説明

金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法

【課題】径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、且つ保存性に優れた金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nmであり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、
該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.0倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、ことを特徴とする金属化合物のコロイド溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物や金属塩などの金属化合物は触媒など様々な用途に用いられている。このような金属化合物においては、近年、その機能を十分に発揮させたり、バルク体にはない機能を発揮させたりするためにナノサイズ化が図られている。
【0003】
例えば、特開2008−19106号公報(特許文献1)には、金属イオンを含有する水溶液に水溶性アミンを添加し、水溶液のpHを4以上にすることによって一次粒子径がナノメートルオーダーの金属酸化物粒子の製造する方法が開示されている。さらに、高分子保護剤を共存させて製造することにより金属酸化物粒子を水へ高分散させることが可能であることも開示されている。
【0004】
しかしながら、セリウムイオン、ジルコニウムイオンおよびイットリウムイオンを含有する水溶液にジエタノールアミンおよびポリエチレングリコールを添加した後、得られた溶液に硝酸を添加してpH3に調整し、さらに超音波処理を施しても、得られた凝集体の粒子径はサブミクロンオーダーと大きく、さらにコロイド溶液の保存性も十分なものではなかった。
【特許文献1】特開2008−19106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、且つ保存性に優れた金属化合物のコロイド溶液およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、金属化合物の原料である金属イオンおよび所定の分子量のポリアルキレンイミンを含有する2種類以上の原料溶液を、反応場に高い剪断力を付与しないように均質混合することにより、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の金属化合物のコロイド溶液は、粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nmであり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.0倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、ことを特徴とするものである。このようなコロイド溶液において、前記ポリアルキレンイミンの含有量は前記金属化合物の結晶子の単位表面積に対して10〜35mg/mであることが好ましい。
【0008】
本発明のコロイド溶液は、2種類以上の原料溶液を混合して金属化合物のコロイド溶液を製造する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを含有するものであり、7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合し、溶液のpHを1.0〜6.0に調整する方法によって製造することが好ましい。
【0009】
このようなコロイド溶液の製造方法においては、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属イオンを含有するものを使用し、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものを使用することが好ましく、前記金属イオンを含有する原料溶液が前記金属化合物の原料である金属の塩を含む溶液であり、前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液がさらに中和剤を含むものであることがより好ましい。また、前記金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.005〜0.5mol/Lであることが好ましい。
【0010】
なお、本発明によって、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散したコロイド溶液が得られる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、金属化合物結晶子などのナノ粒子は水などの水性溶液中では凝集しやすく、通常、分散剤を添加してナノ粒子に吸着させて凝集を抑制している。本発明に用いられるポリアルキレンイミンもナノ粒子に吸着して凝集を抑制するものと推察される。このとき、反応場に高い剪断力を付与すると粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、高い剪断力によってポリアルキレンイミンが破壊されるため、ナノ粒子に破壊されたポリアルキレンイミンが吸着しても十分な斥力を付与することができず、ナノ粒子やその凝集体が凝集するためであると推察される。
【0011】
また、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加した場合にも粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。これは、金属化合物を生成させるために添加したジエタノールアミンが、生成した金属化合物粒子に吸着してポリエチレングリコールの吸着を阻害するため、ポリエチレングリコールによる凝集抑制効果が十分に発揮されず、また、ジエタノールアミンが金属化合物粒子に吸着しても十分な立体障害斥力が作用せず、ジエタノールアミンによる凝集抑制効果も十分に発揮されないためであると推察される。また、ポリエチレングリコールの吸着量が少なく斥力の作用が小さいため、コロイド溶液の保存中に凝集体がさらに凝集して分散性が低下するものと推察される。
【0012】
一方、本発明の製造方法においては、所定の分子量のポリアルキレンイミンを添加し、反応場に高い剪断力を付与しないようにしているため、ポリアルキレンイミンが破壊されずにナノ粒子に吸着し、ナノ粒子に十分な斥力が付与され、ナノ粒子は、そのままの状態、または粒子径が比較的小さい凝集体の状態でコロイド溶液中に存在するものと推察される。また、ポリアルキレンイミンはコロイド溶液中で安定に存在するため、粒子径が大きな凝集体が形成されにくく、ナノ粒子は、そのままの状態、または粒子径が比較的小さい凝集体の状態でコロイド溶液中で安定に分散しているものと推察される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、径が小さく均一な金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、且つ保存性に優れた金属化合物のコロイド溶液を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0015】
