説明

金属リングの反転装置

【課題】装置構成を簡単として反転作業を極めて効率良く行うことができる金属リングの反転装置を提供する。
【解決手段】ブラケット23に回転自在に支持されて金属リングWを収容して保持するプレート22を設ける。プレート22に金属リングWに対応する形状の貫通孔25を設ける。プレート22に、貫通孔25の一方の開口を開閉する第1の蓋部材26と、貫通孔25の他方の開口を開閉する第2の蓋部材30とを設ける。各蓋部材26,30を個別に開閉駆動する蓋駆動手段28,32を設ける。プレート22を反転方向に回転駆動するプレート駆動手段24を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄板筒状の金属リングを反転させる反転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無段変速機に採用される動力伝達用のベルトにおいては、環状に積層配列された複数のエレメントを複数の金属リングを積層してなる積層リングにより結束したものが用いられている。この種の積層リングを構成する金属リングは、円筒状の金属ドラムを切刃や砥石等により所定幅毎に輪切りにすることによって無端帯状に形成される。そして、円筒状のドラムから切断された金属リングは側端縁にバリが生じているため、そのバリを研磨することが必要となる。また、特に前記動力伝達用のベルトに採用する金属リングは、側端縁でのバリ発生が少なくても、金属リングの側端縁を研磨して側端縁を所定の湾曲形状に精度良く仕上げることが必要となる。
【0003】
金属リングの側端縁を研磨する方法としてバレル研磨が挙げられる(特許文献1参照)。しかし、バレル研磨は、金属リングをメディアと共にバレル内で撹拌することによりメディアを金属リングの側端縁に接触させるものであるため、金属リングの内側よりも外周面側に多くのメディアが当接し、金属リングの側端縁の内側角部と外側角部との研磨が不均一となる不都合があった。
【0004】
また、他の金属リングの側端縁を研磨する方法として、ブラシ研磨が挙げられる。ブラシ研磨は、複数の金属リングをその一方の端縁を上方に露出させて保持テーブル上に水平に保持し各金属リングの露出する端縁を研磨ブラシによって研磨する。こうすることにより、研磨ブラシを金属リングの側端縁の内側角部と外側角部とに均一に当接させることができ、金属リングの側端縁に精度の高い研磨を施すことができる。
【0005】
しかし、研磨ブラシは金属リングの一方の端縁にのみ当接され、金属リングの両端縁を同時に研磨することが困難である。このため、研磨ブラシにより金属リングの両端縁を研磨する場合には、金属リングの一方の端縁を研磨した後、金属リングを反転させて他方の端縁を研磨する必要がある。
【0006】
そこで、本出願人は、先に特願2003−186563により、金属リングの両端縁にブラシ研磨を行なう場合に金属リングを反転させることができる反転装置を提案した。該反転装置は、反転方向に回転自在のプレートと、該プレートに貫通して形成されて内部に金属リングを収容する貫通孔とを備えている。該貫通孔は、金属リングより大径に形成されており、該貫通孔には、内部に収容された金属リングの外周壁に圧接して金属リングを解除自在に保持するプランジャー等の圧接保持手段が設けられている。
【0007】
そして、金属リングを反転させるときには、貫通孔の一方の開口から金属リングを挿入し、前記圧接保持手段により金属リングを圧接保持する。次いで、前記プレートを反転方向に回転させて、前記圧接保持手段による金属リングの圧接を解除し、貫通孔の他方の開口から金属リングを取り出す。このように、金属リングを保持したプレートを反転方向に回転させるだけで金属リングを反転させることができるので、装置構成を簡単として反転作業を効率良く行うことができる。
【0008】
