金型保持装置
【課題】金型に対する取り付けが簡単であって、金型に取り付けた状態で金型の補修作業を容易に行える金型保持装置を提供する。
【解決手段】側面凹部Ｗ３が形成された金型Ｗを保持する金型保持装置１であって、金型Ｗの側面Ｗ１に接面する第１ベース部材２と、第１ベース部材２と一体に設けられ、金型Ｗの裏面Ｗ２に接面する支持プレート４と、支持プレート４にこの支持プレート４の板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型Ｗの側面凹部Ｗ３に挿入されるクランプ部材５と、を備え、クランプ部材５と支持プレート４とにより、金型Ｗの側面凹部Ｗ３と裏面Ｗ２との間に形成される側面縁部Ｗ５を挟持固定する。
【解決手段】側面凹部Ｗ３が形成された金型Ｗを保持する金型保持装置１であって、金型Ｗの側面Ｗ１に接面する第１ベース部材２と、第１ベース部材２と一体に設けられ、金型Ｗの裏面Ｗ２に接面する支持プレート４と、支持プレート４にこの支持プレート４の板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型Ｗの側面凹部Ｗ３に挿入されるクランプ部材５と、を備え、クランプ部材５と支持プレート４とにより、金型Ｗの側面凹部Ｗ３と裏面Ｗ２との間に形成される側面縁部Ｗ５を挟持固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、金型保持装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
製品を特定の形に成型する場合、プレス成型、射出成型、鋳造等により行われる。これらの金型は異なる製品形状毎に存在するため、未使用時の金型は保管スペースに保管されることが多く、その際には例えば特許文献１に記載された金型保持装置を使用して保管される。
【０００３】
特許文献１に記載の技術は、ベース部材の一端に立設されたアングル部材と、ベース部材上を前記アングル部材に接近離間する方向に摺動し、その位置を保持可能な可動保持体と、可動保持体に螺合された締結用ボルトとから構成された一対の金型保持装置に関するものである。この金型保持装置を用いて金型を保持するときには、まず予め金型の厚みに適合する位置に前記可動保持体の位置を調整し、次いで金型保持装置を前記ベース部材が予め金型の幅に一致する位置に位置させる。次いで金型をクレーン等により前記一対の金型保持装置のアングル部材に当接させ、かつ前記ベース部材上に着座するように載置し、前記締結用ボルトを締め込むことにより金型を一対のアングル部材に対し締結保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平９−２３４６７９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１の技術では、金型に対する金型保持装置の取り付けに手間がかかるという問題がある。また、この金型保持装置を用いて金型を保持している状態で金型を補修しようとすると、アングル部材が邪魔になって補修作業に差し障るため、この場合には金型保持装置を金型から外し、金型が転倒しないように金型をロープ等により吊り掛けた状態で補修作業を行う必要があり、前記金型保持装置は補修作業に不向きな構造となっていた。
【０００６】
本発明は、以上のような課題を解消するために創作されたものであり、金型に対する取り付けが簡単であって、金型に取り付けた状態で金型の補修作業を容易に行える金型保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、前記課題を解決するため、側面凹部が形成された金型を保持する金型保持装置であって、金型の側面に接面するベース部材と、前記ベース部材と一体に設けられ、金型の裏面に接面する支持プレートと、前記支持プレートにこの支持プレートの板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型の側面凹部に挿入されるクランプ部材と、を備え、前記クランプ部材と前記支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定することを特徴とする。
【０００８】
当該金型保持装置によれば、クランプ部材と支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定する構造であるため、金型保持装置を取り付けた状態で金型の成型面を補修するとき、成型面の前方には何ら補修作業を阻害する障害物は存在せず、補修作業を迅速に行える。勿論、成型面とは、前記裏面と反対の面である。また、本発明によれば金型に対する着脱作業も迅速に行える。
