説明

金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートおよびその製造方法

【課題】意匠が金属光沢調で電波透過性に優れ、なおかつ透明窓部の視認性を向上させた金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、透明な基体シート7上に窓枠パターン3で形成され、少なくとも1層の高屈折誘電体層10を含む金属光沢調意匠層30と、前記金属光沢調意匠層30の窓枠パターン3と同調するように形成された隠蔽層40と、を備えている。また、本発明の意匠シート1の製造方法は、透明な基体シート7上に少なくとも1層の高屈折誘電体層10を含む金属光沢調意匠層30を全面的に形成する工程と、前記基体シート7とは反対側の面上に窓枠パターン3でエッチングレジスト層を形成する工程と、前記金属光沢調意匠層30の窓枠パターン3と同調するように形成された隠蔽層40を形成工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話やPDAなどのポータブル情報機器やTVなどの映像機器等の装飾に用いられる透明な表示部つまり窓部がある意匠シートに関し、とくにその意匠が金属光沢調で電波透過性に優れた、金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPDAなどのポータブル情報機器やTVなどの映像機器等に用いられ前記窓枠柄を有する意匠シートは、透明窓部の周囲を隠蔽する柄が印刷によるため低反射であり、高級感に乏しかった。透明窓部の周囲を隠蔽する柄をアルミ蒸着膜を形成すれば反射率を向上させることができるが、それでも満足できる高級感を得られない。
【0003】
そこで、透明窓部の周囲を隠蔽する柄つまり窓枠柄について充分な高級感が得られる意匠シートが、特許文献1に開示されている。すなわち、フィルム上に、高屈折誘電体層と低屈折誘電体層を交互に積層してなるカラーハーフミラー層が全面的に形成され、さらに透明窓部の周囲を隠蔽する印刷層からなる隠蔽層が積層された構成である。このフィルムを用いることにより、窓枠柄が高反射であり、充分な高級感が得られる。
【0004】
また、特許文献1に示す意匠シートは、前記構成によるため電波透過性に優れ、通信機能を高める点からも携帯電話やPDAなどのポータブル情報機器やTVなどの映像機器等の装飾用途に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−83262公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示す意匠シートは、透明窓部にも前記カラーハーフミラー層が形成され、普段は透明窓部と窓枠部の区別なく鏡のように見え、背面に配置されたLCD等のディスプレイ画面が光ることにより表示が見えるようになっているため、どうしても前記カラーハーフミラー層を介在する分だけディスプレイ画面の表示に色目変化が生じてしまうという視認性の問題がある。また、前記カラーハーフミラー層を介在する分だけ透過率が低下し、ディスプレイ画面の表示が暗くなるという別の視認性の問題もある。
【0007】
したがって、本発明は、以上のような従来技術の課題を考慮し、意匠が金属光沢調で電波透過性に優れ、なおかつ透明窓部の視認性を向上させた金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、以下のように構成している。
【0009】
本発明の第1態様によれば、透明な基体シートと、
前記基体シート上に窓枠パターンで形成され、少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層と、
前記基体シート上に前記金属光沢調意匠層の窓枠パターンと同調するように形成された隠蔽層と、
を備えた、金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートを提供する。
【0010】
本発明の第2態様によれば、前記金属光沢調意匠層が、易エッチング性誘電体からなる単層の高屈折誘電体層である、第1態様の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートを提供する。
【0011】
本発明の第3態様によれば、前記易エッチング性誘電体が、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものである、第2態様の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートを提供する。
【0012】
本発明の第4態様によれば、前記金属光沢調意匠層が、複数の高屈折誘電体層を積層したものであって、当該複数の高屈折誘電体層のうち、前記基体シートに最も近い側の高屈折誘電体層が易エッチング性誘電体からなるものである、第1態様の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートを提供する。
【0013】
本発明の第5態様によれば、前記易エッチング性誘電体が、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものであり、その他の高屈折誘電体層に用いる誘電体が酸化チタン、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化タンタルから選ばれるものである、第4態様の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートを提供する。
【0014】
