説明

金型設計方法、金型設計システム、金型設計プログラムおよび金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体

【課題】金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能な金型設計方法、システム、プログラムおよび記憶媒体を提供する。
【解決手段】金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面の製品抜き角度を算出し、製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるキャビティ要素面を抽出し、抽出されたキャビティ要素面のうち互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定し、キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいてキャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を設計する技術に関する。より詳細には、金型から製品を剥離する押し出しコアの配置を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品を成形するための金型を設計する方法としては、製品の原材料の収縮率または膨張率に基づいて製品の三次元形状(スケーリングモデル)を補正したものであるパーティングモデルを生成する工程、パーティングモデルに基づいて金型の可動型の移動方向(製品抜き方向)、パーティングライン、キャビティ面およびパーティング面(金型の可動型と固定型との間の合わせ面)の形状を決定する工程を具備する方法が知られている。
例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
また、従来、製品を成形するための金型を設計する方法としては、上記工程に加えて金型のキャビティに溶融状態の原材料を供給する供給経路(ゲート)および金型のキャビティからガスを外部に排出するための排気経路(ガスベント)の配置を決定する工程、金型を冷却する冷却水の流通経路の配置を決定する工程、金型から製品を抜き出す(剥離する)ための押し出しピンあるいは押し出しコアの配置を決定する工程等を具備する方法が知られている。
例えば、特許文献2に記載の如くである。
【0004】
例えば自動車用バンパーの如く、最初に外側の形状が作成され、次に外側の形状に対してほぼ一定の厚みを持たせるように内側の形状が作成されることにより製品の三次元形状(スケーリングモデル)が作成される製品を成形する金型を設計する場合に、製品の外側の形状を構成する複数の要素面(面データ)の重心位置を算出し、算出された重心位置を起点として要素面に垂直な法線ベクトルを算出し、重心位置を起点として予め設定されたオフセット指示点に向かうオフセット方向指示ベクトルを算出し、法線ベクトルとオフセット方向指示ベクトルとの成す角度に基づいて要素面を法線ベクトルの方向または法線ベクトルの反対方向に所定量だけオフセットすることにより製品の内側の形状を作成する金型設計システムが知られている。
例えば、特許文献3に記載の如くである。
【0005】
金型の設計に関して、製品の三次元形状(スケーリングモデル)および製品抜き方向(金型の可動型の移動方向)に基づいて製品抜き方向における製品の投影面積および金型の深さを算出し、当該算出された製品抜き方向における製品の投影面積および金型の深さに基づいて金型により成形される製品のコストを算出するシステムも知られている。
例えば、特許文献4に記載の如くである。
【0006】
金型から製品を抜き出す(剥離する)ための押し出しピンあるいは押し出しコアは、製品が金型に固着することに伴う付帯的な作業の発生を防止することにより製品のサイクルタイムを短縮し、ひいては金型の生産性を向上する上で重要な部品である。
特に、押し出しコアは、押し出しピンの如く金型から製品を抜き出す(剥離する)機能を有するのみに留まらず、先端部が金型のキャビティ面と面一となって製品の表面形状の一部を担い、あるいは金型から剥離された製品を次の作業工程に受け渡すまで当該製品を一定の姿勢で支持した状態を保持するといった機能をも有する。
従って、金型の設計において金型に設けられる押し出しコアの配置および形状を適正に設定することは重要である。
【0007】
金型の設計において押し出しコア(あるいは押し出しピン)の配置および形状を決定する技術としては、特許文献5に記載の金型設計支援装置および特許文献6に記載の金型設計方法が知られている。
【0008】
特許文献5に記載の金型設計支援装置は、金型のキャビティ面における離型抵抗形状(金型から製品を剥離して取り出す際に金型のキャビティ面と製品の表面との当接部において大きな応力が作用する部分の形状)の有無によって押し出しコア、内設押し出しコアまたはスライドコアのいずれを金型に設けるかを選択するものである。
しかし、特許文献5に記載の金型設計支援装置は、選択された押し出しコアの配置される位置および押し出しコアの幅を決定する具体的な方法については開示していない。
【0009】
特許文献6に記載の金型設計方法は、金型から製品を抜き出す際に押し出しピンにかかる荷重が製品を構成する材料の降伏応力以下となるか否かを条件として、押し出しピンの配置および形状を評価する。
しかし、特許文献6に記載の金型設計方法は、作業者により設定入力された押し出しピンの形状および配置で金型から製品を抜き出す場合に、当該設定入力された押し出しピンにかかる荷重が製品を構成する材料の降伏応力以下となるか否かを判定するものであることから、設定入力される押し出しピンの形状および配置は作業者の裁量に任されている。
従って、設定入力される押し出しピンの形状および配置は、実質的には作業者の試行錯誤の結果として決定され、作業者により変動し得る(一定のルールに従って一義的に決まるものではない)ものであるにも関わらず、特許文献6において押し出しピンの形状および配置の具体的な決定方法については開示されていない。
【特許文献1】特許第3629439号公報
【特許文献2】特開2006−155629号公報
【特許文献3】特開2000−331046号公報
【特許文献4】特開2002−351928号公報
【特許文献5】特開2006−79205号公報
【特許文献6】特開2001−71064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能な金型設計方法、金型設計システム、金型設計プログラムおよび金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計方法であって、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出工程と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出工程と、
前記キャビティ要素面抽出工程において抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定工程と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定工程と、
を具備するものである。
【0013】
請求項2においては、
前記押し出しコア配置決定工程において、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置するものである。
【0014】
請求項3においては、
前記押し出しコア配置決定工程において、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出するものである。
【0015】
請求項4においては、
前記押し出しコア配置決定工程において配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定工程を具備するものである。
【0016】
請求項5においては、
前記押し出しコア配置判定工程において、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定するものである。
【0017】
請求項6においては、
前記押し出しコア配置判定工程において、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定するものである。
【0018】
請求項7においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計システムであって、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出部と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出部と、
前記キャビティ要素面抽出部により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定部と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定部と、
を具備するものである。
【0019】
請求項8においては、
前記押し出しコア配置決定部は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置するものである。
【0020】
請求項9においては、
前記押し出しコア配置決定部は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出するものである。
【0021】
請求項10においては、
前記押し出しコア配置決定部により配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定部を具備するものである。
【0022】
請求項11においては、
前記押し出しコア配置判定部は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定するものである。
【0023】
請求項12においては、
前記押し出しコア配置判定部は、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定するものである。
