立設され、この支柱回転駆動モータ65の出力軸に装着されたギヤ67が、支柱63に固着されたギヤ69に噛合している。
【0017】
よって、支柱回転駆動モータ65の動作により、ギヤ67,69を介して支柱63は回転される。
【0018】
前記した支柱63には、上下方向へ複数組(この例では2組)のパンチPを収容する上部収容タレット71A,71BとダイDを収容する下部収容タレット73A,73Bが装着され、支柱63の回転とともに、上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bは回転する。
【0019】
このように構成されたタレットパンチプレス1において、ワークW、例えば、金属製の板材に複数の金型を用いて加工を施す場合、上、下部タレット11,15を同期させて回動させることにより、第1番目に用いる金型(パンチPおよびダイD)をパンチング加工位置Kに移動させるとともに、Y軸駆動モータ25およびキャレッジ31を動作させてワークWを移動させ、その金型でワークWを加工する。
【0020】
そして、上、下部タレット11,15を同期させて回動させることにより、第2番目に用いる金型(パンチPおよびダイD)をパンチング加工位置Kに移動させるとともに、Y軸駆動モータ25およびキャレッジ31を動作させてワークWを移動させた後、流体圧シリンダ21を動作させて金型でワークWを加工する。
【0021】
以後、同様にして順次用いる金型をパンチング加工位置Kに移動させるとともに、ワークWを移動させた後、金型でワークWを加工する。
【0022】
しかしながら、上、下部タレット11,15に装着できる金型の数には限度があるので、ワークWに加工を施す金型が上、下部タレット11,15に装着されていない場合がある。
【0023】
このような場合には、不要な金型(交換金型)を上、下部タレット11,15から取り出し、必要な金型(装着金型)を上、下部タレット11,15に装着する必要がある。
【0024】
この金型の交換を図7に基づき、パンチング加工位置Kに位置する交換金型P(パンチPおよびダイD)をストレージ37の装着金型P(パンチPおよびダイD)と金型交換装置35で交換する一例について説明する。
【0025】
まず、図7(a)に示すように、ワークの加工中に、ストレージ37の上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bを回動させて交換金型Pを収容する空き収容ステーションSを、金型を取り出したり収容する取り出し収容位置Kに移動させる。
【0026】
そして、図7(b)に示すように、ワークの加工を中止し、上、下部タレット11,15を回動させて交換金型Pをパンチング加工位置Kから金型交換位置K,Kに移動させるとともに、金型交換装置35のパンチ、ダイグリッパ57,59を回動させて待機位置Kから金型交換位置K,Kに移動させる。
【0027】
次に、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、交換金型Pをパンチ、ダイグリッパ57,59に保持させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させて交換金型Pを上、下部タレット11,15から取り出す。
【0028】
そして、図7(c)に示すように、パンチ、ダイグリッパ57,59を回動させて交換金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bの空き収容ステーションSの上に位置させる。
【0029】
次に、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、交換金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bの空き収容ステーションSに収容させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させる。
【0030】
そして、図7(d)に示すように、上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bを回動させ、取り出し収容位置Kに装着金型Pを位置させる。
【0031】
次に、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、装着金型Pをパンチ、ダイグリッパ57,59に保持させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させて装着金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから取り出す。
【0032】
そして、図7(e)に示すように、パンチ、ダイグリッパ57,59を回動させ、装着金型Pを金型交換位置K,Kの上に位置させる。
【0033】
次に、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、装着金型Pを上、下部タレット11,15の交換金型Pを抜き取った後のステーションに装着させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させる。
