説明

金属ガスケット

多層金属ガスケットは、整列する燃焼孔を有する少なくとも1つの活動層(12)および少なくとも1つのシム(18)層を含む。シム層は燃焼孔を取囲む環状部分(20)および燃焼孔を取囲む環状部分から放射状に外に向かって突き出るタブ部分(28)を有する。環状部分は活動層の関連付けられるシーリングビード(16)の下にある。タブ部分は各々、放射状に延在するネック領域(30)、およびネック領域の端部で支持され、その放射状に外に向かって突き出る側面ベンドタブ(32)の組を有する。ベンドタブは、活動層に形成される横方向に間隔をおかれる装着窓(34)の、関連付けられる組を介して突き出て、シム層を活動層に固定するために互いに向かって折り返される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
技術分野
この発明は一般に多層鋼製ガスケットに関し、より特定的には、隣接する活動層の間への中間ストッパ層の取付に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
アメリカで公開された出願2002/0135135A1は、2つの外側の活動層の間に配置される中間ストッパ層を有し、それぞれの放射軸に沿って延在し、活動層のうちの1つの関連付けられる窓を介して延在するよう平面から曲げられ、さらにベンドタブの軸に沿って活動層と重なる関係で平面上に折り返される複数の放射状のタブ部分を有する金属ガスケットを開示する。このような構造の1つの不利な点は、ガスケットがヘッドとブロックとの間で締付けられるときに、型締め力がベントタブ領域にかかることであり、特にクローズドデッキエンジンブロック/シリンダヘッドでの適用に関連して、その型締め力はタブを介してストッパ層へ送り返され、ガスケットのシーリング能力を損なうように活動層のシーリングビード付近に不所望の圧力を導入するという影響をもたらし得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
先行技術のガスケットアセンブリの不具合を克服または極力減らすことがこの発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要および利点
この発明に従って構成される多層金属ガスケットは、少なくとも1つの活動層および少なくとも1つのシム層を含む。活動層およびシム層は整列する燃焼孔を有し、シム層は燃焼孔を取囲む環状部分および環状部分から放射状に外に向かって突き出るタブ部分を有する。環状部分は、活動層の、関連付けられる燃焼ビードの下にある。タブ部分は放射状に延在するネック領域を含み、このネック領域はネック領域の放射状に外側の端部でネック領域から横方向に外に向かって突き出る側面ベンドタブの組を支持する。ベンドタブは、少なくとも1つの活動層に形成される、関連付けられる、横方向に間隔をおかれる装着窓の組を介して突き出ており、タブはシム層を少なくとも1つの活動層に固定するために互いに向かって折り返される。
【0005】
この発明は、タブ部分のネック領域からはずれてベントタブを配置するという利点を有する。そのようなわけで、ガスケットがシリンダヘッドおよびガスケットなどの密閉されるべき2つの部材の間で締付けられるときに、横方向を向くベンドタブにかかる型締め力に起因するであろう、ネック領域を介して戻る応力の直接のラインが存在しない。もし直接のラインが存在すれば、型締め力はガスケットのシーリング能力を損ない得る集中する圧力をシーリングビード付近に導入するだろう。
【0006】
この発明の好ましい実施例に従って、活動層はさらに、2つのクランピング窓の間に、ネック領域と重なる関係で位置する緩衝窓を含む。この緩衝窓はさらに、シム層または活動層を介してシーリングビードに戻される、ベンドタブに対する締付けによる任意の伝えられた応力を最小限におさえるように働き、その結果密閉の完全性をより促進する。
【0007】
この発明のこれらのおよび他の特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明および添付の図面に関連して考慮されるときにより容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、1つ以上のエンジンの燃焼室開口部を密閉するために使用されるタイプの多層金属ガスケットの断面図である。多層ガスケット10は、1つ以上の燃焼室開口部を含むエンジンのシリンダヘッドとエンジンブロックとの間に通じるさまざまな通路を密閉するために、ヘッドとブロックとの間で締付けられるように通常の態様において設計される。
【0009】
ガスケット10は、エンジンの燃焼室に整列するようにサイズ決めおよび位置決めされる少なくとも1つの燃焼室開口部14をともなって形成される、少なくとも1つおよび好ましくは少なくとも2つの弾力的な活動層12を含む。図2は、少なくとも1つの活動層12の平面図である。開示される実施例において、活動層12およびしたがってガスケット10は、3つのこのような燃焼室開口部14をともなって形成される。
【0010】