【0024】
請求項13においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムであって、
コンピュータに、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出機能と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出機能と、
前記キャビティ要素面抽出機能により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定機能と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定機能と、
を実現させるためのものである。
【0025】
請求項14においては、
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置するものである。
【0026】
請求項15においては、
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出するものである。
【0027】
請求項16においては、
前記押し出しコア配置決定機能により配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定機能を実現させるためのものである。
【0028】
請求項17においては、
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定するものである。
【0029】
請求項18においては、
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定するものである。
【0030】
請求項19においては、
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
コンピュータに、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出機能と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出機能と、
前記キャビティ要素面抽出機能により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定機能と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定機能と、
を実現させるためのものである。
【0031】
請求項20においては、
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置するものである。
【0032】
請求項21においては、
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出するものである。
【0033】
請求項22においては、
前記押し出しコア配置決定機能により配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定機能を実現させるためのものである。
【0034】
請求項23においては、
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定するものである。
【0035】
請求項24においては、
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定するものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下では、図1を用いて本発明に係る金型設計システムの第一実施形態であるCAD(Computer Aided Design)システム101の概略構成について説明する。
【0038】
図1に示す如く、CADシステム101は製品たる自動車用バンパーを成形する金型を設計するものであり、CAD端末装置110、記憶装置120および制御装置130を具備する。
CAD端末装置110と記憶装置120との間、CAD端末装置110と制御装置130との間、および記憶装置120と制御装置130との間はそれぞれ接続され、互いにデータを送信および受信することが可能である。
【0039】
CAD端末装置110は制御装置130に数値あるいは指示を入力するとともに、制御装置130による演算結果(例えば、金型に設けられる押し出しコアの配置を表す画像)等を表示する装置である。
CAD端末装置110は専用品でも良く、市販されているパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等の汎用品(キーボード、マウスおよびディスプレイを含む)を用いて実現しても良い。
【0040】
記憶装置120は種々のデータを記憶するとともに、CAD端末装置110あるいは制御装置130に記憶されたデータを出力するものである。
記憶装置120は専用品でも良く、市販されているHDD(Hard Disc Drive)、CD−ROM、DVD−ROM等を用いて実現しても良い。
【0041】
本実施形態では、記憶装置120は予め製品たる自動車用バンパーの三次元形状(スケーリングモデル)、パーティングモデル、キャビティの形状(キャビティ面の形状)、パーティング面の形状およびパーティングラインの形状に係る情報を記憶している。
【0042】
「パーティングモデル」は製品の三次元形状を製品の原材料の収縮率(または膨張率)に基づいて補正したものである。図3に自動車用バンパーのパーティングモデルの実施の一形態を示す。
【0043】
「キャビティ」は、金型の内部に形成され、金型により成形される製品の原材料を溶融したもの、あるいは金型により成形される製品の原材料を粉粒体(粉体あるいは粒体)にしたものが供給される空間を指す。
「キャビティ面」は、金型においてキャビティに対向する面を指す。
キャビティの形状(キャビティ面の形状)は、通常はパーティングモデルの形状に略一致する。
【0044】
「パーティング面」は、金型の合わせ面、すなわち固定型および可動型を具備する金型において当該金型を閉じたときに固定型と可動型とが当接する面を指す。
【0045】
「パーティングライン」は、固定型および可動型を具備する金型においてパーティング面とキャビティ面との境界を成す線を指す。
パーティングラインは通常、パーティングモデルの表面に沿って途中で交差することなく描かれる無端状の輪となる。
【0046】
「製品抜き方向」は、金型から製品を取り出す方向を指す。製品抜き方向は通常、固定型および可動型を具備する金型において固定型に対する可動型の移動方向(開閉方向)に一致する。また、一般に「製品抜き方向」と、金型から製品を剥離するときに押し出しコアが金型に対して相対的に移動する方向(押し出し方向)と、は一致する。
【0047】
本発明においては、製品のスケーリングモデル、パーティングモデル、キャビティの形状、パーティング面の形状およびパーティングラインの形状に係る情報は既知の手法により作成されたものを広く含む。
【0048】
制御装置130は、記憶装置120に記憶されているデータおよびCAD端末装置110により入力された数値および指示に基づいて、格納されているプログラムに従った所定の演算を行う装置である。
制御装置130は、実体的にはCPU(Central Processing Unit;中央演算処理装置)、RAM(Random Access Memory;ランダムアクセスメモリ)、ROM(Read−Only Memory;読み出し専用メモリ)あるいはHDD等がバスで接続されている構成でもよく、ワンチップのLSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)で実現されている構成でも良い。
制御装置130は専用品でも良く、市販されているパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等の汎用品(キーボード、マウス、光学式ドライブおよびディスプレイを含む)を用いて実現しても良い。
【0049】
作業者(本実施形態では、金型の設計者)がCAD端末装置110を操作することにより数値あるいは指示を入力すると、当該数値あるいは指示に係るデータが記憶装置120および制御装置130に送信される。
記憶装置120はCAD端末装置110から送信されてきたデータ(作業者が入力した数値および指示)を適宜記憶する。
制御装置130はCAD端末装置110から送信されてきたデータ(作業者が入力した数値および指示)および記憶装置120に記憶されているデータに基づき、制御装置130に予め格納されているプログラムに従って所定の演算を行うとともに、当該演算結果をCAD端末装置110および記憶装置120に送信する。
CAD端末装置110は制御装置130から送信された演算結果を表示する。記憶装置120は制御装置130から送信された演算結果を適宜記憶する。
【0050】
以下では、図2を用いて本発明に係る金型設計システムの第二実施形態であるCADシステム102の概略構成について説明する。
図2に示す如く、CADシステム102は複数のCAD端末装置110・110・・・、記憶装置120および制御装置130を具備する。
CAD端末装置110と記憶装置120との間、CAD端末装置110と制御装置130との間、および記憶装置120と制御装置130との間はそれぞれネットワーク140により接続され、互いにデータを送受信することが可能である。
ネットワーク140の具体例としては、インターネット、イントラネット等が挙げられる。
【0051】
CADシステム102は、複数のCAD端末装置110・110・・・を具備し、複数の作業者がそれぞれ別のCAD端末装置110を同時に操作して制御装置130に数値あるいは指示を入力する(金型の設計を行う)とともに制御装置130による演算結果(例えば、金型に設けられる押し出しコアの配置を表す画像)等を表示することが可能である点において図1に示すCADシステム101と相違するが、その他の点については基本的にはCADシステム101と同様である。
【0052】