【0034】
そして、図7(f)に示すように、パンチ、ダイグリッパ57,59を回動させ、待機位置Kへ移動させるとともに、ワークの加工を再開する。
【0035】
なお、上述した従来の技術に関連する特許文献として、例えば、特許文献1を掲げることができる。
【特許文献1】実用新案登録第3065751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
従来のタレットパンチプレス1において金型を交換する場合、上述したように、交換金型Pを上、下部タレット11,15から取り出して上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bに収容させた後、装着金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから取り出して上、下部タレット11,15に装着するので、金型交換装置35のパンチ、ダイグリッパ57,59が上、下部タレット11,15と上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bとの間を少なくとも1往復する間中タレットパンチプレス1の稼働を停止しなければならなかった。
【0037】
したがって、タレットパンチプレス1の稼働効率が低下し、生産性が低下するという不都合があった。
【0038】
そこで、金型交換時におけるタレットパンチプレス1の稼働停止時間の短縮を図ることにより、タレットパンチプレスの稼働効率を向上させることができないかとの要望がある。
【0039】
この発明は、上記した要望に応えるためになされたもので、金型を交換するときに加工機、例えば、タレットパンチプレスの稼働停止時間の短縮を図ることにより、タレットパンチプレスの稼働効率を向上させることのできる金型交換方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0040】
この発明は、以下のような内容である。
【0041】
(1)金型交換装置を用いることにより、ストレージの収容部から装着金型を取り出してバッファ機能を有するタレットに装着し、前記タレットに装着されている交換金型を取り出して前記収容部に収容する金型交換方法であって、前記タレットに金型が装着されていない空きステーションを少なくとも1つ設け、前記金型交換装置を動作させて前記タレットの空きステーションに前記装着金型を装着した後、前記タレットから前記交換金型を取り出すことを特徴とする。
【0042】
(2)金型交換装置を用いることにより、ストレージの収容部から装着金型を取り出してバッファ機能を有するタレットに装着し、前記タレットに装着されている交換金型を取り出して前記収容部に収容する金型交換方法であって、前記タレットに金型が装着されていない空きステーションを少なくとも1つ設け、前記収容部の前記装着金型を取り出し収容位置に移動させ、前記金型交換装置を動作させて前記装着金型を前記収容部から取り出し、前記タレットを回動させて前記空きステーションを前記金型交換位置に移動させ、前記金型交換装置を動作させて前記装着金型を前記タレットの空きステーションに装着し、前記タレットを回動させて前記交換金型を前記金型交換位置に移動させ、前記金型交換装置を動作させて前記タレットから前記交換金型を取り出した後、前記交換金型を前記収容部に収容することを特徴とする。
【0043】
(3)(2)に記載の金型交換方法において、前記交換金型を収容する前記収容部のステーションを、前記装着金型を取り出した空き収容ステーションにしたことを特徴とする。
【0044】
(4)(2)または(3)に記載の金型交換方法において、前記収容部から前記装着金型を取り出した前記金型交換装置が前記装着金型を待機位置に移動させた後、前記装着金型を前記タレットの空きステーションに装着することを特徴とする。
【0045】
(5)(4)に記載の金型交換方法において、前記待機位置を、前記タレットの回動に影響を与えず、ワークに衝突しない位置で、前記装着金型を保持する前記金型交換装置のグリッパが前記ストレージから前記タレットまで回動する距離の半分よりも前記タレット側に位置させたことを特徴とする。
【0046】
(6)(1)から(5)のいずれか1つに記載の金型交換方法において、前記タレットに設ける前記空きステーションを、用いる金型の大きさに応じて少なくとも1つにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0047】
この発明によれば、タレットに金型が装着されていない空きステーションを少なくとも1つ設け、金型交換装置を動作させてタレットの空きステーションに装着金型を装着した後、タレットから交換金型を取り出すので、または、タレットに金型が装着されていない空きステーションを少なくとも1つ設け、収容部の装着金型を取り出し収容位置に移動させ、金型交換装置を動作させて装着金型を収容部から取り出し、タレットを回動させて空きステーションを金型交換位置に移動させ、金型交換装置を動作させて装着金型をタレットの空きステーションに装着し、タレットを回動させて交換金型を金型交換位置に移動させ、金型交換装置を動作させてタレットから交換金型を取り出した後、交換金型を収容部に収容するので、金型を交換するために加工機の稼働を停止させる時間を、交換金型を金型交換位置に移動させ始めてから交換金型をタレットから取り出すまでの時間とすることができる。