ところで、反転作業の効率を更に向上させるためには、プレートの回転速度を更に上げることが考えられる。しかし、貫通孔に収容されている金属リングは、その外周壁が前記圧接保持手段により圧接された状態で保持されているため、プレートの回転速度を過剰に上げた場合には、圧接保持手段による金属リングの圧接が維持できずに金属リングが貫通孔から飛び出し、プレートから脱落した金属リングが損傷するおそれがある。このことから、プレートの回転速度を高速化してもプレートにおける金属リングの保持状態が確実に維持でき、更なる反転作業の効率向上を図ることができる反転装置が望まれていた。
【特許文献1】特開2001−241512号公報(第4頁0032)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かかる不都合を解消して、本発明は、装置構成を簡単として反転作業を極めて効率良く行うことができる金属リングの反転装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、薄板筒状の金属リングを保持して反転する金属リングの反転装置であって、前記金属リングに対応する形状に形成されて該金属リングを収容する貫通孔を有するプレートと、該プレートに設けられ、前記貫通孔の一方の開口を開閉する第1の蓋部材と、該プレートに設けられ、前記貫通孔の他方の開口を開閉する第2の蓋部材と、各蓋部材を個別に開閉駆動する蓋駆動手段と、前記プレートを反転方向に回転自在に支持するブラケットと、該ブラケットに支持された前記プレートを反転方向に回転駆動するプレート駆動手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の反転装置によって金属リングを反転させるときには、先ず、前記プレートに設けられた前記貫通孔の一方の開口を、前記第1の蓋部材により閉じておき、開放されている他方の開口から該貫通孔内に金属リングを挿入する。次いで、前記貫通孔の他方の開口を、前記第2の蓋部材により閉じ、プレート駆動手段によってプレートを反転方向に回転させる。このとき、貫通孔は第1の蓋部材と第2の蓋部材とのよって閉塞されているので、貫通孔に収容されている金属リングはプレートが高速に反転しても、貫通孔から飛び出すことがなく、プレートと共に確実に反転させることができる。
【0012】
そして、第1の蓋部材を開いて貫通孔の一方の開口を開放して貫通孔内の金属リングを取り出す。このように、本発明によれば、貫通孔の何れか一方の開口から金属リングを挿入し、挿入した開口と反対側の開口から金属リングを取り出すので、プレートを反転させるだけで、極めて迅速に金属リングを反転させることができる。
【0013】
また、本発明において、前記第1の蓋部材は、前記貫通孔の一方の開口を閉じたとき該貫通孔内に突出する第1の凸部を備え、前記第2の蓋部材は、前記貫通孔の他方の開口を閉じたとき前記第1の凸部に対向して該貫通孔内に突出する第2の凸部を備え、前記第1の凸部と前記第2の凸部とは、互いに対向する先端に向かって次第に縮径する形状を有する同一形状とされ、前記貫通孔に対応する前記金属リングより小径の他の金属リングを前記貫通孔に収容したとき、該他の金属リングに挿入して該他の金属リングを保持することを特徴とする。
【0014】
前記第1の蓋部材が前記第1の凸部を備え、前記第2の蓋部材が前記第2の凸部を備えることによって、前記貫通孔の内径より小さな外径を有する金属リングを貫通孔の内部に保持することができる。即ち、前記貫通孔の一方の開口が第1の蓋部材によって閉じ、開放されている開口から貫通孔の内径より小さな外径を有する金属リングを該貫通孔内に挿入する。このとき、貫通孔内には、第1の蓋部材の第1の凸部が突出しているので、第1の凸部に金属リングを装着する。更に、第1の凸部は、先端に向かって次第に縮径する形状なので、第1の凸部が金属リングの内側に円滑に挿入されて確実に金属リングが支持される。そして、第2の蓋部材により他方の開口を閉じることにより、第2の蓋部材の第2の凸部が第1の凸部と対向して金属リングの内側に挿入され、金属リングは貫通孔の内径より小さな外径を有していても、第1の凸部と第2の凸部とによって貫通孔内部に確実に位置決めされた状態で保持される。