先ず、本発明の金属化合物のコロイド溶液について説明する。本発明の金属化合物のコロイド溶液は、粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nmであり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.0倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体であることを特徴とするものである。
【0016】
本発明において、金属化合物の結晶子の粒度分布は、例えば、金属化合物の透過型電子顕微鏡観察において50個の金属化合物結晶子を抽出して結晶子径を直接測定することによって求めることができる。本発明のコロイド溶液に含まれる金属化合物の結晶子は、このようにして測定された粒度分布において累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nm(好ましくは0.8〜2.0nm)であり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下(好ましくは1.3倍以下)のものである。このような結晶子径d50およびd90を有する金属化合物結晶子は比表面積が大きく、例えば高活性且つ高耐久性の触媒の出発原料として有用である。
【0017】
本発明のコロイド溶液中には、このような金属化合物の結晶子および/またはその凝集体からなる微粒子が分散している。このコロイド溶液中の微粒子の粒度分布は、例えば、動的光散乱法により測定することができる。本発明のコロイド溶液中の微粒子は、このようにして測定された粒度分布において累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nm(好ましくは0.8〜30nm、より好ましくは0.8〜9nm)であり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.0倍以下(好ましくは1.8倍以下)のものである。このような粒子径D50およびD90を有する前記金属化合物微粒子は比表面積と耐熱性とのバランスに優れた触媒担体として有用である。また、前記金属化合物微粒子をアルミナ骨格を有する粒子に吸着させた場合、アルミナ骨格を有する粒子の細孔径を変化させることによって、前記金属化合物微粒子の細孔径分布を任意に制御することが可能となる。また、前記金属化合物微粒子が金属化合物結晶子の凝集体である場合、この凝集体を熱処理することによってこの凝集体の粒子径に対応する大きさの結晶子を形成することができる。したがって、触媒担体の調製の際に本発明の金属化合物のコロイド溶液を用いることによって、触媒の使用温度領域に応じて理想的な形状の触媒担体を設計することが可能となり、例えば、ガス拡散性に最適な細孔径を有し、拡散律速領域で理想的な触媒活性を有する高耐熱性の触媒を得ることが可能となる。
【0018】
本発明にかかる金属化合物に含まれる金属としては特に制限はないが、Ti、Zr、Al、Si、希土類金属(La、Ce、Pr、Y、Scなど)、アルカリ土類金属(Sr、Ca、Baなど)、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Rh、Ag、Pt、Pd、Au、V、Mnなどが挙げられる。これらの金属は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、酸素ストレージ能と耐熱性を有するという観点からZr、Ce、Y、Al、Laが好ましい。
【0019】
また、本発明にかかる金属化合物としては特に制限はないが、前記金属の酸化物、水酸化物、塩、炭化物、窒化物、硫化物、これらの中間生成物などが挙げられる。前記金属酸化物としては、前記金属を1種含有する酸化物、前記金属を2種以上含有する複合酸化物、前記金属を1種含有する酸化物の混合物などが挙げられる。具体的な金属酸化物としては、CeO、ZrO、Y、TiO、Al、Fe、これらの複合酸化物、および混合物などが挙げられ、中でも、酸素ストレージ能と耐熱性を有するという観点から、CeOまたはZrOを主成分とする複合酸化物が好ましく、CeO−ZrO−Y3元系複合酸化物がより好ましい。
【0020】
また、前記金属水酸化物としては、前記金属を1種または2種以上含有する水酸化物、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的な金属水酸化物としては、Ce(OH)、Zr(OH)、Al(OH)、Ti(OH)、Fe(OH)などが挙げられる。さらに、前記金属塩としては、硫酸塩、炭酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩などが挙げられる。具体的な金属塩としては、BaSO、CaCO、シュウ酸カルシウム、リン酸チタニウムなどが挙げられる。また、炭化物、窒化物、硫化物等についても同様である。
【0021】
本発明のコロイド溶液には所定の分子量のポリアルキレンイミンが含まれている。コロイド溶液中にこのようなポリアルキレンイミンが存在することによって、前記金属化合物の結晶子は、そのままの状態、または前記粒子径および前記粒度分布を有する凝集体の状態で安定してコロイド溶液中に分散することが可能となる。
【0022】
このようなポリアルキレンイミンの重量平均分子量は3000〜15000であり、8000〜12000であることが好ましい。ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、ポリアルキレンイミンの重量平均分子量が前記下限未満になるとポリアルキレンイミンが金属化合物微粒子に吸着しても立体障害による斥力が十分に発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが架橋構造を形成し、大きな凝集体が形成する傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定され、標準ポリスチレンで換算した値である。
【0023】
本発明のコロイド溶液において、ポリアルキレンイミンの含有量としては、前記金属化合物の結晶子の単位表面積に対して10〜35mg/mが好ましく、15〜25mg/mがより好ましい。ポリアルキレンイミンの含有量が前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、前記ポリアルキレンイミンの含有量が前記下限未満になると金属化合物微粒子の表面をポリアルキレンイミンが十分に被覆することができず、金属化合物微粒子が凝集してより大きな凝集体が形成される傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中に遊離のポリアルキレンイミンが多く存在するため、ポリアルキレンイミンの架橋反応が著しく進行し、粒子径の大きな凝集体が形成する傾向にある。
【0024】
また、本発明のコロイド溶液のpHは1.0〜6.0であり、3.0〜5.0であることが好ましい。コロイド溶液のpHが前記範囲にあるとポリアルキレンイミンは解離してNH基が形成され、金属化合物結晶子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると金属化合物結晶子の表面が大きく正に帯電するため、解離してNH基が形成したポリアルキレンイミンは金属化合物結晶子に吸着しにくく、金属化合物微粒子間に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、金属化合物微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、金属化合物微粒子間に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0025】