【０００９】
また、本発明は、前記クランプ部材は、平断面コ字形を呈した部材であって、前記支持プレートを囲うように配設され、前記支持プレートにはガイドピンが固設され、前記クランプ部材の対向し合うプレートの内の一方のプレートにはクランプ移動用ボルトが螺合され、前記クランプ移動用ボルトを前記支持プレートに当接させて締め込むことにより、前記一方のプレートが前記ガイドピンにガイドされて前記支持プレートから離間する方向に移動し、他方のプレートが前記側面凹部の内壁面に圧接される構成としたことを特徴とする。
【００１０】
当該金型保持装置によれば、支持プレートに対するクランプ部材の取り付け保持機能と、クランプ部材と支持プレートとによる金型の挟持機能とをコンパクトな構造で両立できる。
【００１１】
また、本発明は、前記ベース部材に、このベース部材の底面を接地または非接地にするための昇降自在な搬送ローラを設けたことを特徴とする。
【００１２】
当該金型保持装置によれば、金型保持装置を瞬時に定置状態或いは搬送状態に切り替えることができ、金型保持装置の取扱いを楽に行える。
【００１３】
また、本発明は、前記ベース部材に、操作用の把持アームを設けたことを特徴とする。
【００１４】
当該金型保持装置によれば、作業者は把持アームを操作することで金型保持装置の取り回しを楽に行える。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、クランプ部材と支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定する構造であるため、金型保持装置を取り付けた状態で金型の成型面を補修するとき、成型面の前方には何ら補修作業を阻害する障害物は存在せず、補修作業を迅速に行える。また、金型に対する着脱作業も迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明に係る金型保持装置の側面図である。
【図２】本発明に係る金型保持装置の正面図である。
【図３】本発明に係る金型保持装置の平面図である。
【図４】本発明に係る金型保持装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
図１ないし図４を参照して、本発明に係る金型保持装置１は、側面Ｗ１に側面凹部Ｗ３が形成された金型Ｗに適用されるものであり、金型Ｗの側面Ｗ１に接面するベース部材（第１ベース部材２）と、このベース部材と一体に設けられ、金型Ｗの裏面Ｗ２に接面する支持プレート４と、支持プレート４にこの支持プレート４の板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型Ｗの側面凹部Ｗ３に挿入されるクランプ部材５（図１においては一部破断）と、を備える。側面凹部Ｗ３は例えば金型Ｗの肉抜き穴として形成されるものであって、略矩形状の穴である。
【００１８】
第１ベース部材２は床に横置きされる長尺の中空角柱からなる。本実施形態では、第１ベース部材２の安定度を増す目的で、第１ベース部材２の側面２ａ（図３）に短尺の中空角柱からなる第２ベース部材３を固設している。支持プレート４はその下端が第１ベース部材２または第２ベース部材３に固設されて鉛直に立設した平板部材からなり、その板面が第１ベース部材２の延設方向と直交する方向に沿うように立設されている。クランプ部材５は、平断面コ字形を呈しており、支持プレート４を囲うようにして、支持プレート４に対して後記するクランプ移動用ボルト１１により締緩可能に取り付けられている。符号１２は、支持プレート４と第２ベース部材３とに斜めに掛け渡した補強材である。
【００１９】
コ字形を呈して３面のプレートからなるクランプ部材５において対向し合うプレート６ａ、６ｂの内の一方のプレート６ａと、支持プレート４とにはそれぞれに上下２つの対応するピン穴７ａ、７ｂが開設されており、ピン穴７ａ、７ｂ間にはガイドピン８が挿通されている。ガイドピン８の一端は支持プレート４のピン穴７ｂ内において固設されている。ガイドピン８の他端はプレート６ａのピン穴７ａに遊嵌している。つまり、プレート６ａはガイドピン８にガイドされて支持プレート４に接近或いは離間するように構成されている。ガイドピン８は、支持プレート４に対してクランプ部材５を取り付け保持する機能も兼ねている。支持プレート４の一面（プレート６ａに対向する面）において各ピン穴７ｂの横には凹穴９が形成されており、この２つの凹穴９の位置に対応するようにプレート６ａにはねじ穴１０が螺設されている。支持プレート４の他面は他方のプレート６ｂに対向する。