【0015】
このように、本発明によれば、貫通孔の大きさの異なるプレートに交換するといった大掛かりな構成の変更を施すことなく貫通孔の内径より小さな外径を有する金属リングを保持することができる。
【0016】
また、本発明は、金属リングの研磨を行うときに好適に採用することができる。即ち、薄板筒状の複数の金属リングの一方の端縁を研磨する第1の研磨工程と、各金属リングの他方の端縁を研磨する第2の研磨工程とを備える金属リングの研磨方法においては、第1の研磨工程と、第2の研磨工程との間で前記反転装置による反転工程が行われる。更に、第1の研磨工程と反転工程との間においては、第1の研磨工程を行う第1の研磨装置により研磨された金属リングを把持して反転装置に装着する装着工程が行われ、反転工程と第2の研磨工程との間においては、反転工程により反転された金属リングを把持し反転装置から取り出して第2の研磨工程を行う第2の研磨装置に移送する取出し移送工程が行われる。
【0017】
装着工程及び取出し移送工程は、金属リングの何れか一方側の端縁部を把持して進退する把持手段を備える搬送ローダ等の移載手段を採用することができる。
【0018】
前記反転装置には金属リングを収容する貫通孔を有するプレートが設けられており、該プレートには貫通孔の一方の開口を開閉する第1の蓋部材と貫通孔の他方の開口を開閉する第2の蓋部材が設けられている。そして、装着工程においては、一方の蓋部材により貫通孔の一方の開口のみを閉じておき且つ開かれた状態の他方の開口が前記移載手段の把持手段に対向するように位置決めして、他方の開口から前記移載手段により金属リングを装着する。次いで、反転工程においては、他方の蓋部材により貫通孔の他方の開口を閉じ、貫通孔が閉塞された状態を維持してプレートを反転させ、投入した側と反対側に位置する一方の開口が前記移載手段の把持手段に対向するように位置決めする。続いて、取出し移送工程においては、一方の蓋部材を開いて貫通孔の一方の開口のみを開放し、開放された一方の開口から前記移載手段により金属リングを取り出して移送する。
【0019】
このように、金属リングの研磨方法において極めて迅速に金属リングを反転させて第1の研磨工程と第2の研磨工程とを効率良く行うことができる。
【0020】
更に、前述の研磨方法を行う研磨装置の一態様としては、薄板筒状の複数の金属リングの一方の端縁を研磨し、該金属リングを反転して他方の端縁を研磨する金属リングの研磨装置において、金属リングをその一方の端縁を上方に露出させて水平に保持する第1の保持テーブルと、該第1の保持テーブルに金属リングを投入する投入手段と、該第1の保持テーブルの上方位置に向かって進退すると共に第1の保持テーブルに保持された金属リングの一方の端縁を研磨する第1の研磨手段と、該第1の保持テーブルの下流に設けられて金属リングを反転する反転手段(前述の反転装置)と、該反転手段の下流に設けられ、金属リングをその他方の端縁を上方に露出させて水平に保持する第2の保持テーブルと、前記第1の保持テーブルから該反転手段に金属リングを移載し、該反転手段により反転された金属リングを前記第2の保持テーブルに移載する移載手段と、前記第2の保持テーブルの上方位置に向かって進退すると共に第2の保持テーブルに保持された金属リングの他方の端縁を研磨する第2の研磨手段とを備えるものが挙げることができる。これにより、金属リングの両側の端縁を効率よく研磨することができ、作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本実施形態の研磨装置の構成を模式的に示す説明的平面図、図2は本実施形態の研磨装置の構成を模式的に示す説明的側面図、図3はワークチャックハンドを示す説明図、図4は反転装置の説明的平面図、図5は反転装置の説明的側面図、図6は反転装置の要部の説明的断面図である。