【0048】
したがって、この発明における金型の交換時間を、従来の金型交換に要する時間、例えば、タレットと収容部との間を少なくとも1往復する時間よりも短くすることができ、すなわち、加工機の稼働停止時間を短縮することができ、加工機の稼働効率を向上させることができる。
【0049】
そして、交換金型を収容する収容部のステーションを、装着金型を取り出した空き収容ステーションにしたので、装着金型を取り出した収容部を回動させることなく空き収容ステーションに交換金型を収容させることができる。
【0050】
したがって、交換金型を効率よく収容部に収容させることができる。
【0051】
さらに、収容部から装着金型を取り出した金型交換装置が装着金型を待機位置に移動させた後、装着金型をタレットの空きステーションに装着するので、収容部から取り出した装着金型が待機位置で待機しているため、装着金型をタレットの空きステーションに装着するまでの時間をさらに短縮することができる。
【0052】
したがって、加工機の稼働停止時間をさらに短縮することができ、加工機の稼働効率をさらに向上させることができる。
【0053】
そして、待機位置を、タレットの回動に影響を与えず、ワークに衝突しない位置で、装着金型を保持する金型交換装置のグリッパがストレージからタレットまで回動する距離の半分よりもタレット側に位置させたので、装着金型を取り出したグリッパがタレットの近くで待機しているため、装着金型をタレットの空きステーションに装着するまでの時間を一層短縮することができる。
【0054】
したがって、加工機の稼働停止時間を一層短縮することができ、加工機の稼働効率を一層向上させることができる。
【0055】
さらに、タレットに設ける空きステーションを、用いる金型の大きさに応じて少なくとも1つにしたので、複数の大きさの金型を用いる加工機に適用して、加工機の稼働停止時間を短縮することができ、加工機の稼働効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、この発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0057】
図1はこの発明の一実施形態である金型交換方法を示す説明図であり、図5〜図7と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
なお、図示を省略した部分は、先のタレットパンチプレスと同様に構成されている。
【0059】
図1を参照して金型の交換について説明する。
【0060】
なお、パンチング加工位置Kに位置する金型(パンチおよびダイ)を交換金型Pとし、上、下部タレット11,15に金型(パンチおよびダイ)を装着しない空きステーションSを、用いる金型の大きさに応じてそれぞれ1つ(SE1,SE2,SE3)設けてある。
【0061】
そして、金型交換装置35のパンチ、ダイグリッパ57,59の待機位置Kを、上、下部タレット11,15の回動に影響を与えず、ワークが衝突しない位置で、パンチ、ダイグリッパ57,59がストレージ37の上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから上、下部タレット11,15まで回動する距離の半分よりも上、下部タレット11,15側に位置させてある。
【0062】
まず、図1(a)に示すように、ワークの加工中に、ストレージ37の上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bを回動させて装着金型Pを取り出し収容位置Kに移動させる。
【0063】
そして、図1(b)に示すように、金型交換装置35のパンチ、ダイグリッパ57,59を回動させて待機位置Kから取り出し収容位置Kに移動させる。
【0064】
次に、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、装着金型Pをパンチ、ダイグリッパ57,59に保持させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させて装着金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから取り出す。
【0065】
そして、図1(c)に示すように、パンチ、ダイグリッパ57,59を待機位置Kに位置させ、装着金型Pを待機位置Kに移動させる。
【0066】
次に、図1(d)に示すように、ワークの加工を中止し、上、下部タレット11,15を回動させ、装着金型Pを装着する空きステーションSE2を金型交換位置K,Kに移動させるとともに、パンチ、ダイグリッパ57,59を回動させて待機位置Kから金型交換位置K,Kに移動させ、装着金型Pを空きステーションSE2の上に位置させる。
