説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】 面実装型フィルムコンデンサは、基板実装時の基板たわみや基板実装後の基板分割等の機械的な外部応力に緩和のため、メタリコン端面電極の表面に板状端子を設ける場合があるが、パラレルギャップ電極により板状端子の接続部を一定時間通電し、電極間の接続部を発熱させてメタリコン端面電極のメタリコン金属を溶融させ、電極間の接続部を溶融金属内に押し込み、メタリコン金属で接続部を鋳包むことで接合させると、メタリコン金属が溶融に至る前に下地である金属化フィルムの端面が熱損傷し、tanδ不良または溶接不良となる問題があった。【解決手段】 端面電極を融点が400℃以上の、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層にし、この板状端子の表面に、融点が400℃以下の板状端子めっき層を設け、前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極と前記板状端子めっき層との接合部分と、を両方設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化フィルムを巻回または積層し、その端面に金属溶射によりメタリコン端面電極を形成した面実装型フィルムコンデンサに関するものである。特に、アルミニウムを蒸着したフィルムを使用した、240℃以上のリフロー耐熱性を有するフィルムコンデンサのメタリコン端面電極上に板状端子を接合するフィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の面実装型フィルムコンデンサは、プラスチックフィルムの片面に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回または積層し、その両端面に金属溶射して、単一層もしくは複数層のメタリコン端面電極層を形成し、さらにめっき層を形成していた。 しかしながら、外層がめっきのみの端面電極では、基板実装時の基板たわみや基板実装後の基板分割等の機械的な外部応力に起因して、下地メタリコンと最外層メタリコンの界面またはメタリコン内部において、電極剥離(クラック)が発生する問題があった。
【0003】
この問題を解決するため、端面電極の表面に板状端子を設けた、たとえば、特開2000-58369公報には、プラスチックフィルムの片面に金属を蒸着した金属化フィルムを巻回または積層し、その両端面に金属溶射して単一層もしくは複数層のメタリコン端面層を形成し、その上に、上下部に折り曲げ部を有し、折り曲げ部で素子を挟み込んだ構造であって、さらに複数の開口部により形成された帯状部を有する板状端子を配置し、図4に示すように、パラレルギャップ電極10により帯状部9を一定時間通電し、電極間の帯状部を発熱させてメタリコン端面層12のメタリコン金属を溶融させ、電極間の帯状部を溶融金属内に押し込み、メタリコン金属で帯状部を鋳包むことで接合されていた。
板状端子3と接合するメタリコン端面層12の最外層としては、下地である金属化フィルムの、溶接時の耐熱劣化抑制のために、低融点である錫系合金、たとえば、錫80wt%以上、残銅、亜鉛からなる合金(たとえば、特開2000-58369公報)や、鉛系合金、たとえば、鉛が95wt%以上の鉛-錫合金が使用されていた。
【0004】
【特許文献1】特開2000-58369公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、錫系合金の融点は高くとも230℃前後であり、最近のROHS規制に代表される環境問題から導入される鉛フリーはんだでの実装で想定される240℃以上の高温リフローにおいて、溶接部の最外層メタリコンが溶融し、tanδの増加および短絡不良が発生する問題があった。鉛系合金ではこのような問題は発生しないが、ROHS規制に代表される環境問題から、鉛フリー化が進んでおり、使用できない状況にある。
また、最外層メタリコン金属を、金属化フィルムの耐熱温度以上の、融点の材質にすると、従来の溶接方式では局所的ではあるがメタリコン金属を溶融させるため、最外層メタリコン金属が溶融に至る前に下地である金属化フィルムの端面が熱損傷し、tanδ不良または溶接不良となる問題があった。
この金属化フィルムの耐熱劣化を抑制するために局所的に短時間の加熱で溶接すると、最外層メタリコン電極と板状端子間の接合強度を確保する必要が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、 端面電極と、前記端面電極の表面に設けた板状端子と、を設けた金属化フィルムコンデンサにおいて、前記端面電極は、融点が400℃以上で、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層からなり、前記板状端子の表面に、融点が400℃以下の板状端子めっき層を設けていて、前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極と前記板状端子めっき層との接合部分と、を設けていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサを提供するものである。
また、端面電極と、前記端面電極の表面に設けた板状端子と、を設けた金属化フィルムコンデンサにおいて、前記端面電極は、融点が400℃以上で、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層からなり、表面には融点が400℃以下の端面電極めっき層を設けていて、前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極めっき層と前記板状端子との接合部分と、を設けていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサを提供するものである。