本発明に用いられる溶媒としては、水、水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトンなど)、水と前記水溶性有機溶媒との混合溶媒などが挙げられる。本発明にかかるポリアルキレンイミンはこのような溶媒を用いた場合に優れた分散効果を発揮する傾向にある。
【0026】
このような本発明の金属化合物のコロイド溶液は、例えば、前記金属イオンを含有する原料溶液と前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液とを、反応場に高い剪断力を付与しないような条件で攪拌子などを用いて均質混合することによって製造することができる。また、本発明の金属化合物のコロイド溶液は、2種類以上の原料溶液を混合する方法であって、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記金属イオンを含有するものを使用し、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類として前記ポリアルキレンイミンを含有するものを使用し、これら原料溶液を7500sec−1以下の低剪断速度となっている領域に独立に直接導入して均質混合する方法によって製造することも可能である。特に、後者の方法によれば、水などの金属化合物結晶子が凝集しやすい溶媒においても、金属化合物結晶子をそのままの状態、または径がより小さく均一な凝集体の状態で分散させることが可能となる。
【0027】
後者の製造方法に用いられる装置としては、例えば、図1に示すものが挙げられる。以下、図面を参照しながら、本発明の金属化合物のコロイド溶液を製造するための好適な装置ついて詳細に説明する。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0028】
図1に示す製造装置は、攪拌装置としてホモジナイザー10を備えており、ホモジナイザー10の先端部(攪拌部)が反応容器20内に配置されている。ホモジナイザー10の先端部は、図2に示すように、凹型のローター11と、ローター11の外周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凹型の外側ステータ12と、ローター11の内周との間に所定のギャップの領域が形成されるように配置された凸型の内側ステータ13とを備えている。さらに、ローター11は、回転シャフト14を介してモーター15に接続されており、回転することが可能な構造となっている。
【0029】
そして、図1に示す製造装置においては、複数のノズル、すなわち、原料溶液Aを導入するためのノズル16Aと原料溶液Bを導入するためのノズル16Bとが、それぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられている。また、ノズル16Aには流路17Aを介して原料溶液Aの供給装置(図示せず)が、ノズル16Bには流路17Bを介して原料溶液Bの供給装置(図示せず)がそれぞれ接続されており、ローター11と内側ステータ13との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能な構造となっている。
【0030】
さらに、図1に示す製造装置においては、図3および図4に示すように、ノズル16Aおよびノズル16Bが、内側ステータ13におけるローター11に対向する面において、ローター11の回転軸Xに対して直交する所定の面Yの外周方向に交互に設けられている。
【0031】
なお、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ12個ずつ設けられているが(24孔タイプ)、ノズル16Aおよびノズル16Bの数は特に限定されるものではない。したがって、ノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ1個ずつ設けられていればよいが(2孔タイプ)、原料溶液Aおよび原料溶液Bが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間をより短縮できるという観点から、ノズル16Aおよびノズル16Bの数はそれぞれ10個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましい。一方、ノズル16Aおよびノズル16Bのそれぞれの数の上限は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、交互に配置されたノズル16Aおよびノズル16Bの開口部の直径が0.1mm程度以上の寸法を取り得るようにすることが好ましい。このようにノズルの開口部の直径は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、ノズルの詰まりをより確実に防止するという観点から、0.1〜1mm程度であることが好ましい。
【0032】
また、図3および図4においては、ノズル16Aおよびノズル16Bが、ローター11の回転軸Xに対して直交する一つの面Yの外周方向に一列に交互に設けられているが、複数の面の外周方向に複数の列において交互に設けられていてもよい。
【0033】
以上説明した図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11の内周と内側ステータ13の外周との間の領域において、剪断速度が7500sec−1以下であることが好ましく、6500sec−1以下であることが特に好ましい。この領域の剪断速度が前記上限を超えるとポリアルキレンイミンが破壊されて、前記金属化合物微粒子に十分な斥力を付与することができず、より大きな凝集体が形成する傾向にある。また、前記剪断速度の下限としては500sec−1以上が好ましく、1800sec−1以上がより好ましい。
【0034】
このような低い剪断速度を達成するための条件としては、ローターの回転速度およびローターとステータとの間のギャップの大きさが影響するため、前記領域の剪断速度が前記条件を満たすようにそれらを設定する必要がある。具体的なローター11の回転速度は特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、例えば、内側ステータ13の外径12.2mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップ0.5mm、およびローター11と内側ステータ13との間のギャップ0.5mmの場合にはローター11の回転速度を好ましくは300〜4000rpm、より好ましくは1000〜3500rpmに設定することによって前記剪断速度を達成することが可能となる。
【0035】
また、ローター11と内側ステータ13との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。さらに、ローター11と外側ステータ12との間のギャップの大きさも特に制限されず、装置の大きさによっても変わってくるが、0.2〜1.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。このギャップの大きさの変化に対応してローター11の回転速度を調整することにより前記範囲の剪断速度を達成することが可能となる。これらのギャップが前記下限未満になるとギャップの詰まりが発生し易くなる傾向にあり、前記上限を超えると効果的な剪断力を付与できない傾向にある。