【００２０】
ねじ穴１０にはクランプ移動用ボルト１１が螺合されており、このクランプ移動用ボルト１１を締め込んでいくと、クランプ移動用ボルト１１の先端がクランプ部材５の凹穴９の底面に当接する。そして、前記一対のガイドピン８と一対のクランプ移動用ボルト１１とによりクランプ部材５は支持プレート４に対して回転不能かつガイドピン８に沿って移動可能に構成されていることから、さらにクランプ移動用ボルト１１を締め込んでいくと、送りねじ作用によりクランプ部材５のプレート６ａが支持プレート４に対して離間する方向に移動し、他方のプレート６ｂは支持プレート４に接近する方向に移動する。
【００２１】
また、第１ベース部材２の両端近傍の上面にはねじ穴が螺設され、一対の搬送ローラ２０を垂直軸回りに軸支するローラ支持プレート２１にもねじ穴が螺設され、両ねじ穴に螺合したローラ昇降用ボルト２２を締緩することにより搬送ローラ２０を昇降させて第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を接地または非接地にすることができるようになっている。つまり、金型保持装置１を搬送させるときには第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を床から離すべく搬送ローラ２０を下降させ、金型保持装置１を定置するときには搬送ローラ２０を上昇させて第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を接地させる。また、第１ベース部材２の略中央部には金型保持装置１を金型Ｗにセットするときや搬送するときなどに把持する把持アーム２３が設けられている。把持アーム２３は、例えば、屈曲形成した棒材やパイプ材等からなる。
【００２２】
金型保持装置１は以上の構成からなり、この金型保持装置１により金型Ｗを保持する場合、まず金型Ｗをクレーン等を用いて所定の保管位置に移動させ定置する。金型保持装置１側においては、予めローラ昇降用ボルト２２を締め込んで搬送ローラ２０を接地させて搬送可能な状態にしておき、クランプ部材５に関しては他方のプレート６ｂを支持プレート４から十分離間させた状態にしておく。
【００２３】
次いで、作業者は把持アーム２３を操作することにより、金型Ｗの一方の側面Ｗ１の下端に第１ベース部材２の側面２ａ（第２ベース部材３が取り付けられていない部分の側面２ａ）を接面させ、さらに支持プレート４の他面を金型Ｗの裏面（成型面Ｗ４と反対の面）Ｗ２に接面させる。このとき、金型Ｗの側面Ｗ１の側面凹部Ｗ３に、クランプ部材５の一部としての他方のプレート６ｂが挿入される。
【００２４】
次いで、ローラ昇降用ボルト２２を緩めて、搬送ローラ２０を非接地にして第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を接地させることにより金型保持装置１を安定的に定置する。そして、クランプ移動用ボルト１１を締め込むことにより、前記した送りねじ作用によってクランプ部材５のプレート６ｂを支持プレート４に接近する方向に移動させて側面凹部Ｗ３の内壁面に圧接させる。これにより、金型Ｗにおいて側面凹部Ｗ３と裏面Ｗ２との間に形成される側面縁部Ｗ５が、プレート６ｂと支持プレート４とにより強固に挟持されることとなる。なお、図示していないが、金型Ｗの他方の側面Ｗ１側においても側面凹部Ｗ３が形成されており、金型Ｗはこの他方の側面Ｗ１側においても同様の金型保持装置１によって保持される。
【００２５】
本発明の金型保持装置１によれば、クランプ部材５と支持プレート４とにより、金型Ｗの側面凹部Ｗ３と裏面Ｗ２との間に形成される側面縁部Ｗ５を挟持固定する構造であるため、簡単な構造となって、かつ、金型保持装置１を取り付けた状態で金型Ｗの成型面Ｗ４を補修するとき、成型面Ｗ４の前方には何ら補修作業を阻害する障害物（例えば、特許文献１における可動保持体１８或いは固定保持体１６など）は存在せず、補修作業を迅速に行えることとなる。また、金型Ｗに対する着脱作業も迅速に行える。
【００２６】
また、クランプ部材５を平断面コ字形を呈した部材として支持プレート４を囲うように配設し、支持プレート４にはガイドピン８を固設し、クランプ部材５の対向し合うプレート６ａ、６ｂの内の一方のプレート６ａにクランプ移動用ボルト１１を螺合し、このクランプ移動用ボルト１１を支持プレート４に当接させて締め込むことにより、プレート６ａがガイドピン８にガイドされて支持プレート４から離間する方向に移動し、他方のプレート６ｂが側面凹部Ｗ３の内壁面に圧接される構成とすれば、ガイドピン８を介しての支持プレート４に対するクランプ部材５の取り付け保持機能と、クランプ部材５と支持プレート４とによる金型Ｗの挟持機能とをコンパクトな構造で両立できる。