【0022】
本実施形態における研磨装置1は、図1及び図2に示すように、5つのステージA〜Eを備えている。最上流に位置するステージAは投入ステージであり、投入手段2が設けられている。その下流に隣設されたステージBは第1の研磨ステージであり、第1の研磨手段3と第1の保持テーブル4とが設けられている。
【0023】
該第1の研磨ステージBの下流に隣設されたステージCは反転ステージである。該反転ステージCには、本発明の反転装置である反転手段5が設けられている。更に、該反転ステージCの下流に隣設されたステージDは第2の研磨ステージであり、第2の研磨手段6と第2の保持テーブル7とが設けられている。その下流に隣設されたステージEは払出しステージであり、払出し手段8が設けられている。
【0024】
次に、各部を詳細に説明する。図1及び図2に示すように、前記投入手段2は、複数の金属リングWを投入方向に搬送する投入コンベヤ9の終端部に設けられて、複数の金属リングW(本実施形態においては6つの金属リングW)を円周状に載置する投入テーブル10と、投入コンベヤ9の金属リングWを投入テーブル10上に整列させるリング整列手段11と、投入テーブル10上の各金属リングWを把持して第1の研磨ステージBへ移送する投入ローダ12とを備えている。
【0025】
投入ローダ12は、図2に示すように、投入テーブル10上の各金属リングWを個別に把持する複数のワークチャックハンド13(把持手段)を備えている。各ワークチャックハンド13は昇降手段14により昇降され且つ各ステージA〜Eに沿って延設されたレール15に案内されて、図示しない往復駆動手段により投入ステージAと第1の研磨ステージBとの間を往復する。
【0026】
ワークチャックハンド13は一対の把持部16を備えており、金属リングWの直径方向に対向する2箇所の端縁部を把持する。また、図3に示すように、両把持部16はその間隔寸法を拡縮させる拡縮手段17に保持されており、金属リングW及び径の小さい他の金属リングWsに応じて両把持部16の間隔が対応できるようになっている。
【0027】
前記第1の研磨手段3は、図1及び図2に示すように、第1の保持テーブル4に保持された複数の金属リングWの一方の端縁を研磨する。第1の保持テーブル4は、複数の保持部18により各金属リングWを所定位置に保持する。このとき、各保持部18は各金属リングWの一方の端縁を上方に向けて露出させた状態で保持する。また、各保持部18は回転駆動手段19(図2参照)により各金属リングWを周方向に回転させる。これにより、各金属リングWは、第1の保持テーブル4の所定位置に保持された状態を維持して、夫々の位置において周方向に回転される。
【0028】
前記第1の研磨手段3は、第1の保持テーブル4の各金属リングWの端縁に接する円環状の研磨ブラシ20(図1において仮想線示する)と、該研磨ブラシ20を回転駆動する回転駆動手段(図示しない)とを備えている。また、該研磨ブラシ20は、進退駆動手段21により第1の保持テーブル4上に向かって水平方向に進退され(図1参照)、且つ、図示しない昇降手段により第1の保持テーブル4に向かって昇降される(図2参照)。円形に配列された研磨ブラシ20は、回転したときに、第1の保持テーブル4上の各金属リングWに同時に当接する径寸法とされている。そして、図2に示すように研磨ブラシ20が下降されると、図1において仮想線示するように、各金属リングWを横切ってその一方の端縁に当接し、該研磨ブラシ20の回転と金属リングWの回転とにより、金属リングWの一方の端縁全周にわたる研磨が行なわれる。
【0029】
次に、本発明の反転装置である前記反転手段5について説明する。図1及び図2に示すように、該反転手段5は、反転ステージCに設けられて金属リングWを上下方向に反転させるものである。該反転手段5は、図4及び図5に示すように、各金属リングWを保持するプレート22と、該プレート22を反転方向に回転自在に支持するブラケット23と、プレート22の反転を駆動するアクチュエータ24(プレート駆動手段)とを備えている。
