説明

金型内ガス抜き装置及びその方法

【課題】故障の発生が少なく、メンテナンスが容易で、金型を痛めずにキャビティ内の不要なガスを抜き出すことが可能な金型内ガス抜き装置の提供を目的とする。
【解決手段】ダイキャスト用の金型1のキャビティ1aに注入された溶融金属中の不要なガスGを、搬送水Wの流れによって吸い込むエジェクタノズル2を備え、さらに、搬送水WとガスGとが混合してエジェクタノズル2から吐出する混合流体Kから、ガスGに含まれている金属粉Mを除いて、水W´と金属粉Mに分離する分離手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型内ガス抜き装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイキャスト用の金型のキャビティ内に不要なガスを残したまま鋳造(冷却・固化)を行うと、完成した鋳造品に巣が形成される問題や、ブローホール(ガスホール)やピンホールの発生により、鋳造品の機械的強度の低下やリーク性の低下が発生したり、鋳造後の溶接工程において溶接強度不足が発生するといった問題があった。
そこで、従来は、キャビティ内の不要なガスを真空ポンプにて吸引していた(例えば、特許文献1参照)。または、金型にガス抜き路(チルベント)を設け、溶融金属の注入圧力によってガス抜き路から不要なガスを排出させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−177325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、キャビティ内の不要なガスは、高温、かつ、金属粉を有しているため、真空ポンプが目詰まりを起こすトラブルや、負圧系路に設けた電磁弁が詰まったりするトラブルが生じ、これらのトラブルに気付かずに、鋳造工程を継続することで、良品中に不良品が混入するトラブルも多発していた。また、溶融金属の注入圧力でガス抜き路(チルベント)からガスを排出させる場合は、溶融金属を高圧で注入する必要があり、設備が大型になってしまう問題や、ガス抜き路(チルベント)に高い圧力が付与されるため、ヒビ割れ等の損傷が発生して金型の寿命が短くなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、故障の発生が少なく、メンテナンスが容易で、金型を痛めずにキャビティ内の不要なガスを抜き出すことが可能な金型内ガス抜き装置及びその方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の金型内ガス抜き装置は、ダイキャスト用の金型のキャビティの不要なガスを、搬送水の流れによって吸い込むエジェクタノズルを備え、さらに、上記搬送水と上記ガスとが混合して上記エジェクタノズルから吐出する混合流体から、上記ガスに含まれている金属粉を除いて、水と上記金属粉に分離する分離手段を具備するものである。
【0007】
また、上記エジェクタノズルは、目詰まり防止用フィルタを内蔵している。
また、上記分離手段は、上記エジェクタノズルから吐出した上記混合流体を貯液可能な受け槽と、該受け槽からオーバーフローした該混合流体を貯液して上記金属粉を沈下させる沈澱槽と、該金属粉の含有量が増えた金属高含有混合流体を上記沈澱槽の底部から吸い出す送りポンプと、該送りポンプから吸い出した上記金属高含有混合流体を上記水と上記金属粉とに分離する液体サイクロン分離機と、を具備しているものである。
【0008】
また、上記分離手段は、上記エジェクタノズルから吐出した上記混合流体を貯液可能な受け槽と、該受け槽の底面を傾斜面として該傾斜面の近傍の連通流路孔を介して上記混合流体を送り込んで上記金属粉を沈下させる沈澱槽と、該金属粉の含有量が増えた金属高含有混合流体を上記沈澱槽の底部から吸い出す送りポンプと、該送りポンプから吸い出した上記金属高含有混合流体を上記水と上記金属粉とに分離する液体サイクロン分離機と、を具備しているものである。
【0009】
また、上記分離手段にて上記金属粉と分離した上記水を、上記エジェクタノズルに上記搬送水として流すための戻し流路を具備しているものである。