【0067】
そして、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、装着金型Pを上、下部タレット11,15の空きステーションSE2に装着させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させる。
【0068】
次に、図1(e)に示すように、上、下部タレット11,15を回動させ、交換金型Pを金型交換位置K,Kに移動させる。
【0069】
そして、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、交換金型Pをパンチ、ダイグリッパ57,59に保持させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させる。
【0070】
次に、図1(f)に示すように、パンチ、ダイグリッパ57,59を回動させ、交換金型Pを取り出し収容位置Kに位置させるとともに、ワークの加工を再開する。
【0071】
そして、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、交換金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bの装着金型Pを抜き取った後の空き収容ステーションSに装着させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させる。
【0072】
次に、図1(a)に示すように、ストレージ37の上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bを回動させて次の装着金型Pを取り出し収容位置Kに移動させる。
【0073】
そして、パンチ、ダイグリッパ57,59を下降させ、装着金型Pをパンチ、ダイグリッパ57,59に保持させた後、パンチ、ダイグリッパ57,59を上昇させて装着金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから取り出した後、図1(c)に示すように、パンチ、ダイグリッパ57,59を回動させて取り出し収容位置Kから待機位置Kに移動させる。
【0074】
このようにして金型を交換してワークに加工を施す場合、図2(a)に示すように、下部タレット15のダイホルダ75には、ダイDが装着されていない部分(空きステーションS)が存在し、このダイDの装着されていない空きステーションSに抜きカスなどが入り込むことにより、ダイD(金型)を装着できなくなる場合がある。
【0075】
そこで、図2(a)に示すように、ダイホルダ75の上に平行に対向させてガイドバー77A,77Bを設けるとともに、このガイドバー77A,77Bに沿って移動可能にシャッタ部材79を設ける。
【0076】
そして、図示を省略した複数の駆動手段、例えば、流体圧シリンダを動作させることにより、図2(b)に示すように、シャッタ部材79を移動させてダイDの装着されていない空きステーションSを覆い、空きステーションSに抜きカスなどが入り込まないようにしたり、図2(a)に示すように、空きステーションSを開放させ、空きステーションSに装着金型PのダイDを装着できるようにするのが望ましい。
【0077】
上述したように、この発明の一実施形態によれば、上、下部タレット11,15に金型が装着されていない空きステーションSを少なくとも1つ設け、金型交換装置35を動作させて上、下部タレット11,15の空きステーションSに装着金型Pを装着した後、上、下部タレット11,15から交換金型Pを取り出すので、または、上、下部タレット11,15に金型が装着されていない空きステーションSを少なくとも1つ設け、上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bを回動させて装着金型Pを取り出し収容位置Kに移動させ、金型交換装置35を動作させて装着金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから取り出し、上、下部タレット11,15を回動させて空きステーションSを金型交換位置K,Kに移動させ、金型交換装置35を動作させて装着金型Pを上、下部タレット11,15の空きステーションSに装着し、上、下部タレット11,15を回動させて交換金型Pを金型交換位置K,Kに移動させ、金型交換装置35を動作させて上、下部タレット11,15から交換金型Pを取り出した後、交換金型Pを上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bに収容するので、金型を交換するためにタレットパンチプレス1の稼働を停止させる時間を、交換金型Pを金型交換位置K,Kに移動させ始めてから交換金型Pを上、下部タレット11,15から取り出すまでの時間とすることができる。
【0078】
したがって、この発明の一実施形態における金型の交換時間を、従来の金型交換に要する時間、例えば、上、下部タレット11,15と上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bとの間を少なくとも1往復する時間よりも短くすることができ、すなわち、タレットパンチプレス1の稼働停止時間を短縮することができ、タレットパンチプレス1の稼働効率を向上させることができる。