【0030】
プレート22には、金属リングWを挿入して保持する複数の貫通孔25が形成されている。該貫通孔25の内径は金属リングWの外径に対応し、各貫通孔25の位置は、前記第1の保持テーブル4に保持された各金属リングWの保持位置に対応している。
【0031】
該プレート22の一方面側には、一対の第1の蓋部材26が設けられている。一方の第1の蓋部材26はプレート22の一側縁にヒンジ部材27を介して開閉自在に連結され、他方の第1の蓋部材26はプレート22の他側縁にヒンジ部材27を介して開閉自在に連結されている。両第1の蓋部材26は、第1の開閉シリンダ28(蓋駆動手段)により開閉駆動される。第1の開閉シリンダ28は、ピストンロッド29の先端にリンク部材31を介して一方の第1の蓋部材26のヒンジ部材27が連結され、シリンダ28後端部にリンク部材32を介して他方の第1の蓋部材26のヒンジ部材27が連結されている。これにより、ピストンロッド29を伸長させたとき、両第1の蓋部材26が同時に閉じられ、各貫通孔25の一方の開口が閉塞される。
【0032】
また、該プレート22の他方面側には、第1の蓋部材26と同様にして一対の第2の蓋部材30が設けられている(図5参照)。即ち、一方の第1の蓋部材26はプレート22の一側縁に開閉自在に連結され、他方の第2の蓋部材30はプレート22の他側縁に開閉自在に連結されている。図4に示すように、両第2の蓋部材30は、第2の開閉シリンダ32(蓋駆動手段)により開閉駆動され、ピストンロッド33を伸長させたとき、ピストンロッド33の先端のリンク部材34と、シリンダ32後端部のリンク部材35とを介して両第2の蓋部材30が同時に閉じられて各貫通孔25の他方の開口が閉塞される。
【0033】
更に、図6に示すように、両第1の蓋部材26の裏面側には貫通孔25内に突出する第1の凸部36が設けられており、両第2の蓋部材30の裏面側には第1の凸部36に対向して貫通孔25内に突出する第2の凸部37が設けられている。第1の凸部36と第2の凸部37とは、夫々先端に向かって次第に縮径する形状に形成されている。そして、両第1の蓋部材26と両第2の蓋部材30とが閉じたことにより貫通孔25の内部で第1の凸部36と第2の凸部37とが向き合ったとき、その外周に小径の金属リングWsが保持できるようになっている。即ち、図5において仮想線で示すように上側にある第1の蓋部材26が開いている場合には、下側で閉じた状態の第2の蓋部材30に設けられた第2の凸部37が貫通孔25の内部に位置し、第2の凸部37が先端に向かって次第に縮径していることにより、小径の金属リングWsを挿入し易く且つ正しい保持位置にセットすることができる。そして更に、第1の蓋部材26を閉じたとき、第1の蓋部材26の第1の凸部36が先端に向かって次第に縮径していることにより、第1の凸部36が小径の金属リングWsに干渉することなく小径の金属リングWsに円滑に挿入されて図6に示す状態とすることができる。第1の凸部36と第2の凸部37とは同じ形状であるので、第1の蓋部材26が下側にある場合であっても、第1の蓋部材26を閉じた状態で小径の金属リングWsをセットする際、及び上側の第2の凸部37を閉じる際に同様の効果が得られる。
【0034】
また、図1及び図2に示すように、各ステージA〜Eに沿って延設された前記レール15には、反転ステージCを介して第1の研磨ステージBと第2の研磨ステージDとの間を往復する搬送ローダ38(移載手段)が設けられている。該搬送ローダ38は、前記投入ローダ12と同じ構成であり、第1の研磨ステージBにおいて一端部の研磨が終了した各金属リングWを各ワークチャックハンド13により把持して反転ステージCのプレート22に移載し、プレート22により反転された各金属リングWを各ワークチャックハンド13により把持して第2の研磨ステージDの後述する第2の保持テーブル7に移載する。