図1および図2に最もよく示されるように、ガスケット10の外側の活動層12は、各々の燃焼室開口部14を取囲むシールエンボスメント16をともなって形成される。シールエンボスメント16は活動層12の平面の上部(または下部)に突き出ており、ヘッドとブロックとの間で圧縮されると、弾力的に変形して、燃焼室開口部14およびしたがってエンジンの燃焼室のまわりに公知の態様で流体型のシールを形成する。ガスケット10はさらに、少なくとも1つの活動層の一方側に隣接して配置されるか、または、2つの活動層が存在する開示される実施例の場合においては、層の間に配置されて、エンボスメント16の圧縮を制御するストッパ層またはシム層18を含む。さらに図3および図4を参照して、シム層18は、活動層の燃焼室開口部14の端縁に整列する中央開口部22を有し、開口部14の周囲にある環状シールエンボスメント16の下にある環状部分20を含む。環状部分20はシールエンボスメント16の放射状に外側の範囲付近で終了する。そのようなわけで、シム層18は活動層12の燃焼開口部14から延在するが、活動層12の全体に対しては非連続的である。各々の燃焼室開口部14に関連付けられる環状部分20は好ましくは、図4に最もよく示されるように、隣接する環状部分の間のブリッジング部分24をはさんで別の環状部分に結合される。ブリッジング部分24は、隣接する燃焼開口部14の間に配置される。シム層18は好ましくは、図4に示されるように1つの部品として形成される。
【0011】
シム層18は、シム層18および活動層12の接続構造26によって隣接する活動層12のうちの1つに接続される。接続構造26は、たとえば図4に示されるもののような、選択された場所で環状部分20から放射状に外に向かって突き出るシム層18のタブ部分28を含む。タブ部分28は、各々のネック部分の放射軸Aに沿って延在し、ネック部分30の軸Aを横切り、軸Aから間隔をおかれる少なくとも1つおよび好ましくは横向きの可塑的に変形可能なベンドタブ32の組を有する放射状に外側の端部で終端する狭いネック領域30を有する。図4に最もよく示されるように、タブ部分28は好ましくはT字型を有し、Tの垂直土台はネック領域30を表わし、十字部分はベンドタブ32を表わす。
【0012】
接続構造26はさらに、シム層18が取付けられる活動層12に形成される関連付けられる開口部または装着窓34を含む。図3および図5に最もよく示されるように、窓34を介して延在し、取付けられる活動層12のオーバーラップ領域36のまわりでタブ32を効果的に包むために互いに向かって折り返されるベンドタブ32を受けるように、窓34はサイズ決めおよび位置決めされる。タブ32が折り返されるオーバーラップ領域36は、お互いからおよびタブ部分28のネック領域30から横方向に間隔をおかれる。オーバーラップ領域36はさらに、シム層18の環状部分20およびシム層18が取付けられる活動層12のシールエンボスメント16から間隔をおかれる。図3および図5に最もよ
く示されるように、ベンドタブ32の各々は、ネック領域30から横方向に間隔をおかれる各々の対応する窓34の端縁に折り線38を有し、その結果ベンドタブ38はネック領域30の上ではなくベンドタブ自体の上に折り重ねられる。窓34は好ましくは十分な広さを有するので、ベンドタブ32が最初にタブ部分28の平面で平坦な状態から窓34を介して上方向に折り曲げられ、シム層18が取付けられる活動層12のオーバーラップ領域36の上に折り返されることが可能である。
【0013】
シム層18が取付けられる活動層12はさらに好ましくは、図3に最もよく図示されるように、軸Aに沿ってシールエンボスメント16の外側に径方向に延在し、タブ部分28の径方向に外側の端部を超えて延在する中央排気弁または緩衝窓40を含む。この緩衝窓40は好ましくは、タブ部分28のネック領域30よりわずかに広いが、折り返されるタブ32の端部から内側に間隔をおかれる。窓34、40は、シム層18が取付けられ、ベンドタブ32が折り重ねられる活動層12の比較的薄い締付け部分42を規定する。この締付け部分42は、タブ部分のネック領域30から間隔をおかれ、活動層12のオーバーラップ領域36を部分的に規定する。タブ部分46および窓34はしたがって、シム層18を活動層12に接続する役割を果たす。
【0014】
この発明に従うガスケット10は、オープンデッキエンジンブロックおよびクローズドデッキエンジンブロックでの適用に使用可能である。図3の破鎖線44および46はオープンデッキでの適用に関して接続構造26の位置を表わし、44および46は境界線44、46の間の領域がオープンであり、接続構造26を支持しないようにトップデッキに延在するブロックのオープン燃焼室の側壁を表わす。ガスケット10がこのようなオープンデッキエンジンでの適用例のヘッドとブロックとの間で締付けられるとき、接続構造26はオープン領域に向かって下方向にたわむことが許され、したがってエンボスメント16の所望のシーリング特性を損なうであろうシールエンボスメント16へ戻る過度の抵抗もしくは応力を妨げないか、または導入しない。
【0015】
