説明

金属の浸出方法

【課題】廃電子基板等に含有される、銅、亜鉛等の主要金属を効率良く回収することが可能で、レアメタルも高度に回収することが可能な浸出方法を提供する。
【解決手段】廃電子基板の粉砕粉、廃電子基板の焼却灰及び電子部品の粉砕粉のうち、少なくともいずれかである廃電子基板粉末と鉄化合物とを、水及び酸性液のうち、少なくともいずれかに加えて、温度が120℃以上、酸素分圧が1MPa〜3MPaの条件下で、2種以上の金属を浸出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃電子基板から金属を効率よく回収することができる廃電子基板からの金属の浸出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市鉱山と総称される廃電子基板等には貴金属や銅をはじめとするベースメタルに加え、レアメタルが含有されているため、集荷及び回収に関する施策においては、多くのアプローチが行なわれている。これら前記廃電子基板等に含まれる有価金属である、金、銀、銅等の回収には製錬工程が利用されている。
しかしながら、これらに含有されているレアメタル等は含有元素数も多く、かつ、含有量が低いなどの理由もあり、これらの回収などにおいては、この製錬工程が経済的にも十分な能力を有しているとはいえず、多くの課題が残っている状況にある。
【0003】
前記廃電子基板に含まれる、金、銀、銅、鉛、ニッケル、亜鉛等の金属を回収する技術は、種々、存在する。
例えば、廃電子基板を粉砕し、酸で金属成分を浸出させる酸溶解方法や、さらに溶解性を上げるために、廃電子基板を粉砕又はそのまま酸化処理し、酸で金属成分を浸出させる方法がある。
【0004】
一方、非鉄製錬においても、鉱石からの金属元素の浸出は種々提唱されている。
例えば、複雑硫化鉱の酸素加圧浸出における、銅、亜鉛、鉄及び硫黄の挙動についての文献がある(非特許文献1参照)。即ち、硫化鉱を、温度が150℃〜200℃、酸素分圧が5kg/cm〜20kg/cmにてオートクレーブにより浸出試験をし、各種金属の挙動が記されている。結果は、前記条件で、ZnS、CuFeS、FeS等が溶解されている。硫化物は、液中での硫化物と酸素の反応により溶解され、硫黄が酸素により硫酸基に転換され、遊離硫酸の発生を伴いながら、金属を溶解浸出している。硫化物の加圧浸出における遊離硫酸と元素状硫黄の関係が示されており、温度が120℃以上では、温度の上昇に伴い、遊離硫酸濃度が上昇し、元素状硫黄から硫酸生成が増長されることがわかる。なお、元素状硫黄とは、単体の金属硫黄のことであり、Sとも記載される。
しかし、これでは金属の回収状態も満足できるものでないうえに、ガラス、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の非金属と金属が、分離の困難な状態で混在する金属複合廃材になっている前記廃電子基板類から金属を回収する方法としては問題がある。
【0005】
前記廃電子基板等をそのまま粉砕し、酸で溶解しても金属状態から酸への溶解のため、溶解速度は遅い(特許文献1及び特許文献2参照)。
加温加圧によって溶解速度を速めることは、オートクレーブ法を用いれば可能であるが、実用的な時間範囲内においては、金属の回収状態も満足できるものではなく、装置、運転コストも嵩むため採用できない。
一方、前記廃電子基板を焼却により酸化処理したものは、酸やアルカリへの溶解性は向上されるが、酸化処理だけでは、回収状態は十分ではないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−155717号公報
【特許文献2】特開2009−242877号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】梅津、戸沢、佐々木著、“複雑鉱の酸素加圧浸出における銅、亜鉛、鉄、硫黄の挙動”、第29巻1号、昭和46年6月、P62−68