【0035】
前記第2の研磨手段6は、図1及び図2に示すように、第2の保持テーブル7に保持された複数の金属リングWの他方の端縁(前記第1の研磨手段3によって研磨された端縁の反対側の端縁)を研磨する。第2の保持テーブル7は、前記第1の保持テーブル4と同じ構成であり、図2に示すように、複数の保持部18により各金属リングWを所定位置に、各金属リングWの他方の端縁を上方に向けて露出させた状態で保持する。そして、各保持部18は回転駆動手段19(図2参照)により各金属リングWを周方向に回転させることにより、各金属リングWは、第2の保持テーブル7の所定位置に保持された状態を維持して、夫々の位置において周方向に回転される。
【0036】
前記第2の研磨手段6は、前記第1の研磨手段3と同様に構成されている。即ち、円環状の研磨ブラシ20(図1において仮想線示する)と、該研磨ブラシ20を回転駆動する回転駆動手段(図示せず)とを備え、該研磨ブラシ20を第2の保持テーブル7上に向かって水平方向に進退させる進退駆動手段21を備えると共に、該研磨ブラシ20を第2の保持テーブル7に向かって昇降させる図示しない昇降手段を備えている。これにより、研磨ブラシ20が下降して各金属リングWの他方の端縁に当接し、該研磨ブラシ20の回転と金属リングWの回転とにより、金属リングWの他方の端縁全周にわたる研磨が行なわれる。
【0037】
前記払出しステージEの払出し手段8は、両端縁の研磨が終了した各金属リングWを載置する払出しテーブル39と、第2の研磨ステージDの第2の保持テーブル7の各金属リングWを払出しテーブル39上に払い出す払出しローダ40とを備えている。該払出しローダ40は、前述の投入ローダ12や搬送ローダ38と同じ構成であり、各ステージA〜Eに沿って延設されたレール15に案内されて、第2の研磨ステージDと払出しステージEとの間を往復する。
【0038】
次に、以上の構成からなる本実施形態の研磨装置1の作動を説明する。図1を参照して、投入コンベヤ9に沿って連続して供給された金属リングWは、投入ステージAに入り、投入コンベヤ9の終端から投入テーブル10に移載される。このとき、リング整列手段11によって投入テーブル10に6つの金属リングWが円形に配列される。この配列状態は、第1の保持テーブル4の各保持部18の位置、反転手段5のプレート22の各貫通孔25の位置、及び第2の保持テーブル7の各保持部18の位置に対応するものである。
【0039】
金属リングWが投入テーブル10に載置されると、投入テーブル10が搬送方向にスライドし、投入ローダ12の直下に位置決めされる。次いで、投入ローダ12の各ワークチャックハンド13が一体に下降し、夫々の金属リングWをその配列状態を維持して把持する。このとき、小径の金属リングWsを供給する場合には、両把持部16の間隔が狭く設定される(図3参照)。
【0040】
そして、夫々の金属リングWを把持した各ワークチャックハンド13が上昇され、投入ローダ12がレール15に沿って移動して第1の研磨ステージBに入り、第1の保持テーブル4の直上から各保持部18に向かって各金属リングWが下降される。このとき、第1の研磨手段3の研磨ブラシ20が後退されており、第1の保持テーブル4の上方が開放されているので、研磨ブラシ20と投入ローダ12とが干渉することはなく、円滑に各金属リングWが各保持部18に保持される。
【0041】
次いで、投入ローダ12が投入ステージAへ戻り、第1の研磨手段3の研磨ブラシ20が第1の保持テーブル4の上方に向かって前進し下降して、第1の保持テーブル4に保持された各金属リングWの一方の端縁が研磨される(第1の研磨工程)。
【0042】