本発明の第6態様によれば、透明な基体シート上に少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層を全面的に形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記基体シートとは反対側の面上に窓枠パターンでエッチングレジスト層を形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記エッチングレジスト層で覆われていない部分をエッチング除去する工程と、
前記基体シート上に前記金属光沢調意匠層の窓枠パターンと同調するように形成された隠蔽層を形成する工程と、
を備えた、金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の第7態様によれば、透明な基体シート上に少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層を全面的に形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記基体シートとは反対側の面上に窓枠パターンでエッチングレジストを兼ねた隠蔽層を形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記隠蔽層で覆われていない部分をエッチング除去する工程と、
を備えた、金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の第8態様によれば、前記金属光沢調意匠層を、易エッチング性誘電体からなる単層の高屈折誘電体層で形成する、第6態様又は第7態様のいずれか1つの金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法を提供する。
【0017】
本発明の第9態様によれば、前記易エッチング性誘電体として、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものを用いる、第8態様の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法を提供する。
【0018】
本発明の第10態様によれば、前記金属光沢調意匠層を、複数の高屈折誘電体層を積層して形成し、当該複数の高屈折誘電体層のうち、前記基体シートに最も近い側の高屈折誘電体層に易エッチング性誘電体を用いる、第6態様又は第7態様のいずれか1つの金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第11態様によれば、前記易エッチング性誘電体として、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものを用い、その他の高屈折誘電体層に酸化チタン、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化タンタルから選ばれる誘電体を用いる、第10態様の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートおよびその製造方法は、以上のような構成からなるので、次のような効果を奏する。
【0021】
すなわち、本発明の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートは、少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層が窓枠パターンで形成されているので、窓枠部分は電波透過性に優れた金属光沢感を呈し、透明窓部はディスプレイ画面の表示に色目変化が生じたり、表示が暗くなったりしないよう視認性を向上させることができる効果がある。
【0022】
また、本発明の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートは、前記金属光沢調意匠層を、易エッチング性誘電体からなる単層の高屈折誘電体層とすることができる。この構成によれば、透明な基体シート上に当該金属光沢調意匠層を全面に形成し、窓枠パターンでエッチングレジスト層を作成し、該エッチングレジスト層で覆われていない部分を酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング除去するという製造方法によって、容易に窓枠パターンで金属光沢調意匠層を形成できる効果がある。
【0023】
また、本発明の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートは、前記金属光沢調意匠層が複数の高屈折誘電体層を積層したものであって、当該複数の高屈折誘電体層のうち前記基体シートに最も近い側の高屈折誘電体層を、易エッチング性誘電体からなるものとすることもできる。この構成によれば、前記基体シートに最も近い側の高屈折誘電体層以外の層がエッチング除去しにくい誘電体からなるものであっても、その下にある易エッチング性誘電体からなる前記高屈折誘電体層ごと除去することにより、容易に窓枠パターンで金属光沢調意匠層を形成できる効果がある。すなわち、この構成によれば、前記基体シートに最も近い側の前記高屈折誘電体層を除くその他の高屈折誘電体層は、エッチング除去しにくいが易エッチング性誘電体より屈折率の高い誘電体を材質として用いることが可能になるため、反射率の高い金属光沢調意匠層を窓枠パターンで得ることができる効果がある。
【0024】
また、本発明の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法は、エッチングレジスト層と隠蔽層をそれぞれ窓枠パターンで形成せずに、隠蔽層にエッチングレジスト層を兼ねさせることもできる。この構成によれば、金属光沢調意匠層の窓枠パターンと隠蔽層の窓枠パターンとの間で見当ズレが生じない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの一実施例を示す模式斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの一実施例を示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの別の一実施例を示す模式断面図である。