また、上記分離手段にて上記金属粉と分離した上記水を、冷却するための冷却手段を具備しているものである。
【0010】
また、本発明の金型内ガス抜き方法は、ダイキャスト用の金型のキャビティ内の不要なガスを、エジェクタノズルで吸い込んで、上記搬送水と上記ガスとを混合して上記エジェクタノズルから混合流体を吐出させ、その後、該混合流体から上記ガスに含まれている金属粉を除いて、水と上記金属粉に分離し、さらに、上記水を上記エジェクタノズルの真空圧を発生させるための搬送水として上記エジェクタノズルに流す方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金型内ガス抜き装置及びその方法によれば、ダイキャスト成形品等において、巣入り,ブローホール,ピンホール等の不良の発生を著しく低減できる。しかも、キャビティ内の不要なガスを真空ポンプで吸い込まずに抜き出すことができ、目詰まりのような故障の発生が少なく、保守作業時間を短縮できる。また、溶融金属を高圧で注入させるような大型な設備が必要なく、ダイキャスト製造設備を小型なものにできる。金型に溶融金属を注入させる際に高負荷がガス抜き路にかからず金型を延命できる。キャビティ内の不要なガスに含まれる金属粉を容易に回収できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の一形態の全体構成図である。
【図2】金型の一例を示す断面図である。
【図3】エジェクタノズルの一例を示す断面図である。
【図4】他の実施形態を説明する要部構成図である。
【図5】本発明の別の実施の形態を示す全体構成図である。
【図6】要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
図1又は図5、及び、図2に於て、本発明は、キャビティ1aと外部を連通するガス抜き路(チルベント)1bを有しているダイキャスト用の金型1に用いる装置及び方法であって、金型1のキャビティ1a内にアルミニウムやマグネシウム等の溶融金属を注入して鋳造を行う場合に、キャビティ1a内の不要なガスGを、溶融金属が充填されているキャビティ1a内から抜き出す装置及び方法である。
【0014】
図1又は図5に示す本発明の実施形態に於て、金型1のガス抜き路(チルベント)1bに接続されたガス用の吸込流路11と、吸込流路11内の真空圧を測定するための真空圧力計Sと、搬送水Wが流れる搬送水用の供給配管12と、吸込流路11及び供給配管12に接続されキャビティ1a内の溶融金属中の不要なガスGを搬送水Wの流れによって吸い込むエジェクタノズル2と、を備えている。
【0015】
図1又は図5、及び、図3に於て、エジェクタノズル2は、主吸込口部2aから吐出口部2bに向かって搬送水Wを流すことで負圧(吸い込み力)を発生させ、副吸込口部2cに接続された吸込流路11からガスGを吸い込んで、搬送水WとガスGとを内部で合流(混合)させ混合流体Kとして吐出するものである。
【0016】
具体的には、このエジェクタノズル2は、図3に示すように、筒型の目詰まり防止用フィルタ21を有し、ケーシング24に内蔵され、ケーシング24を貫通する小孔25付の管状ノズル本体26を、上記フィルタ21は同心状に包囲している。言い換えると、管状ノズル本体26の軸心と同一軸心として、筒型フィルタ21及びケーシング外周壁24Aが配設されている。流路11の口部2cはケーシング外周壁24Aに開設され、また、金属粉除去(排出)用の配管27は、ケーシング24の底壁24Bの外周寄りに配設され、開閉弁28がこの配管27に介設されている。
ところで、フィルタ21の小孔29の径をφBとし、管状ノズル本体26の小孔25の径をφAとすれば、φA>φBのように設定する。これによって、ノズル本体26の小孔25の目詰まりを、確実に長い期間にわたって防止できる。
【0017】
また、図1又は図5に於て、エジェクタノズル2から吐出する混合流体Kから、ガスGに含まれているアルミニウムやマグネシウム等の金属粉Mを除いて、水W´と金属粉Mに分離する分離手段10を備えている。
【0018】