各金属リングWの一方の端縁の研磨が終了すると、第1の研磨手段3の研磨ブラシ20が後退して第1の保持テーブル4の上方が開放され、反転ステージCで待機状態にあった搬送ローダ38が第1の保持テーブル4上に移動して各金属リングWを把持する。そして、各金属リングWを把持した各ワークチャックハンド13が上昇され、搬送ローダ38がレール15に沿って移動して反転ステージCに入る。反転ステージCでは、反転手段5のプレート22が水平姿勢で待機している。このとき、プレート22の第1の蓋部材26が下側にある場合には、両第1の蓋部材26が閉じた状態とされて貫通孔25の下方の開口が閉塞されると共に、第2の蓋部材30が開いた状態とされて貫通孔25の上方の開口が開放される。なお、プレート22の第1の蓋部材26が上側にある場合には、両第2の蓋部材30が閉じた状態とされ第1の蓋部材26が開いた状態とされる。
【0043】
続いて、搬送ローダ38の各ワークチャックハンド13が下降されて開放された貫通孔25の上方の開口から各金属リングWが装着され、各金属リングWが各貫通孔25に収容される(装着工程)。このとき、各金属リングWは各貫通孔25の内壁に規制されて各貫通孔25内に保持される。小径の金属リングWsである場合には、第1の蓋部材26に設けられた前記第1の凸部36に装着された状態となり、小径の金属リングWsの内側が第1の凸部36の外壁に規制されて各貫通孔25内に保持される。
【0044】
次いで、各金属リングWの把持を解除した各ワークチャックハンド13は上昇され、搬送ローダ38は当該位置において待機する。続いて、開いた状態にあった第2の蓋部材30が閉じられ、各貫通孔25の上下の開口が閉塞される。これにより、各貫通孔25内の各金属リングWは、第1の蓋部材26と第2の蓋部材30とによって金属リングWの軸線方向に対し確実に規制され、また金属リングWの半径方向に対しては貫通孔25の内壁によって確実に規制されて各貫通孔25内に保持される。また、小径の金属リングWsである場合には、第1の凸部36と第2の凸部37とによって小径の金属リングWsの半径方向に対し確実に規制され、また軸線方向に対しては第1の蓋部材26と第2の蓋部材30とによって確実に規制されて各貫通孔25内に保持される。
【0045】
そして、各貫通孔25の上方の開口が閉塞されると即座にプレート22が反転される(反転工程)。このとき、各貫通孔25は内部に各金属リングWを収容した状態で第1の蓋部材26と第2の蓋部材30とによって閉じられているので、プレート22が極めて高速に回転されて反転しても、各金属リングWが貫通孔25から離脱することはなく、各金属リングWを確実に反転させることができる。
【0046】
続いて、反転されたことによりプレート22の上面側に位置した第1の蓋部材26が開かれ、各貫通孔25の上方の開口が開放される。プレート22の反転により、各貫通孔25内に収容されている各金属リングWは、未だ研磨されていない他方の端縁が上側を向いた状態とされる。この状態で、搬送ローダ38の各ワークチャックハンド13が下降されて各金属リングWが把持される。そして、各金属リングWを把持した各ワークチャックハンド13が上昇することで、各貫通孔25から各金属リングWが取り出され、搬送ローダ38がレール15に沿って移動して第2の研磨ステージDに入る(取出し移送工程)。
【0047】
本実施形態の構成によれば、第1の蓋部材26及び第2の蓋部材30の開閉動作とプレート22の反転動作時に、前記搬送ローダ38は反転手段5のプレート22の直上位置に上昇された状態で待機しているが、第1の蓋部材26及び第2の蓋部材30は夫々が一対ずつプレート22の両側に開閉される(所謂観音開きの形態で開閉される)ようになっているので、反転するプレート22の回転半径より僅かに高い位置に各ワークチャックハンド13を上昇させておけば、プレート22、第1の蓋部材26及び第2の蓋部材30に干渉することはなく、各ワークチャックハンド13の昇降距離を比較的小さくすることができる。そして更に、第1の蓋部材26及び第2の蓋部材30は夫々が一対ずつプレート22の両側に開閉されることにより、第1の蓋部材26や第2の蓋部材30の開閉動作を極めて迅速に行うことができる。