【００２７】
また、第１ベース部材２に、この第１ベース部材２の底面を接地または非接地にするための昇降自在な搬送ローラ２０を設ければ、金型保持装置１を瞬時に定置状態或いは搬送状態に切り替えることができ、金型保持装置１の取扱いを楽に行える。さらに、第１ベース部材２に金型保持装置１の操作用の把持アーム２３を設ければ、金型保持装置１の取り回しが楽になる。
【符号の説明】
【００２８】
１ 金型保持装置
２ 第１ベース部材２（ベース部材）
４ 支持プレート
５ クランプ部材
６ａ 一方のプレート
６ｂ 他方のプレート
８ ガイドピン
１１ クランプ移動用ボルト
２０ 搬送ローラ
Ｗ 金型
Ｗ１ 側面
Ｗ２ 裏面
Ｗ３ 側面凹部
Ｗ４ 成型面
Ｗ５ 側面縁部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、金型保持装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
製品を特定の形に成型する場合、プレス成型、射出成型、鋳造等により行われる。これらの金型は異なる製品形状毎に存在するため、未使用時の金型は保管スペースに保管されることが多く、その際には例えば特許文献１に記載された金型保持装置を使用して保管される。
【０００３】
特許文献１に記載の技術は、ベース部材の一端に立設されたアングル部材と、ベース部材上を前記アングル部材に接近離間する方向に摺動し、その位置を保持可能な可動保持体と、可動保持体に螺合された締結用ボルトとから構成された一対の金型保持装置に関するものである。この金型保持装置を用いて金型を保持するときには、まず予め金型の厚みに適合する位置に前記可動保持体の位置を調整し、次いで金型保持装置を前記ベース部材が予め金型の幅に一致する位置に位置させる。次いで金型をクレーン等により前記一対の金型保持装置のアングル部材に当接させ、かつ前記ベース部材上に着座するように載置し、前記締結用ボルトを締め込むことにより金型を一対のアングル部材に対し締結保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００４】
【特許文献１】特開平９−２３４６７９号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００５】
特許文献１の技術では、金型に対する金型保持装置の取り付けに手間がかかるという問題がある。また、この金型保持装置を用いて金型を保持している状態で金型を補修しようとすると、アングル部材が邪魔になって補修作業に差し障るため、この場合には金型保持装置を金型から外し、金型が転倒しないように金型をロープ等により吊り掛けた状態で補修作業を行う必要があり、前記金型保持装置は補修作業に不向きな構造となっていた。
【０００６】
本発明は、以上のような課題を解消するために創作されたものであり、金型に対する取り付けが簡単であって、金型に取り付けた状態で金型の補修作業を容易に行える金型保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明は、前記課題を解決するため、側面凹部が形成された金型を保持する金型保持装置であって、金型の側面に接面するベース部材と、前記ベース部材と一体に設けられ、金型の裏面に接面する支持プレートと、前記支持プレートにこの支持プレートの板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型の側面凹部に挿入されるクランプ部材と、を備え、前記クランプ部材と前記支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定することを特徴とする。
【０００８】
当該金型保持装置によれば、クランプ部材と支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定する構造であるため、金型保持装置を取り付けた状態で金型の成型面を補修するとき、成型面の前方には何ら補修作業を阻害する障害物は存在せず、補修作業を迅速に行える。勿論、成型面とは、前記裏面と反対の面である。また、本発明によれば金型に対する着脱作業も迅速に行える。
【０００９】
また、本発明は、前記クランプ部材は、平断面コ字形を呈した部材であって、前記支持プレートを囲うように配設され、前記支持プレートにはガイドピンが固設され、前記クランプ部材の対向し合うプレートの内の一方のプレートにはクランプ移動用ボルトが螺合され、前記クランプ移動用ボルトを前記支持プレートに当接させて締め込むことにより、前記一方のプレートが前記ガイドピンにガイドされて前記支持プレートから離間する方向に移動し、他方のプレートが前記側面凹部の内壁面に圧接される構成としたことを特徴とする。