また、端面電極と、前記端面電極の表面に設けた板状端子と、を設けた金属化フィルムコンデンサにおいて、前記端面電極は、融点が400℃以上で、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層からなり、表面には融点が400℃以下の端面電極めっき層を設けていて、前記板状端子の表面に、融点が400℃以下の板状端子めっき層を設けていて、前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極めっき層と前記板状端子めっき層との接合部分と、を設けていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、端面電極と板状端子とを接合するのに、端面電極を溶融させない短時間の局所的な通電加熱で溶接することができるので、温度上昇を低減し、したがって、下地である金属化フィルムの熱損傷を抑制することができる。
さらに、接合点において、融点が400℃以下の板状端子めっき層と端面電極めっき層とが排出され、端面電極と板状端子が直接接合されており、さらに、その接合点周辺において、排出された融点が400℃以下の板状端子めっき層が端面電極と、または400℃以下の端面電極めっき層が板状端子と、または400℃以下の板状端子めっき層と端面電極めっき層が接合している接合界面構造のため、端面電極と板状端子間の接続信頼性を高めることができ、240℃以上の高いリフロー耐熱性と使用時の高い接続信頼性とを兼ね備える金属化フィルムコンデンサが得られ、産業上の効果大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明に係る金属化フィルムコンデンサで、図1(a)は、斜視図、図1(b)は、断面図を示している。
図1(a)において、1は素子で、2はその両端に設けた端面電極であり、3はその端面電極2の外側には設けた板状端子を示している。
【0009】
図1(b)において、素子1は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルフォン)等の高耐熱フィルムに主にアルミニウムを蒸着して金属薄膜を形成した金属化フィルムを2枚、互いにずらして積層して巻回し、最外周にシール用フィルムを巻きつけたものである。
【0010】
端面電極2は、融点が400℃以上で、メタリコン層4、またはメタリコン層4とめっき層5からなる。
メタリコン層4は、第1メタリコン層4aと第2のメタリコン層4bからなる。
第1メタリコン層4aは、素子1の端面に積層し、蒸着されたアルミニウム薄膜に直接接続したものであり、この蒸着薄膜と同じアルミニウムを80%以上含み、珪素を3%以上含む金属からなる。
第2のメタリコン層4bは、この第1のメタリコン層4aに積層しためっきがのりやすい金属、たとえば黄銅などからなり、表面を研磨している。
メタリコン層4が、一層の場合は、めっきがのりやすい金属、たとえば黄銅などからなり、表面を研磨している。めっき層5は、メタリコン層4に積層した、主にニッケルまたは銅からなる。
【0011】
6は、端面電極めっき層で、融点が400℃以下であり、端面電極2表面に積層した主に錫などからなるが、必ずしも必要であるわけではないが、コストの許す範囲で設けることが好ましい。
【0012】
板状端子3は、端面電極2の外側に設けたもので、材質がたとえば鉄材のSPCC、硬度HV120、板厚0.09〜0.13mm程度の板状端子基材3aか、または板状端子基材3aとその表面に融点が400℃以上の金属、たとえば厚さ2μmのニッケルまたは銅の中間めっき層3bを設ける場合もある。そして、板状端子3の内面、外面または両面表面には、3μm以下の、融点が400℃以下の金属、たとえばSn等からなる板状端子めっき層7が必要に応じて形成されている場合がある。
板状端子3の構造は、単に平面かまたは上下部片面もしくは両面に折り曲げ部を有していて、さらに、図2に示すように、複数の開口部8により形成された帯状部9を有する。
【0013】
端面電極2と板状端子3との接続は、図2に示すように、板状端子3の帯状部9の中央部分を抵抗溶接することにより行われる。一般的なパラレルギャップ電極10を使用し、電極の一方をメタリコン上に形成されためっき層に押し当て、もう一方を上記帯状部9に押し当て、メタリコン層/めっき層をバイパス電極として、メタリコン層/めっき層表面と板状端子3の帯状部9間を溶接する方式が、設備上の改変が少なく簡便であり、短時間の局所的な通電加熱で温度上昇を低減する。したがって、それと接触する金属化フィルムの熱損傷を抑制する。
さらに、図3の断面図に示すように、その接合界面構造は、接合点13において、融点が400℃以下の板状端子めっき層7と端面電極めっき層6とが排出され、端面電極2(メタリコン層4だけのときはメタリコン層4、またはめっき層5があればめっき層5)と板状端子3(板状端子基材3aだけのときは板状端子基材3a、または中間めっき層3bがあれば中間めっき層3b)が直接接合されており、さらに、その接合点13周辺において、排出された融点が400℃以下の板状端子めっき層7が端面電極2と、または400℃以下の端面電極めっき層6が板状端子3と、または400℃以下の板状端子めっき層7と端面電極めっき層6とが接合している。
接合点13は、一箇所でもかまわないが、数箇所あってもかまわない。
【実施例1】
【0014】
先ず、金属化フィルム2枚を互いにずらして積層して巻回し、最外周にシール用フィルムを巻きつけて素子を形成する。素子を形成後、1.2φのアルミニウム合金線(Al-12wt%Si)を用い、電気アーク溶射法によって、素子の端面に第1のメタリコン層を約15μmの厚さに形成する。第1層メタリコン溶射後、1.3φの黄銅線を用い、第1のメタリコン層の表面に第2のメタリコン層を約35μmの厚さで形成する。第2のメタリコン層を形成後、余剰のメタリコンを取り除いた後に、素子をエポキシ樹脂に浸漬して真空加圧含浸し、余剰なエポキシ樹脂を除去後、温度約120℃で3Hrほどに加熱して仮硬化し、さらに本硬化する。その後に、前記第2メタリコン層の表面を平坦に切削研磨する。研磨後、ニッケルを電気めっき法により、厚さ10μm程度のめっき層を形成する。