【図4】図4は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの別の一実施例を示す模式断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法の一実施例を示す模式断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法の別の一実施例を示す模式断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの別の一実施例を示す模式断面図である。
【図8】図8は、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法の別の一実施例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。
【0027】
以下、図面を参照して本発明における実施形態を詳細に説明する。図1は本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの一実施例を示す模式斜視図、図2は本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの一実施例を示す模式断面図である。
【0028】
図1の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、携帯電話やPDAなどのポータブル情報機器やTVなどの映像機器等の透明窓部5がある装飾に用いられるものである。透明窓部5の周囲には、前記機器の内部構造が見えないように隠蔽する窓枠部3が存在しており、当該窓枠部3は金属光沢感を呈している。
【0029】
本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、層構成として、透明な基体シート7と、前記基体シート7上に窓枠パターンで形成され、少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層30と、前記基体シート7上に前記金属光沢調意匠層30の窓枠パターンと同調するように形成された隠蔽層40とを備えているものであり、前記機器に用いられる際には、前記金属光沢調意匠層30を介して前記隠蔽層40を見ることになる。図2では前記金属光沢調意匠層30が、易エッチング性誘電体からなる単層の高屈折誘電体層10である例(図1のAA線断面)が示されている。前記隠蔽層40は印刷によるため低反射であるが、前記隠蔽層40の前面に高屈折誘電体層10が配置されることで反射する界面が増え、前記隠蔽層40のみのときより反射する割合が大きくなる。反射する割合は、高屈折誘電体層10の屈折率とその下に隣接して形成される層の屈折率との差(すなわち界面での屈折率の差)に依存し、差が大きいほど反射性が向上し、前記窓枠部3は金属光沢感が付与されるようになる。ここで、金属光沢感のある意匠とは、JIS(Z8741:1997 )で準拠された光沢度計(例えば三洋貿易株式会社製のポータブル光沢度計NOVO−GLOSS)を用いて測定した60°光沢度が40以上であるものを指す。
【0030】
本発明の特徴は、前記金属光沢調意匠層30が前記隠蔽層40の窓枠パターンと同調する窓枠パターンで形成され、前記透明窓部5を覆っていないことにある。したがって、ディスプレイ画面の表示に色目変化が生じたり、表示が暗くなったりしないよう前記透明窓部5の視認性を向上させることができる。
【0031】
前記基体シート7の材質としては、ポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シートのほか、セルロース系シートや各種シートの複合体などを使用することができる。前記透明な基体シート7の厚みは10〜200μmの間で適宜設定するとよい。なお、図2においては、前記基体シート7の一方の面に前記金属光沢調意匠層30、前記隠蔽層40の順で積層されているが、これに限定されない。
例えば、前記基体シート7の一方の面に前記隠蔽層40、前記金属光沢調意匠層30の順で積層してもよい、前記基体シート7の一方の面に前記金属光沢調意匠層30、他方の面に前記隠蔽層40を形成することもできる。
【0032】
前記高屈折誘電体層10としては、金属酸化物等からなる層が挙げられ、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成するとよい。ここで本発明でいう高屈折の層とは、固体測定用の屈折率計(例えばアタゴ製、アッペ屈折率計DR−A11)を用いて測定した屈折率が1.7以上の値を示す層のことである。前記高屈折誘電体層3の厚みは5〜100nmの間で適宜設定するとよい。厚さが5nm未満になると反射率が低下しがちになり、厚さが100mを超えるとクラックが発生しやすくなり外観不良により生産性が低下しやすくなるからである。
【0033】