なお、図1に示すCADシステム101および図2に示すCADシステム102はいずれもCAD端末装置110、記憶装置120および制御装置130がそれぞれ別体であるが、これらを一台のパーソナルコンピュータあるいはワークステーション等で実現しても良い。
【0053】
本実施形態のCADシステム101およびCADシステム102は製品として樹脂製の自動車用バンパー(特に、自動車前部に取り付けられるバンパー)を成形する金型を設計するものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、溶融状態の材料(例えば、樹脂材料あるいは金属材料)を充填して凝固させることにより所定形状の製品を成形する金型を設計する用途、あるいは粉粒体(例えば、粉状の金属材料、樹脂材料あるいはセラミックス)を充填して加圧(あるいは加熱)することにより所定形状の製品を成形する金型を設計する用途に広く適用可能である。
【0054】
以下では、図1から図7を用いて制御装置130の詳細について説明する。
図1に示す如く、制御装置130は、機能的にはCAD機能処理部131、製品抜き角度算出部132、キャビティ要素面抽出部133、キャビティ要素複合面設定部134、押し出しコア配置決定部135および押し出しコア配置判定部136を具備する。
【0055】
CAD機能処理部131は二次元形状あるいは三次元形状に係る製図機能、およびCAD端末装置110と制御装置130との間のインターフェース機能を有する。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納されたCADソフトウェアに従って所定の演算を行うことにより、CAD機能処理部131としての機能を果たす。
なお、CADソフトウェアは専用に開発されたものでも良く、市販されているものでも良い。
【0056】
製品抜き角度算出部132は本発明に係る製品抜き角度算出部の実施の一形態であり、金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である「製品抜き角度」を各キャビティ要素面について算出するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、製品抜き角度算出部132としての機能を果たす。
【0057】
「複数のキャビティ要素面」は「キャビティ面を構成する微少な平面の集合体」を指す。例えば、製品として自動車のバンパーを成形する金型の場合、当該金型に形成されるキャビティ面は、数百から数千のキャビティ要素面の集合体として構成される。
【0058】
製品抜き角度算出部132は、記憶装置120が記憶している自動車用バンパーのキャビティ面の形状に係る情報、ひいては当該キャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面に係る情報を取得するとともに、記憶装置120が記憶している自動車用バンパーの製品抜き方向に係る情報を取得し、これらの情報に基づいて各キャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度を算出する。
記憶装置120は、製品抜き角度算出部132により算出された「各キャビティ要素面についての製品抜き角度」に係る情報を適宜記憶する。
【0059】
キャビティ要素面抽出部133は本発明に係るキャビティ要素面抽出部の実施の一形態であり、予め求められた「製品抜き角度と離型抵抗との関係」に基づいて、金型のキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面のうち、離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、キャビティ要素面抽出部133としての機能を果たす。
【0060】
「離型抵抗」は成形された製品を金型から離型する(剥離する)ときに金型と製品との間に作用する抵抗力を指す。
離型抵抗は通常は製品抜き方向に垂直な面に換算した単位面積あたりの応力として与えられる。
離型抵抗はキャビティ面(あるいは、金型に固着している製品の表面)、より詳細にはキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度に応じて変動する。
【0061】
図4に示す如く、一般に、製品抜き角度θが小さいほど(製品抜き方向がキャビティ面に対して平行に近いほど)離型抵抗は大きくなる傾向がある。
例えば、図4において離型抵抗が閾値F1よりも大きいキャビティ要素面を抽出したい場合、製品抜き角度が角度θ1よりも小さいキャビティ要素面を抽出すれば良い。
【0062】
キャビティ要素面抽出部133は、記憶装置120が記憶している金型のキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面のそれぞれについての製品抜き角度に係る情報を取得する。
キャビティ要素面抽出部133は、取得した複数のキャビティ要素面のそれぞれについての製品抜き角度に係る情報に基づいて、金型のキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面のうち、製品たる自動車用バンパーの内側の表面に形成される補強用のリブの近傍に対応するキャビティ要素面については製品抜き方向との成す角度が2°以下となるキャビティ要素面を抽出する。
また、キャビティ要素面抽出部133は、自動車用バンパーの内側の表面に形成される補強用のリブの近傍に対応するキャビティ要素面以外のキャビティ要素面については製品抜き方向との成す角度が5°以下となるキャビティ要素面を抽出する。
記憶装置120は、キャビティ要素面抽出部133により抽出されたキャビティ要素面に係る情報を適宜記憶する。
【0063】
本実施例ではキャビティ要素面を抽出するときに用いる製品抜き角度の値(ひいては、離型抵抗の閾値)を製品たる自動車用バンパーの部位との関係等に応じて複数設定する構成としたが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、離型抵抗の閾値の数は製品の性状(製品の形状、製品の表面粗さ、製品の原材料の機械的性質等)に応じて適宜選択することが可能である。
【0064】
キャビティ要素複合面設定部134は本発明に係るキャビティ要素複合面設定部の実施の一形態であり、キャビティ要素面抽出部133により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものを「キャビティ要素複合面」として設定するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、キャビティ要素複合面設定部134としての機能を果たす。
【0065】
例えば、図5に示す如く、キャビティ要素複合面設定部134は製品たる自動車用バンパーのキャビティ面を構成するキャビティ要素面11・12・13・・・26のうち、互いに隣接するキャビティ要素面16・17・20・21がキャビティ要素面抽出部133により抽出されたキャビティ要素面である場合には、キャビティ要素面16・17・20・21を合わせたもの(図5において太い実線で囲まれたもの)をキャビティ要素複合面30として設定する。
記憶装置120は、キャビティ要素複合面設定部134により設定されたキャビティ要素複合面に係る情報を適宜記憶する。
【0066】
押し出しコア配置決定部135は本発明に係る押し出しコア配置決定部の実施の一形態であり、キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて当該キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、押し出しコア配置決定部135としての機能を果たす。
【0067】
押し出しコア配置決定部135は複合面投影形状作成部135a、複合面投影形状重心位置算出部135b、複合面投影面積算出部135cおよび配置決定部135dを具備する。
【0068】
複合面投影形状作成部135aは「キャビティ要素複合面設定部134により設定されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状」および「キャビティ要素複合面設定部134により設定されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状」を作成するものである。
例えば、図6に示す如く、複合面投影形状作成部135aはキャビティ要素複合面30を製品抜き方向(L方向)に垂直な面である投影面41に投影した図形として、キャビティ要素複合面30の製品抜き方向における投影形状31を作成する。
また、複合面投影形状作成部135aはキャビティ要素複合面30を製品抜き方向に平行な面のうち、製品たる自動車バンパーの上下方向(H方向)に垂直な所定の面である投影面42に投影した図形として、キャビティ要素複合面30の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状32を作成する。
記憶装置120は、複合面投影形状作成部135aにより作成された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状」に係る情報を適宜記憶する。
【0069】
複合面投影形状重心位置算出部135bは複合面投影形状作成部135aにより作成されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置を算出するものである。
例えば、図6に示す如く、複合面投影形状重心位置算出部135bはキャビティ要素複合面30の製品抜き方向における投影形状31の重心31aの位置(投影形状31の重心位置)を、重心31aの製品抜き方向に垂直な平面である投影面40上の座標(h1,w1)の形で算出する。
記憶装置120は、複合面投影形状重心位置算出部135bにより算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置」に係る情報を適宜記憶する。
【0070】