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、廃電子基板等に含有される、銅、亜鉛等の主要金属を効率良く回収することが可能で、レアメタルも高度に回収することが可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、廃電子基板等に、鉄化合物を混合させたものを原料とすることで、金属、硫化物、単体硫黄及び酸素が、酸化還元反応を起こし、樹脂などの非金属等も混在する産業廃棄物の前記廃電子基板から、金属を効率良く回収できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 廃電子基板粉末と鉄化合物とを、水及び酸性液のうち、少なくともいずれかに加えて、温度が120℃以上、酸素分圧が1MPa〜3MPaの条件下で、2種以上の金属を浸出させることを特徴とする廃電子基板からの金属の浸出方法である。
<2> 廃電子基板粉末が、廃電子基板の粉砕粉、廃電子基板の焼却灰及び電子部品の粉砕粉のうち、少なくともいずれかである前記<1>に記載の金属の浸出方法である。
<3> 鉄化合物が、非鉄金属製錬に用いる、鉱石又は尾鉱である前記<1>から<2>のいずれかに記載の金属の浸出方法である。
<4> 廃電子基板粉末が、廃電子基板をそのまま粉砕したものであり、質量平均粒径が1μm〜2mmである前記<1>から<3>のいずれかに記載の金属の浸出方法である。
<5> 浸出させる金属が、Cu、Zn、Ni、Mn、Cr、Al、Fe、As、B、Co、Ni、Ga、In、Br、Sb、Snのうち、いずれかを含む、前記<1>から<4>のいずれかに記載の金属の浸出方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前記従来における諸問題を解決することができ、前記目的を達成することができ、廃電子基板等に含有される、銅、亜鉛等の主要金属を効率良く回収することが可能で、レアメタルも高度に回収することが可能な方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、実施例1の測定結果で、基板粉砕粉を用いた時の浸出時間と主要元素の浸出率変化を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1の測定結果で、基板粉砕粉を用いた時の浸出時間とレアメタル元素の浸出率変化を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例2の測定結果で、基板焼却灰を用いた時の浸出時間と主要元素の浸出率変化を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2の測定結果で、基板焼却灰を用いた時の浸出時間とレアメタル元素の浸出率変化を示すグラフである。
【図5】図5は、反応時間ごとの浸出残渣のXRD分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、前処理工程、金属浸出工程及び金属回収工程を含んでなる。
【0014】
―前処理工程―
前処理工程は、廃電子基板粉末を作製し、該廃電子基板粉末に、鉄化合物を混合させる工程である。
<廃電子基板粉末>
前記廃電子基板粉末は、前記廃電子基板を粉砕し、粉末状にしたものである。
前記廃電子基板の粉砕方法は、公知の粉砕機を用いて行えばよい。前記粉砕機としては、例えば、コーヒーミル、ジョークラッシャー、ボールミル、ハンマーミル、多軸回転破砕機、ヘンシェル、竪型粉砕機等が挙げられる。
本発明の前記廃電子基板粉末は、前記廃電子基板をそのまま粉砕した粉末(以下、基板粉砕粉)及び前記廃電子基板を数センチ角に破砕した後に、焼却し粉砕した粉末(以下、基板焼却灰)のうち、少なくともいずれかを使用するが、粉末状のものであれば適用可能であって、廃電子基板以外の雑多な金属粉末が混在されていてもよい。例えば、金属ペースト灰等が挙げられる。
前記廃電子基板粉末は、オートクレーブ等の反応装置へ収納できる程度に粉砕されていればよいが、反応速度を上げるため細かい方がよく、例えば、前記廃電子基板粉末の質量平均粒径としては、1μm〜10mmが好ましく、1μm〜2mmがより好ましい。
前記廃電子基板粉末の質量平均粒径の測定方法としては、マイクロトラック粒度測定装置を用いるのが好ましい。ただし、前記質量平均粒径の精度に10μm程度の誤差があっても影響が少ないため、前記マイクロトラック粒度測定装置以外の測定装置や、ふるい分けによる質量加重平均であってもよい。
なお、本発明の質量平均粒径は、前記マイクロトラック粒度測定装置で測定した数値である。
【0015】
前記廃電子基板は、一般の電気製品であるPC、TV、洗濯機、電子レンジ、冷蔵庫、産業機器の制御等において用いられ廃棄処分となった電子基板をいう。