また、前記高屈折誘電体層10の材質は、酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング可能な易エッチング性誘電体からなるものを用いるのが好ましい。なぜなら、当該高屈折誘電体層10を全面的に形成し、窓枠パターンでエッチングレジスト層20を作成し、該エッチングレジスト層20で覆われていない部分を酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング除去するという製造方法により容易にパターン化ができるからである。前記高屈折誘電体層10の材質としてエッチングしにくい誘電体を用いた場合、除去したい部分(透明窓部)の前記金属光沢調意匠層30を十分には除去しにくく、一部が残存してしまうおそれがある。もちろん、酸性またはアルカリ性の強い溶液を用いてエッチング処理すれば除去したい部分を完全に除去することもできるが、その場合、今度は前記基本シート7にダメージを与えるおそれが生じる。前記易エッチング性誘電体としては、具体的には、酸化亜鉛、硫化亜鉛などが挙げられる。
【0034】
前記隠蔽層40の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキッド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキを用いて形成するとよい。また、着色剤としてアルミニウム、チタン、ブロンズ等の金属粒子やマイカに酸化チタンをコーティングしたパール顔料等を用いることもできる。前記隠蔽層40の形成方法は、多色や階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。単色の場合には、スクリーン印刷、又は、グラビアコート法、ロールコート法などのコート法を採用してもよい。
【0035】
また、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、図3に示すように、前記金属光沢調意匠層30を、複数の高屈折誘電体層を積層したものであって、当該複数の高屈折誘電体層のうち、前記基体シート7に最も近い側の高屈折誘電体層10が易エッチング性誘電体からなるものとしてもよい。
【0036】
この場合、前記基体シート7に最も近い側の前記高屈折誘電体層10を除くその他の高屈折誘電体層14は、酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング可能な材質にこだわることなく、前記高屈折誘電体層10よりもエッチングしにくい材質を選定し、前記高屈折誘電体層10と同様の方法にて形成することができる。なぜなら、前記高屈折誘電体層14がエッチングしにくい誘電体からなる場合であっても、前記基体シート7側の前記高屈折誘電体層10が酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング可能な易エッチング性誘電体からなっているので、前記基体シート7上に前記高屈折誘電体層10および14を全面的に形成した後、窓枠パターンでエッチングレジスト層20を形成し、該エッチングレジスト層20で覆われていない部分を酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング除去するということにより、その他の前記高屈折誘体層14も易エッチング性誘電体からなる前記高屈折誘電体層10と一緒にエッチング除去されるからである。
【0037】
また、前記基体シート7に最も近い側の前記高屈折誘電体層10を除くその他の高屈折誘電体層14は、エッチング除去しにくいが易エッチング性誘電体より屈折率の高い誘電体を材質として用いることが可能になるため、反射率の高い金属光沢調意匠層を窓枠パターンで得ることができる。
【0038】
前記エッチングしにくい誘電体としては、具体的には、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化タンタルなどが挙げられる。その他の前記高屈折の誘電体層14の厚みも前記基体シート7に最も近い側の前記高屈折誘電体層10と同様の理由により5〜100nmの間で適宜設定するとよい。
【0039】
また、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、図4に示すように、この複数の高屈折誘電体層の間に挟まれる構造で低屈折誘電体層12が含まれていてもよい。ここで本発明でいう低屈折の層とは、前記した方法で測定した屈折率が1.6未満の値を示す層のことである。高屈折誘電体層10、14の間に構造で低屈折の誘電体層12が挟まれることで、低屈折誘電体層12と高屈折誘電体層10、14との界面での反射が増え、低屈折誘電体層12を形成しない場合よりも反射する割合が大きくなるため、さらに光沢度が増幅される。
【0040】
前記低屈折の誘電体層12も、酸性またはアルカリ性の溶液でもってエッチング可能な材質にこだわることなく、光沢度等を向上させる屈折率ができるだけ低い材質を選定するとよい。具体的には、酸化ケイ素などが挙げられる。前記低屈折の誘電体層12も、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、鍍金法などで形成するとよい。
【0041】
なお、エッチングレジストのみを目的とする前記エッチングレジスト層20は、曇りの原因となることから、エッチング後に溶剤に浸漬することにより除去するのが好ましい(図2〜図6参照)。また、エッチングレジスト層に着色材を混ぜて、エッチングレジストを兼用する隠蔽層50としてもよい(図7参照)。
【0042】
なお、本発明では、図示したものよりさらに多くの誘電体層が形成されている構成でもよい。また、一部高屈折誘電体層が連続して積層されている構成でもよいし、一部低屈折誘電体層が連続して積層されている構成でもよい。
【0043】
次に、本発明に係る金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法の実施形態について述べる。
【0044】