複合面投影面積算出部135cは複合面投影形状作成部135aにより作成された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状」に基づいて、「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積(投影面積)」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積(投影面積)」を算出するものである。
例えば、図6に示す如く、複合面投影面積算出部135cはキャビティ要素複合面30の製品抜き方向(本実施形態の場合、自動車用バンパーの前後方向に対応するL方向)における投影形状31の投影面積S1を算出するとともに、キャビティ要素複合面30の製品抜き方向に垂直な所定の方向(本実施形態の場合、自動車用バンパーの上下方向に対応するH方向)における投影形状32の投影面積S2を算出する。
記憶装置120は、複合面投影面積算出部135cにより算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積(投影面積)」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な所定の方向における投影形状の面積(投影面積)」に係る情報を適宜記憶する。
【0071】
配置決定部135dは、複合面投影形状重心位置算出部135bにより算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置」、複合面投影面積算出部135cにより算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および複合面投影面積算出部135cにより算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な所定の方向における投影面積」に基づいて金型に設けられる押し出しコアの形状および配置を決定するものである。
【0072】
本実施形態では、押し出しコアの製品抜き方向の方向(L方向)の長さおよび押し出しコアの製品抜き方向に垂直な所定の方向(H方向)の長さが予め設定され、記憶装置120に記憶される。
配置決定部135dは、記憶装置120に記憶された押し出しコアの製品抜き方向(L方向)の長さ、押し出しコアの製品抜き方向に垂直な所定の方向(H方向)の長さ、「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な所定の方向における投影面積」をCAD端末装置110に表示する。
作業者は、CAD端末装置110に表示された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影面積」に基づいて、「金型に設けられる押し出しコアの製品抜き方向および製品抜き方向に垂直な所定の方向の両方に対して垂直な方向における長さ」を算出する。
作業者は、算出された「金型に設けられる押し出しコアの製品抜き方向および製品抜き方向に垂直な所定の方向の両方に対して垂直な方向における長さ」をCAD端末装置110に入力する。
配置決定部135dは、CAD端末装置110に入力された値を「金型に設けられる押し出しコアの製品抜き方向および製品抜き方向に垂直な所定の方向の両方に対して垂直な方向における長さ」として決定する。
記憶装置120は、CAD端末装置110により入力された「金型に設けられる押し出しコアの製品抜き方向および製品抜き方向に垂直な所定の方向の両方に対して垂直な方向における長さ」に係る情報を記憶する。
【0073】
このようにして、配置決定部135dは、金型に設けられる押し出しコアの形状、すなわち「製品抜き方向の長さ(L方向の長さ)」、「製品抜き方向に垂直な所定の方向の長さ(H方向の長さ)」および「製品抜き方向および製品抜き方向に垂直な所定の方向の両方に対して垂直な方向における長さ(W方向の長さ)」を決定する。
配置決定部135dは、金型に設けられる押し出しコアの製品抜き方向における投影形状(本実施形態の場合、長方形または正方形)の重心位置を算出し、算出された「押し出しコアの重心位置」と「キャビティ要素複合面の投影形状の重心位置」とが製品抜き方向から見て一致する位置に押し出しコアの配置を決定する。
記憶装置120は、配置決定部135dにより決定された押し出しコアの形状および配置に係る情報を記憶する。
【0074】
なお、本実施形態では押し出しコアの形状のうち、L方向およびH方向の長さを予め定められた値(既定値)とし、W方向の長さを「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影面積」に基づいて算出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、他の方法で押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する構成としても良い。
他の構成の例としては、(a)製品抜き方向から見た押し出しコアの形状(製品抜き方向における投影形状)を予め円形と定めておき、「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影面積」に基づいて当該円形の面積(直径)を算出する構成、あるいは、(b)予め記憶装置に「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」、「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影面積」および「押し出しコアの製品抜き方向における投影面積」の関係式を記憶しておき、当該関係式に「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影面積」を算出する構成、等が挙げられる。
また、製品の形状(本実施形態の場合、自動車用バンパーは一般に自動車の幅方向(W方向)に長い形状であり、製品抜き方向から見たキャビティ要素複合面の形状もW方向に長い傾向を有する)、製品の原材料の機械的性質(降伏応力、縦弾性係数、横弾性係数等)等の要素を加味して押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する構成としても良い。
【0075】
また、本実施例では記憶装置120に記憶された押し出しコアの製品抜き方向(L方向)の長さ、押し出しコアの製品抜き方向に垂直な所定の方向(H方向)の長さ、「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な所定の方向における投影面積」をCAD端末装置110に表示し、当該表示結果に基づいて作業者が押し出しコアのW方向の長さを算出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、他の構成で押し出しコアの形状を決定しても良い。
例えば、記憶装置に過去に作成された自動車バンパーの押し出しコアの形状のデータを予め記憶しておき、作業者が当該データを参照(比較)することにより押し出しコアの形状を決定する構成としても良く、記憶装置に「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影面積」と「押し出しコアの製品抜き方向における投影面積」との関係を予め記憶しておき、これに基づいて押し出しコア配置決定部が「押し出しコアの製品抜き方向における投影形状」を決定する構成としても良い。
【0076】
押し出しコア配置判定部136は本発明に係る押し出しコア配置判定部の実施の一形態であり、押し出しコア配置決定部135により配置(および形状)が決定された押し出しコアが金型から製品を剥離したときに当該製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定するものである。
実体的には、制御装置130が、制御装置130に格納された金型設計プログラムに従って所定の演算を行うことにより、押し出しコア配置判定部136としての機能を果たす。
【0077】
押し出しコア配置判定部136は、以下の(A)〜(D)の手順に従って金型から剥離された製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する。
【0078】
(A)押し出しコア配置判定部136は、複合面投影形状重心位置算出部135bにより算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置」に基づいて、「押し出し有効範囲」を設定する。
ここで、「押し出し有効範囲」は、押し出しコアによる押し出し力(金型のキャビティ面から製品を剥離する力)が製品に及ぶ範囲を指す。押し出し有効範囲は、製品の原材料の機械的性質(降伏応力、縦弾性係数、横弾性係数)に基づいて、あるいは過去の類似の製品における知見等に基づいて設定される。
本実施では図7に示す如く、押し出し有効範囲51L・52L・53L・54L・51R・52R・53R・54Rは製品抜き方向から見て「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置(図7において黒丸で表示される)」を中心する直径400mmの円で表される。本実施形態の押し出し有効範囲の形状および大きさは予め記憶装置120に記憶される。
なお、本発明に係る押し出し有効範囲の形状および大きさは製品に応じて適宜選択することが可能であり、本実施形態の如き直径400mmの円形に限定されるものではない。
【0079】
(B)押し出しコア配置判定部136は、記憶装置120に記憶されている自動車用バンパーのパーティングライン60(図7参照)に係る情報および先に設定した押し出し有効範囲51L・52L・53L・54L・51R・52R・53R・54Rに基づいて、押し出し有効範囲51L・52L・53L・54L・51R・52R・53R・54Rの外形線が自動車用バンパーのパーティングライン60と交差しているか否かを確認する。
上記確認の結果、図7に示す如く、押し出し有効範囲51L・52L・53L・54L・51R・52R・53R・54Rの外形線がいずれもパーティングライン60と交差している場合には、押し出しコア配置判定部136は押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能である(押し出しコアにより支持された自動車用バンパーの重量バランスが崩れていない)と判定する。