前記電子基板には、ICチップ、抵抗、コンデンサー、各種センサー、積層基板等の構成部品によりなっている。このため、金属成分は、その部品により構成比が異なるが、金、銀、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、コバルト、ガリウム、インジウム等のレアメタルなどが含まれる。
【0016】
<鉄化合物>
前記鉄化合物とは、Fe、FeS、FeS、等のように、少なくとも鉄を含むものである。前記鉄化合物は、例えば、鉄としては、鉄粉、還元鉄粉などが挙げられ、鉄化合物としては、尾鉱が挙げられる。前記尾鉱とは、非鉄製錬用の鉱石を粉砕し、選鉱によって精鉱と尾鉱とに分離したもので、硫化鉄のFeS(パイライト)が含まれている。
前記硫化鉄のFeS(パイライト)の酸化反応によって生成される硫酸や反応物等が、浸出中における液電位を上昇させ、浸出を助長すると考えられるため、本発明では、前記尾鉱を浸出助剤として活用した。
精鉱であっても前記硫化鉄等が含まれていれば前記浸出助剤として利用できるが、前記尾鉱を用いることで該尾鉱中の金属も回収されることになり、鉱石原料からの金属の総回収率を向上させるためには、前記尾鉱を用いる方が好ましい。
なお、鉱石以外の鉄化合物でも利用可能であるが、鉱石は、多種成分があり、例えば、鉛、銀、等には、ハロゲン化物の不要な浸出を抑えたり、他の元素の浸出を促進するなどの相乗効果を得られる。
前記鉄化合物の前記マイクロトラック粒度測定装置で測定した質量平均粒径としては、1μm〜1,000μmが好ましい。なお、前記鉄化合物として、前記尾鉱を用いる場合は、鉱石の選鉱に用いる程度の粒度でもよい。
【0017】
前記廃電子基板粉末と前記鉄化合物との質量混合比は、前記廃電子基板粉末中の総金属質量と前記鉄化合物中の鉄質量によって設定される。
前記廃電子基板粉末の金属質量及び前記鉄化合物中のFeS質量又は全Fe質量を指標として決定する。
多くの場合は、前記廃電子基板粉末と前記鉄化合物との質量混合比(廃電子基板粉末:鉄化合物)としては、1:0.5〜5が好ましく、1:1〜4であるのがより好ましい。
前記鉄化合物の質量混合比が、前記廃電子基板粉末1に対して前記鉄化合物が、0.5未満であると、混合物の銅及び鉄の含有量が増え、浸出率が低下することがあり、5を超えると、未浸出の残渣が増加することがある。
浸出の原料である、前記廃電子基板粉末及び前記鉄化合物の混合については、浸出の工程で撹拌等によっても混合が促進されるため、簡易でもよい。
混合した前記廃電子基板粉末及び前記鉄化合物の原料(以下、混合原料)から金属を浸出させる液体は、浸出残液、水で十分であるが、浸出状況により酸性液を付加するのもよい。
スラリー濃度としては、50g/L〜500g/L程度が好ましく、200g/L〜400g/Lがより好ましい。浸出における液体の混合及び流動がよいためである。
前記混合原料から金属を浸出させる液体の容量としては、前記スラリー濃度に基づいて、適宜設定すればよい。
前記液体の水素イオン指数としては、初期pHが酸性であればよいが、pH3〜pH7が好ましく、pH3〜pH5がより好ましい。
前記廃電子基板粉末、前記鉄化合物及び前記混合原料から金属を浸出させる液体との混合については、特に順はなく適宜行ってよい。
前記廃電子基板粉末と水または酸性液とを混合する際に、親水性を向上させ、混合のなじみを改善するために界面活性剤を添加してもよい。前記界面活性剤は、水との親和性がよければ市販の石けん類、水ガラス(珪酸ソーダ)で十分である。添加量は0.01質量%〜5質量%程度でよく、混合状態で設定される。
なお、前記鉄化合物でも鉄粉を用いる場合は、酸性液を用いる。前記酸性液としては硫酸がよい。前記酸性液における酸の濃度としては、0.1mol/L〜3mol/L程度にする。前記酸の濃度が低いと浸出率が低下し、高過ぎても、浸出量は原料に限られるので不要となる。前記硫酸に代えて、硫黄末を添加硫酸の硫黄分のモル等量程度に添加しても同様に浸出可能である。
【0018】
―金属浸出工程―
金属浸出工程は、金属を前記液体に浸出させる工程である。
本発明の浸出は、高温高圧を必要とするため高温高圧リアクターを用いる。
本発明では、前記高温高圧リアクターとして、加圧浸出型オートクレーブを使用する。
前記金属の浸出における温度及び圧力は、装置の仕様、原料の溶解性によっても設定される。
