説明

金属ガスケット

【課題】平面視で波形等に蛇行する蛇行状ビードを部分的設けて、部分的な面圧低下に対
応して部分的な対策をすることによって、他の部分に不都合を及ぼさずに、シリンダボア
に対する優れたシール性能を発揮できる金属ガスケットを提供する。
【解決手段】エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間をシールする金属ガス
ケット1Aにおいて、シリンダボア用穴2の周囲に沿って主シールビード11Aを配設す
ると共に、シリンダヘッドの吸気ポートINが通る下面部分とシリンダヘッドの排気ポー
トEXが通る下面部分のみに、該主シールビード11Aを蛇行させた蛇行状ビード12A
,13Aを設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドやシリンダブロック等の二つのエンジン部材の間
に挟持してシールを行う金属ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットは、自動車のエンジン(内燃機関)のシリンダヘッドとシリ
ンダブロック(シリンダボディ)の間に挟まれた状態で、ヘッドボルトにより締結され、
燃焼ガス、オイル、冷却水等の流体をシールする役割を持っている。
【0003】
最近は、エンジンの軽量化の影響で、エンジン材料のアルミニウム合金化や肉薄化によ
りエンジンの低剛性化が一段と加速され、これらの部材に変形が生じ易くなっており、ヘ
ッドガスケットのシール性能の維持が一段と厳しいものになっている。中でも、シール条
件の厳しいシリンダボア周りのガスシールの性能維持が大きな問題となっている。
【0004】
つまり、エンジンの低剛性化に伴って、ガスケットの締付け時のシリンダボア周りのシ
ール面圧の不均一化が大きくなり、面圧の高い部分と低い部分の差が大きくなって、低い
部分からのガス漏れが発生するケースが多くなっている。
【0005】
従来技術では、このようなガス漏れに対しては、撓みなどにより部分的に低下している
面圧を補強するために、シリンダボア(燃焼室)周囲のシール部の面圧全体を増加させた
り、ビードの材質をスプリング性の有るものに変えたりして、対応していた。
【0006】
しかしながら、一部分の面圧低下のために、全体の面圧をあげたり、ビード全体のスプ
リング性を増加したりすることは、面圧が十分でシール性能も正常である部分にも手を加
えてしまうという矛盾がある。
【0007】
一方、本発明者は、ガス漏れを分析した所、特に顕著に現れるのは、シリンダヘッドの
排気ポートの下部付近又は吸気ポートの下部付近であることを見出した。シリンダヘッド
においては、この排気ポートや吸気ポートがガスケットの接触面近傍部分を貫通するため
に、その部分が中空となる。そして、この排気及び吸気ポートの中心付近が構造上肉薄と
なっているため、ガスケット締付け時に、排気及び吸気ポートの下面が撓んでしまうため
、ガスケットのシール部分の面圧が低下して、ガス漏れの原因となるのである。
【0008】
また、平面視で波形の波形ビードにより、シリンダボア周りやその他のシール穴のシー
ル性能を向上させている金属ガスケットも周知技術となっている(例えば、特許文献1参
照。)。
【特許文献1】特許第3057445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこの問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、シリンダヘ
ッドの吸気ポートが通る下面部分と排気ポートが通る下面部分のみに、平面視で波形等に
蛇行する蛇行状ビードを設けて、部分的な面圧低下に対応して部分的な面圧強化対策をす
ることによって、他の部分に不都合を及ぼさずに、シリンダボアに対する優れたシール性
能を発揮できる金属ガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明に係る金属ガスケットは、エンジンのシリンダヘッ
ドとシリンダブロックとの間をシールする金属ガスケットにおいて、シリンダボア用穴の
周囲に沿って主シールビードを配設すると共に、シリンダヘッドの吸気ポートが通る下面
部分とシリンダヘッドの排気ポートが通る下面部分のみに、該主シールビードを蛇行させ
た蛇行状ビードを設けて構成される。
【0011】
あるいは、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間をシールする金属ガス
ケットにおいて、シリンダボア用穴の周囲に沿って主シールビードを配設すると共に、シ
リンダヘッドの吸気ポートが通る下面部分とシリンダヘッドの排気ポートが通る下面部分
のみで、かつ、前記主シールビードの外側に、副ビードを蛇行させた蛇行状ビードを部分
的に併設して構成される。
【0012】
また、上記の金属ガスケットにおいて、前記副ビードを蛇行させた蛇行状ビードの端部
を、前記主シールビードに合流させて構成される。
【0013】
そして、前記蛇行状ビードにおいて、ビード高さ、ビード幅、ビードの断面形状の内の
少なくとも一つを、前記主シールビードと異ならせて形成して構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の金属ガスケットによれば、蛇行状ビードは、蛇行によりビードの長さを長く取
れるので、その部分の面圧を広い範囲で上げることができ、また、その部分のシール面圧
の大きさも高くすることができるので、これを、エンジン側のシール条件の特に厳しい部
分となる、シリンダヘッドの吸気ポートと排気ポートとが通る下面部分のみに配置するこ
とにより、この部分の面圧低下、及びこの面圧低下に起因するガス漏れを防止して、優れ
たシール性能を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明に係る金属ガスケットの実施の形態について説明する。な
お、図1〜図6は、模式的な説明図であり、構成をより理解し易いように、シリンダボア
用穴の大きさ、フルビードの大きさ、蛇行状ビード等の寸法を実際のものとは異ならせて
、誇張して示している。
【0016】
本発明に係る金属ガスケットは、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロック(シリ