上記確認の結果、仮に押し出し有効範囲51L・52L・53L・54L・51R・52R・53R・54Rの外形線のうち、少なくとも一つの外形線が自動車用バンパーのパーティングライン60と交差していない場合には、押し出しコア配置判定部136は押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能である(押し出しコアにより支持された自動車用バンパーの重量バランスが崩れている)と判定する。
【0080】
(C)押し出しコア配置判定部136は、押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には、自動車用バンパーにおいてキャビティ要素複合面と異なる位置に臨む「製品支持用コア」を設定する。
本実施形態の場合、製品たる自動車用バンパーは一般に左右方向に関してほぼ対称な形状であり、上下方向に関して重量バランスが崩れやすい傾向を有するので、押し出しコア配置判定部136は、製品の表面のうち製品のパーティングライン60と交差していない押し出し有効範囲の左右側方のいずれかかつ上下方向(パーティングラインに近づく方向)のいずれかにシフトした位置に追加的に「製品支持用コア」を設定する。
「製品支持用コア」は、本発明に係る押し出しコアにより金型から剥離された製品が当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能である場合に、当該製品の姿勢を安定させるために追加的に設定されるコアである。
「製品支持用コア」の形状は予め設定され、記憶装置120に記憶される。
【0081】
(D)押し出しコア配置判定部136は、CAD端末装置110に押し出しコア配置判定部136による判定を行った後の押し出しコア(あるいは、押し出しコアおよび製品支持用コアを合わせたもの)の配置を表示する。
作業者は、CAD端末装置110に表示された押し出しコアの配置に基づいて、押し出しコアの最終的な配置を決定する。
本実施形態の場合、作業者は、金型に設定される冷却水の経路との干渉、金型を開閉するための機構と押し出しコアとの干渉、押し出しコアを収容する孔を金型に形成した場合の金型の強度等を考慮し、必要があれば押し出しコア配置決定部135により決定された押し出しコアの配置を適宜変更したり(通常は製品抜き方向に垂直な方向へ移動させたり)、あるいは製品支持用コアを更に追加したりするといった指示をCAD端末装置110に入力する。
押し出しコア配置判定部136は、作業者によりCAD端末装置110に入力された指示に基づいて押し出しコアの最終的な配置を決定する。
記憶装置120は、押し出しコア配置判定部136により決定された押し出しコアの最終的な配置を記憶する。
【0082】
以上の如く、CADシステム101は、
製品(自動車用バンパー)を成形する金型を設計するシステムであって、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出部132と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、複数のキャビティ要素面のうち、離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出部133と、
キャビティ要素面抽出部133により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定部134と、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいてキャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定部135と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、CADシステム101は成形後の製品と金型のキャビティ面との間に作用する離型抵抗が大きい部分であるキャビティ要素複合面に対応する位置に押し出しコアを配置するので、CADシステム101により設計された金型は成形後の製品を効果的に(製品に余分な負荷をかけたり(製品を変形させたり)、製品の姿勢が崩れたり、あるいは製品の表面にキズをつけたりすることなく)キャビティ面から剥離することが可能である。
従って、CADシステム101は金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能である。また、CADシステム101は押し出しコアの配置を容易とすることにより、金型の設計に係る工数、ひいては金型の設計コストの削減に寄与する。
【0083】
また、CADシステム101の押し出しコア配置決定部135は、
キャビティ要素複合面の投影形状の製品抜き方向における重心位置と押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが製品抜き方向から見て一致する位置に押し出しコアを配置する。
このように構成することにより、CADシステム101はキャビティ要素複合面の重心位置に基づいて押し出しコアを配置するので、CADシステム101により設計された金型の押し出しコアは金型から剥離された製品を支持した状態を保持する(製品をその姿勢を崩すことなく支持する)ことが可能であり、製品の製造工程において金型による製品の成形工程の後工程への製品の受け渡しが容易となって製品の生産性が向上する。
【0084】
また、CADシステム101の押し出しコア配置決定部135は、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積およびキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、従来は押し出しコアの配置および形状(サイズ)を熟練した作業者の経験に頼って決定していたために、決定された押し出しコアのサイズ(製品抜き方向から見た投影面積)が実際に必要なサイズよりも大きくなる傾向が強かったが、本実施形態の如くキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積およびキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づき一定のルールに従ってキャビティ要素複合面の押し出しコアの製品抜き方向から見た投影面積を算出することにより、従来に比べて押し出しコアの製品抜き方向から見た投影面積を相対的に小さく設定する(徒に大きく設定しない)ことが可能であり、押し出しコアの製造コストの削減に寄与する。
【0085】
また、CADシステム101は、
押し出しコア配置決定部135により配置が決定された押し出しコアが金型から製品を剥離したときに製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定部136を具備する。
このように構成することにより、金型から剥離された製品の姿勢が安定しているか否かを確認することが可能であり、金型の生産性向上に寄与する。
【0086】
また、CADシステム101の押し出しコア配置判定部136は、
キャビティ要素複合面の投影形状の重心位置に基づいて押し出しコアによる押し出し力が製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
押し出し有効範囲の外形線が金型のパーティングラインと交差する場合には製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
押し出し有効範囲の外形線が金型のパーティングラインと交差しない場合には製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する。
このように構成することにより、一定の基準に従って製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを容易かつ確実に判定することが可能である。
【0087】
また、CADシステム101の押し出しコア配置判定部136は、
製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には製品においてキャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定する。
このように構成することにより、製品が押し出しコアにより支持された状態を確実に保持することが可能である。
【0088】
以下では、図8を用いて本発明に係る金型設計方法の実施の一形態について説明する。
本発明に係る金型設計方法の実施の一形態はCADシステム101を用いて製品たる自動車用バンパーを成形する金型を設計する方法であり、図8に示す如く製品抜き角度算出工程S1100、キャビティ要素面抽出工程S1200、キャビティ要素複合面設定工程S1300、押し出しコア配置決定工程S1400および押し出しコア配置判定工程S1500を具備する。
【0089】
製品抜き角度算出工程S1100は、製品抜き角度算出部132が金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である「製品抜き角度」を各キャビティ要素面について算出する工程である。
製品抜き角度算出工程S1100が終了したら、キャビティ要素面抽出工程S1200に移行する。
【0090】
キャビティ要素面抽出工程S1200は、キャビティ要素面抽出部133が予め求められた「製品抜き角度と離型抵抗との関係」に基づいて、金型のキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面のうち、離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出する工程である。
キャビティ要素面抽出工程S1200が終了したら、キャビティ要素複合面設定工程S1300に移行する。
【0091】
キャビティ要素複合面設定工程S1300は、キャビティ要素複合面設定部134がキャビティ要素面抽出工程S1200において抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものを「キャビティ要素複合面」として設定する工程である。