【0048】
続いて、第2の研磨ステージDにおいては、夫々の金属リングWを把持した各ワークチャックハンド13が下降し、第2の保持テーブル7の各保持部18に各金属リングWが保持される。その後の動作は前述した第1の研磨工程と同様に行われ、第2の研磨手段6の研磨ブラシ20によって第2の保持テーブル7に保持された各金属リングWの他方の端縁が研磨される(第2の研磨工程)。
【0049】
各金属リングWの他方の端縁の研磨が終了し、第2の研磨手段6の研磨ブラシ20が後退して第2の保持テーブル7の上方が開放されると、払出しステージEで待機状態にあった払出しローダ40が第2の保持テーブル7上に移動して各金属リングWを把持して払出しステージEに入る。そして、払出しローダ40に把持された各金属リングWは払出しテーブル39上に移載されて払い出される。
【0050】
以上のように本実施形態によれば、第1の研磨ステージBと第2の研磨ステージDとの間の反転ステージCにおいて、前記反転手段5により各金属リングWが反転されるとき、貫通孔25が第1の蓋部材26及び第2の蓋部材30により閉塞される。これにより、金属リングWの貫通孔25からの離脱を確実に防止してプレート22を高速に反転させることができるので、金属リングWの反転動作を迅速に行って各金属リングWの両端縁の研磨を極めて効率よく行なうことができる。更に、第1の蓋部材26及び第2の蓋部材30には第1の凸部36及び第2の凸部37が設けられていることにより、小径の金属リングWsを反転する場合にも、例えば小径の金属リングWsの外径に対応する貫通孔を備えたプレートへの交換等が不要であり、部品交換等の手間やコスト増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態の研磨装置の構成を模式的に示す説明的平面図。
【図2】本実施形態の研磨装置の構成を模式的に示す説明的側面図。
【図3】ワークチャックハンドを示す説明図。
【図4】反転装置の説明的平面図。
【図5】反転装置の説明的側面図。
【図6】反転装置の要部の説明的断面図。
【符号の説明】
【0052】
W…金属リング、Ws…小径の他の金属リング、5…反転装置、22…プレート、23…ブラケット、24…プレート駆動手段、25…貫通孔、26…第1の蓋部材、28,32…蓋駆動手段、30…第2の蓋部材、36…第1の凸部、37…第2の凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板筒状の金属リングを保持して反転する金属リングの反転装置であって、
前記金属リングに対応する形状に形成されて該金属リングを収容する貫通孔を有するプレートと、
該プレートに設けられ、前記貫通孔の一方の開口を開閉する第1の蓋部材と、
該プレートに設けられ、前記貫通孔の他方の開口を開閉する第2の蓋部材と、
各蓋部材を個別に開閉駆動する蓋駆動手段と、
前記プレートを反転方向に回転自在に支持するブラケットと、
該ブラケットに支持された前記プレートを反転方向に回転駆動するプレート駆動手段とを備えたことを特徴とする金属リングの反転装置。
【請求項2】
前記第1の蓋部材は、前記貫通孔の一方の開口を閉じたとき該貫通孔内に突出する第1の凸部を備え、
前記第2の蓋部材は、前記貫通孔の他方の開口を閉じたとき前記第1の凸部に対向して該貫通孔内に突出する第2の凸部を備え、
前記第1の凸部と前記第2の凸部とは、互いに対向する先端に向かって次第に縮径する形状を有する同一形状とされ、前記貫通孔に対応する前記金属リングより小径の他の金属リングを前記貫通孔に収容したとき、該他の金属リングに挿入して該他の金属リングを保持することを特徴とする請求項1記載の金属リングの反転装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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