前記した金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、前記基体シート7上に少なくとも1層の前記高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層30を全面的に形成する工程(図5(a)参照)と、前記金属光沢調意匠層30の前記基体シート7とは反対側の面上に窓枠パターンで前記エッチングレジスト層20を形成する工程(図5(b)参照)と、前記金属光沢調意匠層30の前記エッチングレジスト層20で覆われていない部分をエッチング除去する工程(図5(c)参照)と、前記基体シート7上に前記金属光沢調意匠層30の窓枠パターンと同調するように形成された隠蔽層40を形成する工程(図6(d)及び(e)参照)とを備えた製造方法により得ることができる。この場合、前記金属光沢調意匠層30の形成工程、前記エッチングレジスト層20の形成工程、前記金属光沢調意匠層30のエッチング工程を順次経た後に、パターン化された前記金属光沢調意匠層30上に窓枠パターンで前記隠蔽層40を形成することもできるし(図5参照)、あらかじめ前記基体シート7上に窓枠パターンで前記隠蔽層40を形成しておき、その後に当該隠蔽層40を形成した面上に前記金属光沢調意匠層30を形成し、次いで前記エッチングレジスト層20の形成工程、前記金属光沢調意匠層30のエッチング工程を順次行なうこともできる。また、前記隠蔽層40を前記基体シート7の前記金属光沢調意匠層30を形成する面とは反対側に形成するのであれば、当該隠蔽層40を形成する工程はいつ行なってもよい。さらに、上述のパターン化された前記金属光沢調意匠層30上に前記隠蔽層40を形成する場合、当該隠蔽層40を直接形成する他に、前記基体シート7と同様の材料からなる透明なシート上に前記隠蔽層40を形成したものを貼付けてもよい。
【0045】
また、隠蔽層は、エッチングレジストを兼ねていてもよい。すなわち、前記した金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート1は、前記基体シート7上に少なくとも1層の前記高屈折誘電体層を含む前記金属光沢調意匠層30を全面的に形成する工程(図6(a)参照)と、前記金属光沢調意匠層30の前記基体シート7とは反対側の面上に窓枠パターンでエッチングレジストを兼ねた隠蔽層50を形成する工程(図6(b)参照)と、前記金属光沢調意匠層30の前記隠蔽層50で覆われていない部分をエッチング除去する工程(図6(c)参照)とを備えた製造方法により得る。隠蔽層にエッチングレジスト層を兼ねさせることにより、金属光沢調意匠層の窓枠パターンと隠蔽層の窓枠パターンとの間で見当ズレが生じない効果がある。なお、この場合、当該隠蔽層50は、前記金属光沢調意匠層30を備えた前記基体シート7への直接形成に限定される。
【0046】
また、前述の記載では、前記金属光沢調意匠層30のパターン化の方法として酸性またはアルカリ性の溶液によるエッチング除去による方法についてのみ述べているが、これ以外の方法、例えば、前記基体シート7上に窓部パターンの水溶性インキ層22を設けて置き(図8(a)参照)、その上に前記金属光沢調意匠層30を全面形成した後(図8(b)参照)、水洗により透明窓部5の前記金属光沢調意匠層30を除去する方法(図8(c)参照)などで形成してもよい。
【0047】
水溶性インキ層22の材質としては、ポリビニルアルコール、アクリル、ウレタンなどの樹脂バインダーに体質顔料が添加された材料が挙げられ、グラビア、オフセット、スクリーンなどの汎用の印刷方法にて形成するとよい。水溶性インキ層22の厚みは、0.2〜10μmの間で適宜設定すればよい。
【実施例1】
【0048】
基体シートとして厚さ38μmの透明ポリエステル樹脂フィルムを用い、基体シート上に、スパッタリング法にて厚さ30nmの酸化亜鉛からなる高屈折誘電体層(屈折率2.1)を形成した。次に、該誘電体層の表面上にアクリル系樹脂からなるグレー色のエッチングレジストを兼ねた隠蔽層をスクリーン印刷法にて厚さ2μmで窓枠パターンに形成した後、1N−硫酸水溶液に1分間浸し、前記高屈折誘電体層のエッチングレジストを兼ねた前記隠蔽層が形成されていない部分をエッチング除去して、金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートを得た。
【実施例2】
【0049】
基体シートとして厚さ38μmの透明ポリエステル樹脂フィルムを用い、基体シート上に、スパッタリング法にて厚さ15nmの酸化亜鉛からなる高屈折誘電体層(屈折率2.1)を形成した後、その表面上にスパッタリング法にて厚さ25nmの酸化チタンからなる高屈折誘電体層(屈折率2.3)を形成した。次に、該酸化チタン誘電体層の表面上にウレタン系樹脂からなる白色のエッチングレジストを兼ねた隠蔽層をスクリーン印刷法にて厚さ2μmで窓枠パターンに形成した後、1N−硫酸水溶液に1分間浸し、前記誘電体層のエッチングレジストを兼ねた前記隠蔽層が形成されていない部分をエッチング除去して、透明窓枠パターンの誘電体意匠膜シートを得た。
【実施例3】
【0050】
前記酸化亜鉛からなる高屈折誘電体層(屈折率2.1)の形成と前記酸化チタンからなる高屈折誘電体層(屈折率2.3)の形成の間に、スパッタリング法にて厚さ50nmの酸化ケイ素からなる低屈折誘電体層(屈折率1.5)を形成したこと以外、実施例2と同様にした。
【0051】
得られた実施例1〜3の透明窓枠パターンの誘電体意匠膜シートの窓枠部は、前述の光沢度計を用いて測定した60°光沢度がいずれも50以上であり充分に金属光沢感を呈しており、電波透過性はほぼ100%であることが確認できた。しかも、各構成において前述した効果をそれぞれ奏するものであった。
【0052】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0053】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、携帯電話やPDAなどのポータブル情報機器やTVなどの映像機器等の装飾にことができ、産業上有用なものである。