キャビティ要素複合面設定工程S1300が終了したら、押し出しコア配置決定工程S1400に移行する。
【0092】
押し出しコア配置決定工程S1400は、押し出しコア配置決定部135がキャビティ要素複合面設定工程S1300により設定されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて当該キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する工程である。
本実施形態では、押し出しコア配置決定工程S1400は複合面投影形状作成工程S1410、複合面投影形状重心位置算出工程S1420、複合面投影面積算出工程S1430および配置決定工程S1440を具備する。
【0093】
複合面投影形状作成工程S1410は、複合面投影形状作成部135aが「キャビティ要素複合面設定部134により設定されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状」および「キャビティ要素複合面設定部134により設定されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状」を作成する工程である。
複合面投影形状作成工程S1410が終了したら、複合面投影形状重心位置算出工程S1420に移行する。
【0094】
複合面投影形状重心位置算出工程S1420は、複合面投影形状重心位置算出部135bが複合面投影形状作成部135aにより作成されたキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置を算出する工程である。
複合面投影形状重心位置算出工程S1420が終了したら、複合面投影面積算出工程S1430に移行する。
【0095】
複合面投影面積算出工程S1430は、複合面投影面積算出部135cが複合面投影形状作成工程S1410において作成された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状」に基づいて、「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積(投影面積)」および「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積(投影面積)」を算出する工程である。
複合面投影面積算出工程S1430が終了したら、配置決定工程S1440に移行する。
【0096】
配置決定工程S1440は、配置決定部135dが複合面投影形状重心位置算出工程S1420において算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置」、複合面投影面積算出工程S1430において算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影面積」および複合面投影面積算出工程S1430において算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な所定の方向における投影面積」に基づいて金型に設けられる押し出しコアの形状および配置を決定する工程である。
配置決定工程S1440が終了したら、押し出しコア配置決定工程S1400が終了する。
押し出しコア配置決定工程S1400が終了したら、押し出しコア配置判定工程S1500に移行する。
【0097】
なお、本実施形態では複合面投影形状重心位置算出工程S1420が終了したら複合面投影面積算出工程S1430に移行する構成としたが、本発明はこれに限定されず、複合面投影面積算出工程および複合面投影形状重心位置算出工程が行われる順序を入れ替えても良い。
【0098】
押し出しコア配置判定工程S1500は、押し出しコア配置決定工程S1400において配置(および形状)が決定された押し出しコアが金型から製品を剥離したときに当該製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを押し出しコア配置判定が判定する工程である。
【0099】
本実施形態では、押し出しコア配置判定工程S1500は押し出し有効範囲設定工程S1510、パーティングライン交差判定工程S1520、製品支持用コア設定工程S1530および最終判定工程S1540を具備する。
【0100】
押し出し有効範囲設定工程S1510は、押し出しコア配置判定部136が複合面投影形状重心位置算出工程S1420において算出された「キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置」に基づいて、「押し出し有効範囲」を設定する工程である。
押し出し有効範囲設定工程S1510が終了したら、パーティングライン交差判定工程S1520に移行する。
【0101】
パーティングライン交差判定工程S1520は、押し出しコア配置判定部136が、製品たる自動車用バンパーのパーティングラインに係る情報および押し出し有効範囲設定工程S1510において設定した押し出し有効範囲に基づいて、押し出し有効範囲の外形線が自動車用バンパーのパーティングラインと交差しているか否かを確認し、
押し出し有効範囲の外形線が(複数の押し出し有効範囲が設定される場合は当該複数の押し出し有効範囲の外形線がいずれも)自動車用バンパーのパーティングラインと交差している場合には、押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
押し出し有効範囲の外形線が(複数の押し出し有効範囲が設定される場合は当該複数の押し出し有効範囲のうち少なくとも一つの外形線が)自動車用バンパーのパーティングラインと交差していない場合には、押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する工程である。
【0102】
パーティングライン交差判定工程S1520において、押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定された場合には最終判定工程S1540に移行する。
パーティングライン交差判定工程S1520において、押押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定された場合には製品支持用コア設定工程S1530に移行する。
【0103】
製品支持用コア設定工程S1530は、押し出しコア配置判定部136が、押し出しコアにより金型から剥離された自動車用バンパーが当該押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合に自動車用バンパーにおいてキャビティ要素複合面と異なる位置に臨む「製品支持用コア」を設定する工程である。
製品支持用コア設定工程S1530が終了したら、最終判定工程S1540に移行する。
【0104】
最終判定工程S1540は、押し出しコア配置判定部136がCAD端末装置110に押し出しコア配置判定部136による判定を行った後の押し出しコア(あるいは、押し出しコアおよび製品支持用コアを合わせたもの)の配置を表示し、作業者がCAD端末装置110に表示された押し出しコアの配置に基づいて押し出しコアの最終的な配置を決定する工程である。
最終判定工程S1540が終了したら、押し出しコア配置判定工程S1500が終了する。
【0105】
以上の如く、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
製品を成形する金型を設計する金型設計方法であって、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出工程S1100と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、複数のキャビティ要素面のうち、離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出工程S1200と、
キャビティ要素面抽出工程において抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定工程S1300と、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいてキャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定工程S1400と、
を具備する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は成形後の製品と金型のキャビティ面との間に作用する離型抵抗が大きい部分であるキャビティ要素複合面に対応する位置に押し出しコアを配置するので、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態により設計された金型は成形後の製品を効果的に(製品に余分な負荷をかけたり(製品を変形させたり)、製品の姿勢が崩れたり、あるいは製品の表面にキズをつけたりすることなく)キャビティ面から剥離することが可能である。
従って、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能である。また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は押し出しコアの配置を容易とすることにより、金型の設計に係る工数、ひいては金型の設計コストの削減に寄与する。
【0106】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
押し出しコア配置決定工程S1400において、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが製品抜き方向から見て一致する位置に押し出しコアを配置する。
このように構成することにより、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態はキャビティ要素複合面の重心位置に基づいて押し出しコアを配置するので、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態により設計された金型の押し出しコアは金型から剥離された製品を支持した状態を保持する(製品をその姿勢を崩すことなく支持する)ことが可能であり、製品の製造工程において金型による製品の成形工程の後工程への製品の受け渡しが容易となって製品の生産性が向上する。