【0079】
そして、交換金型Pを収容する上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bのステーションを、装着金型Pを取り出した空き収容ステーションSにしたので、装着金型Pを取り出した上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bを回動させることなく空き収容ステーションSに交換金型Pを収容させることができる。
【0080】
したがって、交換金型Pを効率よく上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bに収容させることができる。
【0081】
さらに、上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから装着金型Pを取り出した金型交換装置35が装着金型Pを待機位置Kに移動させた後、装着金型Pを上、下部タレット11,15の空きステーションSに装着するので、上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bから取り出した装着金型Pが待機位置Kで待機しているため、装着金型Pを上、下部タレット11,15の空き収容ステーションSに装着するまでの時間をさらに短縮することができる。
【0082】
したがって、タレットパンチプレス1の稼働停止時間をさらに短縮することができ、タレットパンチプレス1の稼働効率をさらに向上させることができる。
【0083】
そして、待機位置Kを、上、下部タレット11,15の回動に影響を与えず、ワークが衝突しない位置で、装着金型Pを保持する金型交換装置35のパンチ、ダイグリッパ57,59がストレージ37から上、下部タレット11,15まで回動する距離の半分よりも上、下部タレット11,15側に位置させたので、装着金型Pを取り出したパンチ、ダイグリッパ57,59が上、下部タレット11,15の近くで待機しているため、装着金型Pを上、下部タレット11,15の空きステーションSに装着するまでの時間を一層短縮することができる。
【0084】
したがって、タレットパンチプレス1の稼働停止時間を一層短縮することができ、タレットパンチプレス1の稼働効率を一層向上させることができる。
【0085】
さらに、上、下部タレット11,15に設ける空きステーションSを、用いる金型の大きさに応じて少なくとも1つにしたので、複数の大きさの金型を用いるタレットパンチプレス1に適用して、タレットパンチプレス1の稼働停止時間を短縮することができ、タレットパンチプレス1の稼働効率を向上させることができる。
【0086】
そして、下部タレット15の空きステーションSを、上側から開閉可能なシャッタ部材79で覆うので、空きステーションSに抜きカスなどが入り込まないようにできるため、装着金型P(ダイD)を下部タレット15に確実に装着させることができる。
【0087】
図3はこの発明の他の実施形態を適用したパンチプレスを示す説明図、図4はこの発明のさらに他の実施形態を適用したパンチプレスを示す説明図であり、図1、図2、図5〜図7と同一部分または相当部分に同一符号を付し、その説明を省略する。
【0088】
図3に示したパンチプレス1Aは、パンチング加工位置Kが上、下部タレット11,15の外側に位置し、ワークの加工に使用する金型を金型ホルダ81を、図示を省略した適宜な搬送手段、例えば、シャトル機構で上、下部タレット11,15のステーションとパンチング加工位置Kとの間を移動させるものである。
【0089】
このパンチプレス1Aにおいても、先の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0090】
図4に示したパンチプレス1Bは、上、下部タレット11,15がパンチプレス本体の外側に位置し、ワークの加工に使用する金型を金型ホルダ81を、適宜な搬送手段、例えば、シャトル機構83で上、下部タレット11,15のステーションとパンチング加工位置Kとの間を移動させるものである。
【0091】
このパンチプレス1Bにおいても、先の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0092】
上記した実施形態では、上、下部タレット11,15の大きさを異ならせるとともに、上、下部タレット11,15を偏心させて配置した例を示したが、上、下部タレットを同一の大きさにして同心に配置したものであってもよい。
【0093】
また、上下に2組の金型が収容できる上、下部収容タレット71A,71B、73A,73Bで構成したストレージ37を示したが、ストレージは1組の上、下部収容タレットで構成されているものでも、3組以上の上、下部収容タレットで構成されているものであってもよい。
【0094】