図1に示す実施の一形態では、分離手段10は、エジェクタノズル2の吐出側に接続され混合流体Kの流路を拡径ラッパ状に形成して混合流体Kの流速を減速させるディフューザー型の排出口部材23と、排出口部材23から吐出された混合流体Kを貯液可能な受け槽3と、受け槽3に形成され混合流体Kをオーバーフローさせる流体オーバーフロー部35と、受け槽3からオーバーフローした混合流体Kを貯液して金属粉Mを沈下させる沈澱槽5と、沈澱槽5に形成されると共に金属粉Mが沈下して混合流体Kから水W´となった上澄み部分をオーバーフローさせる水オーバーフロー部56と、沈澱槽5内で金属粉Mの含有量が増えた金属高含有混合流体K´を沈澱槽5の底部から吸い出す送りポンプP1と、送りポンプP1から吸い出した金属高含有混合流体K´を水W´と金属粉Mとに分離する液体サイクロン分離機7と、送りポンプP1と液体サイクロン分離機7を接続する流体送り配管13と、から成る。
また、沈澱槽5内に、沈下する金属粉Mを底部の所定箇所に集中させる下り坂状の傾斜面50を設けている。底部の所定箇所とは送りポンプP1の吸込口(吸込配管部)近傍である。なお、送りポンプP1を沈澱槽5内の底部に配設しても良い。
【0019】
次に、図5と図6に示した別の実施の形態について説明する。
分離手段10は、エジェクタノズル2の吐出側に接続され混合流体Kの流路を拡径ラッパ状に形成して混合流体Kの流速を減速させるディフューザー型の排出口部材23と、排出口部材23から吐出された混合流体Kを貯液可能な受け槽3と、この受け槽3の底面を傾斜面50Aとして、この傾斜面50Aの近傍の連通流路孔30を介して混合流体Kを送り込んで混合流体K中の金属粉Mを沈下させる沈澱槽5と、沈澱槽5に形成されると共に金属粉Mが沈下して混合流体Kから水W´となった上澄み部分をオーバーフローさせる水オーバーフロー部56と、沈澱槽5内で金属粉Mの含有量が増えた金属高含有混合流体K´を沈澱槽5の底部から吸い出す送りポンプP1と、送りポンプP1から吸い出した金属高含有混合流体K´を水W´と金属粉Mとに分離する液体サイクロン分離機7と、送りポンプP1と液体サイクロン分離機7を接続する流体送り配管13と、から成る。
【0020】
そして、図5に示すように、沈澱槽5にも傾斜面50Bを設けると共に、受け槽3の(底面の)傾斜面50Aと、沈澱槽5の(底面の)傾斜面50Bとは、連続勾配面に形成して、金属粉Mがスムーズに連通流路孔30を通過して、沈澱槽5の底部のポンプP1の吸入口まで送られるように構成する。図5と図6に示すように、区画壁(仕切壁)20をもって、受け槽3と沈澱槽5とが仕切られている。この区画壁(仕切壁)20の上縁は水面よりも高く設定され、かつ、下端縁20Aは、図6(A)の具体例では、小さな上下間隙22をもって傾斜面50Aと対応し、連通流路孔30が横に細長いスリット状であり、また、図6(B)の具体例では、下端縁20Aが断続的に、傾斜面50Aに接触して、複数個の長孔状の連通流路孔30が所定ピッチで形成されている。図5に示すように、受け槽3内では、排出口部材23から流入した混合流体Kは激しく攪拌状態となるのに対し、沈澱槽5では流速が緩和され、金属粉Mは短秒間で沈澱する。
【0021】
そして、分離手段10にて金属粉Mと分離した水W´を貯水可能な貯水槽6を、沈澱槽5に隣接して設けている。貯水槽6は、沈澱槽5からオーバーフローする水W´と、液体サイクロン分離機7から水送り配管14を介して送られる水W´と、を貯水する槽である。受け槽3と沈澱槽5と貯水槽6は、箱型の1つの処理槽9内に順次隣接して設けられている。受け槽3と沈澱槽5と貯水槽6は、各々ドレン用配管部31,51,61を有している。
【0022】
また、貯水槽6内の底部の水W´をポンプP2で吸い出して外部で分岐して、冷却用配管15と循環配管12に分かれて流れる。このように貯水槽6内の水W´を、循環配管12によってエジェクタノズル2と接続して、エジェクタノズル2の搬送水Wに活用(再利用)する。つまり、エジェクタノズル2に使用された搬送水Wは、前述の配管14と配管12及び貯水槽6とから成る戻し流路19を介して、回収し、再び搬送水Wとして利用する。
【0023】