【0107】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
押し出しコア配置決定工程S1400において、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積およびキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、従来は押し出しコアの配置および形状(サイズ)を熟練した作業者の経験に頼って決定していたために、決定された押し出しコアのサイズ(製品抜き方向から見た投影面積)が実際に必要なサイズよりも大きくなる傾向が強かったが、本実施形態の如くキャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積およびキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づき一定のルールに従ってキャビティ要素複合面の押し出しコアの製品抜き方向から見た投影面積を算出することにより、従来に比べて押し出しコアの製品抜き方向から見た投影面積を相対的に小さく設定する(徒に大きく設定しない)ことが可能であり、押し出しコアの製造コストの削減に寄与する。
【0108】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
押し出しコア配置決定工程S1400において配置が決定された押し出しコアが金型から製品を剥離したときに製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定工程S1500を具備する。
このように構成することにより、金型から剥離された製品の姿勢が安定しているか否かを確認することが可能であり、金型の生産性向上に寄与する。
【0109】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
押し出しコア配置判定工程S1500において、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて押し出しコアによる押し出し力が製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て押し出し有効範囲の外形線が金型のパーティングラインと交差する場合には製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て押し出し有効範囲の外形線が金型のパーティングラインと交差しない場合には製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する。
このように構成することにより、一定の基準に従って製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを容易かつ確実に判定することが可能である。
【0110】
また、本発明に係る金型設計方法の実施の一形態は、
押し出しコア配置判定工程S1500において、
製品が押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には製品においてキャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定する。
このように構成することにより、製品が押し出しコアにより支持された状態を確実に保持することが可能である。
【0111】
以下では、本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態について説明する。
本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態は、CADシステム101の制御装置に格納され、製品たる自動車用バンパーを成形する金型を設計するための金型設計プログラムであって、
コンピュータに、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出機能と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、複数のキャビティ要素面のうち、離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出機能と、
キャビティ要素面抽出機能により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定機能と、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいてキャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定機能と、
を実現させるためのものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態を格納したコンピュータは成形後の製品と金型のキャビティ面との間に作用する離型抵抗が大きい部分であるキャビティ要素複合面に対応する位置に押し出しコアを配置するので、本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態を格納したコンピュータにより設計された金型は成形後の製品を効果的に(製品に余分な負荷をかけたり(製品を変形させたり)、製品の姿勢が崩れたり、あるいは製品の表面にキズをつけたりすることなく)キャビティ面から剥離することが可能である。
従って、本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態を格納したコンピュータは金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能である。また、本発明に係る金型設計プログラムの実施の一形態を格納したコンピュータは押し出しコアの配置を容易とすることにより、金型の設計に係る工数、ひいては金型の設計コストの削減に寄与する。
【0112】
以下では、本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態について説明する。
本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態は、CADシステム101の制御装置に格納され、製品たる自動車用バンパーを成形する金型を設計するための金型設計プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶したものであって、
コンピュータに、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出機能と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、複数のキャビティ要素面のうち、離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出機能と、
キャビティ要素面抽出機能により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定機能と、
キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいてキャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定機能と、
を実現させるためのものである。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態から当該金型設計プログラムを読み取ったコンピュータは成形後の製品と金型のキャビティ面との間に作用する離型抵抗が大きい部分であるキャビティ要素複合面に対応する位置に押し出しコアを配置するので、本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態から当該金型設計プログラムを読み取ったコンピュータにより設計された金型は成形後の製品を効果的に(製品に余分な負荷をかけたり(製品を変形させたり)、製品の姿勢が崩れたり、あるいは製品の表面にキズをつけたりすることなく)キャビティ面から剥離することが可能である。
従って、本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態から当該金型設計プログラムを読み取ったコンピュータは金型に設けられる押し出しコアの配置を容易かつ適正に決定することが可能である。また、本発明に係る金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体の実施の一形態から当該金型設計プログラムを読み取ったコンピュータは押し出しコアの配置を容易とすることにより、金型の設計に係る工数、ひいては金型の設計コストの削減に寄与する。
なお、「コンピュータ読み取り可能な記憶媒体」の具体例としては、フレキシブルディスクカートリッジ、メモリーカード、CD−ROM、DVD−ROM、HDD等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明に係る金型設計システムの第一実施形態を示す図。
【図2】本発明に係る金型設計システムの第二実施形態を示す図。
【図3】パーティングモデルの一例を示す図。
【図4】製品抜き角度と離型抵抗との関係を示す図。
【図5】キャビティ要素面およびキャビティ要素複合面を示す模式図。
【図6】キャビティ要素複合面、キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状、およびキャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の関係を示す図。
【図7】製品のパーティングラインと押し出し有効範囲との関係を示す図。
【図8】本発明に係る金型設計方法の実施の一形態を示すフロー図。
【符号の説明】
【0114】
101 CADシステム(金型設計システム)
110 CAD端末装置