【0036】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとからそれぞれ供給された原料溶液Aおよび原料溶液Bが、前記領域に導入されてから1msec以内(特に好ましくは0.5msec以内)に均質混合されるようにノズル16Aおよびノズル16Bが配置されていることが好ましい。なお、ここでいう原料溶液が前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間とは、ノズル16A(またはノズル16B)から導入された原料溶液A(または原料溶液B)が隣接するノズル16B(またはノズル16A)の位置に到達し、ノズル16B(またはノズル16A)から導入された原料溶液B(または原料溶液A)と混合されるまでの時間をいう。
【0037】
以上、本発明のコロイド溶液の製造に好適に用いられる装置について説明したが、本発明のコロイド溶液の製造方法は、図1に示す製造装置を用いる方法に限定されるものではない。例えば、図1に示す製造装置においては、2種類の原料溶液が導入できるように構成されているが、3種類以上の原料溶液が導入できるようにノズルや原料溶液供給装置等を構成してもよい。
【0038】
また、図1に示す製造装置においては、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ内側ステータ13におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられているが、ノズル16Aとノズル16Bとがそれぞれ外側ステータ12におけるローター11に対向する面にそれぞれ設けられていてもよい。そのように構成すれば、ローター11と外側ステータ12との間の領域に原料溶液Aと原料溶液Bとをそれぞれ独立して直接的に導入することが可能となる。なお、その領域における剪断速度は前記条件を満たすように設定する必要がある。
【0039】
さらに、上述したように、2種類以上の原料溶液を、反応場に高い剪断力を付与しないような条件で攪拌子などを用いて均質混合してもよい。
【0040】
次に、本発明のコロイド溶液の製造方法の好適な一実施形態について説明する。本発明のコロイド溶液の製造方法においては、原料溶液を導入する領域の剪断速度を前記範囲に設定し、前記各原料溶液を前記領域に独立して直接的に導入することが好ましい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、ノズル16Aとノズル16Bとから原料溶液Aおよび原料溶液Bがそれぞれ導入される領域、すなわち図1および図2においてはローター11と内側ステータ13との間の領域の剪断速度が前記範囲となるようにローター11を回転させ、原料溶液Aおよび原料溶液Bをそれぞれノズル16Aおよびノズル16Bから前記領域に独立して直接的に導入する。このように低い剪断速度となっている領域に直接導入された各原料溶液は、極めて短時間の間に均質混合されて反応が終了し、前記原料溶液中の原料に由来する金属化合物の結晶子やその凝集体からなる微粒子が得られる。このような方法により得られた金属化合物結晶子は、結晶子径がより小さく且つ粒度分布がより狭いものとなる。また、金属化合物結晶子の凝集体も、粒子径がより小さく且つ粒度分布がより狭いものとなる。
【0041】
また、各原料溶液の送液速度としては特に制限はないが、10〜30ml/minが好ましい。原料溶液の送液速度が前記下限未満になると金属化合物の結晶子やその凝集体の製造効率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると金属化合物結晶子の凝集体の粒子径が大きくなる傾向にある。
【0042】
本発明のコロイド溶液の製造方法においては、コロイド溶液のpHを1.0〜6.0に調整する。コロイド溶液のpH前記範囲にするとポリアルキレンイミンは解離してNH基が形成され、金属化合物結晶子の負に帯電したサイトまたはニュートラルなサイトに吸着して分散効果を付与する。その結果、金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、pHが前記下限未満になると金属化合物結晶子の表面が大きく正に帯電するため、解離してNH基が形成したポリアルキレンイミンは金属化合物結晶子に吸着しにくく、金属化合物微粒子間に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子が凝集し、他方、前記上限を超えると、ポリアルキレンイミンの解離度が小さく、金属化合物微粒子へのポリアルキレンイミンの吸着量が減少し、金属化合物微粒子間に十分な斥力が発現せず、金属化合物微粒子が凝集する。また、このような観点から、本発明の製造方法においてはコロイド溶液のpHを3.0〜5.0に調整することが好ましい。
【0043】
本発明のコロイド溶液を製造する場合、前記金属イオンと前記ポリアルキレンイミンは、同じ原料溶液に含まれていてもよいし、各々別の原料溶液に含まれていてもよいが、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属イオンを含むものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含むものであることが好ましい。例えば、図1に示す製造装置を用いる場合には、前記金属イオンと前記ポリアルキレンイミンがともに原料溶液Aに含まれていてもよいし、原料溶液Aに前記金属イオンが含まれ、原料溶液Bに前記ポリアルキレンイミンが含まれていてもよいが、後者が好ましい。
【0044】
また、前記金属イオンを含む原料溶液(例えば前記原料溶液A)の陽イオン濃度としては0.005〜0.5mol/Lが好ましく、0.01〜0.2mol/Lがより好ましい。陽イオン濃度が前記範囲にあると金属化合物結晶子はそのままの状態、または径が小さく均一な凝集体の状態で分散し、保存安定性に優れたコロイド溶液を得ることができる。一方、陽イオン濃度が前記下限未満になると金属化合物の結晶子の収率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えるとコロイド溶液中の金属化合物微粒子間の距離が短くなるため、ポリアルキレンイミンが効果的な形態で金属化合物微粒子に吸着できず、金属化合物微粒子が凝集する傾向にある。
【0045】
このような本発明のコロイド溶液を製造する場合に適用できる反応系は特に制限されず、アルコキシドの加水分解反応や貧溶媒を用いた溶解度変化を利用する析出反応などが挙げられるが、中和反応や酸化還元反応といった核生成速度や反応速度が極めて早い反応においても前記製造方法によれば金属化合物微粒子は粒子径が小さく均一なものとなり、保存安定性に優れたコロイド溶液が得られるため、本発明の製造方法はこのような核生成速度や反応速度が極めて早い反応系に対して特に有用である。
【0046】
このような中和反応、酸化還元反応などにおける具体的な反応系は特に制限されるものではないが、例えば、2種類の原料溶液を用いる場合には以下のような反応系が挙げられる。
【0047】
(i)中和反応I
原料溶液A(金属イオン含有溶液):金属化合物の原料である前記金属の酢酸塩、脂肪酸塩(例えばシュウ酸塩)、無機酸の塩(例えば硝酸塩、硫酸塩、塩酸塩)を含有する溶液
原料溶液B(中和剤):アンモニア水、脂肪酸(例えばシュウ酸)もしくは無機酸(例えば硝酸、硫酸、塩酸)のアンモニウム塩を含有する溶液、またはアルカリ金属水酸化物溶液(水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)。
【0048】
(ii)中和反応II
原料溶液A(アルカリ性原料液):酢酸バリウム、塩化カルシウムなどを含有する溶液
原料溶液B(酸性原料液):硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどを含有する溶液。
【0049】
(iii)酸化還元反応
原料溶液A:硝酸銀、塩化白金酸などを含有する溶液
原料溶液B:アセトアルデヒド溶液、水素化ホウ素ナトリウム溶液、ヒドラジン、エタノールなど。