【符号の説明】
【0055】
1 金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート
3 窓枠部
5 透明窓部
7 基体シート
10 高屈折誘電体層
12 高屈折誘電体層間に挟まれた低屈折誘電体層
14 高屈折誘電体層10以外の高屈折誘電体層
20 エッチングレジスト層
30 金属光沢調意匠層
40 隠蔽層
50 隠蔽層(レジスト兼用)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な基体シートと、
前記基体シート上に窓枠パターンで形成され、少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層と、
前記基体シート上に前記金属光沢調意匠層の窓枠パターンと同調するように形成された隠蔽層と、
を備えた金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート。
【請求項2】
前記金属光沢調意匠層が、易エッチング性誘電体からなる単層の高屈折誘電体層である請求項1記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート。
【請求項3】
前記易エッチング性誘電体が、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものである請求項2に記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート。
【請求項4】
前記金属光沢調意匠層が、複数の高屈折誘電体層を積層したものであって、当該複数の高屈折誘電体層のうち、前記基体シートに最も近い側の高屈折誘電体層が易エッチング性誘電体からなるものである請求項1に記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート。
【請求項5】
前記易エッチング性誘電体が、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものであり、その他の高屈折誘電体層に用いる誘電体が酸化チタン、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化タンタルから選ばれるものである請求項4に記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シート。
【請求項6】
透明な基体シート上に少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層を全面的に形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記基体シートとは反対側の面上に窓枠パターンでエッチングレジスト層を形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記エッチングレジスト層で覆われていない部分をエッチング除去する工程と、
前記基体シート上に前記金属光沢調意匠層の窓枠パターンと同調するように形成された隠蔽層を形成する工程と、
を備えた金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法。
【請求項7】
透明な基体シート上に少なくとも1層の高屈折誘電体層を含む金属光沢調意匠層を全面的に形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記基体シートとは反対側の面上に窓枠パターンでエッチングレジストを兼ねた隠蔽層を形成する工程と、
前記金属光沢調意匠層の前記隠蔽層で覆われていない部分をエッチング除去する工程と、
を備えた金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法。
【請求項8】
前記金属光沢調意匠層を、易エッチング性誘電体からなる単層の高屈折誘電体層で形成する請求項6又は請求項7のいずれかに記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法。
【請求項9】
前記易エッチング性誘電体として、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものを用いる請求項8に記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法。
【請求項10】
前記金属光沢調意匠層を、複数の高屈折誘電体層を積層して形成し、当該複数の高屈折誘電体層のうち、前記基体シートに最も近い側の高屈折誘電体層に易エッチング性誘電体を用いる請求項6又は請求項7のいずれかに記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法。
【請求項11】
前記易エッチング性誘電体として、酸化亜鉛、硫化亜鉛から選ばれるものを用い、その他の高屈折誘電体層に酸化チタン、酸化ニオブ、酸化セレン、酸化タンタルから選ばれる誘電体を用いる請求項10に記載の金属光沢調窓枠柄を有する意匠シートの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−173090(P2010−173090A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15288(P2009−15288)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】