前記金属の浸出における温度としては、硫黄が液に溶解される温度以上であればよいが、120℃〜200℃が好ましく、150℃〜200℃がより好ましい。
前記金属の浸出における温度が、120℃未満であると、浸出速度が遅いことがあり、200℃を超えると、設備コストの増大を招来することがある。
前記金属の浸出における圧力としては、酸素の供給をしやすい圧力であればよく、酸素分圧で1MPa〜3MPaが好ましい。
【0019】
―金属回収工程―
金属回収工程は、前記金属浸出工程で金属を浸出させた液体から金属を回収する工程である。
前記金属を浸出させた液体に、製錬処理を施すことで金属を回収することができる。
なお、前記混合原料から浸出させることのできる金属としては、例えば、Cu、Zn、Ni、Mn、Cr、Al、Fe、As、B、Co、Bi、Ga、In、Br、Sb、Sn、等が挙げられる。
前記浸出させることのできる金属のうち、前記廃電子基板由来の金属は、例えば、Cu、Zn、Ni、Mn、Cr、Al、Fe、B、Co、Bi、Br、Sb、Sn、等が挙げられる。
前記浸出させることのできる金属のうち、前記鉄化合物由来の金属は、例えば、Cu、Zn、Ni、Mn、Al、Fe、As、Co、Bi、Ga、In、Sb、Sn、等が挙げられる。
本発明は、前記廃電子基板及び前記鉄化合物とに含まれている多種多様な金属を、同時に、かつ、効率よく、一度のプロセスで浸出させることができる。
前記製錬処理には、乾式製錬と湿式製錬があり、金属を単体として回収することができる。
本発明は、前記湿式製錬が好ましく、公知の製錬方法を使用すれば、前記浸出させることのできる金属を浸出させた液体から、固体の金属として回収することができる。例えば、銅と亜鉛を分離し、銅製錬、亜鉛精錬の製造工程に用いればよい。
【実施例】
【0020】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0021】
(実施例1)
前記廃電子基板粉末として、マイクロトラック粒度測定装置(日機装(株)MT3000II)で測定した質量平均粒径が21μmの前記基板粉砕粉と、前記鉄化合物として、前記粒度測定装置で測定した質量平均粒径が13.2μmの前記尾鉱を用いた。
前記基板粉砕粉及び前記尾鉱の質量混合比(基板粉砕粉:尾鉱)を1:4とし、これを、1回目には水に加え、2回目には浸出残液に加え、高温高圧リアクター(日東高圧社製、1Lオートクレーブ)を利用し、パルプ濃度を100g/L、設定温度を180℃、初期酸素圧力を3MPa、反応開始から4時間経過後までを、1時間単位ごとに浸出液をサンプリングをして、浸出元素の分析評価をした。
【0022】
前記基板焼却灰、前記基板粉砕粉及び前記尾鉱の主要元素の化学分析値(ICP発光分光分析法)を表1に示す。単位は質量%である。
【0023】
【表1】

【0024】
反応開始から2時間経過後のサンプリングの結果、浸出率は、Cu、Mn及びCrが78質量%〜83質量%と良好な結果を示し、Zn及びNiは50質量%〜62質量%、Ga、In、B等は30質量%〜45質量%程度であった。Brの浸出率は約20質量%であった。Sbは浸出しないことが確認された。主要金属以外にレアメタルも浸出率できることが判かった(表2、図1及び図2参照)。
【0025】
(実施例2)
前記実施例1における前記基板粉砕粉に代えて、前記廃電子基板を2cm〜3cm角に破砕した後、700℃で焼却及び粉砕した質量平均粒径26.1μmの前記基板焼却灰を使用した以外は、前記実施例1と同様にして、浸出を行った。前記廃電子基板の破砕方法は、乾燥した該廃電子基板を竪型粉砕機に投入して行った。
【0026】
反応開始から2時間経過後のサンプリングの結果、浸出率は、Cu、Zn、Ni及びMnが、72質量%〜85質量%と良好な浸出結果を示し、Cr及びGaも45質量%〜50質量%と比較的高い浸出挙動を示した。しかし、B、In、Sb、Sn等は比較的低い浸出挙動であった(表2、図3及び図4参照)。
【0027】
前記オートクレーブの浸出結果より、前記基板焼却灰と前記尾鉱を用いた浸出における各浸出時間後の残渣をX線回折(XRD)で測定した結果、反応前と反応時間2時間後を比較すると、FeS2(パイライト)の酸化分解とFe23(ヘマタイト)の生成が確認された(図5参照)。即ち、硫化鉄が浸出中において反応していることがわかる。
【0028】
(実施例3)