【0050】
なお、ポリアルキレンイミンは、上記いずれの反応においても原料溶液Aおよび原料溶液Bの少なくとも一方に含まれていればよいが、原料溶液Bに含まれていることが好ましい。例えば、前記中和反応Iにおいては、金属化合物の原料である前記金属の塩を含有する原料溶液Aと、中和剤とポリアルキレンイミンとを含有する原料溶液Bとを用いることが好ましい。
【0051】
このような原料溶液の組成や組み合わせは、目的とする金属化合物のコロイド溶液の種類や使用する原料の種類などに応じて適宜設定することができる。例えば、CeOを含有する金属酸化物のコロイド溶液を製造する場合、原料溶液Aとして4価のセリウムイオンを含むもの、および3価のセリウムイオンを含むもののいずれの原料溶液も使用することもできるが、後者の原料溶液Aを使用する場合には、酸化させて4価のセリウムイオンとするために、原料溶液Bとして中和剤の他に、原料溶液A中のセリウムイオンに対して当量以上の過酸化水素を含むものを使用することが好ましい。
【0052】
本発明によって得られる金属化合物のコロイド溶液の組成は特に限定されず、様々な原料溶液を用いることによって、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩といった種々の組成のコロイド溶液を得ることが可能となる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
硝酸二アンモニウムセリウム(IV)20.9g、オキシ硝酸ジルコニウム7.0gおよび硝酸イットリウム2.3gをイオン交換水500gにビーカー中で溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lの金属イオン含有原料水溶液(原料溶液A)を調製した。また、下記式(1):
【0055】
【化1】

【0056】
で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン125gおよび硝酸160g
をイオン交換水340gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液(原料溶液B)を調製した

【0057】
前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとを、ビーカー中で混合し、攪拌子を用いたマグネチックスターラーで100rpmの回転速度で攪拌して金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0058】
得られた金属化合物のコロイド溶液のpHを表1に示す。また、コロイド溶液の一部を80℃で24時間乾燥させ、粉末状の試料を作製した。この試料について高分解能透過型電子顕微鏡(高分解能TEM)の電子線回折測定を行い、得られた電子線回折パターンより前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。さらに、この試料について高分解能TEM写真を撮影し、TEM写真中の50個の金属化合物結晶子を抽出して結晶子径を直接測定して粒度分布を求めた。この金属化合物結晶子の粒度分布から金属化合物の累積個数が50%となる結晶子径d50(平均結晶子径)を求め、さらに、金属化合物結晶子の比表面積を算出して金属化合物結晶子の単位表面積当りのポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0059】
次に、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を動的光散乱法(日機装(株)製「Nanotrac250」を使用)により測定した。このコロイド溶液中の微粒子の粒度分布から累積質量が50%となる粒子径D50(平均結晶子径)を求めた。その結果を表1に示す。結晶子径d50よりもコロイド溶液中の微粒子の粒子径D50の方が大きいことから、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。
【0060】
また、金属化合物の結晶子の粒度分布から、累積個数が90%となる結晶子径d90を求め、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布から、累積質量が90%となる粒子径D90を求めた。さらに、30日間静置したコロイド溶液について上記と同様にして微粒子の粒度分布を測定し、累積質量が50%となる粒子径D50を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0061】
(実施例2)
図1に示す製造装置(スーパーアジテーションリアクター)を用いてCeO−ZrO−Y3元系金属化合物のコロイド溶液を作製した。なお、ステータ13としてはノズル16Aおよびノズル16Bがそれぞれ24個ずつ設けられている48孔タイプのものを使用した。
【0062】
実施例1と同様にして原料溶液AおよびBを調製した。図1に示すように、ホモジナイザー10の先端を100mlビーカー20の中に浸るようにセットし、ホモジナイザー10におけるローター11を300rpmの回転速度で回転させながら、前記原料溶液Aと前記原料溶液Bとをそれぞれ5ml/minの供給速度でチューブポンプ(図示せず)を用いてノズル16Aおよびノズル16Bからローター11と内側ステータ13との間の領域に送液して混合し、金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0063】
なお、ローター11の外径は17.8mm、ローター11と外側ステータ12との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は562sec−1であった。また、内側ステータ13の外径は12.2mm、ローター11と内側ステータ13との間のギャップは0.5mmであり、それらの間の領域における剪断速度は562sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は4.2msecであった。ここで、均質混合されるまでの時間とは、ノズル16Aまたはノズル16Bから吐出された原料溶液Aまたは原料溶液Bがローター11の回転によって隣接するノズル16Bまたはノズル16Aに到達するまでの時間と定義されるものである。
【0064】
ビーカー20からあふれて出てくる中和反応後のコロイド溶液を、上記ビーカー20のさらに下に1Lビーカー(図示せず)をセットして受け止めた。
【0065】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0066】
(実施例3)
ローター11の回転速度を1000rpmに変更した以外は実施例2と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は1873sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は1873sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は1.26msecであった。
【0067】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0068】
(実施例4)
ローター11の回転速度を3200rpmに変更した以外は実施例2と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は6000sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.394msecであった。