【００１０】
当該金型保持装置によれば、支持プレートに対するクランプ部材の取り付け保持機能と、クランプ部材と支持プレートとによる金型の挟持機能とをコンパクトな構造で両立できる。
【００１１】
また、本発明は、前記ベース部材に、このベース部材の底面を接地または非接地にするための昇降自在な搬送ローラを設けたことを特徴とする。
【００１２】
当該金型保持装置によれば、金型保持装置を瞬時に定置状態或いは搬送状態に切り替えることができ、金型保持装置の取扱いを楽に行える。
【００１３】
また、本発明は、前記ベース部材に、操作用の把持アームを設けたことを特徴とする。
【００１４】
当該金型保持装置によれば、作業者は把持アームを操作することで金型保持装置の取り回しを楽に行える。
【発明の効果】
【００１５】
本発明によれば、クランプ部材と支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定する構造であるため、金型保持装置を取り付けた状態で金型の成型面を補修するとき、成型面の前方には何ら補修作業を阻害する障害物は存在せず、補修作業を迅速に行える。また、金型に対する着脱作業も迅速に行える。
【図面の簡単な説明】
【００１６】
【図１】本発明に係る金型保持装置の側面図である。
【図２】本発明に係る金型保持装置の正面図である。
【図３】本発明に係る金型保持装置の平面図である。
【図４】本発明に係る金型保持装置の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【００１７】
図１ないし図４を参照して、本発明に係る金型保持装置１は、側面Ｗ１に側面凹部Ｗ３が形成された金型Ｗに適用されるものであり、金型Ｗの側面Ｗ１に接面するベース部材（第１ベース部材２）と、このベース部材と一体に設けられ、金型Ｗの裏面Ｗ２に接面する支持プレート４と、支持プレート４にこの支持プレート４の板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型Ｗの側面凹部Ｗ３に挿入されるクランプ部材５（図１においては一部破断）と、を備える。側面凹部Ｗ３は例えば金型Ｗの肉抜き穴として形成されるものであって、略矩形状の穴である。
【００１８】
第１ベース部材２は床に横置きされる長尺の中空角柱からなる。本実施形態では、第１ベース部材２の安定度を増す目的で、第１ベース部材２の側面２ａ（図３）に短尺の中空角柱からなる第２ベース部材３を固設している。支持プレート４はその下端が第１ベース部材２または第２ベース部材３に固設されて鉛直に立設した平板部材からなり、その板面が第１ベース部材２の延設方向と直交する方向に沿うように立設されている。クランプ部材５は、平断面コ字形を呈しており、支持プレート４を囲うようにして、支持プレート４に対して後記するクランプ移動用ボルト１１により締緩可能に取り付けられている。符号１２は、支持プレート４と第２ベース部材３とに斜めに掛け渡した補強材である。
【００１９】
コ字形を呈して３面のプレートからなるクランプ部材５において対向し合うプレート６ａ、６ｂの内の一方のプレート６ａと、支持プレート４とにはそれぞれに上下２つの対応するピン穴７ａ、７ｂが開設されており、ピン穴７ａ、７ｂ間にはガイドピン８が挿通されている。ガイドピン８の一端は支持プレート４のピン穴７ｂ内において固設されている。ガイドピン８の他端はプレート６ａのピン穴７ａに遊嵌している。つまり、プレート６ａはガイドピン８にガイドされて支持プレート４に接近或いは離間するように構成されている。ガイドピン８は、支持プレート４に対してクランプ部材５を取り付け保持する機能も兼ねている。支持プレート４の一面（プレート６ａに対向する面）において各ピン穴７ｂの横には凹穴９が形成されており、この２つの凹穴９の位置に対応するようにプレート６ａにはねじ穴１０が螺設されている。支持プレート４の他面は他方のプレート６ｂに対向する。
【００２０】
ねじ穴１０にはクランプ移動用ボルト１１が螺合されており、このクランプ移動用ボルト１１を締め込んでいくと、クランプ移動用ボルト１１の先端がクランプ部材５の凹穴９の底面に当接する。そして、前記一対のガイドピン８と一対のクランプ移動用ボルト１１とによりクランプ部材５は支持プレート４に対して回転不能かつガイドピン８に沿って移動可能に構成されていることから、さらにクランプ移動用ボルト１１を締め込んでいくと、送りねじ作用によりクランプ部材５のプレート６ａが支持プレート４に対して離間する方向に移動し、他方のプレート６ｂは支持プレート４に接近する方向に移動する。