また、金属粉Mを分離した水(貯水槽6内の水)W´を、冷却するための冷却手段8を具備している。この冷却手段8は、貯水槽6と、送水ポンプP2と、冷却媒体Rが流れる熱交換器80と、送水ポンプP2と熱交換器80との間に介設され水W´を熱交換器80に供給する冷却用配管15と、熱交換器80にて冷却された水W´を貯水槽6に戻す返送配管16と、から成る。
【0024】
なお、本発明は設計変更可能であって、図2に示した金型1は例であり、ガス抜き路1b及びキャビティ1aの形状や配置、溶融金属注入手段1cの構成は自由である。図4に示すように、熱交換器80を貯水槽6の外に設けても良い。また、送水ポンプP2を、戻し流路19(供給配管12)用の送水ポンプP2aと、熱交換器80用の送水ポンプP2bと、に分離させて設けても良い。
【0025】
次に、本発明の金型内ガス抜き装置の使用方法(作用)、及び、本発明の金型内ガス抜き方法について説明する。
一般に、ダイキャスト用金型1のキャビティ1a内に元から存在した空気、及び、ダイキャスト材料(Al,Mg,Zn)に含まれているHガス(大気圧中でアルミの場合、100g中に0.55ml)、あるいは、ダイキャスト材料(例えば、660℃以上のAl)に触れた空気中の水蒸気がガス化したHガス、離型材中の水分が加熱されてできる水蒸気(又はHガス)、離型材中の有機物が加熱されて(燃えて)発生する有機ガス、ダイキャスト型へ材料を押し込んだ時に巻き込んだ空気等の各種の不要なガスGが発生する。
【0026】
このような不要なガスGを、搬送水Wの流れによって発生させた負圧により、ガス抜き路1b及び吸込流路11を介して、エジェクタノズル2内に吸い込む。エジェクタノズル2内で、ガスGと搬送水Wが合流し混合して混合流体Kと成る。また、合流する際に、搬送水WはガスGを冷却する。この混合流体Kは、供給された際の搬送水Wより高温であり、ガスGに含まれる金属粉Mを有している。
【0027】
混合流体Kは、排出口部材23によって流速が低下され、受け槽3に吐出される。図5に於て、受け槽3内では金属粉Mを含んだ水が攪拌状態にあり、混合流体Kとして、金属粉Mを含む水が連通流路孔30を通って沈澱槽5へ導かれる。仕切板としての区画壁20の下端縁20Aに流路孔30を通って沈澱槽5へ流入した混合流体Kの金属粉Mは、乱れの少ない沈澱槽5内にて沈下する。
【0028】
このように、沈澱槽5内は、仕切板としての区画壁20により、受け槽3に比べて水流の乱れが少なく、金属粉Mが沈降して底部へ溜まってゆく。なお、ガスGに含まれている気体は、受け槽3や沈澱槽5で貯液されている際に水面から大気へ放出される。
沈澱槽5に於て、金属粉Mが沈降した残りの上澄み液(水)W´は、オーバーフロー部56から次の貯水槽6へ流入する。
【0029】
図5に示すように、傾斜面50Aと傾斜面50Bが連続状勾配底面を構成しており、沈降した金属粉Mは、この連続状勾配面に集まりつつポンプP1の吸込口近傍へ流れてゆき、ポンプP1によって流体送り配管13を介して液体サイクロン分離機7に送られる。
金属高含有混合流体K´は、液体サイクロン分離機7によって、水W´と金属粉Mに分離される。分離した水´は配管14を介して貯水槽6へ循環する。なお、サイクロン分離機7の下部の金属粉Mは開閉バルブ71を開いて、外部へ排出される。
【0030】
貯水槽6内の水W´は、熱交換器80によって冷却される。そして、ポンプP2によって配管12を介してエジェクタノズル2へ冷却された水W´が供給される。即ち、図5(又は図1)に於て、金属粉Mが除去された水W´は、エジェクタノズル2の搬送水Wとして繰り返して再利用される。従って、配管14と配管12から成る戻し流路(循環流路)19を備えている点が、本発明の一つの特徴であると言える。
【0031】
上記貯水槽6内の水W´が、熱交換器80にて冷却され、その冷却された水W´をエジェクタノズル2の搬送水Wとして利用することによって、ノズル2内の水の蒸気圧の上昇を防止して、吸い込み力を適正にし、金型1のガス抜き路1b内や流路11内の真空度を低下させずにガスGの吸引が安定して確実に行われる。なお、Sは真空圧力計を示す。
【0032】