【0069】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0070】
(実施例5)
酢酸セリウム一水和物(III)12.7g、オキシ酢酸ジルコニウム12.8gおよび酢酸イットリウム四水和物1.7gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lの金属イオン含有原料水溶液を調製した。また、酢酸アンモニウム23.2g、過酸化水素水13.6g、前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン125g、および酢酸130gをイオン交換水355gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液を調製した。
【0071】
原料溶液AおよびBとしてそれぞれ前記金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例1と同様にして攪拌子を用いたマグネチックスターラーで攪拌して金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0072】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0073】
(実施例6)
実施例5と同様にして金属イオン含有原料水溶液およびポリエチレンイミン水溶液を調製し、これらを原料溶液AおよびBとして用いた以外は実施例2と同様にして図1に示す製造装置を用いて金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0074】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0075】
(実施例7)
ローター11の回転速度を1000rpmに変更した以外は実施例6と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は1873sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は1873sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は1.26msecであった。
【0076】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0077】
(実施例8)
ローター11の回転速度を3200rpmに変更した以外は実施例6と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は6000sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は6000sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.394msecであった。
【0078】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めた。これらの結果を図5に示す。図5に示した粒度分布から求めた金属化合物結晶子平均結晶子径d50およびコロイド溶液中の微粒子の平均粒子径D50から、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d90、およびコロイド溶液中の粒子径D90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0079】
(実施例9)
実施例5と同様に、原料溶液AおよびBを調製して混合し、攪拌子を用いたマグネチックスターラーで攪拌した。得られたコロイド溶液にエチルアルコール1000gを添加してさらに攪拌子を用いたマグネチックスターラーで100rpmの回転速度で攪拌して金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0080】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0081】
(実施例10)
酢酸アンモニウム23.2g、過酸化水素水13.6g、前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン62.5g、および酢酸70gをイオン交換水400gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液を調製した。この水溶液を原料溶液Bとして用いた以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0082】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0083】
(実施例11)
酢酸アンモニウム23.2g、過酸化水素水13.6g、前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン36.8g、および酢酸35gをイオン交換水465gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液を調製した。この水溶液を原料溶液Bとして用いた以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0084】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0085】
(実施例12)
酢酸セリウム一水和物(III)1.27g、オキシ酢酸ジルコニウム1.28gおよび酢酸イットリウム四水和物0.17gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.01mol/Lの金属イオン含有原料水溶液を調製した。また、酢酸アンモニウム2.32g、過酸化水素水1.36g、前記式(1)で表される重量平均分子量10000のポリエチレンイミン12.5g、および酢酸10gをイオン交換水485gに溶解し、ポリエチレンイミン水溶液を調製した。
【0086】
原料溶液AおよびBとしてそれぞれ前記金属イオン含有原料水溶液および前記ポリエチレンイミン水溶液を用いた以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0087】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表1に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子はそのままの状態で分散していることが確認された。そこで、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表1に示す。
【0088】
(比較例1)
酢酸アンモニウム23.2gおよび過酸化水素水13.6gイオン交換水430gに溶解した。この水溶液を原料溶液Bとして使用した以外は実施例5と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0089】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpHを求めた。その結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0090】
(比較例2)