実施例1において、前記基板粉砕粉の粒度を大きく粗いものとした。最大粒径2mmとして、質量平均粒径を500μmとした以外は、実施例1と同様に実施した。
【0029】
反応開始から2時間経過後のサンプリングの結果、浸出率は、Cuが39質量%、Znが63質量%、Pbが0質量%、Alが17質量%、Cdが23質量%、Asが1.2質量%、Snが0.4質量%、Biが5.4質量%、Crが67質量%、Gaが23質量%、Mnが37質量%、Sbが2質量%、Inが5質量%であった。
質量平均粒径が大きく、前記粗粉砕の廃電子基板粉末でも十分に金属を浸出できる(表2参照)。
【0030】
(実施例4)
実施例1において、前記尾鉱の代わりに鉄粉((株)高純度化学研究所製、2N以上、75μm以下品)を用いて実施した。
前記鉄粉の添加量は、前記基板粉砕粉と前記鉄粉との質量混合比(基板粉砕粉:鉄粉)を1:0.05として、親水性を向上するため界面活性剤として水ガラス(市販試薬)を1,000ppm添加し、浸出液は1molの硫酸を含む100mlとし、前記スラリー濃度を60g/Lとして、浸出時間は1時間とした。これ以外の条件及び操作は、実施例1と同様である。
【0031】
反応開始から1時間経過後のサンプリングの結果、浸出率は、Cuが67質量%、Znが59質量%、Pbが0質量%、Alが68質量%、Cdが6質量%、Crが57質量%、Gaが60質量%、Mnが43質量%、Coが29質量%、Inが20質量%、Niが47質量%であった。
前記鉄粉と前記酸とを用いれば、十分に浸出できる(表2参照)。
【0032】
(比較例1)
前記実施例2の条件において、前記尾鉱を混合せず、前記基板焼却灰のみ使用した以外は、前記実施例2と同様にして行った。
その結果、Zn及びCrがわずかに浸出されたが、他の金属はほとんど浸出されなかった。また、酸化した前記基板焼却灰よりも、浸出され難い前記基板粉砕粉のみを使用した結果については、さらに浸出されなかった(表2参照)。
【0033】
(比較例2)
前記実施例1において、前記基板粉砕粉を混合せず、前記尾鉱のみを使用した以外は、前記実施例1と同様にして行った。
その結果、銅及び亜鉛が10質量%浸出された。しかし、他の金属については、浸出が確認されなかった(表2参照)。
【0034】
サンプリングの結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、前記廃電子基板等に含有される銅、亜鉛等の主要金属を効率良く回収することが可能で、レアメタルも高度に回収することが可能であり、かつ、該廃電子基板をそのまま使用でき分別処理等が不要のため、ハンドリング性もよく、薬品を殆ど使用しないため、操作の安全性にも優れ、低コストで、環境負荷も少なく、リサイクルの観点からも優れた金属の浸出方法である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃電子基板粉末と鉄化合物とを、水及び酸性液のうち、少なくともいずれかに加えて、温度が120℃以上、酸素分圧が1MPa〜3MPaの条件下で、2種以上の金属を浸出させることを特徴とする廃電子基板からの金属の浸出方法。
【請求項2】
廃電子基板粉末が、廃電子基板の粉砕粉、廃電子基板の焼却灰及び電子部品の粉砕粉のうち、少なくともいずれかである請求項1に記載の金属の浸出方法。
【請求項3】
鉄化合物が、非鉄金属製錬に用いる、鉱石又は尾鉱である請求項1から2のいずれかに記載の金属の浸出方法。
【請求項4】
廃電子基板粉末が、廃電子基板をそのまま粉砕したものであり、質量平均粒径が1μm〜2mmである請求項1から3のいずれかに記載の金属の浸出方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−57234(P2012−57234A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203764(P2010−203764)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年6月4日 社団法人資源・素材学会東北支部発行の「社団法人資源・素材学会東北支部 平成22年度春季大会 開発と環境 講演要旨集」に発表
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【出願人】(000224798)DOWAホールディングス株式会社 (550)
【Fターム(参考)】