以上のように、本発明の金型内ガス抜き装置は、ダイキャスト用の金型1のキャビティ1aの不要なガスGを、搬送水Wの流れによって吸い込むエジェクタノズル2を備え、さらに、搬送水WとガスGとが混合してエジェクタノズル2から吐出する混合流体Kから、上記ガスGに含まれている金属粉Mを除いて、水W´と金属粉Mに分離する分離手段10を具備するので、搬送水Wによって高温のガスGが冷却され、熱影響を装置全体が受けにくくして故障の発生を防止できる。また、塊に成りやすい金属粉Mを有するガスGを搬送水Wと共に送流することで、ガスGをそのまま流すような装置に比べて、目詰まり等の故障が少ないと共に、配管に金属粉Mがこびりつくような固着物の発生を防止でき、メンテナンスが容易となる。また、キャビティ1a内の溶融金属中の不要なガスGから金属粉Mを回収して、水を循環させて、繰り返し利用できる。
【0033】
エジェクタノズル2は、目詰まり防止用フィルタ21を内蔵していることによって、キャビティ1a内のガスGに混入している金属粉を、2段階の除去手段をもって分離除去されることとなる。即ち、エジェクタノズル2の直前ではフィルタ21にて大き目の金属粉を除去でき、その後、分離手段10によって水に混入した細かい金属粉Mを確実に除去できる。
【0034】
また、分離手段10は、エジェクタノズル2から吐出した混合流体Kを貯液可能な受け槽3と、受け槽3からオーバーフローした混合流体Kを貯液して金属粉Mを沈下させる沈澱槽5と、金属粉Mの含有量が増えた金属高含有混合流体K´を沈澱槽5の底部から吸い出す送りポンプP1と、送りポンプP1から吸い出した金属高含有混合流体K´を水W´と金属粉Mとに分離する液体サイクロン分離機7と、を具備しているので、受け槽3にてエジェクタノズル2から吐出した混合流体Kの勢いを抑制し、緩やかな流れで沈澱槽5に混合流体Kを流入させることができ、沈澱槽5内の水流を安定させ確実に金属粉Mを沈下させることができる。沈澱槽5に溜まった液体の上部分から水W´を得ることができる。受け槽3からオーバーフローさせることで、次の沈澱槽5内では水の乱れが少なくなって沈澱しやすくなる。沈澱槽5内で、受け槽3から流入した直後の状態に比べて金属粉Mの含有量が増えた金属高含有混合流体K´をつくれ、液体サイクロン分離機7にて多くの金属粉Mを効率良く除去できる。
【0035】
また、分離手段10は、エジェクタノズル2から吐出した混合流体Kを貯液可能な受け槽3と、受け槽3の底面を傾斜面50Aとして傾斜面50Aの近傍の連通流路孔30を介して混合流体Kを送り込んで金属粉Mを沈下させる沈澱槽5と、金属粉Mの含有量が増えた金属高含有混合流体K´を沈澱槽5の底部から吸い出す送りポンプP1と、送りポンプP1から吸い出した金属高含有混合流体K´を水W´と金属粉Mとに分離する液体サイクロン分離機7と、を具備しているので、傾斜面50Aに沿って、かつ、連通流路孔30を通って、金属粉を含んだ水が流れて、沈澱槽5に於て、効率良く金属粉Mを分離でき、液体サイクロン7による遠心分離作用で多くの金属粉Mを能率良く分離できる。
【0036】
また、分離手段10にて金属粉Mと分離した水W´を、エジェクタノズル2に搬送水Wとして流すための戻し流路19を具備しているので、繰り返して水の再利用が行われる。
【0037】
また、分離手段10にて上記金属粉Mと分離した水W´を、冷却するための冷却手段8を具備しているので、エジェクタノズル2内で蒸気圧が上昇して、金型1のガス抜き路1b内やガス吸込流路11内で真空度が低下し、ガスGの吸引が困難になるのを防止でき、適正な吸引力をもって金型1からガスGを確実に安定して抜き出すことができる。
【0038】
また、本発明の金型内ガス抜き方法は、ダイキャスト用の金型1のキャビティ1a内の不要なガスGを、エジェクタノズル2で吸い込んで、搬送水WとガスGとを混合してエジェクタノズル2から混合流体Kを吐出させ、その後、混合流体KからガスGに含まれている金属粉Mを除いて、水W´と金属粉Mに分離し、さらに、水W´をエジェクタノズル2の真空圧を発生させるための搬送水Wとしてエジェクタノズル2に流す方法であるので、搬送水Wによって高温のガスGが冷却され、熱影響を受けにくくして故障の発生を防止できる。また、塊に成りやすい金属粉Mを有するガスGを搬送水Wと共に送流することで、ガスGをそのまま流すような装置に比べて、目詰まり等の故障が少ないと共に、配管に金属粉Mがこびりつくような固着物の発生を防止でき、メンテナンスが容易となる。また、キャビティ1a内の溶融金属中の不要なガスGから金属粉Mを回収できると共に使用した搬送水Wを水W´として回収でき、回収した水W´を繰り返し有効利用できる。