ローター11の回転速度を10000rpmに変更した以外は実施例6と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。この場合、ローター11と外側ステータ12との間の領域における剪断速度は18730sec−1であり、ローター11と内側ステータ13との間の領域における剪断速度は18730sec−1であった。また、原料溶液Aと原料溶液Bとが前記領域に導入されてから均質混合されるまでの時間は0.126msecであった。
【0091】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0092】
(比較例3)
重量平均分子量10000のポリエチレンイミンの代わりに前記式(1)で表される重量平均分子量600のポリエチレンイミン125gを用いた以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0093】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0094】
(比較例4)
重量平均分子量10000のポリエチレンイミンの代わりに前記式(1)で表される重量平均分子量1800のポリエチレンイミン125gを用いた以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0095】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0096】
(比較例5)
酢酸の添加量を100gに変更した以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0097】
(比較例6)
酢酸の添加量を50gに変更した以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレンイミンの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0098】
(比較例7)
ポリエチレンイミンの代わりに重量平均分子量10000のポリビニルピロリドン125gを用い、イオン交換水の量を480gに変更し、酢酸を無添加とした以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0099】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリビニルピロリドンの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0100】
(比較例8)
ポリエチレンイミンの代わりに重量平均分子量10000のポリエチレングリコール125gを用い、イオン交換水の量を480gに変更し、酢酸を無添加とした以外は実施例8と同様にして金属化合物のコロイド溶液を作製した。
【0101】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレングリコールの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。
【0102】
(比較例9)
先ず、酢酸セリウム一水和物(III)12.7g、オキシ酢酸ジルコニウム12.8gおよび酢酸イットリウム四水和物1.7gをイオン交換水500gに溶解し、陽イオン濃度が0.1mol/Lの原料水溶液(原料溶液A)を調製した。また、ジエタノールアミン31.6g、過酸化水素水13.6gおよび重量平均分子量20000のポリエチレングリコール0.68gをイオン交換水500gに溶解し、ポリエチレングリコール水溶液(原料溶液B)を調製した。
【0103】
これらの原料溶液AおよびBをビーカー中で混合し、硝酸を添加してpH3に調整した。この溶液に、振動数20kHz、振幅30μm、出力200Wの超音波ホモジナイザーを用いて30分間超音波処理を施し、金属化合物のコロイド溶液を作製した。なお、セリウムイオンに対するジエタノールアミンの添加量は3モル当量であり、ポリエチレングリコールの添加量は生成した金属化合物の5質量%であった。
【0104】
得られたコロイド溶液中の金属化合物について実施例1と同様にして高分解能TEMの電子線回折測定を行ったところ、前記金属化合物はCeO−ZrO−Y3元系複合酸化物単結晶であることが確認された。また、実施例1と同様にして、コロイド溶液のpH、ポリエチレングリコールの含有量を求めた。これらの結果を表2に示す
さらに、得られたコロイド溶液中の微粒子について実施例1と同様にして金属化合物結晶子の粒度分布、コロイド溶液中の微粒子の粒度分布を求めたところ、コロイド溶液中の金属化合物の結晶子は凝集体を形成していることが確認された。また、実施例1と同様にしてこれらの粒度分布から、結晶子径d50およびd90、コロイド溶液中の粒子径D50およびD90を求めた。これらの結果を表2に示す。また、コロイド溶液中の粒子(凝集体)の粒度分布を図5に示す。
【0105】
また、得られた金属化合物のコロイド溶液に遠心加速沈降処理を施して、より大きな凝集体粒子を除去し、上澄み液のみを採取したが、極く一部(数%)の微粒子が残留し、ほとんどの粒子は沈殿した。上澄み液中の微粒子の粒子径D50は20nmであり、D90は100nmであった。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
図5および表1に示した結果から明らかなように、所定の分子量のポリアルキレンイミンを添加し、反応場に高い剪断力が付与されないようにして得られた金属化合物のコロイド溶液においては、金属イオン含有原料溶液として、硝酸塩を含むものを用いた場合(実施例1〜4)、酢酸塩を含むもの用いた場合(実施例5〜12)のいずれにおいても、結晶子径がナノオーダーで粒径分布も狭い金属化合物結晶子が、そのままの状態、または粒子径がナノオーダーで粒径分布も狭い凝集体の状態で分散していることが確認された。また、実施例5〜8で得たコロイド溶液においては、30日間保存しても前記金属化合物結晶子および/またはその凝集体からなる微粒子の粒子径に変化は見られず、保存性に優れたものであった。
【0109】
一方、表2に示した結果から明らかなように、本発明にかかるポリアルキレンイミンを添加しない場合(比較例1)、ポリアルキレンイミンの代わりにポリビニルピロリドンを用いた場合(比較例7)やポリエチレングリコールを用いた場合(比較例8)においては、結晶子径がナノオーダーの金属化合物結晶子が、粒子径がミクロンオーダーの凝集体の状態で分散しており、分散性に劣るものであった。これは、金属酸化物微粒子が水や水性溶媒中での凝集力が大きいため、凝集しやすく、さらにこのような微粒子にポリビニルピロリドンやポリエチレングリコールが効果的な形態で吸着しないためであると推察される。
【0110】
また、図5および表2に示した結果から明らかなように、ジエタノールアミンとポリエチレングリコールを添加し、pHを3に調整して超音波処理を施した場合(比較例9)においては、ナノオーダーの金属化合物結晶子が、粒子径がサブミクロンオーダーの凝集体の状態で分散しており、分散性に劣るものであった。また、超音波処理により水溶液の温度が若干上昇したため、一部、結晶子が成長し、粒度分布幅が大きくなったと推察される。さらに、30日間保存したコロイド溶液においては、凝集体の粒子径がさらに大きくなり、保存性に劣るものであった。
【0111】
さらに、表2に示した結果から明らかなように、反応場に高い剪断力を付与した場合(比較例2)、分子量が小さいポリアルキレンイミンを添加した場合(比較例3〜4)、およびコロイド溶液のpHが高い場合(比較例5〜6)においては、結晶子径がナノオーダーの金属化合物結晶子が、粒子径がサブミクロン〜ミクロンオーダーの凝集体の状態で含まれており、分散性に劣るものであった。
【0112】