120 記憶装置
130 制御装置
131 CAD機能処理部
132 製品抜き角度算出部
133 キャビティ要素面抽出部
134 キャビティ要素複合面設定部
135 押し出しコア配置決定部
136 押し出しコア配置判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を成形する金型を設計する金型設計方法であって、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出工程と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出工程と、
前記キャビティ要素面抽出工程において抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定工程と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定工程と、
を具備する金型設計方法。
【請求項2】
前記押し出しコア配置決定工程において、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置する請求項1に記載の金型設計方法。
【請求項3】
前記押し出しコア配置決定工程において、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する請求項2に記載の金型設計方法。
【請求項4】
前記押し出しコア配置決定工程において配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定工程を具備する請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の金型設計方法。
【請求項5】
前記押し出しコア配置判定工程において、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する請求項4に記載の金型設計方法。
【請求項6】
前記押し出しコア配置判定工程において、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定する請求項5に記載の金型設計方法。
【請求項7】
製品を成形する金型を設計する金型設計システムであって、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出部と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出部と、
前記キャビティ要素面抽出部により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定部と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定部と、
を具備する金型設計システム。
【請求項8】
前記押し出しコア配置決定部は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置する請求項7に記載の金型設計システム。
【請求項9】
前記押し出しコア配置決定部は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する請求項8に記載の金型設計システム。
【請求項10】
前記押し出しコア配置決定部により配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定部を具備する請求項7から請求項9までのいずれか一項に記載の金型設計システム。
【請求項11】
前記押し出しコア配置判定部は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する請求項10に記載の金型設計システム。
【請求項12】
前記押し出しコア配置判定部は、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定する請求項11に記載の金型設計システム。
【請求項13】
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムであって、
コンピュータに、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出機能と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出機能と、
前記キャビティ要素面抽出機能により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定機能と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定機能と、
を実現させるための金型設計プログラム。
【請求項14】
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置する請求項13に記載の金型設計プログラム。
【請求項15】
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する請求項14に記載の金型設計プログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
前記押し出しコア配置決定機能により配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定機能を実現させるための請求項13から請求項15までのいずれか一項に記載の金型設計プログラム。
【請求項17】
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する請求項16に記載の金型設計プログラム。
【請求項18】
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定する請求項17に記載の金型設計プログラム。
【請求項19】
製品を成形する金型を設計する金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
コンピュータに、
金型に形成されたキャビティ面を構成する複数のキャビティ要素面と製品抜き方向との成す角度である製品抜き角度を各キャビティ要素面について算出する製品抜き角度算出機能と、
予め求められた製品抜き角度と離型抵抗との関係に基づいて、前記複数のキャビティ要素面のうち、前記離型抵抗が所定の閾値よりも大きくなるものを抽出するキャビティ要素面抽出機能と、
前記キャビティ要素面抽出機能により抽出されたキャビティ要素面のうち、互いに隣接する複数のキャビティ要素面を合わせたものをキャビティ要素複合面として設定するキャビティ要素複合面設定機能と、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記キャビティ要素複合面に臨む押し出しコアの配置を決定する押し出しコア配置決定機能と、
を実現させるための金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項20】
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置と前記押し出しコアの製品抜き方向における投影形状の重心位置とが前記製品抜き方向から見て一致する位置に前記押し出しコアを配置する請求項19に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項21】
前記押し出しコア配置決定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の面積および前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向に垂直な方向における投影形状の面積に基づいて前記押し出しコアの製品抜き方向における投影面積を算出する請求項20に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項22】
前記押し出しコア配置決定機能により配置が決定された押し出しコアが前記金型から製品を剥離したときに当該製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能か否かを判定する押し出しコア配置判定機能を実現させるための請求項19から請求項21までのいずれか一項に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項23】
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記キャビティ要素複合面の製品抜き方向における投影形状の重心位置に基づいて前記押し出しコアによる押し出し力が前記製品に及ぶ範囲である押し出し有効範囲を設定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差する場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが可能であると判定し、
製品抜き方向から見て前記押し出し有効範囲の外形線が前記金型のパーティングラインと交差しない場合には前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定する請求項22に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項24】
前記押し出しコア配置判定機能は、
前記製品が前記押し出しコアにより支持された状態を保持することが不可能であると判定した場合には前記製品において前記キャビティ要素複合面と異なる位置に臨む製品支持用コアを設定する請求項23に記載の金型設計プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−184204(P2009−184204A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25713(P2008−25713)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】