【００２１】
また、第１ベース部材２の両端近傍の上面にはねじ穴が螺設され、一対の搬送ローラ２０を垂直軸回りに軸支するローラ支持プレート２１にもねじ穴が螺設され、両ねじ穴に螺合したローラ昇降用ボルト２２を締緩することにより搬送ローラ２０を昇降させて第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を接地または非接地にすることができるようになっている。つまり、金型保持装置１を搬送させるときには第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を床から離すべく搬送ローラ２０を下降させ、金型保持装置１を定置するときには搬送ローラ２０を上昇させて第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を接地させる。また、第１ベース部材２の略中央部には金型保持装置１を金型Ｗにセットするときや搬送するときなどに把持する把持アーム２３が設けられている。把持アーム２３は、例えば、屈曲形成した棒材やパイプ材等からなる。
【００２２】
金型保持装置１は以上の構成からなり、この金型保持装置１により金型Ｗを保持する場合、まず金型Ｗをクレーン等を用いて所定の保管位置に移動させ定置する。金型保持装置１側においては、予めローラ昇降用ボルト２２を締め込んで搬送ローラ２０を接地させて搬送可能な状態にしておき、クランプ部材５に関しては他方のプレート６ｂを支持プレート４から十分離間させた状態にしておく。
【００２３】
次いで、作業者は把持アーム２３を操作することにより、金型Ｗの一方の側面Ｗ１の下端に第１ベース部材２の側面２ａ（第２ベース部材３が取り付けられていない部分の側面２ａ）を接面させ、さらに支持プレート４の他面を金型Ｗの裏面（成型面Ｗ４と反対の面）Ｗ２に接面させる。このとき、金型Ｗの側面Ｗ１の側面凹部Ｗ３に、クランプ部材５の一部としての他方のプレート６ｂが挿入される。
【００２４】
次いで、ローラ昇降用ボルト２２を緩めて、搬送ローラ２０を非接地にして第１ベース部材２および第２ベース部材３の底面を接地させることにより金型保持装置１を安定的に定置する。そして、クランプ移動用ボルト１１を締め込むことにより、前記した送りねじ作用によってクランプ部材５のプレート６ｂを支持プレート４に接近する方向に移動させて側面凹部Ｗ３の内壁面に圧接させる。これにより、金型Ｗにおいて側面凹部Ｗ３と裏面Ｗ２との間に形成される側面縁部Ｗ５が、プレート６ｂと支持プレート４とにより強固に挟持されることとなる。なお、図示していないが、金型Ｗの他方の側面Ｗ１側においても側面凹部Ｗ３が形成されており、金型Ｗはこの他方の側面Ｗ１側においても同様の金型保持装置１によって保持される。
【００２５】
本発明の金型保持装置１によれば、クランプ部材５と支持プレート４とにより、金型Ｗの側面凹部Ｗ３と裏面Ｗ２との間に形成される側面縁部Ｗ５を挟持固定する構造であるため、簡単な構造となって、かつ、金型保持装置１を取り付けた状態で金型Ｗの成型面Ｗ４を補修するとき、成型面Ｗ４の前方には何ら補修作業を阻害する障害物（例えば、特許文献１における可動保持体１８或いは固定保持体１６など）は存在せず、補修作業を迅速に行えることとなる。また、金型Ｗに対する着脱作業も迅速に行える。
【００２６】
また、クランプ部材５を平断面コ字形を呈した部材として支持プレート４を囲うように配設し、支持プレート４にはガイドピン８を固設し、クランプ部材５の対向し合うプレート６ａ、６ｂの内の一方のプレート６ａにクランプ移動用ボルト１１を螺合し、このクランプ移動用ボルト１１を支持プレート４に当接させて締め込むことにより、プレート６ａがガイドピン８にガイドされて支持プレート４から離間する方向に移動し、他方のプレート６ｂが側面凹部Ｗ３の内壁面に圧接される構成とすれば、ガイドピン８を介しての支持プレート４に対するクランプ部材５の取り付け保持機能と、クランプ部材５と支持プレート４とによる金型Ｗの挟持機能とをコンパクトな構造で両立できる。
【００２７】
また、第１ベース部材２に、この第１ベース部材２の底面を接地または非接地にするための昇降自在な搬送ローラ２０を設ければ、金型保持装置１を瞬時に定置状態或いは搬送状態に切り替えることができ、金型保持装置１の取扱いを楽に行える。さらに、第１ベース部材２に金型保持装置１の操作用の把持アーム２３を設ければ、金型保持装置１の取り回しが楽になる。
【符号の説明】
【００２８】
１ 金型保持装置