ンダボディ)のエンジン部材の間に挟持されるシリンダヘッドガスケットであって、シリ
ンダボアの高温・高圧の燃焼ガス、及び、冷却水通路や冷却オイル通路等の冷却水やオイ
ル等の流体をシールする。
【0017】
図1,図3,図5に示すように、この金属ガスケット1A,1B,1Cは、軟鋼板、ス
テンレス焼鈍材(アニール材)、ステンレス調質材(バネ鋼板)等で形成される金属基板
10を有して構成される。また、シリンダブロック等のエンジン部材の形状に合わせて製
造され、シリンダボア用穴(燃焼室用穴)2、冷却水やエンジンオイルの循環のための液
体穴3、締結ヘッドボルト用のヘッドボルト穴5等が形成される。
【0018】
そして、図1及び図2に示すように、第1の実施の形態の金属ガスケット1Aでは、シ
ール対象穴であるシリンダボア用穴2の周囲に沿って、主シールビード11Aが設けられ
る。また、シリンダヘッドの吸気ポートINが通る下面部分に、主シールビード11Aを
蛇行させた蛇行状ビード12Aを、シリンダヘッドの排気ポートEXが通る下面部分に、
主シールビード11Aを蛇行させた蛇行状ビード13Aを、それぞれ設けて構成される。
【0019】
また、図3及び図4に示すように、第2の実施の形態の金属ガスケット1Bでは、シー
ル対象穴であるシリンダボア用穴2の周囲に沿って、主シールビード11Bが設けられる
が、更に、シリンダヘッドの吸気ポートINが通る下面部分で、かつ、主シールビード1
1Bの外側に、部分的に蛇行状ビード12Bを、また、シリンダヘッドの排気ポートEX
が通る下面部分で、かつ、主シールビード11Bの外側に、部分的に蛇行状ビード13B
を、それぞれ併設して構成される。
【0020】
また、図5及び図6に示すように、第3の実施の形態の金属ガスケット1Cでは、第2
の実施の形態の金属ガスケット1Bと同様に、シール対象穴であるシリンダボア用穴2の
周囲に沿って、主シールビード11Cが設けられるが、更に、シリンダヘッドの吸気ポー
トINが通る下面部分で、かつ、主シールビード11Cの外側に、部分的に蛇行状ビード
12Cを、シリンダヘッドの排気ポートEXが通る下面部分で、かつ、主シールビード1
1Cの外側に、部分的に蛇行状ビード13Cを、それぞれ併設して構成される。
【0021】
そして、この第3の実施の形態の金属ガスケット1Cでは、蛇行状ビード12C,13
Cの端部、主シールビード11Cに合流させて構成される。この合流は両端部が好ましい
が、一方の端部のみであってもよい。
【0022】
そして、これらの構成においては、蛇行状ビードを主シールビードと同じ形状、同じ大
きさで形成してもよいが、蛇行状ビードを、ビード高さ、ビード幅、ビードの断面形状の
内の少なくとも一つを、主シールビードと異ならせて形成することで、より適切な面圧分
布を得ることができるので、よりすぐれたシール性能を発揮できるようになる。
【0023】
これらの構成の金属ガスケット1A,1B,1Cによれば、蛇行状ビード12A,13
A,12B,13B,12C,13Cは、蛇行によりビードの長さを長く取れるので、そ
の部分の面圧を広い範囲で上げることができる。また、その部分のシール面圧の大きさも
高くすることができる。そのため、エンジン側のシール条件の特に厳しい部分となる、シ
リンダヘッドの吸気ポートと排気ポートとが通る下面部分の面圧低下を防止して、優れた
シール性能を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の金属ガスケットを示す平面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態の金属ガスケットを示す部分平面図である。
【図3】本発明に係る第2の実施の形態の金属ガスケットを示す平面図である。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態の金属ガスケットを示す部分平面図である。
【図5】本発明に係る第3の実施の形態の金属ガスケットを示す平面図である。
【図6】本発明に係る第3の実施の形態の金属ガスケットを示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1A,1B,1C 金属ガスケット
2 シリンダボア用穴
11A,11B,11C 主シールビード
12A,12B,12C 蛇行状ビード(吸気ポート下面部)
13A,13B,13C 蛇行状ビード(排気ポート下面部)
IN 吸気ポート
EX 排気ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間をシールする金属ガスケットにお
いて、シリンダボア用穴の周囲に沿って主シールビードを配設すると共に、シリンダヘッ
ドの吸気ポートが通る下面部分とシリンダヘッドの排気ポートが通る下面部分のみに、該
主シールビードを蛇行させた蛇行状ビードを設けたことを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】
エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとの間をシールする金属ガスケットにお
いて、シリンダボア用穴の周囲に沿って主シールビードを配設すると共に、シリンダヘッ
ドの吸気ポートが通る下面部分とシリンダヘッドの排気ポートが通る下面部分のみで、か
つ、前記主シールビードの外側に、副ビードを蛇行させた蛇行状ビードを部分的に併設し
たことを特徴とする金属ガスケット。
【請求項3】
前記副ビードを蛇行させた蛇行状ビードの端部を、前記主シールビードに合流させたこ
とを特徴とする請求項2に記載の金属ガスケット。
【請求項4】
前記蛇行状ビードにおいて、ビード高さ、ビード幅、ビードの断面形状の内の少なくと
も一つを、前記主シールビードと異ならせて形成したことを特徴とする請求項1〜3のい
ずれか1項に記載の金属ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−132609(P2006−132609A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320399(P2004−320399)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000198237)石川ガスケット株式会社 (57)
【Fターム(参考)】