この発明のガスケット10がクローズドデッキヘッドとブロックとの間で締付けられるとき(この場合、接続構造固体の上部および下部のヘッドならびにブロックに破鎖線44、46は存在しないであろう)、シールエンボスメント16は燃焼室のまわりにシールを形成するために圧縮され、折り返されるタブ32もまた圧縮される。狭い締付け部分42および中間緩衝窓40は、狭い締付け部分42、つまりお互いから間隔を置かれ、ネック領域30の軸Aから間隔をおかれる場所に型締め力を集中させる。この態様において、ベントタブ32の圧縮によって引起される任意の抵抗は非常に局在化され、タブ部分28の全幅にわたって広がらない。この局在化はさらに、シールエンボスメント16に伝えられるシーリング力にベントタブが与える影響を限定する。ベントタブ32の圧縮がタブ部分28の領域においてシールエンボスメント16の均一な締付けを乱すように作用する程度まで、型締め圧力のこのような任意の低減は締付け部分42に沿って放射状に非常に局在化され、締付け部分42はエンボスメント16のシーリング能力に最小の影響を与えるように非常に狭く、さらにお互いから間隔をおかれる。
【0016】
明らかに、この発明の多くの修正および変形が上記の教示の観点から可能である。したがって、特許請求の範囲内で、この発明は具体的に記載されるのとは異なるように実施されてもよいことが理解されるべきである。この発明は特許請求の範囲によって規定される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図3の線1−1に沿った断面図である。
【図2】この発明の現在の好ましい実施例に従って構成されるガスケットの平面図である。
【図3】図1および図2のガスケットの一部の拡大部分平面図である。
【図4】シム層の平面図である。
【図5】図3の線5−5に沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層金属ガスケットであって、
少なくとも1つの活動層、少なくとも1つのシム層を含み、活動層およびシム層は整列する燃焼孔を有し、シム層は燃焼孔を取囲む環状部分および環状部分から放射状に外に向かって突き出るタブ部分を有し、環状部分は活動層のうちの少なくとも1つの活動層の、関連付けられるシーリングビードの下にあり、タブ部分は放射状に外側の端部でネック領域から横方向に外に向かって突き出る側面ベンドタブの組を支持する放射状に延在するネック領域を含み、前記ベンドタブは少なくとも1つの活動層に形成される横方向に間隔をおかれる装着窓の、関連付けられる組を介して突き出て、シム層を少なくとも1つの活動層に固定するために互いに向かって折り返される、金属ガスケット。
【請求項2】
前記ベンドタブは前記ネック領域を横切って延在する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの活動層は前記装着窓の間にある前記ネック領域の軸に沿って存在する緩衝窓を含む、請求項1に記載のガスケット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの活動層は前記緩衝窓を前記装着窓の各々から分離するオーバーラップ領域を含む、請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記ベンドタブの各々は前記オーバーラップ領域に対して折り重ねられる締付け部分42を含む、請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記緩衝窓は前記ネック部分よりも相対的に大きな幅を有する、請求項5に記載のガスケット。
【請求項7】
前記緩衝窓は前記タブ部分を超えて軸方向に延在する、請求項5に記載のガスケット。
【請求項8】
少なくとも2つの活動層がある、請求項1に記載のガスケット。
【請求項9】
前記シムは前記ベンドタブによって前記活動層のうちの1つにのみ結合される、請求項8に記載のガスケット。
【請求項10】
前記シーリングビードは前記燃焼孔を取囲む、請求項1に記載のガスケット。
【請求項11】
前記シム層は前記活動層に部分的にのみ重なる、請求項1に記載のガスケット。
【請求項12】
前記ネック領域および前記ベンドタブは全体として一般にT字型の構成を有する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項13】
前記ベンドタブは前記環状部分から間隔をおかれる、請求項1に記載のガスケット。
【請求項14】
前記ベンドタブは各々、前記ネック領域から横方向に外に向かって間隔をおかれる折り線を含む、請求項1に記載のガスケット。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−515405(P2006−515405A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560763(P2004−560763)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/039371
【国際公開番号】WO2004/055418
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(505220310)マコード・リークレス・シーリング・カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】MCCORD LEAKLESS SEALING CO.
【Fターム(参考)】