２ 第１ベース部材２（ベース部材）
４ 支持プレート
５ クランプ部材
６ａ 一方のプレート
６ｂ 他方のプレート
８ ガイドピン
１１ クランプ移動用ボルト
２０ 搬送ローラ
Ｗ 金型
Ｗ１ 側面
Ｗ２ 裏面
Ｗ３ 側面凹部
Ｗ４ 成型面
Ｗ５ 側面縁部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
側面凹部が形成された金型を保持する金型保持装置であって、
金型の側面に接面するベース部材と、
前記ベース部材と一体に設けられ、金型の裏面に接面する支持プレートと、
前記支持プレートにこの支持プレートの板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型の側面凹部に挿入されるクランプ部材と、
を備え、
前記クランプ部材と前記支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定することを特徴とする金型保持装置。
【請求項２】
前記クランプ部材は、平断面コ字形を呈した部材であって、前記支持プレートを囲うように配設され、
前記支持プレートにはガイドピンが固設され、
前記クランプ部材の対向し合うプレートの内の一方のプレートにはクランプ移動用ボルトが螺合され、
前記クランプ移動用ボルトを前記支持プレートに当接させて締め込むことにより、前記一方のプレートが前記ガイドピンにガイドされて前記支持プレートから離間する方向に移動し、他方のプレートが前記側面凹部の内壁面に圧接される構成としたことを特徴とする請求項１に記載の金型保持装置。
【請求項３】
前記ベース部材に、このベース部材の底面を接地または非接地にするための昇降自在な搬送ローラを設けたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の金型保持装置。
【請求項４】
前記ベース部材に、操作用の把持アームを設けたことを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれか一項に記載の金型保持装置。
【請求項１】
側面凹部が形成された金型を保持する金型保持装置であって、
金型の側面に接面するベース部材と、
前記ベース部材と一体に設けられ、金型の裏面に接面する支持プレートと、
前記支持プレートにこの支持プレートの板面と直交する方向に移動調整可能に取り付けられ、一部が金型の側面凹部に挿入されるクランプ部材と、
を備え、
前記クランプ部材と前記支持プレートとにより、金型の側面凹部と裏面との間に形成される側面縁部を挟持固定することを特徴とする金型保持装置。
【請求項２】
前記クランプ部材は、平断面コ字形を呈した部材であって、前記支持プレートを囲うように配設され、
前記支持プレートにはガイドピンが固設され、
前記クランプ部材の対向し合うプレートの内の一方のプレートにはクランプ移動用ボルトが螺合され、
前記クランプ移動用ボルトを前記支持プレートに当接させて締め込むことにより、前記一方のプレートが前記ガイドピンにガイドされて前記支持プレートから離間する方向に移動し、他方のプレートが前記側面凹部の内壁面に圧接される構成としたことを特徴とする請求項１に記載の金型保持装置。
【請求項３】
前記ベース部材に、このベース部材の底面を接地または非接地にするための昇降自在な搬送ローラを設けたことを特徴とする請求項１または請求項２に記載の金型保持装置。
【請求項４】
前記ベース部材に、操作用の把持アームを設けたことを特徴とする請求項１ないし請求項３のいずれか一項に記載の金型保持装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２０１１−１５２７５６（Ｐ２０１１−１５２７５６Ａ）
【公開日】平成２３年８月１１日（２０１１．８．１１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１６９５７（Ｐ２０１０−１６９５７）
【出願日】平成２２年１月２８日（２０１０．１．２８）
【出願人】（０００００５３２６）本田技研工業株式会社 (23,863)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年８月１１日（２０１１．８．１１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１月２８日（２０１０．１．２８）
【出願人】（０００００５３２６）本田技研工業株式会社 (23,863)
【Ｆターム（参考）】
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