次いで、前記コンデンサ素子の端面電極の表面上に、表面に錫を5μm程度めっきして板状端子めっき層を設けた、上下に二つの開口部を有するSPCC板状端子を用い、パラレルギャップ溶接電極の隙間を約4mmに設定後、前記溶接電極を板状端子中央部の帯状部に、対極側の溶接電極を前記端面電極上に配置し、電極荷重1.5kgf、溶接電流600Aにて短時間の局所的な加熱により抵抗溶接を行い、前記めっき層あるいは前記第2メタリコン層と、板状端子の中間めっき層あるいは板状端子基材とを溶接部において、接合する。
【実施例2】
【0015】
実施例1と同様に、素子、端面電極を形成する。その表面に錫を5μm程度めっきし、端面電極めっき層を形成する。次いで、実施例1の内、板状端子基材を板状端子めっき層のない無垢のものとし、あとは実施例1と同様のプロセスで製作した。
【実施例3】
【0016】
実施例1と同様に、素子、端面電極を形成する。その表面に錫を5μm程度めっきし、端面電極めっき層を形成する。次いで、その後は実施例1と同様のプロセスで製作した。
【0017】
実施例1の内、板状端子基材を板状端子めっき層のない無垢のものとし、あとは実施例1と同様のプロセスで製作(比較例1)し、実施例と抵抗溶接部の接合強度を引っ張り試験し、比較した結果を図5に示す。本発明は溶接点周辺において、排出された低融点金属(錫)が端面電極と板状端子との接合に寄与することで、接合強度が向上している。
また、第1層メタリコンを溶射後、錫95wt%、亜鉛3 wt%、銅2wt%(融点温度約320℃)からなる1.6φの合金線を用い、第1のメタリコン層2の表面に第2のメタリコン層3を約35μmの厚さで形成することと、パラレルギャップ電極により帯状部を通電し、電極間の帯状部を発熱させてメタリコン端面層のメタリコン金属を溶融させ、電極間の帯状部を溶融金属内に押し込み、メタリコン金属で帯状部を鋳包むことで接合する以外実施例1と同様に製作したもの(比較例2)と実施例1を、
予熱150℃〜180℃で2分以上、本加熱230℃以上10秒、ピーク温度240℃のリフロープロファイルと予熱150℃〜180℃で2分以上、本加熱240℃以上10秒、ピーク温度250℃のリフロープロファイルの熱風リフロー炉で、Sn-3wt%Ag-0.3wt%Cuはんだを用いて、基板に実装し、計2回リフローした前後のtanδおよび絶縁抵抗値、さらに絶縁破壊電圧を比較した結果、表1に示すように、実施例1は静電容量、絶縁抵抗の著しい低下およびtanδの増加もなく、リフロー耐熱性が改善される。
なお、本実施例ではリフロー温度の測定には、サンプルと同じ構成の製品を用い、電極面に高温はんだで熱電対を固定し、さらに、高温はんだをランドにも接続し、熱風の充分に流れた条件で温度測定し、リフロープロファイルを検証した。
【0018】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るフィルムコンデンサの斜視図および断面図である。
【図2】本発明に係る溶接方法を示した図である。
【図3】本発明に係るフィルムコンデンサの端面電極と板状端子の溶接部断面図である。
【図4】従来例に係る溶接方法を示した図である。
【図5】本発明と比較例1における溶接強度比較試験結果である。
【符号の説明】
【0020】
1…素子、2…端面電極、3…板状端子、3a…板状端子基材、3b…中間めっき層、4…メタリコン層、4a…第1メタリコン層、4b…第2メタリコン層、5…めっき層、6…端面電極めっき層、7…板状端子めっき層、8…開口部、9…帯状部、10…パラレルギャップ電極、11…パラレルギャップ電極押し当て部、12…メタリコン端面層、13…接合点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面電極と、前記端面電極の表面に設けた板状端子と、を設けた金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記端面電極は、融点が400℃以上で、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層からなり、
前記板状端子の表面に、融点が400℃以下の板状端子めっき層を設けていて、
前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極と前記板状端子めっき層との接合部分と、を設けていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
端面電極と、前記端面電極の表面に設けた板状端子と、を設けた金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記端面電極は、融点が400℃以上で、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層からなり、表面には融点が400℃以下の端面電極めっき層を設けていて、
前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極めっき層と前記板状端子との接合部分と、を設けていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
端面電極と、前記端面電極の表面に設けた板状端子と、を設けた金属化フィルムコンデンサにおいて、
前記端面電極は、融点が400℃以上で、メタリコン層またはメタリコン層とめっき層からなり、表面には融点が400℃以下の端面電極めっき層を設けていて、
前記板状端子の表面に、融点が400℃以下の板状端子めっき層を設けていて、
前記端面電極と前記板状端子との接合部分と、前記端面電極めっき層と前記板状端子めっき層との接合部分と、を設けていることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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