【符号の説明】
【0039】
1 金型
1a キャビティ
2 エジェクタノズル(混気ジェットノズル)
3 受け槽
5 沈澱槽
7 液体サイクロン分離機
8 冷却手段
10 分離手段
19 戻し流路(循環流路)
20A 下端縁
21 フィルタ
30 連通流路孔
50A 傾斜面
G ガス
K 混合流体
K´金属高含有混合流体
M 金属粉
P1 送りポンプ
W 搬送水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイキャスト用の金型(1)のキャビティ(1a)の不要なガス(G)を、搬送水(W)の流れによって吸い込むエジェクタノズル(2)を備え、
さらに、上記搬送水(W)と上記ガス(G)とが混合して上記エジェクタノズル(2)から吐出する混合流体(K)から、上記ガス(G)に含まれている金属粉(M)を除いて、水(W´)と上記金属粉(M)に分離する分離手段(10)を具備することを特徴とする金型内ガス抜き装置。
【請求項2】
上記エジェクタノズル(2)は、目詰まり防止用フィルタ(21)を内蔵している請求項1記載の金型内ガス抜き装置。
【請求項3】
上記分離手段(10)は、上記エジェクタノズル(2)から吐出した上記混合流体(K)を貯液可能な受け槽(3)と、該受け槽(3)からオーバーフローした該混合流体(K)を貯液して上記金属粉(M)を沈下させる沈澱槽(5)と、該金属粉(M)の含有量が増えた金属高含有混合流体(K´)を上記沈澱槽(5)の底部から吸い出す送りポンプ(P1)と、該送りポンプ(P1)から吸い出した上記金属高含有混合流体(K´)を上記水(W´)と上記金属粉(M)とに分離する液体サイクロン分離機(7)と、を具備している請求項1記載の金型内ガス抜き装置。
【請求項4】
上記分離手段(10)は、上記エジェクタノズル(2)から吐出した上記混合流体(K)を貯液可能な受け槽(3)と、該受け槽(3)の底面を傾斜面(50A)として該傾斜面(50A)の近傍の連通流路孔(30)を介して上記混合流体(K)を送り込んで上記金属粉(M)を沈下させる沈澱槽(5)と、該金属粉(M)の含有量が増えた金属高含有混合流体(K´)を上記沈澱槽(5)の底部から吸い出す送りポンプ(P1)と、該送りポンプ(P1)から吸い出した上記金属高含有混合流体(K´)を上記水(W´)と上記金属粉(M)とに分離する液体サイクロン分離機(7)と、を具備している請求項1記載の金型内ガス抜き装置。
【請求項5】
上記分離手段(10)にて上記金属粉(M)と分離した上記水(W´)を、上記エジェクタノズル(2)に上記搬送水(W)として流すための戻し流路(19)を具備している請求項1,2,3又は4記載の金型内ガス抜き装置。
【請求項6】
上記分離手段(10)にて上記金属粉(M)と分離した上記水(W´)を、冷却するための冷却手段(8)を具備している請求項5記載の金型内ガス抜き装置。
【請求項7】
ダイキャスト用の金型(1)のキャビティ(1a)内の不要なガス(G)を、エジェクタノズル(2)で吸い込んで、上記搬送水(W)と上記ガス(G)とを混合して上記エジェクタノズル(2)から混合流体(K)を吐出させ、その後、該混合流体(K)から上記ガス(G)に含まれている金属粉(M)を除いて、水(W´)と上記金属粉(M)に分離し、さらに、上記水(W´)を上記エジェクタノズル(2)の真空圧を発生させるための搬送水(W)として上記エジェクタノズル(2)に流すことを特徴とする金型内ガス抜き方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−6055(P2012−6055A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145447(P2010−145447)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(393027729)株式会社カンネツ (8)
【出願人】(502358304)有限会社バイクリーン (1)
【Fターム(参考)】