また、ストレージ37は回転可能な円盤状のタレット構成の例を示したが、ストレージは上下複数段および左右複数列のラックタイプで構成されているものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】この発明の一実施形態である金型交換方法を示す説明図である。
【図2】シャッタ機構を示す説明図である。
【図3】この発明の他の実施形態を適用したタレットパンチプレスを示す説明図である。
【図4】この発明のさらに他の実施形態を適用したタレットパンチプレスを示す説明図である。
【図5】タレットパンチプレス、金型交換装置およびストレージの概略構成を示す説明図である。
【図6】図5に示したストレージの側面図である。
【図7】従来の金型交換方法の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0096】
1 タレットパンチプレス(加工機)
3 ベース
5,7 コラムフレーム
9 上部フレーム
11 上部タレット
13 上部回転軸
15 下部タレット
17 下部回転軸
19 ラム
21 流体圧シリンダ
23 ワークテーブル
25 Y軸駆動モータ
27 ボールねじ
29 キャレッジベース
31 キャレッジ
33 ワーククランプ装置
35 金型交換装置
37 ストレージ
39 支柱
41 回転駆動モータ
43 ボールねじ
45 スプライン回転駆動モータ
47 スプラインシャフト
49 パンチ支持部材
51 ダイ支持部材
53 パンチ交換アーム
55 ダイ交換アーム
57 パンチグリッパ
59 ダイグリッパ
61 ベースプレート
63 支柱
65 支柱回転駆動モータ
67,69 ギヤ
71A,71B 上部収容タレット
73A,73B 下部収容タレット
75 ダイホルダ
77A,77B ガイドバー
79 シャッタ部材
81 金型ホルダ
83 シャトル機構
空きステーション
空き収容ステーション
P パンチ(金型)
D ダイ(金型)
装着金型
交換金型
W ワーク
パンチング加工位置
パンチ交換位置(金型交換位置)
ダイ交換位置(金型交換位置)
取り出し収容位置
待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型交換装置を用いることにより、ストレージの収容部から装着金型を取り出してバッファ機能を有するタレットに装着し、前記タレットに装着されている交換金型を取り出して前記収容部に収容する金型交換方法であって、
前記タレットに金型が装着されていない空きステーションを少なくとも1つ設け、
前記金型交換装置を動作させて前記タレットの空きステーションに前記装着金型を装着した後、前記タレットから前記交換金型を取り出す、
ことを特徴とする金型交換方法。
【請求項2】
金型交換装置を用いることにより、ストレージの収容部から装着金型を取り出してバッファ機能を有するタレットに装着し、前記タレットに装着されている交換金型を取り出して前記収容部に収容する金型交換方法であって、
前記タレットに金型が装着されていない空きステーションを少なくとも1つ設け、
前記収容部の前記装着金型を取り出し収容位置に移動させ、
前記金型交換装置を動作させて前記装着金型を前記収容部から取り出し、
前記タレットを回動させて前記空きステーションを前記金型交換位置に移動させ、
前記金型交換装置を動作させて前記装着金型を前記タレットの空きステーションに装着し、
前記タレットを回動させて前記交換金型を前記金型交換位置に移動させ、
前記金型交換装置を動作させて前記タレットから前記交換金型を取り出した後、前記交換金型を前記収容部に収容する、
ことを特徴とする金型交換方法。
【請求項3】
請求項2に記載の金型交換方法において、
前記交換金型を収容する前記収容部のステーションを、前記装着金型を取り出した空き収容ステーションにした、
ことを特徴とする金型交換方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の金型交換方法において、
前記収容部から前記装着金型を取り出した前記金型交換装置が前記装着金型を待機位置に移動させた後、前記装着金型を前記タレットの空きステーションに装着する、
ことを特徴とする金型交換方法。
【請求項5】
請求項4に記載の金型交換方法において、
前記待機位置を、前記タレットの回動に影響を与えず、ワークが衝突しない位置で、前記装着金型を保持する前記金型交換装置のグリッパが前記ストレージから前記タレットまで回動する距離の半分よりも前記タレット側に位置させた、
ことを特徴とする金型交換方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型交換方法において、
前記タレットに設ける前記空きステーションを、用いる金型の大きさに応じて少なくとも1つにした、
ことを特徴とする金型交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−36233(P2010−36233A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204186(P2008−204186)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】