説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】 プラスチックフィルムに金属薄膜を成形した金属化フィルムを重ね巻回し、巻き止めとしてヒートシールをした後、コンデンサ素子をプレスして偏平素子にする際、プレス面にヒートシールヘッドによる凹凸の跡があると、その凹凸部がプレスにより内部の積層体にまで波及して、その結果、積層体に歪またはしわが発生していた。この歪またはしわの発生により、交流成分の電圧印加によりうなり音増加や耐圧低下を招き、コンデンサ性能を低下させてしまう。
【解決手段】 プラスチックフィルムに金属薄膜を成形した金属化フィルムを重ね巻回し、巻き止め部をヒートシールした後、コンデンサ素子をプレスして曲線部分と平坦部分に偏平化した金属化フィルムコンデンサにおいて、前記フィルムの巻き止め部を前記曲線部分に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,金属化フィルムコンデンサに関する。特に、収容率に優位なフィルムコンデンサの偏平素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偏平素子からなる金属化フィルムコンデンサを製造する場合、金属蒸着フィルムを一対の半円柱形で構成される巻取り機の巻芯シャフト等により、このフィルムの端部をはさみこんで巻きつけ、この巻芯シャフトから素子を抜き取り後、ある程度作りためてから別工程でコンデンサ素子をプレスしてから固定具で固定しながら加熱するか、加熱しながらコンデンサ素子をプレスして偏平素子を得ていた(たとえば、特開2000−12371公報の従来の技術、図4)。次に端面に金属を溶射するメタリコンにより、電極引き出し部を設けていた。
【特許文献1】特開2000−12371公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチックフィルムに金属薄膜を成形した金属化フィルムを重ね巻回し、巻き止めとしてヒートシールをした後、コンデンサ素子をプレスして偏平素子にする際、プレス面にヒートシールヘッドによる凹凸の跡があると、その凹凸部がプレスにより内部の積層体にまで波及してその結果、積層体に歪またはしわが発生していた。この歪またはしわの発生により、交流成分の電圧印加によりうなり音増加や耐圧低下を招き、コンデンサ性能を低下させてしまう。
【0004】
本発明は、以上の欠点を改良し、信頼性の高い金属化フィルムコンデンサ用の偏平素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を改善するために、プラスチックフィルムに金属薄膜を成形した金属化フィルムを重ね巻回し、巻き止め部をヒートシールした後、コンデンサ素子をプレスして曲線部分と平坦部分に偏平化した金属化フィルムコンデンサにおいて、前記フィルムの巻き止め部を前記曲線部分に設けることを特徴とする金属化フィルムコンデンサを提供するものである。

【発明の効果】
【0006】
以上の通り本発明によれば、ヒートシールヘッドによる凹凸の跡があるフィルムの巻き止め端部を曲線部分に位置決めすることにより、素子を偏平化するときに、そのフィルムの巻き止め端部をプレス面から避ける。そのためその部分が内部の積層体にその凹凸部が波及することもなく、積層体に発生していた歪またはしわを防止できる。この歪またはしわの防止により、うなり音増加や耐圧低下を招く問題を解決し、信頼性の高いフィルムコンデンサ用の偏平素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、フィルムコンデンサ用素子の巻取り前の概略断面図を示している。
1は、先巻フィルムで、フィルムコンデンサ素子の巻芯となる6μmから25μm程度の厚さのフィルムである。
2は、プラスチックフィルムに金属薄膜を成形した金属化フィルムで、先巻フィルム1の後に巻かれる。蒸着などにより設けた金属薄膜3が積層していて、コンデンサの耐圧に適合して選定した1μmから10μm程度の厚さのフィルムで、幅方向に0.5mmから3mm程度ずらして2枚のフィルムを積層して巻かれる。金属化フィルム2の少なくとも片方のフィルムの少なくとも片方の端部をいわゆるバーンオフ4して金属薄膜3を除去しておくことや、2枚のうち、一方の金属化フィルムの長さを変えることにより、金属化フィルム2間のショートを防止することができる。
5は、後巻フィルムで、金属化フィルム2の後に巻かれる10μmから25μm程度の厚さのフィルムである。先巻フィルム1と後巻フィルム5は、金属化フィルム2のバーンオフ4部分で代用してもかまわない。
フィルムコンデンサ用素子は、円筒形に巻取り後、後巻フィルム5の最後の部分で、外側からヒートシールヘッド7を押し当て、巻き止めする。巻回積層された後巻フィルム5を互いに熱溶融(ヒートシール)することにより巻取りが固定される。ヒートシールヘッド7は、たとえば底面の一辺が1mmから4mm程度の四角錐を間欠的に一列に並べたようなものまたは底面の一辺が0.3mmから6mm程度の線状を間欠的に一列に並べたようなものを使用する。最後に巻き止め部分より先の部分と分離する。
【0008】
図2は、本発明の、フィルムコンデンサ用素子の巻取り後、コンデンサ素子をプレスした後の概略断面図を示している。
図2(a)は、全体図、図2(b)は、巻き止め部分の拡大図を90度時計と反対方向に回転して示している。
フィルムコンデンサ用素子は、円筒形に巻取り後、巻き止め部分を外側からヒートシールヘッド7を押し当て、巻回積層された後巻フィルム5を互いに熱溶融(ヒートシール)することにより巻取りが固定されるが、このとき、このヒートシールヘッドは、後巻フィルムを押しのけるようにヒートシールされるので、後巻フィルムにはヒートシールヘッドによる凹部とその周りには凸が形成される。また、金属化フィルム2までこの変形が及ばないように後巻フィルムの巻回を重ね積層する。
次に、コンデンサ素子をプレスして曲線部分と平坦部分に偏平化するときに、フィルムの巻き止め部であるヒートシール部6を前記曲線部分に設ける。このように曲線部分に設けることにより、ヒートシール部6がプレスにより押しつけられることから免れる。
【0009】
ところで、比較例として図3(a)に示すように、コンデンサ素子をプレスして曲線部分と平坦部分に偏平化するときに、フィルムの巻き止め部であるヒートシール部6を前記平坦部分に設け、プレスすると、図3(b)の巻き止め部分の拡大図に示すように、ヒートシール部6の段差により金属化フィルム2と金属薄膜3が屈曲し、積層体に歪またはしわ8が発生することを示している。
この段差により特に金属化フィルム2にストレスがかかりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】フィルムコンデンサ用素子の巻取り前の概略断面図を示す。
【図2】本発明の実施形態の概略断面図と拡大部分断面図を示す。
【図3】比較例の概略断面図と拡大部分断面図を示す。
【符号の説明】
【0011】
1…先巻フィルム、2…金属化フィルム、3…金属薄膜、4…バーンオフ、5…後巻フィルム、
6…ヒートシール部、7…ヒートシールヘッド、8…歪またはしわ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムに金属薄膜を成形した金属化フィルムを重ね巻回し、巻き止めとしてヒートシールをした後、コンデンサ素子をプレスして曲線部分と平坦部分に偏平化した金属化フィルムコンデンサにおいて、前記フィルムの巻き止め部が、前記曲線部分にあることを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−220720(P2007−220720A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36477(P2006−36477)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(000233000)日立エーアイシー株式会社 (153)
【Fターム(参考)】