また、実施例1と実施例2〜4または実施例5と実施例6〜8を比較すると、マイクロ反応場を具備し、この反応場に適度な剪断力を付与することによって、攪拌子を用いて攪拌した場合に比べて、金属化合物結晶子の平均結晶子径(d50)に違いは見られなかったが、粒度分布幅(d90/d50)が小さく、且つコロイド溶液中の金属化合物微粒子の平均粒子径(D50)が小さくなることが確認された。
【0113】
実施例5と実施例9とを比較すると、溶媒として、水のみを用いた場合(実施例5)に比べて水と水溶性溶媒との混合溶媒を用いた場合(実施例9)においては、金属化合物結晶子の平均結晶子径(d50)および粒度分布幅(d90/d50)に違いは見られなかったが、コロイド溶液中の金属化合物微粒子の平均粒子径(D50)が小さくなることが確認された。また、実施例8、10〜11を比較すると、ポリアルキレンイミンの含有量が多くなるにつれて、金属化合物結晶子の平均結晶子径(d50)および粒度分布幅(d90/d50)に違いは見られなかったが、コロイド溶液中の金属化合物微粒子の平均粒子径(D50)が小さくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上説明したように、本発明によれば、粒子径が小さく粒度分布が狭い金属化合物の結晶子が、そのままの状態、または粒子径が小さく粒度分布が狭い凝集体の状態で分散したコロイド溶液を得ること可能となる。
【0115】
したがって、本発明の金属化合物のコロイド溶液は、金属化合物結晶子やその凝集体がナノサイズで高度に分散したものであるため、様々な用途においてナノサイズ効果の発現が期待され、例えば、耐熱性と比表面積とのバランスに優れた触媒担体の出発原料などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に用いられる金属化合物コロイド溶液の製造装置の好適な一実施形態を示す模式縦断面図である。
【図2】図1に示すホモジナイザー10の先端部(攪拌部)を示す拡大縦断面図である。
【図3】図1に示す内側ステータ13の側面図である。
【図4】図1に示す内側ステータ13の横断面図である。
【図5】実施例8および比較例9において得られたコロイド溶液中の金属化合物の結晶子の粒度分布(累積個数)および微粒子の粒度分布(累積質量)を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0117】
10…ホモジナイザー、11…ローター、12…外側ステータ、13…内側ステータ、14…回転シャフト、15…モーター、16A,16B…ノズル、17A,17B…流路(供給管)、20…反応容器、A,B…反応溶液、X…回転軸、Y…回転軸Xに対して直交する面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度分布における累積個数が50%となる結晶子径d50が0.8〜3nmであり且つ累積個数が90%となる結晶子径d90が前記結晶子径d50の1.5倍以下である金属化合物の結晶子と、重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンとを含有するコロイド溶液であって、
該コロイド溶液のpHが1.0〜6.0であり、
該コロイド溶液中に分散している微粒子が、粒度分布における累積質量が50%となる粒子径D50が0.8〜70nmであり且つ累積質量が90%となる粒子径D90が前記粒子径D50の2.0倍以下である前記金属化合物の結晶子および/またはその凝集体である、ことを特徴とする金属化合物のコロイド溶液。
【請求項2】
前記ポリアルキレンイミンの含有量が前記金属化合物の結晶子の単位表面積に対して10〜35mg/mであることを特徴とする請求項1に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項3】
2種類以上の原料溶液を混合することにより製造された金属化合物のコロイド溶液であって、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記ポリアルキレンイミンを含有するものであり、
7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合することにより得られたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項4】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることを特徴とする請求項3に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項5】
前記金属イオンを含有する原料溶液が前記金属化合物の原料である金属の塩を含む溶液であり、前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液がさらに中和剤を含むものであることを特徴とする請求項4に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項6】
前記金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.005〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項3〜5のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液。
【請求項7】
2種類以上の原料溶液を混合して金属化合物のコロイド溶液を製造する方法であって、
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は前記金属化合物の原料である金属イオンを含有するものであり、前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類は重量平均分子量が3000〜15000のポリアルキレンイミンを含有するものであり、
7500sec−1以下の剪断速度となっている領域に前記各原料溶液を独立に直接導入して均質混合し、溶液のpHを1.0〜6.0に調整することを特徴とする金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項8】
前記2種類以上の原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記金属イオンを含有するものであり、残りの原料溶液のうちの少なくとも1種類が前記ポリアルキレンイミンを含有するものであることを特徴とする請求項7に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項9】
前記金属イオンを含有する原料溶液が前記金属化合物の原料である金属の塩を含む溶液であり、前記ポリアルキレンイミンを含有する原料溶液がさらに中和剤を含むものであることを特徴とする請求項8に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。
【請求項10】
前記金属イオンを含有する原料溶液の陽イオン濃度が0.005〜0.5mol/Lであることを特徴とする請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の金属化合物のコロイド溶液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−110719(P2010−110719A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287006(P2008−287006)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】